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目の保養

リリーさんのこと考えてたら悲しくなってしまいまして・・・
一休みして、目の保養です。


先生がこんなお顔で過ごせるように切望しています。

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脳内ハリーポッター:スネイプ先生とルシウスの物語
(クリックすると音声が出ます youtubeより)





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セブルスとルシウスの物語(21)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

季節の変化さえ気づかずに過ごすうちに、クリスマス休暇も終わった。休暇明けには魔法省から指導者が来て、今年成人を迎える僕たち6年生は、全員そろって、アパレート・ディサパレートを習った。いる場所から姿くらましをして、目指す先へと姿現しをする。杖も呪文も使わない、集中力を要する術で、みんな苦労していたけど、僕は難なくやってのけた。思い詰めてばかりの生活が集中力を増してくれたみたいだ。だけど、その代りなのか頭痛に悩まされて、僕はいつも不機嫌だった。

年が明けて、1月9日は僕の誕生日だ。誕生日には毎年、リリーがちょっとしたプレゼントと、おめでとうの言葉をくれたものだ。僕が生まれて生きていることを、リリーだけは祝福してくれた。朝目覚めるとともに、もしかしたらという空しい願いなど持つまいと自分に言い聞かせた。今年は17歳の成人を迎える特別な誕生日だけど、僕の存在を気に掛けてくれる人はもういないのだから、祝福を期待するのは馬鹿げている。僕は強くなったのだから一人だって大丈夫だと思おうとしたけれど、考えるとむしろ孤独に苛まれた。

リリー、今日は僕の誕生日だったんだ。」

夜ベッドに入り、いつものように心の中のリリーに語りかけてみた。もうずっとそうなのだけど、心の中のリリーは背を向けて去ってゆき、何の言葉も返してくれない。おやすみと言って目を閉じても、眠りは訪れなかった。夜の闇と静寂は、昼間の雑多な音や光の中でなんとかやりすごした感情を際立たせ、自分を追い詰める思考から逃れようがない。

こんな日さえもリリーは僕を顧みなかった。父さんに疎まれ、母さんに忘れられたように、リリーからも完全に見捨てられたのだ。頑張れば戻れるのだと、もう思えなかった。あるのはただ、耐え難い悲しみと寂しさだけだった。僕を世界につなぎとめていた細い糸が切れて、底知れぬ暗闇に堕ちてしまったようだ。

これは一般に言う失恋なのだろうか?僕だけが特別なわけではなくて、愛する人から見捨てられた者はみな、こんなふうに、命のエネルギーが尽きてしまったように感じるものなんだろうか?自分の存在が暗闇に飲み込まれて消えてしまったように。

そもそも僕の想いは、恋だったのか?そうではないと思う。恋は思春期のホルモンに突き動かされ、憧れを特定の誰かに投影して求めるものだ。相手に拒まれれば傷つくけれど、いつか傷を癒し、思いを投影できる別の誰かを探してゆけばいい。僕はもっと切羽詰まっていた。僕は子供の頃から自分の存在証明をリリーに見出して生きてきたのだ。リリーがいなければ僕など無に等しい。

闇にうずくまり今までの人生を振り返る。与えられた環境を受け入れるしかなかった子供の頃と違って、他と比べられる今振り返れば、なんと運に見放されていたかと思う。だけど僕はリリーに会えた。夢も希望も温もりも、リリーという灯火の中に生まれたものだ。苦しみも悲しみも惨めさも、リリーがいれば乗り越えられた。けれど支えてくれたリリーはもういない。

暗闇の中で一人自分の存在を確認するには、闇を生みだす闇の魔術を操るしかない。幼い頃に地下室で、ハエを落として自分の存在を確かめたように。その時だけ僕は暗闇に打ち勝つ力を持つことができた。幼い頃から魅了され、僕の支えでもあった闇の魔術。それは様々な姿をなし常に変わり続ける永遠の力。多くの首を持つ怪物のように、1つの首が切り落とされるたびに、さらに強い別の首をもたげ、絶えることがない。暗闇で僕に寄り添い、手にすれば力を与えてくれる。

闇の魔術を極めれば、僕はこの暗闇の中で再び生きる力を得られるはずだ。再び立ち上がることができるはずだ。リリーのいない人生に意味があるのかわからないけれど。

次の日も、その次の日も、僕は真面目に勉強して、スリザリンの仲間と話したりしたけれど、そんなふうに過ごす自分を他の誰かのように感じていた。いつも気だるく、すべてがどうでもよいことのように思われた。眠れない夜は杖に明りを灯して闇の魔術の本を読み、放課後には雪が積もった林に行って小動物に術を掛けてみる。今はもうそんなときだけが、僕を僕と感じられる時間だった。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター リリー

セブルスとルシウスの物語(20)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


6年生の新学期が始まってホグワーツに戻った。新入生の組分け、校長先生の話、それに続く食事会。大ホールでいつもと同じ新学年の行事が進み、いつもと同じように僕はグリフィンドール席のリリーに目を向けていたけれど、いつもと違ってリリーが僕のほうに視線を投げかけることはなかった。

リリーは決別を告げて、もう僕の事などかまわないんだ。あらためてそれを確認するようで、気持ちはひどく落ち込んでいるのに、イライラと気が立って体の中で何かが爆発しそうだった。

翌朝、下腹部の不快に目覚めると、僕は初めての夢精をしていた。うろたえて清浄呪文でシーツや下着を清めると、誰に知られたわけでもないのに恥ずかしくて顔が赤らみ、それから物悲しい気分になって、早朝のシャワールームで体を洗った。

ティーンエイジャーに起こる体の変化のことは知識としては知っている。同年代の男子が集まる寄宿生活で、この1、2年、周りにその気配は感じていたし、男同士、あけっぴろげにそんな話をするのも耳にはさんで、兆候すらないことに劣等感を感じたこともあったけれど、同時にそれを汚らわしいことだとも思っていた。

生々しい男の性は、暴力的で汚らわしい。意味がわからなかった子供の頃は、酒に酔った父さんが乱暴に母さんをベッドに押し倒すのをかいま見て怯えていたけれど、意味がわかってからは目を背け耳をふさぎたくなるほど醜悪に感じられた。強いられた行為の後の、母さんの虚ろな目。それは暴力で他を蹂躙し魂を奪う、野蛮な衝動だ。

僕の体内にもそんなものがあるのだと思うと、自分が穢れた気がした。父さんから受け継いだ汚らわしい血が僕にも流れている。

それから何度か夢精を体験した。自慰で夢精が避けられることは知っていたし、男子生徒の間ではオカズと称する雑誌や写真が密かに出回っていたけれど、魔女のヌードなんか面白くもなかった。

僕はリリー以外の魔女になんの興味もなかったし、つないだリリーの手の温もりは僕をこの上なく幸せな気持ちにしてくれたけど、リリーを抱きしめたりキスしたりそれ以上のことなんか、想像したこともない。想像することすら、冒涜に思われた。リリーは僕の魂に明りを灯してくれたただ一人の人。惨めなばかりだった幼い僕に与えられた、唯一の宝。穢すことなど許されない。僕も、他の誰も。ただ、リリーに優しく抱きしめられることを望む気持ちはあるような気がするけど。

だけど、こんなことを考えるのも無意味なのだ。リリーはもう僕とは友達ではないと言って去ってしまったのだから。思いがここに戻ると、寂しさと心もとなさと悔しさとで、すべてが空しくなる。毎日が寂しくて空しくてたまらないのに、時々体の中からつきあげるように起こる凶暴な衝動にいら立ちがつのった。

6年生ともなると、同学年の中でも、校庭のすみや林の木陰で抱き合っていたり、中には談話室でキスしている者もいた。男らしくて大人びたマルシベールはもう何人か付き合った女の子がいてあれこれと言っているし、相手もいないエイブリ―はマルシベールの話を芯から羨ましそうに聞いて自分もデートしたいと騒いでいる。彼らのそんな陽気な話が、僕が醜悪なイメージをもつ行為につながるものなのかと疑問ではあったけれど、どうであれ、僕には無縁の話だ。

