スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セブルス・スネイプと謎のプリンス(19)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

6月に入り、私はいよいよその時が迫っていると感じていた。ダンブルドアは衰弱が著しく、弱った体で外出しては、げっそりして戻ってきた。ダンブルドアの時間が許す限り、戻るたびに私は校長室に出向き、薬を処方し衰えた手足を労わりながら、留守中の学内の様子や、ドラコやポッターの動向、デスイーター集会の話などを報告していた。ダンブルドアはたいてい黙って聞いているだけだったが、ある日私に話しかけてきた。

セブルス、おまえがいてくれて、ほんとうに幸運じゃった。あとを託し、楽に送ってもらえるのじゃからの。感謝しておる。」

「アルバス、あなたのおかげで、私はアズカバン行きを免れ、贖罪の道を歩むことができたのです。罪を犯した私を信じてくださり、感謝しています。このように見送ることになるとは・・・」

私は未練がましく、呪いで黒く焼け焦げた右手を、両手のひらで包み込み口づけした。呪いをこの身に吸い取ることができぬものかと。ダンブルドアは私の顔を上げさせると、左手を、闇の印が刻まれた私の左腕に置いた。

「おまえさんの罪は許されるじゃろう。厳しい道じゃったが、懸命に歩んできたのを知っておる。皆あれこれ言っておったが、わしはおまえを疑ったことはない。これからのことも含め、100%信頼しておる。」

「なぜ私のことをそのように信じてくださったのですか?いつでも裏切れる立場にいましたのに。」

ダンブルドアはしばらく私を見て、昔を思い出しているようだった。

「わしも過ちを犯し闇に傾倒したことがある。その結果ひどいことが起こっての、深く悔いたがどうにもならなんだ。遠い昔のことじゃが。」

「あなたのような偉大な魔法使いが闇に傾倒したことがあるのですか?」

「そうじゃ。若い頃の過ちじゃ。思い通りにならんことがあっての、そのことから逃れるように、ブロンドに惑わされてしまったのじゃ。」

「ブロンドに惑わされたというと?」

「おまえさんも覚えがあろう?ブロンドに心を奪われて、大事なことを見失ったのじゃ。ブロンドをなびかせて力を説く姿が魅力的での。おまえさんのはプラチナブロンドじゃが。」

「ルシウスのことですか?」

「おまえさんがそう言うならそうなのじゃろう。もっともルシウスは、、こう言っては怒るかの?スケールの大きな悪ではない、自分勝手というやつじゃ。今頃は家族を思って必死じゃろう。」

「怒りはしません、その通りです。」

「わかっておったか。わしのブロンドはスケールが大きくての、ヴォルデモート卿にも匹敵する闇じゃった。それが語る世界にわしは魅了されてしまったのじゃ。その結果、大切な者を失った。守るべき弱い命が失われたのじゃ。わしはしばらくその事実に目を向けることができなんだ。しかしそれからは、闇の台頭を抑えることに生涯をかけ、そして力に弱いことを自覚して、権力に近づくまいと教育者として生涯を送ったのじゃ。」

「あなたは素晴らしい教育者です。」

「そういってもらえるとありがたいの、セブルス。おまえさんの自責の念は、わしにはなじみのあるものじゃったというわけじゃ。だからわしはおまえさんが闇に戻ることは決してないと確信しておる」

「そうでしたか。」

「ところが、じゃ、セブルス、時として人は落とし穴に堕ちることがある。わしは過去を深く悔い、二度と過ちなど犯さぬと過信しておった。しかし、100年以上の時が過ぎて、このざまじゃ。」

ダンブルドアは呪いに蝕まれた右手に目をやった。

「呪いとか秘宝とか言われる物には、過去の悔いや悲しみやに、たくみにつけ込み惑わす力があるのじゃ。なぜこんな話をするのかと思っておるじゃろう?セブルス、おまえさんは今までも命を危険に曝し、この先もそうじゃろう。そして、ある物のために命の危険が格段に増すと懸念しておるのじゃが、、、わしはそれを教えてやることができぬ。」

「私が再び過ちを犯すおそれがあるということでしょうか?」

「そうじゃの、わしと同じ程度にということじゃが。おまえさんは深い悲しみと悔いを経験しておるからの、それを償うためならなんでもするというその思いの深さがつけこまれるのではないかと心配なのじゃ。おまえさんがそれを知ることは、おまえさんにとっても、わしたちの計画にとっても、危険を生じることになる。計画を狂わしかねぬ危険はわずかでも冒せぬのじゃ。」

「知らぬことも、知ることも危険なのですね?知らぬことによる危険が私の命だけなのでしたら、知らなくてよいですから心配には及びません。命の危険はもとより承知のうえです。」

セブルス、しかしやっかいなことに、わしはおまえさんの命を実に心配しておるのじゃ。生き延びてほしいのじゃ。贖罪を果たし、戦いが終わった世で、自分の人生を歩んでほしいと思っておる。おしえてやれんのはすまんがの、おまえさんは優秀な魔法薬学と闇の魔術に対する防衛術の教師じゃ。ヴォルデモート卿のこともよく知っておる。身を守る術は備えておると思うのじゃが。しかし戦いを生き延びる意思がないのではないかと心配なのじゃ。贖罪が果たせるなら死んでもかまわんと思っておるじゃろう?あるいは、リリーの息子が命を投げ出すなら、自分も生きて帰ってはならぬとでも思っておるのではないか?」

「・・・」

実際私は、戦い後に生きる自分を想像したことがなかった。リリーの遺志を継ぎ、ダークロードからその息子を守ることが生きる理由だったのだから。

「この戦いは命を守るためのものなのじゃ、セブルス。命を守り、家族が寄り添って幸せに生きるための戦いなのじゃから、お前自身の命もたいせつにしなければならぬ。ヴォルデモート卿から命を狙われるのは、お前の裏切りが知れるときだけではないと心得るのじゃ。知っておるだろうが、忠実な配下であろうと、必要ならば容赦なく命を奪うのがヴォルデモート卿じゃ。よいか?片時も油断するでないぞ。そして最後の時を見極めたら、あとはハリーに託し、身の安全を図るのじゃ。」

「私の、身の安全?しかしあの子の命を守るわずかな可能性でもあるのなら、ダークロードを見張っていなければ、、」

ハリーを信じるのじゃ、セブルス。ハリーに為すべきことを伝えたら、味方に戻るなり、身を隠すなりするのじゃ。あとのことはハリーとヴォルデモート卿しだいじゃが、わしは必ずヴォルデモート卿を倒せると信じておる。これは年寄りの最後の願いじゃ、セブルス、命がけの任務じゃが、自分の身を守ることを放棄してはならん。最後の時が近付くにつれ、危険は高まるはずじゃ。」

ダンブルドアはそう言うと、私の肩を抱き寄せた。

「セブルス、約束してくれんかの?戦いを生き延びる努力をすると。生き延びる力は持っているはずじゃ。」

「・・・わかりました、アルバス」

「今日のこの話を忘れるでないぞ、セブルス」

私たちはどちらも、これが最後なのだとわかっていた。次に会う時は、私がダンブルドアに対し、死の呪文を放つことになるのだ。

スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ダンブルドア ハリー ハリーポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(18)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ダンブルドアから、からかい混じりに、結局あの子に情が移ったのかとあらためて聞かれた時は、即座に否定したものの、ポッターについて今までとは異なる思いを抱いたのはたしかだった。私は初めて、憎らしい父親の再来でもなく、リリーが命をかけて守った遺児でもない、まもなく17歳の成人を迎える一人の少年の人生を考えてみたのだった。

幼くして両親を亡くし、叔母のマグル一家で育てられた。リリーの魔力を羨み魔法を嫌っていたペチュニアとその家族が、魔法使いの子供を快く思うはずがない。うとんじられ、いじめられ、見捨てられて育った少年は、期待に胸を膨らませてホグワーツに向かったことだろう。気にかけ見守ってくれる友達や先生、温かい食事、清潔なベッド。私と同様、あの子もホグワーツで初めて温もりのある家を見つけたのだろうか?

友を得て、「生きのびた子」の試練をなんとか乗り越えながら、6年生になった。6年生といえば、卒業後の進路を考えたり恋に焦がれたり、様々な悩みを抱えながら将来への夢を膨らませる時期だ。私自身も、この年の夏休みに、思いがけずルシウスに抱かれて舞い上がっていたものだ。

ポッターはまもなく、その全てに背を向けて、一人、ダークロードの前に命を投げ出さねばならぬことを知る。

今はまだ、ダンブルドアの庇護のもと、ダンブルドアを信じ、その指導に従ってホークラックスを破壊することがダークロードを倒して生き残る道だと思っているだろう。だが、ほどなく頼りのダンブルドアは死に、孤独な戦いの末に、最後の真実を知る。生きて戻る道はないのだと。それでも、ダンブルドアの見込み通り育っているのであれば、全てを終わらせ、友達や仲間たちを救うために、自らその道を進むしかない。

私の犯した過ちにより、罪もない赤子の時から、ポッターはその選択を突きつけられることが決まっていたのだった。

私はまもなくダンブルドアを手にかけて、仲間に背を向け一人闇陣営に下る。恐ろしく孤独で、心を許せる場所もない、恐怖と背中合わせの日々となるだろうが、勇気を振り絞ってその道を進まねばならない。そして、リリーを死なせ、ダンブルドアを手にかけ、ポッターを死に導く以上、生きて戻る道はないと思わねばならない。しかし、ダンブルドアに託された使命を果たし、ポッターに最後の道を示すまでは、空しく死ぬわけにはいかぬ。叶うなら、ダークロードの最期を見届けて逝ければよいのだが。予想のつかぬ事態でポッターが生き延びられれば言うことはない。

「リリー」

私は再び、夜ごと、リリーに話しかけるようになった。リリーの息子にこのような運命を与えてしまったことを詫び、力を尽くすことを誓い、最後の瞬間に奇跡をもたらす守りを請い願った。幾夜もそう語りかけるうち、気づいたことがある。リリーが息子にかけた愛の守りはポッターの成人とともに終わるのだが、リリーが守りをかけたポッターの血が、ダークロードの体に流れているのだ。その血はポッターの命を奪うことを許すだろうか?私が守り抜けば、最後の瞬間、再びリリーが息子を守ってくれるのではないか。予想というより、祈りだった。


私の思いに変化はあったが、ポッターは相変わらずだった。授業に遅刻したうえ、幽霊と亡者の違いを言わせると、幽霊は透き通っていると答えて落胆させてくれた。5歳の子供のような答えに、6年間の教育がまったく無駄だったと思わざるをえない。ほんとうにダンブルドアの見込み通り育っているのだろうか?ポッターに必要なのは、魔力よりも、ダークロードの闇に侵されぬ勇気と愛の力だとは思うが、ダンブルドアの庇護を失い、自力で使命を果たせるのかと考えると頭痛がしてくる。

私はとりあえずポッターの先行きを心配することは放棄し、私の任務であるもう1人の心配の種、ドラコに注意を向けることにした。ドラコは追い詰められて、見る影もなくやつれていた。ダークロードはドラコの計略がうまく進まないことにいら立ち、私に催促するような態度を示している。ドラコに対してもかなりの脅しをかけているはずだ。

ドラコはどうにかしてデスイーターがホグワーツに侵入できる経路を開こうとしているのだが、なかなかうまく進まないのだった。苦しむ姿を見るのは忍びなかったが、この期に及んでは、ダークロードからドラコとマルフォイ一家を守る口実になる程度の手柄を立てさせなければならない。やきもきしながら、ドラコと他の生徒に危険が及ばぬよう、見守るしかなかった。

そうこうするうち、夏の日差しが感じられる季節になった。事態は進展せず、時間ばかりが過ぎてゆく。ダンブルドアの残りの時間を思うと、胸が締め付けられる思いだった。それでも、ドラコの首飾りで重傷を負い、聖マンゴに入院していたケイティ・ベルが退院し、元気に戻ってきた。ドラコの魂は損なわれずに済むのだと、少しばかりほっとした。

が、まもなく、私をまたも失望させる出来事が起こった。「人殺し!トイレで人殺し!」叫んで回る嘆きのマートルの声に驚いて駆け付けると、水浸しのトイレでドラコが体中から血を流して倒れ、そばにポッターが立っていたのだった。一目見て、セクタムセンブラ(切り裂け)の呪文が使われたことがわかった。

ポッターを脇に押しやり、急ぎドラコの傷を癒す。ひどい傷だったが、セクタムセンブラは私がつくった呪文だから、治癒呪文もお手の物なのは幸いだった。とりあえず深い傷を塞ぎ、よろめくドラコを支えて医務室に連れていった。途中、ドラコには何度も、私が守るからあまり思い詰めるな、ドラコの魂は人を殺せるほど損なわれてはいないのだと言い聞かせた。ドラコの心に届いたかどうかはわからない。

あとの処置をポピーに頼み、急いでトイレに戻ると、ポッターは大人しく待っていた。血と水でびしょぬれになりながら、それを拭ったあともなく、私を見るなり言い訳を始めた。

「こんなことをするつもりはありませんでした。あの呪文がどういうものなのか、知らなかったんです。」

私の古い魔法薬の教科書を見て、知りもしない呪文を弄んだのは確かだった。書き込みをした教科書で、ポッターが少しでも勉強に励む気をおこせばなどと思っていた私が甘かったのだ。それに、心のどこかで、やがて死に向かう少年に、私のことを知ってほしいと望む気持ちも芽生えていた。リリーを想い、勉強や研究に心血を注いでいた学生の頃の私が宿るあの古い教科書を携えることで。後に道を誤り母親を死に至らしめてしまったが、そんなことになるとは夢にも思わず過ごしていた当時の私の姿を。

それでポッターが教科書を持つままにしておいたのだが、明らかな誤りだった。ポッターは結局、私がつくった闇の呪文を使い、人を攻撃するような子だったのだ。まったく父親と同じだった。反省させ、教科書を取り上げねばならない。

「私は君を見くびっていたようだ、ポッター。君があのような闇の呪文を知っていようと誰が思う?あの呪文はだれに習ったのだ?」

しかしポッターは図書館の本だのなんだのと嘘をついた。教科書の入ったカバンを取りにやらせたが、魔法薬の教科書は違うものを持ってきた。リリーが命をかけて守り、ダンブルドアが精魂込めて育てた子供は、父親と同様、人を傷つけても、反省もせず嘘をついてごまかす少年に育っていたのだった。

ポッターの使命がどんなものであろうと、今日の行いは厳罰に値する。私はポッターに、毎週土曜の朝研究室に来るよう命じた。クィディッチの試合の日もだ。土曜日の朝、時間通りにポッターが研究室にやってきた。私は罰則として、ホグワーツの生徒たちの古い悪行と罰則の記録を整理させた。ポッターの父親やブラックの悪行も含まれている。

「死してなお、偉業の記録を残す」

嫌みたっぷりに言ってやった。あの教科書に当時の私が宿るように、罰則の記録には当時の父親やブラックの行いが残されている。その2人は今は亡く、おそらくは私もポッターも遠くない将来死んでゆくのだろうが、その前にわずかでも当時の真実を知ればよいのだ。あるいは、憎悪にかられながらも引きつけられてやまなかったその姿を、残り少ない日々に、ただ見ておきたいだけかもしれない。

