スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セブルス・スネイプと死の秘宝(20)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


力なく揺れていた指先が、わずかに動いた気がした。ほんのわずか、抱きあげる人の背を求めるように。

まさか・・・?目を凝らしてじっとスネイプの指先を見ていると、また、わずかに、ピクリと。一瞬のことだけど、確かに意思の感じられる動き。

「、、生きてる、、」

思わず声を漏らすと、マルフォイがぎょっとしたようにこちらを振り返った。その顔を見て、私のほうがぎょっとした。腫れあがり片目がつぶれた顔にべったりと血がついて、血と涙にまみれたひどい形相だった。

私は杖をかまえたけれど、マルフォイは気づかないようだった。私が、蔑み苦しめた『穢れた血』だということすら、どうでもいいようだった。

「何と、言った?、、、生きていると?」

「え?、、ええ。スネイプの指が動いたように見えて。」

マルフォイは私にかまわず顔を戻した。

「セヴィ!セヴィ!生きているのか?」

スネイプの体を静かに横たえて、両肩を手に包み叫んでいる。スネイプの閉じられた目が、一瞬わずかに開いた。マルフォイがまた私を振り返って叫んだ。

「生きている!今まぶたが動いた!見たか?」

「ええ、見えました。」

私もマルフォイの横にひざまずき、さっきやるべきだったと思ったことをした。杖でスネイプの周りに溢れる血を掃う。血を拭うと、大きく開いた深い傷が露わになった。あれからもうかなりの時間が過ぎて、残る血もないはずなのに、傷口からは血が流れ出ていた。怪訝な顔でマルフォイを見ると、察したように返事が返ってきた。

「造血剤を飲ませたのだ。ナギニに噛まれてひどく出血していた。解毒薬と造血剤を口に流し込んで、傷を塞ごうと治癒呪文をかけたのだが、、、。他人の杖ではうまくゆかぬ。傷がふさがらないのだ。私の杖があれば、、杖が。」

マルフォイはいら立って声を高めた。私はいちばん大きな首の傷口に杖を向けて、治癒呪文をかけてみた。傷口はいったんは小さくなるけれど、またすぐ広がって、血が流れ出る。

「ナギニの毒は、ふさいだ傷口を溶かすのよ。アーサーおじさんの時もそうだった。毒が抜けるまで、造血剤で血を補いながら、包帯で出血を抑えなければいけないの。」

「造血剤・・」

マルフォイが足元に落ちていた袋をひっくり返して、まだ残りがないかと探し始めた。私が持っているのと同じ薬袋。スネイプは魔法薬を煎じては、あちこちに配って回っていたようだ。その心境を思うと、、、その心境はわからないんだけど、物悲しい気持ちになる。

私は片手につかんだままになっていた薬袋から、造血剤を取り出した。

「なぜおまえがそれを持っている?」

説明すれば長くなるから、私は肩をすくめてマルフォイに渡した。マルフォイが急いで造血剤をスネイプの口に注ぎ込む。その隣で、私は治癒呪文を続けた。なんだかおかしなことになったと思いながら。マルフォイと並んで、スネイプの命を救おうとしているなんて。さっきは、ハリーたちと一緒に、ドラコ・マルフォイと仲間のゴイルを炎から助け出したし。

マルフォイは造血剤を2、3瓶スネイプの口に注ぎ終えると、ローブの裾を切り裂いて、スネイプの杖を振って包帯に変えた。私が治癒呪文をかけた傷口から、その後を追うように包帯を当てていく。倒れた背中側にも傷口はあったから、2人でスネイプの体を支えて動かしながら、首から肩に、歯形に残る傷口をすべて、呪文をかけては包帯で保護していった。

「あっ」

スネイプがゆっくりと目を開けた。造血剤を飲んで少したつと、体内に血が巡るのかもしれない。かすかに命の輝きが戻った黒い目が、マルフォイと、それから私を、ぼんやりと見たようだった。

「セヴィ、私だ。わかるか?しっかりするのだ。」

スネイプがわずかに口を開こうとした。小さく丸く。何回か。声を発することはついになかったけど、私にはそれが『ポッター』と言っているように見えた。そんな気がしただけかもしれないけど。スネイプはそれきり、目を閉じてまた動かなくなってしまった。しばらくそれを見ていたマルフォイが、指先をスネイプの鼻の下においたあと、私のほうを見て言った。

「わずかに息がある。セブルスは大丈夫なのか?助かるのか?これからどうすればよいのだ?」

そんなこと、私にきかれてもわからない。首を横に振った。

「スネイプ、、先生ならわかると思うけど、、、」

「セヴィはいつでも、他人の治療ばかりしていたのだ。」

マルフォイはやりきれないように言って、顔にかかったスネイプの髪をはらい、何度も撫でていた。マルフォイを見ているうちになんだか腹が立ってきた。この男はデスイーターで、敵なのだ。マルフォイの館では私が痛めつけられるのを喜んで見ていたし、神秘部の闘いでは私たちを追い詰めた。そういえば2年生の時、秘密の部屋が開いて石化させられたのもこの人のせいだった。マルフォイを、責めたかった。

「ヴォルデモートがスネイプを殺そうとしたのよ。あなたが仕えるご主人様が。」

「知っている。」

「それなのに、なぜスネイプを助けようとするの?」

「いけないかね?」

「だって、命令に逆らうことになるわ。」

「セブルスのことは、ホグワーツに入学してきた子供の頃から知っている。私たちはその頃からの長年の、、友人なのだ。グリフィンドールでは友人の命を助けるのに理由がいるのか?」

最後の嫌味は無視して、マルフォイの言葉を吟味してみた。今は死んだように動かないスネイプの子供の頃。・・・想像できない。マルフォイは今の私くらいだったのかしら?それから今まで。マルフォイの子供が私たちの年になるほどの、長い年月。私には気が遠くなるほどの長い時間。その重み。だけどスネイプは確かに騎士団員としてハリーを助けていたように思えた時期もあった。マルフォイは裏切られていたのに。

「スネイプはもしかしたらハリーを助けてたかもしれない。あなたたちを裏切ってたかもしれないのよ。」

「そうかもしれぬな。」

意外な返事だった。

「裏切り者だと思っていたの・・・?」

マルフォイが顔を上げて、私のほうに向きなおった。

「セブルスの立場は複雑だったのだ。ダークロードが復活して戻って以来、仲間の中にも裏切り者だと陰口を叩く者もあった。二重スパイで自分のことはあまり話さないから、私にもセブルスが実際、どちらの陣営についていたのかわからぬ。」

「そんな、、敵か味方かもわからないの?それなのに・・・」

「敵でも味方でもかまわぬ。セヴィは私にとって大切な友人だ。逆の立場ならセヴィも同じことをするはずだ。」

きっぱりと言い切られて困惑した。

「それならほんとうにスネイプはハリーを助けていたかもしれないのね・・・」

「そうかもしれない、、、」

マルフォイが昔を思い浮かべるような表情をしたのが気になった。

「何か、そう思う理由があるのですか?」

「セブルスがポッターを助けていたのかは知らないが、そうだとすれば理由は明らかだ。」

ダンブルドアも、いつもスネイプを信頼するに足る理由があると言っていた、、、。

「理由って何ですか?」

マルフォイが、そんなことも知らないのかというように、眉を上げて私を見た。

「ポッターの母親に決まっている。母親の命を守れなかったから、死んだ母親に代わって息子を守っていたのだろう。」

ハリーのお母さん?ハリーは、お母さんはマグル出自だからスネイプは気にも留めていなかったって言ってた。お母さんの代わりにハリーを守っていた?そんなことがあるだろうか?どうみてもスネイプはハリーを目の敵にしていたのに。

「まさか?」

反論されたと思ったのか、マルフォイが腫れあがった顔をしかめて言いつのった。

「ダークロードがポッター一家を襲撃すると知って、セヴィは母親の命乞いをしたのだ。ダークロードの足元にすがりついて、母親を助けてくれと頼んでいた。私もその場にいて、母親は予言に関係ないと口添えしたのだから確かなことだ。ダークロードもセブルスの願いを叶え、母親の命はうばわぬと言ってくれたのだが。」

あのスネイプがお母さんの命乞い?・・・いつもハリーを目の敵にしていたスネイプと、ここに死んだように倒れている人が別人に思えてきた。

「でも、どうしてそんなにしてまでハリーのお母さんを助けようとしたのかしら?」

「ポッターの母親とセヴィは幼馴染だった。ホグワーツに入学した頃は、よく2人で手をつないで歩いていたものだ。襲撃の翌朝、血相を変えて飛び出していって、それきり戻らなかった。そのままずっとダンブルドアの元に留まったのだ。」

哀しい話だった。ずっと昔の幼い2人。それから長い時を経て・・。床に倒れた人の姿が少しだけ涙で滲んだ。だけど。

「でもそのダンブルドアを、スネイプは殺したわ!なぜ?」

「ドラコを守るためだろう。ダークロードはドラコにダンブルドアを殺せと命じたのだ。できなければドラコや私たちを殺すと脅してな。ドラコにできるはずなどないことは、ドラコ以外は皆わかっていた。ダークロードも、もちろんセヴィもだ。」

マルフォイと話しているうちに、ほんとうにスネイプがこちらの陣営にいたようにも思えてきた。だけど、、もし味方だったなら、生徒を守るためとはいえ、ダンブルドアを殺すだろうか?ダンブルドアを殺すなんて・・・。もしかしたら私はマルフォイに丸めこまれているだけかもしれない。なんといってもこの男はデスイーターなんだもの。混乱して、頭の中がぐちゃぐちゃだった。

「スネイプは、、じゃあ、スネイプ先生はほんとに私たちの味方だったのかしら?」

「セヴィがどちらの陣営についていたかということは、今そんなに重要なことなのかね?いずれにせよ、今やセブルスはどちらの陣営に見つかっても殺されかねない状況だ。身を守ることもできぬのに。」

マルフォイは会話に興味を失ったようにスネイプに向きなおり、愛おしそうに、青ざめた頬に手を当てた。

「もう戻らねば。ダークロードに疑われてしまう。セヴィ、生き延びるのだぞ。また来るからな。」

それからマルフォイはもう一度、解毒薬と造血剤をスネイプの口に流し込んだ。そして魔法薬の袋をスネイプのローブの中に入れ、杖を手元の床に置いて立ち上がった。私も立ち上がると、マルフォイが言った。

「私はもう戻らねばならぬ。君もそうだろうが、セブルスには造血剤が必要だ。来られるときには来て、飲ませてやってくれぬか?私ももちろんそうするが、頻繁には来られぬかもしれないから。」

私はうなづいた。

「それから、このことは口外しないように。セブルスの立場がわからないことにかわりはないのだから、そのほうがよいと思うが、君はどう思う?」

「たぶん、、、ええ、私もそう思います。」

トンネルに向かおうとしたら、呼びとめられて振り向いた。

「ミス・グレンジャー、助けてくれて感謝する。助かるかはわからぬが、、、それでも礼を言っておく。」

腫れあがった顔に似合わない気取った態度でマルフォイが言った。私は戻ろうとしたけれど、思いついて聞いてみた。

「ミスター・マルフォイ、あなたはどうしてここにいたのですか?」

「ああ、それは、ダークロードの命令でセブルスにここに来るよう伝えたのだが、ダークロードが停戦を告げてポッターを呼びだしたのに、セブルスが戻ってこなかった。もともと嫌な予感がしていたから、すぐ見に来たのだ。そうしたら・・・。ひどい有様だったが、まだ温かかった。あきらめかけたが、君が来てくれて助かった。ミス・グレンジャー、君が来た理由こそききたいところだが、もう戻らねばならぬ。」

狭いトンネルを這いながら、来た時よりももっと混乱していた。マルフォイなんかと、共犯者めいた秘密を持ってしまった気がした。スネイプもマルフォイも、わからない人たちだ。血も涙もないデスイーターの悪人だと決めつけたのは間違っていたのかしら?

スネイプは、ハリーのお母さんが亡くなった時から、ずっとハリーを守るつもりで生きてきたの?私の人生、丸ごと分の長い年月を。授業中の意地悪な態度からは想像もつかないけど。マルフォイなんて信じたくなかったけど、今の話には説得力があった。マルフォイの態度には、悔しいけど、深い友情や信頼だけが持つ迫力があったから。

マルフォイは、スネイプが敵でも味方でもかまわないと言った。私はそれはやっぱりかまうけど、それでもスネイプには生きてほしいと思う。このまま死んでしまったら、私はたぶん、とても悲しいと思う。

大ホールに戻ると、ウィーズリーのみんなは、泣きはらした目をハンケチで抑えながら、フレッドの周りに立っていた。私は横たわるリーマスとトンクスの手をしっかりと重ねあわせた。死んでしまった人、生と死の境界に居る人、そして生きている私たち。それぞれの思いを胸に、精一杯に命をつぐみ・・。私はロンの隣に行き、そっと手をつないだ。

スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシウス スネイプ

セブルス・スネイプと死の秘宝(19)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ハリーの後について、視界を遮っていた木箱をよけた隙間から部屋に入った。荒れ果てた薄暗い部屋の中、血だまりに倒れた黒い人の姿。暗がりの中では、ローブの黒も血も、同じ色に見える。血にまみれた白い手が首を抑え、その指の隙間からさらに血が噴き出ていた。人の体からはこんなに血が溢れ出るものなのか・・・。

ついさっき聴こえたスネイプの恐ろしい悲鳴が、耳鳴りのように頭に響いていた。たぶん、ナギニに噛まれた瞬間の、恐怖と痛みと絶望の叫び。漏れ聞いた会話から、ヴォルデモートがニワトコの杖の忠誠を得るために、ナギニにスネイプを殺させたのはわかったけれど・・。人はこんなふうに死んでいくの?体中の血を流して。

スネイプは何か言いたそうにハリーを見つめていた。ハリーが腰をかがめると、血まみれの白い手がハリーのローブにすがりつき。

「これを、、取れ、、、これを、、取れ、、」

死に際のかすれた吐息から、わずかに漏れる声。スネイプの目と耳と口から灰色の何かが、、血ではない液体のようなものが流れ出した。手にした杖でフラスコを取り出してハリーに渡す。ハリーが液体をフラスコに受け止めてゆく。何も考えられない。目に映ることの意味を理解することができなかった。そして苦しげな最期の吐息に混じるかすかな声がして。

「僕を、、見て、、」

ハリーをつかんでいた手が床に落ち、ハリーの目を見つめていた黒い目が、虚ろになった。いつも、無表情か、怒りか嘲りを浮かべていた黒い目。それでもその目には命の輝きがあったのだと、虚ろになった目から、目を離すことができなかった。ハリーもロンも、ただ、動かなくなったその体を茫然と眺めていた。

出し抜けに甲高い声が身近で響き、ハリーが弾かれたように立ちあがった。

「おまえたちは闘った。勇敢に。ヴォルデモート卿は勇敢さを称えることを知っている。」

おぞましく恐ろしいヴォルデモートの声は、辺り一帯に響いているようだった。その声は、1時間の停戦を与えると言った。そして、ハリーに、1時間のうちに『禁じられた森』に来いと言い、もし来なければ、その時はヴォルデモート自身が戦いに加わり、ハリーを見つけ出し、ハリーを隠そうとした者は、男も女も子供も、最後の1人まで罰すると脅した。

私もロンも、強く首を振った。そんなことはダメ。ハリーを一人、ヴォルデモートのもとに行かせるなんて、絶対にしない。最後まで一緒に戦う。みんなそのつもりでいる。

「耳を貸すな。」

ロンが言った。私も続けた。

「大丈夫よ。さあ、城に戻りましょう。あの人が森に行ったのなら、計画を練り直さなきゃ。」

私はもう一度スネイプを見た。スネイプの死の理由。その死に様。衝撃で、どう受け止めていいのかわからない。どう感じればよいのかわからなくて、感情が麻痺したようだった。今は、、、でも今はハリーを守って、一緒にヴォルデモートを倒すことを考えるだけ。トンネルの入口に向かうと、ハリーとロンも後に来た。狭いトンネルを這うように進む。誰も口をきかなかった。衝撃で言葉が出ないのは、ハリーとロンもきっと同じだったと思う。

トンネルを出て、ホグワーツ城の建物に急いだ。辺りには巨人の物らしい巨大な木靴が片方転がっているだけで、他には何もなかった。閃光も見えず、爆音も叫び声も聴こえない。城は静まり返っていた。

血に染まった玄関ホールの敷石を歩きながら、心細くて声が出た。

「みんなはどこかしら?」

手すりが吹き飛ばされた階段を上って、ロンが大ホールの扉を開くと、中は人がいっぱいだった。各寮のテーブルはかたつけられて、広い空間に人が寄り集まっていた。みんな肩を抱き合って、何人かずつ集まって立っていた。一段高い壇の上では、マダム・ポンフリーが何人かに手伝わせて、怪我をした人の手当てをしている。負傷者たちの顔は見えないけれど、ケンタウルスのフィレンツェ先生が、お腹から血を流して横たわっていた。

大広間の真ん中には、死んだ人たちが横たえられていて、ウィーズリーの人たちが集まっている場所があった。ひざまずくジョージの後ろ姿、亡骸に突っ伏して体を震わせるモリーおばさん。その髪をなでながら、滝のような涙を拭うこともせず立ちつくすアーサーおじさん。泣きはらしたジニ―に歩み寄って肩を抱くと、肩の向こうに、横たわるフレッドの脚が見えた。

フレッド・・・死んでしまった。いつも冗談を言ってみんなを笑わせていたフレッド。いたずらにはひどい目にあったけど、憎めない陽気な双子。彼らがいるだけでその場が明るくなっていた。あの時も、少し前、一緒に戦っていたあの時も、むしろ戦いを楽しむかのような笑みを浮かべていた。突然の爆発に吹き飛ばされて、私が立ちあがったときにはフレッドはもう息絶えていた。笑いの名残をまだ顔に残したまま。

フレッドの向こうにも、横たわる亡骸があった。涙にかすむ目に映ったその顔は、、、リーマス!リーマスが死んでしまった!いつも穏やかで、頼りになったルーピン先生。人狼であることに苦しんでいて、やっと幸せをつかんだのに。赤ちゃんが生まれたって、やつれた顔にこぼれる笑顔を浮かべていたのはついこの間のことだったのに。その隣には、、トンクス!トンクスも亡くなってしまった。赤ちゃんを産んだばかりで・・・。

並んだ2人の指先が、触れそうで、わずかに離れていた。もう少しで届くのに。もう少しで、幸せに暮らせたかもしれないのに。せめて、届きそうで届かない2つの手を、しっかりと重ねてあげたかった。

大ホールの人ごみには、死と悲しみが溢れていた。死に分かたれた、愛し合う人たち。ロンはパーシーと肩を抱き合って泣いていた。私ももう一度、強くジニ―を抱き締めた。こんな時は、こんなふうに、寄り添って抱きあうしかできない。ただ、こうして。一人では耐えられないから。一人では・・。

突然、荒れ果てた薄暗い部屋で、血にまみれて、一人横たわる亡骸が浮かんだ。あの人の死も、ここにある他の死と同じものだったのかしら?取りすがる人も、嘆く人も、ともに寄り添う人もなく。一人、自分が流した血の海に倒れ伏す孤独。それは、当然の報いなの?

涙を拭って顔を上げると、壇上のマダム・ポンフリーの背中の向こうに、医務室に置かれていた薬棚が見えた。ハリーを助けホークラックスを探す旅に出ると決めたとき、薬袋を取り出した棚。

「アクシオ・ポーションバッグ!(来たれ、薬袋)」

呪文を唱えると、薬袋が飛んできた。まだ新しい、1週間前の日付が記されている。なぜ新しい物が・・。また呪文を唱えた。また1つ、薬袋が飛んできた。それより2週間前の日付。また唱えると、また1つ。

これはどういうことなの?スネイプは何をしていたの?何のためにこんなものを。

「ミス・グレンジャー、これは、君の、資質を補うために・・」

魔法薬学の研究室で、思いがけずスネイプからこの薬袋を手渡された時。いつになく言いにくそうに、回りくどい言い方で、たしかに、これは私に渡すためにつくったって言ってた。医務室の棚に新しい薬を補充し、目隠し術で隠しておくと。それでは、スネイプは、ダンブルドアを殺し、校長室を乗っ取って、ホグワーツに圧政を敷きながら、受け取られるかもわからない魔法薬を煎じていたの・・?

衝動に突き動かされて、私は走り出していた。魔法薬の袋を片手につかんだまま。走りながら、お父さんが病気で入院していた時、お母さんが毎日のようにクッキーを焼いていたことを思い出した。何かしていないと心配でね。こうしていると気がまぎれるのよ、ハーミー。食べきれるはずのないクッキーを、取りつかれたように焼き続けたお母さんの後ろ姿。取りつかれたように魔法薬を煎じるスネイプの姿。

スネイプ、これは何なの?あなたは、何をしていたの?

少し前に歩いてきた道を、私は必死に走った。息を切らせて暴れ柳に着き、柳を止めてトンネルに潜り込む。狭い通路を這いながら、何のために私はここに居るのかしらと思う。

あの血まみれの死体に何かたずねたいのか、何かしてあげたいのか、わからない。だけど、放置してはいけないことだったんだという思いが湧きあがった。スネイプが何者であっても、ハリーを憎みダンブルドアを殺した裏切り者であっても、あんなふうに茫然としてなにもできぬまま、立ち去ってはいけなかったんじゃないか?

スネイプには6年間、授業を受けてきた。スネイプの、いろんなことが思い浮かぶ。ハリーに対する態度はひどかったけど、授業はいつも完璧に準備されていた。怪しく見えても、あとになるといつもハリーを助けていたことがわかった。三大魔法学校対抗試合終了の翌朝には、クルーシオで傷んだ体を医務室のベッドに横たえていた。今なら私も身をもって知ったクルーシオの恐怖と苦痛。スネイプ、あなたは何者なの?何のために戦っていたの?誰のために?

トンネルの出口が見えると、私は少し怯んだ。今さら私が来ても、何がどうなるわけでもない。あの恐ろしい、、哀しい姿を、今度は一人で見るだけのこと。せめて、血を拭い清めることをしに来たのかしら?

息を潜めて立ち上がり、そっと中をのぞきこんだ。少し前に見た、血の海に倒れる亡骸を予想しながら。


だけど、目に飛び込んできたのは、束ねたプラチナブロンドが揺れる背中だった。手にした杖を、遺体に向けている。

ルシウス・マルフォイ!