僕は恋に浮つく周囲の雰囲気に心を閉ざして、いつもリリーの姿を追っていた。だけど、僕がどんなに見つめても、リリーは僕のほうを見てくれなかった。リリーの目にはもう、僕の姿は映らないようだった。リリーは、僕は僕の道を選びリリーはリリーの道を選んだのだと言っていたけれど、僕にリリーのいない道など考えられない。いつかまたリリーと同じ道を歩むためには、勉強を頑張り魔力を磨いて、優れた強い魔法使いになるしかないのだと思う。

寂しさを紛らわせ、リリーを取り戻す希望にすがり、そして体内にうごめく醜い衝動を忘れようと、僕はひたすら勉強に取り組んだ。OWLを終えた6年生の履修科目は少ないけれど、内容は高度で密度が濃い。中でも、リリーも得意で、2人でよく一緒に実験した思い出の詰まる魔法薬学には、魅入られるようにのめり込んだ。

フツフツと沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる水薬の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力。魔法薬は、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法でもある。

のめり込むうちに、母さんからもらった古い上級魔法薬学の教科書の一部は、違っていたり、もっと改善できるはずなのに、古い内容のままだと気がついた。授業もそれにしたがって行われている。僕は授業中や、あるいは先生に頼んで放課後に材料や設備を使わせてもらい、よりすぐれた調合や新しい発見を教科書に書き込んでいった。時には開発した新しい呪文もメモした。

以前ならリリーに話した内容も、話せない今はその寂しさを埋めるように、すべて事細かく教科書に書き残す。リリーに話すかわりのように、みっちり隙間なく書き込んだ、僕の分身のような教科書を、いつかリリーに見せることがあるかもしれない。魔法薬の大好きなリリーは、きっと目を輝かせて読んでくれると思う。セブの字は丁寧なのに読みにくいわねと微笑んでくれるかもしれない。

愛着のある教科書に、僕は『半純血のプリンス』と記名した。汚らわしい父さんの血ではなくて、母さんから受け継いだプリンス家の血を大切にする。その血に流れる魔力を極めてゆく決意を込めて。


それでも寂しさにたまらなくなったり、体の奥からの衝動にいら立つと、ポッターやブラックへの憎しみを募らせた。僕はもう、彼らから隠れたり、1人にならないように気をつけたりしない。そんな弱い者に甘んじることなく、彼らを見れば迷わず杖を向ける。悲しみや寂しさや恐れに負けないで、怒りと憎しみを込めると術の力も強まるようだった。

ポッターやブラックも、僕を見れば同じように杖を向けてきた。相変わらず彼らはすばしこくて、やり合ってケガをすることもあったけど、体の傷などたいしたことではない。むしろ体を痛めつけ、それに打ち勝つ強さを得ることが、リリーを取り戻す道のようにも思われた。

彼らが4人で計画的に攻撃してくることは少なくなっていった。もともとルーピンは攻撃してくるわけではなかったし、ペティグリューも腰巾着のようについて回るだけだったけれど、一度ペティグリューが出会いがしらのように僕に杖を向けてきたことがあって、それ以来向こうから僕を避けるようになった。

ペティグリューが偶然はち合わせた僕に杖を向けたのは、ちょうど僕もイラついていたときだったから受けて立った。ペティグリュー1人など僕の相手ではない。簡単に杖を飛ばしてやると、泣きだしそうな顔で喚いた。

「僕にひどいことしたら、ジェームスやシリウスが黙っていないからな、スニベルス!」

弱い者いじめはカスだと言ったリリーの言葉を思い出して、杖でいたぶりたい衝動をなんとか抑え込む。

「ポッターやブラックがおまえのことなどかまうと思っているのか?」

「もちろんだよ。僕たちは親友なんだから。」

「親友だと?本気でそう思っているのか?」

後ずさるペティグリューに追い打ちをかけた。

「傲慢なポッターとブラックは、おまえみたいな何の取り柄もないやつと友達でいてやる自分に酔っているだけだ。それに英雄がより引き立つからな。おまえだって、ほんとうはわかっているだろう?」

ペティグリューが何も言えずに顔を歪めたのを見ると、思い当たる節があったようだ。憂さ晴らしにはなったから、立ちすくむペティグリューを残して、僕はその場を去った。

自分でも、どうにも荒んでいると思う時もある。リリーといられたら、リリーが微笑みを向けてくれたら、僕は清められ、もっと穏やかな気持ちになれるのではないかと思ったけれど、かなうことではなかった。リリーのいない僕は、もう僕ではないような気がして、ひどく心細くなる。

リリー、僕を見て。

かなわぬ願いに、すがるように勉学に励み、挑むようにポッターたちと戦う。

そんな毎日の中で、スリザリンの仲間たちと過ごすのは、わずかながら慰めになった。たいていは難しい授業や大量の宿題に困り果てたマルシベールやエイブリ―に頼られて助けてあげるのだけど。そのうちたわいない世間話に興じたりもする。彼らといると、自分でもわかるほどにギスギスと思い詰めた気持ちが、少しだけ和らぐような気がした。

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター 半純血のプリンス リリー

セブルスとルシウスの物語(19)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

前日の失敗で少ししょげていたけど、次の日に公園に行くと、リリーが1人で来た。でも警戒するように僕を見ていたから、僕はリリーの前に行って、黙って手のひらを開いて見せた。人とうまく話すのは苦手だから。

手のひらの上で、花びらを開いたり閉じたりして見せる。それからふっと花を投げ出して、ゆらゆらと空を舞わせた。わずかに笑顔を見せて、リリーが手のひらを広げると、花は静かにリリーの手に乗った。僕はまた落ちていた花を拾って同じようにして、リリーも同じように花を受け取った。リリーの手のひらに3つ花が載った時、リリーが声をかけてくれた。

「あなたもあたしと同じことができるのね?」

「うん。僕たちは特別なんだ。魔法が使える。」

リリーが僕に笑いかけてくれて、僕は有頂天になった。それから僕たちは、高い木の上の花を呼び寄せて、それを空中に並べて環を作ったり、思いついたいろんな形に並べてみたりした。

そのうちにペチュニアが走って来て、リリーに、こんな子と話しちゃいけないとか言うのでむっとしたけれど、また昨日みたいになると嫌だから僕は黙っていた。するとリリーはペチュニアに向きなおって、きっぱりと言ってくれた。

「こんな子なんて言っちゃいけないわ、チュニー。お友達になったのよ。」

友達!僕を友達と言ってくれた!僕の初めての友達!

「あたし、リリー。この子は妹のペチュニア、チュニーよ。」

「僕、セブルス。」

僕は急に恥ずかしくなって、小さな声で言った。

「セブルス、セブね。また明日会おうね。」

そう言うとペチュニアに手を引かれてリリーは行ってしまい、僕はペチュニアなんかいなければいいのにと思ったけど、それでも僕の心にはリリーの笑顔がいっぱいに広がっていた。

家に向かう夕暮れの道、いつもと同じくすんだ街並みが、明るく輝いて見えた。リリーが僕に笑いかけてくれて、僕の世界は一変した。もう世界と僕を隔てる壁はない。赤や緑や、いろんな色のある世界の中で、僕はリリーと笑って話をする。

暗い地下室にも、ほんのりと温かい明りが灯ったようだった。灯りの中にはリリーの笑顔があった。緩やかなウェーブをえがく長い赤毛。僕に向かうアーモンド形の緑の瞳。

ベッドに入ってもずっとリリーの姿を辿っていた。リリーの笑顔を思うと僕の頬も自然に緩む。そんなふうになったのは初めてだ。初めてか、ずいぶん久しぶりで、前に笑うという表情が僕の顔に浮かんだことがあったのかさえ思い出せなかった。

「リリー、おやすみ。また明日。」

心の中でリリーに声をかけると、心の中のリリーが、おやすみ、セブ、また明日会おうね答えてくれた。明日が来るのが楽しみで、満たされた思いで眠りにつくのも、思い出す限りで初めてのことだった。


それからは毎日、学校が終わるのが待ちきれないくらいだった。その頃のリリーは魔法使いや魔法界のことをまったく知らなかった。マグルの家族とマグルの町で育ったのだからあたりまえだけど。

僕は母さんに聞いた話や、本で読んだことを、いろいろ話してあげた。リリーは驚いたり笑ったりしながら、僕の話を目を輝かせてきいてくれて、僕は少し得意になった。こんなふうに僕の話をききたがるのは、リリーが初めてだった。

