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セブルスとルシウスの物語(27)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


7月も半ばにさしかかる頃、ルシウスが明日は出かけて留守にすると言い出した。この夏にホグワーツを卒業した人たちがデスイーターに加わる儀式があって、ルシウスもそれに同席するらしい。夜には彼らと、この前来た在校生たちも招いて屋敷で祝賀会を催すから、僕も一緒に参加するように言われた。

考えてみればもう半月も、何をするのも2人で一緒という生活をしていたことになる。僕にとっては大きな出来事があって、思考停止に陥っていたとはいえ、いつまでも屋敷に世話になっているのも図々しすぎる気がした。ルシウスと離れるのは寂しいけど、そろそろ屋敷を辞するべきかもしれない。

「じゃあ、僕も明日家に帰ります。夜にはまた祝賀会で。」

そう言うと、いきなりルシウスに肩を掴まれて驚いた。

「父親のいる家に戻るというのか?」

ルシウスは明らかに怒っていた。たしかに父さんのいるあの家に帰るのは気が進まないけど、ルシウスが先にこんなふうに怒ってくれると、かえって何でもないことのように思えてくる。

「夏休みの初めから、もう何日も泊めてもらってるから、そろそろ帰らないと。」

「家に帰ることなどない。夏休みはここにいて、ホグワーツに戻ればよいのだ。ついてきなさい。」

あとを着いていくと、廊下の奥のゲストルームに招き入れられた。ルシウスの寝室よりははるかに小さいけれど、ベッドとソファセットと机が置かれ、バスルームもついたきれいな部屋だ。

「私の部屋で落ち着かぬなら、この部屋を使えばよい。足りない物があるなら買いそろえよう。」

ありがたいけど、そこまで甘えていいんだろうか?身に不相応な気がして躊躇っていると。

「必要な物があるなら明日家に行って持って来なさい。とにかく、殴るような父親のいる家にいることは許さぬ。」

ルシウスの剣幕に押されて、そういうことになった。

翌日、出かけるルシウスと一緒に屋敷を出て、スピナーズエンドにアパレートした。休みの度に、帰宅が憂鬱だった荒れ果てた家。辛いことばかりが思い出される。

家に入ると、父さんと母さんが食事の後の残るテーブルに、できるだけ離れて互いにそっぽを向いて座っていた。どんよりとした雰囲気の中で、それでも母さんが僕に気づいて立ち上がった。

セブルス、帰ってきたのか?」

母さんはこんなに小さかったのだろうか?肩ぐらいの高さから、僕を見上げて尋ねてきた。

「ああ。夏休みは友達の家に泊まる。荷物をとって、すぐ行くよ。」

「友達って、あの女の子かい?」

リリーのことだ。突然胸に痛みが走り、急いで首を横に振った。

「マルフォイ先輩の家。」

「マルフォイって、あのマルフォイ家か?おまえはマルフォイの坊ちゃんに気に入られたのか?それはよかった。たいしたものだ、セブルス。」

母さんは笑って、何度もうなづきながら言った。母さんの笑顔なんて、前に見たのはいつだったろう?いつの間に、こんなにしわだらけになったんだと思う。それに、曲がりなりにも笑顔になれるということは、やっぱり僕がいないほうが2人の争いも少ないのかもしれない。

ちらりと父さんに目をやると、苦々しそうに目をそらして横を向いた。父さんを見ると、いつも怯えと怒りが湧いたものだけど、今日は怒りも怯えもしなかった。昨日ルシウスが先に憤ってくれたからだ。それに、大人になった僕はもう父さんなんか怖くない。父さんはただの、薄汚れたマグルの中年男だ。

僕は地下室の自分の部屋に行き、本と少しばかりの荷物をまとめた。ルシウスの部屋のベッドほどのサイズしかない、小さな部屋。孤独と怯えが詰まった、今までの僕のような暗い部屋。幼い頃の自分への感傷を捨てて、僕はこの部屋を出る。もう二度と戻らない。僕はこれからルシウスのもとで、未来に向かって歩いていく。

ぼんやりと見送る母さんに、少しだけ笑って見せて、僕はその家を去った。


夜になると、マルフォイ邸には、新しくデスイーターになった卒業生たちやホグワーツの生徒たちが集まった。ルシウスと同年代の先輩たちも何人か来て、活気に溢れている。シャンパンが配られて、ルシウスが乾杯の音頭をとった。

「新しきデスイーターとダークロードに。」

皆復唱しながらグラスを掲げる。誰かが続けて叫んだ。

「ルシウスに。」

皆も続いて言うと、ルシウスは再びグラスを掲げ、笑ってそれに応えていた。血筋も外貌も魔力も、それに加えてリーダーシップも、ルシウスはほんとに完璧だと誇らしい気持ちになる。あの素晴らしい人が僕に、、、などと考えに耽ると仲間たちの前で頬が緩みそうになるので、頬と気を引き締めた。今日は新しくデスイーターになった先輩たちの祝賀会なんだ。

乾杯が終わると、あとは適当に飲み食いしながらの談笑になった。スリザリン寮の親しい者ばかりの集まりだから、堅苦しいことはない。僕もマルシベールやエイブリ―たちと一緒に、1年上の先輩たちの話に加わった。デスイーターになったばかりの先輩たちは、興奮気味にダークロードを称え、ダークロードが進める純血支配の世に貢献するのだと熱く語っていた。自信と夢に溢れた姿は、夏休み前までの生徒然とした雰囲気とは違う、力強さに満ちていた。

ダークロードは闇の魔術に優れた素晴らしい魔法使いらしい。儀式では、捕えてあったマグルを相手に、目にもとまらぬほどの素早い正確な磔の術を見せてくれたそうだ。知られていない闇の魔術をたくさん知っていて、自分で創作した術もあるという。デスイーターとして手柄を立てれば、それらを伝授してくれることもあるそうで、僕は羨ましく聞いていた。学校では闇の魔術をそう深く教えてくれるわけではないし、本を読んでの独学では限りがある。マルフォイの屋敷でも闇の品を見せてもらったけれど、底知れぬ闇の魔術について僕の知らないことはまだたくさんあり、誰より優れた闇の魔法使いに直接学べるのなら、すごいことだと思う。

先輩たちは、闇の勢力が目指す世についても話していた。それは、純血主義を進めてマグルを排除し、魔法界の秩序を回復する。さらに、マグル界から魔法使いが隠れて住む現状を改め、優れた魔法族がマグル界を支配する世に正す。そのために必要なことを、デスイーターが中心になってやっていくのだそうだ。魔法界内部ではすでに闇の勢力が優勢を得ていて、あと少しで制覇するところまできているらしい。

話に時々混じる『穢れた血』という言葉には、リリーとの決別を思い出して胸が痛んだけれど、それを除けば、すべて素晴らしいことに思えた。最高の闇の魔術を学べることも、優れた魔法族が支配して秩序だった世を造ることも。さらに、ダークロードは能力や闇の魔術の実力を公正に評価してくれる人らしい。

僕もデスイーターになって、優れた闇の魔法使いになりたいと思った。そうすればルシウスの身近にいて助けることもできるし、強くなった僕をリリーが見直して、また友達に戻れるかもしれない。それに僕が理不尽に虐げられてきた世を変えることにもなる。

周りの同級生たちも先輩の話に感銘を受けたようで、皆口々に自分もデスイーターになりたいと言っていた。先輩たちが、頑張れよ、一緒にやろうぜとか言って盛り上がっていると、あちこちを回っていたらしいルシウスがやって来て話に加わった。

「どうだ?みな、楽しんでいるか?」

「はい、先輩。俺たちもデスイーターになりたいです。ダークロードに推薦してください。」

マルシベールが答えると、他の同級生たちも、自分もお願いしますと頭を下げた。

「もちろんだ。今日は私がこれはと思う者に集まってもらっている。だが気を抜かずに努力するのだぞ。」

皆がやったぜと喜びあう中、ルシウスが僕の肩に手を回してきた。

セブルス、おまえもなりたいか?」

顔を覗きこむように聞かれて、みんなの前でとちょっと恥ずかしく思いながら、大きくうなづいた。

「はい、僕もなりたいです。」

みんな興奮しているし、ルシウスがペットを可愛がるこんな光景も見慣れたものなのか、僕が気にするほどにはほとんどの仲間たちは気にも留めてなさそうだったけど。だけどマルシベールはウィンクしてきたし、ルシウスと同年代の上級生は思わせぶりな視線を送ってきた。何かあったと、わかる人にはわかるんだろう。気恥ずかしいけど、嬉しい気もする。

