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映画「スタンド・バイ・ミー」、少年4人の夏

ハリーポッターの原作でも映画でも、親世代の少年時代はわずかにほのめかされているだけで、それもほどんどスネイプ先生絡みの過去。なので、先生LOVEのミーシャの妄想は、ルーピンの内心の葛藤はともかく、グリフィンドール4人組の少年期=憎たらしいいじめっ子になってしまうのですが。

ルーピンの少年時代を延々と妄想しているうちに、彼らにも胸が熱くなるような輝かしい友情の日々があったはず、少しくらいそんな日々を生き生きと描きたいなあと思い、しかし浮かんでこない^^;

というわけで、ちょっと胸が熱くなる少年4人組に寄り道しました。

4人の少年の夏の2日間を描いた映画、スタンド・バイ・ミー(Stand by me)。ありがたいことにhuluでやってくれてまして^^

ジョンレノンもカバーした同名のテーマ曲とともに知ってる人も多い有名な映画だと思いますが、こんな4人が1泊2日の冒険に出るロードムービー(1986、アメリカ)。

standbyme

ジェームスたちのイメージよりは、ずいぶん素朴な感じ。50年代のアメリカの田舎の子たちの設定なので無理もないか^^;

冒険といっても大事件が起こるわけでもなく、大人になった1人があの頃を振り返るっていう話なので、郷愁の切なさが漂う映画です。

印象に残るのは、実は少年たちの旅それ自体よりも、エンディング。

昔を振り返って、失ったものの大切さ、いてくれたことへの感謝を感じるくらいの年齢になると、しみじみする映画なのかもしれません。

でも、だからといって、自分の子供の頃のそんな友達の思い出がしみじみ浮かんできたわけじゃないので、やっぱり(元)少女の話ではなくて、(元)少年たちの話なんだなとかつらつらと考えました。きっと、子供から大人になっていく時期は、女の子より男の子のほうが、少しだけたいへんなんじゃないかなとか、女は今を生きる傾向が強いから、今に関わらなくなったことへの郷愁が薄れがちなのかなとか。女の友情は薄いとは考えたくないんで。

最初のうちは、この4人の誰がグリフィンドール4人組の誰と重なるかなどとも思ってみましたが、結論的には全然重なりません。でも年齢的には、先生くらいの年代で12歳の夏を振り返っているのだと思うと、しみじみ感は増します。

それと最後に流れるStand by me の曲は、ルーピンの想いかな~なんて。いえ、誰の想いでもあるのかな。要約すると、

君がいてくれれば怖くない。ダーリン(友よ)、僕のそばにいて。どんな時もそばにいて。君が困ったらいつでも僕のそばに来て。

っていう歌ですからね。

ちなみに、(原作の)セブルスとリリーを思うとよく浮かぶ曲は、I will be right here waiting for youです。切ないメロディーとあいまって、
Wherever you go, whatever you do, I will be right here waiting for you
Whatever it takes or how my heart breaks, I will be right here wiating for you
のとこにくると、リリー頼むよって叫びそうになります。
まあ、このサビの部分しかわからないんですが。

映画に戻って、この映画の切なさに拍車をかけるのが、リヴァー・フェニックス(左から2人目)の早逝です。
23歳の若さで。くしくもハローウィンの日に。こんな美青年が(涙)

riverphenix

そんなわけで、妄想と全然関係ない寄り道になってしまいました。
てか、歌のあたり、書いてて恥ずかしい入れ込みようだと思いました。

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テーマ : 洋画 - ジャンル : 映画

(過去2)リーマスの物語7

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)


スネイプへの思いが恋なんだと自覚した時こそ動転したものの、わりとすぐに落ち着いた。僕の場合、どうしようもない体の変化とか本能的な衝動を受け入れることに慣れていたし、それに、それで何がどうなるってわけでもないから。相手が誰であろうと、僕の恋に進展があるわけじゃない。

そう思うのは残念だけど、ため息をついてあきらめることも僕には身に着いた習慣みたいなものだから、あきらめてしまえばいっそ気楽だ。それでも恋心というのは不思議なもので、ちょっとした思い出を胸の中で温めてみたり、姿を見かけると得した気分になったりと、ささやかな片恋を密かに楽しむこともあった。

だけど、ことスネイプが関わる限り、のんきに楽しんでばかりいられるわけがない。4年生になってスリザリンの上級生たちがいなくなると、またジェームスたちのスネイプへの嫌がらせは多くなった。そのうえどちらの側も学年とともに魔術の腕も上がり、闘いは激しさを増した。僕も見張りにつきあわされて、恋心があるだけに、前以上に葛藤に悩むことになった。

もちろん、スネイプのためにジェームスたちに立ち向かい、嫌がらせをやめさせる、できないまでもやってみるという選択肢があることはわかっている。できればそうしたいし、そうすべきだと思ったけど、僕にはできなかった。