複雑な私の心も、待ち受ける使命も知らぬまま、ポッターは私が与えたつまらない作業に取り組んでいた。少なくとも、取り組むふりをしていた。思えば、ポッターはブラックやルーピンから父親の話をきくことはできただろうが、母親の人となりを知ることはできたのだろうか?リリーがどんなに強く美しい心を持っていたか、最後の使命に踏み出す前に知るべきではないだろうか?私の口から話してやることはできないが、せめてリリーがくれた守護霊を、いつか見せてやりたいものだ。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ダンブルドア ハリー ポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(17)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ポッターは、ホグワーツ入学以来、私にとって複雑で気に食わぬ存在だった。大ホールで、教室で、その他校内のどの場所であっても、リリーの名残を求めるように引きつけられてしまうのに、求めた先にいるのは憎んでも余りある父親そっくりのポッターなのだった。そして言うこともやることも、父親同様、傲慢で英雄気取りときている。湧きあがる憎しみや怒りをそのままぶつけられるのは、私のスパイとしての任務上、好都合ではあった。しかし、それでも、ポッターの中にあるリリーリリーと同じ緑の瞳を見ることには、畏れに似た感情を持っていた。それは、喜び、悲しみ、罪悪感、私が押し隠すことに慣れた様々な感情を引き出し、私をひどく無防備な弱い存在に感じさせ、ますますイラつかせるのだ。

ダンブルドアからポッターの為すべき役割を聞かされて以来、その緑の瞳が永遠に失われるのだという思いが加わった。しかもポッターの中には、ダークロードの魂の欠片まで生きているという。ダークロードを完全に倒すには、その魂の欠片とともに、憎らしきポッターとリリーの名残まで消え去らねばならないのだ。結局思考はそこに行きつき、私は再び脱力感に襲われた。

授業が終わった夕刻、ダンブルドアから、夜校長室に、魔法薬を持って来るようにと伝言があった。衰弱が現れたダンブルドアを思い、呪いの苦痛を和らげ滋養によい魔法薬を煎じて、校長室を訪れた。

ダンブルドアはソファに倒れこむように座っていたが、私を向かいに座らせ、ホットチョコレートのカップを呼び寄せて勧めた。

セブルス、おまえもずいぶんと疲れているようじゃの。これを飲むのじゃ。わしも薬をいただくとしよう。」

私はおそろしく甘いホットチョコレートを口に運んだ。

「今朝リーマスが来たのじゃが、人使いが荒いと責められてしまった。優しいリーマスが珍しいことじゃ。おまえさんにはやさしいということじゃが。」

私は目をそむけて、ホットチョコレートをすすっていた。

セブルス、あれからずいぶん日が過ぎたが、まだ、わしに利用されたと怒っておるのかの?ハリーに伝えるべきことは納得してくれたじゃろうな?」

正直なところ、衝撃に打ちのめされて、まだそれを自分の任務として考えてはいなかった。

「私は断ってもよいのですか?」

「おまえさんの他にできる者はおらぬ、セブルス。なにしろ、わしの死を知っておるのはおまえさんだけなのじゃからの。しかも、それは最後の決着をつけるために避けられぬことなのじゃ。」

「アルバス、私は過ちにより、リリーを死に至らしめてしまいました。死にたいと思いましたが、あなたの言葉に従い、リリーの遺志を継ぐためにリリーの息子の命を守って来ました。罪を償うため、命をかけて守ってきたつもりです。だがあなたは、、、ご自身を私の手にかけて殺せと言い、今度は、守ってきた息子に命を差し出せと伝えろとおっしゃる。贖罪など、、、ハナからできぬことだったのです。私は何のために生きながらえたのか、やはりあの時死ぬべきだったと思うばかりです。」

私は冷静に話し始めたつもりだった。なにしろ、ダンブルドアが私の言うことに耳を傾けてくれることなど、めったにないのだから。しかし、話すうちに悲しみと空しさがつのり、言葉の震えを抑えることはできなかった。十数年が過ぎても、リリーの死を知り、ダンブルドアの前で打ちひしがれたときから、一歩も動いていないように感じられた。

セブルス、さよう、おまえさんにはあの時死ぬ選択もあった。死んでも誰のためにもならなかったがの。じゃが贖罪に生きる道を選んだのじゃ。おまえさんが懸命にハリーの命を守ってきたことは、わしがよく知っておる。特にヴォルデモート卿が復活を遂げてからは、ヴォルデモート卿のもとに参じ、身を楯にしてハリーの命を守ってきた。リリー・ポッターが赤子のハリーの前に身を投げ出して守ったようにじゃ。」

「しかし、、、しかしそれも何の役にもたちませんでした。結局あの子は、、死ななければならない。」

ハリーは死ななければならぬわけではない、セブルス。それはハリーが決めることじゃ。リリーにも選択肢はあった。他ならぬおまえさんがヴォルデモート卿に母親の命を奪わぬよう頼んだであろう?じゃが、リリーは身を投げ出してハリーを守ることを選んだのじゃ。おまえさんも同じじゃ。ヴォルデモート卿が復活した時、イゴールのように逃げることもできた。じゃがおまえは残り、身を投げ出して守ることを選んだのじゃ。

あの子も同じなのじゃ。ハリーがわしの見込み通り、その身をヴォルデモート卿の前に投げ出して、仲間や皆を守ることを選ぶなら、それはまさに母親やおまえさんと同じ道を選ぶ、勇敢で愛を知る子に育ったということじゃ。わしたちがそのように守り育てたのじゃ。セブルス、それでも贖罪を果たせたと思えんかの?」

「しかし、リリーは、、、リリーは息子の死を望んでいませんでした。命を守りたかったのです。その死をどんなに嘆くでしょう、、リリーほどの年にもなっていないというのに。」

私は涙を止めることができなかった。ダンブルドアはそんな私をしばらく眺め、やがて静かに話し始めた。

「セブルス、過去や死んだ者ばかりに囚われるではない。今生きている者のことも考えるのじゃ。ハリーがその道を選ばなかったとしても、ヴォルデモート卿はハリーを狙い続けるじゃろう。そしてその間に多くの者が死に、多くの者が家族や友を失う。決着をつけられるのは、ハリーだけなのじゃ。」

「あの子でなければいけないのですね、、、私が予言を伝えてしまったばかりに。」

ダンブルドアはため息をついた。

「セブルス、これはわしの推測に過ぎんのじゃが、、誰にも言うつもりはなかったのじゃが、」

私が顔を上げると、ダンブルドアはまだ迷っているような顔をしながら言葉を続けた。

「ハリーには決して気づかせてはならん。それではことを台無しにする。おまえさんが本来の強さを取り戻すと信じて言うのじゃが、ヴォルデモート卿とハリーの間のことは、何が起こるかわからんとわしは思っておる。なにしろ何もかも、前例のないことなのじゃからの。」

「どういう意味でしょうか、アルバス?」

「詳しくは言えぬ。わしにもわからんのじゃからの。じゃが、赤子のハリーが死の呪文を生き延びたことも、ヴォルデモート卿の復活時に2人の杖が繋がりハリーが逃げられたことも、魔法省でハリーの体に取りついたヴォルデモート卿がそこにおれずに逃げ出したことも、前代未聞なのじゃ。あの2人が対峙して起こることは、予想がつかぬ。それを誰より恐れているのは、ヴォルデモート卿じゃろう。だからこそ、最期のその時、ハリーがその身を差し出し、ヴォルデモート卿自身がやるのでなければならぬ。それが肝心なのじゃ。」

「それでは、あの子は生きられるかもしれないと?」

「過大な期待を持ってはならん、セブルス。言ったじゃろう、わしにもわからんのじゃ。わしに言えるのは、最後の時が近付いたら、ヴォルデモート卿の魂の欠片がハリーの中に守られて生きている限りヴォルデモート卿は死ぬことができぬとハリーに告げねばならぬ、それができるのはおまえさんだけだと言うことだけじゃ。」

私はしばらくダンブルドアの言葉について考え、過大な期待を持つことにした。それがたとえ1%に満たぬ可能性であったとしても。私の中でしばらく消えていたリリーが微笑んだのだった。私の表情にも生気が戻ったらしい。ダンブルドアの瞳がいたずらっぽく光った。

「それでセブルス、あらためて聞きたいのじゃが、結局はあの子に情が移ったのかの?」

「あの子に?」

とんでもない!と心で叫び、銀色の牝鹿を心に描いた。私の杖先からは、また守護霊が出てくれるだろう。これでまた、心おきなくポッターに嫌味を言ってやれるのだ。

「セブルス、元気になったところに水を差して悪いのじゃが、任務のことを忘れんようにの。マルフォイ少年のことじゃ。あの子もいよいよ追い詰められておることじゃろう。・・・もうそう遠いことではないはずじゃ。」

ドラコを守り、ダンブルドアを手にかける任務。私の表情がまた暗くなったらしい。

「そんな顔をするでない、セブルス。もうわかっておるじゃろう?おまえさんは贖罪のために生きることを選んだことにより、ドラコと家族を救い、老人を死の苦痛と屈辱から救い、ホグワーツを守るのじゃ。厳しい任務じゃが、おまえさんにしかできぬことじゃ。立ち向かってもらわねばならぬ。」

「わかりました、アルバス。」

私は部屋に戻り、ダンブルドアとの会話を反芻し、ダンブルドアの計画と見通しの全容を推測してみた。考えると、不確定な要因を含む、まだ先の長い話だった。それでもリリーの息子が生きられる可能性がある。リリーの願いが叶うかもしれないと思えば、私はどんな苦痛も耐えられるだろう。

苦しくても、立ち向かう。心が定まると、私を案じてダンブルドアに詰め寄るルーピンが思い浮かんだ。昨夜、私から守護霊を出す力が失われたのを見たルーピンの険しい顔。あの表情でダンブルドアに詰め寄ってくれたのだろうか?すでに任務の地に戻ったルーピンに、感謝の気持ちを伝えたいと思ったが、術はなかった。人里離れた人狼の村で、厳しい任務に就くルーピンの無事を祈るだけだった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ダンブルドア ハリー リリー ルーピン ダークロード ハリーポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(16)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


自室に戻り、私は何度も何度も、繰り返し考えていた。ポッターは、リリーの息子は、死ななければならない。リリーがただ一つ、この世に遺したもの。リリーが命を投げ出して守ろうとした息子。リリーの遺志を継ぎ、命をかけて守ってきた。しかしその子は、、、ダークロードとともに死ななければならない。そのために守られてきたのだった。

結局、あの時から決まっていたことなのだ。リリーがその身を投げ出して息子を守った時から。その息子は時を経て、あの時と同じに、ダークロードの死の呪文を受けて死ぬことが決まっていたのだった。短かったリリーの命にさえ及ばぬ時間が与えられただけだった。

すべては私が予言をダークロードに告げたせいなのだ。リリーへの贖罪に命を捧げて生きてきたつもりだったが、それは初めから、償えぬものだったのだ。

私はもう、リリーに語りかけることができなかった。子供の頃からずっと私の魂に灯っていた小さな灯りは、消えてしまった。


ほどなく、スラグホーン教授の部屋でウィーズリーが毒を飲んで倒れるという事件が起こったが、私は出向きもしなかった。なんとか処置ができたらしいと聞いたためもあるが、もう何をやる気も起こらなかったためだ。私にできることなど何もないのだから。

すべてが空しいだけだった。かろうじて、闇の魔術に対する防衛術の授業を行えているのが信じられないほどだった。あとはただ、机に座り、あるいはベッドに横たわり、償えぬ罪を思うだけだった。


2,3週間がそのように過ぎ、その夜も、読みもしない本を開いて机に向かっていると、目の前に銀色の牡鹿が現れた。

セブルス、明日には戻らなければならないから、禁じられた森の前に来てほしい。来るまで待っているよ。」

伝令を告げて牡鹿は消えた。任務で人狼集団に潜入しているはずのルーピンだった。思い起こせば、クリスマスの夜の短い再会以来、3か月ほどが過ぎていた。気は進まなかったが、重い体を引きずるように部屋を出た。

ルーピンはまた一段とやつれた姿で立っていた。ダンブルドアを信じ、ポッターがダークロードを倒すその日を夢見て、厳しい任務を耐えているのだろう。ダンブルドアがまもなく死に、ダークロードを倒すと同時にポッターも死ぬのだと知ったら、ルーピンは何というだろう。知るはずもないが、、、。

セブルス!」

私を見て一瞬笑顔を浮かべかけたその顔が、驚きの表情に変わった。

「そんなにやつれて、いったい何があったんだ?」

悲鳴に近い声だった。返事のしようがない。黙っていると、ルーピンは私の肩に手を掛けて言った。

ダンブルドアに報告するために少し戻っただけなんだ。明日の朝には報告して任務に戻らなければならないんだけど、君は少し時間はあるかい?」

私はうなづき、2人でまたルーピンの小さな貸家に向かい、アパレートした。

部屋に着くとルーピンは、何があったのか、食事はしているのか、眠れないのかといろいろ聞いて来たが、私には何も答えられなかった。質問を遮るためにルーピンの任務について尋ねると、そちらも厳しい状況のようだった。

「荒んだ暮らしの中で君のことを思うのが慰めなのに、そんなふうだとほんとうに心配だよ。いったい何があったんだい?任務に関することは言えないんだろうけど、、、」

しばらく沈黙が続いた後、私を励ますように、ルーピンは杖を振って守護霊を出して見せた。銀色の牡鹿が、小さな部屋を数歩駆けて、消えていった。それを見ると少しだけ、表情が和らぐ気がした。

「君の守護霊も出してくれないかな?この前の時のように。牝鹿と牡鹿が並ぶ姿を何度も思い出していたんだよ。一緒に、セブルス、さあ君も。」

「エクスペクト・パトローナム!」

2人で声を合わせて杖を振ったのだが、、、。しかし、私の杖から出た弱々しい銀色の光の粒は、牝鹿の姿を為せぬまま消えていった。ルーピンは顔色を変え、消えゆく光を見つめていたが、やがて険しい表情で私に向かった。

セブルス、」

「ルーピン、すまない。今日はとても疲れているのだ。もう戻らなければ。無事を祈る。」

慌ただしく言葉を残し、私はルーピンの視線を逃れるように部屋を出た。

ホグワーツの自室に戻り、私は一人、守護霊を出そうと杖を振ってみた。ルーピンの部屋と同様、光の粒が力なく消えていった。リリーとの幸せな思い出で心を満たすことが、どうしてもできないのだった。

まもなく闇の魔術に対する防衛術の授業で、ディメンターを扱う予定なのだが。私は何度目かのため息をつき、授業計画を変更した。教師が手本を示せないなど、私の授業であってはならないことだがしかたがない。たしかポッターが守護霊を出してディメンターを逃れたことがあったはずだ。うまく進めて、ポッターに守護霊を出させ、あとは言葉で説明することにしよう。

私の任務は、私から全てを奪うと思っていたが、魔法までも奪うのだろうか?衝撃的ではあったが、しかし、それももう、どうでもよいことのように思えた。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ルーピン ダンブルドア ポッター ハリーポッター リリー

セブルス・スネイプと謎のプリンス(15)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です。今回は本作の重要なネタバレを含みます)


ダンブルドアの信頼は、長い間私にとって大きな支えだった。私は若い頃、愚かさゆえにデスイーターとなり、リリーの死を招く大きな過ちを犯してしまったが、ダンブルドアは私を信じ、贖罪の機会を与えてくれた。私は全力で与えられた任務に取り組み、その信頼に応えてきたつもりだ。皆が信望する偉大な魔法使いが、私を信じ、私の能力を認めてくれると思うのは、苦しさを耐え忍ぶ励みになった。今私が立つサイドの仲間たちが、元デスイーターで、任務上心を開かぬ私を曲がりなりにも信じているのも、「ダンブルドアが信じているから」だと理解している。

ただ一人信じ尊敬するその人を、私の手で殺せという残酷な命令に従うには、せめて、信頼されていると思いたいのは当然ではないか?だが、、、ダンブルドアは私を信じてくれず、ポッターを信じているのだ。