「おまえは特別だ、セヴィ。皆より先にダークロードに話しておくからな。」

ルシウスは僕の耳元で囁くように言うと、愉しそうに笑いながら次のグループへと移っていった。

夜も更けて会がお開きとなり、帰る皆を見送ると、ルシウスに着いてゲストルームに行った。

「今夜はおまえの部屋に泊まる。」

僕の部屋と言っても、ルシウスの家の客間だけど。部屋に入ると、机の脇に、昨日はなかった長テーブルがあり、煮焚きができるようになっていた。壁にはガラス棚が設えてある。

「おまえのことだから魔法薬を作ったりもしたいだろう?明日は鍋や薬材を買いに行こう。おまえの部屋だから好きなように変えてよいのだぞ。」

「ありがとうございます。でもそんなにしていただいて、、」

言い終わらないうちに抱きしめられていた。スピナーズエンドや仲間たちといる時は、前よりずっと大人になった気分でいたけれど、ルシウスと2人になると甘ったれた子供のような気持ちになってしまう。狭いベッドだと言いながら寝息を立て始めたルシウスの腕の中で、僕は心の中のリリーに話しかけた。

リリー、僕は変わった。子供の頃の惨めだった家を出て、新しい部屋ができた。立派なデスイーターになるという目標も見つけたよ。優れた強い魔法使いになったら、君も戻って来てくれるだろう?話したいことがたくさんあるんだ。

気恥ずかしいけど、ルシウスとのことだって話したい。誰だって、恋人ができたら、親友に話したいに決まっている。僕は自分のことを、リリーに知っていてもらいたい。見ていてもらいたい。子供の頃からずっとそうしていたように。そうすることで安心できるし、自信もつく。

話したいことがありすぎて、ぼんやりと現れたリリーの表情を見る間もなく、眠りに落ちてしまった。

それからは、ルシウスと買い物に行ったり、どちらかの部屋で一緒にくつろいだり、マルフォイ家所蔵の魔法の品々や貴重な本を見せてもらったりして過ごした。ルシウスもデスイーターとしての活動や他の用事で出かけることが多くなって、ルシウスがいない時は、ゲストルームの『僕の部屋』で、宿題や魔法薬の実験や魔術の研究をしたり、本を読んだりしていた。2週間に1度くらいずつ仲間が集まって、闇の魔術の練習会もあった。

こうして、去年までとはまるで違う、充実した夏休みが過ぎていった。


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tag : ハリーポッター セブルス ルシウス

モネ・ゲームとハリーポッター展

モネ・ゲーム(現代Gambit)、早速見に行ってしまいました。
今日はレディースデーだったので、こういうとき自由業は堪えがききません。

しかし六本木ヒルズに着くと、TOHOシネマズを見つける前に
こんなものが目に入りました↓

ハリーポッター展

ハリーポッター展。
映画で使われた物が展示されるようで、これも行きたくなってしまいます~
先生のローブもあるのかな?
ルシウスの杖とかも?

で、映画『モネ・ゲーム』、面白かったです^^

イギリスの億万長者シャバンダー(アラン・リックマン)のもとで働くカタブツ美術鑑定士ハリー(コリン・ファース)が、日頃の仕打ちの仕返しに、テキサスのカウガール=カウボーイの女版PJ(キャメロン・ディアス)と組んで、モネの絵の贋作詐欺を企んだが、、、っていうお話です。

気軽に楽しめるコメディで、周りでも笑い声が漏れてました^^



以下感想です。ちょっとだけネタに触れてます。

続きを読む »

tag : モネ・ゲーム アラン・リックマン ハリーポッター展

映画モネ・ゲーム

妄想物語がちょうどこんな展開のとこでアレなんですが、
映画の先生、アラン・リックマンさん出演の『モネ・ゲーム』が公開になりましたね♪

上映劇場が少なくて便利なとこがないのでどうしようかと思いつつ、
やっぱり見に行きたいな~。
久しぶりに六本木ヒルズ(TOHOシネマ)に行こうかなと思ってるとこです。

こんなシーンもあるみたいで^^;
もちろん、まったく別物だと理解してますがね、
セブ in 妄想 は17歳ですから^^;

モネゲーム


『ハリーポッター』映画の最終作を見た後は、
幸せなスネイプ先生を求めて『いつか晴れた日に』を見たものです。

初めは映画のストーリーそっちのけで、
アラン・スネイプの幸せに、よかったねー先生、とか思って涙しましたが、
ちゃんと見るとほのぼのとしたよい映画です^^

いつか晴れた日に

私は本より映画を先に見たので、
登場人物のイメージが、かなり映画の俳優さんで出来上がってます。
みんなよかったですが、特にスネイプ先生のリックマンさんには感謝です^^

画像はどちらも拝借しました。
クリックすると大きくなります。


セブルスとルシウスの物語(26)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


洗面室のバスローブを着て外に出ると、窓を開け広げたテラスに朝食の用意がしてあった。どこか別の浴室でシャワーをすませたらしい先輩もバスローブを羽織って戻ってきた。夏の木漏れ日の下で先輩と2人、こじんまりとした丸テーブルに向かい合ってとる朝食。広いダイニングルームでの食事とはまた違う親しみを感じる。

昨日の夜と今朝のあれこれを思うと、気恥ずかしさと甘ったれた気分が交互に湧きあがって落ち着かないけれど、先輩はいつもと変わらぬ落ち着いた様子で、僕ばかりが自意識過剰のようだ。ちらちらと見ると、先輩は物を食す姿さえ優雅で美しく、育ちがよいというのはこういうことなのだと見惚れてしまう。先輩の目に僕はどう映るかなどと考え出すと、トーストをかじるのさえぎこちなくなってしまった。

朝食が終わると、屋敷妖精がテーブルの上をかたつけて、コーヒーを置いて出ていった。何度めかカップを口元に運んで、ふと先輩と目が合うと、先輩は立ち上がって僕の背後から両肩に手をかけた。その手に導かれるように、部屋に入りベッドに横たわる。

「もう怖くないな?」

問いかけにうなづくと、唇が重ねられた。バスローブの帯がほどかれ、胸元からはだけられてゆく。先輩もバスローブを脱ぎ捨てて、ゆっくりと体を重ねてきた。温かい肌の温もり。唇から耳、首筋へとなぞるように這う唇の感触。胸から腹、その下へと、手のひらや指先の繊細な刺激が、秘められた官能を一つ一つ呼び覚ましてゆく。初めて知る湧き上がるような欲望に、抑えきれぬうめきが漏れ、身をよじる。

背後から抱きかかえられ、潤滑剤でやわらげられた体にゆっくりと押し入られるかすかな痛みと愉悦にあえぐと、耳元で先輩の少しかすれた声が聞こえた。

「セヴィ、目を開けてこちらを見なさい。」

うっすらと開けた目に映る美しい横顔が、欲情にわずかに歪んでいる。腰からまわされた先輩の手が僕を握ると、もう訳もわからず体が動き出した。耳元にかかる吐息さえも僕を突き動かす。動いているのか、動かされているのか、もうわからない。

「セヴィ、名を呼べ。」

「せんぱい、、」

ルシウスと。」

ルシウス、、、ルシウスルシウス!!」

愛おしい名を何度も叫び、僕は果てた。

ぐったりと横たわる僕の横で、杖で汚れを清めてくれた先輩が、堪えの効かぬヤツだとか、危うく置き去りにされるところだったとか、聞こえよがしにぼやいていたのをみると、それはあっという間のことだったらしい。急に恥ずかしくなって下を向くと、先輩が腕枕で抱き寄せてくれた。温かい、というよりまだ熱の残る体に包まれて、さっき起きたばかりだからこのまま眠りにつけないのが残念な気がする。