マルフォイの館で受けた苦しみと恐怖が蘇った。内臓をえぐる苦痛。のたうつ私を前に、ヴォルデモートを呼ぶといきり立っていた男。冷酷で、高慢で、『穢れた血』と私を見下し苦しめたデスイーター。

驚きながらも、私はその背に正確に杖を向け、武装解除呪文を放とうとした。まさにその時・・・

マルフォイの手から、杖がポトリと落ちた。

「セヴィ、、セヴィ、、」

空いた両手で亡骸を抱え上げ、頬をすり寄せて、肩を震わせていた。

「セヴィ、、セヴィ、、」

繰り返し名前を呼びながら、むせび泣く背中。座り込んだ足元は血の海で、高級な気取ったローブも、寄せた頬も、血にまみれるのもいとわずに。フレッドの亡骸の胸にすがりついていたモリーおばさんと同じ後ろ姿。

見てはいけないものを見てしまった気がした。彼らにも、憎むべき闇の彼らにも血は流れ、友を思い悲しみの涙を流す。こちらも、あちらも、死と悲しみがあふれて。

すすり泣くマルフォイの肩の震えに合わせ、上体を抱え上げられたスネイプの白い手が、力なく垂れて揺れていた。その長い指先から血の滴が落ちるのを、私はぼんやりと眺めていた。


テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシウス スネイプ

セブルス・スネイプと死の秘宝(18)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です。本作の重要なネタバレを含みます)


どれくらい戦闘が続いた頃だろうか?名を呼ばれた気がして辺りを見ると、物陰からルシウスがのぞいていた。急いで駆けよった。

「ルシウス?」

ダークロードがお呼びだ。」

周囲に気をつけながら2人で撤退し、境界を超えホグズミードに出た。城壁の向こうのホグワーツからは、煙が上がり、騒ぎが聴こえてくる。

ダークロードが、何のご用だと?」

「わからぬ。スネイプを呼べと。おまえに務めを果たしてもらわねばならぬと言っている。」

「わかった。どこに行けばよいのだ?」

「叫びの屋敷に。ダークロードが1人でお待ちだ。」

私がデサパレートしようとすると、ルシウスが呼びとめた。

「セヴィ、呼ばれるような心当たりはあるのか?」

「・・・特にないが。ホグワーツ内部の様子もおわかりのはずだし。ポッターを捕えて来いとでも言うつもりかもしれぬ。」

それなら望むところだ。もし他の用件でも、ポッターの居そうな場所に心当たりがあると言おう。私がポッターを捕まえてくるから、その間停戦をと提案してみれば・・。

はやる心が現れたのか、ルシウスが不安げに私の肩をつかんだ。

ダークロードは、ポッターは自らやって来ると言っていた。探しに行ったらどうかと提案したのだが、ハナにもかけなかった。セヴィ、危険だと思う、、、嫌な予感がするのだ。」

「ルシウス?」

「これを飲んで行け。」

ルシウスは、私が渡した魔法薬の小瓶を取り出した。

「飲んでいなかったのか?それはあなたに渡したものだ。気休めにしか過ぎないのだが、、」

「私は杖もないから戦闘にも加わっていない。セヴィ、おまえが飲むのだ。」

「私のことなら心配はいら、、」

言い終わらぬうちに、私は抱きすくめられていた。ルシウスは小瓶の薬を口に含み、そのまま私に口づけしていた。こんな時に何をともがいても放されず、やがて口の中にほろ苦い液体が流れ込む。

「何をするのだ、ルシウス」

ようやく放されて、あきれ返って私が言うと、ルシウスは目も開かぬほど腫れあがった顔で、わずかにほほ笑んでみせた。

「私の気休めのためだ。気をつけるのだぞ。」

私は2、3歩後ろに下がり、それから向きを変えて叫びの屋敷の前にアパレートし、中に入った。


石油ランプの灯火だけが照らす薄暗い部屋の中に、ダークロードの姿がぼんやりと浮かんでいた。部屋に足を踏み入れた瞬間に、私はルシウスの不安がわかった。確かに、嫌な感じだった。何がどうとは言えぬのだが。しかし、私の裏切りがバレたはずはない。ホグワーツを追い出されたとはいえ、とがめられることもなく戦闘に加わった。妙な怯えは疑いを招くだけだ。私はダークロードの前に立ち、頭を下げて言った。

「我が君、お呼びでしょうか?」

「戦闘の様子はどうだ、セブルス?」

「我が陣営が優勢であります。我が君、抵抗勢力は崩れつつある状態です。」

「そして、それはおまえの助けなくそうなっておる。」

嫌な成り行きに、私は目を上げた。ダークロードの横に漂うナギニが目を入った。ナギニは今や、星を散りばめたような球体の魔法の守りの中にいた。確かに最後のときが来たのだ。

「優秀な魔法使いではあるが、セブルス、おまえの存在も、今となっては大した意味がなくなった。我々はもうすぐ成し遂げるであろう。まもなくだ。」

「どうかポッターを探すようご命じください。必ず連れてまいります。我が君、私ならポッターを見つけられます。」

「問題があるのだ、セブルス。」

「我が君?」

セブルス、この杖はなぜ、余の思い通りに動かぬのだ?」

ダークロードは指揮棒を上げるような繊細な正確さで、手にした杖を上げた。杖?杖とはいったい、何の話なのだろうか?その杖が今にも同じ正確さで振り下ろされるような恐怖に身がすくんだ。

「我が君、、なんのことやら・・。私にはわかりかねます。我が君は、、その杖できわめてすぐれた魔法をなさっておいでです。」

「違う!私は普通の魔法を行っている。確かに私はきわめてすぐれているのだが、この杖は、、、違う。約束された威力を発揮しておらぬ。この杖も、昔オリバンダーから手に入れた杖も、なんら違いを感じない。何も変わらぬのだ。」

「・・・。」

「余は時間をかけてよく考えたのだ、セブルス。なぜおまえを戦いから呼びもどしたかわかるか?」

嫌な予感・・。それは身に迫る危険となった。ダンブルドアが何か言っていた、、、最後の時が近付くにつれて危険は高まる。危険は裏切りが知れることだけではない、、、。なんとかこの場をやり過ごさねば。まだポッターに告げるべきことを告げていない。

「いいえ、我が君。しかし、私が戦いに戻ることをお許しください。どうか、ポッターを探させてくださいますよう。」

「おまえもルシウスと同じことを言うのだな。2人とも余ほどにポッターを理解しておらぬ。ポッターを探す必要などない。向こうから余の所にやって来るだろう。余はポッターの弱点を知っておる。大きな欠点だ。自分のせいで他の者がやられるのを見ておれぬのだ。どんな代償を払っても止めようとするであろう。ポッターは来る。」

「しかし、、他の者に誤って殺されてしまうかもしれません。」

「デスイーターたちには明確に指示してある。ポッターを捕えよと。友人は殺せ。多ければ多いほどよい。だがポッターは殺すなとな。

しかし、余が話したいのはおまえのことだ、セブルス。ハリー・ポッターのことではない。私にとって、おまえは非常に貴重だった。」

私を、、殺すと言っているのだ。理由はわからぬが、杖か何かのために。ある物のために危険は格段と高まるのじゃが、、、ダンブルドアが言っていたのはこれだったのだ。片時も油断するなと言われたのに。ポッターに伝えねば。殺される前に、なんとか。

「我が君は私がご奉仕することだけを願っているとご存知でいらっしゃいます。しかし、我が君、どうかこの場を下がり、ポッターを探すことをお許しください。あなた様の元に連れてまいります。私にはそれができます、、」

ポッター、私を見るのだ、ダークロードの意識をのぞいて。そしてここに来てくれ。伝えねばならぬことがある。だが私はもう、生きて探しに行くことができぬかもしれぬ。

「言ったはずだ。許さぬ。」

部屋を歩き回っていたダークロードが、私のほうに振り向いた。赤い目が光っている。

「余の目下の気がかりは、セブルス、余がついにポッターと顔をあわせたときに何が起こるかと言うことだ。」

「我が君、疑問の余地はありません、必ずや、、」

「いや、セブルス、疑問があるのだ、疑問が。」

赤い目が私を見据えていた。青白い指を杖に滑らせながら・・・。恐怖に汗が流れるのを感じながら、杖を持つ手を強めた。

「余の使った杖が、2本ともポッターを始末し損ねたのはなぜだ?」

「わ、、私にはわかりません、我が君。」

杖が何だと言うのだ?その杖がいったい何だと?

「わからぬのか?余の杖は我が意のままに事を為した、セブルス、ポッターを殺すこと以外はな。あの杖は2度もしくじった。オリバンダーに拷問で問い詰めたところ、双子の芯のことを白状し、他の杖を使うようにと言ったのだ。余はそのようにした。だが、ルシウスの杖はポッターの杖にあって砕けたのだ。」

「私めには、、説明できません、我が君。」

ナギニが守られている。告げるべき最後の時が来たというのに。私には為すべきことがあるのだ。ポッターに言わなければ。私はいったん目をやると、球体の檻に守られて中でとぐろを巻くナギニから目が離せなくなった。バーベッジ!バーベッジの哀れな最期。見殺しにした私が悪かったのだ。罰だ。私も彼女のようにナギニの餌になる。何度も悪夢に見たように、あの口に飲みこまれて。ああ、ポッター、何をしている?ダークロードの目を通して私を見ていないのか?ここに来て最後の真実を受け取ってくれ、、どうか。

「余は3本目の杖を求めたのだ、セブルス。ニワトコの杖、運命の杖、死の杖だ。前の持ち主から余は奪ったのだ。アルバス・ダンブルドアの墓から。」

もう、口実は思いつかなかった。ただ、、

「我が君、ポッターを探しに行かせてください、、、」

「勝利を目前としたこの長き夜、余はここに座り、考えに考え抜いた。なぜこのニワトコの杖は、本来の力を出さぬのか、なぜ伝説通り、正当な持ち主に対して行うべき技を行わぬのか、、、そして余は答えを得た。」

囁くような声が、身の底から恐怖を呼び起こす。

「おそらく、おまえはすでに答えを知っておろう。おまえは賢い男だ、セブルス。おまえは忠実な、よき下僕であった。これからせねばならぬことを、余は残念に思う。」

「我が君、、」

もう、道はないのか?逃れる術は、、為すべきことを為せぬまま、私は死なねばならないのか。

「ニワトコの杖が正しく余に仕えぬのは、セブルス、余が真の持ち主ではないからだ。この杖は、最後の持ち主を殺した者に所属する。おまえがアルバス・ダンブルドアを殺した。セブルス、おまえが生きている限り、ニワトコの杖は真に余の物になることができぬのだ。」

「我が君!」

私は意を決して杖を上げた。かなわぬまでも、最後まで戦わねば。

「セブルス、余は杖の主人にならねばならぬ。杖を制し、ついに余はポッターを制す。」

ダークロードの杖が空を切った。が、閃光はこなかった。一瞬、猶予されたかと思ったのだが、、その瞬間、私はナギニの檻に取り込まれていた。頭も、、肩まで。そして、その牙が私を貫いた。首から血が噴き出し、全身の力が萎える。檻に絡まれたまま、ガクリと膝が折れた。噴き出す血とともに、生命が流れ出してゆくのを感じながら、ルシウスに飲まされた薬のことが頭をよぎった。どれだけもつだろうか、私の命は?ポッター、ポッター、どこにいるのだ?

「残念なことよ。」

ダークロードがぽつりと言って背を向けて去っていった。ナギニの檻も漂うように従った。檻から放たれ、私はそのまま床に倒れた。ポッターに伝えなければ。それまでは死ぬわけにいかない。血の海に倒れ落ち、とめどなく流れ出る血を手のひらで抑える。しかし、薄れてゆく意識の中で。

りりー!リリー、助けて。このままでは、君に合えない。リリー!リリー!

ああ、けれど、死はむしろ救いのように私を包む・・。

薄れた視界に、ポッターが現れた。ポッター、ここに。だが、もう、声をなす力もない、、。ポッターが屈みこんできた。すがるようにローブをつかんで引き寄せ、力を振り絞る。

「これを、、取れ、、、これを、、取れ、、」

記憶を、流し出した。口から、目から、耳から。伝えるべきこと。伝えたいこと。リリーへの想い、悔やんでも悔やみきれぬ守れなかった命、贖罪の決意、ダンブルドアが受けた呪い、ダンブルドアの最後の指示、ああ、ジョージ・ウィーズリーにも詫びを、そしてディーンの森に向かった、、。

ポッターはビーカーで受け止めた。すべて伝えた。すべてを終わらせられるのはおまえだけなのだ。あとを託して。リリー、、これで、君に会える。君に、会いたい。

「僕を、見て、、」

リリーの緑の瞳。懐かしい、君の瞳。君の元へ、、、

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ダークロード ポッター

セブルス・スネイプと死の秘宝(17)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


窓を破って飛びながら、ホグワーツで過ごした日々を思った。学生時代の7年、教授として16年。幼少期を除いて人生の大半を過ごした私の家。喜びも悲しみも、いつもそこにあった。その全てを共に過ごした教授たちの攻撃を受け、逃げるように脱出する。

攻撃したくなくて逃げる私は臆病者だろうか?振りつける雨ほどのダガ―ナイフを胸に突き刺したいほどに、憎い相手なのだろうか?私はホグワーツで喜んで人を殺めるような者に見えていたのだろうか?

そのように演技してきたとはいえ、長い年月を、生徒として同僚として過ごした彼らの目に映る私は、やはりそのような存在だったのだと思い知ることは辛かった。


アパレートできる場所に着き、私はただちにダークロードのもとに参じた。すでに陣営を率いて、ホグワーツの近くまで来ていた。

「我が君、すでにアレクトがお知らせしたように、ポッターがホグワーツに現れました。ポッターを捕えようとしたのですが、教授たちの攻撃を受け、多勢に無勢でかなわず、無念ながら脱出してまいりました。教師たちが我々の攻撃に備え、闘う準備をしているはずです。」

セブルス、もうよい。どちらにしても、もうホグワーツに着く。おまえも戦いに加わり陣営に貢献するのだ。」

「かしこまりました。」

ナギニの状態を確認した。ダークロードは、ナギニを首に巻きつけていたが、これが保護状態といえるのかはよくわからない。

陣営には、ダークロードを先頭にデスイーターが集結し、闇陣営に加わった魔法使いや様々な魔法生物、操られた亡者などが集まっていた。周囲にはディメンターが漂っている。

私はすぐにデスイーターのグループに加わった。仲間からは追いやられ、裏切り続けた敵からは温かく迎えられる。その一部は、古くからの友として。まったく、おかしなものだ・・・、苦い思いを飲み込んだ。

周囲を見回して、ルシウスを見つけた。フードをかぶっているが、杖を持っていないからすぐわかる。ナルシッサと寄り添い目立たぬように立っていた。私はすっと近づき、小声で話しかけた。

「ルシウス、杖もないのに戦闘に加わるのか?」

「加わらぬわけにはいかぬ。セヴィ、ホグワーツ内部の様子はどうなっているのだ?」

「ドラコは?ドラコは無事なの?脱出できたのかしら?」

ナルシッサが会話に入ってきた。

「私も逃げ出してきたのでわからないのだが、中の者が生徒たちに危害を加えることはないはずだ。だが戦闘が始まってしまえばどうなることか・・・。」

私は目立たぬようにローブから薬の小瓶を取り出した。死に至る時間を少しだけ長引かせる魔法薬だ。
もしもポッターか誰かが、あるいは私自身が、瀕死の重傷を負うようなことがあれば役立つかと、常に2本だけローブに潜ませていたものだった。だが、そもそも、焦燥感に駆られて気を紛らすために開発した、気休めのお守り程度のものだ。戦闘に入れば、杖のないルシウスは防戦もできず危険にさらされる。ならば・・。

「気休めのようなものだが、飲んでおいてほしい。」

ルシウスとナルシッサに、1つずつ渡した。

「前くれた薬袋にも入っていたものだな?そのおかげで先日も助かったと思っている。感謝しているぞ。」

フードの中に、腫れあがった顔がのぞいた。

「ひどい顔だ、ルシウス」

「酷い目にあったのだ。ポッターたちに逃げられてから、事あるたびにやられた。ひどい怒りようでな。だが大丈夫だ。今夜は、どういうことになるのだろう。」

今夜すべての決着がつくはずだ。ポッターか、ダークロードか、あるいはどちらもいなくなる。ルシウスとの話を切り上げ、私はこの先に起こることに考えを巡らせた。ホグワーツ内では、すでに生徒たちを集め、避難させるか、隠れ場所に移しているはずだ。ポッターはもう、レイブンクローに関わるホークラックスを破壊しただろうか?

戦闘がどのような形になるかはわからないが、怪しまれぬよう闘う素振りを見せながら、なんとかポッターを見つけて話さなければならぬ。ポッターにダークロードの魂の欠片が宿っており、それがある限り、ダークロードが死ぬことはないと伝えなければならぬのだ。

しかしダンブルドアの肖像画の口添えを期待できない状態では、ポッターが私の言うことを信じるとは思えない。いったいどう伝えればよいものか?いや、ポッターも薄々気づいているかもしれない。ダークロードとの意識の繋がりは、その魂の欠片を宿しているためなのだと。だがその前に、ポッターが私の話に耳を傾けるかが問題だ。私を見るなり杖を向けてくるだろうし、防いでいるうちにデスイーターが援護に加わるなどという状態にもなりかねない。私の話に耳を傾けさせるには・・・

リリーへの想いを明かすほかはないか。リリー・ポッターと幼馴染だったのだと一言いえば、ポッターは杖をおさめて話をきくだろうが・・。ダンブルドアとルーピン以外には知る者もない私の真実を、ポッターに明かす。

絶対に嫌だという思いと、伝えたい、伝えるべきだという思いが交錯した。ポッターの父親を思い出すと絶対に明かしたくないと思い、リリーを思うと、むしろ打ち明け、許しを請いたかった。母と子の幸せな時間を奪い、ポッターにこのような運命を与えてしまったのは私だと、そして贖罪に努めてきたが、私にはこのようにしかできなかったのだと詫びるべきではないか。それをせずに、ポッターに命を投げ出さねばならぬと言うことなど、許されぬのではないか?

迷い悩むうちに、ホグワーツの境界に到達し、ダークロードの甲高い声が辺りに響いた。

「闘う準備をしているのはわかっている。だが、何をしようと無駄なことだ。余には敵わぬ。おまえたちを殺したくはない。ホグワーツの教師たちに、余は多大な敬意を持っているのだ。魔法族の血を流したくはない。

ハリー・ポッターを出せ。そうすれば学校には手を出さぬ。ハリー・ポッターを差し出せ。そうすればおまえたちは報われるのだ。真夜中まで待ってやる。」

真夜中までのわずかな時間を、チリチリと胸が焼け焦げるような思いで耐えた。それまでにポッターはホークラックスを破壊することができるだろうか?そしてもしその時ポッターが歩み出たら、告げるべきことを告げられぬまま2人が対面したら・・・何が起こるのか?ポッターが空しく死んで、ダークロードとナギニが生き残るようなことがあっては。その時は私は楯になってポッターを守るべきか、あるいは、ポッターを見送りダークロードを倒すべく戦うべきなのか?

いや、ミネルバは決してポッター一人が歩み出ることを許さぬはずだ。もちろん戦闘になる。そして私はなんとかポッターを見つけねば・・・。


待つほどもなくその時が来た。ダークロードが杖を振ると境界の石壁が破壊され、闇陣営は一斉にホグワーツの境界を攻撃し始めた。校内からも応戦してくるが、塀や壁や像が壊れ、闇陣営も続々と内部に侵入していった。校庭で、校舎で、廊下で、呪文が飛び交い、鋭い閃光が走り、爆発音が響く。私のホグワーツは、破壊が渦巻く戦場となった。

私も戦いのただ中に立ち、攻撃を避けながら、誰にも当たらぬように狙いを定めて呪文を放つ。私にとっては、騎士団員、生徒、教師はもとより、デスイーターたちも傷つけたくない相手だった。しかし、、あちこちに倒れる者も現れた。早くポッターを見つけ、伝えるべきことを伝えねば、犠牲者が増えるばかりだ。

飛び交う閃光に防戦しながら、必死でポッターを探したが見つからない。まだホークラックスを探し、戦闘の場にはいないのだろうか?どこにいるのだ、ポッター?終わらせられるのは、おまえだけなのだ。


テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ポッター

セブルス・スネイプと死の秘宝(16)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ダークロードから、ポッターがホグワーツのレイブンクローの部屋に行くかもしれないから注意せよとの緊急指示が来て、私はいよいよ最後の時が訪れたことを知った。

ポッターがホグワーツにあるホークラックスを探す時間をできるだけ稼ぎたい。うまくすれば、ポッターがホークラックスを見つけた後で捕まえて、校長室で最後の真実を伝えることができるかもしれぬ。ダンブルドアの肖像画に口添えしてもらえば、ポッターも素直に事実を受け止めるだろう。

ダンブルドアが言っていたように、ダークロードがナギニに保護呪文をかけて手元においている確認はできないが、これがナギニとポッター自身を除く最後のホークラックスであることは確信していた。ダークロードの緊急指示もそれを示していると言える。


私はまずアレクト1人に様子を見に行くよう指示し、アミカスは止めおいた。しかしまもなく左腕の闇の印が焼け焦げた。アレクトがポッターを見つけ、ダークロードに知らせたのだ。

「セブルス、アレクトがダークロードを呼んだ!逃がしたりしたらマルフォイ一家の二の舞になるぜ!」
 
駆けだしたアミカスを先にやり、私は急いでダンブルドアの肖像画に確認した。

「もう、ポッターに知らせてもよい時ですね?ダークロードもこちらに向かうはずです。」

「ふむ、、、よいじゃろう。じゃが、ぎりぎりまで待つのじゃ、セブルス。慎重にの。もしハリーの気持ちがくじけてしまったら・・・。様子を見て柔軟に判断するのじゃ。おまえさんなら正しく判断できるじゃろう。」

私は廊下に出て、様子をうかがうことにした。深夜の廊下は人通りもなく、静まり返っている。ポッターたちがカロー兄妹の動きを封じたところでポッターを捕えて校長室につれてくることができれば・・・。あるいはカロー兄妹がポッターを捕まえたとしても校長室に連れてくるはずだから、そこで兄妹に忘却術か失神呪文をかけてしまえばよい。

いずれにしても、アレクトの呼び出しでダークロードがこちらに向かっているはずだから、たいして時間はない。しかし、ポッターに最後の真実を伝えることができさえしたら、あとは逃がすか、最悪私の立場がバレても、闘って守ればよいのだ。だが、ここで戦いが広がれば、他の生徒たちに危険が及んでしまう。ダークロードがつく前になんとかポッターを捕まえなければ。あとどのくらい時間は残されているのだろう?

と、騒ぎを聞きつけたのか、ミネルバがレイブンクローの部屋のほうから走って来た。甲冑の陰に隠れたが、気づかれてしまったようだ。

「そこに居るのは誰です?」

ミネルバがこちらに杖を構えてきいた。

「私だ。」

やむなく杖を構えて歩み出た。

「カロー兄妹はどこにいる?」

ミネルバの敵対的な態度から、透明マントをかぶってポッターが近くに居ると推測できた。

「あなたが指示した場所に居ると思いますよ、セブルス。」

「私の印象では、アレクトが侵入者を捕まえたようだが。」

「そうですか?なぜそのような印象を?」

私は闇の印が刻まれた左腕を軽く曲げて見せた。わかるだろう?闇の印が焼けたのだ。ダークロードがここに来るのだ。

「ああ、当然そうでしたね。あなた方デスイーターは仲間内の通信手段をお持ちでしたね、忘れていました。」

嫌味な言い草だ。闇の印があるのは知っているくせに。しかもダークロードが向かっていることは気づかないようだ。とにかく、ポッターがいるなら早く捕まえねばならぬし、そうでなければ、まだ私の立場を知られぬほうがよい。ポッターに最後の真実を伝えるまでは、闇陣営の者を装ってホグワーツを守らねばならぬ。かまをかけたが、ミネルバはのらりくらりとかわしている。もう無駄に費やす時間はない。

「ハリー・ポッターを見たのですか、ミネルバ?もしそうならば、私はなんとしても・・・」

言い終わらぬうちに、ミネルバの杖が空を切った。とっさに楯の呪文で防ぐと、ミネルバが体勢をくずした。しかし次の攻撃は早かった。ミネルバが壁の松明に杖を振ると、火の輪が廊下に広がった。私がそれを黒い蛇に変えると、ミネルバは吹き飛ばして煙に変えた。煙はすぐに形を変えて固まって、たくさんのダガ―ナイフが雨のように私に向かって飛んできた。とっさに甲冑で防ぐ。ダガ―ナイフは次々と甲冑の胸に突き刺さった。

「ミネルバ!」

フリートウィック教授が叫びながら走ってきた。

「やめろ!これ以上、ホグワーツで人を殺めるな!」

フリートウィックの呪文で、甲冑が私を捕えて締め付けてきた。後ろからスプラウト教授、さらにスラグホーン教授も走って来る。

私は甲冑をなんとか振りほどいて、攻撃者たちに向かって投げつけた。甲冑が壁に当たる瞬間、横に飛ぶ足が見えた。透明マントをかぶって誰かいたのだ。ポッターか、ポッターと仲間か。

危ないところだった。これ以上防戦しては彼らを傷つけてしまう。ポッターを。私が守ってきた者たちを・・・。やむをえない。あと一歩のところだったのだが。

私は意を決して向きを変えた。人気のない教室に向かって走る。すぐ後ろから皆が追ってくるのがわかった。教室の窓のガラスを破り、私は空に飛んだ。背後からミネルバの叫び声が追って来た・・・。

「臆病者!臆病者!」

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ミネルバ

セブルス・スネイプと死の秘宝(15)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


叫びの屋敷にセブルスを訪ねてからひと月。約束の深夜、家で待っていた私の前に、牝鹿の守護霊が現れた。

「影響はない。マーリンの祝福を。」

牝鹿は短い伝言を残して消え去った。

生まれてくる子供に、人狼の呪いが遺伝することはないだろうと、セブルスが調べて伝えてくれたのだった。人狼の父親は持つが、子供は人狼ではない。私のように、月ごとの変身に耐えたり、変身中に人を襲うことを恐れることなく、生きてゆける。

人狼として生まれてくるならなおさら、父親として守らなければと思ってはいたけれど、人狼の呪いを受けずに生まれてこられるなら、それに越したことはない。私は安堵のため息をついた。われ知らず、頬が緩む。私の、子供。私のような不幸を背負わず生まれてくる、私の子供。マーリンが私の人生を祝福してくれたのだ。まあ、実感はまだないけれど。

それから、ほんのわずか目の前に輝いた、牝鹿の守護霊と、その主を思った。

セブルス、ありがとう。

君が言ったように、私は逃げることなく、生まれてくる子供を愛し、子供の魂に守りを与える。その子供が少しでも生きやすい世になるように、力を尽くして戦っていく。君がリリーへの贖罪のために、命をかけてハリーの行く道を守っているように。

私は実家にいるトンクスの元を訪ねた。母親のアンドロメダはまだ私のことを認めてはくれないけれど、生まれてくる子供に呪いは伝わらないと話し、父親として、子供のためにできるかぎりのことをしたいと訴えた。アンドロメダは、それでも人狼から目をそむけるようにそっぽを向いていたけれど、トンクスは泣きながら私を抱き締めた後、素早く荷物をまとめていた。

心にあるセブルスへの想いをどうしたらよいのか私にはわからない。けれど、今はトンクスを守り、ハリーを助けて戦いを勝利に導くことだけを考える。セブルスも今は、いやずっと、ハリーを守り、ヴォルデモートを倒すことだけを考えて生きているはずだ。

闘うと言っても、闇陣営が隆盛を誇る今、騎士団は表立ったことはできなかった。時々秘密裏に集まって、無事を確認し、情報を分かち合い、できることを話し合う。ハリーたちの動向はわからないけれど、ダンブルドアからの密命を果たすために、懸命に戦っているはずだ。私たちがどのようにそれを助けていけるかと。そしていざという時には、皆戦いに駆けつけられるように。

私たちは『ポッターウォッチ』という秘密のラジオ番組を流し、情報を伝え、希望を失わぬよう人々を励まし、ハリーへの支援を呼び掛けた。それから、マグル出自の魔法使いや逃亡者たちを助けたり、何も知らず被害に会うマグルたちをできるかぎり守ったりした。ハリーがヴォルデモートを倒すまで、そうして生き延び、皆を守っていくことが我々の使命だと騎士団仲間と語り合った。

ホグワーツ内の様子はほとんどわからなくて、たまにウィーズリー一家からジニ―を通じての話が漏れてくるくらいだった。皆、セブルスの裏切りとホグワーツでの圧政を悪し様に言っていて、そんな時は胸が痛んだ。