私はようやくダンブルドアと話す機会を得た。人気のない夕暮れの校庭を歩きながら、幾晩もポッターと部屋に閉じこもって、いったい何をしているのかと切り出した。ダンブルドアは、ポッターには必要な情報を与えているのだという。その情報を私に与えないのは、信用の問題ではなく、ポッターが為すべきことをするのに必要なことだからで、ダークロードのもとで長い時間を過ごす私に、すべての秘密を教えたくないというのだった。

私とて好き好んでダークロードの元にいるわけではない。ダンブルドアの命令に従い、命がけで参じているのだ。閉心術に長け、複雑な二重スパイの任務を果たせる私の能力を過小評価しているわけではないといいながら、ダークロードと意識が繋がっているのに閉心術さえ身につけられないポッターに、私には言えない重要な情報を与えるのはなぜなのだ?要するに、ポッターを信じ、私を信じないということではないか。

ポッター。私が信頼し、心を開き、敬愛するただ一人の人を、またポッターのせいで失ってしまう。父親のせいでリリーが私から離れていったように。ダンブルドアは、ポッターの魂がどうの、ダークロードとポッターの繋がりがどうのと言っていたが、私には理解できなかったし、納得もいかなかった。

私の思いを他所に、ダンブルドアは私がダンブルドアを殺した後の指示を出そうとした。信じてもいないくせに、そんな任務を果たすと期待するのか?私だって心変わりするかもしれない。そう言っても、ダンブルドアはさらにドラコの見張りについて何か言おうとした。私は聞く耳を持たなかった。怒りを隠さぬ私にため息をついて、ダンブルドアは夜校長室に来るよう命じた。


その夜、校長室で、私の世界がまた音をたてて崩れた。

私を座らせ、部屋を歩き回りながらダンブルドアが話し始めた。

「ハリーは知ってはならぬのじゃ。最後の最後まで、必要となるその時まで。そうでなければ、どうやって成し遂げる力が出てこようか?」

「しかし何を成し遂げねばならないのですか?」

「それはハリーとわしの間の話じゃ。セブルス、よくきくのじゃ。わしの死後に、その時が来るのじゃ。」

私が異議を唱えようとすると、厳しい口調でとどめられた。

「口をはさむでない。最後まできくのじゃ。わしの死後に、ヴォルデモート卿があの蛇の命を心配する気配を見せる時が来るじゃろう。」

「ナギニを?」

私は意外な成り行きに驚いて尋ねた。

「そうじゃ。ヴォルデモート卿が蛇に何かさせることを止め、魔法の元に安全に守り、身近に置いておく時が来る。そうなればハリーに話しても大丈夫じゃと思う。」

「何を話すというのですか?」

ダンブルドアは深く息を吸い、目を堅く閉じて続けた。

「ハリーにこのことを告げるのじゃ。ヴォルデモート卿がハリーを殺そうとした夜、リリーが楯となって命を投げ出した時、死の呪文は跳ね返り、破壊されたヴォルデモート卿の魂の欠片が、壊れ落ちる部屋にただ一つ残っていた生きた魂に引っかかったのじゃ。

ヴォルデモート卿の一部がハリーの中で生きておる。それがハリーに蛇語を話す能力を与え、意識の繋がりを生じさせておるのじゃ。ハリーはわかっておらんがの。そして、ヴォルデモート卿が気付いておらぬその魂の欠片がハリーの中で守られておる限り、ヴォルデモート卿は死ぬことができぬのじゃ。」

魂の欠片、、、ポッターの中にダークロードの魂の欠片が、、、。それではあの子は、、。しかし、まさか、ダンブルドアがそんなことを。時が止まり、壊れたガラスが崩れ落ちる寸前のような一瞬の静止。

「それではあの子は、、、それではあの子は死ななければならないと?」

「そして、ヴォルデモート卿自身がやらねばらならぬのじゃ、セブルス、それが肝心じゃ。」

体の中で、ガラスが崩れ落ちていった。粉々になったガラスの破片が、細胞の一つ一つを傷つけ血を流す。私の、生きてきた理由が壊れてゆくのだった。この十数年間、ずっとリリーに語り続けていた言葉。ようやく言葉を絞り出す。

「私は、、、ずっと、、、私たちが彼女のために、あの子を守っていると思っていた。リリーのために。」

「わしたちがあの子を守ってきたのは、あの子に教え、育て、力を試させることが大切だったからじゃ。」

ダンブルドアが堅く目を閉じたまま続けた。

「その間に2人の繋がりはますます強くなった。寄生的な成長じゃ。わしは時々、ハリーがうすうす気づいておるのではないかと思うことがある。ハリーがわしの見込み通りであれば、自らの死に立ち向かう時には、それがまさにヴォルデモート卿の最期になるよう取り計らうはずじゃ。」

ダンブルドアが目を開けた。私はひどい衝撃に襲われていた。

「あなたは、死ぬべき時に死ねるように、今まで彼を生かしておいたというのですか?」

「そう驚くでない、セブルス。今までに何人、人が死ぬのを見てきたのじゃ?」

「最近では、私が救えなかった者だけです。」

私は怒りに駆られて立ち上がった。

「あなたは私を利用していたのだ。」

「どういう意味じゃ?」

「私はあなたのためにスパイになった。あなたのために嘘をつき、死ぬほど危険な立場に身を置いて来た。すべては、リリー・ポッターの息子を安全に守るためだった。それなのに、今あなたは、その息子を屠殺する豚のように育ててきたのだと言う。」

「しかしセブルス、なんと感動的なことを。」

ダンブルドアは真面目な顔で言った。

「結局あの子に情が移ったのかの?」

「あの子に?」

私は叫び、杖を振った。

「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ、来たれ!)」

私の杖から銀色の牝鹿が飛び出し、校長室に降り立つと、一蹴りで部屋を飛び、窓から消えていった。消え去る光をじっと見つめ、ダンブルドアは溢れるほどの涙を浮かべて聞いた。

「これほどの時が過ぎても?」

「永遠に。」

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

セブルス・スネイプと謎のプリンス(14)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


クリスマスが終わると、すぐに年が明けた。クリスマス前にドラコの説得がうまくいかなかったので、私はドラコの動向に目を配っていた。クラッブやゴイルを見張りにたてて何か企みを進めているようなのだが、なかなか現場を捕まえることはできなかった。そうしながらも、私は湧きあがる焦燥感と戦っていた。

ダンブルドアが指輪の呪いを受けてからもう半年が過ぎたことになる。あと半年も経たぬうちに・・・。ダンブルドアはいっそう疲れているように見えた。そう遠いことではないはずだ。ドラコが何かしでかせば、突発的に、明日にもその時が来るかもしれないのだった。つまり、私がダンブルドアに杖を向けねばならぬ時が。

それなのに、ダンブルドアはその後具体的な指示も出さず、今後についての説明もない。残りわずかな時間を割いて、相変わらずポッターと校長室にこもって何やらしているのだ。

研究室で苛立ちと絶望感に苛まれていると、グレンジャーが闇の魔術に対する防衛術で出した宿題のレポートについて質問しにやってきた。学習意欲の高い生徒としてそう不自然なことではないが、質問の答えを得たのちも、立ち去ろうとせず机のわきでもじもじと立っているのは不自然なことだった。用もないのに私の研究室に留まりたがるのはドラコ、、、以前のドラコくらいのものなのだ。

しかし、用件が終わった生徒を追い出しもしない私の態度も不自然ではあった。私は「闇の魔術に対する防衛術---まさかのときに役に立つ治癒呪文」と表紙に書いた手帳をわざとらしく机の上に置き、グレンジャーの目につかぬものかと待っていたのだった。叱責と嫌味以外でグリフィンドールの生徒に話しかけようと思うと、まったく途方に暮れてしまったのだ。

スネイプ先生」

「ミス・グレンジャー

声をかけたのは同時だった。しかしグレンジャーはずる賢くも、先に聞いて来た。

「なんでしょうか、先生?」

「うむ。君は今日も質問に来たように、なかなか熱心な生徒だ。成績もよい。」

グレンジャーが驚きのあまり目を丸くした。そこから笑顔がこぼれそうになるのが恐ろしく、あわてて言葉を続けた。

「しかし闇の魔術に対する防衛術は他の科目に劣っているようだ。5年時の成績も、他は優だったのに、防衛術は良であった。何かが欠けていると思わぬか?」

グレンジャーはむしろほっとしたような顔をして答えた。

「えーと、柔軟性と創造力が足りないんでしょうか?」

「その通りだ、ミス・グレンジャー。今の答えも私が最初の授業で必要だと言ったことをそのまま復唱している。丸暗記だけでは闇の魔術に歯が立たぬ。とっさの柔軟な思考と瞬発力が物を言うこともあるのだが、君にはそれが欠けている。しかしこれは生来のものもあり、君には難しいようだが。」

今度は泣きそうな顔になったので、私はまたあわてて言葉を続けた。

「しかし他で補うこともできる。闇の魔術に対し、時に防衛しきれぬこともあるが、その時にはなんとか逃れ、傷を癒し次の闘いに備えることが重要なのだ。死んでしまっては次の防衛はならぬからな。そして迅速な治癒ができるかどうかが生死の分かれ目になることもある。」

私がわざとらしく机の上の手帳に目をやると、グレンジャーも素直に目を向けた。

「でも先生、治癒呪文は授業で習いません。」

「授業で習わぬことは必要ないと考えているのか?」

「いえ、役に立つ教材をおしえていただければ。たとえば、、、その手帳のようなものがあれば、私の術も補えるでしょうか?」

「これはたまたま私が身につけるべきだと思うものをまとめたのだが、すでに私には必要ないものだ。持って行け。」

訝しげに私を見ながらおずおずと手にとった。心をのぞくと、私の真意をうかがっていて、ポッターと自身の身を守れという私の意図は理解したようだ。一気に魔法薬もかたつけよう。こんなことをまたやるのはかなわない。

「治癒に必要なのは治癒呪文だけかね?」

「え?えーと、魔法薬が必要なこともあります、先生。」

「その通りだ。君は魔法薬学の授業において、受け入れられる程度の薬を調合していた。しかし、呪いを受けてから調合しても間に合わぬこともある。材料の準備に数カ月かかる薬もあるからな。そこでだ、」

私は言葉を切って、準備してあった薬剤袋を取り出して見せた。魔法で縮めた小さな袋だが、中には闇陣営との戦いで役に立ちそうなもの、適用範囲の広いものを厳選し十数種の薬剤を入れてある。もちろん、適応と使用量の説明も付けて。

「ある程度の保存を効かせて、すぐに使える魔法薬を携帯することも、君に欠けた能力を補う一助となると思わないか?」

私が薬剤袋を差し出すと、グレンジャーはまたおずおずと手を出して受け取った。

「使用期限のある薬剤もある。新しいものが医務室の棚の左上に補充され、目くらましの術がかけて置いてある。取り寄せ呪文で手にすることができるであろう。いざというときに期限が切れていてはまずいことはわかるな?」

回りくどい物言いの意味を、グレンジャーは理解したようだったが、これは自分にだけ与えらるものかと思案している。

「ミス・グレンジャー、これは、君に、欠けた資質を補うために必要なものなのだ。」

「わかりました、先生。ご指導を、ありがとうございます。」

「よろしい。それで、君も何か私に言いたいことがあったようだが?」

「あの、闇の魔術に関することだと思うのですが、、、、ホークラックスについて何かご存知でしょうか?図書館で調べても見つかりません。」

ホークラックス?忌まわしき闇の魔術の中でももっとも忌まわしきもの。私も詳しくは知らないのだが、なぜグレンジャーがそんなことを調べたいのだ?グレンジャーの目をのぞき込んで心を探ると、ポッターがその話をする姿が見えた。

「なぜ君がそんなものに興味を持ったのかということに、むしろ興味をひかれるな。」

グレンジャーの顔が赤くなった。口止めされているのだ。

「残念ながら、それは語ることを禁じられた闇の魔術だ。私に教えられることはないが、軽い気持ちで弄んではならぬことだと言っておこう。用件はそれだけか?」

グレンジャーはうなづくと、手帳と薬剤袋をローブに隠しこんで、研究室を出ていった。これで、傷を負って逃げおおせたような場合には、応急処置ができるだろう。気休めにすぎないかもしれないが、ダンブルドアが死に、闇陣営がホグワーツを支配するようになれば、ポッターは学校に来ることはできないだろう。今までのようにポピーや私がすぐ診ることはできなくなる。グレンジャーが役に立つかもしれない。

それよりも、、、ホークラックスとは。グレンジャーの言うとおり、図書館の蔵書にその記述はないが、昔マルフォイ邸で闇の魔術に関する品や本を漁るように見せてもらっていたときに、簡単な説明を読んだ覚えがあった。ホークラックス、魂を分けて保存する分霊箱。作るには殺人を伴う邪悪な闇魔術が必要だが、その身が滅びても保存された魂により蘇ることができる。あまりの邪悪さゆえに堅く禁じられ、知る者も少ないはずだ。

「余は魂だけの惨めな姿になり・・・」

すぐにダークロードの言葉が頭に浮かんだ。そしてあの不気味な容貌も。それは魂を分けたための変貌と思えば納得がいく。ではダークロードの復活は、ホークラックスによるものだったのだ。

周囲の温度が下がった気がした。しかし。一度は滅びたダークロードが復活したということは、ホークラックスに収められていた魂を使ったということだ。そして父親の骨と、下僕ワームテールの肉と、敵であるポッターの血を使い、その魂の宿る体を得たのだ。それなのに、今ポッターたちがホークラックスについて探るということは、つまり、ダンブルドアがポッターにそのことを話したということは、、、

ホークラックスは1つではないということか?すぐ思い浮かんだのは、トム・リドルの日記。それが破壊されたと知った時の、ダークロードの怒りのすざましさを思い出した。日記を預けられていたルシウスに、死の呪文をかけるかと思ったほどだった。それはホークラックスを壊された怒りだったのだ。しかし。

しかしそれもすでに破壊された。それでは?そうだ。ベラトリックスが妙なことを口走っていた。ダークロードは最もたいせつなものを自分に託されたのだと。それに、、ダンブルドアが死に至る呪いを受けた指輪。なぜあのような物をと思ったが、あれもホークラックスだったのか?私が駆けつけた時、指輪は、たしかグリフィンドールの剣で破壊されていた。他にもまだあるのだろうか?

リドルの日記も、ダンブルドアがはめた指輪も、恐ろしい呪いが掛けられていた。もちろんそうだろう。ダークロードの魂を保存する物なのだ。他の者に容易に壊させぬ、邪悪な呪いで封印しているに違いない。

そんなものを、、ダンブルドアはポッターに探し出して壊せとでも言っているのだろうか?