ある日僕を見てリリーの顔が曇った。僕の顔に父さんに殴られた跡が残っていたからだ。僕は、こんなのしょっちゅうだから平気なんだと言ったけど、リリーは泣きそうな顔をして、僕の腫れた頬にそっと小さな手を当ててくれた。リリーの手のひらから、柔らかな温もりがじんわりと広がっていく。手を当ててもらうだけで、痛みが和らぐものだということを初めて知った。痛みとともに、抑え込んでいた悲しみや恐れや怒りも薄らいでいく。

それからリリーに尋ねられるまま、少しずつ、家の話もした。マグルの父さんが酒飲みで暴れること、父さんと母さんはケンカばかりしていること、僕も時々殴られること。学校の子たちやペチュニアならバカにしそうなそんなことも、リリーは辛そうにきいて心配してくれた。僕もリリーになら安心してそんな話ができた。リリーは世界でただ一人、僕を受け入れて、一緒に悲しんだり喜んだりしてくれる僕の友達だった。

リリーに誘われて、リリーの家に遊びに行ったこともある。ペチュニアは相変わらず僕たちのじゃまをしたけれど、リリーのお母さんはマグルなのに優しい人で、時々僕にお菓子やご飯をくれた。

うちの様子もマグルの学校も相変わらずだったけど、僕は幸せだった。僕にはリリーがいる。リリーと友達になって、僕は初めて生きている実感を持てた。僕のことを思い、かまってくれる人がいると思えるのは心強いことだった。僕にも生きている意味があるのだと思える。生きることには意味があるのだと思える。人生には喜びや楽しみや希望があって、僕を思ってくれる人がいれば、痛みや悲しみさえも和らぐものなのだ。そんなことを全部、僕はりりーにおしえてもらった。

リリー、今日は君に会えて嬉しかった。リリー、父さんにまた殴られた。リリー、本にこんな魔法がのってたよ。

リリーに会えた日も会えなかった日も、毎晩寝る前に、心の中のリリーに話しかけて、うなづいたり笑ったりしてくれるリリーにおやすみと言って寝る。僕の中にはたいせつなリリーの思い出がたくさん蓄えられゆき、僕が声をかけると様々な表情を返してくれた。リリーと出会う前、僕はどんなふうに眠りについていたのか、もう思いだせない。それは寝る前の歯磨きみたいな習慣になって、ホグワーツに入学してからもずっと続いている。

ホグワーツのことをリリーに教えてあげたのも僕だ。行ってから思えば、会話も少なくなっていた母さんから聞いただけの僕の知識など限られていたけれど、ききたがるリリーに知る限りのことを話してあげた。11歳の誕生日には魔法使いの子供にはホグワーツから手紙が来る。だけどマグル生まれのリリーの所には学校の先生が説明に来るんだと話すと、マグル生まれは何か違うのかと心配そうだった。僕は何も違わないと安心させてあげた。マグル生まれだって、リリーは特別だから。マグルのペチュニアはホグワーツに行けないというとリリーは少し悲しそうで、ペチュニアは口惜しそうに負け惜しみを言ってたけど、僕はいつも僕たちのじゃまをするペチュニアにいい気味だと思っていた。

ホグワーツ。ケンカばかりしている父さんと母さんの元を離れ、リリーと一緒にホグワーツに行ける日を、僕はどんなに楽しみにしていただろう。考えるだけで誇りと希望が胸に溢れ、明るい未来を信じていた。

それなのに。なぜこんなことになってしまったんだろう。

思いが現実に戻って、一気に気が滅入る。リリーとの思い出の温もりが、冷え冷えとした暗闇に変わる。リリーは僕から去ってしまったのだ。

リリーに決別を告げられ、そのまま夏休みに入っても、日がかわるたびにあきらめられず、僕は毎日公園に行った。目を閉じれば、手のひらに花を並べて笑いかけてくれた幼いリリーが見えたけど、その公園にリリーが現れることはもうなかった。

夜ごとリリーに話しかけても、心の中のリリーすら、もう僕に笑い返してくれることはない。ただ緩やかに流れる美しい赤毛の後ろ姿が、僕から遠ざかってゆく。

なぜこんなことになってしまったのだろう。

ホグワーツに向かう特急の中で、ポッターとブラックに絡まれたのが最初の翳だった。そして敵対する別々の寮に組分けられて。だけど、寮の違いにも、執拗なポッターたちの嫌がらせにも、リリーは毅然として立ち向かってくれた。人づきあいが苦手で友達もできなかった僕と違い、リリーはたくさんの新しい友達にかこまれる人気者になったけど、いつだって僕のことを気にかけて、僕とともにいてくれた。

それなのに。

そんなリリーに、僕は『穢れた血』などと叫んでしまった。許されない言葉だったのだ。屈辱を受けて、それをリリーに庇ってもらったとポッターに揶揄されて、照れくささと情けなさと悔しさで、わけがわからなくなって・・・

ポッターのせいだ。ポッターが僕を追い詰めて、リリーを僕から引き離した。それがあいつの狙いだったんだ。ポッターは僕を辱める一方で、リリーにデートしてくれたら術を解くなどと言っていた。甘やかされて傲慢な、英雄気取りの卑怯者。自分が人気者だと思いあがっている。

リリーだって、ポッターは嫌なヤツだと言っていた。あの時だって、ポッターに弱い者いじめのカスだと怒っていた。弱い者いじめの・・・

そうだ。僕が弱いから。弱いからポッターやブラックに追い詰められて、逆上してあんなことを口走り、リリーを傷つけてしまった。だからリリーが僕から去ってしまったんだ。僕がヤツらに辱められるような、弱い魔法使いだからこんなことになった。

ほんとうにそうなのかは、わからなかった。ほんとうは弱さなど関係なくて、ただ僕の言ったその言葉のせいなのかもしれなかった。けれど、そう思えば、強くなればリリーが戻ってくれると思うこともできる。たとえわずかな希望でも、すがらなければ耐えられない。幼い頃からずっと、リリーのくれた灯火だけを支えに生きてきたのだから。リリーがいなければ、また暗闇の中で一人、どこへ行けばよいかもわからずにうごめいているしかない。

魔力を磨き、強くなる。強くなれば、きっとリリーは戻ってくれる。

そう心に決めて、粉々になった思い出の欠片を心の中でかき集め、種火のようなリリーに呼びかけてみる。

リリー、リリー、、、

言葉が続かない。僕に言葉をくれたのだって、リリーだったのだから。それでも毎日繰り返すうち、なんとか小さな灯に語りかけることができるようになった。

「リリー、僕は強くなる。だからいつか、僕を許して。」


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tag : ハリーポッター リリー ポッター

セブルスとルシウスの物語(18)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


幼い頃の寄る辺ない寂しさの中で、リリーは僕が初めて見つけた灯りだった。子供の頃の記憶をたどると、リリーに出会うまで、僕はほとんど口をきいたことがない。

一番古い記憶は、父さんに殴られたことだ。まだ3歳か4歳くらいのことだったと思う。僕が何をしたのか思い出せないけど、僕は父さんに殴られて床に倒れてしまった。痛いよと泣き出す間もなく、恐ろしい形相でこちらに向かってくる父さんが見えた。僕に覆いかぶさってくる、大きな影。近づいてくる大きな手。僕はただ怖くて、手で顔を覆ってやめてと叫んだ。心の中で叫んだのか、声を出したのかはわからない。

その時、ガチャン!と、何かが壊れる大きな音がした。びっくりして顔を上げると、父さんは驚いたように目を見開いて、額に手をあてていた。その手を伝い流れる落ちる一筋の血。棚にあったビンが飛んで、父さんの頭にあたったのだった。父さんは手のひらについた血を見て、それから僕を睨みつけた。