セブルスがほんとうに騎士団を裏切ったのなら、ホグワーツにいる騎士団員、ミネルバやハグリッドが無事でいられるはずがない。ホグワーツの外でも、セブルスがアーサーやキングスリーが団員だと報告していれば、魔法省を牛耳った闇陣営は直ちに対応したはずだ。ジニ―たちが校長室に忍び込んでグリフィンドールの剣を盗もうとした時も、罰則はハグリッドの元で禁じられた森の仕事をさせただけだという。セブルスがホグワーツにいなければ、どんなことになっていたことか。

そんなことになぜ皆気づかないのかと思うけれど、それだけセブルスの、あるいはダンブルドアとセブルスの計略が見事だったと言うことで、歯がゆいけれど、それを明かしてはならないことはわかるから、私はもちろん口を閉ざしている。セブルスの危険で孤独な立場を思いながら、今は無事を祈ることしかできない。

闇陣営に抵抗する者は、誰もが危険と背中合わせで、家族や仲間と守り合い、手を取り合うことで不安を紛らせ勇気を保っているのだけれど、セブルスはただ一人、孤独な戦いを続けているはずだった。恨みも、裏切り者という嘲りも、一身に引き受けて。けれど、一時は出せなくなっていた守護霊は、また力強く輝いていた。セブルスは孤独なのだろうけれど、幸せに心を満たせるほどの強さを回復しているということだ。

戦いが終わったら、私はけっしてセブルスを孤独に皆に立ち向かわせることはしないと誓った。学生の頃から、何度も思いながら果たせなかったけれど、今度こそ必ず、私はセブルスに恥じない勇気ある人間になりたい。

私は騎士団の仲間と会ったり、活動をする以外、できるだけ家でトンクスを守っていた。私とトンクスは、ともに騎士団員として、また人狼およびその家族と知られているから、闇陣営下にある魔法省の、いわばお尋ね者だった。家にはもちろん忠誠の術をかけて守り、細心の注意をして潜みながら、少しお腹が目立ってきたトンクスとともに、子供の誕生を待っていた。闇に包まれた時代でも、未来への明るい希望が生まれてくるのだと話しながら。

しかし、思わぬ訃報がおとずれた。いや、思わぬ、とは言えないだろう。マグル登録を拒否して逃亡していたトンクスの父親、テッド・トンクスが死亡したという知らせだった。自分の身の安全よりも、むしろ離れることで家族の安全を守るために逃亡したテッドの死。悲しみに沈むトンクスを慰め、衝撃を受けたアンドロメダも一緒に暮らすことを了承してくれた。こんな時は、家族が身を寄せ合って支え合うしかないと思う。私が家を空けるときにも、1人より、2人でいてくれたほうが、少しでも安心だった。

イースターが明ける頃、ハリーたちが闇陣営に囚われ、辛くも脱出したものの、ロンがハリーと一緒にいることが知られてしまい、最後まで表の生活をしていたウィーズリー一家も、地下に潜ることになった。しかし思えば、今までアーサーが確証を握られず、魔法省に勤めていられたことのほうが奇跡ともいえる。一家は親戚の家に身を寄せたり、それぞれの隠れ場所を忠誠の術で守った。騎士団員の連絡すら難しくなり、ビルとフラーの『貝殻の家』を緊急の連絡先として、皆それぞれの場所で、身を潜めて生き延びるしかなかった。

しかし、そんな中でも、幸せは訪れる。ついにトンクスが出産したのだ。十分な世話も受けられない環境で、トンクスはたくましく出産を果たした。元気な男の子。人狼の呪いを受けることなく生まれてきた、命の輝き。見せることのかなわなかった祖父の名をもらい、テッドと名付けた。テッド・リーマス・ルーピン。トンクスの七変化を受け継ぎ、さっそく髪の色が変わっている。何も知らぬ無垢な笑顔、元気な泣き声、ぷくぷくとした小さな手。見ても見ても、見飽きることがなかった。守りたい。この子の命を、幸せを。

私は無性にセブルスに知らせたかった。それと、ハリーに。人狼の呪いの遺伝に怯え、犯してしまった過ちに逃げだしそうになった私を諭し、それぞれの方法で命の芽生えを祝福してくれた2人。私は父親になったんだ!

むろん、セブルスに伝えるのは無理だけど。「可愛くて食べちゃいたいほどだよ」とか言う私。「おまえが言うと洒落にならん。食ってしまわぬようにせいぜい気をつけろ」と皮肉な笑いを浮かべながら、でも心から祝ってくれるセブルス。そんな景色を心に描いてしまった。

厳しい言葉に怒りを爆発させて、その後会えなかったハリーにも、一刻も早く伝えたかった。それから、人狼の私を受け入れ仲間として支えてくれた騎士団の仲間たちにも。トンクスと相談してハリーに子供の後見人を頼むことにして、私は緊急の連絡先となっている『貝殻の家』にアパレートした。

ビルの家に着くと皆何事かと緊迫した顔で立ち上がったけれど、私が正体確認の言葉を伝えて・・・。

「男の子だ!ドーラの父親の名をもらい、テッドと名付けた」

「え?トンクスが、赤ちゃんを産んだの?」

「そうなんだ。赤ん坊が生まれたんだ!」

私の知らせに、皆一様に喜んでくれた。ビル、フラーにくわえ、ハリー、ハーマイオニー、ロンに、ゴブリンもいた。訳のわからなそうなゴブリンを除いて、口々に祝福の言葉を与えてくれた。私は幸せがこみ上げて来て、涙ぐみそうだった。ハリーに歩み寄り、抱き締めてから、言った。

「君がゴッドファーザーになってくれるかい?」

「え?僕が・・?」

「そうだ。もちろん、君だ。ドーラも大賛成なんだ。君以上にふさわしい人はいないよ。」

ビルとフラーがワインを準備して、皆にゴブレットを配ってくれた。

「テディ・リーマス・ルーピンに!未来の偉大な魔法使いに!」

私が音頭をとって、皆で乾杯した。新しい命の誕生を皆が喜んでくれた。死ばかりが起こる暗い世相の中、これ以上の喜びがあるだろうか!

トンクスたちが待っているから、すぐに戻らなければならなかった。

「2、3日のうちに、写真を持ってくるよ。みんなに会えたと知って、家の者も喜ぶだろう。」

私は興奮も冷めやらぬまま、『貝殻の家』をあとにした。次に『貝殻の家』を訪れるより前に、ハリーたちがコングリッツ銀行の金庫を破ったという知らせを聞いた。鉄壁の守りを誇るコングリッツ銀行に忍び込み、うまく逃げおおせるとは。あの時ハリーたちと一緒にいたゴブリンの協力を得たのだろう。

ハリー・ポッターは間違いなく私たちの希望だ。必ずヴォルデモートを倒すだろう。ハリーを信じ、希望を失わず闘い続けるんだ。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ハリー

セブルス・スネイプと死の秘宝(14)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


魔法界は、闇に覆われていた。マグルや血を裏切る者の追跡は厳しさを増し、捕まえると魔法省から報奨金が出るようになり、賞金稼ぎの人さらいまであらわれた。訃報や逮捕、逃亡は珍しくもなくなったが、中には知る名を見ることもある。トンクスの父、テッド・トンクスが殺され、「キングスリーは禁句」を発して逃亡したらしい。クリスマス休暇明けに戻ってこなかったルーナ・ラブグッドの父親も逮捕された。真相のわからぬマグルの死亡者は数え切れぬほどだ。

不死鳥の騎士団の面々も、うまく難をかわしているらしいウィーズリー一家を除いて、皆行方をくらましてしまったようだ。それでよいのだと思う。ポッターたちがホークラックスの破壊を成し遂げるまで、今は、逃げて、隠れて、生き延びることが使命なのだ。

私はもう、あれこれ気に病むことは止めていた。むろん、ホグワーツの中でも、カロー兄妹の虐待ともいえる体罰は続いていたし、ダークロードからの命令で、外部の家族や友人が抵抗している生徒は人質のように見張ることになっている。酷い状態だ。だが、ポッターたちのホークラックスの破壊を見た後は、彼らが成し遂げることを信じ、時が来るまでホグワーツの生徒と職員の命を守っていればよいのだと心を決めていた。憎まれようと、恨みを買おうと、気にすることはない。彼らの命を守るのが私の使命なのだ。

ただ、ハグリッドが時勢もわきまえず、『ポッターを応援するパーティ』などを開いたのには、苦々しい思いをした。うまく逮捕は逃れてくれたが、痛めつけられる生徒をハグリッドの元に送ることができなくなった。

あとは、ダークロードが居座るマルフォイ邸のルシウスたちが気がかりだったが、ダークロードは外国に出かけていると聞き、わずかに胸をなでおろした。少なくともドラコはホグワーツで見守れるし、ルシウスもナルシッサと自分の命を守るくらいの狡猾さは備えていると思う。

ホグワーツを守ることに集中するうちに、イースター休暇に入り、休暇も終わる頃、思いがけずダークロードがホグワーツを訪れた。何事かと気を引き締めながら校門に出迎えると、湖に行くのだと言う。付き添って、わずかに春の気配が感じられる校庭を歩いていると、ダークロードが独り言のようにつぶやいた。

「ホグワーツ。懐かしき城よ。」

そして付き沿う私に気がついたように言った。

セブルス、校長席の居心地はどうだ?」

「我が君、たいへん居心地良く座らせていただいております。」

「おまえはずっとホグワーツにおるのだな、セブルス。おまえにとってここは家のようなものであろう?」

「我が君、仰せの通り、私めが初めて家と感じた場所でございます。」

「余も同じだ。ここには余が家と思うすべてがあった。ついに余の物になるのだ。」

「すでに我が君の手の内にございます。」

湖のほとりに着くと、あとで行くから校長室で待てと追い払われた。私は校長室に戻り、居並ぶ肖像画に、まもなくダークロードが来るから、口を閉じて大人しくしているよう依頼した。それからガーゴイル像のパスワードも解いておいた。『ダンブルドア』というパスワードがダークロードに知れてはただでは済まないだろう。

入口で待っていると、突然目の前にダークロードの姿が現れた。そこまでは姿を消して来たのだ。

「我が君、ご用はお済みになりましたか?どうぞ、お入りください。」

私はダンブルドアの肖像画が背になるソファに導いたが、ダークロードはダンブルドアの肖像画を振り返り、勝ち誇った顔をしていた。

「最近、生徒たちに怪しい動きはないか?」

「カロー兄妹とともに厳しく見張っております。たいした動きはございませんが、何か気がかりなことでも?。」

ポッターが現れたのだ。」

「なんと。逃げたとばかり思っておりました。いったい、どこで?」

「グレイバックたちがマグルと思って捕まえて、マルフォイの屋敷に連れて行ったらポッターたちだった。余を呼びつけておいて、行ってみたら逃げられておったわ。ルシウスもベラトリックスも役にたたぬ馬鹿どもだ。余の足を引っ張ってばかりおる。しかし、、、ポッターの幸運もここまでだ。次に姿を現した時が小僧の最後になる。」

「・・・」

セブルス、ウィーズリーの末息子がポッターと一緒だったらしい。病気だと言う話だったが、我らを欺いていたのだ。血を裏切るウィーズリーめが。娘がホグワーツに戻ったら捕えておけ。」

「戻りましたら必ず。こちらでも警備をさらに厳重にいたします。」

「そうせよ。」

ダークロードは怒っているかと思ったが、その割には機嫌よく帰って行った。何をしに来たのだろう?湖のほとりで私を追い払い、いったい何を?

しかしマルフォイ邸の様子のほうが気になった。一家は無事なのだろうか?イースターが明けてドラコが戻ってきたのを見てほっとしたが、顔に新しい傷跡があり、青ざめた顔で元気がない。地下牢棟の研究室に連れてゆき、詳しい話を聞くことにした。ソファに座らせ、温かい飲み物を出してやった。

「ドラコ、怪我は大丈夫か?休み中に騒動があったと聞いた。父上や母上はご無事か?」

「先生・・・」

ドラコは顔を伏せ、涙を堪えるように口を結んでいる。

「何があったのか、落ち着いて最初から話してみなさい。」

「僕、、呼ばれて大広間に行ったら、ポッターとグレンジャーとウィーズリーが捕まっていました。グレイバックたちが連れてきたそうです。ポッターはハチ刺されの術にかかったみたいで膨れ上がった顔をしていて、僕にポッターか確認しろと言うんです。父上は、ポッターを差し出せばダークロードのお怒りも解けるだろうって。でも、僕がそうだと言ったらどうなるかと思って、僕・・・。」

「わからないと言ったのだな?」

「はい。自信がないって。」

「それで?」

「でも、母上がのグレンジャーの顔を知っていたので、結局はわかってしまいました。そこにベラ叔母さんが来て、父上とグレイバックと、誰がダークロードに知らせるか言い争って、そのうちに、ベラ叔母さんが、呼ぶのを止めたんです。今ダークロードを呼んだら、皆たいへんなことになると言って。それから、ポッターとウィーズリーを地下牢に閉じ込めて、ベラ叔母さんがグレンジャーに持っていた剣をどこで見つけたか聞き出そうとした、、、クルーシオをかけて、何回も。」

ドラコが辛そうに言葉を切った。

「僕、ポッターもグレンジャーも嫌いだけど、あんなのを見るのは、、」

「わかっている、ドラコ。気持ちのよいものではない。」

「ベラ叔母さんは、剣はスネイプ先生が自分の金庫に送ったものだから、金庫から盗みだしたんだろう、他に何を盗んだってグレンジャーを責めていた。でもグレンジャーはその剣は偽物だって言ってた。それで今度は地下牢からグリンゴッツのゴブリンを連れて来させられた。ゴブリンが剣を確かめて偽物だって言って、ベラ叔母さんがダークロードを呼んだ。

それでグレンジャーをグレイバックが連れて行こうとしたら、、、ウィーズリーとポッターが広間に飛び込んできたんだ。父上が倒されたから、母上や僕も応戦した。ベラ叔母さんがグレンジャーにナイフを突き付けてポッターたちの杖を捨てさせて、僕が拾っていたら、、、シャンデリアが落ちてきたんだ。」

「それで怪我をしたのだな?しかしなぜシャンデリアが?」

ドラコは小さくうなづいて続けた。

「しもべ妖精のドビーがやったんだ。それで僕杖をとられて、ポッターたちはディサパレートして消えた。母上に早く部屋に行って絶対に出てくるなと言われて。そのすぐ後あの方が来られて、父上が、、母上も、ベラ叔母さんも、みんな酷い目にあった。あの方が怒っていて、すごい悲鳴が聞こえてきた。でも、母上が部屋にいろと言うから、僕は・・・。」

「それでよかったのだ、ドラコ」

「周りが静かになってから、僕、様子を見に行きました。そうしたら、みんな地下牢に閉じ込められていました。父上はひどく怪我をされていて。母上に言われて、先生がくれた魔法薬の袋を持って行ったんです。それで手当ができるから、僕は学校に戻るように言われました。先生の所にいなさいって、父上が。」

「ドラコ、父上のおっしゃる通りだ。2人ともドラコのことを一番心配しているのだ。今すぐは無理でも、必ずお怒りはとける。だからあまり心配しないでここにいなさい。わかったね、ドラコ?」

それから、まだ新しい傷跡に薬をぬってやり、誘眠の薬を飲ませてスリザリン塔に戻らせた。

ドラコの魂は傷ついていない。ダークロードに怯えながらも、自分だけ助かればよいと、そんなふうに考える子にはならなかった。愛されて育つとは、そういうことなのだ。ルシウスとナルシッサの窮状は心配だが、アズカバンよりはましだろう。

ウィーズリーの娘は休暇明け、学校に戻らなかった。ロナルドがポッターに同行していることがダークロードに知れ、ウィーズリー一家は姿を隠したときいている。

ポッターたちはレストレンジ家の金庫に、ホークラックスがまた1つあると気づいたはずだ。コングリッツ銀行に預けられた物をどうやって手に入れるかと思っていると、翌月にはコングリッツの金庫が破られたと耳に入ってきた。

セブルス、ポッターの小僧たちがレストレンジの金庫に盗みに入ったそうだぞ。ドラゴンに乗って派手に逃げて行ったらしい」

「ベラトリックスはさぞかし悔しがってるだろうね、兄さん、ご自慢の金庫が襲われて。」

「それどころか、ダークロードに怒鳴りつけられたらしい。あの方は、報告に来たゴブリンをその場で殺し、ベラトリックスとルシウスは・・・あいつら、もうおしまいだな。」

私はホグワーツにこもりきりだが、カロー兄妹にはデスイーターたちと接触して情報を仕入れてもらっている。彼らも仲間たちに会うのを楽しみにしているし、聞きこんだ話は疑いもなく私に聞かせてくれる。

「アミカス、2人はどうなったのだ?」

「クルーシオでさんざん痛めつけられた挙句に監禁さ。おー、こわっ。俺たちもヘマしないようにしないとな。」

「でも、兄さん、ベラトリックスの金庫が破られて、なんでルシウスまで?」

「さあな。ワームテールが死んでからは代わりにパシリに使われてたからな。目についたから一緒にやられたんだろ?昔はいばってたもんだが、惨めなもんさ。とにかく、ダークロードのお怒りはすざましかったらしいぞ。生きてるだけでも、もうけもんさ。」

とりあえず、ルシウスの命はつながっているようだとほっとした。それにしても、ポッターたちは大したものだと思う。これでまた1つ、ホークラックスを手に入れたはずだ。ダークロードもそろそろ、ポッターたちがホークラックスを破壊していることに気づく頃だろう。

最後の時が近付いている。ひしひしと感じたが、焦りはない。私はその時までできるだけ生徒たちを守り、戦いの後にホグワーツを立て直してくれる教授たちを守るだけだ。あとはポッターに、最後の真実を、、、ポッター自身がダークロードの魂の欠片を宿す存在だということを伝える。ポッターは自らの選択で、為すべきことを果たすだろう。

私は静かに、その時を待つ。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ダークロード ポッター

セブルス・スネイプと死の秘宝(13)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


夕暮れのディーンの森に着くと、木々は雪に覆われ、刺すような寒さだった。ベラトリックスではないが、私がぬくぬくとホグワーツにいる間も、ポッターたちはこのような場所を彷徨っていたのだ。

フィニアス・ナイジェラスの話から、彼らが移動しながらテントで暮らしていることは分かっていた。保護呪文でテントは見えないようにしてあるはずだ。辺りを探り、小さな池を見つけた。池からほど近い所に、2本の木が並び立ち、うまく姿を隠しながらあたりを見渡せる場所があった。

夜になるのを待ってその場所にたち、私は心の中のリリーに話しかけた。

リリー、この森のどこかに、君の息子がいるはずだ。赤子だった子も大人になって、君のかけた愛の守りが解け、今は自分の力で闘っている。きっと勇気を示して剣を手に入れられると思う。君なら、息子のハリーを見つけられるだろう?命をかけて守ってきた君の手で、導いてやってほしい。」

その時、森の木々が揺らいだ気がした。雪の上にぼんやりとした光の固まりが現れて・・・

「あなたも一緒よ、セブ」

私はたしかに、リリーの声を、聞いたと思う。懐かしい、その声。

ああ、リリー。君の遺志を継ぎ、私も命をかけて守ってきた。最後まで、この身を楯にして守るつもりだ。君があの日そうしたように。そしてハリーも、その時が来れば身を投げ出して友や仲間を守るだろう。君と同じように、真の勇気を持つ子に育っているはずだ。

私は杖を上げた。

心に溢れるリリーの思い出。両親の諍いを心配してくれたリリー、傷ついた頬に小さな手のひらを当ててくれたリリー、毅然として私をかばってくれたリリー。私に生きる意味と喜びを教え、いつも私を支えてくれたリリー。

「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ、来たれ!)」

リリーと私の幸せな思い出が、光の粒から銀色の牝鹿の姿となって、粉雪の上を滑るように進んでいった。

やがて守護霊が歩みを止めた先に、小さな人影が立ち上がるのが見えた。人影と牝鹿はしばらく、静かに見つめ合っていた。ポッターなら必ず、牝鹿を為す魂を感じ取るはずだ。私が杖で池の氷に割れ目をつくって剣を沈めると、牝鹿は向きを変えてこちらに向かった。一瞬の後、人影も後を追い、やがてポッターの姿が確認できた。私は並びたつ2本の木の陰に立ち、幹と幹の間のわずかな隙間からポッターの様子を見守った。

池のほとりまで来て牝鹿が歩みを止めると、ポッターは駆けよった。牝鹿は振り返り、もう一度ポッターの顔を見つめて、静かに姿を消した。

暗闇に戻った森の中で、雪や枝の折れる音だけが聴こえる。ポッターが「ルーモス!」を唱え、杖先に明りをつけた。ポッターは池に近付いて見下ろし、底に沈めた剣に気がついたようだ。探るように周囲を見回してから、池に向かって「アクシオ・ソード(剣よ、来い)」と叫んだ。そんな容易いことではないとわかっているはずだが。

何の反応もないのを確かめたようだ。ポッターはあきらめたように服を脱ぐと、たたんで池のほとりに置いた。「ディフェンディオ(裂けよ)!」の呪文で氷を割り、明りがついたままの杖を脇に置いて、ついにポッターは池の中に飛び込んだ。そしてわずかな間水面でぐずぐずしていたが、やがて水の中に姿を消した。

信じていても、心配なものだ。心配しながら、同時に期待を込めて見守っていたのだが、ポッターはなかなか浮かんで来ない。池の中は、凍りつく冷たさに違いない。何をしているのだ、ポッター!

たまりかねて池に向かおうとした時、杖先が作る光の中に、別の少年の姿が現れた。ウィーズリー!あわてて木の陰に戻り、身を潜めた。

ウィーズリーは池に走り寄ると、躊躇なく飛び込んで、すぐにポッターを抱き抱えて水面に浮かび上がった。ウィーズリーはなんとかポッターを引きずり上げると、腰を折って咳込んでいる。その手にはグリフィンドールの剣が握られていた。ポッターもうつ伏せに倒れたまま、ゲーゲーと水を吐きながら咳きこんでいる。

どうやら2人とも無事のようだ。私は胸を撫で下ろし、様子を見守ることにした。ポッターがよろよろと立ち上がり、ウィーズリーがもう一方の手にぶら提げたロケットのような物を持ち上げて、2人で何やら話している。ポッターがようやく服を着た。

生気が戻ったのか、会話の声も少し大きくなって、わずかに聞きとれるようになった。

「君があの牝鹿を出したのか?」

「え?もちろん違うよ。僕は君が出したのかと思っていた。」

「僕の守護霊は牡鹿だよ。」

・・・ポッターの守護霊は牡鹿なのか。面白くない気がした。考えてみればリリーの牝鹿とポッターの、、、父親の牡鹿。ありうることだが不愉快な想像だった。しかも、ルーピンの守護霊も牡鹿になったのだった。ルーピンとポッターが一緒に守護霊を出す機会がないことを願う。いや、今はそんなことを考えている場合ではなかった。

「他には誰か見なかった?」

「見てない、僕・・・あそこで何かが動くのを見たような気がするんだけど。君が池に入ったきり出てこないから、回り道なんてしていられなかったんだ。」

ウィーズリーの言葉に2人の顔がこちらを向いた。と思う間もなく、ポッターがこちらに向かって走り始めていた。私はあわてて気配の残る足元の雪を消し、少し離れた木の陰にアパレートした。

ポッターは2本並んだ木の辺りを調べていたが、やがてウィーズリーの所に戻って行った。彼らの声は聞きとれなかったが、首尾よくホークラックスを破壊できるのか、見届けるつもりだった。

2人は杖を掲げて辺りを見渡し、平べったい岩の所に移って行った。そしてポッターが、ウィーズリーに剣を渡そうとしてる。剣を手に入れた者こそが、真の勇気を示したとして剣の力を引き出せると言っているのだろう。確かに、魔法にはそのような性質がある。憎しみや嫌悪が闇の呪いの力を強めるように、担い手の行為や思念が魔力には反映される。

ウィーズリーはしばらく尻込みしていたが、ついに剣を受け取った。ポッターがロケットを開いたようだが、ウィーズリーは立ちすくんだままだ。

「ロン、刺せ、今すぐに!」

叫び声は聞きとれた。ウィーズリーがようやく剣を振り上げた時、、、岩の上から、おそらく開いたホークラックスから、赤い光が走ったかと思うと、不気味にも2つの頭らしきもの浮かび出てきた。ウィーズリーが叫び声をあげて後ずさる。さらに、胸、腰、足と出てきて、それはポッターとグレンジャーの姿になって揺らめいていた。