ちらりと先輩の顔をのぞき見ると、目があってしまった。僕はその目にどんな姿を曝したのかと思うと恥ずかしくてたまらないけれど、魅入られたように目を逸らすこともできない。

「おまえは、私のものだ。」

先輩の声に、うなづいた。

「私だけのものだ。」

力強く抱きしめられて、僕はもう一度、大きくうなづいた。温もりも、温もりに身を委ねる勇気も、初めての快楽も、先輩が与えてくれた。

「先輩」

呼んで抱きしめると、名を呼べ、私にはルシウスという名があるのだと言われた。

ルシウス

「セヴィ」

名前を呼び合うそれだけのことがすごく嬉しくて、くすくすと笑いだすと、おかしなヤツだと呆れられた。

僕はほんとにおかしくなってしまったみたいだ。だけど、先輩、いやルシウス、僕はこうして抱かれていると、信じられないくらい幸せに感じる。僕は人に触れられるのが苦手だった。慣れないから苦手なのだと思っていたけど、ほんとは怖かったんだ。殴るか、突き放すか、人はそういうものだといつも身構えていた。ホグワーツに入学した日、何気なく肩に触れた先輩の手に、僕は緊張して体が震える思いだった。それが今、体の中にあなたを受け入れ、隙間もないほど身を寄せて、たわいもないことに笑っている。

ルシウス、僕はあなたのものだ。僕はいつもあなたの元にあり、もしあなたがその冷やかな功利主義で僕を切り捨てる日がきたとしても、、、それは思うだけで胸を裂く痛みが走るけれど、、、それでも昨日から今この時までにあなたが与えてくれたものを、僕は決して忘れない。僕に奇蹟のような癒しを与えてくれた、あなた自身気づいているかも定かでない、温もりで包むような優しさを、湧きあがる感謝の念とともに、決して忘れることはない。


その日の夜も、翌日も、そのまた翌日も、僕は何度もルシウスに抱かれた。庭の散歩をしていたかと思うと芝生に押し倒されていたり、ソファで本を読んでいたつもりが膝に乗せられていたり、部屋に入ったかと思うと壁に押し付けられて身動きもとれぬままのたうっていた。

ベッドの上ともなれば、想像もつかなかった恥ずかしいことをされたり、させられたり、体の奥からこれでもかというほどの快楽に突き上げられて、もはや愉悦なのか苦痛なのかわからぬままに叫んで、やっと解き放たれる。思うままに弄び、得られる限りの快楽をむさぼるスタイルは、日ごろのルシウスらしくも思われた。

数日が過ぎる頃には、初めてのときに、ルシウスがいかに僕の低いレベルにあわせてくれていたのかを思い知った。そして破壊的といえるほどの、性愛の持つ力も。

とにかく、それ以外のことが考えられなくて思考が停止してしまう。ちょっとした会話の中に生まれる喜びや、一瞬の仕草や表情に感じるときめき。そういった、以前ならそれだけですごくたいせつに思われたようなことが、すべて欲望への刺激に変わり、体には様々な痴態や与えられた快楽の記憶が蘇る。欲望や快楽に身を任せると、他の全てはとるに足らぬ小さなことになり果ててしまいそうな、体の交わりはそんな力を持っていると思う。

それはそれで素晴らしいことだけれど、だからこそ、初めての夜に垣間見たルシウスの泣きたくなるような優しさが、この上なく尊いものに思われる。僕が無様に曝した惨めな傷と、たぶんそれに触発されて現れた、思いがけないルシウスの優しさ。握り締めてくれた手の、欲望を介さない、心を溶かすような温もり。激しい性の快楽の前ではかき消えてしまいそうな頼りないものだけど、昂ぶりから解き放たれて体を寄せる一瞬に僕はそれを思うし、果てた後の吐息とともに僕を見るルシウスの瞳の奥にかすかな労わりが混じる。

あれ以来どちらも口にすることはないけれど、心の奥の、弱くてやわらかい大切なものが結びあった絆を、ルシウスも感じていると僕は信じている。


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tag : ハリーポッター ルシウス セブルス

セブルスとルシウスの物語(25)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ふと目が覚めると辺りはまだ暗く、見上げると仄暗いランプの光にぼんやりと広い天井が見えた。そして肌に伝わる温もりと寝息に気づき、一瞬動転した後、昨夜のことが急速に頭に蘇る。僕はあのまま、先輩に抱きついて眠ってしまったんだ・・・

先輩の部屋の鏡の前で、先輩が僕の肩を抱いてゆっくりと顔を近付けて来た時、これから何が起こるのか予感した。それは思いがけないことのようでもあり、当然のことのようにも思え、とにかく何の抵抗も感じずに、すべてを任せるつもりになった。僕は一人で思い詰めることに疲れ果てていたし、恥ずかしさと恐れとで少し緊張したけれど、もとから憧れていた先輩が受け止めてくれるなら何の文句もない。

それなのに、なぜ突然に父さんのことなど思い出してしまったんだろう。壁に殴り飛ばされて、さらに近付いてくる父さんの影に怯えた子供の頃の古い記憶が現れて、それからはもう訳がわからなくなってしまった。苦い思いで何度も思い出したことはあるのに、あんなふうに、まるであの時に戻ったように錯乱したのは初めてだった。

理由を考えてみれば、体に触れられて緊張したうえに、たぶん、リリーが去って、慰めも支えもなかった幼い頃の心境に戻ってしまっていたからだと思う。だけど、よりによってあのタイミングで、先輩の前で、あんな醜態をさらすなんて。

僕の魔力を認めてくれた先輩に、貧しさも混血も隠しようはなかったけれど、親に虐待され見捨てられた惨めな姿は知られたくないと思っていた。知られれば軽蔑されると思っていたから。

でも実際は、、、。ずっと僕の手を握り締めていてくれた手の感触が戻る。先輩が手を握り、話しかけていてくれなかったら、僕は幼い頃に戻って父さんの影におびえ続けたままだったと思う。そしてその後抱き寄せてくれた大きな胸の温かさ、、、それはそのままここにある。

確かめるように先輩の胸にそっと身を寄せて、だけどその温もりは僕を不安にさせた。僕はこんな温かさに慣れていない。肌の温もりも、それが伝える心を溶かすような安らぎも、リリーの手のひら以外感じたことがないのだから。

この優しい温もりに身も心も委ねてしまったのだと思うと、僕はひどく無防備で頼りない気持ちになった。身を覆う服もなく、頑なに隠し続けた心の秘密も曝し、優しく抱かれて、僕はどうしてよいのかわからない。それに、先輩には憧れていたけれど、僕の知っている先輩は、温もりで人を包み込むような優しさのある人ではなかった。むしろ僕にもわかりやすい、先輩の冷やかとも言える功利主義を信頼していたのだ。先輩は、僕の魔力を評価して目をかけてくれた。それは僕の魔力が役に立つからだ。だから僕は魔力を磨けばよい。他人からペットやおもちゃと嘲られようが、先輩の態度に面白がってからかうふうが見られようが、魔力を認めてくれる先輩の功利主義に安心していられたのだ。

反して、優しさや温もりなどというものは、漠然としてわかりにくい。慣れていないせいかその本質がわからないし、なぜ与えられるのか、いつ何がきっかけて消えたり敵意にかわるのかもわからない、掴みどころのないものだ。ただ一つ信じ、心の拠り所としていたリリーの温もりさえも、僕を置き去りにした。その後の、底の見えぬ闇に飲み込まれたような虚無と孤独。

それなのに今、思いがけず手にした温もりは手放し難かった。こんな定かでないものに心を許してしまったら、僕はどうなるんだろう?僕は僕でいられるのか?失ってしまったら、どうなってしまうのか?僕はひどく混乱した。優しい温もりに包まれて、僕は幸せなのか、それとも地の底に続く縁に立っているんだろうか?