「薄気味の悪いガキだ。この、、化け物が。」

吐き捨てるように言うと、僕から顔をそむけて家を出ていった。

おろおろと見ていた母さんが、僕に寄ってきて抱き起しながら、小さな声でつぶやいた。

「魔力の暴走だ。父さんは魔法が嫌いなのに。」

「まほう?」

僕にはなんのことか、わからなかった。わかったのは、もう少し大きくなってからだ。父さんがいない時に母さんが話してくれた。

セブルス、おまえは魔法使いなんだ。母さんは魔女なんだよ。」

そう言って母さんは杖を取り出して、台所に並んでいた鍋を浮かせて見せてくれた。空中を一回転して元の場所に戻った鍋を見て、僕は大喜びした。

「おまえもやってごらん?」

手渡された杖を持って、言われた通りに呪文を唱えると、鍋は一瞬宙に浮いた。戻した時にはがしゃんと音を立てたけど、母さんは満更でもない笑顔を浮かべて僕の頭を撫でてくれた。

「こんなに小さいのに上手いもんだ。だがね、セブルス

母さんは僕の手から杖をとって真面目な顔で僕に向かった。

「父さんはマグルだ。マグルっていうのは、魔法使いじゃない。魔法が使えないんだ。だから魔法を使うと怒る。父さんの前では絶対に、魔力を見せてはいけない。わかるね?」

僕はわからなかった。なんでこんな面白いことをやってはいけないんだろう?でも母さんにじっと目をのぞきこまれて、僕はうなづいき、それからは父さんの前では魔法を使わなかった。といってもそれまでだって使ったつもりはないのだけど。

記憶にある限り、父さんはいつも酔っぱらっていて、黙って酒を飲んでいたかと思うと、突然怒鳴ったり、僕や母さんを殴ったりするのだった。僕を見ると顔を歪めて目を背けるか、難癖をつけて殴る。

父さんと母さんはケンカばかりしていて、暴れる父さんにたまりかねた母さんが、一度杖を振って父さんを制したことがある。だけど、鎮まった父さんを見て術を解いたとたんに、ひどいことになった。訳のわからないことをわめきながら、父さんは床に倒した母さんに馬乗りになって殴りつけた。止めようとすがりついた僕は跳ね飛ばされて壁にぶつかり、泣きながらその光景を見ているしかなかった。

顔じゅう腫れあがって、黒いあざだらけになった母さんは、のろのろと体を起こした後も、座り込んだままずっと泣いていた。それから母さんは、僕が殴られても庇ってくれなくなった。僕と2人でいる時も、ため息ばかりついてぼんやりしていることが多くなった。そんなふうになる前は、父さんがいないすきに、家事魔法や魔法の絵本を見せてくれたこともあったのに。母さんの気を引くのもあきらめて、僕はいつも部屋の片隅で小さくなっていた。

そんなだったから、マグルの小学校に通うようになって、むしろほっとした。母さんから、マグルに魔法使いと知られないように、絶対に魔法を使ってはいけないと何度も言いきかされた。魔法など使って問題を起こしたら父さんがどんなに荒れるかわからない。大人しく学校に行っていれば、そこで給食が食べれるんだとも言われた。その頃にはもう、食事をもらえないこともあって、僕はいつもお腹をすかせていたから。

マグルの学校にもいいことはあった。毎日給食があるし、面白い授業もあった。字や言葉を覚えられたし、算数の計算が得意で、先生に褒められたこともある。

だけど、マグルの子供たちとはなじめなかった。

初めからとけこめなかったけど、ある日いつも着ているぶかぶかの服を笑われた。体の大きないじめっ子が、セブルスは体はガリガリの痩せっぽちのくせに服ばっかでかいなと、腕をギュッと掴んだ。殴られそうな気がして怖くなり、怯えた自分が口惜しくて、おまえの服もぶかぶかに膨らめばいいんだと念じたら、ほんとにいじめっ子の服が膨らみ始めた。どんどん膨らんでその子の体が服につられて浮き上がり、いい気味だと見ていた僕もはっと気づいた。これは魔力だ、魔法を使っちゃいけないんだ!あわてて念じるのをやめたら、その子はしぼんで床に落ちた。

立ち上がったいじめっ子は、泣きそうな顔で、おまえ、何したんだ、薄気味悪いヤツだと言い、周りで見ていた子供たちが後ずさりして僕から遠ざかっていった。それからみんなが僕のことを、薄気味悪いヤツと言って、近寄らなくなった。みんな、僕がいても、いないかのように振る舞うのだ。

終業時間になると、学校の門には迎えの母親たちが待っていた。嬉しそうに母親に飛びついて手をつないで帰る子や、名残惜しげに校庭で友達と話す子たちを見ながら、僕は一人で門を出る。

周りの世界と僕の間には、見えない壁があるみたいだった。僕から壁の向こうは見えるけど、向こうからは僕は見えないようだった。

それでも家に帰ると、外のほうがまだましだと思うようなことが起こる。ある日など、運悪く台所で食べ物を探していたら、酒に酔った父さんが帰ってきた。何が気に障ったのか父さんは怒鳴り出し、僕は地下室の物置に閉じ込められた。埃だらけの地下室で、天井のすみの小さな明りとりの窓から差し込んでいた日が落ちてしまうと、中は真っ暗になった。怖くなってどのくらい泣いていたかわからないけど、ようやく帰ってきた母さんが見つけてくれた。そして母さんは、父さんと顔をあわせないですむからと、魔法でその地下室をかたつけて簡易ベッドを置き、そこが僕の部屋になった。

明りとりの窓があるとはいえ、日が沈んでしまえば、あとは淀んだ空気を抜けて届く青白い月の光がわずかに差し込むばかり。新月や曇りの夜には、そのわずかな明りすら恋しかった。なじめない学校で口もきかずに一日を過ごし、家に帰れば暗がりにひざを抱えて朝を待つ。ただ一人、暗闇をうごめくような毎日。

初めのうちはそれでも母さんが声をかけてくれるかと待ったけど、やがて僕のことなど忘れたのだとあきらめた。母さんが使わなくなってしまってあった杖を持ちこんで、読みかじった呪文を唱えて杖を振るのが唯一の慰めだった。寂しさや恐れを押し殺し、怒りや憎しみを込めて杖を振ると術が効く。杖を向けて、地下室に住みついたハエを落としたり、蜘蛛を追いやると、その時だけ僕は大きな存在になれた。

学年が進むと、僕は家の周りを散歩して時間をつぶすことを覚えた。家にいるよりましだから。寂れた商店街や川べりの道を歩いて、ある日ブランコのある小さな公園を見つけた。その向こうは瀟洒な家が並び、僕のうちのあるスピナーズエンドよりずっと小奇麗な町だった。

そこで僕は、リリーに出会った。

もちろん、初めは名前も知らなくて、ただ女の子が2人遊んでいるのを、植栽の茂みの陰から見ていただけだ。そのうちの一人が、広げた両手をいっぱいに上げて、高い木の上に咲いている花を呼び寄せるのを見て、僕は息を飲んだ。

魔法だ!あの子は魔女だ!僕のように魔法が使える女の子!

その子から目が離せなかった。その子に会いたくて、次の日もまた次の日も、その公園に行った。様子をうかがううちに、その子の名前がリリーで、もう1人の女の子は妹のペチュニアとわかった。2人はいつもいっしょだったけど、ペチュニアは魔女ではなくて、魔法を使えるリリーのことを、薄気味悪いとか変な子とか、よく意地悪を言っていた。マグルはみんな同じだ。魔法使いをやっかんで、意地悪をする。

僕は魔女のリリーと友達になりたかった。友達になって、意地悪なマグルから守ってあげたい。でも友達になるといっても、どうしたらいいのかわからない。とにかく話しかけようと思っても、そんなことしたことないから、それすら難しくてしばらくはぐずぐずと見ているだけだった。

その日も、リリーとペチュニアはいつものようにブランコに乗っていた。リリーがブランコを大きく漕いで、一番高く上がったところで手を放して空に向かって飛んだ。そしてしばらく空中に留まってから静かに着地する。ペチュニアはリリーに、「そんなことしちゃダメ!ママがいけないって言ってた」とケチをつけていた。リリーはくすくすと笑って「私は大丈夫よ」と言い、それから僕が隠れていた茂みのすぐ近くの地面に落ちていた花を拾って、手のひらの上においてペチュニアに見せた。