それは僕が、ジェームスたちの友情を、失いたくなかったからだ。それは僕の支えであり、僕の笑いもささやかな勇気も、すべては彼らに負うものだ。彼らが僕といてくれなければ、僕はただ周囲の目に怯えて穴に閉じこもる、臆病な獣のように生きるしかないと思う。もう人狼の秘密を抱える一人ぼっちのリーマスに戻りたくない。

スネイプへの行いがどんなに目に余るものであっても、僕はどうしても、この大切な友達に嫌われたくなかった。

僕はこんなふうにもんもんと悩むしかできなかったけど、スネイプのために立ち向かう人もいる。

「ポッター、ブラック、またセブに嫌がらせしたのね!」

4人で座って話している所にリリー・エバンスがやって来て、いきなり詰め寄った。エバンスは豊かな赤毛と涼やかな緑の瞳を持つ美少女なんだけど、怒ると迫力がある。

「エバンス、君みたいな子があんなヤツにかまうなんて。ほっとけばいいんだ。」

「あなたたちこそ、セブにかまわないで。彼が何をしたというの?」

ジェームスは一瞬たじろいだように見えたけど、すぐいつもの、みんなに好かれる自信に満ちた明るい笑顔をエバンスに向けた。

「あんなヤツ、かばってやる価値はないよ。スネイプは闇の魔術に傾倒した汚らわしいヤツだ。いるだけでみんなの迷惑だから、僕たちが懲らしめている。」

エバンスは肩をそびやかし、目を細めてジェームスを冷やかに睨みつけた。

「懲らしめるですって?えらそうに、なんて横柄な言い草なの?みんなで追い詰めて、いじめているだけじゃないの。」

「弱くて負けて、君に泣きついたわけか。まったく卑怯なヤツだな。」

「1人のところを狙って陰で攻撃することこそ、卑怯で恥ずべきことだわ。みんなにちやほやされていい気になっているんでしょうけど、あなたたちのしてることは最低よ!」

エバンスに言いたてられ、ジェームスはわざとらしく困ったような顔をしてシリウスを見た。

「臆病者は鼻水たらして泣いてりゃいいんだ。スニベルスの鼻水なんて、拭いてやることないぞ。」

「ブラック!まあ、なんてことを!セブのこと何も知らないくせに。乱暴なのと勇敢なことの区別もつかないのね!あなたこそ1人では何もできない臆病者よ!」

「エバンス、そうむきになるなって。ちょっとしたいたずらに目くじら立てて、美人が台無しだぞ。ひょっとして、アレの日か?」

シリウスの言葉にカンカンになって、エバンスはくるりと背を向け去っていった。

「なんだよ、あれ。だから女なんか、めんどくさいっつーんだよ。」

シリウスは大げさにぼやいてみせ、僕は内心、エバンスに拍手喝采の心地だったんだけど。

「スネイプのヤツ、、、エバンスに言いつけるなんて、許さないぞ。」

ジェームスが顔を歪めて呟くように言い、僕はすごく嫌な予感に襲われた。


それから間もなく、ジェームスとシリウスから、スネイプへの嫌がらせの計画を聞かされた。それは、禁じられた森の入口近くに、抜け出られないほどの深い落とし穴を作り、底にはネバつきシャンプーを敷き詰めておくというものだった。ネバつきシャンプーっていうのは、粘着玉と魔法の泡を合体させたみたいな、ネバネバとまとわりつく魔法の液体で、最近のジェームスたちの得意技だ。

具体的にはあらかじめ落とし穴を作って隠しておき、スネイプが1人で林に出かけるのを見つけたら、先回りしてジェームスとシリウスがネバつきシャンプーの仕掛けをつくる。そして用事を終えたスネイプを待ち伏せしてペトリフィカス・トタルス(石になれ)の術で身動きを封じ、衣類と杖を奪って穴に落とす。僕とピーターは、他の人が来ないように林の小路の途中で見張りをする。

「裸でべたべたになって泣きべそかいたなんて、恥ずかしくてエバンスに言いつけることもできないさ。禁じられた森に近づけば怒られるから、先生にも言えないはずだ。」

「スニベルスは、痛い目にあっても誰にも言えずに一人で泣きべそかくってわけだ。ジェームス、頭いいな。」

ひどく悪質な計画で、聞いただけで気分が悪くなった。体や異性への羞恥心が高まる年頃には、耐えがたい辱めだ。楽しそうに話すジェームスとシリウスが信じられない。スネイプがエバンスに恋心を持っているのか知らないけど、ジェームスがこの間のエバンスの抗議を根に持っていることは確かだった。

その計画に従って、4人で落とし穴を作りながら、僕はどうやったらスネイプを助けられるかと必死で考えていた。こんな目にあったら、怒りと屈辱のあまり、スネイプの中にあると僕が信じている孤独に負けない芯の強さや純な心まで損なわれてしまうんじゃないか。僕が持てない、闇に灯る小さな明りを守らなければ。