リリー

自分があまりに頼りなく感じられて、心の中のリリーに、思わず呼びかけていた。もう心の中でさえ、リリーは僕に背を向けるだけとあきらめて数カ月が過ぎたのに。

だけど思いがけず、リリーの顔が現れた。もちろん、僕の問いかけに答えてはくれない。それでも、リリーが僕を見ていてくれる。僕は瞬時に悟った。リリーは僕の魂の一部なのだと。幼い頃の孤独や怯えの中で、まともに育てなかったのか、あるいは傷ついて欠けてしまった僕の魂を、リリーが補い形づけてくれていたのだった。心にリリーが戻ってくれたのだから、大丈夫なのだ。完全な魂があれば、委ねた身と心が溶けてしまおうとも、あるいは打ち捨てられて壊れようとも、僕は僕でいられる。寄って立つ魂があれば、温もりを信じる勇気が出る。

リリー、僕は幸せなのかな?

心の中のリリーに尋ねると、緑の瞳が僕を見返す。そうだ。それは僕が決めることなんだ。

リリー、僕は今、幸せだよ。

リリーに言うと、なんだか安心した。安心して先輩の胸に顔を埋めると、心臓の音が聞こえた。温もりを生みだす規則正しい心臓の拍動。惨めな思いを無様に曝した僕のことを受け止めて、僕の魂にリリーを蘇らせてくれた温もりの源。

僕には見えていなかったけれど、先輩の中には、確かに温かい優しさがあったのだと思える。その温もりを信じる勇気を持てたことが嬉しかった。心地よい拍動に身を任せて、僕はまた眠ってしまったらしい。


次に目が覚めると、広い窓のレースのカーテン越しに、やわらかい木漏れ日が差しこんでいた。静かに体を動かして、まだ眠っている先輩の顔を眺める。木漏れ日のせいか、いつもよりわずかに和らいだ寝顔が輝いて見えて、僕はこの冷たくて温かい、美しい人が好きなんだと思う。心を奪われるということは、心もとないけど、なんて幸せなことだろう。この美しい唇が、昨日僕の唇に触れた・・・。その艶めかしい感触をたどった瞬間、体の芯が固さを増した。

うわっ、まずい!羞恥に顔が熱くなる。恥ずかしいし、それに、昨夜の錯乱ぶりを思えば気まずすぎる体の反応だ。僕は先輩が目覚めぬよう願いながらじりじりと体を離し、頭の中で必死に魔法薬の作り方を考えた。と、

「セヴィ、何をしている?」

こんなささやかな願いさえも叶わないと運命を呪う暇もなく、離れかけた体を抱き寄せられた。へだてる布切れ一枚もない。

「昨夜はずいぶん心配させられたのだが、今朝はなんと元気なことだ。」

面白がっているのがわかる声だった。いつもの、僕が知ってる先輩だ。そのまま先輩の体の上に抱きあげられた。密着が増して、さらにまずいことになった上に、たぶん赤くなっている熱い顔も先輩のすぐ目の前にある。恥ずかしくて居たたまれない。いっそこのまま奪ってほしい・・・

「すみません、、先輩、、」

「困っているようだな。そういう時はな、セヴィ、魔法薬の作り方でも考えて気をそらすのだ。」

「・・・さっきからそうしてるんですが。」

「ほお。それでも私への欲情を抑えられぬというのか?」

頭の中で、さっきから作っていた魔法薬が爆発した。焦る僕の顔を先輩は楽しそうにのぞきこんでいる。

「抱いてほしいか?」

そんな直截的な聞き方はやめてください先輩と思いながら、観念してうなづくと。

「ふん。抱いてなどやらぬ。おまえは昨日、私がどれだけ心を尽くして準備をしていたか、わかっているのか?」

はい、わかっています、たぶん。ごめんなさい。

「それをおまえは、朝起きて私の寝顔を見たら勃起したから抱けという。」

そ、そんなこと、言ってません。

「これは私たちの初夜なのだ、セヴィ。おまえにとっては初めてのことだろう?そのように安易に済ますわけにはゆかぬ。」

いじめられているのか、だいじにされているのか、まったくわからない。困っていると先輩が笑い出して、いじめられていたのだとわかった。

「そこの浴室で水シャワーでも浴びてきなさい。それが済んだら朝食だ。」

ようやく解放されて、裸のまま逃げるように部屋の奥に続く浴室に走ると、先輩の声が追いかけてきた。

「私の寝顔で欲情したのだから私がもらう。自慰はならぬぞ。」

上品な先輩の口から発せられるそういった言葉が、ほんとにその意味を持つその言葉なのかと一瞬考えてしまう。浴室に駆け込んで、言われた通り水シャワーを浴び、ようやく体が鎮まってホッとした。先輩、人が悪いよと独り言で文句を言ったけれど、いつものように僕をからかいながらも、僕が再び怯えることがないように、覆いかぶさることは避けて体の上に抱きあげたのだと思い至り、その労わりに心が和んだ。

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tag : ハリーポッター セブルス ルシウス リリー

妄想の中の恋愛と性的描写についてのご注意

【ご注意】

『出遅れハリポタ語り』の妄想物語には、バイセクシュアル(もしかしたらホモセクシュアル)な人々が登場します。したがって、同性間の恋愛や、まれに性行為の描写が含まれますので、苦手な方はスルーしてください。また、現実と妄想の区別がつかない方はご遠慮ください。

↓↓↓

【言い訳混じりの説明】

読者が多くはないといえ、誰が見るかわからないblogに性行為の描写が含まれる投稿を書くにあたり、何らかの注意書きが必要だと思いましたが、どのように書こうかというところでハタと行き詰りました。

『BL的・女性向け』という表現を考え、すでにこれまでの投稿にも使用しましたが、あらためて考えると、管理人がそれをよく理解できていないこと、ネットでざっと見た範囲でも、異性愛の擬似的なものとして同性愛を扱かうという解釈があり、実際に同性愛者がいることを考えると表現に抵抗を覚えました。あくまで、自分がそういう表現を使うことについてです。

性描写が含まれる投稿のみに『同性間の性行為描写あり』の注意書きをつけることも考え、すでにそれもしていますが、物語のかなりの部分がそれを前提として進むため、そもそも同性間の恋愛に抵抗のある人やそういうものを子供に読ませたくない人にはそれなりの注意が必要かと思いまして。

結果、上部の注意を妄想物語全体に付すことにします。


妄想なんだから、こんな面倒なこと考えずに楽しみたいという方は、この投稿は気にしないで楽しんでください。またBL的、女性向けという表現に対する管理人の理解不足で不快感を与えてしまったらごめんなさい。ご容赦ください。

管理人にはゲイカップル(男同士も女同志も)の友人がおりまして、当然のことながら、彼ら・彼女らのパートナーに対する思いは、相手に対する憧れや思いやり、不満、時に感じる劣等感ややきもちなど、異性間カップルとそう違うものではないごく自然な感情です。また、一部ですが、子供の頃の性的虐待やレイプの被害者もおり、実際に社会の偏見に苦労しているゲイたちがいることを考えると、同性間の恋愛を妄想の世界だけのことのように、自分が書くのには違和感が生じました。妄想なのであまりリアル社会に引き比べて考えるのもどうかとは思いますが。

これらのことをつらつらと考え、原作者のローリングさんもダンブルドアはゲイだと公言していることから、みんなバイで行こうヨ♪ということにしました。恋して結ばれた相手がたまたま同性であったということで、縁があれば異性の恋人と結ばれたかもしれません。

セブルスとルシウスの物語(24)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


今日はセブルスを抱く。極上の快楽を与え、人並みはずれた闇の魔力と私だけに捧げられる忠心を、完璧にこの手の内に握るのだ。

セブルスには何年も目をかけてきたのに、イースター以来何に気をとられているのか、この私にさえ心ここにあらずの風を見せる。しかしそれも今日限りのこと。明日の朝になれば、その黒い瞳には私の姿しか映らぬはずだ。デスイーターに引き入れれば、優れた闇の魔術の使い手と、ダークロードの覚えもめでたいだろう。そして私の頭脳として腕として、存分な働きをさせる。欲望と野心がともに満たされる楽しい夜になりそうだとほくそ笑んだ。