呪いが放つ声は聴こえてきた。ウィーズリーを揶揄し、劣等感や不安を巧みに突いていく。

「なぜ戻った?僕たちは君なんかいないほうがよかったのに。2人で君の愚かさや、臆病さや、思い上がりを笑っていたんだ。」

呪いが作ったポッターの声が響いた。

「あなたなんかに、誰も目もくれないわ。『生き残った子』に比べて、あなたは何なの?」

呪いの作るグレンジャーの声。

「君のママが言ってた。息子にするなら、僕のほうがよかったって。」

「女なら誰だって彼を選ぶわ。誰があなたなんて選ぶの?あなたはクズよ、クズ。彼に比べればクズよ。」

揺らめくポッターとグレンジャーが抱きあってキスをしてみせる。

ホークラックスの呪いは、ウィーズリーの心に潜む密やかな恐れや不安を読みとり、苛んでいるのだった。

「やるんだ!ロン!、、、ロン!」

ポッターの叫び声のあと、剣が光り、まっすぐに振り下ろされた。同時に、揺らめいていたポッターとグレンジャーの姿が消えた。

ダークロードの魂の欠片が破壊されたのだ。

座り込んだウィーズリーの肩にポッターが手をかけて、2人でしばらく何か話していた。リュックを持って彼らが立ち上がったのを見届けて、私はホグワーツに戻った。


校長室では、肖像画の中でダンブルドアが身を乗り出す様に待っていた。

「あなたが育てたポッターは勇敢でしたよ。」

「そうじゃろう。そうじゃろうとも。」

嬉しそうなダンブルドアの顔。ホークラックスの破壊を見届けたのは省いて、剣が渡るまでを報告した。

「危ういところでしたが、ウィーズリーが助けに来ました。実によいタイミングで現れたものです。」

「愛と友情じゃよ、セブルス。愛し求める心が、道を示すのじゃ。」

すべてはお見通しだったようだ。ウィーズリーがポッターを見捨てて去ることも。そしてすぐに戻りたいと願うことも。導く手立ては施してあったということだ。

私は今までポッターのおまけくらいに思っていたウィーズリーを見直していた。もう1人のポッターの仲間、グレンジャーほどの優秀さもない、ごく普通の少年なのだが・・・。ポッターを救うために、何のためらいもなく凍った池に飛び込んだ。呪いが暴いた劣等感や不安を持ちつつも、それに打ち勝つ強さを持っていた。

もちろん、ポッター自身も特別な魔力を持つわけでもないごく普通の少年なのだが、運命に恐れず立ち向かう勇気や、何があっても支えてくれる友を持っている。

「その通りじゃ、セブルス。わしたちがそのように育ててきたのじゃからの。」

肖像画になっても見通す力はそのままだから、かなわない。プイッと横を向いて校長室を出ると、後ろからダンブルドアの声が追いかけてきた。

「これこれ、セブルス、素直にならんか?」


ともあれ、これで1つホークラックスは破壊された。トム・リドルの日記とダンブルドアが嵌めて呪いを受けた指輪もすでに壊されている。あといくつ残っているのだろうか?以前ベラトリックスが漏らした言葉から、グリンゴッツのレストレンジ家の金庫にも1つあるはずだ。他にもあるのかわからないが、ナギニとポッター自身を除く最後の1つは、必ずホグワーツにあると思っている。なぜなら、、、私がたいせつな魂の欠片を残すなら、ホグワーツをはずしはしない。ダークロードも、初めて見つけた家に執着しないはずがない。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ポッター ハリー リリー

セブルス・スネイプと死の秘宝(12)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


私はホグワーツに籠りきりだったのだが、クリスマス休暇になり、少しだけマルフォイ邸を訪ねてみた。ホグワーツを留守にするのは心配だったが、ダークロードが滞在するマルフォイ邸の様子も気になり、生徒が休暇で家に戻ったすきに、少しでも様子を知りたかったのだ。

ナルシッサに迎えられて屋敷に入ると、休暇で戻ったドラコを含む3人が寄り添って、自分の家だというのに小さくなっていた。ルシウスもひどくやつれていた。

「ルシウス、クリスマスのプレゼントも用意できなかったのだが、」

私は薬の配達屋かと自嘲したい気分になりながら、新しい魔法薬の袋を渡した。

「強壮剤や安眠薬を調合したから疲れたときにはこれを。それから怪我をすることがあったら、ハナハッカや解毒剤も新しい物を入れておいた。」

セブルス、なんとか我が君のお役にたちたいと思うのだが、オリバンダー閉じ込められたままで、杖を作ることもできぬのだ。このままでは私たち一家は・・・。」

言葉にはしなかった私の心配を察知して、肩を落としたルシウスが近況を話すのを聞いていると、突然ドアが開いた。

「スネイプ!こんな所でこそこそと何をしておる?」

「これは、ベラトリックス。クリスマス休暇に長年の友人に挨拶に来たのだ。君こそなぜここに?、、、ああ、わかった。少しでもダークロードの目に止まろうと必死なのだな。涙ぐましいことよ。」

「うるさい、スネイプ。おまえはまたぬくぬくとホグワーツでよい身分だ。」

ダンブルドアを排除した功を認められてのこと。ダークロードも褒めてくださった。」

「我が君はお怒りだ!」

「我が君がなぜお怒りに?」

「知らぬ。先ほどどこからか戻られたが、またしてもと言って、ひどくお怒りであった。おおかた、ポッターの小僧が何かしでかしたのだろう。他はすべてうまくいっているはずだ。私に一言命じてくだされば、身を捨ててご奉仕するものを。スネイプ、おまえ、我が君が何をお探しか知っているか?」

「さて?存じませんな。私はホグワーツの任務に忙しい身ゆえ。おそばにいる君にもお話くださらないのか、ベラトリックス?」

ベラトリックスは悔しそうに顔を歪め、チラリとルシウスに目を走らせた。

「妹たちのせいで。ヘマばかりする妹の夫や、縁を切った妹の子供のせいで、私まで信頼してくださらない。お一人で考え事があると。」

「それでは私もおじゃましないほうがよさそうだ。」

ベラトリックスは詳しいことを知らぬようだし、これではルシウスと話もできない。私は早々に立ち去ることにした。

「ルシウス、ナルシッサ、メリークリスマス。ベラトリックスも。ドラコ、元気を出すのだ。休み明けに学校で。」


ホグワーツに戻り、ダークロードが何に腹をたてていたのかと考えてみたが、何も思いつかなかった。ポッターがなにやら絡んでいるようだが、フィニアス・ナイジェラスに向こうの肖像画に行ってもらっても、何の反応もないという。しばらく前までは、行けば待ち構えていたように話しかけてきたと言っていたのだが。ポッターは無事かとやきもきしたが、おそらくは首尾よく逃げられたのだと気持ちを落ち着かせた。

クリスマス休暇が明けても、ルーナ・ラブグッドが戻ってこなかった。学校に関することだからとデスイーターに探りを入れると、父親が発行するザ・クィブラー紙が、ポッターを擁護しているのを牽制するために拉致したと言う。もともと評価の高い新聞ではないのだし、生徒のことだから手荒なまねは慎んでくれと申し入れることしかできなかった。

規律に締め付けられた、変わり果てたホグワーツとはいえ、中にいれば死者や誘拐は防ぐことができる。そうしなければ。それが私の務めだ。巷では『マグル登録』の名のもとに、人さらいが横行し、抵抗すれば殺されることもあるのだ。今年度登校を許されなかったマグル出自の生徒たちは、ポッターたちと同様、寒い冬を、身を隠しさまよっているのだろうか?


フィニアス・ナイジェラスには引き続きポッターたちの様子を見に肖像画を行き来してもらっていたのだが、数日後、校長室の肖像画に戻ってくるなり叫んだ。

「校長!彼らはディーンの森でキャンプしていますぞ。あの穢れた血が、、」

「その言葉は使われませんように。」

「、、あのグレンジャーという女の子が、バッグを開くときにその場所の名を言うのが聞こえましたぞ!」

「それは素晴らしい!」

ダンブルドアの肖像画が絵の中で身を乗り出して叫んだ。

「さてセブルス、剣の出番じゃ!必要と勇気という条件を満たしてハリーが剣を手に入れること、それから、それを与えたのがおまえさんだとハリーに知れてはならんことを忘れるでないぞ!万一ヴォルデモート卿がハリーの心を読んで、おまえさんがハリーのために動いていると知ろうものなら・・」

「わかっています。」

私は素っ気なく答えて、ダンブルドアの肖像画の後ろからグリフィンドールの剣を取りだした。そして、出かける準備に旅行用の上着を羽織りながら、一言皮肉を言ってみた。

「それで、なぜポッターに剣を渡すのが重要なのかは、まだ教えてくださらないのですね?」

ホークラックスを壊すためだとわかってはいる。しかし贖罪の同志としてであれ、全てを打ち明けてほしい気持ちを消し去れず何度か尋ねていたのだが。

「そのつもりはない。ハリーには剣をどうすればよいかわかるはずじゃ。しかしセブルス、気をつけるのじゃ。ジョージ・ウィーズリーの事故があったからの、あの子たちはおまえさんの姿を見れば、気持ちよく受け入れてはくれんじゃろう。」

「ご心配には及びません。私に考えがあります。」

扉で振り返って答え、私は校長室をあとにした。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ダンブルドア ポッター

セブルス・スネイプと死の秘宝(11)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


その頃、『アルバス・ダンブルドアの人生と嘘』という本が出版されて話題になった。リータ・スキーターの著作だから真偽のほどは疑わしいものだが、ダンブルドアの栄光を損なうような内容の本にデスイーターたちは大喜びしていた。ダンブルドアの信望者にはお気の毒だぜと笑いながら、カロー兄妹が私に1冊手渡してくれたものだ。

さすがに、校長室でダンブルドアの肖像画を背にその本を開くのは気が引けた。ダンブルドアは、最後に話した時に少し触れたのを除き、私的な話をほとんどしない人だった。最後の夜にブロンドがどうこう言い出した時には、むしろ戸惑いを覚えたくらいだった。

私もリリーの死の直後に思いを吐露した以外、私的な話はまったくしなかったから不思議とも思わなかったのだが。教育か騎士団か、いずれにせよダンブルドアの話は常に公的な活動に関わるものだったし、私を含めダンブルドアを慕っていた者たちは多いが、彼の私的な面に触れたものはほとんどいないのではないか?

とはいえ、私を100%信頼していると言いながら、計画の全容を話してくれないことは、いまだ寂しく思っている。ダンブルドアには、リリーへの想いと悔いを明かし、全てを投げ出して導きに従ってきたのだ。長い年月を仕えるうちに、父親から得られなかった父性愛的なものを求めていたことは否めない。命じられるままに、嫌でたまらなかった父殺しのようなことまで為したのに、その私にはポッターほどの信頼を持ってくれなかった。それを思うと、心にトゲが刺さったような、苦々しさとも寂しさともつかぬ思いがよぎる。

殺害を為した後も、肖像画のダンブルドアに、機会があるとポッターに与えた使命が何かと尋ねたが、知る必要はないの一点張りだった。ホークラックスの破壊であることを私が気付かぬはずはないとわかっているはずなのに。知ったとしても、手を出すなと言われれば従うこともわかっているくせに。ダンブルドアの頑固者め。

「こんなふうに、死後に秘密が暴露されるのは不本意なことでしょうな?」

心の中でダンブルドアに皮肉を言いながら、地下牢棟の研究室でページを繰った。

まず目についたのは、ダンブルドアとポッターの関係についてだった。まるまる1章を割き、2人の関係は不自然でむしろ忌まわしいものだったと仄めかしてあった。ダンブルドアは最初からポッターに不自然な関心を持っていたが、それがポッターにとって善いことだったかは後にわかるだろうと。

たしかに、最初からダンブルドアはポッターに、ダークロードを倒す者として並々ならぬ関心を持っていたし、それはやがて、死ぬべき時に死ねるように生かすという、忌まわしい関係といえなくもないものになっていた。が、それはダークロードを倒すためにやむを得ないことなのだ。ダンブルドアの気持ちとしては、むしろポッターに対し孫のような愛情を感じていたと思う。それは計画のために生きるダンブルドアにとって、予想外のことだったろう。

あまりにスキャンダルを煽る事実を捻じ曲げた書き方に、本を手に取ったことを後悔したのだが、閉じようとしたとき、美しいブロンドの青年とともに笑う若き日のダンブルドアの写真が目についた。

これがあなたの心を奪ったブロンドか、とその青年の名を見ると、ゲラート・グリンデルバルドとともに、と記されていた。ゲラート・グリンデルバルド。ダークロードが現れるまで、最も危険な闇の魔法使いとされていた人物。たしかに、ルシウスとはケタ違いの悪だ。

興味をひかれて、つい読んでしまった。『より大きな善のために』という章だった。

優秀な成績をおさめ、栄光に彩られてホグワーツ卒業を迎えたダンブルドアは、友人とともに世界を見聞する旅に出ようとしたその時に、母親の急死という不幸に見舞われる。父親はすでに亡く、孤児となり家長となったダンブルドアはゴドリックの谷にある自宅に戻り、病弱だかスクイブだかで家に隠されていた妹のめんどうをみることになった。そしてそこを訪れたグリンデルバルドと知り合い、意気投合する。と本には書かれているが、本人の言によれば、心を奪われた。

そしてグリンデルバルドとともに、魔法使いがその存在をマグルから隠す『秘密保持法』を壊し、魔法使いが力を持ってマグルを支配するという夢に傾倒した。より大きな善のために、魔法使いによる支配権を掌握する。しかしそのための力の行使は最小限に抑えるべきだ。それはダンブルドアの発案だった。ダンブルドアからグリンデルバルドに送られた手紙に、若き日のダンブルドアの思想が記されていた。

その夢を目指し旅立とうとした2人と、それを非難する弟アバーフォースとの間で争いが起こり、その最中、妹アリアナが死んだ。

グリンデルバルドは逃げるようにイギリスを去り、ダンブルドアは葬儀の席で弟アバーフォースに殴られて鼻を骨折した。そしてその後ダンブルドアは、マグルを擁護する偉大な闘士となる。グリンデルバルドはイギリス国外で闇の魔法使いとして勢いを延ばし、真相の知れぬ事件が数々起こっていた。数年後、ダンブルドアは周囲に請われてようやくグリンデルバルドと再度対面し、決闘でやぶって監獄に送った。

私は本を閉じ、静かに目を閉じた。最後の夜の、ダンブルドアの言葉が浮かぶ。

「わしは魅了されてしまったのじゃ。その結果大切な者を失った。守るべき弱い命が失われたのじゃ。・・・それからは闇の台頭を抑えることに生涯をかけ、力に弱いことを自覚して権力に近付くまいと、教育者として生涯を送ったのじゃ。」

若き日の過ち。取り返しのつかぬ、失われた命。それではアルバス、あなたも自らの過ちが愛する者に死をもたらしたことを悔い、贖罪に生涯を捧げたのか。どれだけ贖罪に努めても、失われた命が戻らぬことを知りながら、得られることのない許しを求めて。

ダンブルドアには、私的な幸せや親しい人間関係を求める様子が見られなかったが、それはひたすら贖罪のための闇勢力との闘いに全てを捧げていたためだったのか?

私よりポッターを信じる様を寂しく感じたものだが、そのポッターが戦いのために命を差し出すことも止む無しとした。その厳しさに衝撃を受けたものだが、それはダンブルドアの悔いの深さでもあったのだ。

若き日の過ちを悔い、贖罪として闇勢力の台頭を抑えることを第一義としたダンブルドアにとって、元デスイーターで贖罪のためなら命も厭わぬ私は、実に都合のよい駒であったことだろう。しかし、それを責める気にはならない。むしろ、この機会を与え導いてくれたことに感謝している。ただ、栄光に輝いていたダンブルドアの生涯が、贖罪に貫かれていたことを思うと、その寂しさと厳しさに胸が痛んだ。

ダンブルドアは最初から、私が愛するリリーの死を悔み、遺志を継いで息子の命を守るために生き延びたのを知っていた。それなのに、そのポッターの死すべき使命を知り私が取り乱したのを見て、涙ぐむほどに驚いていた。あとで考えるとダンブルドアの反応が腑に落ちなかったのだが、長い年月をともに戦ううちに、自分と同様、私も贖罪のために闇の台頭を抑えることに全てを捧げているのだと錯覚していたのだろう。私はあくまでリリーの遺志を継ぐために戦っていただけなのだが。

ダンブルドアにとって、私は、同じ贖罪に生きる同志であり、私が心の底で父性愛など求めるような、ある意味子供じみた甘さを残しているとは思ってもいなかったに違いない。しかし最後の最後で、私には、贖罪を果たし、生き延びて自分の人生を歩めと言い残したのだった。

ふと、ポッターもこの本を読んだだろうかと思った。ダンブルドアを善の象徴と尊敬し信頼していたポッターは、ダンブルドアの過去の過ちを知り、裏切られたと感じるだろうか?若き日の過ちとは言え、今のポッターと同じ年頃のことだ。同じ年頃で命をかけて闇勢力と戦うポッターには、若さゆえとは片づけられぬであろう。

しかし、ポッターが命を差し出す歩みを始める前に、償う術のない過ちを犯してしまった者が、それでも歩んできた人生の重みを解してくれることを願った。それはおそらく予定外にポッターを愛してしまったダンブルドアのためであり、私自身の祈りでもある。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ポッター ダンブルドア

セブルス・スネイプと死の秘宝(10)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


秋の気配が深まる頃、校長室に掛けられたブラック校長の肖像画が、「誰かがわしを呼んでおる」と言って姿を消した。

私を除き唯一のスリザリン出身の校長であるフィニアス・ナイジェラス・ブラックの肖像画は、ブラック邸にも掲げてあった。しかし私が校長に就任してからというもの、向こうに行ってもいつもの部屋が見えない、景色がおかしいと、不満を言い続け、ダンブルドアの肖像画が、どこにあるかわかったら教えてくれの、などと言っていたものだった。

しばらくたって戻ると、フィニアスは憤懣やるかたない様子でまくしたてた。

「けしからん!ポッターがわしの肖像画を先祖の屋敷から持ち出しておった!」

聞きつけて、私より先にダンブルドアの肖像画が尋ねた。

「フィニアス、ハリーはどこにおるのかの?」

「わからん。わしを呼び出して、肖像画に目隠し術をかけたのじゃ。歴史的芸術品に対し、敬意の欠片もない、まったく無礼な振る舞いじゃ。それというのもアルバス、あんたが甘やかしておったからだと思うぞ。生徒たちには目上の者に対する敬意をおしえるべき・・」

「ブラック先生、ポッターはどんな様子でしたか?」

私は口をはさんだ。

スネイプ校長、ポッターは一人ではありませんな。盗みに入った子の兄と、マグル生まれが一緒におった。」

「ウィーズリーとグレンジャーですね。それで、どんな話をされたのですか?」

「グリフィンドールの剣を校長室に盗みに入ったは向う見ずな生徒たちのことをきいておった。ポッターは剣は校長のものではないから盗みではないとぬかしよった。スネイプ校長の学校に属するものだとおしえてやったのじゃが、まったくあの盗んだ娘っ子に、何の権利があるというのじゃ?話にならん。しかも呼び出して質問しておいて、わしの話にいちいち反論してくるから・・・」

「ブラック先生、ポッターたちが口のきき方を知らないことはわかっています。話の筋を。」

「ふむ。盗んだ子たちにどんな罰が与えられたか知りたがっておったな。禁じられた森に送って、うすのろのハグリッドの仕事を手伝わせたとおしえてやった。それからマグル生まれが、盗まれた時以外に剣が取り出されたことはないかと聞いて来た、磨くためなんかにと。マグル生まれはゴブリンの作品は磨く必要がないと知らんのじゃな。

それからポッターが、ダンブルドアをそこにあるわしの肖像画に連れてこれんかと尋ねてきた。ホグワーツの外では、本人の肖像画以外は行けんことを知らんかった。無知なのはマグルだけではないな。わしが説明してやった。

それからもう一度、マグル生まれが剣が取り出されたことがないかときかれたのじゃが、あれはたしか、アルバス、あんたが指輪を壊して開くときに使ったのじゃったな?そう答えておいたが。」

「その通りじゃ、フィニアス。」

「最後にポッターが、それをスネイプ校長に話したかと聞いてきた。あのとき、スネイプ校長がこの部屋にみえた時には、グリフィンドールの剣は置かれたままでしたな?ともかくポッターには、校長先生はもっと重要なことで頭がいっぱいだと言っておいた。」

「なるほど。」

「話はそれだけじゃった。あんな無礼な目にあっては、わしは二度とあそこには行かんぞ。ポッターたちにもそう言ってきた。」

「ブラック先生、ポッターたちの居所を知る必要があります。居所がわからずとも、動向を知っておかねばなりません。彼らと話すのが腹立たしいのはわかりますが、ときどき様子を見に行っていただきたい。」

「それが校長先生の役に立つのですかな?」

「たいへん助けになります。」

「それではそうしましょうとも。」


それから時々、ブラック校長はポッターたちが持つ肖像画を訪れては、彼らの消息を知らせてくれた。目隠し呪文が施されているので居場所はわからないが、2回目に行った時にはウィーズリーがいなくなっていたようだった。時には彼らが私に対してあまりに失礼だと怒って帰ってくることもあったが、私が宥めるとまた行ってくれた。ポッターたちも心待ちにしているようで、行けばたいてい話しかけてくるとのことだった。行く宛てが定まらぬためか、ウィーズリーがいない寂しさをまぎらわすためか、ポッターたちに大した進展はなさそうだった。

一方ダークロードも、ナギニを連れてどこかに出かけていることが多いようで、闇陣営側にも大きな変化はなかった。闇陣営は新体制を確立してマグル刈りに精を出し、騎士団側の活動は地下に潜ってしまい、私には聞こえてこない。

ポッターが最後の対決に向けてホークラックスの破壊に取り組むように、ダークロードも今度こそポッターを確実に倒す算段をしているのだと推測していた。最後を決する2者がそれぞれの戦いの準備を進める、いわば嵐の前の静けさともいう時間なのだろう。私はホグワーツにこもって、強硬派の生徒たちの抵抗や、カロー兄妹の暴走を抑えるのに手を焼きながら、外で起こっているであろう孤独な戦いに思いを馳せていた。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ダンブルドア スネイプ ポッター

セブルス・スネイプと死の秘宝(9)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ある日暖炉のフル―ネットワークで研究室から校長室に戻ると、ガラス戸棚が破られて、グリフィンドールの剣が消えていた。

「生徒たちだ!」「今出ていったところじゃ!」

口々に言いたてる肖像画の声に押されるように、追って階段を駆け降りると・・・下を走る3人の生徒の姿。迷わず呪文で足止めした。ウィーズリーの末っ子、ロングボトム、ラブグッド。ポッターの仲間たちだ。校長室に戻らせたのだが、騒ぎを察知し、カロー兄妹もやってきた。いずれにせよ、生徒たちには広がるから隠しおおせるものではないのだが。

「校長室から貴重な宝物を盗むとは、いい度胸をしたガキどもだ。」

「その度胸を試してやろうよ。ちょうど3人だ。セブルス、3人で1人ずつクルーシオをかけて、どの子が先に根をあげるか試そうよ。」

カロー兄妹はむしろ喜んでいる。生徒たち3人は、青ざめながら、しかしきっとした顔で私を睨んでいた。この子供たちはなぜ、勝算もなく無謀なことをして、危険を招くのか?

「君たちはなぜ盗みを働いたのだ?」

私は苦り切って生徒たちに尋ねた。

「僕たちは先生の弾圧なんかに負けない。」

独創的な魔法薬の調合で、爆発の惨事を繰り返していたロングボトムが、大きくなったものだ。ほんの数年前には、ボガート(まね妖怪)が私の姿に変わるほどに怯えていたというのに。今彼のボガートは何に変わるのだろう。

「私たちは勇気を示して、みんなを勇気づけるんだもン。」

この変わった子はグリフィンドールでもないのに、なぜポッターの仲間なのか?