花はリリーの手のひらで、花びらを開いたり閉じたりしていた。

ペチュニアは、やめて!とか、そんなことしちゃいけないんだとか言ってたけど、すぐあとで、羨ましそうに言った。

「どうやってやっているの?」

僕はがまんできなくなって、茂みから飛び出して叫んでしまった。

「わかりきったことじゃないか!」

2人の驚いた顔を見て、僕はすぐ後悔した。だけどペチュニアはブランコのほうに逃げたけど、リリーは毅然とした態度で僕に向かって立ち、たずねてきた。

「わかりきったことって何が?」

「僕は君が何だか知ってるよ。」

「どういうこと?」

「君は、、魔女なんだ。」

僕は物おじして、小さな声になった。

「そんなこと人に言うなんて、失礼よ。」

リリーはツンと顔を背けて、ペチュニアが逃げたブランコの所に行ってしまった。

「違うんだ!」

リリーが怒ってしまったかと、僕はあわてて追いかけた。だぶだぶの上着が風を含んで膨らむのがじゃまだったけど、そんなのかまっていられない。追いついた僕を、2人は並んで観察するように見ていた。僕はリリーに向かって言った。

「君はほんとにそうなんだ。魔女なんだ。悪いことじゃないよ。僕の母さんも魔女だし、僕も魔法使いだ。」

ペチュニアが意地悪な冷笑を浮かべて僕に言った。

「魔法使いですって!あたし、あなたが誰だか知ってる!スネイプってうちの子でしょ?」

それからリリーに向かって、バカにしたような口調で、川べりのスピナーズエンドにある家に住んでいるのだと伝えた。そしてまた僕に向かいなおして詰問した。

「なんであたしたちのこと、見張ってたの?」

僕はむっとして答えた。

「見張ってなんかいない。どっちにしろ、おまえのことなんか見張ったりしない。おまえはマグルだ。」

言い返した僕の口調にバカにされたと感じたのか、ペチュニアが甲高い声でもう帰ると言って、リリーも僕を睨みつけて帰っていってしまった。

去っていくリリーの背中を見つめながら、僕は後悔に立ちすくんでいた。こんなつもりじゃなかった。リリーと友達になりたかっただけなのに。どうして僕はそんな、他の子たちが当たり前にしていることがうまくできないんだろうと思う。ペチュニアがけんか腰だったせいだ。マグルはみんな意地悪だから。

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tag : ハリーポッター リリー セブルス

セブルスとルシウスの物語(17)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


OWL試験の最終日、最後の科目、闇の魔術に対する防衛術が終わった。最後の最後まで粘って間違えのない答えを書いたつもりだけど、終われば終わったで結果が気になるものだ。答案を提出して教室を出た後も、問題用紙を見ながら答えが正しかったか考えていた。湖のほとりの木陰に座って確認を終え、立ち上がって芝生に向かった時。

「スニベルス、うまく出来たか?」

ポッターの大声が聞こえた。即座にカバンを捨てて杖を振り上げようとしたけど。

「エクスぺリアームス!(武器よ去れ)」

ポッターが叫んで、僕の杖は背後に飛ばされてしまった。急いで杖をとろうと振り返ると。

「インペディダメンテ!(妨害せよ)」

吼えるように笑っていたブラックが叫んで、今度は僕の体が跳ね飛ばされた。周りにいた生徒たちがこちらを見て集まってきた。倒れたまま動けない僕に、ポッターブラックの嘲りの声を浴びせる。

「試験はどうだった、スニベリー?」

「こいつ、鼻を羊皮紙にくっつけてたぜ。」

「脂染みだらけの答案じゃ、先生も読めねえよな。」

いつの間にかペティグリューも来ていた。悔しくて、恥ずかしくて、でもまだ体が動かない。

「今に見てろ、今に、、」

僕が言うと、ブラックが突っかかってきた。

「何を見てろって?何をするつもりなんだ、スニベリー?鼻水でも引っかけるって?」

僕は言い返したり呪文を唱えたりしたけど、杖が離れていては効果がない。

「口が汚いぞ。」

ポッターが憎々しげに言って叫んだ。

「スコージファイ!(清めよ)」

呪文とともに僕の口からせっけんの泡が出てきた。息が詰まって、苦しい。咳きこんでいると。

「彼にかまわないで!」

リリーの声がした。

「元気かい、エバンス?」

打って変わって、かっこつけたポッターの声。

「彼にかまわないで。彼があなたに何をしたというの?」

「そうだな、、。それはむしろ、こいつが存在するって事自体がさ、わかるだろ?」

もったいぶって答えるポッターに、リリーが冷たく言い放った。

「ふざけてるつもりでしょうけど、でもポッター、あなたはただ傲慢で弱い者いじめのカスよ。彼にかまわないで。」

「エバンス、もし君が僕とデートしてくれるならやめるよ。どうだい?僕とつきあえよ。そうすれば古いお友達のスニベリーちゃんに、もう二度と杖は上げないでやるよ。」

ポッターがリリーに答えるうちに、妨害の呪いが解けてきたから僕は杖ににじり寄っていった。

「あなたと巨大イカのどっちかを選べと言われても、あなたとなんかデートしないわ。」

「残念だったな、ブロングズ」

ブラックが口をはさみながら僕のほうを振り返った。

「オイ!」

気づいたブラックが叫ぶ間もなく、僕はつかんだ杖をポッターに向けて呪いを放つ。セクタム・センブラ!(切り裂き呪文)。閃光が走り、ポッターの頬がパックリと切り裂かれ血がローブに滴った。振り返ったポッターが杖を向けて2度目の閃光が走る。

と、僕は踝から吊りあげられて、さかさまに宙に浮かんでいた。ローブの裾が腰から垂れて、顔を覆う。ポッターは僕の作った呪文を僕に掛けた!なんて卑怯な。

周囲からはやし立てる声やブラックたちの大きな嘲り笑うが聞こえて、僕は僕の姿、、空に逆さに吊られてローブが下がり、むき出しになった下半身、、、細い脚や、古びたパンツも露わに、、、そのなす術もない惨めで滑稽な姿が見えるようだった。みんなの前でこんな、、

「下ろしなさい!」

リリーの叫びに、この姿を、この姿で皆に笑われる僕を、今まさにリリーも見ているのだと、羞恥と屈辱で頭が爆発しそうだった。

「承知しました。」

ポッターの、わざとらしい丁寧な返事とともに、僕は地面に頭から落ちた。体を起こし裾を整えて、急いで杖を握る間もなく、ブラックにすかさず呪文を放たれた。

「ペトリフィカス・トータラス!(石になれ)」

僕の体は石のように固まって、また地面に転がった。

「彼にかまわないでと言っているでしょう!」

リリーが杖を取り出し、ポッターとブラックはそれを油断なく見ていた。

「ああ、エバンス、君に呪いをかけたくはないんだ。」

ポッターが真剣そうな声で言い。

「それなら呪いを解きなさい!」

リリーが叫ぶと、ポッターは深々とため息をついて術を解き、僕はようやく立ち上った。

「さあ、解いてやったよ。スニベルス、エバンスが居合わせてラッキーだったな、、」

僕はもう我慢ならなかった。大勢の前でポッターたちに辱められ、それも僕の作った術を僕に使う卑怯者にやりのめされて。こんな惨めで滑稽な姿をリリーに見られた恥ずかしさと、それをリリーにかばってもらう情けなさ。怒りと屈辱で、耐えられない。ポッターたちへの怒り、弱い自分への怒り、そして恥辱と屈辱でいっぱいになって。僕は叫んでいた。自分でも何を言ったかわからないままに。


「あんな汚らわしい、『穢れた血』の助けなんて、必要ない!」


僕は自分の口から出た言葉に茫然とした。リリーが瞬きをした。信じられないことをきいたというように。世界が僕の叫びに凍り、凍った世界にひび割れが走る。ガラス細工が粉々に崩れ落ちる寸前のような、一瞬の沈黙。

そしてリリーの、冷やかな声が響いた。

「いいわよ。これからはもう邪魔しないわ。それからスニベルス、私ならパンツを洗濯するわ。」

リリーの冷やかな怒りに、煮えたぎってわけがわからなくなっていた頭や体が、急激に温度を失った。

「エバンスに謝れ!」

えらそうに言って僕に杖を向けるポッターに腹立ちすら感じない。

ただ、たいへんなことをしてしまったと、取り返しのつかないことを口走ったと、その思いに立ちすくむ。僕に向けられたリリーの冷やかな怒りが、冷たい青い焔のように僕を焼き尽くした。僕の世界が崩れ落ち、粉々に壊れていく。