準備は万端。全ては私の思い通りに進んでいる。脱がす気になる服を着せ、美酒に酔わせて寝室に導いた。まわした腕の中で茫然と立ちすくむセブルスに唇を寄せると、驚いたように見開いていた目が静かに閉じられた。待っていたのかと思うと、体の芯が昂ぶった。

ワインの香りの残る唇を十分に味わい、唇を首筋へと這わせながら、きっちりととめられたボタンを一つ、また一つとはずしてゆく。そのために選んだシャツなのだ。はだけた胸元の青白い肌は、滑るようになめらかだった。脱がせたシャツが足元に落ちても、セブルスは頬をわずかに赤らめてうつむいただけで、抵抗はない。露わになった華奢な体を抱きしめて、そのままベッドに運び、横たえた。ベッドのふちに腰掛けて、残る着衣を剥ぎとっても、セブルスはされるに任せている。任せきった態度が、可愛らしくはあるが、物足りなくもある。

まるで人形のようだ。これではつまらぬ。さんざん弄んでのたうちまわらせてやると、体の上に身をかがめて近付いた、その瞬間。

「やめて!!僕に、触るな!」

突然の叫び。耳を疑う悲鳴を上げて、セブルスの形相が恐怖に歪んだ。驚いて体を起こすと、セブルスは頭を抱え、横向きに丸めた体を震わせながら、また叫んだ。

「やめろ!近づくな!あっちに行け!」

部屋の隅で調度がガタガタと揺れ始めた。魔力の暴走だ。しかし、なぜ?

「セブルス、どうしたのだ?」

驚いて尋ねながら、私は胸の奥がひどく痛むのを感じた。

私に触れるな!汚らわしい!

・・・耳の奥にかすかに響く、母上の叫び声。ベッドで休む母上にいつものように挨拶のキスをしようと体をかがめた幼い私に投げつけられた、突然の拒絶。突然の、嫌悪の爆発。

なぜ・・・?私が何をしたと?

「セブルス、突然、いったいどうしたというのだ?」

自分が傷ついていることに愕然としながら、セブルスの体に手をかけてこちらを向かせた。セブルスは頭を抱えたまま、涙をこぼし、なおも弱々しい声を上げる。

「やめて!殴らないで!お願いだから・・」

突然、あの時、訳もわからぬまま母上の部屋を出るべきではなかったのだという思いに襲われた。母上はそれきり戻ってこなかったのだから。二度と話すこともかなわず、母上は一人孤独のうちに死んでいった。

おまえは、あの男にそっくりだ!

憎々しげに私を睨んだ母上の顔。しかしあの時私は、メイドに促されるままに部屋を出るのではなく、母上の手を握り締めてやればよかったのだ。しっかりと手を握り、あなたが恨む父上に似ているかもしれないが、ボクは父上とは違う、ボクはあなたと共にいる、あなたのそばにいて守りたいのだと、言葉が届くかわからなくても言うべきだったのだ。なぜならそれは、拒絶の叫びではなく、孤独な魂が救いを求める悲鳴だったのだから。

私は母上を孤独に放置したことを、心の奥で悔いていたのだと、苦い思いがこみあげた。今この時まで、気づきもせずにきたのだが・・・。失いたくないならば、手を握り、放してはいけないのだ。

「セブルス、落ち着きなさい。」

涙にぬれた手をとって、何を見ているのかわからぬ瞳を見つめて語り続けた。

「落ち着いて、私を見るのだ、セブルス。おまえを殴る者などいない。怯えることはないのだ。」

セブルスはしゃくりあげていたが、ゆっくりと瞳に焦点が戻ってきた。覗き込む私の顔を不思議そうに見て。

「ここは、、、。僕は今何を・・?」

「落ち着いたか?どうしたのだ?何があったのか、話してみなさい。」

手を握り締めたまま尋ねると、しばらくの沈黙の後、セブルスはとぎれとぎれに話し出した。

「先輩が近付いて来た時、大きな影に覆われた気がして、そうしたら急に思い出した、、、。小さい頃、父さんが僕に掴みかかって、殴ろうとした。」

「父親に殴られたのか?」

セブルスはうなづきながら話し続けた。

「何度も。何度も、僕を殴って、、、母さんも殴って、、殴りつけて、、」

また興奮し始め、瞳が焦点を失った。

「汚らわしい!父さんなんか大嫌いだ!」

暴れ始めたセブルスの手を握る手に、力を込めた。

「セブルス、落ち着くのだ。ここに父親はいない。目をあけて私を見るのだ。」

虚ろな瞳が私を見て、焦点を結んだ。ようやく今いる場所に、戻ってきたように。

「あ、、、ごめんなさい、先輩、、」

「気にするな。幼い頃の出来事は、予想外の傷を残すものだ。」

セブルスは父親から虐待を受けていたのだ。覆いかぶさる影に、フラッシュバックが起きたのだろう。人に好まれぬ陰気さは虐待の故かもしれぬ。人になじまぬ無愛想な振る舞いも、幼い頃に身に付けた防御の術だったのか。そして、いつまでたっても大人びてこない未熟さは、まさか、、、。見たこともないその父親に憤りを感じた。

「汚らわしいと言っていたな。殴るほかにも、何かされたのか?」

「父さんは、母さんを殴りつけて、ひどいことを。馬乗りになって殴って、服を剥ぎとって、、」

そこまで言って、一糸まとわぬ自分の姿に気づいたらしく、顔を歪めて身を隠そうとした。その様が痛々しく、シーツで体を覆ってやった。

「おまえも母親と同じことをされたのか?」

静かに尋ねると、驚いたように首を横に振る。

「それはよかった。不幸中の幸いだ。」

セブルスはなんとか落ち着いたようだ。荒げていた息も鎮まった。

しかしこれでは、先に進めぬ。それはよかった、不幸中の幸いだと、さっさと抱くわけにいかぬではないか。昂ぶっていた欲望は、すっかり萎えていた。私らしくはないが、傷ついた子供をさらに傷つける気にはならなかった。完璧な夜の準備を整えて、すべて順調に進んでいたはずが、なぜこのようなことになるのか。そもそもセブルスが、母上を思い起こさせるようなバラの花など持ってきたせいで気弱になってしまったのだ。拘束術でもかけて、好きなようにすることもできたのだが。

だが、母上にすべきだったことを、セブルスにはしてやれた。私はこの傷ついた少年を、失いたくなかったのだ。幼い心が求めていたものを、与えてやりたいとさえ思う。そうすれば、極上の快楽など与えずとも、私もほしいものを手に入れられるはずだ。快楽など、あとからいくらでもついてくる。

握っていた手を放し、薄い胸に置いた。しばらくそうしていると、セブルスが問いかけるような瞳を向けてきた。

「温かいだろう?」

「はい。」

「性愛は本来、幼いおまえが目にしたような野蛮なものではない。この温もりを求めて人は抱き合うのだ。」

私は自分もシャツを脱ぎ、セブルスを怯えさせぬようゆっくりとシーツの中に滑り込んで、細い裸身を抱き寄せた。やがて、おずおずと背中にまわされて来た腕にこの上ない満足を感じ、ふと我に返るとそんな自分が腹立たしい。

私としたことが、いったい何をしているのだ?温もりを求めて人は抱き合うなどと、自分の口から出たことが信じられぬ。頭の隅に、楽しみに準備した媚薬や性具が未練がましく浮かんだ。今頃は、抑えても湧きあがる欲望にのたうつ体を、思うがままに弄んでいるはずだったのだが・・・

それでも、腕の中で強張っていた細い体が和らいでゆくのを心地よく感じるのは否めなかった。

よいだろう、セブルス。私が守ってやる。身を守る鎧を脱がせてしまったようだから。

「安心したか、セヴィ?」

腕の中でセブルスが小さくうなづいた。

「怯えることはない。私が守ってやる。おまえは私の腕の中で、その才能を存分に開花させればよいのだ。」

背中にまわされた腕に力がこもり、セブルスがいっそう身を寄せてきた。すがりつく子供のような必死さに、とんだ荷物を背負いこんだのではないかと我ながら呆れ果てた。大人の男が裸で抱き合っているというのに、これではまるで幼子をあやす揺り籠のようではないか。