数日もしないうちに、いよいよ決行だと告げられた。ジェームスが、こんなことに使うなら卑怯すぎるアイテムだと思う透明マントでスネイプとエバンスの会話を盗み聞きをして、放課後にスネイプが林に行くことを知ったのだ。

晩秋の寒い午後、空には重く雲が広がっていた。スネイプはいつも着たきりの体には小さすぎるローブ姿で、片手に薬草用のカゴを携えて林に入っていった。少し時間を置いて、ジェームスとシリウスが透明マントを手に、林の小路を走る。ピーターと僕は、林の小路の途中で彼らと別れ、じゃまが入らないように見張りに立った。

「寒いね、リーマス。うまくいくかな?」

2人になるとピーターが、コートの襟を立てながら言った。

「ピーター、僕、なんだか具合が悪い。熱が出てきそうだ。悪いけど、ここは頼んでいいかな?」

「大丈夫、リーマス?僕一人で大丈夫だから、休んでおいでよ。どうせ誰もきやしないよ、こんな寒い日に。」

ピーターにお礼を言って背を向け、少し小路を戻ってからわきにそれて走り出した。見つからないように先回りして、スネイプを止めなければならない。僕は林の木々の間を抜けながら、耳をすまし、風の臭いを嗅ぐ。鼻と耳でジェームスたちの居場所を確かめ、スネイプを探しながら、森に向かい夢中で走る。

ようやくスネイプの姿を見つけた。小路から少し林に分け入った小川の縁で、スネイプは薬草を摘み終えたらしく、立ち上がって手をはらうと、両手をあわせて息を吹きかけていた。

僕が素早くスネイプに駆け寄ると、スネイプは瞬間的に杖を握って僕に狙いを定めた。

「スネイプ、お願いだから静かにして。僕の話を聞いて。」

僕の鋭いきゅう覚と聴覚は、少し離れた小路に、ジェームスとシリウスの気配をとらえている。彼らに聞こえないように小声で言うと、スネイプは訝しげに僕を睨みながらも、杖を下ろしていった。

ルーピン?」

「小路でジェームスたちが君を待ち伏せしてるんだ。僕に着いてきて。こっちだよ。」

スネイプの片手をつかんで木立の中に向かうと、抵抗していたスネイプも、結局一緒に走り出した。小路から少し離れた岩陰のくぼみに入り、息を整える。1年生の頃、一人で林を散歩するうちに見つけた秘密の場所だ。その後仲間と遊ぶようになったから、来ることもなかったんだけど。

ルーピン、何のつもりだ?」

スネイプが息をはずませながら、それでも小声で尋ねてきた。僕も声をひそめて、嫌がらせの計画を説明した。エバンスがジェームスたちに詰め寄ったところだけ、スネイプの口元がわずかに緩んだけど、話が進むにつれて険しい表情になっていった。

「しつこくてイヤなヤツらだ。」

スネイプの言葉に、僕もうなづいた。僕としては、この計画が悪いのであって、ジェームスやシリウスがまるごとイヤな人間だと思ってるわけじゃないんだけど。

「でも僕は、こんなふうに逃げ隠れするつもりはない。」

スネイプが杖を握って歩き出そうとするから、僕はあわてて止めた。

「やめろよ、スネイプ。向こうは2人なんだよ。君はそれでよく酷い目にあってるじゃないか。」

「時には4人のようだが。」

スネイプは嫌味を言いながら、片眉を吊り上げて僕をじろりと見た。

「いつも僕が1人の時を狙って嫌がらせする。酷い目にあうとしても、そんな卑怯者に負けるものか!」

動き出すスネイプを止めようと抱きついた時、風にのってジェームスたちの声がわずかに聞こえてきた。

「スニベルスのヤツ、どこにいるんだ?」

「こわくて隠れてんじゃないか、臆病者のスニベリー、こそこそしないで出て来いよ!」

いきり立って僕の腕を脱け出そうともがくスネイプの体をぎゅっと抱きしめながら、耳元でささやくほどに声をひそめて。

「頼むよ、スネイプ、行かないで。僕が嫌なんだ。君が酷い目にあうのが、僕は嫌でたまらない。お願いだから、少しだけ我慢してここにいて。」

スネイプの体から少しずつ力がぬけてゆき、訝しげに僕を見る。間近に見えるスネイプの顔から、眉間のしわがやわらいでいった。僕は少しホッとして、腕を回したスネイプの背中が冷え切っているのに気がついた。古着のコートをはおってる僕でさえ寒いんだから。

「あっ。」

小さな声をあげて空を見上げたスネイプのまつ毛に雪が舞い降り、驚いたように瞬きする表情が、1年生の頃に見た無邪気な子供のように見えた。僕はコートを脱いでスネイプの肩にかけ、コートの上から包むように腕を回した。少しでも、スネイプの冷えた体が温まるように。僕たちはしばらく黙って雪の中に佇み、ジェームスたちの気配が消えるのを待って歩き出した。小路にはうっすらと、雪が積もり始めている。