危険すぎる。もちろん、ホークラックスがある限りダークロードが復活してしまうのだから、それは破壊されねばならないが、無謀なだけのポッターなどにできるものか。もし呪いを受ければ、グレンジャーに与えた治癒呪文や魔法薬ごときがかなうものではない。事実、ダンブルドアでさえ、私が全力で治療しても、命を取り留めることができなかったのだ。

いても立ってもいられぬ思いだった。ポッターを、私が命をかけて守るべきリリーの遺児を、命の危険に曝すというのか?それも、ダンブルドアの守りも得られぬ時になって。

私はすぐにもダンブルドアに抗議に行こうと思ったが、しかし、ダンブルドアは私にそのことを話してくれていないのだった。なぜ私に任せてくれないのか?せめて話してくれれば、助けることができるではないか?それなのにポッターと部屋にこもるばかりで・・・。

私を信じていないのだ、ダンブルドアは。無謀なだけで、ダークロードに心を操られても、自分を守る閉心術さえ身につけられないポッターを信じ、私は信頼に値しないと思っているのだ。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ダンブルドア スネイプ グレンジャー ポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(13)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


クリスマスには、久しぶりに任務を離れ、隠れ穴でハリーや騎士団の仲間と過ごすことにした。ダンブルドアの指示で、秋口から人狼の集団に潜入していたのだ。やつれていくセブルスのことは気になったけれど、フェンリール・グレイバックが人狼たちに闇陣営への賛同をはたらきかけるなか、彼らの動きを探り敵方への傾倒を防ぐのが必要なのは明らかだった。この任務に人狼の私が最適なのは言うまでもないから、やむをえなかった。

共に暮らす人狼たちは、貧しく、惨めで、荒んでいた。そしてなりたくてなったわけでもないのに、忌み嫌い排斥する魔法界と、手を差し伸べないばかりか締め付けを強める一方の魔法省を、深く恨んでいた。彼らは、ホグワーツに招いてくれたダンブルドアや、人狼と知っても親友になってくれたジェームスやシリウス、そして人狼を正しく理解し偏見を持たずに接してくれるセブルスに会えなかった場合の、私の姿そのものだった。

人里離れた森の奥に生きる場所を求め、森の木の実や獣、たまには町で盗みをはたらき、糊口をしのぐ。わずかな食いぶちをめぐって仲間内の争いも頻繁に起こる。人を恨み襲おうにも、捕まれば処分されることを恐れ、ままならぬ苛立ち。

グレイバックはそんな彼らの窮状につけ込み、ヴォルデモートの世になれば、獲物となる人を与えてもらえる、子供を噛み、親から離して魔法使いを憎むように育て、人狼を増やすことで肉体的に勝る我らが魔法族を支配するのだと説いていた。残念ながら、グレイバックの意見に与するものが多い。ダンブルドアは人狼や魔法生物と魔法使いの共生を説き、より大らかな平和な世を目指していると言っても、現魔法省の支配に虐げられた彼らには、夢物語としか理解してもらえなかった。

私が5歳の時に、私を噛んで人狼にしたのはグレイバックだった。人狼が何かとわかった頃、私は本能に負けて私を噛んだ人狼に同情さえ感じたものだが、グレイバックは、私の父が闇陣営に反した報復として、狙いを定めて私を噛んだのだった。最も凶暴で凶悪な人狼。

グレイバックに共感する者が多いなか、スパイとしてともに暮らすのは苦痛をきわめた。恐怖と嫌悪、そして仲間ともいえる同じ人狼を、疑い欺く空しさ。セブルスはスパイとしてずっと、デスイーターたちの中でこのような苦痛に耐えていたのか?いや、ダークロードの目前で、その苦痛は私など思いもよらないものだったに違いない。

きっと、、、。私は目を覆いたくなる現実の中で、何度も思った。この戦いに勝ち、ダンブルドアが治める世になれば、彼らの境遇も改善されるに違いない。セブルスも心を開き、きっと私たちはともに幸せをつかめるだろう。そう願って任務を耐え忍んでいた。

隠れ穴につくと、クリスマスの飾りつけが進む温かい気配に、やっと人心地がついた。昼前には、ウィーズリーの子供たちやハリーも到着して、周囲は賑わいだ雰囲気になってきたけれど、私の思いはずっとセブルスにあった。曲がりなりにも恋人めいた関係になって初めてのクリスマス、共に過ごしたい。フル―パウダーで現れてくれるのではないかと、じっと暖炉の炎に目を凝らしていたけれど、当然ながらセブルスの顔が現れることはなかった。

近くでアーサーとハリーが話しているのを聞き流していたら、セブルスの名前が出て私は耳をこらした。ハリーが、セブルスとドラコ・マルフォイが密かに話すのを聞いたと言っている。マルフォイが何か企んでいて、セブルスが助けを申し出ていたと。アーサーは、セブルスがそういうふりをしているだけだと考えられないかとたしなめるように答えたが、ハリーは食い下がっていた。

「そういうと思っていました。でも、僕たちにはどうだかわからないでしょう?」

私はハリーのことが好きだし、幼い時に両親を亡くし、ヴォルデモートとの対決を運命づけられたこの親友の遺児を、心から愛し守りたいと思っているのだけれど、セブルスに対する偏見に満ちた態度だけは我慢ならなかった。セブルスの苦痛の何をわかっているのか。任務のためにどれだけの犠牲を払っているか、わかっているのか?

「私たちは判断する必要はないんだ。」

突然口をはさんで断言した私に、ハリーは驚いたようだった。

「それはダンブルドアの役目だ。ダンブルドアはセブルスを信頼すると言っている。私たちにはそれで十分なんだよ。」

「でも、、、ただ、、ダンブルドアがスネイプについて判断を間違っていたら?」

「みんな何度もそう言った。結局はダンブルドアを信じるかどうかということなんだ。私は信じているよ。だから私はセブルスを信じる。」

「だけど、ダンブルドア自身が自分も間違うことはあるって言ってた。それに、、、あなたはほんとうのところ、スネイプを好きなの?」

ああ、大好きだよ。心の中で大きく頷いたが、ほんとうのことは言えない。セブルスへの全面的な肯定は、ジェームスを否定することになってしまう。記憶すら残らず亡くした父親のことを、悪く思わせることは忍びなかった。今となっては、ハリーに父親を語ってあげられるのも、私だけなのだから。セブルスを除けばだけれど。

「セブルスのことは、好きでも嫌いでもないよ。ジェームスとシリウスと、セブルスとの間にあったことを考えれば、親友にはなれない。苦い思い出ばかりだからね。だけど私がホグワーツで教えていた1年、セブルスは脱狼薬を作ってくれた。完璧に。おかげで満月のときに苦しみを味わうことはなかった。」

「だけどスネイプは、あなたが人狼だと『偶然』漏らしてホグワーツから追い出したんだよ。」

ハリーは怒ったように言った。私は肩をすくめて答えた。

「どうせ漏れることだったんだ。セブルスが私の職を欲しがっていたことは公然のことだったけれど、薬に細工をすればもっと私に打撃を与えることもできたんだ。だけど彼は私のことを健全に保ってくれた。感謝すべきだと思う。」

それ以上だった。脱狼薬を飲み、人の意識を保って変身した私を、セブルスは自室で見守ってくれた。セブルスの足元で丸くなって眠る狼。安らかな満月の夜。

「きっとダンブルドアが目を光らしていたから、薬に細工できなかったんだ。」

それでもハリーは言った。お手上げだった。学生の頃のように。

「君はあくまでセブルスを憎むと決めているんだね。わかるよ。父親がジェームスで名付け親がシリウスなのだから、古い偏見を受け継いでいるんだろう。アーサーや私に話したことをダンブルドアに言えばいいけど、その話にダンブルドアが驚くとは期待しないほうがいいよ。セブルスはダンブルドアの命令でドラコと話したのかもしれないからね。」

それから話しは私の任務のことになった。人狼の集団の話、そこでのスパイ任務の現状、それからグレイバックが私を噛んだこと。人狼たちがグレイバックの考えになびいていること。

「でもあなたは普通の魔法使いだ!ちょっと問題を抱えているだけで・・」

私は思わず笑い出した。ジェームスも周りの人に、私がちょっとした毛むくじゃらの問題を抱えていると言ったものだ。ハリーにそのことを話して一緒に笑うと、わだかまりが溶けていくようだった。ハリーはほんとによい子なんだ。セブルスのことが絡みさえしなければ。それもジェームスやシリウスと同じだった。

ハリーはその後、『半純血のプリンス』を知らないかと言いだした。その人の教科書を持っているという。私が学生の頃一時期大流行したレビコーバスの呪文などを発明した人らしい。ハリーの心を探ると、ハリーはそのプリンスがジェームスではないかと期待しているようだった。そうではないし、シリウスでも私でもないと断言しておいた。もしかしたらセブルスのものかもしれない。6年の頃セブルスはリリーとも離れ、一人熱心に研究に励んでいたから。ひょっとしてその教科書はジェームスが盗んで隠したのではないかと思ったけれど、それはハリーのために、言わないでおいた。


夕食会がお開きになり、私はモリーにことわって、隠れ穴を出た。セブルスに会いたかった。クリスマスの夜を、一人で過ごさせたくなかったし、私自身セブルスといたかった。自宅にはワームテールがいると言っていたが、セブルスもクリスマスの夜をピーターとともに過ごしたくはないに決まっている。

ホグワーツだ。校門の前にアパレートし、守護霊の伝令を送った。万一を考え、言葉は託さずに。すぐに銀色の牝鹿が姿を現し、私の前で首を傾げた。私はもう一度伝令を送った。今度は一言、校門の前にいる、と。10分もしないうちにセブルスが現れた。

ルーピン、時間がないのだが。」

「少しだけ。セブルス、今日はクリスマスだよ。」

逃げられないように肩を抱いて、そのためだけになけなしの金をはたいて借り続けていた貸し家にアパレートした。冷え切った部屋に明りを灯し、少しだけ持ってきた隠れ穴の夕食を並べた。ソファに並んで座り、飾りもない部屋に牡鹿の守護霊を出す。

「メリークリスマス、セブルス」

セブルスも守護霊を出して答えてくれた。

「メリークリスマス」

セブルスはまた一段とやつれ、手を置いた肩は壊れそうに細かった。

「眠れないのかい?」

セブルスは肩をすくめただけだった。セブルスは何もしゃべらないから、私は任務の話や、隠れ穴の夕食会の話をした。セブルスは何も言わなかったけれど、嫌そうではなかった。ハリーの『半純血のプリンス』の話しをすると、おかしそうに笑い出した。

「そんなことだと思っていた。」

「プリンスを知っているのかい?」

「ポッターには内緒だぞ。」

ハリーの名を出すときだけ、皮肉めいた顔になった。

「ハリーは知りたがっているけど。言ってはいけないのなら言わないよ。」

「私の母の旧姓はプリンスというのだ。」

「じゃあハリーは君の教科書を大事に持っているわけか。」

「少しは勉強すればいいのだ。理解できないだろうが。」

それからまた私の任務の話になった。人狼の村での潜入生活の話をすると、心配そうに私の体を眺めている。

「彼らはほんとに追い詰められた生活をしているんだ。そこをグレイバックにつけ込まれて・・・。私たちが勝てば、きっとダンブルドアが、人狼ももう少しましな暮らしができるような世の中にしてくれるんじゃないかと思うんだけどね。」

セブルスが少しつらそうな表情を見せた。

「そうなったら、セブルス、一緒に暮らそう。私たちは子供の頃から、ずっと戦いの影を受けて暮らしてきたけれど、戦いが終わったら、私たち自身の幸せを求めて生きてもいいと思うんだ。私はまともな職は見つけられないかもしれないけど、できるだけのことをして君が健康に暮らせるように、笑顔が見られるように努力するから。」

セブルスの返事はなかったけれど、私はもう一度守護霊を出した。セブルスも守護霊を出して、2人で何度か繰り返し、狭い部屋の中を駆けては消える銀色の光をクリスマスツリーの代わりにして楽しんだ。

まもなくセブルスが時計を見て立ちあがった。

「やることがあるのだ。」

それからドア先で振り向いて、わずかにほほ笑んだ。

「メリー・クリスマス、ルーピン。」

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリー セブルス スネイプ ルーピン ダンブルドア

セブルス・スネイプと謎のプリンス(12)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


そうこうしているうちに10月半ば、生徒たちのホグズミード外出の日の夕刻、事件が起こった。おそらくドラコが起こしたと思われるその事件は、ダンブルドアを殺害するという目的からすればお粗末なものだったが、一人の生徒が重傷を負った。

犠牲者はケイティ・ベル。ホグズミードからホグワーツに戻る直前の出来事だった。ダンブルドアは留守だったため、知らせを受けた副校長のミネルバの指示で、私が応急処置を施した。邪悪な呪いのかかったネックレスによるもので、たまたまほんのわずかに皮膚が触れただけだったので助かったが、悪くすれば錯乱と痙攣のうちに死に至る恐ろしい呪いだった。生徒を聖マンゴ病院に送り、ネックレスの呪いやその形跡を調べたが、誰がしたことかを証明することはできなかった。

だが、ドラコの仕業ということはわかっていた。ダンブルドアが言った通り、追い詰められたドラコが周囲に犠牲者を出すこともいとわぬ行為に出ているのだ。影でベラトリックスがけしかけているに違いない。生まれた頃の天使のようなドラコの笑顔や、ルシウスの叱責に怯え私の部屋で泣いていた子供の姿が目に浮かぶ。今回は必死の手当で最悪の事態は免れたが、もし犠牲者が死に至るようなことがあれば、ドラコの魂は損なわれてしまうだろう。

しかしドラコは、何度言っても研究室への呼び出しに応じないばかりか、次のクィディッチの試合も理由をつけて出なかった。私はドラコの見張りに全力を注ぐことにした。

クリスマス休暇の前日に、スラグホーン教授が自室でクリスマスパーティを開いた。昔からそうだったのだが、この教授は有力なコネのある生徒や将来有望な生徒を見つけては、食事会を開くのが趣味なのだ。リリーを気に入っていて、私も一度リリーに連れられて出たことがある。私自身は招かれたことはないのだが。今日はドラコがこちらに来るのを見かけ、中をうかがっていたら、いきなりスラグホーン教授に腕を掴まれ引っ張り出されてしまった。

「こそこそ隠れていないで、セブルス、一緒に楽しくやろうじゃないか。」

スラグホーン教授はご機嫌だったが、そこにはポッターがいた。

「今ハリーが魔法薬の授業で飛び抜けた成績だと話していたところなんじゃよ。君が5年間教えた成果だな。」

「おかしなことですな。私はポッターに何も教えられなかったと思っていたのですが。」

「ではハリーの天性の才能じゃな。最初の授業でハリーがつくった『生ける屍の水薬』は素晴らしかったよ。あれほどの物を一回で作れる生徒はおらんよ。セブルス、君でさえ。」

「なるほど?」

ポッターが魔法薬をうまくつくれるなどありえない。ご機嫌なスラグホーンの言葉に適当に相槌をうちながら、ポッターの心を探った。すると一瞬、ポッターの心に、ぎっちりと書き込みがなされた古い教科書が浮かんだ。見誤るはずがない、それは私の学生時代の魔法薬学の教科書だった。どこかに行ってしまったと思っていたが、なぜあの教科書がポッターの手に?しかし、勉強にはなるだろう。

スラグホーン教授の話は、ポッターがとっている科目に移って行った。闇祓いになるのに必須の科目だった。私が皮肉を言い、ラブグッドの的外れな話しに座が笑いに包まれた時、管理人のフィルチがドラコの耳を引っ張って、階段を下りてきた。

「スラグホーン先生、こいつが上の階の廊下をうろついているのを見つけました。先生のパーティに招かれたが、来るのが遅れたと申しております。先生はこやつに招待状を送られましたですか?」

ドラコはフィルチの手を振り払いながらわめいた。

「ああ、招かれていないとも!勝手に押しかけただけさ。これで満足か?」

嬉しそうなフィルチをいさめるように、スラグホーンがドラコの出席を許し、ドラコもスラグホーンの歓心を買うようなお世辞を言い始めた。しかし久しぶりに間近で見るその顔は、目の下に隈ができ、病気のようにやつれていた。私は痛々しさに胸が締め付けられるようだったが、この機会を逃さず、ドラコと話そうとその場から連れ出した。

廊下の奥の教室で、声をひそめてドラコを説得しようと試みた。ケイティ・ベルの事件ではすでに疑われていると言ったが、関係ないと言い返された。心をのぞこうとしたが、閉心術を使っていた。ベラトリックスに教えられたのだ。そして、私が口出しすることが嫌なのだという。呼び出しに応じないことを責めると、罰則なりダンブルドアに言いつけるなりすればいいと。私はそんなことをするつもりはないと言い聞かせ、ドラコを助けるとナルシッサに破れぬ誓いを結んだとまで話したのだが、、、。ドラコは私の助けなどいらない、自分でやる、できるんだと言って、耳を貸さなかった。

だが今回スラグホーンの部屋をうろついて見つかったのは失敗だったと半ば脅しながら、手助けを申し出て、私を信頼して何をやるつもりか話すよう言ったのだが、ドラコはむしろ興奮しただけだった。

「おまえが何を狙っているかわかっている。僕の栄光を横取りしようと思っているんだ!」

ベラトリックスにすっかり言いくるめられ、私のことを疑っているのだ。ドラコの心から、ダディと甘えた私の姿はもう消えてしまったのだろうか?