「あなたからスネイプに謝れなんて言ってほしくないわ!あなたもスネイプと同罪よ!」

リリーがポッターに向かって叫んだ。何か言い返したポッターに、リリーは何か激しく言い募り、それからくるりと背を向けて足早に去っていった。ポッターが呼びとめても、振り返りもせずに。

再び閃光が走り、僕はまた、さかさまに宙に吊りあげられた。

「誰か、僕がスニベリーのパンツ脱がせるのを見たいやつ、いるか?」

憎たらしいポッターの声も、それに応えたはやし声も、その後に起こったことすらも、どこか現実味を欠いた遠い世界の出来事のようだった。

リリーが僕から去っていった。僕がそうさせてしまった。僕がリリーを傷つけて、リリーが僕から去ってゆく。

地面に落とされて、のろのろとローブの裾を直す。ポッターたちも周りにいた聴衆も、いつの間にかいなくなっていた。気がつくとマルシベールとエイブリ―に助け起こされて、スリザリン寮に戻っていた。

寮の寝室のベッドに腰掛けて、ずっと考えていた。なぜ、あんなことを口走ってしまったんだろう。いくら怒りと屈辱でわけがわからなくなっても、それをリリーにぶつけてしまうなんて。ただ一人、僕をかばってくれたリリー。いつだって僕の味方でいてくれたただ一人の友達。たいせつな僕の宝。失うことはできない。リリーを失ったら僕は、、僕はどうしたらいいんだろう。どうしても、謝って許してもらわなければ。

夜も遅くなっていたけれど、僕はグリフィンドール塔に行って、リリーを呼んでもらった。何度も断られたけど、呼んでくれるまで朝まで待つと言うと、ようやくパジャマ姿のリリーが入口に来てくれた。

「ごめん。」

「聞きたくないわ。」

「許してくれ。」

「言うだけ無駄よ。」

腕組みをして立つリリーは、取り付くしまもない。

「メアリーが、あなたがここで夜明かしすると脅していると言うから来ただけよ。」

「その通りだ。そうしたかもしれない。僕はけっして君を『穢れた血』なんて呼ぶつもりはなかった、ただ、、」

「口が滑ったと言うの?」

リリーの声は冷やかだった。冷たくて、むしろ哀しげに聞こえた。

「もう遅すぎるわ。私は何年もあなたをかばってきた。私の友達は誰も、どうして私があなたと口をきくのかさえ理解できないのよ。あなたやあなたの大切なデスイーターの友達が、、、ほら、否定もしないわね!あなたたちがみんな、それになろうとしていることを否定もしない!例のあの人の一味になるのが待ちきれないのね。」

僕は何か言おうとしたけど、何をどう言えばいいのかわからなくて言葉がでない。

「私はもう偽ることはできないわ。あなたはあなたの道を選んだし、私は私の道を選んだのよ。」

「お願いだ、きいてくれ。僕はけっして、、」

「私を『穢れた血』と呼ぶつもりはなかった?でも、セブルス、あなたは私と同じ生まれの人みんなを『穢れた血』と呼んでいるわ。どうして私だけが違うと言えるの?」

僕はなんとか、何か言おうとした。どうして僕の口はうまく動いてくれないんだろう。気持ちを伝えるにはどうしたらいいんだ。

言葉を探してもがく僕を、リリーは軽蔑したように見て、くるりと背を向けて塔の中に戻って行ってしまった。

僕はそれでもなお閉じた入口に向かって何度かリリーと呼びかけていたけれど。

「もう戻ってこないよ。早くお帰り。わたしはもう眠いのよ。」

太ったレディの肖像画に促されて、僕はとぼとぼとスリザリン寮の自室に戻った。

暗い部屋のベッドの上にひざを抱えて座る。リリーは僕を許してくれなかった。もう友達ではないと言って、去ってしまった。

ポッターやブラックが僕を追い詰めたせいだと憎しみがこみ上げる。ポッターはこんなふうにしたくて、わざとリリーの前で僕を辱めたんだ!

だけどそんなふうに思えるのは一瞬で、でもあの言葉をリリーに投げつけてしまったのは僕なのだと思う。その直前まで、リリーは一人僕をかばって、ポッターやブラックに対峙していてくれたのだから。追い詰められて動転し、屈辱のあまりあんなことを口走った僕が悪いのだ。もしやつらに追い詰められなければ、もし僕がもっと強かったら。リリーのことを『穢れた血』なんて思ったこともないのに。誰よりも清らかで美しい人だと思っているのに。

何度も同じ思いを巡らせるうちに、少しずつただ一つの事実だけが胸に沁みてゆく。リリーを失ったのだという耐え難い事実。もうリリーは許してくれないのだという耐え難い悲しみ。

スピナーズエンドの暗い部屋の片隅で、一人ひざを抱えて座っているように感じられた。リリーと会う前、明りも温もりもない薄闇に、ポツンと取り残されたように座っていた幼い頃のように。

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tag : ハリーポッター ポッター ブラック リリー

セブルスとルシウスの物語(16)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


暴れ柳事件の後、僕はリリーポッターが僕を救った英雄だなどという嘘の話を信じてしまうんじゃないかと心配で、間違っていたら正さなきゃと思っていたけれど、いざリリーに会えると、その話をどう切り出せばいいのかわからなかった。ルーピンが人狼だという事実は言えないし、その真実を伏せたまま、ポッターは直前になって自分たちの身を守ろうとしただけの、ずる賢い卑怯者だと説明することは難しい。

リリーも、僕がその話を嫌がると思っているのか、あえて事件の話は出してこない。それでなんとなくスリザリンの友達の話をするうちに、リリーの機嫌が悪くなった。リリーは寮の違いに縛られるなんておかしいと言ってたし、そんなことに囚われず、ずっと僕たちは友達だったのに、最近はスリザリンの友達の話や闇の魔術の話をするといら立ちを見せることがある。これもグリフィンドールの影響だと僕は腹立たしく思う。

機嫌を損ねたリリーが「もう行かなきゃ」と先に歩き出してしまった。追いかけて話すうちに、中庭に着く頃には言い争いのようになってしまった。僕はリリーとケンカなんかしたくない。ただ子供の頃からずっとそうだったように、仲の良い友達でいたいだけなのに。

「僕たち友達だと思ってたんだけど、、親友だって。」

「そうよ、セブ。でも私、あなたが一緒にいる人たちのうちの何人かが嫌いなの。悪いけど、エイブリ―とかマルシベールとか。マルシベールなんて!セブ、彼のどこがいいの?ぞっとするわ!この間あの人がメリー・マクドナルドに何をしようとしたか、知っているの?」

リリーは柱に近づいて寄りかかり、僕を見返すように言った。メリー・マクドナルドっていうのはグリフィンドールの気の強い女の子だ。要領の悪いエイブリ―をバカにしているのを見たマルシベールが、マグルのサルに木登りさせてやると言って、服従の術の亜流の術をかけようとした。

「あんなの何でもない。ちょっとした冗談だよ、、」

「あれは、闇の魔術よ。あなたが、あれを冗談だなんて思うなら、、」

たしかに服従の術の亜流だから闇の魔術だけど、やらせようとしたのは木登りだ。ケガをさせたり酷い目にあわせたりするもんじゃない。グリフィンドールは闇の魔術をなんでもかんでも邪悪と決めつけるけど、それは使いようによる。木登りさせるなんて、そんなのは彼らのやることに比べたらなんでもない。僕なんてもっとずっと酷い目にあってる。この間なんて人狼に襲われそうになった。それは闇の魔術じゃないからいいのかと思ったら頭に血が上った。

