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セブルス・スネイプと謎のプリンス(22)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

思いに浸っていると、医務室の扉が開き、モリーとアーサー、そしてビルの婚約者のフラーが入ってきた。横たわるビルを見て、同じ話が繰り返される。ビルの感染について、私は説明してあげた。そして、信じ難いダンブルドアの死を確認するアーサー。

しかしモリーは自分の息子、ビルだけをじっと見つめていた。そしてビルはもうすぐ結婚するはずだったのにと嘆いたモリーの言葉に、フラーが激しく反論を始めた。フラーは、ビルの美しい顔にどんな傷跡が残ろうと、人狼の呪いによりビルにどんな変化があろうとも、2人の愛に変わりはない、愛し合って結婚することに変わりはないと主張した。そして抱き合うモリーとフラー。

私はそんな成り行きを茫然と見ていたのだけれど、トンクスが私をじっと見つめ、強い声で言った。

「わかったでしょう?フラーはそれでもビルと結婚したいのよ!噛まれたって、そんなことはどうでもいいのよ!」

私は突然の攻撃にたじろぎながらも頑なに言った。

「次元が違う。ビルは完全な人狼になるわけではないよ。事情がまったく・・」

「でも、わたしも気にしないわ。気にしないの。」

トンクスは私のローブをつかんで揺すぶりながら言った。

「何回もあなたにそう言ったのに。」

「私も君に何回も言った。私は君には年をとり過ぎているし、貧乏だし、危険すぎると。」

「リーマス、あなたのそういう考え方はバカげていると思いますよ。」

モリーがトンクスを援護し、アーサーまで援護に回った。

「今はそんな話をするときじゃない。ダンブルドアが死んだんだ。」

私は抵抗した。実際、私の頭はダンブルドアの死と、それをやったのがセブルスだったという事実を消化するので精いっぱいだった。けれど、マクゴナガルまでが・・・

「世の中に少し愛が増えたと知れば、ダンブルドアも喜ばれるでしょう。」

皆、ダンブルドアの死という悲しみから逃れるために、少しでも温もりのある話を求めていたのだと思う。私が言い返す言葉を見つけられないうちに、ハグリッドが泣きながら、指示されたことを行ったと、マクゴナガルに報告に来た。マクゴナガルがハリーを連れて出てゆき、ウィーズリー一家を残して私たちも医務室を出た。

トンクスは私の手を握り、放さなかった。暗い校庭で足を止め、たいせつなのは2人の気持ちだ、人狼だってかまわないと言い募る。柔らかい体が、私に抱きついて来た。若い魔女の甘い匂い、絡みつく温かい体、伝わってくる心臓の鼓動。

「モリーだって、アーサーだって、ミネルバだって認めてくれるのに、なぜあなたはそんなことにこだわるの?なぜ私の想いを受け止めてくれないの?人狼だって、貧しくたって、年上だっていい。それがなんだとういの?あなたを愛してるわ、リーマス。」

トンクスを嫌いなわけではなかった。一途に慕ってくる彼女が愛おしく思えることもあった。私を止めていたのは、セブルスへの想いだ。けれどセブルスは・・・ダンブルドアを殺した。私を裏切り、皆を裏切り、ダンブルドアを裏切ったんだ。

親友たちを失ってから、私はダンブルドアとセブルスを心の支えに生きてきた。人狼の私に手を差し伸べ導いてくれたダンブルドア。人狼の私を、ありのままに理解し認めてくれたセブルス。そのセブルスがダンブルドアを殺すという最悪の形で、私は寄って立つ支えを失ってしまったのだった。

悲しみと怒りと寂しさのなか、私を愛してくれる可愛らしい魔女を拒むことなんてできなかった。いや、むしろその温もりにしがみつきたかったのは私のほうかもしれない。皆も応援してくれているのだし。心の支えを失った私はとても弱かった。人の顔色をうかがう癖。人に好かれたい思い。人狼の私だって受け入れてもらいたい・・・幼い頃から身に着いた、それが私の習性だった。

トンクスのあごをそっと上げ、唇を寄せた。喜びなのか、トンクスの閉じた目から涙が溢れた。トンクスの涙が私の頬を伝わり、それは思いがけず熱かった。生きることは、こういうことなんだ。温かくて、柔らかい。

セブルスのことを考えると、胸の痛みも信じられない思いも解消されてはいなかったけれど、私は腹立ち紛れに放置した。裏切ったのはスネイプだ。私の想いも信頼も裏切り、こともなげにダンブルドアを殺し、去って行った。

2日後に行われたダンブルドアの葬儀には、トンクスと一緒に参列した。あなたを裏切ったスネイプのことは断ち切り、私はトンクスと幸せですと報告する思いもあった。

愛を得たと信じた女は強い。それからトンクスは、セブルスへの想いのためではなく今度こそほんとうに彼女にはふさわしくないと尻込みする私を、強引に家族に引き合わせ、結婚を宣言した。マグル生まれの父親テッドは娘の意思を尊重すると言ってくれたけれど、ブラック家出身の母親アンドロメダは、おまえは何もわかっていないと娘をいさめ、私には口もきいてくれなかった。アンドロメダの気持ちは理解できたし、内心、その通りだとも思っていた。つきあうだけならまだしも、人狼と婚姻を結ぶとなれば、一家丸ごと排斥されるのだから。