「子供のようなことを言うのだな。父上が逮捕され、アズカバンに収監されて動揺しているのはわかるが・・・」

私の言葉を聞くことなく、ドラコは教室を駈け出していってしまった。

我が子同様に慈しんでいたドラコが、私を憎み、離れていった。私の任務は、私からすべてを奪い去るのだった。たしかに、ダンブルドアの導きを受け贖罪に生きると決めた時、私のすべてを投げ出すと誓ったのだが、それは現実になると、一つ一つが我が身を切り刻むものだった。

それでも。私はそれだけの罪を犯したのだった。贖罪は果たさねばならぬ。ドラコも守らなければならない。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ドラコ セブルス

セブルス・スネイプと謎のプリンス(11)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


横たわるダンブルドアの姿、ダンブルドアに杖を向けるドラコの恐怖に歪んだ顔、必死で抱きとめる私、ダンブルドアに死の呪文を放つ私自身、ダンブルドアのデスマスク、私に杖を向け「裏切り者!」と叫ぶダークロード、私を取り囲み糾弾するデスイーターたち、のたうつクルーシオの苦悶、向かい合うダークロードとポッター、放たれる閃光、倒れるポッターと、ダークロードの高笑い、そしてアズカバンの暗い独房にうずくまる私、私を指差し「ダンブルドアを殺した!」と非難する人、人、人・・・・

眠れない。眠ってもすぐ悪夢にうなされる。こんなことばかりが頭をよぎり、それは夢なのか、覚醒時の幻なのかも判然としなかった。私は自分がかなりのうつ状態にあることを自覚していた。すがるように思い浮かべるリリーの姿も薄れがちで、弱々しい銀色の牝鹿に沿い立つ牡鹿の姿がわずかな慰めだった。


睡眠も活力も魔法薬に頼らざるをえなかったが、それでも学校の新学期となれば気を引き締めねばならない。ホグワーツに戻り、念願の闇の魔術に対する防衛術の授業計画をたてたり、教室を模様替えしたりするのは気晴らしになった。幼い頃から魅了された闇の魔術の底知れぬ深さと恐ろしさ、そしてその防衛に必要な精神力と柔軟性。ようやく生徒たちに教えることができるのだ。そして、私にとっては、曲がりなりにも純粋に一教師として教鞭をとる最後の年になる。

入学式の日。習慣とはおそろしいもので、無意識のうちにポッターの姿を探していたのだが、ホグワーツ特急が着き、大ホールに生徒たちが集まり、入学式が始まっても、ポッターは現れなかった。なぜポッターは皆と同じことができず、心配ばかりかけるのか?腹を立てて庭を探していると、薄暗がりの中、銀色の光が私に向かって来るのが見えた。騎士団の伝令だ。しかしあれは、、

銀色の狼。

ルーピン?そんなはずはないが。なりばかり大きくて弱々しい銀色の狼が、私の前に立ち伝令を発した。

「こちらトンクス。ハリーを保護している。校門まで出迎えヨロシク。」

トンクス。おっちょこちょいの闇祓い。おっちょこちょいにもほどがある。よりによってルーピンに思いを寄せたのか?ルーピンからは何もきいていないが。むっとした気分でランタンを下げて校門に向かった。

ポッターはローブに着替えもせずに立っていた。ポッターを門内に迎え入れ、トンクスの鼻先で門を閉じて言ってやった。

「新しい守護霊を興味深く見せてもらった。」

トンクスの髪は茶色にくすみ、惨めな表情をしていた。私は力強い銀色の牝鹿を思い浮かべた。

「私は古いもののほうがよかったと思うが。新しいものは弱々しく見える。」

トンクスの表情に、衝撃と怒りが浮かんだが、私は振りかえりポッターを連れて城に向かった。

父親そっくりのポッターの顔を見ると、反射的に杖を構えたくなるのだが、立場上そうもいかないので、遅刻と服装でグリフィンドールからあわせて70点を減点した。今やポッターを見て湧きあがる怒りや憎しみだけが、なんの配慮も要せず表せる私の感情なのだった。そして怒りというものは、いつだって恐れや悲しみより生きる力につながるものだ。

しかし大ホールに戻ってダンブルドアの隣に着席すると、黒く呪いに蝕まれた右手が目に入り、再び気が滅入った。今年度は闇の魔術に対する防衛術の教授に就任すると紹介されても、立ち上がる気も起らず、スリザリン席からの拍手に手を上げて応えるのが精いっぱいだった。


新学期初めの闇の魔術に対する防衛術の授業。私は生徒たちに、思いのたけを込めて語った。

「闇の魔術とは、多種多様にして、常に変わり続ける永遠なるもの。それと戦うのは、多くの頭を持つ怪物と戦うに等しい。頭一つを切り落とすたびに、さらに獰猛でずる賢い頭が生えてくる。闘う相手は、定まらず、変化し、破壊不能なものなのだ。」

恐ろしさは伝わっただろうか?

「それゆえ防衛術は、闘う相手と同じく、柔軟にして創造的でなければならぬ。」

壁に配した、闇の魔術の犠牲者を描く絵を示した。すべては前回の闇陣営隆盛時の現実なのだった。生徒たちに十分その恐ろしさがしみ込んだと見えたところで、今日の課題、無言呪文の話を始める。無言呪文の利点を尋ねると、手を上げたのは一人だけ、魔法薬学でもおなじみのグレンジャーだった。ほかに挙手するものがいなかったのであてると、6年生の教科書と一字一句違わぬ回答をした。創造的であれといった先からこのざまだが、正解ではある。

「概ね正解だ。呪文を掛ける際、声を出さずにできる域に達した者は、驚きを与える利点を得る。言うまでもなく誰にでもできることではない。強い意志力と集中力が必要だが、こうした力に欠ける者もいる。」

もちろんポッターのことだった。閉心術の個人授業で示した意思力の弱さ。ポッターに目を向けると、反抗的な目でにらみ返してきた。それが神秘部の闘いという結果を招いたというのに、何の反省もしていないのは明らかだった。

「それでは、2人1組になり、1人が無言で呪文をかけ、もう1人も同じく無言で跳ね返してみなさい。始め。」

取り組む生徒たちを見て回ると、小さな声を出してごまかす者もいたが、グレンジャーは10分ほどでうまく跳ね返していた。皆予習をしてくれば、このくらいできてしかるべきなのだ。しかし、ポッターとウィーズリーの組をみると・・・ウィーズリーが呪文をかけられず、跳ね返すべき呪文がこないポッターはそれをポカンと見ているだけだった。

「悲劇的だな、ウィーズリー」

見かねて私が手本を示そうと杖を上げるや否や、ポッターが教えたこともない楯の呪文を大声で叫び、私はバランスを崩してしまった。

「今は無言呪文の練習をしているのはわかっているな、ポッター?」

詰問すると反抗的に礼を失した答えをしてきた。なぜポッターは教師に敬意を表し、まじめに学ぼうとしないのか?誰より必要だというのに。・・・血だ。横柄で自らを省みぬポッターの血を受け継いでいるのだ。父親と同じ横柄な態度で、父親と同じように殺されたいのか?私は罰則を課し、土曜日に研究室に来るようポッターに告げた。ポッター以外は、他の学年も含めて、概ね真面目に授業に取り組んでいるようだった。

しかしポッターの罰則は延期になった。土曜日にはダンブルドアがポッターに個人授業をするというのだった。残り少ない時間を割いて、ダンブルドアはポッターに何を教えるつもりなのだろう?気になったのだが、その後ダンブルドアは「ドラコの様子に気をつけるのじゃ」と言い残してしばらく学校を留守にしてしまい、話す機会も持てなかった。

ドラコの様子もおかしかった。OWL試験を終えた6年生は、科目数が減って自由時間が増える半面、授業内容が高度になり宿題が多いのだが、ドラコは宿題を提出しなかった。他の教授たちに聞くと、私の科目だけではないようだった。宿題もやらず、何を企んでいるのだろう?研究室への呼び出しにも応じない。

ポッターもダンブルドアもドラコも、イライラすることばかりだった。頼みの綱も、心配の種も、私の思い通りにならぬことばかり。気を揉むばかりで時間だけが過ぎてゆく。私にできることは何かないものか?気休めに過ぎないと思いながら、闇の魔術を調べなおし、対抗呪文や呪いを癒す魔法薬を研究し、まとめ上げていった。ちょうどどちらにも造詣が深く、私の学生時代の恩師でもあるスラグホーン教授が魔法薬学の後任となっていたので、さりげなく助言を求めたり、今では手に入りにくい古い本を借りたりすることができた。

しかし、ダンブルドアが死んだ時には、同時に私は闇陣営に留まることになり、身近でポッターを守ることは叶わない。このような研究が何の役にたつのかとため息をついた時、ふと、ほんの思いつきなのだが、グレンジャーの顔が浮かんだ。知ったかぶりの出しゃばりではあるが、年度初めに教科書を丸暗記しているほどに学習意欲は高い。防衛術の授業でやることは生徒皆に授業で教え込むとして、呪いや傷を癒す治癒呪文と魔法薬について、役に立ちそうな知識をグレンジャーに与えておくのはどうだろう。

もちろん、生徒を敢えて危険に巻き込むことはできないが、グレンジャーはポッターの仲間だ。神秘部の戦いでも、ともに出かけて呪いの傷を負った。あの時は危ういところで騎士団を送れたからよかったが、この先は私の目が届かぬところで危険な目に会うこともあるだろう。グレンジャーが治癒呪文を知り、魔法薬を携えていれば、ポッターのみならず本人や他の者の助けとなるかもしれぬ。考えるうちに、これは意外によい思い付きではないかと思えてきた。問題は伝える治癒呪文や魔法薬の選定と、本人にも、また万一闇陣営に知られても怪しまれぬような伝え方だった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ダンブルドア ポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(10)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


銀色に輝く牡鹿と牝鹿。立ち並ぶ2つの守護霊を見て、私は強張っていた心がわずかながら和らぐような気がした。リリーが私の魂に灯りを灯してくれたように、私もルーピンの心に幸せな思い出を残せるのだろうか。

ダンブルドアの指示にやむなくうなづいたものの、感情的には受け入れられるはずがなかった。信頼し、尊敬し、導きを受け、ただ一人心を明かしてきたダンブルドアが死ぬ。私が殺す。それにくわえてその後のことを考えると、暗澹たる思いに沈むしかなかった。私は味方には裏切り者の敵と思われ、裏切り者の私を信ずる敵には味方を演じて嘘をつくことになる。

ダンブルドアをこの手にかければ、「ダンブルドアが信じているから」私を同士と思っていた者たちは、私を裏切り者と信じて疑わないだろう。いや、もともと敵方だったのだと思うだろう。心を隠し、嘘をつき、ただ一人、命をかけて敵陣営に潜る。信じられる者も、信じてくれる者も、帰る場所もない。リリーを死なせ、ダンブルドアを殺めた者として、魂に灯るリリーの灯りだけを支えに、その息子を守るため一人戦い、死ぬのだと思い詰めていたのだが。

リリーが私に遺してくれた灯りそのものといえる牝鹿の守護霊。それにそっと寄り添う牡鹿。

ダンブルドアの命を使う大芝居をぶち壊しかねないから密命は明かせぬし、まもなくダンブルドアを殺めて敵方に下る身では友情や信頼を語ることはできないが、、、牡鹿には、牝鹿の話を伝えておこう。

私がリリーの話を終えると、ルーピンは言った。

「君がリリーに出会えてよかった。」

「ああ。」

「私は君に会えてよかったよ。」

心の中で、私もルーピンに会えてよかったとつぶやいた。りりーのくれた1つの灯りが、また別の灯りをともしたような気がした。

私がダンブルドアを手にかけた時、ルーピンはそれでも私のことを信じるだろうか?それとも、15年前と同じように、信じていた者の裏切りにより、また大切な人を失ったと嘆き恨むだろうか?

いずれにせよ、ダンブルドアを手にかけた後は、闇陣営に留まることになる。私が戦いを生きながらえ、騎士団の仲間と顔を合わせることはないだろう。ルーピンが私を信じたかどうか、私が知ることはないかもしれないが、信じてくれると思いたかった。私は祈るような思いで、消えた光の影を眺めていた。


夏休みも終わりに近づく頃、スピナーズエンドの自宅に思いがけない人が訪れた。

「ナルシッサ!」

ルシウスがアズカバンに囚われ、ドラコにはダークロードから報復の任務を与えられ、どんなに心細いことかと慰めに行こうと思っていた。ダンブルドアの一件で後回しになっていたのだが。やはり家族同然と思う気持ちは同じなのだと喜んで迎えたのだが、、、

「スネイプ。」

フードをかぶった同伴者はベラトリックスだった。ダークロードの熱狂的信望者だが、神秘部の闘いの失態以来冷たくあしらわれ、私のことを快く思っていない。どころか、昔から私とは折り合いが悪いうえに、ルシウスと私の関係も知っている。嫌な相手だが、ナルシッサの姉だった。ドラコの私に対する反抗的な態度も、この伯母に煽られたのかとピンと来た。

「セブルス、ここを尋ねてはいけないとわかっていましたけど、お願いがあって来ましたの。あなたしか頼れる人はいないの。」

ナルシッサの頼みがドラコに関することはわかりきっていた。ナルシッサを慰め、心おきなくドラコについての相談にのりたいのは山々だったが、ベラトリックスがいてはうかつなことは言えない。それにワームテールもいる。私の補助にと寄こしたダークロードの本心はわからないが、ワームテールが私の動向を探り、何かあればダークロードに知らせて手柄にしようと思っていることは明らかだった。

さからうワームテールにワインの準備をさせて追い払い、ナルシッサの話を聞こうとしたのだが、私を疑うベラトリックスがじゃまをする。というより、ベラトリックスはこの件につき、私に介入されたくないのだろう。甥を助けて手柄を上げさせることで、ダークロードの寵愛を取り戻したいのだ。

いつも陽気でおっとりしているナルシッサが涙ぐんでいるのは気の毒でならなかったが、この先ベラトリックスの余計な介入を避けるために、私はダークロードの信頼を得ているのだと釘をさしておいたほうがよいかもしれない。ベラトリックスと同様、影で私を疑うデスイーターも多いなか、疑いを晴らすよい機会とも思えた。

ナルシッサにことわり、ベラトリックスに私を疑う理由を尋ねた。山ほどある!とベラトリックスが並べ上げた疑問はもっともなものだったが、すべてダークロードに問われたことで・・・しかもクルーシオと開心術を掛けられながら・・・それを切り抜けた私に、凶暴だが単純なベラトリックスを丸めこむのは容易なはずだ。ダークロードがそのような疑問を持たないと思うのか、納得しなければ私が今も生きていると思うのか、まさかダークロードが騙されていると思うのか、そういう話をダークロードから聞かせてもらえないのかと、皮肉を交えたり挑発したりしながら、1つ1つ丁寧に答えてやった。