「じゃあポッターと仲間たちがやってることはどうなんだよ。」

ポッターが何の関係があるの?」

「ヤツらは夜こっそり出歩いてる。ルーピンなんて怪しいじゃないか。あいつ、いつもどこに行ってるんだよ?」

「彼は病気なのよ。病気だってみんな言ってる。」

「毎月、満月のときに?」

「あなたが何を言いたいかわかるわ。」

リリーが冷やかに言った。

「でも、どうしてあの人たちにそうこだわるの?彼らが夜出歩いているのが、なぜ気になるの?」

僕も少し冷静になる。人狼ことは言ってはいけないんだ。言ったらたいへんなことになる。だけど、これだけは。

「僕はただ、彼らはみんなが思ってるほど素晴らしいわけじゃないって、君に言いたかっただけなんだ。」

僕があまりに強くいったせいか、リリーが少し顔を赤らめて、声を落として言った。

「でも、あの人たちは闇の魔術は使わないわ。それにあなた恩知らずよ。この間の夜何があったか聞いたわ。あなた、暴れ柳のトンネルを下りていって、そこに何がいたのか知らないけど、ジェームス・ポッターがあなたを救ったって、、、」

「救った?救ったって?」

僕はかっとなった。リリーまでがそんな。リリーにだけは。

「君はあいつが英雄だと思っているのか!ヤツは自分と仲間を救っただけだ!君にはそんなことさせない、僕は君にそんなことは、、」

「私に何をさせないっていうの?」

リリーが緑の目を細めた、、リリーを怒らせてしまった。

「そういうつもりじゃないんだ、、僕はただ、君が騙されるのを見たくない。あいつは、ジェームス・ポッターは君が好きなんだ。」

リリーが怒っているのを見て動転して、自分でも何を言っているのかわからなくなった。

「だけどあいつは違うんだ。みんなが思ってるような、、クィディッチのすごいヒーローとかじゃなくて、、」

リリーが眉を吊り上げて、僕の言葉を遮った。

「ジェームス・ポッターが傲慢で嫌なヤツだってことは知ってるわ。でも、、、」

リリーはわかってる!ポッターなんかをすごいなんて思ってない。あいつのことなんか、嫌いなんだ。それを聞けただけで、僕は安心して嬉しくなった。他の誰がどう思おうと、リリーがわかっていてくれるならそれでいい。

リリーはまだ何か言っていたようだけど、僕はもうきいていなかった。ジェームス・ポッターは傲慢で嫌なヤツだと、リリーが言ったその言葉を、頭の中で何度も繰り返す。再び並んで歩きながら、久しぶりに僕は心が弾んでいた。


リリーがポッターの上辺に騙されていないのはほっとしたけど、あんな酷い事件の後で、しかも一応校長先生もブラックに罰を与えたと言ったにもかかわらず、ポッターやブラックに反省の気配はなく、嫌がらせはむしろいっそう酷くなった。僕のことを殺しかけても事実上お咎めなしとわかったのだから、彼らが図に乗るのは当然といえば当然だった。

ポッターやブラックは相変わらずの人気者で皆にちやほやされ、傲慢でいい気になったポッターが女の子たちの目を意識してスニッチを放り投げたり、わざとらしく髪をくしゃくしゃとして見せたりするのを見かけるといっそう腹立たしかったけど、リリーはあんな上面に騙されはしないんだと思えるのが心の支えだった。

そして僕は相変わらずトイレとか林とか、気をつけていても突然姿を現す彼らに、人目につかないように痛めつけられたり辱められたりした。彼らがどうやって僕がいる場所を知り、どうやって突然姿を現すのか、僕にはわからない。ただ、マルフォイ家やマルシベール家に古くから伝わる秘密の魔法があるように、旧い名家のブラック家やポッター家にも何か秘密の術や品があるのだろうと口惜しく思うだけだった。

もう先生たちの助けがあてにならないのは明らかだから、自分で何とかするしかない。僕は友達、、といってもリリーを除けばマルシベールやエイブリ―しかいないけど、、とできるだけ一緒にいるようにして、一方で父さんの暴力を封じようと考えていた新しい呪文を仕上げることにした。ポッターたちをやっつけられるように。

呪文の開発は面白くて、始めると目的すら忘れて没頭してしまう。図書館で呪文のもとになるラテン語を調べたり、林でウサギや野ねすみに術を掛けてみたりしながら、正確でより効果的な呪文を仕上げていった。ちょっと違うだけで、全然違う魔法になってしまうし、効き目も違う。呪文の開発はとても精密な作業なのだ。精魂込めて作り上げ、そして出来上がれば人に試してみたくなる。

僕はマルシベールとエイブリ―を林に誘って、実験台になってもらった。僕が杖を上げて術を掛けると、、、エイブリ―の足の踝が吊りあげられて、体が宙吊りになった。成功だ!

すぐに反対呪文で下ろしてあげたエイブリ―と見ていたマルシベールが、これはすごいと興奮していた。レビコーパスという術だけど、念のため無言呪文にしてある。掛けられた相手は、何の術かもわからないうちに宙吊りにされるわけだ。面白がって教えてとねだる彼らに、ポッターたちがいないか辺りを確認した上で、こっそりと呪文を教えてあげた。いつかヤツらにこの術を掛けてやる。知らない術を掛けられて慌てふためく彼らを思い描き、密かに溜飲を下げていた。

だけど、いつの間にかこのレビコーパスの呪文は生徒の間で大流行になった。誰か見ていた者がいたのか、あるいはエイブリ―たちがどこかでやったのを見られて広がったのかわからないけど。あちこちで、突然誰かが踝から吊りあげられては笑いの輪ができる。たいていは仲間同士が冗談でやっているようだった。精根込めて生み出した僕の魔法が、軽々しく冗談のように扱われるのは口惜しくもある。それでも皆が夢中になる術を作り出したのは僕なんだと誇りにも感じて、僕はますます新しい呪文の創作に熱中した。


嫌がらせを受けたり、それに対抗する術を考えるうちに春が過ぎ、初夏の気配が漂い始める頃になると、学年末のOWL試験のことで頭がいっぱいになった。5年の終わりにあるOWL試験は、その結果次第で6年以降に受けられる上級授業が決まる。それは将来の職業にもつながるもので、魔法界に何のつてもコネもない僕には未来を開く唯一つの道だ。マルフォイ先輩が目を掛けてくれるのだって僕の魔力を評価してくれるのであって、成績が悪ければがっかりされてしまう。失敗は許されない。なんとしても、よい成績をとりたいと思う。

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tag : ハリーポッター リリー ポッター ブラック マルシベール

セブルスとルシウスの物語(15)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


去年から陰湿さを増していたポッターたちの嫌がらせは、もはや我慢ならないものになった。夏休みが終わってやっとホグワーツに戻れたというのに、そのホグワーツで僕は日々、彼らを警戒していなければならない。そして一瞬の油断から、酷い目にあい、耐え難い屈辱を受ける。彼らは卑怯にも、手下2人を従えた4人がかりで、僕が1人でいる時を狙うのだ。

彼らのしつこい嫌がらせの影に、リリーと僕の友情を引き裂こうとする意図が露わに見られるようになったのも不安だった。1年生の初めから、彼らは僕とリリーが親しいのが気に入らないのはわかっていた。リリーは頭の良い美少女で人気者だから、そのグリフィンドールの人気者とスリザリンが友達なのが口惜しいんだろうと思っていた。だけど今はそれだけじゃなくて、ポッターリリーに気があって、僕との仲を裂いて奪おうとしている。僕をいじめて、追い出そうとしているんだ。

リリーがグリフィンドールに染まって、スリザリンや闇の魔術を批判するのも、不安に拍車をかけた。

僕は、口にすることすらできぬほどに屈辱的なことはのぞいて、先生に訴えてみようかと考えてみた。実際、僕から訴えるまでもなく、ケガばかりしている事情を尋ねられ、彼らの仕業だと伝えたこともある。だけど、ヤツらは僕への嫌がらせだけでなく、『魔法いたずら仕掛け人』と名乗って、人の迷惑になる悪戯や規則破りばかりしているのに、なぜか形ばかりの罰則を受けるだけだった。

彼らの悪行の餌食になることが多いスリザリンでは、校長先生がグリフィンドール出身だから、ひいきして罰が甘いんだと言っている。校長先生も、グリフィンドールの寮監のマクゴナガル先生も、『悪戯が過ぎる困った子たち』と言うばかりで、被害にあっている者を助けてくれることはなかった。まして仲間の一人のルーピンをグリフィンドールの監督生にするくらいだから、本気で彼らの悪行を抑えようとしているとは思えない。

