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セブルスとルシウスの物語(3)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ルシウス、なんか始まったみたいだぜ。」

談話室のソファで、百味ビーンズの耳くそ味にあたって騒いでいたばかりのクラッブが肩をつついてきた。こんなへんな菓子をよく食べるものだと辟易として見ていたのだが、クラッブはけっこう目ざといのだ。

目を向けると、談話室の入口付近で、下級生が5、6人集まって、1人の1年生、、、スネイプを取り囲んでいた。不穏な雰囲気が漂っている。皆にいじめられているのか?監督生としてはたしなめるべきだが、入学式の日に見た漆黒の瞳から涙がこぼれるのを見るのも悪くないと見物を決め込んだ。それを見てから助けてやろう。

が、その直後、鋭く振られた杖。悲鳴があがり、涙ぐんでいるのは、集団にいる生徒のほうだった。硬直した体に、奇妙にねじ曲がってゆく腕。あれは、、、闇の魔術。まだ幼い1年生の杖から、迷いなく精密に放たれた呪いの一撃。思わず魅了されるほどの。

「すげぇ、、、何だ、今の?」

隣でクラッブがつぶやいていた。騒ぎが大きくなり、やたらと杖を振り回す生徒も出てきた。さすがに放っておくわけにもいかない。ボクは立ち上がっていさめにいきながら、じっとスネイプの瞳を覗き込んでいた。黒い瞳の奥に暗い炎が揺らめいている。

久しぶりに、興味をそそる出来事だ。浮かびそうになる笑みを抑えながら、セブルスの横に立ち、監督生として騒ぎを鎮めた。

諍いの理由も問わずスネイプの肩を持ったボクに皆あっけにとられたようだったが、かまうことはない。気に入った者は部屋に連れ帰って楽しむとしよう。命じるとスネイプは大人しく着いて来た。部屋に招き入れて椅子にかけさせ、ボクはベッドに向かい合わせて座った。

「セブルス、見事な術だった。どこで学んだのだ?」

笑いながら話しかけたのに、スネイプはむしろ身を固くしたようだった。好意を向けられるのに、慣れていないのだろう。

「僕は、、一人で、、」

返事は消え入るような声だった。瞳をのぞきこみ、続きを促すと。

「うちにあった本を見て、練習しました。」

「親におしえてもらったわけでもなく?」

セブルスはわずかに眉を寄せ、きっぱりと答えた。

「僕一人でです。」

「一人であれだけの術を身につけられるとは、たいしたものだ、セブルス。」

親しみを込めて言ってやると、セブルスは顔を上げて嬉しそうな顔になった。他にも闇の魔術を知っているのかと尋ねると、うなづいて、いくつか魔術をあげてゆく。机の引き出しから闇の魔法の本を取り出し、セブルスに渡してやると夢中で読み始めた。ボクも他の本を手にとって、時々「すごい」と感嘆の声を上げるセブルスと、その魔法の話をしたりした。

しばらく、そんなふうに、2人でそれぞれ本を読みながら、言葉をかわす。妙に居心地のよい静かな時が流れ、貸してやった本を大切そうに胸に抱えてスネイプは自室に戻っていった。

もしかしたら、子供の頃物足りなく思っていたのは、こんなひと時だったのかもしれないと思う。子供の頃、家にこんな子がいれば楽しかっただろうに。

ボクの家は、かわった家だった。もちろん、そんなふうに思ったのは、ある程度大きくなって他の家の事情を知るようになってからのことだが。

たとえば夕食のとき。豪華に飾り立てられた広いダイニングルームで、ゆうに20人は席に着けるテーブルの真ん中で、幼いボクは1人でフルコースのディナーをとった。1人ぼっちの食事が寂しかったなどと感傷的な思いがあるわけではない。第一、一人ではなかった。食事をするボクの周りには、給仕長と給仕係、マナーの教育係が立ち並び、しもべ妖精が細々と物を運んだりかたつけたりしていた。その中で一人食事をするのだが、給仕係が料理皿を置く横から給仕長がその料理の食材や歴史、文化に及ぶ蘊蓄を述べる。教育係は、フォークやナイフの手さばきやら姿勢やら、ナプキンで口を拭うしぐさまで、見守って時に指導する。

「若様、ナプキンは4つ折りにしてお口元に軽く触れるようになさるとより優雅に見えましょう。」とか。

ごくまれに父上も一緒にテーブルにつくことがあったが、ボクの食事マナーに何か気がつくと、ボクにではなく、教育係に告げるのだった。それを恐縮した顔できいた教育係が、ボクに、旦那様がこうおっしゃっておられますと伝えてくる。言葉に従ってボクが正すと、教育係は今度は父上にそれを報告するのだった。