ルーピン、なぜ僕を助けた?」

「それは、、、。君が怪我をしたり凍えたりしないように。」

「・・・。今日はこうしたけど、僕はポッターたちから逃げ隠れするつもりはない。」

「なぜ君たちは、君とジェームスたちは、そんなにいがみ合ってばかりいるの?」

「おまえもポッターたちといれば知っているだろう?ヤツらがしつこくつけ回すのだ。卑怯にも僕が一人の時を狙って。」

僕はうなだれて聞いているしかない。

「僕だって怪我をするのはいやだけど、卑怯な嫌がらせに屈して逃げるわけにはいかない。」

「スネイプ、でも卑怯な嫌がらせで怪我をするなんてばかばかしいじゃないか、、、」

僕がくどくどと言うと、スネイプは呆れたように、聞こえよがしのおおきなため息をついて立ち止まった。

ルーピン、彼らを卑怯だと思うなら、おまえがやるべきことは、今日みたいに僕を連れて隠れることではないだろ?」

わかってる。

「ポッターたちは僕の天敵だ。両方に味方することはできないぞ、ルーピン。」

僕たちは校庭で別れて、それぞれの寮に向かった。寮に戻ると、みな大ホールの夕食に行っていて誰もいない。スネイプを助けられたことにホッとして、それからスネイプが最後に言ったことを思い返して胸が苦しくなり、思わず頭を抱えると額が熱い。どうやらほんとに熱が出たようだった。

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tag : ハリーポッター スネイプ ルーピン

(過去2)リーマスの物語6

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)


それでも、2年生から3年生にかけては、わりと穏やかに過ぎたと思う。なんて思うのは後になってからのことで、その時々は、ただ夢中で毎日が過ぎていったんだけど。

ジェームスシリウス、ピーターという友達を得て、4人で一緒に遊んだり冒険したり、たまには叱られたり勉強もして、僕には手が届かないと思っていた普通の生徒みたいな学園生活を存分に楽しむことができた。この友達たちのおかげで、変身の前後もずっとらくな気持でいられたし、彼らといたからこそ、他の生徒たちから疑いの目を向けられずにいられたと思う。

彼らの、というより僕らの、スネイプへの嫌がらせだけは葛藤を感じずにはいられなかったけど、2年が終わり3年になる頃には、それも和らいでいった。

一つには、ジェームスたちに対して、僕は誰かを個人的に攻撃するのに加わりたくないと言うことができたからだ。自分の意思を表明するという、そんな勇気を持てたのも、彼らの友情の支えあってこそなんだけど。そう宣言したのだからと、あまり友達を偽る罪悪感を感じずに陰でスネイプを助けられるようになったし、嫌がらせにしても、せいぜい見張り役か準備の手伝いに付き合う程度ですむようになった。

それにスネイプも、スリザリンの上級生に囲まれてなんだか和気あいあいとしてるように見えることもあった。その上級生たちの中心にいたのは、ルシウス・マルフォイだ。大金持ちの純血貴族で、上品な面立ちに高級な身なり、学業も優秀らしく、グリフィンドールでさえ一目を置かずにいられないスリザリンのプリンスだ。

そんなスネイプを見るのがなんとなく悔しくて、吸血鬼のくせにとか自分を棚に上げて心の中でバカなことをつぶやいてみたりすることもあったけど、嫌がらせで酷い目にあってるのを見るよりずっとましなのは確かだ。大物の上級生がにらみをきかせていたせいで、ジェームスたちも目立つ嫌がらせがしにくいようだった。みんなが笑えて先生に怒られるというほんとの意味でのいたずらや、寮対抗のライバル意識を映すスリザリンとの仕掛け合いに熱中することが多くて、そういうのには僕も喜んで加わった。

そしてたまの嫌がらせでスネイプが身動きとれなくなれば、僕がなんとか助け出す。人目につかない嫌がらせだから、人目につかないように助けるのもやりやすかったといえる。スネイプだってやられているばかりではなくて、ジェームスシリウスがたんこぶ作って悔しがってることもあったし。

そんなのどかともいえる雰囲気が変わってきたと感じたのは、4年生になってからだ。それはスネイプに関わることばかりじゃなくて、いろんなことが変わりつつあると感じられた。まとめてしまえば、僕たちみんな、子供から大人に変わってゆく時期を迎えたってことかもしれない。それは楽しさも悲しみも、好意も悪意も、すべてが過剰に揺れ動く、危ういエネルギーをはらんでいる。