トンクスは母親の反対をものともせず、私はそんな彼女に引きずられるように、結婚を承諾した。尻込みはしたものの、私はトンクスと幸せになりたいと思っていたし、同時に、彼女とその家族を、私と同じ不幸に陥れることを恐れてもいた。先の見えない不安が続く時、人は何かに突き動かされるように生き急ぐ。明日がないかもしれないのなら、今日がすべてなのだから。そして私は、決着のつかないセブルスへの想いを心の奥深くに封じ込め、差し出された温かい手を握ったのだった。
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tag : ハリーポッター トンクス

セブルス・スネイプと謎のプリンス(21)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ダンブルドアが死んだ。セブルスが殺した。スネイプが、ダンブルドアを殺した。


その数日前、ダンブルドアに任務地から呼び返されて、私はホグワーツ周辺の警備にあたっていた。前報告に戻った時の様子が気になり、セブルスに会いたかったのだけれど、どうやらダンブルドアに泣きついて私を危険な人狼の村から呼び戻してもらったらしいトンクスが、そんな隙を与えてくれなかった。

トンクスは、私の消息が途絶えていた日々の苦しさを涙ながらに訴え、私が年をとっていようと、貧乏であろうと、人狼であろうと構わないから、一緒になりたいと、繰り返し言ってくれたのだった。一途な若い魔女からそんなふうに思われて、揺らぐ気持ちもあった。私のような、一緒になってもなんの得にもならない者に注いでくれる純粋な愛情というのは、心を打つものがある。トンクスとは任務が一緒だったし、いつの間にかトンクスの味方になっていたモリーも、私を励ましたり、2人を食事に招いたりしてくれた。

だけど、私の中にはセブルスへの想いがあったから、そのままは言えなかったけれど、自分はトンクスにはふさわしくないと、できるだけトンクスを傷つけないように、でも頑なに断っていた。学期末の忙しい時期にセブルスをわずらわすのははばかられたし、女性2人に理解してもらうのにも手間取って、こちらに戻ったのだからセブルスには夏休みに入ってからゆっくり会えると思っていた。

その夜は、マクゴナガルに呼ばれて、トンクス、ビルも一緒に、皆で校内を巡回していた。ダンブルドアがホグワーツを離れるということで警備を強めたのだけれど、校内は静かで、何の兆候も見られなかった。そして突然騒動が起こり、ロンたちからデスイーターが侵入したと知らされた。

私たちは急いで彼らを追い、天文塔の下で闘いが始まった。数名のデスイーターが天文塔の上に続くらせん階段へと向かったあと、呪いの障壁が張られ、私たちはみな障壁を抜けることができなかった。上の様子は気になったけれど、かまっていられなかった。階段の下での闘いでも、私たちは形勢不利だったから。ビルがグレイバックに噛まれ、ネビルも呪文に飛ばされて怪我をしていた。援軍に駆け付けたセブルスが、障壁を抜けて天文塔に向かうのに続こうとしたけれど、私は跳ね返されて通り抜けられなかった。

それからほどなく、天井が落ちてあたりに煙が立ち込める暗闇の中、スネイプとドラコが通り抜けていく姿を見かけた。そして、上から下りてきた者たちとともに、下で私たちと戦っていたデスイーターたちも突然引き上げていった。

わけがわからなかったけれど、とりあえず負傷者を医務室に運んだ。ビルは人狼のグレイバックに噛まれ、重傷を負い意識不明だった。ビルのベッドを囲み、ポピーが必死に手当するのを、ロン、ハーマイオニー、ルーナ、トンクスとともに見守っていると、青ざめたハリーがジニ―とともに医務室に入ってきた。

「ハリー、大丈夫かい?」

近寄って声をかけると、ハリーは自分は大丈夫だと答え、ビルの状態を尋ねた。言い淀むロンの物問いたげな視線に応えて、私は考えられることを話してあげた。つまり、変身時に噛まれたわけではないから本物の人狼にはならないと思うけれど、呪いのかかった傷だから完全には治らない。汚染されて、何か狼的な特徴が現れるのではないかと。

それを聞いて、ビルの弟のロンがすがるように、ダンブルドアならなんとかしてくれるはずだと言った、その時・・・

「ロン、、、ダンブルドアは死んだの。」

ジニ―が兄に答えて言ったのだった。

「まさか!」

私は思わず叫び、ジニ―を、それからハリーを見た。嘘に決まっている。嘘か、間違いか。ダンブルドアが死ぬはずがない!けれど・・・ハリーは否定しなかった。ダンブルドアはほんとうに死んでしまったんだ。

私はがっくりと椅子に座りこみ、顔を覆った。ダンブルドアが死んだ。人狼として、あの人狼の村で見た彼らと同じように生きるはずだった私に、救いの手を差し伸べてくれたのがダンブルドアだった。そのおかげで私はホグワーツに入学し、学ぶ機会を得て、かけがえのない友とめぐり合うこともできた。卒業後、困窮していた私をホグワーツの教授として招いてくれたのもダンブルドアだった。不死鳥の騎士団として、仲間とともに闇陣営と戦えるのも、すべてダンブルドアのおかげだった。導きを受け、その恩に少しでも報いたいと思っていたし、ダンブルドアの語る共生の世が私の希望でもあった。そのダンブルドアが・・・