しかし一方で、私にもこんな願いがあったのかもしれぬと思う。柔らかい母上の体にまとわりついて、抱きしめてもらいたい。ある日突然断ち切られ、行き場を失い魂の奥深くしまいこまれた、母を求める幼子の本能的な願い。

ベッド脇の棚に置いた母上の写真の横で、セブルスが持ってきたバラが、小さな花を咲かせていた。母上が愛し、その最期の姿を飾った花。気がつけばかすかに甘い香りが漂っていた。

あのバラのせいだ。甘やかなバラの匂いが、心の奥底に封じていた母上への思慕と悔いを呼び覚まし、異次元の時をもたらしたのだ。その結果が、、、

興奮して疲れ果てたのか、セブルスは私の胸に顔をうずめたまま、寝息を立てていた。まったく、背丈ばかり伸びて手のかかるヤツだ。顔を覆う黒髪をはらうと、いつもは無愛想で気難しい横顔が、あどけない寝顔を曝した。

私らしくないことだと苦笑し、しかしこの子のおかげで、無意識に目をそむけていた母上への想いを昇華できたのだと思うと、愛おしくもある。たまには思い通りに事が進まぬ日もあるが、それもまた悪くないと思い、眠りに落ちた。

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tag : ハリーポッター セブルス

セブルスとルシウスの物語(23)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞との、妄想です)


夏休みに入ると、マルフォイ先輩からホグズミードの村に来るようにと連絡があった。屋敷には行ったことがあるけど、外でというのは初めてなので少し戸惑いながら、イースター休暇明けに贈られた腕時計を身につけて出かけることにした。立派な時計にあう服はないけどしかたがない。6年生の終わりにはアパレートの試験に合格したから、約束の場所に姿現しをして待っていると、先輩が歩いて来た。いつもながら一分の隙もない整った姿に、気遅れを感じる。

セブルス、元気なったか?イースターにはずいぶん気落ちしていたようで、心配していたのだぞ。」

「すみません、先輩。」

たしかに、イースターの頃には、何をする気にもならないひどい状態だった。あの後もリリーの態度は変わらず、寂しさに変わりはない。だけど、イースター休暇にマルフォイ邸に集まった仲間たちが闇の魔術をおしえてほしいとか何かと話しかけてくるようになって、生活が慌ただしくなるにつれて気が紛れることも多くなった。彼らといる時間が増えて、一人思い詰める時間が減ったからだ。それに。

「立派な時計を贈っていただいて、ありがとうございました。」

文字盤に宝石らしき石が嵌めこまれた豪華な時計だった。汚したり壊したりしたくなくて引き出しにしまっておいたけど、はめてみた後の手首に残る感触に、どんなに励まされたかわからない。立派な物を贈られて、自分がそれに相応しいと思われているのだと感じて勇気が湧いた。

簡単なお礼の手紙を送った後、何かお礼をしないといけないと考えてはみた。でも何でも持っている先輩に、何も持たない僕が贈れるものなどない。考えつく物といえば、水薬か植物くらいだ。水薬は必要な時でなければ役に立たないし、リリーはいつも花を喜んでくれたからミニバラを育ててみた。

魔法をかけて、一つの苗から、白や赤や黄色や、黒や青まで、一つ一つ微妙に違う色の花が咲くように育ててある。それに、話しかけると開いたり閉じたりするし、終わった花は枯れずに消える。魔法植物の育て方はけっこう手間も時間もかかるもので、丹精込めて育てたものではあるけれど、いざ渡すとなると、女の子のリリーと違って、大人の男の人に花の鉢植えを贈るというのがどうにも場違いに思えてきた。

「それは私に持ってきてくれたのか?」

躊躇っていると先輩に尋ねられて、思い切って差し出した。

「はい。僕にはこんな物しかできなくて。」

「バラか。」

胸の前に差し出した花に向かって先輩が言うと、咲き始めたいくつかの花が開いたり閉じたりした。それを見て先輩が楽しそうに笑ったので、ほっとして言った。

「バラは好きですか?それならよかったですけど。」

「母が好きだった。」

「先輩の、お母さんが?」

「ああ。先週が命日だったのだが。」

「亡くなられたのですか?」

「もう何年も前のことだ。5年になる前の夏休みの直前だったから、おまえが入学してくる少し前だな。命日くらいしか思いだすこともないのだが。ちょうどいい。屋敷に帰ったら母の写真のわきに供えよう。家まで持っていてくれ。」

「はい。」

先輩は何か思い出しているように目を瞬かせた後、こちらを向いて言った。

「今日は寄る所があってここに来てもらった。さあ行こう。」

肩をたたかれてついていくと、マダム・マルキンの洋装店に着いた。学校の外出日にホグズミードに来たことはあるけど、この店には入ったことがない。きれいな洋服が並んでいるけど、僕には縁がなかったから。もっとも、買い物のお金がないから縁のある店などなくて、ホグズミードに来ても書店や魔法用具店を見ていただけだけど。

店に入るとマダム・マルキンらしき女性に、奥の試着室に案内された。先輩が何か買うのかと思っていたら、服を渡されて試着するよう促された。シャツとズボンとローブと、着るもの丸ごと一揃えだ。わけがわからぬまま試着を終えると。

「着たか?おまえにあいそうなサイズで頼んでおいたが、大きさはどうだ?あわなければすぐ手直しさせるが。」

大きさはどうだと言われても、今までぶかぶかの物か小さすぎてきつい物しか着たことがないからよくわからない。いや、そういうことではなくて。

「先輩、でも僕にはこんな物、買えません。」

「そんなことはわかっている。私が買うのだ。腕時計にあう服が必要だろう?」

「そんな、、。洋服までも、いただけません。」

「気に入らぬのか?それでは他の物を仕立てさせよう。マダム!」

成り行きがおそろしくなって、急いで言った。

「いえ、気に入りました!ぴったりです。素晴らしいです。」

「では包んでもらおう。もとの服に着替えなさい。」

渡された洋服一揃え分の包みとミニバラの鉢植えを抱えて先輩に着いてゆくと、角の向こうに魔法の馬車が待たせてあり、それに乗るとあっという間にマルフォイ邸に着いた。

入口に出迎えた屋敷妖精に荷物を渡すと、ディナーの前にシャワーを浴びて一休みするように言われた。屋敷妖精に導かれてシャワールームで一人になると、やっと一息ついて、新しい洋服のことを考えた。なぜ、わざわざホグズミードまで行って僕に服など買ってくれたのか?やはり、僕のみすぼらしい服で立派な屋敷をうろつかれるのは嫌だったのだろうか?それとも貴族の間では、時計を贈ったら身なり一揃え贈るのが習わしなのだろうか?

桁外れに裕福な先輩のすることは、僕の想像の域外だ。シャワールームだって、ホグワーツのシャワーブースとは訳が違う。着替えの洗面室からシャワーヘッドの装飾、置いてあるソープやシャンプーの類まで、使っていいのかと気後れする豪華なものだった。時計と洋服がいったいいくらするものなのかと疑問がわいたけれど、わかるわけないし、わかっても恐ろしいだけで何もできないと思考停止に陥った。

とにかくシャワーを使えと言われたのだから、小奇麗にしろということだ。いつもべたついていると悪口を言われる髪を丁寧に洗わなければ。と思った瞬間に、悪口を言うポッターとブラックを思い出して、口惜しさがこみ上げてきた。ヤツらにしつこく追い詰められたせいでリリーに絶交された、、、思考が走ると絶望感に打ちのめされるから、なんとか思いを振り払った。今日は先輩の家に来ているのだ。また気落ちして、バカみたいな受け応えをしたくない。それはもてなしてくれる先輩に失礼だと、あとは無心に体を洗った。

洗面室に出ると、また使うのが躊躇われるふかふかなタオルと、どのタイミングで脱ぎ着すればいいかわからないバスローブ、それに今日買ってくれたシャツとズボンとローブ、真新しい下着まで、きちんとたたまれて置いてあった。いちいちあっけにとられることばかりで、自分がバカに思えてくる。僕のみすぼらしい服とパンツはどこに行ったんだ?屋敷妖精がゴミだと思って捨ててしまったのかもしれない。