「あいつら、発情してんだよ。」

シリウスが言うように、同級生たちの中に、ちらほらとカップルが目につくようになった。14歳という年齢は複雑だ。体に変化が起こり、たいていは異性への興味が芽生える。自分の変化に戸惑うこともあれば、周りとの差が気になったり、感情面も不安定になる。自意識が強くなって、異性を含めた周囲からどう見られているかを過度に気にして、自信過剰になったり自己嫌悪に陥ったりするし。僕はなんとなく危うさを感じて不安だったけど、ますます自信を深め絶好調になる人たちもいた。

シリウスは4年生になってぐんぐん背が伸びて、もともとブラック家らしい美形だし、血筋もいいうえに、長身が加わりモテモテだ。身近で見てるとガサツだったりするんだけど、一般的には男らしくてワイルドという好評価になるらしい。ジェームスはクィディッチのヒーローで、こちらももともと人気はあったけど、魔女たちの憧れの視線がくわわって、本人も得意げだ。

ある日叫びの屋敷の秘密基地で、シリウスがもらったラブレターを、それも何通も、見せびらかした。

「我らがシリウス君は、ホグワーツきっての人気者だと自慢したいようだな。見せろよ。」

ジェームスが一通を取りあげて、声高に読み始めた。

「シリウスさま、ハァート、前からとっても憧れています。今度の外出日に、、おー、デートの誘いだぞ。」

「やめろよ、ジェームス!おまえだってなんかもらってただろ?」

「続き、見せて!」

手紙を取り合って4人でひとしきり騒ぎ転げた後。

「シリウスの場合はモテ過ぎて一人に決められないってのが問題だな、モテないと悩む多くの男子たちを尻目に。」

「俺はさぁ、まあ選びたい放題なわけだけど、特にピンとくるのもいねえし。女なんてめんどくさいだけだろ?」

「言ってくれたな、シリウス君。だけど知ってるぞ、おまえの本命は・・」

「誰、どの子?」

リーマスだろ?」

「わぁ~~、リーマスゥ!」

「やめてよ、冗談は。」

リーマス、愛してるぜ!」

シリウスがふざけて僕に抱きついてきて、またしっちゃかめっちゃかの大騒ぎになった。笑い疲れてようやく落ち着くと。

「でもさ、密かにリーマスが好きって子もいるだろうね。やさしいし、落ち着いてるって好感度高いだろう?。」

「そんなことないよ、僕なんて。」

「そんなことあるよ。だけど、大事なのは、どれだけモテるかより、誰にモテるか、誰が好きかってことだと思う。」

「まあ、モテるヤツ限定の悩みだけどな、ジェームス。」

シリウスが茶化して矛先が変わってくれるかと思ったんだけど。

「シリウスの気持ちはわかったけど。」

「うるせー。」

「それでリーマスはどうなんだ?ほんとのところ、気になる子とかいないの?誰かいるんだろ?」

「そんな人、いないよ。」

「いるだろ、誰か。話したいとか、気になってしょうがないとか。」

「守ってあげたいっつーのもあるぜ。」

「他のオトコといるとむかつくってのもあるな。」

「可愛い笑顔が忘れられないとか。」

「いないよ、知らないよ、僕のことなんかほっといてよ。」

言いながら頬が熱くなってきた。まずい、だって。

「あ、リーマス、赤くなってる!」

ピーターが目ざとく言った。

ほんとにまずいと思う。だって。

話したくて、気になってしょうがなくて、守りたくて、他のオトコといるのを見ておもしろくなくて、可愛い笑顔が忘れられない相手って、、、、

スネイプじゃないか。

「リーマス、恋してるんだ。初恋だねー。」

「残念だな、シリウス、さっそく失恋して。僕が慰めてやるから、まあ気を落とすなよ。」

言いたい放題の3人から寄ってたかって冷やかされたりからかわれたりしながら、心の中で、そんなのほんとにいやだ、まずいよと思ってた。僕は普通がいいのに、普通になりたいのに。僕は男のスネイプに恋なんてしたくない。そんな初恋、、、最悪だ。

だけど、最悪なのに、なんか嬉しくなったりするから困る。

夜、寮のベッドの中で、浮かんでくるスネイプの笑顔や仏頂面に、にやけてはそれを振り払い、絶対恋なんかじゃないぞと心に宣言し、ジェームスやシリウスがスネイプにこだわり過ぎるからこんなことになるんだと恨めしく思い、でも気がつくとまたスネイプの笑顔を思い出して頬が緩んだりしているうちに寝てしまった。

翌朝早く、目が覚めて夢精に気づき、ため息をついた。ため息をついて頭を抱え、それでも浮かぶスネイプの笑顔に、受け入れるしかないんだと思う。どうやら僕は、スネイプに恋してしまったようだ。


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tag : ハリーポッター リーマス ジェームス シリウス

(過去2)リーマスの物語5

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)