「どんなふうに亡くなったの?」

思いに浸り、現実味の持てないままトンクスの質問を聞き流したのだけれど・・・ハリーの答えに驚愕した。まるでナイフを胸に突き刺されたような衝撃。

「スネイプが殺した。僕はその場にいて、見ていたんだ。闇の印が上がっていたから、僕たちは天文塔に戻った。ダンブルドアは病気で弱っていたけど、階段を駆け上がる足音を聞いて、それが罠だとわかったんだと思う。僕を金縛りにしたから、僕は何もできなかった。透明マントを被っていたんだ。そうしたら、、扉からマルフォイが現れて、ダンブルドアを武装解除した。」

私はその光景を思い浮かべ、体の震えを抑えられなかった。ハーマイオニーが口を覆い、ロンがうめき、ルーナが唇を震わせていた。

「続いてデスイーターがやってきた。それからスネイプが来て、、、スネイプがやったんだ。アヴァダ・ケダブラを。」

ハリーがそれ以上耐えられないように口をつぐんだ。ポピーが泣き出して、それからどこからともなく、不死鳥の哀しい歌声が聞こえてきた。皆黙りこんで、ただその声を聞いていた。ダンブルドアが死んだという、その驚きが悲しみに変わり、信じられない出来事が事実として体にしみわたってゆく時間が過ぎた。


どれほどたったのか、再び医務室の扉が開き、マクゴナガルが入ってきた。

「まもなく、モリーとアーサーがみえます。・・・ハリー、何が起こったのですか?ハグリッドが言うには、あなたがちょうどそこにいて、、、スネイプ先生が何か関わっていたとか・・」

「スネイプが、ダンブルドアを殺しました。」

ハリーの答えが再び胸に突き刺さる。マクゴナガルは崩れるように椅子に座りこみ、弱々しく声を上げた。

「スネイプが・・。私たちは皆疑っていました。けれどダンブルドアはいつも信じていました。スネイプが・・。信じられません。」

私は突然怒りが込み上げ、吐き捨てるように言葉が口をついた。

「スネイプは閉心術に長けている。そんなことはずっと、わかっていた。」

トンクスが囁くような声で言った。

「でも、ダンブルドアは、スネイプは私たちの味方だって誓って言っていたわ。スネイプについて、私たちが知らないことを何か知ってるんだって、私、ずっとそう思ってた。」

続いてマクゴナガルが、あふれる涙をハンケチで抑えながら言った。

「ダンブルドアはいつも、スネイプを信頼する鉄壁の理由があると仄めかしていました。もちろん、スネイプは過去がありますから、みんな疑っていましたが。ダンブルドアは私にはっきりと、スネイプの悔恨は絶対に本物だとおっしゃいました。スネイプを疑う言葉は、一言も聞こうとなさらなかった・・・」

それを聞いてトンクスが言った。

「スネイプが何と言ってダンブルドアを信用させたのか知りたいものだわ。」

「僕、知ってる。」

ハリーの声に驚いて、みな振りかえり、ハリーを見つめた。

「スネイプがヴォルデモートに伝えた情報のせいで、ヴォルデモートが僕の父さんと母さんを殺した。スネイプはダンブルドアに、自分が何をしているのかわかっていなかった、やったことを心から後悔している、2人が死んで申し訳なく思っていると言ったんだ。」

私は信じられない思いで言った。

「それで、ダンブルドアがそれを信じたと?スネイプがジェームスの死をすまなく思っているというのを、ダンブルドアが信じたのか?スネイプはジェームスを憎んでいたのに?」

「それに、スネイプは母さんのことも価値があると思ってなかったんだ。マグル生まれだから。穢れた血だから。」

ハリーの言葉に、ふと何か引っかかる気がしたけれど、それを突きとめる余裕はなかった。取り返しのつかない衝撃的な出来事に動揺し、起こってしまったことをどう受け止めればいいのか途方に暮れていた。

やがてマクゴナガルが、思い詰めた声で、全部自分の責任だと言い、それから皆でその夜の出来事を順を追って確かめていった。誰もが責任を感じ、スネイプを味方と信じていたことを後悔していた。全貌がわかるにつれ、ダンブルドアの死が、取り返しのつかぬ事実として確認されていく。皆黙りこみ、それぞれの思いに沈んでいた。

ダンブルドアの死とともに、それをやったのがセブルスだという事実が私の胸を苛んだ。信じていたのに。ダンブルドアも私も。私はまた、信じた者に裏切られ、たいせつな人を失ったのか。けれど・・・。

他の皆より私はセブルスのことを知っていたはずだ。少なくとも私の目には、セブルスはダンブルドアを慕い、忠実に見えていた。それに、、、そうだ、セブルスの守護霊はリリーの牝鹿だ。それは生涯変わることはないと言っていたじゃないか。セブルスはジェームスは憎んでいたけれど、リリーのことは大切に思っていた。

それなら、リリーに死をもたらしたことをセブルスが心から悔み、それをもってダンブルドアがセブルスを信じたとしてもおかしくはない。けれど、事実は、セブルスがダンブルドアに死の呪文を放った。なぜ・・・?思いは堂々巡りし、答えは見つからない。

あの美しい守護霊を出すリリーの思い出を胸に秘めながら、セブルスはダンブルドアを殺したのだろうか?そういえば、前回会った時、セブルスは守護霊を形作ることができなかった。ひどく辛そうで、私は任務が厳しすぎるのではないかとダンブルドアに詰め寄ったほどだった。ではあの時、実はセブルスは闇陣営に追い詰められるか何かして、裏切りの心を固めていたのだろうか?