4対1では術でも負けてしまうし、先生たちも公正に対処してくれない。それに陰ではあんな陰険なヤツらなのに、相変わらずクィディッチのヒーローとして校内きっての人気者だった。このままではリリーとの友情を引き裂かれ、僕がやっと見つけた唯一の家、ホグワーツにさえも、僕の居場所はなくなってしまう。

僕は追い詰められていた。

何か、彼らをひいきする先生たちでも、おざなりの罰ですませられないような何かを掴み、彼らをホグワーツから追い出すしかない。そうでなければ彼らは僕を追い出すまでいじめぬくつもりなのだ。

僕は用心する一方で、何か糸口がないかと彼らの動向をうかがっているうちに、妙なことに気がついた。4人揃って姿が消える時があるのだ。夕刻頃にルーピンの姿が消え、しばらくすると、ポッター、ブラック、ペティグリューも姿を消す。翌日にはルーピンが授業を休むこともある。彼らは夜中に何かしているのだ。甘やかされていい気になって、許されないほどの規則破りをしているに違いない。

その証拠をつかめればと、ある日の放課後、1人敷地のはずれに向かうルーピンの後をつけると、ルーピンは暴れ柳の木の根元に消えていった。後を追おうとしたけれど、柳が暴れて近づけない。やがて3人が来るはずだと物影から見張っていると、辺りが暗くなる頃に、ブラック1人が現れて、根元のこぶを抑えた。すると、驚いたことに、暴れ柳はすっと鎮まった。

ブラックが立ち去るのを確認して、僕は柳に近づきその根元のこぶを杖で抑えてみた。すると動きを止めた柳の根元に、人1人通れるほどの穴があり、奥へと通路が続いていた。ヤツらはこの通路を抜けて、どこかへ行っていたのだ。これで証拠をつかめると、僕は迷わず中に入っていった。

これでヤツらを追い出せる!逸る気持ちを抑えながら通路を進むと、奥に扉が見えた。扉ののぞき窓に近づくと、中の薄暗がりに青白い月の光が差し込むのが見えて、、、

「逃げて!早く逃げて!」

切羽詰まったルーピンの声がして、のぞき窓の向こうでルーピンの姿が変わってゆくのが見えた。

人狼だ!

思った時にはガタガタと扉の揺れる音がして、間近に凶暴な気配が近付いていた。逃げなきゃ、思うのだけど強張った体が思うように動かない。

その時、誰かが後ろから走ってきた。

スネイプ!走れ!逃げるんだ!」

叫び声に導かれて夢中で走り、外に出ると、隣にポッターが立っていた。

はめられたのだとすぐにわかった。ブラックは僕を人狼のルーピンに襲わせようと、わざと暴れ柳の動きを止めて見せたのだ。彼らは僕を、人狼に食わせる気だったのだ。

呼ばれて校長室に向かいながら、これだけのことをしたのだから、彼らは退学処分になると確信していた。僕は命の危機と引き換えに、彼らをホグワーツから追い出すことができるのだ。いくらグリフィンドールびいきの校長先生でも、人狼に人を襲わせようとした生徒を許すはずはない。

けれど。

「ミスター・スネイプ、ジェームスから報告を受けたが、無事でよかったの。ジェームスの助けが間に合って、何よりじゃった。」

僕は耳を疑った。

ポッターが僕を助けたと言うのですか?彼らは仲間で図って、僕を人狼に殺させようとしたんです!」

ダンブルドア先生は眉をしかめた。

「これはシリウスが単独で暴走したことじゃ。直前でそれに気づいたジェームスが直ちに君を救いに向かったから事なきを得た。」

「ポッターとブラックはいつも一緒に悪だくみをしているんです。今回に限ってブラック単独などということは、、」

「しかし、実際ジェームスは君を助けたじゃろう?」

「ずる賢いポッターは、直前になって自分たちもまずいことになると気がついたんでしょう。ヤツらはいつだって4人でなければ僕を攻撃してこない!」

僕は今までの幾度もの耐え難い嫌がらせを思い、興奮して言い募った。

「4人と?では君はリーマスも一緒になってこれを計画したと言うのかね?」

「ルーピンは危険な人狼です!」

「リーマスが人狼だということはわかっておる。それを知った上で校長のわしが入学を許可したのじゃ。他の生徒に危害を加えんように、暴れ柳を植えて変身中は隔離しておった。リーマスも大人しくそこに籠って耐えておったのに、君がわざわざ入っていったのじゃ。」

「ですがそれはブラックにはめられて。」

「もちろん、シリウスには相応の罰が必要じゃ。」

「退学処分にしてください!ブラックも、ポッターも。僕は殺されるところだったんです。」

「処分を決めるのは校長のわしじゃ。君が口を出すことではない。そして君はこのことを口外しないと約束せねばならん。そうでなければ、わしは君を退学させねばならん。」

「なぜ?・・・なぜ被害にあった僕が退学になるのです?僕の何が悪いと?」

「被害にあったというが、幸い君はケガもしなかった。しかし君が騒ぎたててシリウスを退学させれば、どういうことになるか考えんのか?」

「ブラックが退学になるのは当然の処分でしょう?ブラックだけでなくポッターだって、、」

「わしはリーマスのことを言っておるのじゃ。」

ルーピン。いつもポッターたちに従って、嫌がらせの見張りをするか、気弱そうに目を逸らし、見て見ぬふりを決め込む卑怯者。そして醜い獣に変わり、僕を襲おうとした恐ろしい怪物だ。だけど、、僕に気づき「逃げて!早く逃げて!」と血を吐くような悲鳴を上げながら、留まる術もなく獣に変わっていった、、、

「人を襲いかけたと公けになれば、リーマスは処分される。魔法使いに死刑は適用されんが、人狼であれば殺処分じゃ。君はケガもしておらんのに、恨みを晴らすために、リーマスを殺せと言っておるのも同然じゃ。そのような生徒をホグワーツには置いておけん。忘却術をかける手もあるが、一時しのぎにはなっても同じことを繰り返すじゃろうからの。」 

黙ってしまった僕にダメ押しをするように先生は続けた。

「リーマスはこのことに一切関わっておらん。人を襲うのを何より恐れておるのが他ならぬリーマス本人じゃ。可哀そうに、5歳のときに人狼に噛まれて以来、満月の夜は隔離された場所で、自分自身を傷つけておる。それなのに、自らその場所に近づいた君が騒ぎたてれば、殺されるか、運良く殺処分を免れても行く当てもないのに学校を去ることになるのじゃ。わしはそんなことは許さん。わかるかの、ミスター・スネイプ?」

僕だって、学校を追われれば行くところはない、、、

「わかりました。口外しないと約束します。ですがブラックには相応しい厳罰を。」

「わかっておる。シリウスにはすでに罰を与えた。もし君がわしとの約束を破れば、相応の罰を受けることを忘れてはならぬぞ。」

脅しともとれる一言を最後に、僕は解放された。

公けにならぬはずのその事件は、数日のうちに、何者かに襲われそうになった僕をポッターが助けたという話になって広がっていた。ポッターはもちろん、ブラックさえも、たいした罰を受けたふうでもない。むしろポッターは、グリフィンドールとスリザリンの仲の悪さにも関わらず、自らの危険を顧みず僕の命を救った勇敢なヒーローだと評されていた。

ひどく理不尽な話だ。しかも、校長先生との約束を破って僕が真実を明かせば、ルーピンが殺され、僕が退学処分になるだけなのだ。世の中は不公平にできていて、僕に対してフェアであったことなどないけれど、これは酷過ぎると思う。

周囲は仲の悪い僕とポッターたちに何があったのか好奇心を隠さなかった。真実を話すことはできないから、僕はことさらに不機嫌そうにして、質問されるのを避けていた。他の誰がどう思おうとあきらめるけど。僕は、グリフィンドール寮にいるリリーが、この歪められた話を信じるのではないかと不安でならなかった。リリーまでも、ポッターに騙されてポッターを英雄だと思い、僕をバカな弱虫だと思うんじゃないか?いてもたってもいられない思いだった。

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tag : ハリーポッター ポッター リリー スネイプ ルーピン

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