ベラトリックスは食い下がり、ときには嫌な所を突いて来た。たとえば、ダークロードが消えた後に私がホグワーツに居残った理由。突き詰めれば、まさに私の裏切りが理由なのだ。最初はダンブルドアの懐で可愛がられていたなどというので、希望した闇の魔術に対する防衛術の教授にはさせてもらえず、可愛がられていたわけではないと返したのだが、しつこくなぜ居残ったかを追及された。アズカバンより居心地のいい職があったからで、ダークロードがそれにより情報を得られたことを認めてくれるのに、なぜとやかく言われるかわからないと突っぱねた。

また、ベラトリックスは挑発にのって、おかしなことを漏らしたりもした。神秘部の闘いの失敗によりベラトリックスがダークロードの信頼を失ったとつつくと、以前からダークロードの最も大切な物を託されていると口走ったのだ。詳しくは聞けなかったが、ルシウスが託されていた因縁ありげなトム・リドルの日記を思い出した。ダークロードは姿を消す前に、最も信頼していた配下に何か重要な物を預けていたのだ。

すべての質問に答えてもベラトリックスはまだ何か言いたげにしていたが、言い淀んだすきに話を戻し、ナルシッサに用件を促した。それはもちろん、ルシウスがいないのにドラコに密命が下されたことなのだが、密命の口外を禁じられているので口ごもっている。ダークロードが禁じたなら言うべきではないと言ってベラトリックスを喜ばせて、しかし、たまたま私はそれを知っているとナルシッサに助け船を出した。

ナルシッサは、ドラコが密命を果たせないこと、ルシウスを罰するための密命だと正しく理解していた。私が、ダークロードがルシウスに対し非常に怒っていることを認めると、ナルシッサは、それではやはりドラコを途中で殺させるつもりで選んだのだと取り乱し、涙を流してすがってきた。

私はナルシッサに、密命をやめるようダークロードを説得することはできないが、私がドラコを助けられるかもしれない、やってみることはできると告げた。ダンブルドアの指示通り、ドラコの企てを知り、ドラコや周囲に害が及ぶことを食い止められるように、話を誘導したのだ。するとナルシッサは、破れぬ誓いを求めてきた。

いざとなれば私は危険をすり抜けると騒ぐベラトリックスを無視し、私はナルシッサの涙に濡れる瞳を見つめて静かに言った。

「わかった、ナルシッサ。破れぬ誓いを結ぼう。」

私はナルシッサと向かい合ってひざまずき、右手を握り合った。そして唖然としているベラトリックスに誓いの結び手を頼んだ。ベラトリックスが私たちの傍らに立ち、握り合った手の上に杖の先を置いた。ナルシッサが言葉を発した。

「セブルス、あなたはダークロードの望みをかなえようとするドラコを見守ってくださいますか?」

「そうしよう。」

私が答えると、杖の先から炎が出て、赤い紐のように私たちの手に巻きついた。

「そしてあなたは、ドラコに害が及ばぬよう、力の限り守ってくださいますか?」

「そうしよう。」

杖の先から2つ目の炎が出て最初のものと絡み合い、鎖のように巻きついた。

「そしてもし必要ならば、、、ドラコが失敗しそうな場合は、ダークロードが命じたことを、あなたが実行してくださいますか?」

ナルシッサがささやくような声になり、私は手を引っ込めたい衝動に駆られたが、、、

「そうしよう。」

3つ目の炎が飛び出して、他のものと絡み合い、握り合った手にがっしりと巻きついた。

「セブルス、感謝します、感謝します。ありがとう、セブルス」

言ったきり泣き崩れるナルシッサを助け起こし、あっけにとられたままのベラトリックスとともに送り出した。

すでに逃れる術はなかったこととはいえ、、、破れぬ誓いを結んだ限り、ダンブルドアを殺さなければ、私が死ぬ。私が死ねばよいのだが、、、「それで、おまえが死んで何になるというのじゃ?」ダンブルドアの声が聞こえてきそうだった。私が死んでも何にもならぬが、私がダンブルドアを殺すことは、ダークロードの願いを叶え、ダンブルドアの計画を遂行し、ドラコとナルシッサとルシウスを救うことになるのだった。

しかたがないのだ。私は1年たたぬうちに、ダンブルドアをこの手にかけることになる。

リリーの遺志を継ぐために、リリーの息子を守るために、避けられないことなのだ。吐きそうになる嫌悪感と悲しみを飲み込んで、再び、、、ダンブルドアの指示を受けてから何度めになるだろう、、、私は自分に言い聞かせた。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

セブルス・スネイプと謎のプリンス(9)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


痛々しいのはセブルスだけではなかった。シリウスの死以来、騎士団のトンクスが髪の色が変わるほど落ち込んでいた。得意の七変化もなりをひそめている。シリウスの死に責任を感じ、自分を責めているのは私だけではなかったようだ。神秘部の闘いでシリウスの前にベラトリックスと戦っていたのがトンクスだった。トンクスは、自分がベラトリックスに倒されていなければ、シリウスが戦って命を落とすことはなかったと感じているのだった。

トンクスの落ち込みは私にもよくわかった。私自身、セブルスに慰められるまでは、自分を責め自分が死ねばよかったと思っていたのだから。まだ若いトンクスが気の毒で、一生懸命慰めてあげた。シリウスの死は、トンクスの責任ではない。少なくとも、トンクスだけの責任ではないと。

私がシリウスの外出を止められたら、ハリーがヴォルデモートに誘き出されなければ、そうならないようにセブルスが閉心術の授業を投げ出さなければ、あるいはダンブルドアが事態をもっと説明していれば、そしてシリウスが冷静な気持ちを保てば、クリーチャーが裏切らなければ、、、。そのどれか一つでも逆に転べば、シリウスは死ななかったかもしれない。だけど、それは起こってしまった。もう取り返しは付かない。私たちがすべきことは、自責の念でいつまでも落ち込んでいることではなく、シリウスの死を無駄にせぬよう前を向いて進むことだと思う。


トンクスがようやく納得してくれたのはよかったけれど、心を尽くして慰めるうち、思いがけないことが起こった。つまり、トンクスが私に好意を持ったのだった。若くて可愛らしい、闇祓いでもある優秀な魔女が、10以上も年上の、貧しくみすぼらしく、生活に疲れ果てた、危険極まりない人狼の私に。

内心、嬉しくないことはなかった。魔女のトンクスと、周囲に認められるカップルになることを想像すると、晴れがましい気分になった。トンクスは、人狼であることも貧しいことも、年が離れていることも、問題ではない、私の人柄に惹かれたのだと言ってくれた。

しかし、それの何が問題なの?と詰め寄られると、その無邪気さが重荷に思えた。トンクスが知る私は、人狼の私を受け入れてくれる人たちの中にいる時のものだけだった。正体が知られることを恐れて嘘をついたり、卑屈なほどに人の評判を気に病む私の姿は知らない。変身してしまえば、人を食う本能に支配されて、周囲に危険をまき散らす恐ろしい姿も知らない。そして私といる者は、私とともに恐れられ、忌み嫌われ、排斥される。そんな全てを理解しているとは、とうてい思えなかった。

その全てを目にして、何度も被害にあいながら、セブルスは私を許し、受け入れてくれた。セブルスにとっては、成り行きの後の慣れ合いともいう関係だろうけれど、私はセブルスが好きだった。疲れてやつれたセブルスの肩を抱くのも好きだったし、自分自身恥ずかしくなるような惨めな姿を曝して、嫌そうなセブルスに纏わりつくのも好きだった。

やっと手にしたセブルスとの関係が損なわれるようなことは一切したくない。3年前ホグワーツの教師だった時は、心を打ち明けながら、シリウスが現れるや駆けつけたうえに脱狼薬を飲み忘れて生徒の前で変身するという、最悪の形で裏切ることになってしまった。もう二度とそんなことはしたくない。

私のような者はトンクスにふさわしくないと繰り返し言い聞かせ、彼女のような素敵な魔女には、きっとふさわしい魔法使いが現れるはずだと言ったのだけれど、一途なトンクスはなかなかあきらめてくれなかった。その思いはありがたかったけれど、私はセブルスに知られるのではないかとそればかり気がかりだった。


騎士団本部は、シリウスの死後相続したハリーの承諾を得て引き続きブラック邸に置かれた。ハリーは私に住んでいてもいいと言ってくれたけれど、シリウスの辛い思いが詰まった家に留まりたくなかったし、トンクスと顔を合わせる機会の多い本部住まいも気が進まなくて、安い貸し部屋を見つけて引っ越した。

狭くて古いその部屋に、セブルスは時々訪れてくれた。たいていは騎士団の集まりの後の、慌ただしい密会だったけれど、セブルスは意外にも普通の恋人らしく振る舞ってくれた。もっとも、セブルスが恋人と思っていてくれたかは定かではないけれど。

セブルスはたまに、驚くほど馴れたしぐさをみせることがあった。たとえば飲み物のグラスを受け取るときとか、腰を下ろす時にちょっと腕を添えたりした時に。些細なことだけれど、そういうことをされ慣れていて、当然と受け止めるような。そんなときは、ルシウス・マルフォイの影を感じた。マルフォイが手塩にかけたセブルスを、奪ったような気もするけれど、マルフォイがしてやったようなことは何一つできない敗北感。だけど思いは負けないと伝えたかった。

みすぼらしい部屋の、繕いのある小さなソファに並んで腰かけ、私は杖を取り出した。

「セブルス、見て。エクスペクト・パトローナム!」

私の杖の先から光の粒が出て、銀色の牡鹿になって消えていった。セブルスが驚いたように見ている。

「私の守護霊が変わったんだよ。君のは牝鹿だろう?この間守護霊の伝令を見たよ。」

セブルスが杖を上げて守護霊を出した。私ももう一度杖を振った。銀色の牝鹿と、それを追うように走った牡鹿が並び、こちらを振り返った後光の影を残して消えた。

「牝鹿の守護霊は、、リリー?」

尋ねるとセブルスは小さくうなづいた。幸せそうな、切なそうな顔だった。リリーが死んで、もう15年になる。

「セブルス、こんなに長い時が過ぎたというのに、変わらずに?」

「永遠に。」

セブルスの答えをきいて、私は少し考え込んだ。もう何年も、リリーが生きている頃から、セブルスはマルフォイの恋人だったはずだ。それでセブルスの守護霊が変わっていたら、私の守護霊は蛇にでもなっていたのかと思うから、リリーのものでよかったけれど。しばらく沈黙が続いた後、セブルスが話し始めた。

ルーピン、お前のような人生を歩んでいると、死にたいと思ったことがあるだろう?」

「まあね、残念ながら、ほんの幼い子供の頃から何度もあるよ。」

「それでも死ななくていまだに生きているわけだ。何が踏みとどまらせたと思う?」
 
「うん、、、子供の頃は、母さんかな?私が死んだら母が悲しむと思ったから。父もだけどね。死にたいほど辛くても、母の顔を見ると死んではいけないと思ったよ。」

「そうだろうな。親とはそういうものだ。子供に存在の承認を与える。私は子供の頃、そのように感じることができなかったのだ。私が死んでも母は気付かないのではないかと思っていた。私がそこに生きているのも気づいていないのではないかと思うくらいだったからな。父は私がいるのが目ざわりだったようだが。」

「・・・」

リリーに会って初めて、気にかけてくれる人がいるのがどういうことなのか知ったのだ。生きているということはよいことなのだなと。生きている意味がわかった。だから、私が生きている限り、守護霊は変わらない。」

「私が知る限り、いつもリリーは君のことを気にかけていたよ。」

思いに浸っているようなセブルスの顔が少し寂しげになった。リリーの死を思っているのか?

「君がリリーに出会えてよかった。」

「ああ。」

「私は君に会えてよかったよ。」

2人でしばらく、消えた守護霊の光の影を眺めていた。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ルーピン リリー

セブルス・スネイプと謎のプリンス(8)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


思いがけずセブルスに受け入れてもらえて、なんだか泣きたいような気分だった。子供のころから私たちの間にあった様々な出来事、、、辛いことや苦い思いが多かった、、そんなことすべてを許されて受け入れられた気がした。もちろん、セブルスが酔って私のことをルシウス・マルフォイと勘違いして始まったことだし、私のほうにはシリウスに対する後ろめたい気持ちもあった。それでも、厳しい情勢の中、互いの温もりはなによりの慰めだった。

騎士団で会う時のセブルスは相変わらず険しい顔をして、私にも誰にでも、辛辣な皮肉めいた言葉を飛ばしていたけれど、2人になったときの落差も私には嬉しいものだった。セブルスの表情といえば、怒りや嫌悪、あるいは皮肉めいた嘲り程度で、あとは何を考えているのかわからない無表情ばかりだった。それが、2人だけになった時は、わずかとはいえ、喜びや悲しみ、寂しさや優しささえ表すことがある。日ごろ無表情に押し殺したセブルスの感情をみせてもらえるのは、心が温まり溶けていくような喜びだった。人に懐かない野良猫が自分にだけ心を許しているのを見るような。

だけど、何回目かに会った時、セブルスはいつにも増してピリピリしていた。集会の間、ダンブルドアの名が出るたびに眉間に深いしわを寄せ、言った相手を一瞬睨みつける。おかしなことだった。「ダンブルドアがおっしゃているから」とか言うのは、よくあることだったから。しかも、集会後に抱き合ったあと、涙をにじませているのに気がついた。驚いた私が顔を覗き込むと、プイと横を向いてしまったけれど。

「セブルス、どうしたの?何かあったんだね?」

ルーピン、何もない日などない。ディメンターの襲撃もあったし、また行方不明者が出た。」

「そんなことじゃなくて。君が涙を見せるようなことが。」

「ふん。私のことをスニベルスと言いたいのだろう?」

「ごまかさないでくれよ。私は君をそんなふうに呼んだことはないよ。」

顔を包んでこちらを向かせ、瞳を覗き込むと、セブルスは閉心術を使っていた。私は傷ついたし、ようやく開いた扉がまた閉ざされるような不安に焦りを感じた。

「私は心配なんだ。君はまた一段とやつれて痩せ細っているし、食事は摂っているのかい?」

セブルスは答えず、唇を噛みしめている。それはまるで嗚咽を堪えているように見えた。

「セブルス、私のことを信頼して、話してくれないかな。」

「おまえのことなど、信頼できない。」

私はまた傷ついた。

「どうして?私たちは同じ騎士団の仲間じゃないか。それに、信頼できない相手にこんな無防備な姿を曝すのか、君は?私はずっと君を信じているよ。」

「おまえは私のことを信じたりしない。」

「何を言い出すんだ、セブルス!たしかに君の過去のことを影で何か言ったりする者もいるけど、私は何があっても君のことを信じるし、ダンブルドアだっていつも・・・。」

セブルスの視線がきつくなって、私は失言したことに気がついた。セブルスの瞳には憎しみと悲しみと、、、怯え?