そうだとしたら、私はなんと愚か者だったのだろう。まんまとセブルスに騙された。セブルスはヴォルデモートさえも欺く、卓越した閉心術士なのだから。ダンブルドアが勝利をおさめて闘いが終わったら、2人で一緒に幸せになろうなどと言っていた私を、セブルスは隠した心の中であざ笑っていたのだろうか?

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tag : セブルス ダンブルドア ハリーポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(20)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


外の不穏な気配は感じたが、私は自室を出たくなかった。一歩出てしまえば、あとはダンブルドアを殺しに駆け付けることになるのがわかっていたからだ。せねばならぬとも、するだろうとも思っていたが、ただその時を少しでも遅らせたかった。ダンブルドアにはいいように使われたという思いもあるが、父のように慕う思いもあった。実の父親を慕ったことはないのだが。

つまらぬことを考えて部屋に留まっていると、フリートウィック教授が駆けこんできた。ホグワーツにデスイーターが侵入し加勢が必要だと。戦いに巻き込まれる者を少しでも減らすため、フリートウィック教授を失神呪文で気絶させ、部屋の外をうろついていたグレンジャーとラブグッドに手当てするよう言いつけて足止めし、私は急ぎ戦いの場に向かった。

ルーピンやトンクス、他に数名の騎士団員と、数名の生徒がデスイーターたちと戦っていた。その場を素早くやり過ごし、封鎖煙幕を通り抜けて天文塔に駆け付ける。デスイーターも騎士団側も私を味方と思っているから攻撃してはこない。しかししばらくのちには、騎士団員からは最悪の裏切り者と恨まれ蔑まれることになるだろう。

これから起こることへの悲しみと嫌悪を押し殺し、天文塔に駆けあがると、私の到着を待っていたかのような景色があった。いきりたつグレイバック、はやし立てるベラトリックス、そしてアミカス兄弟に囲まれ、立ちつくすドラコ。ドラコが向ける杖の先には・・・ようやく立っているようなダンブルドアの姿。

デスイーターのアミカスが私を見て言った。

セブルス、困ったことになった。この坊主にはできそうもないん、、、」

その時、弱々しい声が私に呼びかけた。

セブルス、、」

私は迷わずドラコを押しのけ、ダンブルドアの正面に立った。

セブルス、、、頼む、、」

懇願するような、ダンブルドアの声。

私はまっすぐにダンブルドアの胸に杖を向けた。私にこのようなことをさせるダンブルドアとダークロードと、私自身の運命に怒りと憎悪をたぎらせて・・・

「アヴァダ・ケダブラ」

ダンブルドアの姿は一瞬宙に浮いたように見えた。そして、防壁の向こうへと落ちて行った。


「ここを出るのだ、早く」

私は茫然と突っ立っているドラコの襟首をつかみ、らせん階段を下りた。下には煙がもうろうと立ち込め、誰と誰が戦っているかも定かではない。死傷者が出ているかもしれないが、かまっている暇はない。早く終わらせなければ。

「終わった、撤収だ!」

デスイーターたちに退却を呼びかけ、私はドラコを連れてアパレートできる校門へと急いだ。他はかまわず、校庭を走るうち、後ろからポッターの呪文の声とともに赤い閃光が頭をかすめて行った。

「ドラコ、走れ!」

ドラコを先に追いやって、振りかえるとポッターが杖を構えている。私ももちろんすでに杖を向けていた。

「クルーシ・・」

ポッターが呪文を言い終えぬうちに、吹き飛ばした。少し離れた所で赤い炎が上がった。ハグリッドの小屋だった。

「クルーシ・・」

ポッターがまた投げかける呪文を軽く阻止し、私は叫んだ。

「お前には『許されざる呪文』は使えないのだ!そんな度胸も、能力もない。」

「インカーセ・・」

ポッターが懲りずに呪文を放ってくる。私は軽く腕を動かしてかわした。

「戦え!戦えよ!臆病者!」

ポッターが叫んだ。その言葉は私の怒りに触れた。ポッターの父親も4人がかりで私を追い詰めた挙句に私をそう罵ったものだ。無謀を勇気を取り違えたグリフィンドールが、1人立ち向かう私に。