7歳になると、勉強が始まった。1日3時間程度、国語とか呪文学とか箒とかマグル学とか、学校のように時間割が決まっていて、家庭教師の指導を受ける。マグルかぶれの校長がいる学校の教育を受ける前に、正しい知識を身につけるべきだという父上の方針によるものらしかった。

指導の時間が終われば夕食まで自由に過ごせたのだが、7歳やそこらの子供が一人で自由に過ごしてよいと言われてもそう間が持つものではない。もちろん、一人と言っても常に近くにメイドやしもべ妖精がいて、用事があれば言いつければよかったのだが、一緒に何かするわけではなかった。ボクは結局、屋敷の中ではライブラリーで、児童向けのいろんな本を読んだり魔法の品々を眺めて過ごすことが多かった。絵本で見たクジャクが気に入って、教育係を通じてクジャクを買ってもらってからは、庭でクジャクと遊んだものだ。

10歳になると、父上の知人や仕事関係者たちの集まりにボクもたまに加わるようになった。それでボクの生活が他の子供たちとは違うらしいと気づいて、わかったことがある。つまり、ボクの家では物心ついた頃からずっと、マルフォイ家の跡継ぎを育成するプロジェクトが行われてきたのだと。父上が手掛けているらしい数々の事業の一つのように。

マルフォイ家の跡継ぎ、一人息子のルシウスだ。」

やや得意げに知人たちにボクを紹介する様から、父上がその事業の成果に満足しているらしいことがわかった。

「すばらしいご子息ですね。マルフォイ家の将来はますます栄えることでしょう。」

などという追従が向けられ、ボクはそれにふさわしい笑みを返す。

大人たちへの儀礼がすむと、ボクや他の家の子供たちは広間を出た。クラッブやゴイルたちと会ったのもその頃のこと。ボクは同年代の子供たちと会って初めて、様々な子供の遊びを知った。かくれんぼとか、屋敷内の探検とか、庭に出ての木上りとか、くだらないが楽しかった。時が過ぎるのも忘れる程に。

だけど、ボクがすごく面白いと思って見せてあげる本や魔法の品に、彼らはたいして興味を持たないようだった。本を開いて5分もしないうちに、走り始めたりお菓子を食べたりし始める。子供の頃は物足りなく思い、彼らの知的な成長を願ったものだが、ホグワーツに入学して5年生になった今でも同じようなものだから、特別なボクの趣味や嗜好にあう者などいないということだと思っていた。セブルスを知るまでは。

そして呆れたことに、ゴイルたちは実に要領が悪かった。親たちの目に入らない所でいくらばかなことをしてもいいけど、追いかけっこで広間に走り込めば大人たちが眉をひそめるということがわからないらしい。父親に怒鳴りつけられるのだが懲りもせずに繰り返す。

「まったく、おまえときたら!マルフォイの坊ちゃまを見習いなさい。」

彼らがそんなふうに叱られるたびにボクは誇らしくもあり、同時に、べそをかいて母親に泣きついて甘える彼らが少しだけ羨ましい気もした。ボクは母上にそんなふうに甘えたこともなかったし、そもそも母上が父上とともに広間の集まりに出ることもなかったから。

母上は病気がちだということで、たいていは部屋にこもっているか、メイドに付き添われて敷地内を散歩していた。幼い頃には、ボクが部屋を訪れて挨拶すると、ベッドで体を起して、「ルシウス、よく来たわね。」と優しく頭を撫でてくれたり、時には「どんな勉強をしているの?」と話しかけてくれることもあった。

ボクは弱々しいけど物静かできれいな母上が好きだったから、時々母上の部屋で絵本を読んでもらったりすることもあった。だけどある日、何がきっかけだったか思い出せないけれど、ボクが挨拶のキスをしようと顔を近づけたら、母上がいきなり顔を歪めて叫んだ。

「私に触れるな!汚らわしい!」

ボクは驚いて身を離し、立ちすくんだ。美しい母上の顔が、憎々しげにボクを睨みつける。

「おまえは、あの男にそっくりだ!」

それから母上はぽろぽろと涙をこぼし、やがて大声で泣き叫び始めた。あわてたメイドたちが母上をなだめ、ボクを部屋から出した。メイドたちの仕事は母上の世話だから、ボクは母上のわめき声が漏れてくる廊下で、一人茫然とするばかりだった。ボクの何がいけないのだろう、何か悪いことをしたのだろうか。

屋敷の中の誰に尋ねても口ごもるばかりで、ようやく得た返事は。

「奥さまは心を病んでおられるのです。」



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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシウス マルフォイ スネイプ

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