「ハリーは一人じゃない。みんな一緒に戦ってるって伝えるためよ!」

ウィーズリーの末っ子。この場でその名を出すことが、どんな危険を呼ぶかわかっているのか。ただでさえ、血を裏切る者として、ウィーズリー一家は闇陣営から目をつけられているというのに。無謀を勇気と取り違え・・。ポッターと同じだ。

ポッターの名を聞いて、カロー兄妹がいきり立った。杖をあげようとしている。私は急いで言った。

「アレクト、森番のハグリッドを呼んでくるのだ。勇気を示したいようだから、禁じられた森で存分に勇気を試させるとしよう。」

アレクトは不満そうだったが、それでもハグリッドを呼んできた。禁じられた森で罰を与えるようハグリッドに命じ、3人を引き渡しひとまず安心した。ハグリッドなら生徒たちを虐待するようなことはないはずだ。少なくとも意図的には。

しかし、為すべきことがそれで終わったわけではない。ホグワーツ内部での抵抗活動はダークロードに報告せねばならなかった。特にポッターに関わることについては。どうせカロー兄妹から伝わるのだから、私が知らせるべきだった。ダークロードの信頼を損なうわけにはいかない。

それから、生徒たちの集会を禁じ、外部につながる隠し通路を全て閉鎖した。今大切なのは、ポッターたちがホークラックスを見つけて破壊するまでの間、他の者が危険に陥らぬよう守ることなのだ。少なくとも、私の目の届くホグワーツ校内であれば、校長として生徒や職員たちの命を守ることはできるはず。そして、このことで最も標的になりそうで、かつ自ら危険に立ち入りそうなジニ―・ウィーズリーについては、ホグズミードへの外出も禁じることにした。

グリフィンドールの剣については、ダンブルドアの肖像画の指示を仰ぎ、偽物をグリンゴット銀行に預けることにした。勇気の象徴として生徒たちが再び盗もうとする危険があったし、今回の件で闇陣営側からも興味を持たれかねない。ダークロードにもうまく話して許可をもらった。

カロー兄妹は校長室での盗みを許すような状況は放置できないと息巻き、生徒を律する規律委員に任命せざるを得なかった。規律を破った生徒については、すべてカロー兄妹に報告され、処分を任すことになった。尊い魔法族の子供たちの血を流すような罰則は慎めと釘をさしてはおいたのだが。


グリフィンドールの剣の事件後の処理に一区切りがついた頃、満月の夜を迎えた。私は凍結保存してあったルーピンの生殖細胞を再度調べたのだが、予想通り呪いの影響は見られなかった。約束の深夜、ルーピンの家に向けて守護霊の伝令を送った。「影響は見られない。マーリンの祝福を。」短い伝言を携えて、銀色の牝鹿が駆けだしていった。人狼の父親を持つその子供の育つ世が、少しでも生きやすいものになっているように。

こんな時代でも、生まれてくる命というものは、世の中に少しだけ希望の光を与えるものだ。私もその時をこの目で見ることができるだろうか?私は中断していた魔法薬の開発を再開した。ようやくそれなりの成果が表れてきた。死の寸前から死に至る仮死状態の時間を多少引き延ばすことができる程度だが。


私が魔法薬の開発にささやかな逃避を求めている間にも、校外での闇勢力の強まりを映す様に、カロー兄妹の振る舞いもエスカレートした。彼らが受け持つマグル学や闇の魔術に対する防衛術の授業は、もともとろくでもなかったが、ひどいものになっていった。

アレクトのマグル学ではマグルがいかに穢れたものかと説き、虐待すべきだと教える。アミカスの防衛術で教えるのは闇の魔術そのもので、反抗する生徒は、規律を破ったとして、クルーシオの練習標的にされる有様だった。密告が奨励され、少しでも怪しい気配があれば容赦なく暴行を与え白状させる。多くの生徒が怯え、身を縮めて規則に従った。

変わり果てたホグワーツ。私自身見るのも辛かったが、教授たちはすべて、私のせいだと恨んでいる。それでも、校内で囚われたり命を失う者はいなかった。私にできるのはそこまでだったが、それでもカロー兄妹が好きなように振る舞えば教職員や生徒たちにどんな害が及ぶかわからない。なんとか踏み止まり、戦いの終わりまで彼らの命を全力で守る。

この全てを終わらせられるのはポッターだけだ。しかしそれは、ポッターがダークロードに命を差し出す日でもある。私は、ダンブルドアがなぜホークラックスの破壊を彼らだけに任せ、私を含む他の者の助けが及ばぬよう秘密を保つのか、わかった気がした。ダンブルドアはポッターに時間を与えたいのだ。身を隠し、逃げ回りながらホークラックスを破壊する使命を果たすのは辛いことであろうが、その日々だけがポッターに残された命の時間なのだった。わずかな奇跡の希望はあるとはいえ。

ポッターが残りの時間を生きる日々、私はホグワーツで他の者の命を守り続けるのだ。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ホグワーツ

セブルス・スネイプと死の秘宝(8)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ルーピンが密かに訪ねて来てくれたことは、私に予想外の変化をもたらした。わずかながら、戦い後に生き延びたいという気持ちが芽生えたのだ。もちろん、ダンブルドアには生き延びる意欲を持てと言われ、そうすると答えたが、意欲というものは持とうと思って持てるものではない。中から湧きあがってくるものなのだ。

死にゆく人から生き延びよと言われても、敬愛するその人を殺し、生きる目的であるリリーの遺児を死に向かわせて、私一人生き延びてどうするのかと途方に暮れるばかりだった。しかし、ともに生きたいとすがるように言われれば、生き延びてこいつと一緒にいればいいのだと、その後のイメージも湧くというものだ。

ダンブルドアの死後、私は死者にばかり語りかけていた。魂の中のリリーと、肖像画になったダンブルドア。そしてほんのたまに、死に向かうポッターを心に描いて。そして、他の者に対する私は、すべて嘘だった。私を仲間と信じる闇陣営の者たちにも、私を裏切り者と信じる仲間たちにも、心を閉じてそれらしき演技をする。真の私はすでに死者たちの中にしかないと思っていた。

私を信じ、私が生きることを願ってくれる生きた仲間がいるということは、新鮮な驚きであり、喜びだった。ルーピンとともに生きたいと願っているわけではないが、戦いの後で、私が生き延びたことを喜んでくれる者が一人はいると思えれば、生き延びる張り合いもあるというものだ。考えてみれば、今はダークロードの虐待に身を縮めているルシウスも、きっと喜んでくれるに違いない。私は久しぶりに、生きた人間を身近に感じられたのだった。

幸せと縁遠い人生を送りながら、間違ったり葛藤したりしながら、それでも手を伸ばし続けるルーピンの生の営みがまぶしく思えた。しかも新しい命まで生みだそうとしている。人狼の子の苦労を思いルーピンが悔やむのはわかるが、死の影ばかり色濃いこの時代に、新しい命の誕生とは素晴らしいではないか。そのたくましさは、呪いとはいえ、狼の生命力によるものかもしれなかった。その呪いは遺伝するものなのだろうか?

私は地下牢棟の研究室で、採取した生殖細胞を調べてみた。人狼の呪いは、噛み傷から広がり、人間の細胞の一部を狼のものに変える。狼化した細胞は普段は最低限の生命レベルでなりを潜めているが、月の満ち引きに反応して活性し、満月の夜、人間の細胞の働きを凌駕する命をほとばしらせるのだ。

私がルーピンに作ってやっていた脱狼薬は、細胞の活性をトリカブトの毒で弱めるのだが、それは人間の細胞も狼のものも、ともに抑制する。生まれ変わることがなく、人間が狼より格段に発達した脳細胞においてのみ、かろうじて人間の細胞が狼のものに勝る状態に留められるものだった。だから体は変身するが、人間の意識が残るのだ。

生殖細胞は、特殊な細胞だ。新しく生まれることのない脳細胞とも、緩やかに生まれ変わる他の細胞とも違い、男性の生殖細胞は数日の命しかない。頻繁に作られ、受精することがなければ短期間で死んでゆく。ここに、月の満ち引きのサイクルを持つ呪いが存在する余地があるのか?採取した生殖細胞に、呪いを顕わす呪文をかけたり、呪いの活性を高める魔法薬に浸けてみたりしたが、呪いの影は見えなかった。残りは保存して、満月期にもう一度調べることにした。そこで呪いが見られなければ、確実とは言えないが、ルーピンに嬉しい知らせを送ってやれるだろう。

凍結した生殖細胞をクリスタルの小瓶に入れて貯蔵庫に仕舞いながら、ふと何かが引っかかった。生命の源を凍結保存し後に解凍して蘇らせるという行為が、私の中にわずかに芽生えた生き延びる意欲と反応したのだと思う。命の、あるいは死の、凍結。

死を操ることは、ホークラックスや亡者のように暗い闇の魔術に通じるが、死を遅らせることは治癒魔法そのものだ。死の寸前にそれを凍結し遅らせる、あるいは、仮死状態を蘇生する。それは聖マンゴ病院でも様々な呪文により試みられていた。しかし呪文では、癒者がその時その場にいなければならないという制限がある。もしも魔法薬で同じことができるなら、手遅れの死をもっと防ぐことができるかもしれない。私自身にも、来たるべき戦いに加わる者たちにも、助けとなるはずだ。

私はこの思いつきに夢中になった。もともと呪文や魔法薬の開発が好きなのだ。しかもこれは、闇に関わるものではない。脱狼薬を調合するための研究もインスピレーションを与えてくれた。生命活動を最低レベルに落として生き続ける狼の細胞のように、死の寸前ですべての組織が活動レベルを最低に落とすことで、死に至る時間を引き延ばす。

たとえば、心臓が血液を送り出すことができなくなったとする。脳や他の組織が、それまでと同じだけの代謝をしていれば、血液に運ばれてくる酸素やエネルギー源を早々に使い果たして死に至るわけだが、心臓の停止とともに体の全ての組織がその代謝を最低限に遅らせたなら?とりあえずしなくてもよい代謝を止めたなら?死に至る時間が、1分から5分に延びるだけかもしれぬ。あるいは10分から30分に。しかしそれが生死の境を分けることがあるのも現実だ。もちろん、一瞬にして死が全身を捕える死の呪文には対抗すべくもないが。

開発のアイデアはできたが、実際に作り出すまでは試行錯誤の連続だ。それでも、文献を調べ、よさそうな薬材の調合を様々に工夫してゆくのは、久しぶりに我を忘れるひと時だった。

しかし、ダークロードの意を受けて、同時にホグワーツを守る使命を持つ校長として、魔法薬学研究室にこもり過ぎたことは否定できない。そのようなことが許される気楽な立場ではなかったのだ。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルーピン スネイプ セブルス

セブルス・スネイプと死の秘宝(7)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


私は叫びの屋敷で、じっとセブルスを待っていた。守護霊の伝令は、考えた末、地下牢棟の魔法薬研究室に送った。

伝令は届くだろうか?それを見てセブルスはここに来てくれるだろうか?騎士団員がいるとデスイーターを引きつれてくるのではないか?セブルスを信じると思っても、やはり不安だった。セブルスへの信頼は、私の希望が生み出した幻かもしれなかった。

密やかな足音に耳をすまし、息をひそめていると、薄暗い部屋にの入口にさらに暗い影が現れた。

ルーピン?」

セブルス!私だよ!来てくれたんだね?伝令の意味はわかったかい?」

「わかったから、今ここにいるのだ。」

相変わらずぶっきらぼうなセブルスの返事をきいて、なんとなくほっとした。

「君はやっぱり、裏切ったわけじゃなかったんだね?仲間に言って私を殺すこともできたのに、一人で来てくれた。」
 
「何の用だ?」

「君に会いたくてたまらなかったんだ、セブルス。君は、、、君はほんとうにダンブルドアを殺したのか?」

「ダンブルドアの死については、ポッターが参考人として手配されたときいているが。」

「模範解答のような答えだね。でも、ハリーは確かにその現場を目撃したと言っているし、君以外にそんなことができる者はいない。」

「そう言うのなら、私に聞くまでもないだろう?」

「だけど私は、、、きっと事情があったんだと思っているんだ。」

ルーピン、そのことについて、私はこれ以上なにも言うつもりはない。おまえは自分が信じたいことを信じていればいい。用件はそれだけか?」

セブルスがこう言った以上、真実薬でも飲ませなければこれ以上のことは聞けない。

「それなら私は君を信じるよ。だけど、、、私はその衝撃のあまり、間違ったことをしてしまった。君を裏切り者と思いこんで、トンクスと結婚してしまったんだ。」

「何をのんきなことを。ルーピン、おまえはわざわざ危険を冒して、結婚の報告に来たのか?報告されるまでもない。ベラトリックスはそのためにダークロードに嘲られ、やっきになってトンクスをつけ狙っている。祝いの言葉でも言って欲しいと?」

「もちろん、そんなつもりじゃないよ。私は後悔しているんだ。想いは君にあるのに、間違ってトンクスと結婚して、不幸にしてしまった。人狼で貧しい私などと結婚したばかりに、トンクスまで世間の除け者にされている。私はどうしたらいいんだろう?」

ルーピン、そんな泣き言を言うために私を呼び出したのか?トンクスはおっちょこちょいのあわて者で失敗に慣れている。間違いに気づけば自分で正すだろう。トンクスが幸せか不幸かは、彼女が自分で決めることだ。私にはむしろ、おまえが不幸を嘆いているように聞こえるが。」

「そうだね。トンクスといると、自分が惨めに感じられてたまらない。私は、、君といたいんだ。」

「残念だがルーピン、私はおまえといられない。私はホグワーツにいなければならぬのでな。しかしおまえがトンクスと別れたいなら、私に泣きごとを言いに来るのではなく、トンクスに話すべきだと思うが。」

「だけど、、、トンクスは妊娠しているんだ。人狼の子を。私と同じ、人狼の子が生まれてくる。」

私は血を吐く思いで告白した。けれど、セブルスの返事は・・・

「ではおまえは、トンクスと別れて、生まれてくる子供を捨てようと思っているのか?」

「ハリーと同じことを言うんだね、セブルス。君ならわかってくれると思ったのに。人狼の子がどんな重荷を背負って生きていくことになるか、私が犯した過ちがどんなに取り返しのつかないものか、、、私の気持ちを、君なら分かってくれると思ったのに。」

私はやりきれない思いに息を荒げ、セブルスを睨んだ。セブルスは私をじっと見返していたが、しばらくして肩をすくめながら言った。

ルーピン、世間の偏見により、おまえが人狼として苦労してきたことは知っている。人狼の子であれば、同じような苦労をするかもしれぬ。だが、おまえの父親は、人狼となったおまえを見捨てたか?」

「・・・」

「ポッターがわかってもいないくせに生意気な口を叩いたことは容易に想像がつく。だがルーピン、ポッターは親の顔も知らずに育ったのだ。親戚に邪魔者扱いされながら。」

私は、自分の耳が信じられなかった。セブルスがハリーを擁護している!不思議なものを見るような顔でセブルスを見ていたに違いない。

「そうあっけにとられることはない。私も親に邪魔者扱いされて育ったのだ。おまえは知らぬだろうが、ダークロードも同じだ。母親の顔は知らず、生まれる前に捨てた父親は自ら殺したのだ。親は、できるなら、子供を見捨ててはいけないと思う。たとえ、自分がどんなに惨めな状態であろうとも、たとえ、どんなに気に入らない子であろうともだ。」

「では君も、、トンクスの元に戻れと言うんだね?」

私は力なくうずくまった。子供が人狼として生まれてくるのならなおさら、父親として助けなければならない。それはわかった。落ち着いてみれば、当然のことだった。けれど、、、もうセブルスといることはできないのか?こうして話すだけで安らぐことができるのに。それは、想像できないほど、辛いことに思われた。

「夫婦の間のことに口出しする気はない。戻るのも別れるのも2人の問題だ。だが、おまえのような惨めでふがいない父親でも、子供には父親の支えがあれば心強いことだろう。」

「わかったよ、セブルス。君の言うことは、よくわかった。私は父親として、生まれてくる子供に出来る限りのことをするべきだ。でも私は、君のことが好きだよ。戦いの後で君と幸せに暮らすことを、ずっと心の支えにしていたんだ。一時の衝撃で、愚かな過ちを犯したことを後悔している。トンクスにも生まれてくる子供にも、そして君にも合わす顔がない。」

「私のことなど気にかける必要はない。いずれにせよ、おまえが私といられるわけではないのだ。」

「なぜ?今は無理でも、戦いが終われば、、」

「戦いが終われば、私は、、、生きていたとしてもアズカバン行きだ。」

セブルス、では。私は必死に言いつのった。

「私は君を信じているよ。生きてさえいてくれたら、きっと事情も明らかになるよ。セブルス、、、まさか、死ぬつもりなのか?」

「生き延びる努力はするつもりだ。そういう約束になっている。」

「?」

怪訝そうに見つめると、セブルスが腰をかがめ、うずくまる私に手を伸ばしてきた。するすると腕を首に回し、私の耳元で囁くように。

「ルーピン、これが最後だ、おそらくは。訪ねてきてくれて、、、嬉しかった。」

私も夢中で抱き寄せた。懐かしいセブルスの体。愛おしい命。

「もうこのような危険を冒してはならぬ。二度とここには来るな。」

「セブルス、、」

「抱け。」

「え?」

「私を抱くのだ、ルーピン。時間がない。早くするのだ。」

そのムードのない命令調はなんとかならないものかと思いながら、私は急いでめんどうな細かいボタンをはずし、大好きな体に肌を重ねた。汗と魔法薬の混じった懐かしい匂い。温かに脈打つ体。伝わる心臓の鼓動。互いの欲望を確認し、快楽よりその命の温もりに喜びが湧く。

今この時が全てだと、明日はわからなくても、今はこうしてともに生きているんだと、頭の中で何度も叫んでいた。

果てた解放感に浸っていると、清浄呪文をかけるつもりか手にした杖をふと止めて、セブルスが言った。

「ところで、ルーピン、人狼の子は必ず人狼に生まれるのか?そんな文献は読んだことがないのだが。」

「普通人狼は繁殖しないんだ。子供に重荷を背負わせるだけだからね。だから文献もないんだろう。」

なぜこのタイミングでそんなことを尋ねるのかと訝しく思っていると、セブルスは杖でスポイトを取り出し、私の精子を採取した。

「生殖細胞に呪いの影響が見られるか調べてやろう。呪いに遺伝性があるとは限らないからな。1ヶ月後の同じ日の深夜、おまえの家に伝令を送る。一度だけしか送らないから見逃すな。」

時代が許せば、セブルスはきっと、偏屈で素晴らしい学者になっていたに違いないと思う。地味だけれど人の助けになる研究を、こつこつと進めてくれたことだろう。いつも本を携えていた子供の頃のセブルス、顔がつくほどに鍋を覗き込んで魔法薬を調合していた黒髪の後ろ姿。こんな時代でなければ・・・。涙が滲み出て、あわてて手で拭った。

セブルスはいつの間にかローブを纏い、立ち上がっていた。

「セブルス、また会えるよね?誰が何を言おうと、君がどこで何をしていようと、私は君を信じているよ。」

「また会えるかはマーリンのみぞ知る、だ。だが、おまえが今日訪ねて来てくれたことは忘れない。ルーピン、幸運を祈る。」

「君も。セブルス」

セブルスは、らしくないことを言って去って行った。私は二度と見られないかもしれない、その細い後ろ姿を目に焼き付けるように、いつまでも見送った。

ダンブルドアの死の事情は話してくれなかったけれど、「戦い後に生きていたとしてもアズカバン行き」ということは、セブルスは闇陣営が敗れ去ることを信じているということだった。そのために戦っているということだ。仲間すべてに裏切り者と恨まれて、一人闇陣営の者を装って。

セブルスのその強さはどこから来るのだろうと思い、すぐに美しい銀色の牝鹿が浮かんだ。リリーの魂の守り。幼いセブルスが親から得られなかったその守りを、リリーが与えたのだった。そのリリーに死をもたらす過ちを犯し、セブルスは贖罪のために生きているのだと直感した。リリーの遺したその守りが、今は身を楯としてハリーを、そして仲間やホグワーツを守っている。

私は親として、生まれてくる子供に守りを与えなければならない。セブルスが私にくれた守りかもしれなかった。私は翌日、実家にいるトンクスを訪ね、私はお腹の子が幸せに生きられる世の中になるように戦うつもりだと伝えた。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ルーピン トンクス

セブルス・スネイプと死の秘宝(6)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


闇陣営の計画は、ポッター襲撃を除き、すべて順調に運んだ。服従の術や脅しにより魔法省に包囲網を築くと、魔法大臣のスクリムジョールを詰問し、ポッターの居場所を吐かせようとした。スクリムジョールは口を割らなかったが、ダークロードは彼をを殺し、服従の術をかけたシックネスを魔法大臣の座につかせたのだった。

その後は簡単だった。影から大臣を操り、新しい施策を次々と実行する。ダークロードが表に出ないことで、人々は誰を信じてよいのかわからぬ闇の影に怯え、口をつぐみ、孤立していった。人々は団結してこそ力を得る。孤立した者を従わせることは容易なのだった。

ダークロードが操る魔法省は方針を大きく転換した。ハリー・ポッターをダンブルドア殺害の参考人として手配したことで、関係者にはあからさまに拷問を加えることが可能になった。抵抗する者を見つけ出すための「禁句」さえ制定された。つまり、禁句である「ヴォルデモート」の言葉が発せられると、その場を魔法省が探知することができるのだった。その言葉を発するのは闇陣営に反する者だから、地下に潜った抵抗勢力を抹殺するのに役に立つ。

しかし「禁句」の術により最初に探知されたのは、ポッターだった。ポッターたち3人はマグルの街のカフェにいたのを探知され、ただちにロウルら2人のデスイーターが派遣された。辛くも逃げおおせたようでほっとしたのだが・・・。しかしマルフォイ邸に陣取ったダークロードは、ロウルらの失態の報復を、怯えるドラコにやらせたのだった。やつれ果てた青白い顔でかろうじてクルーシオをかけ、それに苦しむ姿を凝視するドラコが痛々しくてならなかった。なすすべもないルシウスとナルシッサも。

ダークロードは抵抗者をあぶり出すとともに、純血支配への方策も進めていた。魔法省に「マグル登録委員会」なるものを設置し、マグル出自の魔法使いや魔女を捕えていく。魔法は血で伝わるものなのに、マグル出自が魔法を操れるのは魔力を盗んだからだという、言いがかりに等しい根拠に基づくものだった。勢いづいた闇陣営の者による、お遊びのマグル虐待も続出した。

学校教育に関する方針も大きく転換された。国内に住む魔法族の子供は、すべてホグワーツに入学することを義務付けられた。血統の証明が求められ、事実上、マグル出自の子供の入学は不可能となった。また、これによりマグル出自の魔法使いや魔女を、子供のうちから排除することができるし、純血や混血の魔法族の子供も魔法省が一括管理できるようになる。

このような情勢の中で、私はダンブルドアが望んだとおり、ホグワーツの校長に任命された。殺されてナギニに食われたバーベッジ教授は行方不明とされ、マグル学の後任教授としてアレクト、空席になる闇の魔術に対する防衛術教授としてはアミカスの、カロー兄妹が闇陣営から送り込まれる。形式上は、校長の私が任命したのだが、実際はダークロードの命令だ。

魔法省から命じられる事実上ダークロードの意思に沿いながら、教授や生徒たちの身の安全を守り、できるだけまともな教育を受けさせるのが私の使命だ。デスイーターのカロー兄妹がいては、私のホグワーツでの行動は闇陣営に筒抜けとなるが、乱暴な彼らから、反発するであろう教授や生徒たちを守らねばならない。ホグワーツを守ると言っても、私の真意が闇側にばれぬようにしながらやらねばならないから、神経を張り詰めた任務となることは間違いなかった。

私が校長室に入ると、待ちかねたように肖像画が話しかけてきた。校長席の真後ろにある、新しい肖像画。

「セブルス、計画通り校長になったの。これで一安心じゃ。おまえさんならホグワーツをしっかり守ってくれると信じておる。」

「アルバス、容易なことではありません。魔法省は完全に掌握されましたし、カロー兄妹もホグワーツに来ているのです。追い詰められて騎士団は地下に潜り、ポッターたちは居所さえわかりません。」

肖像画ではあるがダンブルドアの姿を目にして愚痴をこぼし始めた所に、脳天気な声がかかった。

スネイプ新校長!我がスリザリンから2人目の校長就任、心から歓迎いたしますぞ!」

フィニアス・ナイジェラス・ブラックの肖像画。ガラス戸棚のすぐ脇で、満面の笑みで迎えてくれた。他の肖像画からも、控えめながら就任の祝いの言葉がきかれた。歴代の校長の肖像画は、生前の影として、現役校長に従い補佐してくれることになっている。

「アルバスからお聞きとは思いますが、世の中の情勢も私の立場も、非常に微妙なものです。間違っても私以外の者がいるところで無防備な口をきかれませんようお願いいたします。ホグワーツを守るために。」

「ホグワーツを守るために。」

肖像画が復唱して、拍手を返してくれた。死者の影にすぎないのだが、少しは心強かった。


入学式の日、大ホールに集まる生徒たちを前に、私は無意識のうちにポッターの姿を探していた。というより、姿がないことを確認していた。ここに姿があれば捕えねばならぬから、とんでもないのだが。ポッターの仲間の、ウィーズリーとグレンジャーの姿もなかった。彼らはともにポッターを助け、ホークラックスを見つけ破壊する旅に出たはずだ。旅が終われば・・・必ず彼らはホグワーツに帰ってくるだろうと予感していた。そしてダークロードもやって来る。根拠がある訳ではないのだが、見捨てられた子供時代を送った2人は、初めて見つけた家であるホグワーツで最後の決着をつけるだろう。それまでは、同じ根を持つ私がここを守るのだ。

私は新校長として入学式の壇上に立ったが、ダンブルドアのような、おちゃらけて楽しい演説ができるはずもない。居並ぶ生徒たちに魔法省の新方針を述べ、特に、反抗的な表情を隠しもしないグリフィンドールの生徒たちに、規則を守り、勉学に励むよう訓示を垂れ、新任の2人の教授を紹介した。

生徒たちを見渡すと、見慣れた顔がいくつか消えている。マグル出自の生徒たちだ。彼らは魔法を学ぶ機会を取り上げられ、捕まることを恐れて隠れているか逃亡を余儀なくされているはずだった。入学を許可されなかった11歳の子供もいるだろう。入学を心待ちにしていた子供の頃を思い出す。私のように家庭から身捨てられた子もいるに違いない。ホグワーツに来れば、そこで温かい家を見つけられたはずの子供たち。そしてマグル生まれのリリーも、この時代であれば、学校に来ることはできなかったのだ。学生の頃、私が愚かにも憧れた闇の真実がこれだった。

職員会議では、マクゴガナル教授を初め、ダンブルドアを殺した者が、と顔に書いてある教授たちに対し、魔法省の新方針を伝え、従うようにと命じた。彼らが表立って反抗すれば、よくてアズカバン行き、悪くすればバーベッジの二の舞になる。そのままは言えないが、言外に含ませたつもりだった。

公式な行事を終えると、私は魔法薬学のスラグホーン教授の部屋を訪れ、地下牢棟にある魔法薬学の研究室を使わせてほしいと申し出た。精魂込めて集めた薬材貯蔵庫を使いたかったし、何よりそこは20年近くを過ごした、最も落ち着ける私の部屋だった。もちろん、校長の申し出だし、前年度もそうしていたから、快く引き受けてもらえたが、スラグホーン教授は不安げな様子を漂わせながら尋ねてきた。

「セブルス、いや、校長、私は学生時代からあなたを見てきたのじゃが、ほんとうに、その、前校長を、、、。」

私がじっと見つめると、教授は言葉をとめて目を伏せた。私は、勇敢ではないがリリーを可愛がっていたこの魔法薬学の教授が嫌いではなかった。当時のスリザリン寮監でもあり、親しみも感じていた。

「スラグホーン先生、世の中の情勢はご存知でしょう?余計なことに興味を持たず、生徒の指導に注力することがたいせつです。スリザリン生は先生を慕っていることでしょう。」

スラグホーン教授は目を伏せたままだったが、意図を察してほしいものだ。魔法省やカロー兄妹に目をつけられぬように、また、怯えて逃げ出したりせず、難しい時期を迎えるはずのスリザリン生をなんとか守ってほしいのだ。

「校長先生のご意向に従うことにしましょう。」

私は軽く礼をして、教授の部屋を出た。


わずかながらも私の真意に疑問を持ってくれたスラグホーン教授を除き、他の教授たちの私に対する目は厳しかった。中には私が生徒の頃から知る長い付き合いの教授もいるのだが、皆、私が裏切り者と信じて疑わなかった。以前は曲がりなりにも同僚として、言葉をかわすこともあったのだが。もちろん敵を欺くにはまず味方からとはいえ、寂しく感じるのは否めない。

しかしあからさまに敵対的な態度をとられれば、カロー兄妹を通じてダークロードに伝わるおそれがある。それを避けるため威圧的に接する私に、彼らの反感が強まるのがひしひしと伝わってきた。

生徒たちの一部も、私に反発していた。それはかまわぬが、カロー兄妹に反抗して罰則を受ける者もあった。カロー兄妹は容赦なく生徒たちに罰としてクルーシオをかける。むしろ喜んで。それを抑えつければダークロードの私に対する信頼が揺るぎかねないし、それを放置すれば生徒や教授たちの私に対する敵意がいや増すのだった。何をするにも板挟みで、恨みを買うのが私の立場だった。

それでもホグワーツを守り続けねばならない。ダンブルドアの指示というだけでなく、弾圧されたホグワーツの様子を見ていると、私の初めて見つけた家が蹂躙されているように感じられるのだった。ダークロードはもう一つの家、マルフォイ邸を自ら蹂躙し、私を通じてホグワーツの家を支配しようとしている。闇の勢力が倒されるその日まで、なんとか無事に守らなければならない。皆に恨まれ、蔑まれようとも、楯となって職員と生徒の命を守るのが私の使命なのだ。

私は時々、夜のひと時を地下牢の研究室で過ごした。神経を使う孤独な日々の中、慣れ親しんだ薬臭い部屋にこもり、魔法薬を煎じたり研究書を読んだりするのが、唯一の息抜きだった。仲間気分のカロー兄妹には辛気臭い趣味だと笑われたが、私の魔法薬好きはデスイーターの間にも知れ渡っていたことだから、ダークロードに知れてもどうということはない。


その夜も、地下牢の研究室で自分のための睡眠剤を調合していると、ふいに銀色の牡鹿が目の前に現れた。

「満月の夜の部屋」

それだけを告げて、牡鹿は消えた。ルーピンの守護霊だ。万一他の者が見ても意味不明な伝令は、学生の頃ルーピンが満月の度に夜を過ごした叫びの屋敷で待つと言うことだとすぐにわかった。

こんな危険を冒してルーピンは何を考えているのだ?ダンブルドアを殺した私を、それでもルーピンは信じているというのか?・・・私を誘き出す騎士団の罠である可能性もある。万一罠だった場合、私が囚われてしまえば、ホグワーツはどうなるのか?