「臆病者?私をそう呼んだか、ポッター?お前の父親は、4対1でなければ私を攻撃しなかったものだ。そんな父親を何と呼ぶ?」

「ステューピ・・」

また放たれたポッターの呪文を逸らせながら、私は冷やかに言葉を投げた。

「また防がれたな。何度やっても同じことだ、ポッター。お前が口を閉じ、心を閉じることを学ぶまでは。」

ポッターの後ろまでアミカス兄弟たちが迫っていた。私は彼らに向かって叫んだ。

「さあ、行くぞ!もういく時間だ。魔法省が現れぬうちに、、」

「インペディ・・」

ポッターがしつこく呪文を放とうとしたが、言い終える前に、背後から放たれた呪文にポッターが倒れ苦しみ出した。

「やめろ!」

ポッターが受けた呪いを素早く解き、デスイーターたちに叫んだ。

「命令を忘れたのか!ポッターはダークロードのものだ。手出しするな!さあ、行け!」

デスイーターたちは命令に従い校門に向かって走って行ったが、立ち上がったポッターはよろよろと近付いて来た。すでに数歩の距離までに。

「セクタム・・」

呪文をただちに阻止する。この少年は、、私が命がけで守るこの少年は、ほんとうに私を怒らせる。父親と同じことを・・・。頭の中で、何かが切れた。

「レヴィ・・」

「やめるのだ、ポッター!」

叫ぶとともにバーンと音がして、ポッターが地面に叩きつけられ、杖は手を離れ飛んでいた。私は丸腰のポッターの横に立ち、見下ろした。

「私の呪文を私に向けるとは、ポッター、どういう神経だ?私がそれらの呪文を発明したのだ。私が、半純血のプリンスだ!汚らわしいお前の父親と同様、おまえは私がつくった呪文を私に向けるのか?そんなことはさせない。ダメだ!」

ポッターの杖をさらに遠くに飛ばしてやった。

「それなら殺せ。校長先生を殺したように、僕も殺せ。この臆病・・」

ポッターの言葉を遮った。

「私を、、、臆病者と呼ぶな!」

怒りに手を振りおろすと、ポッターが地面に叩きつけられた。そのとき、空から巨大な者が私に襲いかかり、、、バックビークだ、、私は振り払いながら、急ぎ校門に走った。

ポッターは、なぜああなのだ?私が、ここまでやるのに、これからやることに、どれだけ心を押し殺し、どれだけ勇気を振り絞っていることか。もう助けてくれるダンブルドアはいない。何も知らぬまま、一人、最後の楯となる私を臆病者と呼び怒りをぶつけている。私とていつまで、どれだけ助けられるかわからない。身を守る術も学ばず、感情にかられ無謀に立ち向かって勝てる敵ではないのだ。強くなるのだ、賢くなるのだ、ポッター。


校門に着き、私はただちにマルフォイ邸へとアパレートした。マルフォイ邸に入ると、見慣れた居間にうづくまるドラコの肩を、ナルシッサが抱いていた。

「ナルシッサ、ドラコ」

「ああ、セブルス、感謝します。ありがとう。ドラコを助けてくださって・・」

泣き崩れそうなナルシッサにうなづき、ドラコを抱き寄せた。

「大丈夫か?」

「先生、僕は、、。ごめんなさい。やらなければ殺すと言われて。父上も・・・」

私に対する反抗的な態度は消え、私の部屋に来て自分の不甲斐なさを嘆いていた幼い頃の表情が垣間見えた。

「ドラコ。」

気のきいた言葉は浮かばなかったが、苦痛に締め付けられていた胸に、わずかに温もりが戻る。ドラコとルシウスを救うことはできたのだ。と、そのとき、、、


セブルス、よくやった。ダンブルドアを仕留めたのだな?」

部屋の温度が一気に下がった。いつの間にかダークロードが脇に立ち、上機嫌で私をねぎらいながら、肩に手を置いたのだった。

「我が君、ご命令を果たすことができました。」

セブルス、余は満足じゃ。ダンブルドアもおまえに裏切られるとは、さぞ驚愕して死んでいったことであろう。」

「ダンブルドアは最後まで私の忠誠を信じていたことと思います。」

「なにか褒美を与えるぞ。余の期待に見事に答えてくれたことよ、セブルス」

「我が君、このドラコもよくやりました。まだ未熟な子供ですが、ホグワーツへの経路を開き、仲間を引き入れるのに成功しました。そのおかげで私は労なくダンブルドアを倒すことができたのです。ドラコの成果もどうぞご配慮ください。」

「よかろう、セブルス。おまえがそう言うなら。ルシウスをアズカバンから出してやることにしよう。それでよいな?」

「ありがとうございます。我が君、感謝いたします。」

私はこの先、ずっとここ、ダークロードの元にいるのだ。任務を終えて、ダンブルドアに報告しに戻ることは、もうない。心がキリキリと痛んだ。宙に浮き、白い髪とひげが風に揺らぎ、落下してゆく。半月メガネの奥の、輝きを失った瞳。この悪夢は生涯消えることはないだろう。それでも、、、ダンブルドアの無茶な指示と願いの1つを成し遂げた。次はホグワーツを守ることだ。私は無理やり先のことを考えるよう努めた。起こった事実に目を向けることは、まだできなかった。

ナルシッサとドラコに見送られてマルフォイ邸を後にし、スピナーズエンドの自宅に戻った。荒んだ心にふさわしい家だった。魔法省や騎士団から捜索されるおそれがあるので、以前から準備していた地下の隠し部屋に潜った。書斎の本棚の後ろにある仕掛けから入る狭い地下室だが、小さなソファとベッドとバスルームがあり、マグルの街に出る隠し出口もある。食料も蓄えておいた。ダークロードが復活し、マルフォイ邸から戻った後にまさかに備えて準備しておいたのだが、こんな形で役立つとは思わなかった。

倒れるようにソファに沈み込み、手に顔を埋めた。いつのまにかうめき声が上がり、それは嗚咽にかわった。顔を上げても、もう導いてくれる人はいないとわかっていた。

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tag : セブルス ダンブルドア ハリーポッター ポッター ダークロード