「何があっても私のことを信じると?」

「もちろんだよ。だから君も、、」

ルーピン、それは、何かあった時にわかるだろう。」

謎のような言葉を残してセブルスはそれきり口を開かず、何か物思いに沈んでいた。私ももう何を言ってよいのかわからなかったから、ただ髪をなでて額に唇を寄せた。セブルスは汗と疲労の匂いがした。

「眠っていないんだろう。さあ、寝るんだ。」

セブルスは私の腕の中で大人しく眠ったけれど、眠りは浅いようで、何度もうなされていた。いやだ、いやだと涙を滲ませながら。何があったかわからないけれど、セブルスが眠れない食べれない状況に陥っていることは確実に思えた。私の不安は最大限に達し、浅い眠りから覚めて帰ると言うセブルスを引き留めて言ってみた。

「セブルス、シリウスが死んで、私はもうブラック邸に留まる意味がなくなった。もしできたら君の家に、任務で出かけている時以外ということだけど、君の家に泊めてもらうことはできないかな?」

「それはできない。ワームテールが来るのだ。」

「ワームテール?ピーターが?どういうことだい?」

「ダークロードが私の補助に家に寄こすと言っている。」

「親切だね。」

「ああ、実にありがたいことだ。大方、近くに置いておくのがうっとうしくなったのだろう。誰も彼も、私にめんどうばかり押し付けてくるのだ。」

セブルスは苦々しげに言って去って行った。細い後ろ姿は痛々しかったけれど、それでも眠る前よりは少しましになったように思えた。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ルーピン ダンブルドア

セブルス・スネイプと謎のプリンス(7)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です。本作のネタバレを含みます)


ホグワーツの校長室に駆け付け、私は血の気を失った。ダンブルドアはソファに倒れ、垂れ下がった右手の指が呪いで焼け焦げ、手から腕へと邪悪な呪いが広がっていたのだ。テーブルには壊れた指輪とグリフィンドールの剣が置いてあった。

私は必死の思いで、杖で呪いを抑え、左手で魔法薬を流し込んでいった。ダンブルドアがかすかに動き、うっすらと目を開けた。

「なぜ!なぜ指輪をはめたのですか?呪いがかかっていることはおわかりだったでしょう?なぜ触ったのですか?」

悲しみと恐怖と怒りに打ち震え、私は叫んだ。強力なその呪いは、ようやく片手に封じ込めたものの、止められるものではなかった。徐々に広がり、強まり、やがて命を奪う邪悪な呪い。なぜダンブルドアほどの偉大な魔法使いが、このようなことに。

「そそられでしまったのじゃ。」

何にそそられたのかという質問に答えはなく、残された命の時間を尋ねられた。

「なんとか片手に封じ込めてありますが、、、はっきりわかりませんが、あと、1年くらいです。時間とともに強くなる種類の呪いです。」

「わしは幸運じゃ。おまえがいてくれて、実に幸運じゃ、セブルス。」

私は不幸だった。

「もう少し早く呼んでくださったら、もっと何かできたのに。もっと時間を延ばせたのに。」

恨めしい思いで割れた指輪と剣を見下ろした。指輪を割れば呪いが解けるとでも思ったのか?

「わしは熱に浮かされておったのじゃ、間違いなく。」

なにか方法はないかと思考を巡らせていると、ダンブルドアは座りなおして言った。

「さて、これでことは単純になる。」

なんのことかと思うと。

「かわいそうなマルフォイ少年にわしを殺させるというヴォルデモート卿の計画のことじゃ。」

そんなことを言っている場合ではない。とにかくその手の呪いをなんとかと思うのに、ダンブルドアはその話は終わりという合図に手を上げた。私はしかたなく答えた。

ダークロードはドラコが成功するなどと期待してはいません。息子が失敗して代償を払わされるのを見せ、ルシウスを懲らしめようとしているだけです。」

「つまりあの子はわしと同じく、死の宣告を受けているということじゃ。わしが思うに、ドラコが失敗すれば、後を引き継ぐのはおまえじゃろう?」

「・・・。それがダークロードの計画だと思います。」

「ではヴォルデモート卿はまもなくホグワーツを掌握できると考えているわけじゃの。その時には、おまえは全力で生徒たちを守ると約束してくれるじゃろうな?」

私は小さくうなづいた。もちろん、ダークロードの計画通りにいけばということだ。ダンブルドアの命を救えさえすれば。。。

「それでは、ドラコが何をしようとしているか見つけることが最優先じゃ。追い詰められた少年は、自分を危険に曝すばかりか、他の者にまで危害を及ぼす。手助けし導いてやると言うのじゃ。あの子はおまえに懐いておるから、できるじゃろう?」

「最近はそうでもありません。ルシウスが寵愛を失ってから、私がその地位を奪おうとしていると考えて反抗しています。」

「それでもやってみるのじゃ。わしのことより、ドラコが何か思いついた時に犠牲者が出ることが心配じゃ。いずれにせよ、最終的にドラコをヴォルデモート卿の怒りから救う手立ては一つしかないが。」

人の心配をしている場合か?私は皮肉をこめて言ってやった。

「あの子にご自分を殺させるつもりですか?」

「いや、おまえがわしを殺さねばならぬ。」

なにを、、、何を言ったのだ、ダンブルドアは。耳に入った言葉が信じられなかった。しばらく、何も考えられない。そして徐々に、ダンブルドアの手の呪いがじわじわと広がってゆくように、私の心に事実がしみ込んできた。ダンブルドアは本気で言っているのだ。しかし、私にそのようなことができるとでも?ダンブルドアが近く死を迎えることさえ受け入れがたいのに。悲しみと言うより、怒り。

「今すぐをお望みですか?」

「そうは急がぬ。その時は自然に来るじゃろう。今日の出来事からいって、間違いなく1年以内には。」

「死んでもいいのなら、あの子に殺させてやったらいかがですか?」

「あの少年の魂はそれほど壊されてはおらぬ。わしのために引き裂くことはできぬ。」

「それではダンブルドア、私は?私の魂は?」

私は叫んだ。

「老人が苦痛と屈辱から逃れる手助けをすることがおまえの魂を傷めるかどうかは、おまえだけにわかることじゃ。セブルス、これはわしのたっての願いなのじゃ。なにしろ、わしに近く死が訪れることは確実なことじゃからの。」

それからダンブルドアは、楽に死にたいだの、グレイバックに痛めつけられて見苦しい羽目になるのは嫌だだの、ベラトリックスにいたぶられたくはないだのと私をかき口説いた。しかし冗談めかした口調とは裏腹に、私の魂を貫くその視線が、断固とした意思を伝えてきた。逆らい難い、、逆らえぬことを知っている、その目。

私はやむなくうなづき、ダンブルドアは満足げに言った。

「ありがとう、セブルス。」


何かが起こり、その前と後では世界が一変してしまうような出来事がある。今日の出来事は、まさにそれだった。ダンブルドアの死が確定する前と後。私がダンブルドアを殺すことが、確定する前と後。

初めてではなかった。この前のそんな出来事、リリーの死。崩れ落ちた世界を、ただダンブルドアの導きに従い、生きながらえたのだ。ダンブルドアの信頼を唯一つの拠り所にして。そのダンブルドアが死ぬ。私に殺せと言う。私にとってどんなに残酷なことか、わかっているのだろうか?

もちろんわかっているはずだ。わかっていて、やれという。逃れる道はないのだと。

追い詰められて私が闇陣営に寝返ったとしても、同じことなのだった。ダークロードも、私にダンブルドアを殺させる計画なのだ。私に逃れる術はない。どちらにしても呪いで死ぬのなら、その死を生かす最善の策。より大きな目的のための、ケチのつけようのない完璧な計画。それでも、いやだった。ダンブルドアをこの手にかけるなど。

「リリー」

語る言葉は続かなかったけれど、すがるようにその名を呼んでみた。薄暗い部屋で、一人膝を抱えて座っていた子供の頃のようだった。リリー、リリー。何度も、何度も、繰り返し。ようやく、言葉が続いた。

「リリー、僕はどうすればいい?君ならどうする?」

もちろん答えはない。けれど、かすかにきこえる魂のささやき。苦しくても、逃げない。苦しくても、立ち向かう。勇気を持って、セブ。


数日後、ダンブルドアから再度呼びだされた。焼け焦げた右手は、そのままだった。

セブルス、今日はよい話じゃ。今年度は闇の魔術に対する防衛術をおしえてもらいたい。」

「わかりました。」

「長年の希望だったじゃろう?このくらいしかしてやれんがの。」

「ありがとうございます、アルバス。」

1年以上はもたない席だった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ダンブルドア ダークロード ハリーポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(6)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


神秘部の闘いの後、闇陣営は迅速に動いた。「復活が明らかになった今、存分に力を思い知らせよ」ダークロードの言葉に従い、デスイーターは巨人の助けも得てマグルへの大規模な破壊活動を行い、ディメンターをマグルの街に放った。魔法界も暗い影に覆われた。魔法省で信任の厚かったアメリア・ボーンズが殺害され、騎士団のエメリーン・バンスも命を落とした。巷でも殺人や行方不明事件が頻繁に報道される。批判を受けた魔法大臣のファッジは辞任を余儀なくされた。

派手な動きの一方で、ダークロードが密かに進める企みもあった。デスイーターたちが暴れまわる中、私はダークロードに召喚された。たまたま一緒にいたルーピンは、むろん私を引き留めるようなことは言わなかったが、無事を祈るという言葉とともに握りしめた手からは、不安と心配が伝わってきた。それは私の心にあるものと同じだった。ルーピンの手を放し、アパレートの準備をする。

待つ者を残し、この緊迫した状況の中、一人ダークロードに対面するのは身のすくむ思いだった。死の恐怖、殺させられる恐怖、明日は我が身の見たくもない虐待、他者の苦痛を喜ぶ邪悪な心、、、生理的ともいえる恐怖に立ちすくむ時、私はいつもリリーを思う。

リリーは一人、ダークロードの前に立ち、そこを退けば助けてやると言われながら、息子に愛の守りをかけて死の閃光を受けた。それは十数年の長きにわたり、息子を守りダークロードを追い詰めている。そして、その遺志は私に生き続ける意味を与え、生きていればこその幸せもくれた。私はリリーの魂とともにダークロードの前に立つのだ。

心を落ち着け、空にした。ダークロードほどの開心術師の前では、わずかな恐怖、心の揺れも死に直結する。私の命は贖罪に捧げる覚悟だが、ここで死んではリリーの遺志を守ることができない。リリーの魂を胸に、私はダークロードのもとに参じた。

予想外に、ダークロードは穏やかな口調で話しかけてきた。

「セブルス、おまえはマルフォイの息子をどう思う?ホグワーツで教えているはずだが。」

「我が君、それはドラコ・マルフォイのことでしょうか?」

「そうだ。役立たずのルシウスに代わり、任務を果たしてもらわねばならぬ。」

ダークロードの声に憎々しげな響きが加わり、私は慎重に言葉を選んだ。

「ドラコ・マルフォイは5年生を終えたばかりです。学業はそれなりに優秀ですが、恵まれた家庭で甘やかされて育ち、まだほんの子供です。とても任務を果たせるようには思えません。」

「しかしルシウスの失態は償わせねばならぬ。」

「あの子供にできることなど、何かございますでしょうか?」

「ホグワーツにはダンブルドアがいる。生徒なら容易に近づけるであろう?ダンブルドアを倒す密命を与え、父親の汚名を挽回する機会だと言ったら、喜んでおったぞ。」

「しかしダンブルドアはそれなりの力を持った魔法使いで、ドラコ・マルフォイなどかなうものでは、、」

ダークロードの笑いが私の言葉を遮った。

「成し遂げられねば死があるのみ。ルシウスも一人息子の活躍にずいぶんと気を揉むことであろう。もし間違って成し遂げられれば、お前にもうしばらく騎士団のスパイを続けてもらえるというものだ。」

「それでは成し遂げられなかった場合には私が、、?」

「セブルス、余はお前の力を高く評価している。子供相手に手こずった役立たずどもに比べ、お前は必要な情報を迅速に伝えてきた。ダンブルドアや不死鳥の騎士団の情報もお前の働きがなければ得られぬものだ。情勢をみて、為すべきことを的確に判断できるであろう。」

「我が君、身に余るお言葉でございます。」

「仲間の中にはお前の忠誠を疑う者もいるが、余はお前を信じている。なぜかわかるか?」

私は話の意図がわからず、ただ頭を下げた。

「マグルの父親への軽蔑と憎しみ。貧しく惨めな生い立ち。お前は余と同じ根を持っているのだ。」

「我が君、お父上はマグルなのですか?」

「そうだ。力もなき穢れたマグルであった。余自身で殺してやったわ。母親は顔も知らぬが、すぐれた血筋を余に継承してくれた。偉大なる魔法使い、サラザール・スリザリンの直系だ。お前の母親も純血だときいている。」

「はい。仰せの通り、母はプリンス家の出自でございます。」

「半純血のプリンスというわけか。セブルス、半純血の者には甘やかされて思いあがった純血の出自にはない強さがあると思わぬか?結果をもって力を示さねばならぬのだ。おまえは今までのところ、結果を出している。余はおまえに期待しているのだ。わかるな?」

「我が君、ご期待に添えるよう全力を尽くします。」


対面から解放され、会話の意味を吟味した。ダークロードの面前にあるときは、いつ心をのぞかれるかわからないから、余計なことは考えないことにしている。

まず重要なことは、ドラコにダンブルドア殺害の密命を下したということだった。しかし当然ながらダークロードはドラコに果たせるなどとは考えていない。ルシウスを痛めつける手段なのだ、暴行される私を見せ付けたのと同様に。予想通り果たせなければ、殺すことすら考えている。?私にとって最も我が子に近い存在、ゴッドサンのドラコを。

その後には、自らの出自に触れてまで私への期待を語った。あれには何の意味があったのだ?同じ根を持つ私なら、ダンブルドアを殺せるはずだと言いたかったのか?純血名門のルシウスに失望し、自らの力のみを拠り所とする半純血の私に親しみと報償をちらつかせて、成し遂げさせる意図なのか?