しばらく迷ったが、ルーピンを信じたかった。なんといってもルーピンは長年の知人であり、友と呼びたい唯一人の者だった。それに、、これが最後の機会かもしれなかった。このまま会わずに死を迎えれば、きっと後悔するだろう。

意を決めて部屋を出た。校内の見回りをする振りをしながら人目のないのを確認し、暴れ柳から叫びの屋敷に入って行った。天井の窓から月明かりがわずかに差し込む暗い部屋に入り、暗闇に目を凝らす。

「ルーピン?」

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルーピン スネイプ

セブルス・スネイプと死の秘宝(5)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


その後の混乱の中、私が別れの決意を言いだし損ねているうちに、トンクスから妊娠を告げられた。

「リーマス、こんなひどい状況だけど、いいこともあるんだよ。」

まるでその知らせが私を励まし、勇気を与えることかのように、トンクスは告げた。

「私、妊娠したの。あなたの赤ちゃんができたのよ!」

嬉しそうなトンクスに、私は言葉を失った。子供はつくらないとあれほど言ったのに。安全日だと言っていたのを信じた私が愚かだった。騙されたのだ。というより、子供ができてしまえば、私も落ち着くと思ったのか、それとも、自分がほしいから、私の意思などどうでもよかったのか。私はいつも感謝とすまない気持ちばかり感じていたトンクスに対し、初めて怒りを感じた。怒りの裏には、恐怖があった。私と同じ闇と重荷を負う子供をつくってしまった・・・。

その恐怖とトンクスへのわだかまりから逃れるように、私はセブルスに会いたくてたまらなくなった。間違っていたのだ、すべて。私がまた愚かな過ちを犯したと吐き出して、皮肉めいた口調で、その通りだと、認めてもらいたかった。

だけど、セブルスは裏切り者だ。ダンブルドアを殺して逃げ去ったのだ。

・・・ほんとうにそうだったのだろうか?初めは、セブルスに会いたいあまり言い訳を見つけようとしたのだと思う。セブルスが裏切り者とは思えない、いろんな場面を思い出していった。ダンブルドアの命令で二重スパイという危険な任務を果たしてきたこと、初めてベッドを共にした時のあどけない寝顔、リリーへの変わらぬ思い、ダンブルドアへの服従ともいえるほどの忠誠、辛そうに涙ぐむ姿。なにをとっても、セブルスの裏切りを思わせるものはなかった。

何より、ハリーは、ダンブルドアがセブルスを信じたのは、セブルスが漏れ聞いた予言をヴォルデモートに伝えたためにハリーの両親が死んだのを深く悔いたと言ったためだと話していた。ジェームスはともかく、リリーの死をセブルスが心から悔いたことは間違いない。その後十数年の長い時を経てもなお、リリーと同じ牝鹿の守護霊を出していたセブルスが、リリーを殺したヴォルデモートに再度寝返ることなどあるだろうか?

けれど、私はジョージの耳を切り落とすセブルスを見たし、ダンブルドア殺害時にも、現場は見ていないが、その場に向かう姿も逃げ去る姿も目撃している。その時のセブルスを思い浮かべると、その顔はいつも皆に見せていた、何を考えているかわからない無表情だった。何か隠していたのではないか、、何か事情があって?

事実が、常に真実を現わしているとは限らない。16年前のポッター家の襲撃時、皆シリウスが友を裏切り多くの人を殺して逃げたと信じたけれど、それは真実ではなかった。私は、シリウスが多少バカげたことをすることはあっても、ジェームスを裏切るはずはないと知っていたのに、皆が語る事実をそのまま信じてしまった。見せられた事実ではなく、私が知っているシリウスを信じるべきだったのだ。

私は他の皆より、セブルスを知っている。セブルス自身、他の者には見せない姿を、私だけに見せていてくれたと思う。私は目に見えた事実がどうであれ、私の知るセブルスを信じるべきなのではないか?そして、間違いだったトンクスとの結婚を解消し、セブルスの元に戻る。そうしたいんだ。そのほうが、トンクスも幸せになれる。

とにかくセブルスに会って、話をしなければ。でも、どうしたらセブルスに会えるのか?隙を見てスピナーズエンドの自宅を探ったが、人の気配はなかった。闇陣営の者に見られる可能性を考えれば、ふくろう便を出すのも危険すぎた。


ビルたちの結婚式の後、騎士団員は密かに集まり、それぞれの無事や被害を確認し、今後の活動について話し合った。ダンブルドアを失い、ダンブルドアの伝言役を兼ねていた情報源のセブルスは裏切り、長い経験が頼りになったマッドアイも死んで、騎士団は方向性を失っていた。とにかく、今や圧倒的に力を増した闇陣営から、ハリーを守り助けること。ハリーはダンブルドアから何か使命を託されていたようだが、騎士団員はそれを知らなかった。アーサーが、ハリーはロン、ハーマイオニーとともに、グリモールドプレイスに隠れていると言ったので、私はそこに行ってみることにした。

グリモールドプレイスなら、闇に下ったセブルスが、仲間たちを懐かしんで、あるいは情報を得ようとして立ち寄ることがあるかもしれない。そこに来なかったとしても、セブルスは、ハリーを守るために、あるいは捕えるために、ハリーの前に現れる可能性がある。

見張り役のデスイーターの目を盗むのに数日かかったが、私はグリモールドプレイスを訪れた。秘密の守人であったダンブルドアの亡きあと、マッドアイがかけたスネイプ除けの呪いを超えると、ハリーたち3人が現れた。正しく私の正体を確認したハリーを褒め、私は勢い込んで尋ねた。

「それで、セブルスが来る気配はないの?」

ハリーはあっさり、「ない」と答え、私は気落ちしたが、それから持参したバタービールを4人で飲みながら、結婚式から逃げ出したあとの皆の状況を説明した。ハリーたちの状況を尋ねると、逃げ出した直後に行ったマグルの街で、デスイーター2人に攻撃され、それを倒してここに来たと言う。なぜハリーたちのアパレートした先をデスイーターがすぐに知ったのか疑問だったが、敵の情報力は侮れないと改めて思った。

私はハリーにダンブルドアの指示で何をしているのかと尋ねてみたが、ハリーはおしえられないと言った。それならば、おしえなくてよいから、私を3人の警護に同行させてほしいと提案した。ハリーたちの進む道は険しいから経験のある警護が必要だし、そうすれば私はトンクスを安全な両親のもとに託して離れることができる。さらにセブルスに会える可能性もある。

ハリーはしばらく考え込んでいたが、ハーマイオニーがトンクスを置いていってよいのかと言い出して、雲行きが変わった。私は、トンクスは両親のもとで完全に安全だからと説明したのだけれど、食い下がられてついに、トンクスの妊娠を告げたのだった。3人は口々に祝福してくれて、私は苦い思いで礼を述べたのだけれど、妊娠したトンクスを置いて私が彼らと同行したがることに疑問を感じたようだった。私は説得しようとした。

「ハリー、ジェームスなら間違いなく私に君と一緒にいてほしいと思うに違いないよ。」

ハリーはゆっくりと、考えながら答えた。

「さあ、僕はそうは思わない。はっきり言って、父さんはなぜあなたが自分の子といっしょにいないのか、その理由を知りたがると思う。」

私は血の気が失せるのを感じた。彼にはわかっていない。

「私は、、、トンクスと結婚するという重大な過ちを犯した。私の良識に逆らう結婚だった。それ以来ずっと後悔している。」

「そうですか。それじゃ、トンクスも子供も捨てて、僕たちと一緒に逃亡するというわけですね?」

わかってもいないくせに、ひどい言い草だった。私は思いのたけを語った。私との結婚でトンクスは世間ののけ者になってしまったし、生まれてくる子供は罪もないのに人狼の苦労を背負う。万一そうでなかったとしても、恥ずべき人狼の父親などいないほうがいい。私はこんな事態を招いた自分が許せないと。

「リーマス!そんなことを言わないで。あなたのことを恥に思う子供なんているはずないでしょう?」

ハーマイオニーが涙を浮かべながら言ったが、ハリーの言葉は辛辣だった。

「へえ、そうかな?僕ならとても恥ずかしいと思うな。あの連中は騎士団員の人狼の父親を持つ反人狼の子供をどうするだろう?僕の父さんは、母さんと僕を守ろうとして死んだんだ。その父さんが、あなたに、子供を捨てて僕たちと一緒に冒険に出かけろというと思うんですか?」

「よくも、そんなことを。」

私の苦悩も罪悪感も知らず。闇に堕ちたこともなく、自らが堕ちることなど想像もしない者。人狼の呪いを受け、闇の生物として掃っても掃っても、逃れようなくつきまとう闇にまみれた人生を知りもしないくせに。

「僕には信じられない。僕にディメンターとの戦いを教えてくれた人が、、、臆病者だなんて。」

ハリーは、私を睨みつけるように立ち上がって言った。私は怒りのあまり杖を抜き、ハリーを壁に吹き飛ばしていた。私を臆病者と、闇につきまとわれる人生の重さを知りもしない者に、言われたくはない。許せなかった。

「リーマス、リーマス!戻って来て!」

すがるハーマイオニーの声を背中に聞きながら、私はグリモールドプレイスを後にした。


その後しばらく、私はもんもんと過ごした。トンクスの腹の中で育ってゆく人狼の子供。とりあえず実家に帰したが私の別れの決意を想像もしていないであろうトンクス。親友たちを失ってから人生の希望だったハリーとの諍い。会うあてのないセブルス。騎士団のほうも、強まる闇の勢力に打つ手がなく、反マグルの新体制や、人狼など魔法生物への規制厳格化にどう対処できるか考えあぐねていた。さらにはダンブルドアの過去を暴くような予言者新聞の記事を、不快な気持ちで読んでいるだけだった。

そして、学校の新学期が始まる頃になり、私は予言者新聞でその記事を目にした。

「セブルス・スネイプ氏、ホグワーツの校長に確定」

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ルーピン

セブルス・スネイプと死の秘宝(4)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


私はトンクスの情熱に引きずられるように結婚した。トンクスの父親と私の両親、ウィーズリー夫妻とあと数名の騎士団の仲間だけのささやかな式をだったが、トンクスの幸せそうな顔を見るのは嬉しかった。私のような者を心から愛してくれた彼女に感謝の思いがこみ上げ、幸せにしてあげたいと思った。

けれど、すぐに後悔した。私はダンブルドアの死やセブルスの裏切りによる衝撃で、どうかしていたんだと思う。人狼と結婚して、幸せになれるはずがないことはわかっていたのに。人狼の境遇が身にしみている年長の私は、若く無邪気なトンクスの情熱に引きずられてはならなかったのに。

トンクスが見ていたのは、人狼である私を認めてくれる、騎士団内にいる時の私だけだった。そこでの私は、それなりに思慮深く、防衛術に優れ、人の気持ちにも敏感だから、口はばったいけれど、若い魔女から見て信頼に足る大人の男に見えたかもしれない。男として、そんな期待に沿いたい気持ちはあったのだけれど、騎士団から一歩外の世間に出れば、人狼である私には彼女の信頼に応えることはできなかった。

人狼への規制の厳格化が強まったこともあり、私はほとんど収入を得ることができなかった。結婚後2人で暮らす小さな貸家は若い女の夢が感じられる温かい装飾を施してあったが、トンクスはそれを全て自分で賄わなければならなかった。そして人狼に関わるものは、一家丸ごと、忌み嫌われ排斥される。私のせいで両親と争ったり、友達や同僚から疎まれるトンクスを見るのは、居たたまれない思いがした。そんなことはどうだっていいのという言葉さえ、どうでもよくないことを今まさに経験しているじゃないかと思い、素直に受け止めることができなかった。

その上彼女は子供を欲しがった。私はそれだけは頑として許さなかった。人狼の子は人狼になるにきまっている。だから普通、人狼は繁殖しない。子供は生まれた時から私のような不幸を背負うことになるのだから。もし奇跡的にそうでなかったとしても、人狼の子として、世間から疎まれて一生を送ることになる。

温かい家庭に育ち、闇祓いになれるほど優秀な若い魔女が、友を失い、世間から排斥され、私のように貧しくみすぼらしい姿になって、人狼の子を抱えて苦労すると思うのはたまらなかった。私などと結婚しなければ、ずっと幸せになれるのだし、そういうチャンスはたくさんあるはずだった。

そんな思いを伝えても、トンクスは、私を愛しているから一緒にいられれば幸せだと繰り返すばかりだった。私たちを排斥する者たちなど、こちらからお断りだと笑い飛ばすのだけれど・・・。私が受け入れられたくてどんなに卑屈になっていたか、正体を知られるのをどんなに恐れていたか、変身の苦痛や人を食うかもしれない恐怖がどんなものなのか、まともな収入を得られない暮らしがどんな惨めなものなのか、そんな、私の人生そのもののようなことを、理解してもらえるとは思えなかった。私に憧れさえ抱いているようなトンクスには、知られたくない気もした。

嬉しそうなトンクスを、惨めな思いで眺めるのが、私の新婚生活の実態だった。

そんなとき、ふと、君だったら・・・と思う。君なら言わなくてもわかってくれているよねと、気がつくと、セブルスに心の中で語りかけていた。気がつくとすぐに、スネイプはダンブルドアを殺して去って行った裏切り者なのだと自分に言い聞かせるのだけれど。しかしまたすぐに、トンクスといると自分が惨めに感じられてならないんだと、心の中でセブルスに愚痴をこぼしていたりするのだった。

要するに私は、トンクスからあなたは惨めなんかじゃないと励まされるのさえ辛いけれど、セブルスからおまえは惨めな人狼だと罵られるのは気持ちが和らぐだろう思えるのだった。トンクスには見栄を張りたくてくつろげず、それぞれに闇に堕ち重荷を背負って人生を歩んできたセブルスには、ありのままの姿を曝すことで安らげるともいえた。


私たちの結婚から間もない時期に、ハリーをダ―ズリー家からの無事移動させる計画が実行された。用心深いマッドアイが、日時については偽の情報を流し、当日になってポリジュースでハリーの囮をつくる7人のポッター作戦を告げたのだけれど、それぞれに組となってダ―ズリー家を出ると、なぜか家の周囲にはデスイーターが集結していて、いっせいに襲ってきた。

私はハリーに変身したジョージを護衛して箒に乗っていた。フードをかぶった数名のデスイーターに後を追われ、鋭い呪文が投げかけられた。箒を操り攻撃をかわしたり応戦したりしていたのだが、、、。

背後から攻撃の閃光が走ったと思う間もなく、ジョージが耳から血を流して落下し始めた。セクタムセンプラの呪文に耳を切り裂かれたのだ。ジョージを追って急降下しながら振りかえると、私たちの背後にいた数名のデスイーターのうちの1人のフードが一瞬めくれ上がり、そこに私はたしかにセブルスの顔を見た。セクタムセンプラはセブルスの得意の呪文だった。セブルスが、、いや、スネイプがやったのだ!怒りがこみ上げたが、今はとにかくジョージを助けるのが先決だった。

ジョージを助けてなんとか逃げ切り、それぞれの移動先からポートキーで集結することになっていた隠れ穴にたどりついた。計画に家族の多くが参加し、心配して待っていたモリーに、傷ついたジョージを頼むのは申し訳なかった。ハリーやトンクスや、他の組の到着を待ちながら、参加者しか知らないはずの計画が漏れていたことについて考えていた。参加者の誰かが裏切ったと思わざるをえない。

庭に出て待っていると本物のハリーが到着し、しばらくしてトンクスとロンの組も予定より遅れてたどりついた。抱きついてきたトンクスに何があったのかときくと、ベラトリックスやレストレンジたちが執拗にトンクスをつけ狙ったのだと言う。トンクスは気づいているのかいないのか、、、人狼と結婚した一族の者をこの機に抹殺しようとやっきになっていたに違いなかった。トンクスは私のせいで、デスイーターから命まで狙われることになってしまった。

結局、無事ハリーを移動させることができたものの、ジョージの耳が切り落とされ、マッドアイが殺された。マッドアイと組になっていたマンダンガスは、彼を見捨てて逃亡した。ジョージは命に別条はなかったとはいえ、セクタムセンプラで切り離された耳は、元に戻ることはない。心配そうに見守る仲間たちに、私は、やったのはスネイプだと告げた。

皆、マッドアイの死を悼み、スネイプの裏切りを怒り、そして内部に裏切って情報を漏らした者がいる不安に沈んだ。話が裏切り者探しになると、ハリーが誰も疑いたくないと言った。仲間を疑うことを何より不名誉としたジェームスの息子らしい態度だった。ジェームスは結局友達に裏切られて死んだのだけれど。それに、皆を信じたダンブルドアも裏切りで殺されたのだけれど。

話がひと段落つくと、私はビルとともに隠れ穴を出て、マッドアイの遺体を捜したが、亡骸はどんなに探しても、見つからなかった。トンクスを可愛がっていたマッドアイの死で、闇祓い局でのトンクスの立場はますます悪くなるだろうと思った。

数日後のハリーの誕生会には、トンクスととおもに隠れ穴に招かれたのだけれど、その席に魔法大臣のスクリムジョールが来るという知らせが入り、私たちは逃げるように帰らなければならなかった。魔法省の反人狼的な方策が強まっていて、私がそこで大臣と顔をあわせては、ハリーに害になると思ったから。エリートともいえる闇祓い局のトンクスが、私のせいで魔法省トップからこそこそと逃げなければならないと、惨めでたまらなかった。

翌日はビルとフラーの結婚式に2人で出席した。ビルとフラーを祝福するために、果樹園に張られたテントいっぱいに人々が詰めかけていた。家族や親せき、友達、仕事仲間・・・。多くの人に祝福されて幸せそうな新郎新婦。思えば、ビルが人狼のグレイバックに噛まれ、変身時ではなかったので大事には至らなかったものの、顔にひどい傷が残った。それでもそんなことは2人の愛に関係ないとフラーが宣言したのが、トンクスを勢いづけて、私たちの結婚にもつながったのだけれど。

あの時も言った通り、私たちとはまったく事情が違うのが、この賑やかな結婚式だけ見てもわかるというものだった。もともと、モリーたちは、ビルとトンクスの結婚を望んでいたと聞いている。トンクスが私などと結婚しなければ、トンクスもこんなふうに、多くの人に祝福されて、幸せな結婚生活を送るはずだった・・・。愚かとは思うが、何を見ても自分がトンクスを不幸にしていると思われて、惨めでならなかった。

幸せそうな新郎新婦や、祝福する人々を眺めながら、私はそのおめでたい場に実にふさわしくない決心を固めていた。トンクスと別れよう。私たちの結婚は間違っていた。私が少しでも早く離れることが、トンクスの幸せにつながると思う。

そう思った矢先、キングスリーのオオヤマネコの守護霊が現れ、スクリムジョール大臣が殺されて魔法省が闇陣営に陥落し、デスイーターがこの場に向かっていることを伝えた。テント内は一気に混乱に陥り、私はあわててトンクスの手を握って脱出した。ハリーを捕まえようとやってきたデスイーターたちは、その後逃げ遅れた人たちをつかまえて尋問した。ハリーの脱出時の移動先を提供したトンクスの両親はクルーシオをかけられた。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ルーピン トンクス

セブルス・スネイプと死の秘宝(3)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


次の土曜日のポッターの移動時には、私も出動を命じられた。ダークロード自らが指揮を執り、服従呪文にかけられた者まで動員する、闇陣営上げての総攻撃だった。ダ―ズリー家周辺に集結して見張るうちに、計画通りポリジュースで変身した複数のポッターがそれぞれ1人の護衛とともに、箒やセストラル、それにハグリッドのバイクに乗って姿を現わし、それぞれ別の目的地に向かって飛び始めた。

闇陣営は複数のポッターに混乱していたが、私は迷わずルーピンが護衛する組の後を追った。どれが本物のポッターか見分けはつかなかったし、ダークロードからポッターは自分が始末するから殺すなと命じられていたが、あの集会の後ではこの機にルーピンを殺して寵愛を得ようとする者がでかねないと懸念したからだ。

空の混戦が続くうち、案の定、私の前を飛ぶデスイーターが杖でルーピンに狙いを定めていた。呪文を放つ瞬間に私はそれを狙ってセクタムセンプラを放ったのだが、、、狙いは逸れて、ポッターの、あるいはポッターに変身した誰かの耳が切り裂けてしまった。箒で飛びながら、動き回る標的を狙い撃ちするのは難しいのだ。それに私は、箒が苦手なのだ。ルーピンが振り返った時、私のフードが風で開き、ルーピンの形相が驚きと怒りの表情に変わるのが見えた。

襲撃は結局、ポッターを取り逃がす結果に終わった。途中、この深刻な戦いの中、ポッターがエクスぺリアームス(武装解除)という平和的な呪文を使い正体がバレたのだが、ダークロード自らの攻撃をかわし、ポッターは危ういところを免れて防衛のかかったトンクス家に逃げ込んだのだった。ポッターは無事だったが犠牲は出た。私が耳を切り裂いたのは、ウィーズリー家の双子のジョージだった。それに、組となっていたマンダンガスに見捨てられたマッドアイ・ムーディが命を落とした。

またもポッターを倒し損ねたダークロードは不機嫌ながら、自らの失態とあっては部下に難癖つけるわけにもいかないようで、何やら一人考え込んでいた。ポッターとの闘いで、ルシウスから取り上げた杖が破壊されたのだった。

しかし、私に関して言えば、ダークロードの信頼を得ることに成功した。私がつかんだ日時の情報は正確であり、また、本物ではなかったが、囮のポッターに傷を与えたのもよしとされたのだった。箒の腕前がよければもっと致命的な攻撃ができたのにと悔しがってみせると、ダークロードが箒なしで空をとぶ術をおしえてくれるとまで言われた。

ダークロードの前ではそれなりの演技をして見せたが、一人になると、誤ってジョージ・ウィーズリーの耳を切り落としてしまったことと、その時のルーピンの形相が思い出されて気が滅入った。命にかかわる傷ではないが、闇の呪文で切り落とされた耳が戻ることはないのだ。いつも陽気に、悪気すれすれのいたずらをして皆を笑わせていた双子を思い、心の中で詫びた。

今頃は逃げおおせた仲間たちが集結し、マッドアイ・ムーディの死を悼み、ウィーズリーの怪我を心配し、私を非難していることだろう。友と呼べると思っていたルーピンが、憎々しげに私がやったのだと皆に告げたはずだった。