セブルス・スネイプと謎のプリンス(19)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

6月に入り、私はいよいよその時が迫っていると感じていた。ダンブルドアは衰弱が著しく、弱った体で外出しては、げっそりして戻ってきた。ダンブルドアの時間が許す限り、戻るたびに私は校長室に出向き、薬を処方し衰えた手足を労わりながら、留守中の学内の様子や、ドラコやポッターの動向、デスイーター集会の話などを報告していた。ダンブルドアはたいてい黙って聞いているだけだったが、ある日私に話しかけてきた。

セブルス、おまえがいてくれて、ほんとうに幸運じゃった。あとを託し、楽に送ってもらえるのじゃからの。感謝しておる。」

「アルバス、あなたのおかげで、私はアズカバン行きを免れ、贖罪の道を歩むことができたのです。罪を犯した私を信じてくださり、感謝しています。このように見送ることになるとは・・・」

私は未練がましく、呪いで黒く焼け焦げた右手を、両手のひらで包み込み口づけした。呪いをこの身に吸い取ることができぬものかと。ダンブルドアは私の顔を上げさせると、左手を、闇の印が刻まれた私の左腕に置いた。

「おまえさんの罪は許されるじゃろう。厳しい道じゃったが、懸命に歩んできたのを知っておる。皆あれこれ言っておったが、わしはおまえを疑ったことはない。これからのことも含め、100%信頼しておる。」

「なぜ私のことをそのように信じてくださったのですか?いつでも裏切れる立場にいましたのに。」

ダンブルドアはしばらく私を見て、昔を思い出しているようだった。

「わしも過ちを犯し闇に傾倒したことがある。その結果ひどいことが起こっての、深く悔いたがどうにもならなんだ。遠い昔のことじゃが。」

「あなたのような偉大な魔法使いが闇に傾倒したことがあるのですか?」

「そうじゃ。若い頃の過ちじゃ。思い通りにならんことがあっての、そのことから逃れるように、ブロンドに惑わされてしまったのじゃ。」

「ブロンドに惑わされたというと?」

「おまえさんも覚えがあろう?ブロンドに心を奪われて、大事なことを見失ったのじゃ。ブロンドをなびかせて力を説く姿が魅力的での。おまえさんのはプラチナブロンドじゃが。」

「ルシウスのことですか?」

「おまえさんがそう言うならそうなのじゃろう。もっともルシウスは、、こう言っては怒るかの?スケールの大きな悪ではない、自分勝手というやつじゃ。今頃は家族を思って必死じゃろう。」

「怒りはしません、その通りです。」

「わかっておったか。わしのブロンドはスケールが大きくての、ヴォルデモート卿にも匹敵する闇じゃった。それが語る世界にわしは魅了されてしまったのじゃ。その結果、大切な者を失った。守るべき弱い命が失われたのじゃ。わしはしばらくその事実に目を向けることができなんだ。しかしそれからは、闇の台頭を抑えることに生涯をかけ、そして力に弱いことを自覚して、権力に近づくまいと教育者として生涯を送ったのじゃ。」

「あなたは素晴らしい教育者です。」

「そういってもらえるとありがたいの、セブルス。おまえさんの自責の念は、わしにはなじみのあるものじゃったというわけじゃ。だからわしはおまえさんが闇に戻ることは決してないと確信しておる」

「そうでしたか。」

「ところが、じゃ、セブルス、時として人は落とし穴に堕ちることがある。わしは過去を深く悔い、二度と過ちなど犯さぬと過信しておった。しかし、100年以上の時が過ぎて、このざまじゃ。」

ダンブルドアは呪いに蝕まれた右手に目をやった。

「呪いとか秘宝とか言われる物には、過去の悔いや悲しみやに、たくみにつけ込み惑わす力があるのじゃ。なぜこんな話をするのかと思っておるじゃろう?セブルス、おまえさんは今までも命を危険に曝し、この先もそうじゃろう。そして、ある物のために命の危険が格段に増すと懸念しておるのじゃが、、、わしはそれを教えてやることができぬ。」

「私が再び過ちを犯すおそれがあるということでしょうか?」

「そうじゃの、わしと同じ程度にということじゃが。おまえさんは深い悲しみと悔いを経験しておるからの、それを償うためならなんでもするというその思いの深さがつけこまれるのではないかと心配なのじゃ。おまえさんがそれを知ることは、おまえさんにとっても、わしたちの計画にとっても、危険を生じることになる。計画を狂わしかねぬ危険はわずかでも冒せぬのじゃ。」

「知らぬことも、知ることも危険なのですね?知らぬことによる危険が私の命だけなのでしたら、知らなくてよいですから心配には及びません。命の危険はもとより承知のうえです。」

セブルス、しかしやっかいなことに、わしはおまえさんの命を実に心配しておるのじゃ。生き延びてほしいのじゃ。贖罪を果たし、戦いが終わった世で、自分の人生を歩んでほしいと思っておる。おしえてやれんのはすまんがの、おまえさんは優秀な魔法薬学と闇の魔術に対する防衛術の教師じゃ。ヴォルデモート卿のこともよく知っておる。身を守る術は備えておると思うのじゃが。しかし戦いを生き延びる意思がないのではないかと心配なのじゃ。贖罪が果たせるなら死んでもかまわんと思っておるじゃろう?あるいは、リリーの息子が命を投げ出すなら、自分も生きて帰ってはならぬとでも思っておるのではないか?」