たしかに、昔の私なら忠誠を感じたかもしれぬ。一瞬、その惨めな子供時代に憐れみを感じたのも事実だった。私と同じ、見捨てられた子供。恵まれた純血家系の魔法使いを妬み、蔑みたい気持ちがダークロードにもあり、腹立ち紛れに同じ立場の私に漏らしたのかもしれない。

ダークロードも、ホグワーツで初めて安らぐ家を見つけたのだろうか?清潔なベッド、飢えを満たすためだけではない食事、気にかけてくれる人。もしリリーに出会えなければ、私もあのようなおぞましい存在になっていたのだろうか?私を信じると言うダンブルドアが、それでも私に闇の魔術に対する防衛術の教授職を与えないのは、その根に再び闇が育つことを懸念しているのかもしれない。

ルシウスへの報復として暴行させた私に、次の報復の裏話を得意げにきかせる思考も、理解しがたかった。私がルシウスの痛みを自分の痛みと感じるなどと、夢にも思わないということだ。もちろん私は閉心術により、ルシウスへの思いは隠したし、むしろ、利用して力を得ようとしたかのように粉飾はした。だが、ダークロードはルシウスの心の中に、親密な2人の姿を見たはずなのだ。ダークロードには、それは単なるルシウスの弱点だった。つまり、ダークロードは愛の痛みも温もりも、まったく理解していない。愛を知らず、私の中にある恨みや憎しみだけに共感するダークロードは、おぞましくもあり、哀れでもあった。

思いは様々に廻ったが、私は現実に思考を戻した。まずはドラコだ。私はドラコの受けた密命をダンブルドアに報告し、急ぎマルフォイ邸に出向いた。密命である限り、私がドラコに与えられた任務を知っている素振りは見せられない。ドラコに対する言動は、すべてダークロードに筒抜けになると考えなければならない。

それとなくルシウスの不在を見舞い、ドラコには、困ったことがあったらいつでも相談するように言った。ルシウスがいない間は、ルシウスの長年の友人であり、スリザリンの寮監である私を頼ればよいのだと。しかしドラコは反抗的だった。ダークロードの寵愛を失ったルシウスに、私がとって代わろうとしていると思い込んだようだ。あるいは誰かに吹き込まれたか。ナルシッサは、ドラコは反抗期なのですと、心細げに取り繕っていた。

ドラコのことが心配でならなかった。マルフォイの家門と父親を誇りに、その期待に応えたい一心で育ってきた子供なのだ。もちろん、恵まれて育ったから世間知らずでもある。ダークロードの底意地の悪い本心など気づいてはいないだろう。その上、グレンジャーのような知恵のある友達もいない。私にまで背を向けて取り返しのつかぬことをしてしまうのではないか?ダンブルドアがスリザリンのドラコを救う手立てを考えてくれるかと一抹の不安もあった。

そのわずか数日後、ダンブルドアから緊急の呼び出しを受けた。私の人生を根底から揺るがし、生きながらえたことを呪うようなことが起こったのだ。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

セブルス・スネイプと謎のプリンス(5)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


私の無事を必死で願う言葉を聞くのは、不思議なものだった。私の身を気にかけてくれたのは、リリーとルシウスだけだ。そう思っていたのだが。

要するにルーピンは私に懐いてしまったのだろう。腕枕という実に居心地の悪い体勢でルーピンの長い告白を聞きながら、あきらめとともに合点がいった。親友を亡くしたルーピンは、群れを失った狼が受け入れてくれる仲間を求めるように、長年なんとなく関わりのあった私に懐いたのだ。

結局は暴れ柳事件が、こうも尾を引いてしまったのだ。

あの事件は私にとっても特別な経験だった。私はひどい家庭に育ち、ようやく見つけたホグワーツという居場所でも、苦労知らずのいい気な者から理不尽な嫌がらせを受け、唯一の心の支えであったリリーも失いそうな不安におののいていた。最悪のくじを背負って生まれおちたのだと思っていたのだが、あの日、自分以上に不運なくじを背負った者を目の当たりにしたのだった。

間近で変身された時こそ恐ろしさにおののいたものだが、逃れて後に思い返すと、心を占めたのは、憐れみだった。変身の苦痛、人を襲う本能を持った者に意識を支配される不安。それが毎月繰り返される。そしてなりたくてなったわけでもない、むしろ被害者ともいえるのに、人からは忌み嫌われるのだ。

あの時私は、たしかに私を襲おうとする狼の本能を感じたが、同時にルーピンの血を吐くような叫びもきいていた。「逃げて!はやく逃げて!」ルーピンが私を襲ってしまうことを、心の底から恐れていることが伝わってきた。それは、忌まわしい呪いに穢されぬ善良な心根に思われ、その善良さが哀れでもあった。だから私はルーピンが人に好かれたい思いが強すぎたり、そのために毅然と立ち向かう勇気を持てないことを知ったうえでも、ルーピンの人間性を疑ったことはない。どうにもルーピンには甘くなってしまうところがある。それをダンブルドアに見透かされて、3年前には脱狼薬を作らされる羽目になった。

脱狼薬は変身を止めるわけではなく、体が狼に変わっても人間の意識を保つだけの薬だ。だから、その人間の心根が悪ければ、狼の呪いを悪用することもできるわけで、もともと善良な心を持った者にしか処方しても意味のない薬なのだ。ルーピンだから調合してやったのだが、そのことも嗅ぎつけられていたのだろう。付け込まれる隙は十分あったということだ。

それに、ルシウスと間違って身を任せてしまった責任もあるし、ルーピンだとわかって驚きはしたが、そう嫌なわけでもなかった。人の温もりを求める気持ちは、私にもあったのだ。

「たしかに、こんな情勢だからこそ、人の温もりは心地よいものだ。」

私が言うと、ルーピンは信じられない言葉をきいたかのように唖然とした表情をし、それから泣きそうな笑顔でむしゃぶりついてきた。捨てられた子犬がまとわりつくように。私は釘を指しておいた。

「だが、私には任務がある。命がけの任務だが、それが最優先だ。情勢もきわめて緊迫している。」

セブルス、なぜ君はそんなにまでして・・・」

「私が生きている理由だからだ。これ以上説明するつもりはない。」

「わかったよ。だけど、生き延びる努力はしてくれるよね?」

「もちろんだ。」

それから何度か、周囲の目を盗んで、私たちは体を交わした。

ルシウスに感じるような憧れや愛情はなかったが、ルーピンとの間には、言葉にするまでもない理解と共感があった。貧しさ、孤独、かけがえのない人を失った喪失感、償いようのない愚かな過ち、まとわりついて消えぬ闇の呪い。逃れられない泥沼も、ともにもがく者がいれば少しは安らぐものだ。

しかし、不運を背負った者たちが、ささやかな慰めに浸ることを許すような情勢ではなかった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ルーピン セブルス ハリーポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(4)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


「ああ。長い話の長い前置きだよ。子供のころからのことだからね。君も知っての通り、私は人狼だから、ホグワーツに入学してから、いつ正体がばれるかといつもびくびくしていた。できるだけ人に関わらないように気をつけてね。だから、毎月決まって‘病気‘になる私のことを気にかけてくれるジェームスとシリウスに、初めは実は警戒していたんだ。すぐに、その彼らがいつも見ている人がいることに気がついたよ。君さ。だから私もその頃から、いつも君を見ていたんだ。

案の定ジェームスとシリウスに正体を知られて、だけど、それでも友達でいてくれる彼らにすごく感謝した。自分の正体を知って友達でいてくれる人がいるなんて、思ってもいなかったからね。だけどその彼らは、君を嫌って、いつも隙をみてつけ狙っていた。

なぜ彼らがそう君を嫌うのか、不思議だった。私の目にうつる君は、たしかに闇の魔術に傾倒してはいたけれど、それを使って人に危害を加えるわけでもない、真面目で頭のいい生徒だった。人づきあいが悪くてぶっきらぼうなところはあったけれど、私には、それは孤独なだけに思えたよ。私もいつも孤独だったから。一人でいるほうが安心できるというのは、やっぱり孤独だよね。もっとも、当時の君にはリリーがいたけれど。君は気づいていたか知らないけど、リリーといる時の君の表情は、柔らかくてあどけなくて別人のようだった。」

そんな表情を私に向けてくれたのは、昨日が初めてだった。マルフォイと間違っていただけだったけれど。

「よく観察していたものだ。」

つぶやくように言ったセブルスの目にかすかに切なげな色が浮かんだ。きっとリリーのことを思い浮かべているのだろう。

「そうだよ。私は君を観察するのが習慣になっていたんだ。君は貧しい身なりで社交的でもなかったけれど、いつも毅然としていた。ジェームスたちの嫌がらせに対してもね。私は、君に好意を感じながら、納得できない君への嫌がらせに加担する自分が情けなかったよ。そして、、、暴れ柳事件だ。

私は人狼になった運命を、あの時ほど恨んだことはないよ。醜い獣になる姿を見られてしまったし、狼の、、、人を食いたいという本能が自分の中から湧きあがるのを感じたのもあの時だけだったからね。人から忌み嫌われていることは知っていたけれど、自分でも心底忌まわしいと思ったよ。

それなのに、襲われかけた君は、ダンブルドアの命令に従って、誰にも話さず秘密を守ってくれた。ジェームスが君の命を救ったヒーローだという話が広がってさえも。そのおかげで私は卒業までホグワーツにいられたんだ。

君は覚えていないだろうけど、次の満月の翌朝、私は傷だらけで雪の上に倒れて、そのまま死ぬだろうと思っていた。死にたいとも死んで当然の身だとも思っていたら、君が現れたんだ。そして傷を癒してくれた。

ねえセブルス、君は、君が私にしてくれたことがどんなことだったかわかるかい?自分を食らおうとした者に、それでも生きていていいと言ってくれたんだよ。」

「ルーピン、人狼になったのはおまえの責任ではない。治癒できない感染症のようなものだ。おまえは人に危害を加えぬよう、叫びの屋敷で自分を傷つけていたではないか。」

「セブルス、だから君は特別だというんだ。そんなふうに、当然のことのようにそう言えるのがどんなに特別なことか、私はホグワーツを卒業してあらためて思い知ったよ。人狼であることで惨めな思いを何度もしたけれど、そのたびに、君の許しが支えてくれたんだ。友達を失って一人になっても、私がなんとか生きていられたのは、君のおかげなんだよ。

そして、、、教授職を得てホグワーツに戻ったら、君は脱狼薬を煎じてくれた。学校を卒業してから、充実感のある仕事につけたのはあの数か月だけだった。それも君のおかげだった。私にとって、君がどんなに特別で大切な存在なのか、わかってくれたかい?」

「ルーピン、私はダンブルドアの命令に従っただけだし、人狼の危険は薬で抑えられるものだ。そういえば、グレンジャーも気づいていたがずっと秘密を守っていたのだぞ。人狼に対して偏見を持たず正しい判断ができるのは私だけではない。」

「ああ、ハーマイオニーも優秀で理性的な判断ができる子だね。マグル育ちで人狼への偏見に染まっていなかったせいもあるだろうけど。」

「私もマグル育ちのようなものだからな。」

話が思いがけない方向に飛んだ。

「君がマグル育ち?それは知らなかったよ。あまり恵まれた家庭ではないんだろうと思っていたけれど。」

「そうだな。ひどい家庭だった。どんな嫌がらせを受けようと、ホグワーツを出て、行く場所はなかった。」

「私と同じだったんだね。私の家庭はひどくはなかったけど、私がいるとひどいことになってしまってね。だからホグワーツを追い出されるわけにはいかなくて・・・。そうか!だから君は私の秘密を守って追い出されないようにしてくれたんだ。」

セブルスは肩をすくめただけだった。

「話は終わりか、ルーピン?それなら、、」

「うん、話は終わったけど、君を放したくないよ。」

「ではどうしろと言うのだ?」

むっとするかと思ったけれど、セブルスはむしろ所在無げだった。ほんとうに、どうすればいいのかわからないように、私を見ている。

「私は、、君を失いたくないよ。セブルス、生きていてほしいんだ!」

セブルスは大きくため息をついた。

「残念だが、ルーピン、その約束はできない。わかっているだろうが、私たちは戦いの最中にいるのだ。おまえも初めに言ったように、あの時死んだのはブラックではなくておまえだったかもしれないし、私も、、デスイーター集会に出かけるたびに、生きて帰ることはないかもしれないと思っている。」

最後はつぶやくような声だった。ほんとうに、次の集会から戻ってこないような気がして、私はセブルスを強く抱きしめた。

「いやだよ。死なないでくれよ。ジェームスもシリウスも逝ってしまった。君まで死んでしまったら私はもう、、」

「ルーピン、落ち着け。勝手に殺すな。私だってもちろん死にたくはない。だがこんな時代だからな、先のことはわからないだろう?」

「こんな時代でも、こんな時代だからこそ、温もりを求めるんじゃないか。大切な君の、この温かい体がこの世からなくなってしまうなんて、考えたくない。私には耐えられないよ。」

私は必死だったと思う。ほとんど何も考えずに言葉が出てきた。セブルスの黒い瞳がかすかに揺らいだ気がした。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

セブルス・スネイプと謎のプリンス(3)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


翌朝。目覚めると二日酔いでズキズキと頭が傷んだが、昨夜の出来事を思い出し、薄眼を開けて腕の中を確認した。セブルスの顔はもうあどけなくは見えなかったけれど、私の腕の中で眠りこける小難しい顔は愛おしく思えた。

起きたときのセブルスの反応が楽しみで、私は腕と脚でセブルスの体をもう一度しっかり抱き寄せて、そのまま寝たふりを続けることにした。私の動きが伝わったのか、セブルスがもぞもぞと動く気配があった。そして、はっとしたように固くなる体。私の体を腕で押して、離れようとしているけど、もちろんそんなことは許さない。

腕の中の頭が動き、下を見ているようだ。つまり、自分と私の体を確認しているのか?絡みつく裸体にさぞかし驚いていることだろう。私のことをマルフォイだと思っていたんだから。

果てるときのセブルスの叫びを思い出して意地悪な気分になった。もがく体をむしろ強く抱き寄せて、下腹部を密着させてやった。どちらのものも固さを増して、無意識に腰を擦りつけると、、、。

「ル、、ル、、ルーピン!離せ!」

たまりかねたようにセブルスが声を上げた。私は初めて気がついたように目を開けて、だけどもちろん体は放さない。驚ろきに口をも目も丸くしたセブルスの顔は、まさに見物だった。私の顔と絡みつく裸体を交互に見ながら、口をパクパクしている。言葉が出ないのだと噴き出しそうになりながら、けれどそんな思いはみじんも現さず、初めての夜を明かした恋人の喜びを満面に浮かべて声をかえした。

「やあ、セブルス。おはよう。よく眠れたかい?」

目覚めのキスを求めるように顔を寄せると、セブルスは思いっきり顔をしかめて叫んだ。

「気でもふれたか、ルーピン!私に、、、何をしたのだ?お、、お、、犯したのだな?」

また下を見て、絡み合う裸体を確認し、青くなったり赤くなったりしている。私は信じていた恋人に裏切られたような、思いっきり傷ついた表情をつくった。

「ひどいことを言うんだね。昨日は、、あんなに情熱的だったのに。」

「じょ、じょうねつ的だと?」

「そうだよ。ためらう私をベッドに引きずり込んだのは君じゃないか。」

「私が?おまえを?」

「そうだよ、セブルス。まさか、、、まさか記憶がないとでも言うつもりじゃないだろうね?」

セブルスは記憶をたどるようにしばらく考え込んでいたが、やがて眉間にしわをよせ、ゆっくりと首を左右に振った。

「思いだせない。信じられない。私がおまえにそんなことを?魔法薬でも使ったのか?」

「あいにく魔法薬は君の専門だよ、セブルス。」

「それはそうだが・・・」

「だけど、2年前に言ったことは覚えているよね?君は愛する人にしか欲情しないと言ったんだ。だから私は昨夜、とても嬉しかった。なのに、、覚えていないなんて。」

セブルスはまるで、ひっくり返った天地を眺めるような、茫然とした顔で私を眺めていた。

・・・後悔しているんだ。

私はセブルスの反応を面白がっていた気持ちが急速にしぼんでいくのを感じた。もともと降ってわいた僥倖のような一夜だったとはいえ、これが最初で最後になるかもしれない。

「すまなかった、ルーピン。飲み過ぎてしまったようだ。間違って、、」

私は最後まで言わせなかった。言われたら抱き寄せた体を放すしかないから。

「セブルス、すまなかったと思うなら、私の話を聞いてほしい。」

セブルスは訝しげに私を見つめた。私は、口説こうとか思ったわけじゃない。ただ、心の奥で長い時間をかけて育ってきた思いが、口をついて出てきただけだ。セブルスが大人しく私の話に耳を傾けてくれる機会など、二度とないかもしれないから、気が変わらないうちにと急いで話し出した。

「シリウスがあんなことになってしまって、私はとてもショックだった。自分が死ねばよかったと、そればかりずっと思っていたんだ。あのとき叫びの屋敷で私が変身することさえなければ、シリウスは無実を明かして自由に生きられたんだからね。そうすればあんな無茶をすることもなかったかもしれない。あの時ベラトリックスの攻撃を受けたのが、私だったらよかったのに。なぜまた私だけ生き残ってしまったのかと、ほんとに、死んでしまいたいと思っていたんだ。

だけど昨日、思いがけず君を抱けた時、生きていてよかったと思ったよ。それから、神秘部で死んでいたかもしれないと思い、君こそ、いつ死ぬかもしれない任務についていることを思った。君も私も生きていて、抱きあっていられることに、すごく感謝したんだ。だけど、君も私も明日のことはわからない。だから、生きているうちに、君に伝えておきたいことがあるんだ。」

「長い前置きだな。」

私が一息つくとセブルスは口をはさんだけれど、止めもしなかったし、もがいて逃れようともしなかった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。