慰めてくれる者もない。言い訳をする機会もない。わかっていたことだが、仲間の誰からも恨まれて、一人、孤独に戦う立場が耐えがたく思われた。孤独から逃れるように向かった先は、元、騎士団本部のあったグリモールドプレイスだった。曲がりなりにも私が仲間と受け入れられていた場所。秘密の守人であったダンブルドアの死とともに忠誠の術が解け、裏切った私が知る本部は放棄されたはずだった。それにこの襲撃の直後、皆どこかにに集まり、万が一にもその場にいる者はいないだろう。

グリモールドプレイスのブラック邸に入ると、重々しい声が響いた。

「セブルス・スネイプか?」

私を避ける術と身構えた瞬間、舌が丸まる気色悪い感触があった。舌丸めの呪いだ。解く呪文はわからないが、この場所を暴くつもりもないからどうということもない。中に進もうとすると、立ちふさがるようにマッドアイの姿が現れたが、すでに亡き彼に遠慮することもないから、杖の一振りで消した。実はその姿さえ懐かしく思えたのだが。

放棄されたブラック邸は荒れ果てた様子だった。あちこちに物が倒れ、物色された跡がある。マンダンガスの仕業であることは考えるまでもなかった。「穢れた血!血を裏切るクズども・・・」聞きなれたけたたましいブラック夫人の肖像を黙らせて、私はしばらく、本部の会議につかわれた食堂に佇んだ。物腰の柔らかい穏やかなアーサー、あれこれと皆に気を配るモリー、見るたびにやつれるルーピンや、忌々しいブラックさえも、テーブルを囲んだ皆が懐かしく思われた。今もともに戦っているのだと、ダークロードのもとで誰より命を張って闘っているのだと訴えたかった。

誰もいない屋敷の階段を上り、ブラックの部屋に向かった。並んだ隣の部屋には、レギュラスと名が記されている。スリザリンの1学年下の少年だった。卒業前に一緒にデスイーターに加わった時には、まだ幼さの残る顔に誇りをみなぎらせ、嬉しくてたまらぬようだった。話してみれば気があうところもあり、一時は親しくしていたのだが、1年もたたぬうちに突然姿が消えた。心配したのだが探す手がかりもなく、やがてダークロードが裏切り者が死んだと吐き捨てるように言ったとの話だけでうやむやになった。

当時はあれほどまでにダークロードに心酔していたレギュラスが裏切るとは何があったのかと信じられぬ思いだったが、おぞましきダークロードの真実を知った今振り返れば、レギュラスは純な心根ゆえにダークロードの持つ邪悪さにいち早く気づき、許しがたき失望を味わったのかもしれぬ。年端も行かぬ若き身で、レギュラスも一人孤独に戦って、命を落としたのだろうか?帰らぬ主を待ちわびて朽ちた部屋が悲しみを誘う。一瞬、扉を開ければ先輩と懐いて来た幼い姿が現れるのではないかと錯覚に陥った。今ならば共に戦えるのに。だが、全ては遠い過去のおぼろな影に過ぎないのだ。

彷徨う思念を捨てて、ブラックの部屋に入る。ブラックの死後、モリーに言われてルーピンを慰めた部屋だった。慰めるはずが、神秘部の闘いの失態でルシウスがアズカバンに収監されたのが寂しくて酒を飲み過ぎた結果、思いがけずルーピンと一夜を明かした部屋だった。あのあと、それなりに心が通い合ったと思ったものだが・・・。

あの時の残り香でも感じられればと思ったのだが、部屋を見渡しても、ルーピンの残した物などあるはずもなかった。もともとたいした物を持っているやつではないのだ。壁にはブラックが張ったらしい写真が並んでいて、その中で少年の頃のルーピンが気弱な顔で笑っていた、ブラックやポッター、ペティグリューと4人で肩を組んで。

その部屋も物色されたらしく、整理棚や引き出しが開け放たれ、様々な物が投げ出されていた。座りこんで、床に落ちていた紙を拾って開いてゆくと・・・

リリー

食い入るように見覚えのある文字を追った。リリーが生前、ブラックにあてた手紙が残されていたのだった。息子の1歳の誕生日に送られたプレゼントに対する礼を述べ、細々とした近況を記していた。影で裏切っていたペティグリューが訪ねて来て元気がなかったと伝えている。

幼子を抱えた母として、ささやかな日常の喜びに満ちたリリーの姿が伝わってきた。この幸せが続くと願い、信じていただろう。この後すぐに、ダークロードの襲撃を受け命を落としたのだ。湧きあがる懐かしさと悲しみと後悔に涙がとめどなく毀れおちた。

私には辛い文面の1枚目は丸めて床に捨て、「愛を込めて、リリー」と記された2枚目だけをたいせつにローブの中にしまった。それから一緒にあった家族3人の映った写真から、微笑むリリーの部分だけを破り取って、たいせつにしまい込んだ。

愚かな過ちでリリーに死をもたらしてしまったけれど、私はリリーの遺志を継ぐために生きてきたのだ。皆に背を向け、敵に交わり、誰もが私を憎んでも、リリーの魂が寄り添っていてくれるのだった。この身にはリリーがくれた魂の灯りが宿っている。その灯りを支えに、リリーの息子の生きる道を助け、リリーが願い奪われた、家族と寄り添う幸せな暮らしを願う人々を守るのだ。そうしなければ。

私は涙を拭いて、グリモールドプレイスをあとにした。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター リリー ポッター ダークロード

セブルス・スネイプと死の秘宝(2)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


まもなくマルフォイ邸でデスイーター集会が行われた。敷地の入口で魔法省のヤックスリーと一緒になり、2人で大ホールに入るとすぐに、薄暗い部屋の中、皆が着席した長テーブルの上に、人が逆さにぶらさがっている異様な景色が目に入った。一瞬息を飲んだが、そのすぐ下にルシウスの一家3人が座っているのを見て、とりあえず安心した。彼らが吊るされたわけではなかったのだ。皆その人物からあえて目を逸らしているようだったが、ドラコだけは怯えながらも目を背けられないように時々見上げていた。

「遅刻すれすれだぞ。」

暖炉を背に、テーブルの一番奥に座っているダークロードが私たちに声をかけた。

セブルスはここへ。」

ダークロードの右隣が私の席だった。ダークロードに次ぐ上席。度重なる失態がなければ、ルシウスが当然のように座っていただろう。皆の目が私を追っている。

「それで?」

ダークロードに促され、私は口を開いた。

「騎士団はハリー・ポッターを、現在の安全な場所から、今度の土曜日の夕刻に移動させる計画です。」

「土曜日の、、、夕刻。」

ダークロードが繰り返しながら、不気味な赤い目でじっと私の目を覗き込んだ。開心術に秀でたダークロードは嘘を見破ることができる。私は平然とその目を見返した。嘘ではないから恐れることはない。

ヤックスリーが、闇祓い局のドーリッシュから得た情報ではそうではなく、ポッターは誕生日の前日に移動することになっていると主張したが、ダークロードは押し留めて、私に移動先を尋ねてきた。情報によれば、騎士団員の誰かの家で、そこには騎士団と魔法省ができる限りの防衛を施してあるため、魔法省が土曜日までに陥落しなければ、移動後にポッターを奪える可能性はまずないと答えた。

魔法省について、ダークロードは魔法大臣のスクリムジョールを包囲し、やがて抹殺して全権を掌握する計画でいる。ヤックスリーが、すでに魔法部執行部長のシックネスが服従の呪文にかけられていると得意げに報告したが、それでは魔法省の陥落はポッターが移動する土曜日に間に合わないと、ダークロードは切り捨てた。

思惑通り、土曜日の移動時にポッターを襲撃することになった。騎士団は魔法省をもう信じていないから、魔法省管轄下にあるアパレートやフル―パウダーの移動手段は使わない。私がそう言うと、ダークロードは、かえって好都合だと、一人話し始めた。

「ポッターは公然と移動せねばならん。ずっと容易いことになる。ポッターは必ず我が手で始末をつける。あの小僧に関しては、今まであまりに失態が多かった。余自身もだ。ポッターがいまだ生きているのは、ヤツの勝利というより余の誤算によるものだ。」

周囲の者たちは、いつ自分の失態を責められるかと身を縮めていたが、ダークロードは吊るされた人物を見ながら、自身に語りかけているようだった。

「余は侮っていた。その結果偶然と幸運というものに阻まれていたのだ。しかし今は違う。以前は理解していなかったが、今は分かったことがある。ポッターを仕留めるのは余でなければならぬ。そうしてやる。」

吊るされた人物が苦痛のうめきを上げたことでダークロードは一人思考にふけるのを止め、再び席に座るデスイーターたちに向かって話し始めた。

「余は以前より、よくわかっている。たとえば、ポッターを殺すには、お前たちの誰かから杖を借りる必要があるのだ。」

皆が衝撃を受けて下を向く中、ダークロードはルシウスから杖を取り上げ、いたぶり始めた。お前にはもう杖は必要ない、自由にしてやっただけでお前には十分だと。さらには、マルフォイ邸に自分がいることが気に入らないのかと難癖をつけ、否定するルシウスを嘘つき呼ばわりし、ネチネチをそのことで締め上げていた。

ルシウスを妬んでいたデスイーターの一部には嘲る者もいた。以前の輝かしいルシウスの外貌も地位も、いまや失われていた。アズカバン暮らしでやつれた体、不健康は皮膚の色に目の下の隈、そして杖を奪われ、皆の面前でダークロードから辱めを受け・・・私は痛々しさに目をそむけたい思いだったが、隣に座るダークロードに気取られれば事態を悪化させるだけだから黙って耐えていた。今はとにかく、無事生き延びてもらうことが大事だった。

と、根っからダークロードを崇拝するベラトリックスが口を出しててきた。ダークロードの注意を引きたくて、身も乗り出している。

「我が君、あなた様が我が親族の家に留まられることは、この上ない名誉です。これに勝る喜びがありましょうか?」

殊勝なことを、とダークロードが言い、ベラトリックスは嬉しそうに頬を赤らめていたが、ダークロードは喜ばせておいて貶めるつもりだったようだ。ベラトリックスの姪、ルシウスとナルシッサの姪でもあり、ドラコの従姉にあたるトンクスが、今週人狼リーマス・ルーピンと結婚したと嘲ったのだった。

ルーピンはトンクスと結婚したのか・・・。私は衝撃を受け、様々な思いがよぎりそうになったが、この席でそのようなことを考えるのは賢くないと心を鎮めた。

マルフォイ家やベラトリックスが貶められたことを狂喜する者たちがはやし立て、ベラトリックスはいきりたって彼らとは関係ないと反論していた。するとダークロードはドラコにまで、狼の子が産まれたら子守りをするのかと攻撃の矢を向け、ドラコは怯えきっていた。

ダークロードはナギニを撫でながら、はやし立てる聴衆を鎮め、この話題に結論をつけた。つまり、血筋を穢す腐った部分は切り落とせと。出来るだけ早く、とベラトリックスが言うと、ダークロードは、そうせよと答えたのだった。これでは、ルーピンは、おそらくトンクスも、ベラトリックスのみならず、デスイーターたちの標的になってしまう・・・。

「純血のみの世になるまで、我々を蝕む病根を切り取るのだ・・・」

ダークロードはそう言うと、ルシウスの杖をぶら下がっていた人物に向けて小さく振った。その人物、、魔女が、意識を取り戻してうめき声を上げ、もがき始めた。

セブルス、客人が誰かわかるか?」

突然ダークロードに尋ねられ、その姿に目を向けた。私の知人だったのか・・・。他の者もいっせいに魔女を見た。

セブルス、、、助けて、、、」

マグル学のチャリティ・バーベッジ教授だった。彼女は親マグル的な授業をしていた。ダンブルドアの方針に沿った教師なのだ。ドラコもダークロードに尋ねられたが、幸いマグル学などとっていなかったから、知らぬですんだ。

セブルス、、、お願い、、お願い、、」

私に、どうしろと・・・何ができる?ただ、心を閉じているしかない。しかし、また消えぬ悪夢が増えるだろう。私は彼女の涙が髪を伝わり滴り落ちるのを、無表情に見ていることしかできなかった。

ダークロードは彼女が魔法族とマグルや他の魔法生物との融合を説いたのを罵ると・・・

「アヴァダ・ケダブラ」

緑の閃光が走り、バーベッジの体が真下のテーブルに落ちた。

「ナギニ、夕食だ。」

打って変って優しいダークロードの声に、ナギニが鎌首をもたげ、テーブルの上を滑るように這って行った。そして、バーベッジの体はナギニの一飲みで消えた。


おぞましい集会は解散となり、ダークロードは大ホールから出ていった。どこか自室と定めた部屋に引き上げたのかもしれない。デスイーターたちはそれぞれに仲間と談笑していたが、ルシウス一家は部屋の隅に固まって小さくなっていた。惨めな姿を嘲る者たちもいたが、関わり合いを恐れてか近付く者はいなかった。

私が夏休みの度に帰った家。家族同然と温かく迎えてくれたルシウスたち。ナルシッサの陽気なおしゃべりや、無邪気にしゃぐドラコ、上品に身を整え待ちかねたように私を部屋に導いたルシウス。全てはダークロードに蹂躙されていた。家族同然の彼らはなじられ、いたぶられ、いつ恐ろしい危害が加えられるかもわからぬ立場に貶められていた。

私は周囲の目を意識し、ルシウスの立場にとってかわった者の尊大さを装いながら、3人に近づいた。しかし彼らは私の胸の内をわかってくれると思いたい。

「ルシウス、アズカバン暮らしは堪えたようだな。」

ルシウスの失態の報復として私がデスイーターたちに暴行されあと、ぎこちなさをぬぐえぬままルシウスがアズカバンに収監され、1年数か月ぶりの再会だった。しかし溢れる思いを口にすることはできない。デスイーターたちの目もあるし、マルフォイ一家との接触は、ここに滞在するダークロードに筒抜けになると思わねばならなかった。

ローブに忍ばせていた魔法薬の袋を手渡した。

「健康を回復して陣営に尽くすことだ、ルシウス。」

返事はなかった。選り分けて袋に詰め込んだ、私のささやかな願いを込めた薬の意味は彼らに伝わるだろうか?ただ、あなたたちの無事を願っていると。今はこれしかできないのだが、家族と思う気持ちに変わりはないと。ルシウスが、色素の薄いアイスブルーの瞳を、気弱げに逸らした。

私は早々に彼らを離れ、マルフォイ邸から自宅に戻った。今日の集会の出来事を報告する人はもういないから、一人振り返る。

ルーピンの結婚は、知った時には衝撃を受けたが、その後の集会の流れの中、不安に変わっていた。ベラトリックスは躍起になってルーピンやトンクス一家をつけ狙うだろう。皆の前でダークロードが切り捨てるべき病根と名指しした以上、他のデスイーターたちも機会があれば倒して手柄にしたいと思っているはずだ。

トンクスがルーピンを想っているのは、彼女の守護霊が狼に変わったのを見た時から知っていた。ルーピンの想いは私にあると思っていたが、敬愛するダンブルドアを殺したことで、私を恨み、トンクスになびいたのだろう。いつだってルーピンは、仲間から離れて私のために一人立ち向かう勇気など持ったことがなかった。善良で優秀ではあるが、人狼の傷により、仲間の思惑に弱い者なのだ。

それでも、私に友と呼べる者があるとすれば、それはルーピンしかいなかった。危険を知らせたいが、今はその術もない。ルーピンは闇の魔術に対する防衛術の教師を優秀に勤めるだけの能力を持っているのだと自分に言い聞かせた。

ポッターの移動時の襲撃は、こちらの思惑通りことが進んだと思う。正確な日時を伝え、ダークロードの信頼を得る。しかし実際に襲撃しようとすると、ポッターのおとりが何人もいて、デスイーターたちは混乱し、攻撃力は分散せざるを得ない。それでも、騎士団の倍以上いるデスイーターたちの攻撃で、犠牲者は出るかもしれなかった。そのリスクは、大きな計画のためにやむを得ないというのがダンブルドアの考えだ。実際、これに勝る方法など考えもつかなかった。

そして、、、出来る限り思い出すのを避けていた、チャリティ・バーベッジの最期。親しくはなかったが、長年の同僚だった。私を恨めしく思いながら死んでいっただろうか。見知った者に見捨てられて死ぬのと、誰一人知る者のない中で死んでいくのと、どちらがましなのだろう?だが助けることはできなかった。私が止めようとすれば、ナギニの夕食が増えただけのことだ。

彼女の姿は、ダンブルドア亡き後、ホグワーツが闇陣営の手に落ちれば、誰にでも起こりうることだった。楯となり、守ることができるのは、私だけなのだ。そのためにはダークロードの信頼を、つなぎ止めねばならなかった。リリーの遺志を継ぎ彼女の息子の命を守る、そのためだけに生きるつもりが、生き延びるうちに、守りたい者も、守るべき者もずいぶんと増えてしまった。ダンブルドアの詐欺にあったようなものだ。それとも、リリーの遺志は息子の命に留まらず、多くの命と幸せを守ることだったのだろうか?図らずも私の命もそれで永らえたように。

出るのはため息ばかりだった。その夜の浅い眠りには、逆さに吊るされたバーベッジの哀れな姿が出てきた。ゆっくりと回り、暖炉の明かりに照らされるその顔は、そのたびに、ルシウスやルーピン、私自身や教師たち、ポッターや生徒たちに変わっていった。終わりはいつも、鎌首を上げたナギニの生臭い口に飲み込まれて暗転するのだった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ダークロード ポッター ルーピン

セブルス・スネイプと死の秘宝(1)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


左腕の闇の印に合図があり、私は自宅の隠れ部屋を出てアパレートした。着いてみると、ダークロードを囲みすでに何人もデスイーターが集まっていた。フードを身につけていない者も何人かいる。アズカバンに収監されていたルシウスたちが集団脱獄したのだった。

「皆の者、ダンブルドアを倒し、我らの勢力は格段に高まった。魔法省への潜入も飛躍的に進み、アズカバンの仲間たちも戻って来たぞ。」

ダークロードは上機嫌で、一部のデスイーターは熱狂し、他の者たちにもくつろいだ気配が漂っていた。

「ここで気を緩めることなく、一気に魔法省を掌握せよ。我らが完全なる支配を手にする日も近い。いまだ抵抗する者どもを叩きつぶすのだ。次なる標的はポッターだが、まもなく迎える誕生日で守りの術も解け、今の場所から移動するはずだ。この機会を逃すわけにはいかぬぞ。」

「次の集会はマルフォイ邸で行う。めでたくアズカバンから帰還したルシウスが屋敷を余に提供したいとのことだ。それまでに各自任務を迅速に進めるのだ。」

集会はあっさり解散となったが、私はダークロードに残るよう言われた。私のほうでもダークロードの許可を得なければならぬことがある。

「セブルス、ダンブルドアを倒したお前には褒美を与えようと思うが、何か望みはあるか?すでにお前の言うよう、ドラコの活躍は考慮してルシウスは戻してやったが。」

戻してもただでは解放しないということだ。集会をマルフォイ邸でやるとは。しかしそれは今言ってもどうにもならないし、他に重要なことがあった。

「我が君、ありがたいお言葉でございます。もしお認めいただけますのなら、、」

「なんだ、言ってみよ。」

「ダンブルドアが死に、ホグワーツの校長職が空いております。」

私は、できるだけ自分が野心家に見えるよう声に期待を滲ませながら言った。

「ホグワーツか。おまえはずっとあそこにいたのだからな。」

私の目を覗き込むダークロードに対し、閉心術を使いながら、暗い自宅に膝を抱える子供の頃の私や、ホグワーツの豪華な食事に目を丸くする私の姿を散りばめて見せた。ダークロードには伝わるはずだ。見捨てられた子供が初めて見つけた家に執着する気持ちが。ダークロード自身も同じはずなのだから。

「よかろう。考えてみてやる。それなりの働きをしたのだからな。しかしセブルス、余は今までお前がもたらしていた騎士団やポッターの情報が入手しにくくなることを懸念しているのだが。」

ダンブルドアを殺したことでスパイの役割が果たせなくなり、私の利用価値がなくなると仄めかしている。手柄をたてたとはいえ、それ以上の利用価値のない者に大きな報償は与えぬということか?

「騎士団の情報につきましては、このような事態に備え、騎士団内部に情報源を準備しております。」

「セブルス、気がきくことだ。ではその手腕を見せてもらうことにしよう。」

ダークロードから解放されてほっとしたが、報告し指示を仰ぐダンブルドアがいないことが胸をつく。ほんの数日前のことだから、まだダンブルドアが死んだことに慣れることはできない。とっさに言った騎士団内部の情報源というのも、、、マンダンガスを利用しようというくらいしか考えついていなかった。

行く先はホグワーツしか思いつかなかった。ダンブルドアの葬儀後、ホグワーツは閉鎖が決定し、今は人影もない。防衛は施してあったが、長年住み慣れた私には、術を解いて入ることなど簡単だった。ゴーストさえもなりを潜めているのか、影もない。忌まわしい思い出の蘇る天文塔を目に入れぬよう気をつけながら、校内に入りまっすぐに校長室に向かった。

「ダンブルドア」

考えもなく言ったパスワードはその通りだったのか、パスワード術も解けていたのか、苦もなく室内に入ることができた。すると、

「セブルス、待っておったのじゃ。ようやってくれたの。」

机の後ろの新しい肖像画が懐かしげに声をかけてきた。

「アルバス」

もちろん、そのはずだった。歴代の校長は、死後校長室の肖像画になり、現役の校長を補佐するのだ。肖像画のその人は生前の魂の影に過ぎないのだが、その姿を目にし、話ができることはなんと心強いことか。

「アルバス、ダークロードは私の任務に満足しています。私の利用価値がまだあると思わせられれば、計画通りホグワーツに戻ることができるでしょう。」

「そうでなくてはの。わしが死んだ今、ヴォルデモート卿はハリーを倒し、最後の勝利をつかむことに躍起となっておろう。17歳の誕生日にハリーがダ―ズリー家から移動する機会を襲うといっておるの?」

「はい。おっしゃる通りです。」

「ではおまえがその情報を与えれば、信頼を保つことができるじゃろう。」

「しかしそれは危険ではありませんか?」

「ヴォルデモートに、ハリーが叔母の家から移動する正確な日を教えるのじゃ。そうしなければ疑念を生むじゃろう。ヴォルデモートはおまえさんが情報を得られると信じておるのじゃからな。しかしハリーの安全も確保せねばならんから、おとりを使うのじゃ。そのようにマンダンガス・フレッチャーに服従の呪文をかけるのじゃ。

それから、セブルス、もしその襲撃におまえさんも加わらねばならない場合は、それなりに役を果たすのじゃ。わしはお前さんがヴォルデモート卿の信頼を出来る限り保てることをあてにしておる。さもなければホグワーツはカロー兄弟の思うままにされてしまうじゃろうからの。」

ダンブルドアは生前そのままの洞察力で、闇の台頭を防ぐ闘いに最善の方法を考えていた。説明された具体的な計画の綿密さは変わることがない。その計画で仮に犠牲者が出るにしても、厳しい戦いの勝利のためにやむを得ないという冷徹さも、、むろん犠牲者を最小限に抑える意思もだが、、変わりはなかった。死んでしまったのだから、もちろん、変わりようがないのだが。

私はそれから住み慣れた地下牢の自室に行き、貯蔵棚から必要になりそうな薬剤をいくつか取りだした。その後思いついて医務室に向かい、棚に隠した魔法薬袋を見ると、新しい日付の袋がなくなっていた。私の裏切りを知った後でも、グレンジャーは教えたことは覚えていたらしい。

ホグワーツを出ると、さっそくマンダンガスの行方を探った。ポッターの誕生日は今月末に迫っているし、いつダークロードが次の招集をかけるかわからないのだから、事を急がねばならない。薄暗い酒場でマンダンガスをつかまえると、服従の術をかけた。

「不死鳥の騎士団に、おとりを使うと提案するのだ。ポリジュースを使えばよい。偽ポッターをつくるのだ。それしかうまい方法はない。おまえは私がこう言ったことを忘れる。お前自身の考えとして提案するのだ。わかったか?」

「わかったぜ。」

マンダンガスは焦点の定まらぬ目でうなづいた。


スピナーズエンドの隠れ部屋で、私は機会があったら渡せるように、必要な薬剤を選びだした。デスイーター集会でちらりと見かけたルシウスは、ひどくやつれた風だった。命の安全は確保されていたとはいえ、1年に及ぶアズカバン収監が、裕福な暮らしに慣れたルシウスに堪えぬはずはなかった。粗末な食事、不衛生な寝台、乱暴や虐待もあったかもしれないし、ドラコのことも気に病んていただろう。

ダークロードがマルフォイ邸に居座ってしまい、世話をしてあげることはできないが、せめて必要な魔法薬を渡し、養生してほしかった。それに、いつダークロードがルシウスやドラコに危害を加えるか、わかったものではなかった。マルフォイ邸にいればいたで、自分が苦労していた間もルシウスはけっこうな暮らしをしていたなどと、嫌がらせをしても不思議はない。ダークロードの嫌がらせといえば、、、得意のクルーシオはもとより、ナギニをけしかけることもしかねない。

強壮剤に安眠薬、傷を治すハナハッカ、解毒薬、ほかに数種を選り分けた。もちろんルシウスの財力を持ってすれば、この程度のものは常備されているかもしれないのだが。他にできることを思いつかなかった。たいせつな者のために私ができることは、薬を配る程度かと空しかったが、何もないよりはましと思うしかなかった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