「・・・」

実際私は、戦い後に生きる自分を想像したことがなかった。リリーの遺志を継ぎ、ダークロードからその息子を守ることが生きる理由だったのだから。

「この戦いは命を守るためのものなのじゃ、セブルス。命を守り、家族が寄り添って幸せに生きるための戦いなのじゃから、お前自身の命もたいせつにしなければならぬ。ヴォルデモート卿から命を狙われるのは、お前の裏切りが知れるときだけではないと心得るのじゃ。知っておるだろうが、忠実な配下であろうと、必要ならば容赦なく命を奪うのがヴォルデモート卿じゃ。よいか?片時も油断するでないぞ。そして最後の時を見極めたら、あとはハリーに託し、身の安全を図るのじゃ。」

「私の、身の安全?しかしあの子の命を守るわずかな可能性でもあるのなら、ダークロードを見張っていなければ、、」

ハリーを信じるのじゃ、セブルス。ハリーに為すべきことを伝えたら、味方に戻るなり、身を隠すなりするのじゃ。あとのことはハリーとヴォルデモート卿しだいじゃが、わしは必ずヴォルデモート卿を倒せると信じておる。これは年寄りの最後の願いじゃ、セブルス、命がけの任務じゃが、自分の身を守ることを放棄してはならん。最後の時が近付くにつれ、危険は高まるはずじゃ。」

ダンブルドアはそう言うと、私の肩を抱き寄せた。

「セブルス、約束してくれんかの?戦いを生き延びる努力をすると。生き延びる力は持っているはずじゃ。」

「・・・わかりました、アルバス」

「今日のこの話を忘れるでないぞ、セブルス」

私たちはどちらも、これが最後なのだとわかっていた。次に会う時は、私がダンブルドアに対し、死の呪文を放つことになるのだ。

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tag : セブルス ダンブルドア ハリー ハリーポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(18)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ダンブルドアから、からかい混じりに、結局あの子に情が移ったのかとあらためて聞かれた時は、即座に否定したものの、ポッターについて今までとは異なる思いを抱いたのはたしかだった。私は初めて、憎らしい父親の再来でもなく、リリーが命をかけて守った遺児でもない、まもなく17歳の成人を迎える一人の少年の人生を考えてみたのだった。

幼くして両親を亡くし、叔母のマグル一家で育てられた。リリーの魔力を羨み魔法を嫌っていたペチュニアとその家族が、魔法使いの子供を快く思うはずがない。うとんじられ、いじめられ、見捨てられて育った少年は、期待に胸を膨らませてホグワーツに向かったことだろう。気にかけ見守ってくれる友達や先生、温かい食事、清潔なベッド。私と同様、あの子もホグワーツで初めて温もりのある家を見つけたのだろうか?

友を得て、「生きのびた子」の試練をなんとか乗り越えながら、6年生になった。6年生といえば、卒業後の進路を考えたり恋に焦がれたり、様々な悩みを抱えながら将来への夢を膨らませる時期だ。私自身も、この年の夏休みに、思いがけずルシウスに抱かれて舞い上がっていたものだ。

ポッターはまもなく、その全てに背を向けて、一人、ダークロードの前に命を投げ出さねばならぬことを知る。

今はまだ、ダンブルドアの庇護のもと、ダンブルドアを信じ、その指導に従ってホークラックスを破壊することがダークロードを倒して生き残る道だと思っているだろう。だが、ほどなく頼りのダンブルドアは死に、孤独な戦いの末に、最後の真実を知る。生きて戻る道はないのだと。それでも、ダンブルドアの見込み通り育っているのであれば、全てを終わらせ、友達や仲間たちを救うために、自らその道を進むしかない。

私の犯した過ちにより、罪もない赤子の時から、ポッターはその選択を突きつけられることが決まっていたのだった。

私はまもなくダンブルドアを手にかけて、仲間に背を向け一人闇陣営に下る。恐ろしく孤独で、心を許せる場所もない、恐怖と背中合わせの日々となるだろうが、勇気を振り絞ってその道を進まねばならない。そして、リリーを死なせ、ダンブルドアを手にかけ、ポッターを死に導く以上、生きて戻る道はないと思わねばならない。しかし、ダンブルドアに託された使命を果たし、ポッターに最後の道を示すまでは、空しく死ぬわけにはいかぬ。叶うなら、ダークロードの最期を見届けて逝ければよいのだが。予想のつかぬ事態でポッターが生き延びられれば言うことはない。

「リリー」

私は再び、夜ごと、リリーに話しかけるようになった。リリーの息子にこのような運命を与えてしまったことを詫び、力を尽くすことを誓い、最後の瞬間に奇跡をもたらす守りを請い願った。幾夜もそう語りかけるうち、気づいたことがある。リリーが息子にかけた愛の守りはポッターの成人とともに終わるのだが、リリーが守りをかけたポッターの血が、ダークロードの体に流れているのだ。その血はポッターの命を奪うことを許すだろうか?私が守り抜けば、最後の瞬間、再びリリーが息子を守ってくれるのではないか。予想というより、祈りだった。


私の思いに変化はあったが、ポッターは相変わらずだった。授業に遅刻したうえ、幽霊と亡者の違いを言わせると、幽霊は透き通っていると答えて落胆させてくれた。5歳の子供のような答えに、6年間の教育がまったく無駄だったと思わざるをえない。ほんとうにダンブルドアの見込み通り育っているのだろうか?ポッターに必要なのは、魔力よりも、ダークロードの闇に侵されぬ勇気と愛の力だとは思うが、ダンブルドアの庇護を失い、自力で使命を果たせるのかと考えると頭痛がしてくる。