ふかふかのタオルは気持ちよかった。吸いつくような肌触りで、湿気がさらりととれる。髪もあっという間に乾いて、サラサラになった。これなら先輩にも恥ずかしくないと、少しいい気分になる。

真新しい服と腕時計を身につけて、外にいた屋敷妖精の案内でダイニングルームに行くと、もう先輩が待っていた。

セブルス、よく似合っている。見違えたぞ。」

機嫌よさげな先輩に促されて長いダイニングテーブルに向かい合わせに座り、ディナーが始まった。給仕が一皿一皿、運んできては下げ、また次を運んでくる。

並べて置かれた数セットのフォークやナイフに戸惑うと、ホグワーツに入学した時の食事会で、初めて見たたくさんの料理に戸惑っていた僕に、隣の席の先輩がフォークを握らせてくれたことを思い出した。そんな話をすると、先輩も、覚えているぞ、言わなかったが、初めてエサを前にした野良の子猫のようだったと言って、2人で笑う。あの時も、リリーと他の寮に分かたれて落ち込む気持ちを、監督生だった先輩の温かい歓迎が励ましてくれた。

楽しい会話、美味しい料理、のどを潤す初めてのワイン。リリーが去って、僕の心にはぽっかりと埋めようのない空洞ができてしまったけれど、その空洞ごと包み込まれるような和やかな時間だった。僕は少しワインに酔ってしまったのかもしれない。

ディナーが終わると、先輩の部屋に連れていかれた。そこもまた豪華な広い部屋だったけれど、もういちいち驚かない。言われた通り、ローブをかけて腕時計をはずすと、肩を引かれて大きな鏡の前に並び立った。

「鏡を見なさい。セブルス、よく似合っているだろう?」

鏡の中に、体にぴったりの真新しいシャツを着た僕が立っていた。隣には、僕より少し背の高い先輩が立っている。いつ見ても、美しい人だと思う。僕と違って、いつもサラサラな長いブロンドの髪。すっと伸びた背筋に、適度に厚みのある胸。痩せすぎで猫背な僕とは大違いだ。

鏡に映る2人の姿に見入るうち、ゆっくりと、先輩の腕が僕の肩にまわされた。長い指が僕の髪に絡みつく。よかった。まだサラサラのままだ。先輩がこちらに向きなおり、もう片方の手のひらが、僕の頬を包み込んだ。突然、予感がして、息を飲む。ああ、そういうことだったんだ。

近づいてくる美しい顔を瞳に焼き付け、僕は目を閉じた。


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tag : ハリーポッター セブルス

セブルスとルシウスの物語(22)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

左腕の闇の印に招集がかかり、私はダークロードの元に参じた。行き先もわからずに移動するのだが、今回もどこかの森に近い荒野だった。夕暮れが迫る中、フードにすっぽりと身を覆った数十名のデスイーターが集まっていた。フードからわずかにのぞく顔を垣間見たのか、ゴイルが声をかけてきた。

ルシウス、今夜は久しぶりに襲撃かな。体がなまってたとこなんだ。腕が鳴るぜ。」

フードを着ていてもわかるほどに大柄で力自慢のゴイルは、暴れまわるのが大好きなのだ。ほどなくダークロードが一段高い岩の上に立ち、集会が始まった。

ダークロードは集まったデスイーターたちに満足げな視線を投げると、まず勢力の拡大を称えて皆を鼓舞し、それから計画の概要を話した。基本的には、魔法省を掌握して国内魔法界を支配し我らが目指す純血主義の政策を進め、さらにマグル政府をも支配下に置く方針だ。闇の勢力は、デスイーターを潜入させたり服従の術や脅迫を用いて、今や魔法省の多くの部署に影響力を持っている。しかしこちらの勢力が増すにつれて抵抗も強まってきた。抵抗勢力を叩きつぶし、その芽を摘むのが目下の重要な戦略となっている。

今夜の私たちの任務は血を裏切る魔法使い一家の襲撃だった。純血または混血の魔法使いでありながら、マグルを擁護し我らに逆らう者たちを、血祭りにあげる。それは見せしめとなって反抗勢力の意気をそぐことになるのだ。他のグループはマグル界でのマグル襲撃や町の破壊を命じられたようだ。私たちの任務は、反抗する手段も持たぬマグルの襲撃よりは危険が伴う強い魔力を要する任務であり、それだけ実力を認められていることになる。

私たちは密やかに標的の家を囲み、施してある守りを解いて侵入した。不意を襲われ逃げ惑う一家に、クルーシオや他の様々な苦痛を与える術をかけたり、身動きを封じて苦痛に身をよじる家族の姿を見せ付ける。苦悶の叫び、絶叫、許しを請う嘆願。それらを嘲り破壊を尽くす。己に流れる尊き血を貶めるような真似をするからこのような目に会うのだ。同行のデスイーターたちは残虐な光景に無邪気にはしゃいでいるが、私はそれよりも、我が杖先の動き一つで思うがままに操られる人の姿や、迷いない杖さばきに向けられる感嘆の目に興奮を覚えた。

襲撃を終えると、興奮冷めやらぬままに、仲間内のパーティとなる。今夜はレストレンジ家で夜を明かしての祝賀が催された。美酒に酔い、戯れに杖を振り、エスコートクラブから呼んだ娼婦や男娼相手に熱気を吐き出す。

途中、ダークロードが労いに姿を現すと、皆取り巻いて口々に成果を報告した。襲撃を共にする仲間であっても、仲間内ではダークロードの評価と寵愛を競いあうライバルでもある。特に名だたる純血旧家が集う今夜のメンバーの多くは、我こそは側近との意識が強い。

魔法使いばかりの中で、一人目立つ魔女のベラトリックスなどは、しなだれかからんばかりにダークロードにまとわりついていた。初めて出席したデスイーター集会で彼女の姿を見た時は、ホグワーツの学生時代にまだ慣れぬ体を思うように弄ばれた記憶が思い起こされて思わず目を逸らしたものだが、集まりになじんでみれば、彼女の餌食になった者は多かった。気の向くままに男を弄び、襲撃時には誰より残虐な術を楽しんで放つ女傑なのだ。それがダークロードの前では少女のような愛らしささえ浮かべて媚びる姿は苦笑を禁じ得ないが、可愛らしくもあった。私の苦手意識は消えないが、もともとブラック家の血を引く美女ではあるのだ。

レストレンジ家の長男のロドルファスは学生時代からベラトリックスに想いを寄せているらしい。長年彼女の激しい言動を間近に見ながら想い続けられるというのは男として立派なものだと思うが、ダークロードの寵愛を得たベラトリックスと名門同士の婚姻を結ぶことで側近の地位を固めようと狙っているなら、侮れない相手だ。しかも、レストレンジの先代はダークロードと友人だったという噂もある。

ベラトリックスやロドルファスだけではない。他にも、仲間を出し抜いてダークロードの寵愛を得ようと狙っている者はいる。すっぽりとフードに身を包んだデスイーターたちの全容はわからないが、ダークロード自身がサラザール・スリザリンの末裔を名乗り純血を掲げているのだから、スリザリン寮出身者が多いことは想像に難くない。しかしダークロードと年代の近い者から、私のように卒業して2、3年の者まで幅広く、それにダークロードが国外で得た知己や、巨人や人狼といった汚らわしき魔法生物につながる者までいるようで、それぞれのグループに我こそはと思う有力者がいるはずだった。

私はマルフォイ家の力で初めからダークロードに厚遇されているとはいえ、まだ若い新参者であるから、他を圧倒する側近となるにはそれなりの戦略が必要だと心得ている。むろんそうなる自信はあるし、その過程を楽しんでもいる。