夏休みが終わって2年生になると、僕たちの結束はさらに強くなった。もともと授業も食事も寝る場所まで一緒だったわけだけど、さらなる刺激を求めて4人でホグワーツの探検に繰り出した。ホグワーツ城内は生徒たちの立ち入りが禁止された秘密の場所がたくさんあるし、城伝説みたいな謎めいた逸話もあって、冒険には事欠かない。

禁じられた森も、絶好の遊び場になった。城内ではジェームスたちに着いていくことが多いけど、禁じられた森なら僕の天下だ。1人の時は忌まわしいとさえ思っていた狼的な特徴、鋭敏な嗅覚や聴覚が、森の探検となれば称賛の的になった。それに森の生き物たちは僕の中の狼を感知するらしく、あえて僕らを襲うこともない。まあ、どんな危険が潜むかわからない奥地まで行くわけじゃないんだけど。

そして冒険好きな少年のグループに欠かせないものといえば、秘密の基地だ。僕たちは暴れ柳の下から続く叫びの屋敷を4人だけの基地として、友情と勇気を誓いあった。そんな体験の一つ一つがさらに友情を深め、絆となっていく。禁止を破ることも多いから、先生たちに見つかると怒られたけど、僕たちはこんな毎日が楽しくてしょうがなかった。僕にとっては夢みたいで、この仲間たちが僕のすべてだと思えた。

ずっとこんなふうに過ごせたら、僕はスネイプのことなんか忘れてしまったかもしれない。そしてたぶんそのほうが、スネイプにとっても幸せだったのだろうけど。そうならなかったのは、ジェームスとシリウスが、しつこくスネイプを狙ったからだ。

1年生の頃から、彼らがスネイプを目の敵にしていることは知っていた。でもそれは食事時に悪口を言うのをきいたり、たまに廊下でわざとぶつかったり、授業でのちょっとした失敗をことさらに騒ぎ立てるのを見かけるくらいだった。それはむしろ僕の気持ちをスネイプに向かせることになったわけで。

でも親しくなっていつも彼らと行動を共にするようになると、僕が気づいていた以上に、攻撃は激しかった。夏休みの間に仕入れた魔法や、ジェームスが父親からもらったという透明マントで、2年生になってパワーアップした面もあるかもしれない。

ある日秘密基地で集っていると、ジェームスとシリウスが得意げに、新しいいたずら魔法を見せてくれた。シリウスがビー玉みたいな小さな玉を取り出して、見てろ、と掛け声とともに壁に投げつけると、それは壁にあたってどろりと溶けてみるみる広がり粘りついていく。今度は僕だとジェームスが杖を上げて呪文を唱えると、杖先の向こうに泡が現れて、それはぶくぶくと膨らんで増えていった。

その様がおかしくて、僕とピーターは手を叩いて笑い転げたんだけど。続いたジェームスとシリウスのやりとりに、まるで水を浴びせられたように、心が冷えていった。

「この間は笑えたよな。スネイプのヤツ、粘着玉食らってべそかいて。見事、命中っと。」

「今度は僕が、シャボン泡の術でひと泡ふかせてやる。」

「べたべた髪が洗えて、みんなのためにもなるってもんさ。」

笑えるいたずらが、スネイプ相手になると陰険な嫌がらせにかわる。なぜスネイプにそこまでするんだと心の中で叫んだけど、顔はうすら笑いを浮かべてたと思う。明るいジェームスたちに潜む悪意と、彼らにへつらう僕を自覚した瞬間だ。誇らしく輝く友情の光の中に、黒いしみが生まれた。そしてそれからずっと、その黒いしみは、シャボン泡のようにぶくぶくと増幅したり小さくなったりしながら、粘着玉のように僕に粘りつくことになった。

最初の時こそうすら笑いを浮かべるしかなかったけれど、何度目かのスネイプの悪口の時に、意を決して言ったこともある。なぜそんなにスネイプをつけ狙うの?スネイプが君たちに、何かしたの?

「スネイプは闇の魔術に傾倒した邪悪なヤツなんだ。存在自体が許せない。」

あの時、人狼と知ってなお、僕を友達だと抱きしめてくれたジェームスが、同じ真剣な眼差しで言うことが信じられない。

リーマスは優しすぎるんだ。スネイプなんかに同情することないんだ。俺たちにやっつけられて、一人で泣きべそかいてりゃいいのさ。」

シリウスが話にならないといった感じで言う。でも、たとえ僕には理解できない理由があるんだとしても、それでも2人で1人を攻撃するのは卑怯じゃないか?