私はとりあえずポッターの先行きを心配することは放棄し、私の任務であるもう1人の心配の種、ドラコに注意を向けることにした。ドラコは追い詰められて、見る影もなくやつれていた。ダークロードはドラコの計略がうまく進まないことにいら立ち、私に催促するような態度を示している。ドラコに対してもかなりの脅しをかけているはずだ。

ドラコはどうにかしてデスイーターがホグワーツに侵入できる経路を開こうとしているのだが、なかなかうまく進まないのだった。苦しむ姿を見るのは忍びなかったが、この期に及んでは、ダークロードからドラコとマルフォイ一家を守る口実になる程度の手柄を立てさせなければならない。やきもきしながら、ドラコと他の生徒に危険が及ばぬよう、見守るしかなかった。

そうこうするうち、夏の日差しが感じられる季節になった。事態は進展せず、時間ばかりが過ぎてゆく。ダンブルドアの残りの時間を思うと、胸が締め付けられる思いだった。それでも、ドラコの首飾りで重傷を負い、聖マンゴに入院していたケイティ・ベルが退院し、元気に戻ってきた。ドラコの魂は損なわれずに済むのだと、少しばかりほっとした。

が、まもなく、私をまたも失望させる出来事が起こった。「人殺し!トイレで人殺し!」叫んで回る嘆きのマートルの声に驚いて駆け付けると、水浸しのトイレでドラコが体中から血を流して倒れ、そばにポッターが立っていたのだった。一目見て、セクタムセンブラ(切り裂け)の呪文が使われたことがわかった。

ポッターを脇に押しやり、急ぎドラコの傷を癒す。ひどい傷だったが、セクタムセンブラは私がつくった呪文だから、治癒呪文もお手の物なのは幸いだった。とりあえず深い傷を塞ぎ、よろめくドラコを支えて医務室に連れていった。途中、ドラコには何度も、私が守るからあまり思い詰めるな、ドラコの魂は人を殺せるほど損なわれてはいないのだと言い聞かせた。ドラコの心に届いたかどうかはわからない。

あとの処置をポピーに頼み、急いでトイレに戻ると、ポッターは大人しく待っていた。血と水でびしょぬれになりながら、それを拭ったあともなく、私を見るなり言い訳を始めた。

「こんなことをするつもりはありませんでした。あの呪文がどういうものなのか、知らなかったんです。」

私の古い魔法薬の教科書を見て、知りもしない呪文を弄んだのは確かだった。書き込みをした教科書で、ポッターが少しでも勉強に励む気をおこせばなどと思っていた私が甘かったのだ。それに、心のどこかで、やがて死に向かう少年に、私のことを知ってほしいと望む気持ちも芽生えていた。リリーを想い、勉強や研究に心血を注いでいた学生の頃の私が宿るあの古い教科書を携えることで。後に道を誤り母親を死に至らしめてしまったが、そんなことになるとは夢にも思わず過ごしていた当時の私の姿を。

それでポッターが教科書を持つままにしておいたのだが、明らかな誤りだった。ポッターは結局、私がつくった闇の呪文を使い、人を攻撃するような子だったのだ。まったく父親と同じだった。反省させ、教科書を取り上げねばならない。

「私は君を見くびっていたようだ、ポッター。君があのような闇の呪文を知っていようと誰が思う?あの呪文はだれに習ったのだ?」

しかしポッターは図書館の本だのなんだのと嘘をついた。教科書の入ったカバンを取りにやらせたが、魔法薬の教科書は違うものを持ってきた。リリーが命をかけて守り、ダンブルドアが精魂込めて育てた子供は、父親と同様、人を傷つけても、反省もせず嘘をついてごまかす少年に育っていたのだった。

ポッターの使命がどんなものであろうと、今日の行いは厳罰に値する。私はポッターに、毎週土曜の朝研究室に来るよう命じた。クィディッチの試合の日もだ。土曜日の朝、時間通りにポッターが研究室にやってきた。私は罰則として、ホグワーツの生徒たちの古い悪行と罰則の記録を整理させた。ポッターの父親やブラックの悪行も含まれている。

「死してなお、偉業の記録を残す」

嫌みたっぷりに言ってやった。あの教科書に当時の私が宿るように、罰則の記録には当時の父親やブラックの行いが残されている。その2人は今は亡く、おそらくは私もポッターも遠くない将来死んでゆくのだろうが、その前にわずかでも当時の真実を知ればよいのだ。あるいは、憎悪にかられながらも引きつけられてやまなかったその姿を、残り少ない日々に、ただ見ておきたいだけかもしれない。

複雑な私の心も、待ち受ける使命も知らぬまま、ポッターは私が与えたつまらない作業に取り組んでいた。少なくとも、取り組むふりをしていた。思えば、ポッターはブラックやルーピンから父親の話をきくことはできただろうが、母親の人となりを知ることはできたのだろうか?リリーがどんなに強く美しい心を持っていたか、最後の使命に踏み出す前に知るべきではないだろうか?私の口から話してやることはできないが、せめてリリーがくれた守護霊を、いつか見せてやりたいものだ。

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