血筋も魔力も頭脳も抜きん出ているのだから、最後の決め手となるのが人脈だ。私は父上の後押しで魔法省の有力者と親しく、表の顔で彼らとつきあうことができる。彼らから得られる情報も、彼らに及ぼす影響力も、表に出ぬダークロードに高く評価されるだろう。あとは子飼いのデスイーターを増やすことだ。ダークロードに仕えた期間の長さでは他の者たちに及ばぬが、今後のさらなる勢力拡大を見据えれば、若く力あるデスイーターを増やすことが重要なのだ。ホグワーツのスリザリン生に顔のきく私の力の見せどころでもある。

すでにデスイーターとして行動をともにしている年の近い仲間たちに加えて、在学中の6、7年生を中心に人選の目途をつけた。彼らの意思と魔力を確認し、闇の魔術の練習会で結束を深めた上で、卒業した者から入団させるつもりだ。優秀な若い仲間を率いれば、私に対するダークロードの信認は揺るぎなきものとなり、他のデスイーターたちを掌握することもできるだろう。

純血主義と私自身の野心の実現を目指し、襲撃や仲間たちとの集い、気に入った者とのアフェアなど楽しみにも事欠かぬ、充実した毎日だ。すべては順調。思い通りに事は進んでいる。


イースター休暇には目途をつけていた10名ほどのホグワーツ生を屋敷に招いた。生徒たちの多くは、私が話すまでもなく、純血主義を掲げる闇の勢力に賛同しており、デスイーターとして活動に加わることを熱望していた。卒業を間近に控えた7年生はすぐにも加わりたいと言うほどだったし、他の者たちも入団につながるこの集まりに招かれた事に興奮していた。前回呼んだ時にはまだほんの子供で縮こまっていた5年生のレギュラス・ブラックさえ、ダークロードを賛美し、クィディッチチームのシーカーとなった体力と度胸はデスイーターに値すると意気込みを見せた。

しかし私が再会を楽しみにしていたセブルスは、様子がおかしかった。見てすぐに感じたのだが、どこか影が薄く、ひんやりと沈みこんでいた。皆が口々に熱意を語る中で、一人黙って座り、時々ため息をもらす。殻をつくってこもっているようにも見えた。もともと内気で無口ではあったが、得意な闇の魔術の話ともなれば黒い瞳の奥にプライドと野心すら感じさせたものだが。

セブルス、こちらに来なさい。」

呼びかけると素直に立ち上がり、以前と同じ気後れした様子で私のもとに来た。背丈ばかりは人並みに伸びたが、痩せた体も世慣れぬ振る舞いも、相変わらず子供じみたままだ。もう何年も成長を待ちかねているのに、なぜこの子は大人びてこないのかともどかしい。

しかも間近で見ると、初めから感じていた違和感の理由が分かった。瞳に輝きがないのだ。孤独と貧しさをまといながら、それに向かい立つ芯の強さを感じさせ、私の興味を引き付けた黒い瞳が、輝きを失っていた。まるで魂が抜けたような、生気のない瞳。セブルスはたいせつな何かを失ったのだと直感した。セブルスセブルスたらしめていた自負か、心の拠り所か、何かはわからぬが。私は内心舌打ちしていた。このようなことにならぬようにと、私が目をかけ、かまってやっていたというのに。

セブルスは私が期待していた価値を失ってしまったのか?抜きん出た闇の魔術の力さえも失われたなら、残念だがもう目を掛ける価値はない。私は勝手に騒いでいた皆も集め、適当な組にして闇の魔術の掛け合いをさせた。セブルスの術の具合を見極めたかったのだ。

しかし闇の魔術の腕だけは、以前にも増して優れていた。相手の技も防衛術も難なく跳ねのけ、迷いなく正確に放つ見事な術。鋭さに一層磨きがかかったといえる。生気を失っていた瞳にも、杖をかまえた瞬間に、暗い輝きが戻る。

これでは見捨てるわけにもゆかぬ。

術の掛け合いで熱気を増した皆を料理に向かわせて、私はセブルスに近づき声をかけた。

「セブルス、久しぶりだ。元気がないように見えるが、何かあったのか?」

「いえ、別に何もありません。」

投げやりとも感じられる無愛想な返事がかえってきた。追求を拒むにしても、場をとりつくろうだけの社交術もないのかとむっとした。しかし同時に、実に危うい状態だと懸念した。魔力だけは強いまま、魂の抜け殻のようになったセブルスは、誰かに導かれればいいように操られる恐れがある。人間関係の薄いセブルスのことだ。誰かが近付き惑わせば、敵方に引き込まれないとも限らない。ホグワーツではダンブルドアが役立つ者を味方に引き入れようと狙っているはずだ。それに子供じみてはいても17歳なのだ。恋に惑う時期でもある。低学年の頃親しそうだったグリフィンドールの赤毛などに誘われでもしたら。

私は取り返しのつかぬ事態が生じぬうちに、手っ取り早い手段に出ようと決めた。心が虚ろであるならば、体を捕えてしまえばよい。子供のような相手では容易すぎて、物足りなさは否めない。快楽だけならエスコートクラブや遊び人相手で想うままに得られるのだから、それ以外を相手とするなら、体を交わした者同士に特有の慣れ合った親密さで大人の会話を楽しむような関係が私の好みだった。あるいは、しっかりとした大人の意思が快楽に屈服してゆく様を眺めるのも悪くはないが。

子供相手を楽しむ者もいるようだが、どこが面白いのかと気がしれなかった。簡単にいかせてやった挙句にまとわりつかれて面白くもない話をきかされるなど、めんどうなだけではないか。気に掛けてやったセブルスは当然いつかは抱くつもりだったが、いっこうに大人びぬままでは、熟成を楽しみにしていたワインを機が来ぬうちに試飲させられるようなものだ。だがそのままでは腐ってしまいかねないワインを放置するわけにもいかぬ。

「セブルス、夏休みに予定はあるのか?」

「いえ、別に何もありません。」

「それなら休みが始まったら屋敷に来なさい。」

「はい。」

何の予感も期待もなさそうな、つまらぬ返事だった。感情の動きが見られない気だるげな様に、うつでも患っているのかとさえ疑う。1人屋敷に招かれたのだ。喜びか、あるいは警戒か、何か反応があってもよいではないか。おまえは1人屋敷に招かれる意味もわからぬのかと罵りたい気持ちを、さんざん弄んでやるから覚悟しておけという思いで押さえ、笑顔を向けた。

「楽しみにしているぞ。」

「はい、ありがとうございます。」

邪気も精気も色気もない態度に脱力感を覚えつつ、成長を待っていた数年間を思い起こし、最後のヒントを与えることにした。私のペットと言われてきたのだ。可愛がられたペットが大人になったなら、主人が望むものもわかるだろう?

「おまえも今年は成人を迎えたのだな?」

「はい、1月の誕生日で17歳になりました。」

セブルスは答えながら、無意識に丈の足りないローブの袖を引っ張っている。隠そうとする手首に、時計がないのに気がついた。魔法界では成人の折に親から時計を贈られるのが習慣で、成人したばかりの者は誇らしげに身につけているものだ。私はヒントがまったく通じなかったことに落胆したが、誰より真面目に勉強を頑張ってきたセブルスが、成人の祝いの時計すらもらえぬことを哀れにも感じた。その隠しきれない細い手首に、ふと手が延びる。

「細い腕だ。」

手首を両手で包みながら言うと、さすがに驚いたように目を向けた。その目を捕えて覗き込むと、瞳の中にわずかな揺らぎが見えて、私はようやく少しばかりの満足を得た。

「セブルス、おまえは誰より優れた闇の魔法使いになれる。今までも頑張ってきたのだ。くじけてはならぬぞ。」

冷え切っていた手首に温もりが戻り、かすかに恥ずかしげな笑みを浮かべて、セブルスはうなづいた。


休暇明けに、私は細い手首にあう時計をあつらえて、セブルスに贈ってやった。袖の丈も足りぬみすぼらしいローブに、つりあわぬ品の良い時計をはめるセブルスを思い描くと噴き出してしまうが。夏休みには時計にあう新しいローブとシャツを仕立ててやろう。そしてキッチリととめられたシャツのボタンを、私の手ではずしてやる。

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tag : ハリーポッター セブルス ルシウス ダークロード

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