「でもスネイプは一人なのに、、」

「そうさ、あいつはいつも一人さ。一人ぼっちのスニベルス!嫌われ者だから友達なんかできない、俺たちと違ってな。な、リーマス、あんなヤツのことなんか気にするなよ。」

シリウスに肩を組まれて言われては、、。僕はそれ以上何も言えず、そればかりか、「ははは」とか笑い返してた。空しい。すごく空しい笑いだ。真の友達に、僕は自分の心を偽った。なんて卑屈で、意気地なしなんだ。

「次はリーマスも一緒にやろうぜ。ピーターもな。あいつの泣きっ面、おもしろいぞ。」

僕の上辺笑いに気を良くしたシリウスが、止めの一言を放った。

次なんか永久に来なければいいと願ったけど、それはすぐにやってきた。うきうきと計画をたてたジェームスとシリウスから、僕とピーターは、授業の後、彼らが隠れているとこにスネイプが近付いたら合図するように命じられた。もちろん、命じられたというのは僕の感覚であって、ピーターは勇敢な仲間2人のいたずら計画に入れてもらえたと喜んでいる。

魔法薬学の合同授業が終わると、ジェームスとシリウスはすばやく教室を出て上の廊下に潜んだ。ピーターと僕は、何やら先生に質問してノートにメモしているスネイプの様子をうかがい、スネイプが教室を出て曲がり角に近づくと、急いでジェームスたちに知らせた。

何も知らずに歩いていくスネイプ。そこに突然、汚いバケツの水が降ってきた。何事かと見上げた顔に魔法のシャボン水が飛んできて、ぶくぶくと泡を立てる。泡はスネイプの顔を覆い、頭を包むように広がっていく。

「たまには頭を洗えよ、スニベルス!」

「鼻水も一緒にな、さっぱりするぞ~、スニペリー!」

ジェームスとシリウスが叫び、何事かと驚いていた周りの生徒たちも、明るくはしゃいでみせるジェームスたちと、泡にまみれてもがくスネイプを見て笑いだした。

「ポッター!ブラック!何をするの!」

エバンスが叫びながら走ってきた。それに続いて、騒ぎに気付いたマクゴナガル先生も。

「ミスター・ポッター、ミスター・ブラック、すぐに研究室に来るのです!ついてきなさい!」

マクゴナガル先生の一喝に周囲の生徒は鎮まり、ジェームスとシリウスはしおらしい顔をして従いながら、こっそり僕たちにウィンクを飛ばした。エバンスがスネイプに駆け寄って、泡を拭っている。

暗い気分で、でも初めてのいたずらに興奮しているピーターの話にうなづきながら寮の談話室にいると、ほどなくジェームスたちが帰ってきた。

「スリザリンの泣き虫をやっつけたぞ!」

「先生には怒られちゃったけど~」

2人がガッツポーズをとり、おどけた調子で言いながら談話室に入ってくると、グリフィンドール生たちから、よくやったとか声援が飛んでいる。

「怒られちゃったの?」

少し心配そうにピーターが尋ねると。

「平気さ。ちょっと悪戯が過ぎてるって言われたけど。洗うのが好きなら、1週間男子トイレの掃除をしろってさ。マクゴナガル先生だって絶対噴き出すの我慢してたと思うよ。」

「もちろん、僕も掃除やるよ。僕たち一緒にスネイプをやっつけたんだものね?」

ピーターが言うのに調子をあわせて、僕も一緒に4人でトイレ掃除の罰を受けることにした。ジェームスたちなんて、術を磨くとシャボン泡出している有様で、あとは僕とピーターが水で流すだけだから、反省しているはずもない。

なんとか調子をあわせてたけど、夜ベッドで一人になると、僕は暗い思いに沈んだ。グリフィンドール生はスリザリンをやっつけたと称え、先生は過ぎた悪戯だと眉をひそめ、ジェームスたちも表向きそんな顔をしているけれど、実際には2人で、いや僕たちも含めた4人がかりでやった、スネイプへの嫌がらせだ。

あんなふうに皆の前で寄ってたかっていじめられて、スネイプはどんな気持ちでいたのだろう?

考えるまでもなく、僕にはわかる。顔を打つ汚水、増えてゆく泡の一つ一つ、嘲る罵倒、物見気分な周囲の笑い声すらも、受ける身には憎悪と排斥の意思を持つナイフのように突き刺さる。僕はその痛みを充分に知りながら、スネイプにナイフを投げつけた。5歳の僕に、突然に投げつけられた石の痛み。今日僕は、石を投げつける側に立った。そうしなければ自分が石を投げつけられるのだと怯え、スネイプも僕自身の心も裏切ってしまった。

1年の時の魔法薬学の授業の後で、思いがけず間近に見たスネイプの可愛い笑顔を思い出す。2人だけの禁じられた森で、初めて見る魔法生物に驚いた無邪気な表情も。闇と秘密を抱えた孤独な者どおし、心を通い合わせられることを夢見た日は遠ざかるばかりだ。

スネイプの中には、たしかに小さな明りが灯っていたと思う。すべてに恵まれた者が華やかな光を放つより、暗闇に小さな灯りを保つことのほうが難しいかもしれない。僕にはどんなにあがいても、自ら明りを灯すことなんてできなかった。思いがけずまばゆい光に包まれて、忘れかけていた小さな灯。その灯りは眩い光に目がくらんで見えなかっただけで、ずっと僕の心にあったのに。スネイプが懸命に守る小さな灯り。