セブルス・スネイプと謎のプリンス(22)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

思いに浸っていると、医務室の扉が開き、モリーとアーサー、そしてビルの婚約者のフラーが入ってきた。横たわるビルを見て、同じ話が繰り返される。ビルの感染について、私は説明してあげた。そして、信じ難いダンブルドアの死を確認するアーサー。

しかしモリーは自分の息子、ビルだけをじっと見つめていた。そしてビルはもうすぐ結婚するはずだったのにと嘆いたモリーの言葉に、フラーが激しく反論を始めた。フラーは、ビルの美しい顔にどんな傷跡が残ろうと、人狼の呪いによりビルにどんな変化があろうとも、2人の愛に変わりはない、愛し合って結婚することに変わりはないと主張した。そして抱き合うモリーとフラー。

私はそんな成り行きを茫然と見ていたのだけれど、トンクスが私をじっと見つめ、強い声で言った。

「わかったでしょう?フラーはそれでもビルと結婚したいのよ!噛まれたって、そんなことはどうでもいいのよ!」

私は突然の攻撃にたじろぎながらも頑なに言った。

「次元が違う。ビルは完全な人狼になるわけではないよ。事情がまったく・・」

「でも、わたしも気にしないわ。気にしないの。」

トンクスは私のローブをつかんで揺すぶりながら言った。

「何回もあなたにそう言ったのに。」

「私も君に何回も言った。私は君には年をとり過ぎているし、貧乏だし、危険すぎると。」

「リーマス、あなたのそういう考え方はバカげていると思いますよ。」

モリーがトンクスを援護し、アーサーまで援護に回った。

「今はそんな話をするときじゃない。ダンブルドアが死んだんだ。」

私は抵抗した。実際、私の頭はダンブルドアの死と、それをやったのがセブルスだったという事実を消化するので精いっぱいだった。けれど、マクゴナガルまでが・・・

「世の中に少し愛が増えたと知れば、ダンブルドアも喜ばれるでしょう。」

皆、ダンブルドアの死という悲しみから逃れるために、少しでも温もりのある話を求めていたのだと思う。私が言い返す言葉を見つけられないうちに、ハグリッドが泣きながら、指示されたことを行ったと、マクゴナガルに報告に来た。マクゴナガルがハリーを連れて出てゆき、ウィーズリー一家を残して私たちも医務室を出た。

トンクスは私の手を握り、放さなかった。暗い校庭で足を止め、たいせつなのは2人の気持ちだ、人狼だってかまわないと言い募る。柔らかい体が、私に抱きついて来た。若い魔女の甘い匂い、絡みつく温かい体、伝わってくる心臓の鼓動。

「モリーだって、アーサーだって、ミネルバだって認めてくれるのに、なぜあなたはそんなことにこだわるの?なぜ私の想いを受け止めてくれないの?人狼だって、貧しくたって、年上だっていい。それがなんだとういの?あなたを愛してるわ、リーマス。」

トンクスを嫌いなわけではなかった。一途に慕ってくる彼女が愛おしく思えることもあった。私を止めていたのは、セブルスへの想いだ。けれどセブルスは・・・ダンブルドアを殺した。私を裏切り、皆を裏切り、ダンブルドアを裏切ったんだ。

親友たちを失ってから、私はダンブルドアとセブルスを心の支えに生きてきた。人狼の私に手を差し伸べ導いてくれたダンブルドア。人狼の私を、ありのままに理解し認めてくれたセブルス。そのセブルスがダンブルドアを殺すという最悪の形で、私は寄って立つ支えを失ってしまったのだった。

悲しみと怒りと寂しさのなか、私を愛してくれる可愛らしい魔女を拒むことなんてできなかった。いや、むしろその温もりにしがみつきたかったのは私のほうかもしれない。皆も応援してくれているのだし。心の支えを失った私はとても弱かった。人の顔色をうかがう癖。人に好かれたい思い。人狼の私だって受け入れてもらいたい・・・幼い頃から身に着いた、それが私の習性だった。

トンクスのあごをそっと上げ、唇を寄せた。喜びなのか、トンクスの閉じた目から涙が溢れた。トンクスの涙が私の頬を伝わり、それは思いがけず熱かった。生きることは、こういうことなんだ。温かくて、柔らかい。

セブルスのことを考えると、胸の痛みも信じられない思いも解消されてはいなかったけれど、私は腹立ち紛れに放置した。裏切ったのはスネイプだ。私の想いも信頼も裏切り、こともなげにダンブルドアを殺し、去って行った。

2日後に行われたダンブルドアの葬儀には、トンクスと一緒に参列した。あなたを裏切ったスネイプのことは断ち切り、私はトンクスと幸せですと報告する思いもあった。

愛を得たと信じた女は強い。それからトンクスは、セブルスへの想いのためではなく今度こそほんとうに彼女にはふさわしくないと尻込みする私を、強引に家族に引き合わせ、結婚を宣言した。マグル生まれの父親テッドは娘の意思を尊重すると言ってくれたけれど、ブラック家出身の母親アンドロメダは、おまえは何もわかっていないと娘をいさめ、私には口もきいてくれなかった。アンドロメダの気持ちは理解できたし、内心、その通りだとも思っていた。つきあうだけならまだしも、人狼と婚姻を結ぶとなれば、一家丸ごと排斥されるのだから。

トンクスは母親の反対をものともせず、私はそんな彼女に引きずられるように、結婚を承諾した。尻込みはしたものの、私はトンクスと幸せになりたいと思っていたし、同時に、彼女とその家族を、私と同じ不幸に陥れることを恐れてもいた。先の見えない不安が続く時、人は何かに突き動かされるように生き急ぐ。明日がないかもしれないのなら、今日がすべてなのだから。そして私は、決着のつかないセブルスへの想いを心の奥深くに封じ込め、差し出された温かい手を握ったのだった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター トンクス

セブルス・スネイプと謎のプリンス(21)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ダンブルドアが死んだ。セブルスが殺した。スネイプが、ダンブルドアを殺した。


その数日前、ダンブルドアに任務地から呼び返されて、私はホグワーツ周辺の警備にあたっていた。前報告に戻った時の様子が気になり、セブルスに会いたかったのだけれど、どうやらダンブルドアに泣きついて私を危険な人狼の村から呼び戻してもらったらしいトンクスが、そんな隙を与えてくれなかった。

トンクスは、私の消息が途絶えていた日々の苦しさを涙ながらに訴え、私が年をとっていようと、貧乏であろうと、人狼であろうと構わないから、一緒になりたいと、繰り返し言ってくれたのだった。一途な若い魔女からそんなふうに思われて、揺らぐ気持ちもあった。私のような、一緒になってもなんの得にもならない者に注いでくれる純粋な愛情というのは、心を打つものがある。トンクスとは任務が一緒だったし、いつの間にかトンクスの味方になっていたモリーも、私を励ましたり、2人を食事に招いたりしてくれた。

だけど、私の中にはセブルスへの想いがあったから、そのままは言えなかったけれど、自分はトンクスにはふさわしくないと、できるだけトンクスを傷つけないように、でも頑なに断っていた。学期末の忙しい時期にセブルスをわずらわすのははばかられたし、女性2人に理解してもらうのにも手間取って、こちらに戻ったのだからセブルスには夏休みに入ってからゆっくり会えると思っていた。

その夜は、マクゴナガルに呼ばれて、トンクス、ビルも一緒に、皆で校内を巡回していた。ダンブルドアがホグワーツを離れるということで警備を強めたのだけれど、校内は静かで、何の兆候も見られなかった。そして突然騒動が起こり、ロンたちからデスイーターが侵入したと知らされた。

私たちは急いで彼らを追い、天文塔の下で闘いが始まった。数名のデスイーターが天文塔の上に続くらせん階段へと向かったあと、呪いの障壁が張られ、私たちはみな障壁を抜けることができなかった。上の様子は気になったけれど、かまっていられなかった。階段の下での闘いでも、私たちは形勢不利だったから。ビルがグレイバックに噛まれ、ネビルも呪文に飛ばされて怪我をしていた。援軍に駆け付けたセブルスが、障壁を抜けて天文塔に向かうのに続こうとしたけれど、私は跳ね返されて通り抜けられなかった。

それからほどなく、天井が落ちてあたりに煙が立ち込める暗闇の中、スネイプとドラコが通り抜けていく姿を見かけた。そして、上から下りてきた者たちとともに、下で私たちと戦っていたデスイーターたちも突然引き上げていった。

わけがわからなかったけれど、とりあえず負傷者を医務室に運んだ。ビルは人狼のグレイバックに噛まれ、重傷を負い意識不明だった。ビルのベッドを囲み、ポピーが必死に手当するのを、ロン、ハーマイオニー、ルーナ、トンクスとともに見守っていると、青ざめたハリーがジニ―とともに医務室に入ってきた。

「ハリー、大丈夫かい?」

近寄って声をかけると、ハリーは自分は大丈夫だと答え、ビルの状態を尋ねた。言い淀むロンの物問いたげな視線に応えて、私は考えられることを話してあげた。つまり、変身時に噛まれたわけではないから本物の人狼にはならないと思うけれど、呪いのかかった傷だから完全には治らない。汚染されて、何か狼的な特徴が現れるのではないかと。

それを聞いて、ビルの弟のロンがすがるように、ダンブルドアならなんとかしてくれるはずだと言った、その時・・・

「ロン、、、ダンブルドアは死んだの。」

ジニ―が兄に答えて言ったのだった。

「まさか!」

私は思わず叫び、ジニ―を、それからハリーを見た。嘘に決まっている。嘘か、間違いか。ダンブルドアが死ぬはずがない!けれど・・・ハリーは否定しなかった。ダンブルドアはほんとうに死んでしまったんだ。

私はがっくりと椅子に座りこみ、顔を覆った。ダンブルドアが死んだ。人狼として、あの人狼の村で見た彼らと同じように生きるはずだった私に、救いの手を差し伸べてくれたのがダンブルドアだった。そのおかげで私はホグワーツに入学し、学ぶ機会を得て、かけがえのない友とめぐり合うこともできた。卒業後、困窮していた私をホグワーツの教授として招いてくれたのもダンブルドアだった。不死鳥の騎士団として、仲間とともに闇陣営と戦えるのも、すべてダンブルドアのおかげだった。導きを受け、その恩に少しでも報いたいと思っていたし、ダンブルドアの語る共生の世が私の希望でもあった。そのダンブルドアが・・・

「どんなふうに亡くなったの?」

思いに浸り、現実味の持てないままトンクスの質問を聞き流したのだけれど・・・ハリーの答えに驚愕した。まるでナイフを胸に突き刺されたような衝撃。

「スネイプが殺した。僕はその場にいて、見ていたんだ。闇の印が上がっていたから、僕たちは天文塔に戻った。ダンブルドアは病気で弱っていたけど、階段を駆け上がる足音を聞いて、それが罠だとわかったんだと思う。僕を金縛りにしたから、僕は何もできなかった。透明マントを被っていたんだ。そうしたら、、扉からマルフォイが現れて、ダンブルドアを武装解除した。」

私はその光景を思い浮かべ、体の震えを抑えられなかった。ハーマイオニーが口を覆い、ロンがうめき、ルーナが唇を震わせていた。

「続いてデスイーターがやってきた。それからスネイプが来て、、、スネイプがやったんだ。アヴァダ・ケダブラを。」

ハリーがそれ以上耐えられないように口をつぐんだ。ポピーが泣き出して、それからどこからともなく、不死鳥の哀しい歌声が聞こえてきた。皆黙りこんで、ただその声を聞いていた。ダンブルドアが死んだという、その驚きが悲しみに変わり、信じられない出来事が事実として体にしみわたってゆく時間が過ぎた。


どれほどたったのか、再び医務室の扉が開き、マクゴナガルが入ってきた。

「まもなく、モリーとアーサーがみえます。・・・ハリー、何が起こったのですか?ハグリッドが言うには、あなたがちょうどそこにいて、、、スネイプ先生が何か関わっていたとか・・」

「スネイプが、ダンブルドアを殺しました。」

ハリーの答えが再び胸に突き刺さる。マクゴナガルは崩れるように椅子に座りこみ、弱々しく声を上げた。

「スネイプが・・。私たちは皆疑っていました。けれどダンブルドアはいつも信じていました。スネイプが・・。信じられません。」

私は突然怒りが込み上げ、吐き捨てるように言葉が口をついた。

「スネイプは閉心術に長けている。そんなことはずっと、わかっていた。」

トンクスが囁くような声で言った。

「でも、ダンブルドアは、スネイプは私たちの味方だって誓って言っていたわ。スネイプについて、私たちが知らないことを何か知ってるんだって、私、ずっとそう思ってた。」

続いてマクゴナガルが、あふれる涙をハンケチで抑えながら言った。

「ダンブルドアはいつも、スネイプを信頼する鉄壁の理由があると仄めかしていました。もちろん、スネイプは過去がありますから、みんな疑っていましたが。ダンブルドアは私にはっきりと、スネイプの悔恨は絶対に本物だとおっしゃいました。スネイプを疑う言葉は、一言も聞こうとなさらなかった・・・」

それを聞いてトンクスが言った。

「スネイプが何と言ってダンブルドアを信用させたのか知りたいものだわ。」

「僕、知ってる。」

ハリーの声に驚いて、みな振りかえり、ハリーを見つめた。

「スネイプがヴォルデモートに伝えた情報のせいで、ヴォルデモートが僕の父さんと母さんを殺した。スネイプはダンブルドアに、自分が何をしているのかわかっていなかった、やったことを心から後悔している、2人が死んで申し訳なく思っていると言ったんだ。」

私は信じられない思いで言った。

「それで、ダンブルドアがそれを信じたと?スネイプがジェームスの死をすまなく思っているというのを、ダンブルドアが信じたのか?スネイプはジェームスを憎んでいたのに?」

「それに、スネイプは母さんのことも価値があると思ってなかったんだ。マグル生まれだから。穢れた血だから。」

ハリーの言葉に、ふと何か引っかかる気がしたけれど、それを突きとめる余裕はなかった。取り返しのつかない衝撃的な出来事に動揺し、起こってしまったことをどう受け止めればいいのか途方に暮れていた。

やがてマクゴナガルが、思い詰めた声で、全部自分の責任だと言い、それから皆でその夜の出来事を順を追って確かめていった。誰もが責任を感じ、スネイプを味方と信じていたことを後悔していた。全貌がわかるにつれ、ダンブルドアの死が、取り返しのつかぬ事実として確認されていく。皆黙りこみ、それぞれの思いに沈んでいた。

ダンブルドアの死とともに、それをやったのがセブルスだという事実が私の胸を苛んだ。信じていたのに。ダンブルドアも私も。私はまた、信じた者に裏切られ、たいせつな人を失ったのか。けれど・・・。

他の皆より私はセブルスのことを知っていたはずだ。少なくとも私の目には、セブルスはダンブルドアを慕い、忠実に見えていた。それに、、、そうだ、セブルスの守護霊はリリーの牝鹿だ。それは生涯変わることはないと言っていたじゃないか。セブルスはジェームスは憎んでいたけれど、リリーのことは大切に思っていた。

それなら、リリーに死をもたらしたことをセブルスが心から悔み、それをもってダンブルドアがセブルスを信じたとしてもおかしくはない。けれど、事実は、セブルスがダンブルドアに死の呪文を放った。なぜ・・・?思いは堂々巡りし、答えは見つからない。

あの美しい守護霊を出すリリーの思い出を胸に秘めながら、セブルスはダンブルドアを殺したのだろうか?そういえば、前回会った時、セブルスは守護霊を形作ることができなかった。ひどく辛そうで、私は任務が厳しすぎるのではないかとダンブルドアに詰め寄ったほどだった。ではあの時、実はセブルスは闇陣営に追い詰められるか何かして、裏切りの心を固めていたのだろうか?

そうだとしたら、私はなんと愚か者だったのだろう。まんまとセブルスに騙された。セブルスはヴォルデモートさえも欺く、卓越した閉心術士なのだから。ダンブルドアが勝利をおさめて闘いが終わったら、2人で一緒に幸せになろうなどと言っていた私を、セブルスは隠した心の中であざ笑っていたのだろうか?

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ダンブルドア ハリーポッター

セブルス・スネイプと謎のプリンス(20)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


外の不穏な気配は感じたが、私は自室を出たくなかった。一歩出てしまえば、あとはダンブルドアを殺しに駆け付けることになるのがわかっていたからだ。せねばならぬとも、するだろうとも思っていたが、ただその時を少しでも遅らせたかった。ダンブルドアにはいいように使われたという思いもあるが、父のように慕う思いもあった。実の父親を慕ったことはないのだが。

つまらぬことを考えて部屋に留まっていると、フリートウィック教授が駆けこんできた。ホグワーツにデスイーターが侵入し加勢が必要だと。戦いに巻き込まれる者を少しでも減らすため、フリートウィック教授を失神呪文で気絶させ、部屋の外をうろついていたグレンジャーとラブグッドに手当てするよう言いつけて足止めし、私は急ぎ戦いの場に向かった。

ルーピンやトンクス、他に数名の騎士団員と、数名の生徒がデスイーターたちと戦っていた。その場を素早くやり過ごし、封鎖煙幕を通り抜けて天文塔に駆け付ける。デスイーターも騎士団側も私を味方と思っているから攻撃してはこない。しかししばらくのちには、騎士団員からは最悪の裏切り者と恨まれ蔑まれることになるだろう。

これから起こることへの悲しみと嫌悪を押し殺し、天文塔に駆けあがると、私の到着を待っていたかのような景色があった。いきりたつグレイバック、はやし立てるベラトリックス、そしてアミカス兄弟に囲まれ、立ちつくすドラコ。ドラコが向ける杖の先には・・・ようやく立っているようなダンブルドアの姿。

デスイーターのアミカスが私を見て言った。

セブルス、困ったことになった。この坊主にはできそうもないん、、、」

その時、弱々しい声が私に呼びかけた。

セブルス、、」

私は迷わずドラコを押しのけ、ダンブルドアの正面に立った。

セブルス、、、頼む、、」

懇願するような、ダンブルドアの声。

私はまっすぐにダンブルドアの胸に杖を向けた。私にこのようなことをさせるダンブルドアとダークロードと、私自身の運命に怒りと憎悪をたぎらせて・・・

「アヴァダ・ケダブラ」

ダンブルドアの姿は一瞬宙に浮いたように見えた。そして、防壁の向こうへと落ちて行った。


「ここを出るのだ、早く」

私は茫然と突っ立っているドラコの襟首をつかみ、らせん階段を下りた。下には煙がもうろうと立ち込め、誰と誰が戦っているかも定かではない。死傷者が出ているかもしれないが、かまっている暇はない。早く終わらせなければ。

「終わった、撤収だ!」

デスイーターたちに退却を呼びかけ、私はドラコを連れてアパレートできる校門へと急いだ。他はかまわず、校庭を走るうち、後ろからポッターの呪文の声とともに赤い閃光が頭をかすめて行った。

「ドラコ、走れ!」

ドラコを先に追いやって、振りかえるとポッターが杖を構えている。私ももちろんすでに杖を向けていた。

「クルーシ・・」

ポッターが呪文を言い終えぬうちに、吹き飛ばした。少し離れた所で赤い炎が上がった。ハグリッドの小屋だった。

「クルーシ・・」

ポッターがまた投げかける呪文を軽く阻止し、私は叫んだ。

「お前には『許されざる呪文』は使えないのだ!そんな度胸も、能力もない。」

「インカーセ・・」

ポッターが懲りずに呪文を放ってくる。私は軽く腕を動かしてかわした。

「戦え!戦えよ!臆病者!」

ポッターが叫んだ。その言葉は私の怒りに触れた。ポッターの父親も4人がかりで私を追い詰めた挙句に私をそう罵ったものだ。無謀を勇気を取り違えたグリフィンドールが、1人立ち向かう私に。

「臆病者?私をそう呼んだか、ポッター?お前の父親は、4対1でなければ私を攻撃しなかったものだ。そんな父親を何と呼ぶ?」

「ステューピ・・」

また放たれたポッターの呪文を逸らせながら、私は冷やかに言葉を投げた。

「また防がれたな。何度やっても同じことだ、ポッター。お前が口を閉じ、心を閉じることを学ぶまでは。」

ポッターの後ろまでアミカス兄弟たちが迫っていた。私は彼らに向かって叫んだ。

「さあ、行くぞ!もういく時間だ。魔法省が現れぬうちに、、」

「インペディ・・」

ポッターがしつこく呪文を放とうとしたが、言い終える前に、背後から放たれた呪文にポッターが倒れ苦しみ出した。

「やめろ!」

ポッターが受けた呪いを素早く解き、デスイーターたちに叫んだ。

「命令を忘れたのか!ポッターはダークロードのものだ。手出しするな!さあ、行け!」

デスイーターたちは命令に従い校門に向かって走って行ったが、立ち上がったポッターはよろよろと近付いて来た。すでに数歩の距離までに。

「セクタム・・」

呪文をただちに阻止する。この少年は、、私が命がけで守るこの少年は、ほんとうに私を怒らせる。父親と同じことを・・・。頭の中で、何かが切れた。

「レヴィ・・」

「やめるのだ、ポッター!」

叫ぶとともにバーンと音がして、ポッターが地面に叩きつけられ、杖は手を離れ飛んでいた。私は丸腰のポッターの横に立ち、見下ろした。

「私の呪文を私に向けるとは、ポッター、どういう神経だ?私がそれらの呪文を発明したのだ。私が、半純血のプリンスだ!汚らわしいお前の父親と同様、おまえは私がつくった呪文を私に向けるのか?そんなことはさせない。ダメだ!」

ポッターの杖をさらに遠くに飛ばしてやった。

「それなら殺せ。校長先生を殺したように、僕も殺せ。この臆病・・」

ポッターの言葉を遮った。

「私を、、、臆病者と呼ぶな!」

怒りに手を振りおろすと、ポッターが地面に叩きつけられた。そのとき、空から巨大な者が私に襲いかかり、、、バックビークだ、、私は振り払いながら、急ぎ校門に走った。

ポッターは、なぜああなのだ?私が、ここまでやるのに、これからやることに、どれだけ心を押し殺し、どれだけ勇気を振り絞っていることか。もう助けてくれるダンブルドアはいない。何も知らぬまま、一人、最後の楯となる私を臆病者と呼び怒りをぶつけている。私とていつまで、どれだけ助けられるかわからない。身を守る術も学ばず、感情にかられ無謀に立ち向かって勝てる敵ではないのだ。強くなるのだ、賢くなるのだ、ポッター。


校門に着き、私はただちにマルフォイ邸へとアパレートした。マルフォイ邸に入ると、見慣れた居間にうづくまるドラコの肩を、ナルシッサが抱いていた。

「ナルシッサ、ドラコ」

「ああ、セブルス、感謝します。ありがとう。ドラコを助けてくださって・・」

泣き崩れそうなナルシッサにうなづき、ドラコを抱き寄せた。

「大丈夫か?」

「先生、僕は、、。ごめんなさい。やらなければ殺すと言われて。父上も・・・」

私に対する反抗的な態度は消え、私の部屋に来て自分の不甲斐なさを嘆いていた幼い頃の表情が垣間見えた。

「ドラコ。」

気のきいた言葉は浮かばなかったが、苦痛に締め付けられていた胸に、わずかに温もりが戻る。ドラコとルシウスを救うことはできたのだ。と、そのとき、、、


セブルス、よくやった。ダンブルドアを仕留めたのだな?」

部屋の温度が一気に下がった。いつの間にかダークロードが脇に立ち、上機嫌で私をねぎらいながら、肩に手を置いたのだった。

「我が君、ご命令を果たすことができました。」

セブルス、余は満足じゃ。ダンブルドアもおまえに裏切られるとは、さぞ驚愕して死んでいったことであろう。」

「ダンブルドアは最後まで私の忠誠を信じていたことと思います。」

「なにか褒美を与えるぞ。余の期待に見事に答えてくれたことよ、セブルス」

「我が君、このドラコもよくやりました。まだ未熟な子供ですが、ホグワーツへの経路を開き、仲間を引き入れるのに成功しました。そのおかげで私は労なくダンブルドアを倒すことができたのです。ドラコの成果もどうぞご配慮ください。」

「よかろう、セブルス。おまえがそう言うなら。ルシウスをアズカバンから出してやることにしよう。それでよいな?」

「ありがとうございます。我が君、感謝いたします。」

私はこの先、ずっとここ、ダークロードの元にいるのだ。任務を終えて、ダンブルドアに報告しに戻ることは、もうない。心がキリキリと痛んだ。宙に浮き、白い髪とひげが風に揺らぎ、落下してゆく。半月メガネの奥の、輝きを失った瞳。この悪夢は生涯消えることはないだろう。それでも、、、ダンブルドアの無茶な指示と願いの1つを成し遂げた。次はホグワーツを守ることだ。私は無理やり先のことを考えるよう努めた。起こった事実に目を向けることは、まだできなかった。

ナルシッサとドラコに見送られてマルフォイ邸を後にし、スピナーズエンドの自宅に戻った。荒んだ心にふさわしい家だった。魔法省や騎士団から捜索されるおそれがあるので、以前から準備していた地下の隠し部屋に潜った。書斎の本棚の後ろにある仕掛けから入る狭い地下室だが、小さなソファとベッドとバスルームがあり、マグルの街に出る隠し出口もある。食料も蓄えておいた。ダークロードが復活し、マルフォイ邸から戻った後にまさかに備えて準備しておいたのだが、こんな形で役立つとは思わなかった。

倒れるようにソファに沈み込み、手に顔を埋めた。いつのまにかうめき声が上がり、それは嗚咽にかわった。顔を上げても、もう導いてくれる人はいないとわかっていた。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ダンブルドア ハリーポッター ポッター ダークロード

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。