僕もその灯りを守りたいと思った。守らなければいけないと思う。だけど、ジェームスたちの友情は僕のすべてで、失うなんて耐えられない。人狼の秘密を知る彼らに、立ち向かい諭す勇気を持つこともできなかった。僕にできることといえば・・・。

僕は考えて、できるだけスネイプを嫌がらせの被害から逃れさせようとした。仲のよいジェームスたちを偽る罪悪感は苦いものだったけど、まさか何年も続くことになるとは思いもよらず。

まず、スネイプを見つけるとジェームスたちが気づかないよう他に気をそらさせた。それから、ジェームスたちがつくった落とし穴の底に踏み台を入れて脱け出しやすくしてみたり、林の木に術で縛りつけられたのをこっそり解いてみたり、階段の段を魔法で消して転げ落ちさせる計画を聞いた時は下に見えないクッションを置いてみたりした。

自分で助けに行けない時は、森番のハグリッドに何か声が聞こえますと言って見に行ってもらったり、後にハグリッドがジェームスたちを可愛がるようになると、こわかったけど用務員のフィルチにそれとなく伝えた。

スネイプが僕のしていることに気がついていたかどうかよくわからないけど、何度か不思議そうな目を向けたから訝しく思うこともあったのかもしれない。その黒い瞳は、なぜ自分を助けるのかと問うようにも、なぜ理不尽な嫌がらせに手を貸すのかと僕を責めているようにも思えた。

ジェームスたちはしつこかったけど、スネイプも果敢だった。2対1、時には見張りの僕たちも含む4対1の不利な攻撃に、何度も酷い目に会いながら、スネイプは逃げ出すことなく杖を構えた。回数としては少ないけど、見事帰り撃ちにしたこともある。その強さを羨ましく思うとともに、スネイプの中に僕への敵意も増すのだろうと辛かった。僕の行いがそれに値することはわかっていたけれど。

同時に、ジェームスたちに対しても、複雑な思いを抱えざるを得なかった。そんなことがあっても、彼らは人狼の僕を受け入れてくれたかけがえのない友達であり、彼らの友情がなければ、僕は何者でもない。そして実際、彼らといるのは楽しく、誇らしかった。スネイプのことさえ除けば、彼らは明るくて勇敢で、友情に厚い皆の人気者なのだ。

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tag : ハリーポッター ジェームス スネイプ リーマス

(過去2)リーマスの物語4

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)


「あの屋敷さ、ときどき一晩中、叫び声が響き渡るよね。化け物が出るって話だよ。」

「昔あそこで死んだ生徒の霊が漂ってるんだってきいた。」

「え~?怖い!」

「ビーブスのいたずらでしょ?」

「だってあそこホグズミードの村だよ。ビーブスはホグワーツの敷地から出られないさ。恨みを残した死者の霊に呼ばれて、生徒が一人また一人と姿を消していく・・」

「やめなさいよ、ばかばかしい。」

「よし!度胸試しだ。僕が行ってやっつけてやる。グリフィンドールの勇気を見せてやるんだ!」

夕食時に周りから聞こる話に気が滅入った。満月の夜僕がこもる屋敷の話だ。最近では『叫びの屋敷』と呼ばれて怖がられてる。その叫びをあげてるのが僕だと思うと、、、心の中でため息をついた。明日は満月だ。

「どうしたの、リーマス、元気ないね。また具合悪いの?」

「そんなことないよ。」

僕をのぞきこむように声をかけてきたピーターに答え、ごまかすようにスープを飲んだ。なんとか気持ちを引きたてなきゃ。様子がおかしいと思われないように。今夜の沈んだ僕の様子と、明日の夜の叫び声を結びつけられたら困るから・・。

そうだ、満月が明けたら、スネイプを林に誘ってみよう。もう春だもの。温かくなると冬の間潜んでいた魔法生物が出てくるんだよって言ってみよう。あれからもう何か月もたってしまったけど、あの時のスネイプの無邪気な表情や、心が安らぐような、湧き立つような楽しい気分を思い浮かべてみる。エバンスに見せたかわいい笑顔を、そのうち僕にも向けてくれたらいいいな。闇の中に灯る小さな明りのようなスネイプの笑い顔・・・。僕はようやく笑顔を浮かべ、みんなの話に加わった。


満月の翌朝は最悪だ。ズキズキとした痛みと、裸の肌に感じる寒さに目が覚める。冬の朝の寒さに比べたらましになったけど。もう癖のようになったため息をつくのに息を吸うと、生臭い血の臭いが鼻をついた。また咬んだらしい。一番ひどいのは腕だ。くっきりと牙の跡が、いくつも残っている。指先の擦り傷は石の壁を引っ掻いたんだと思うけど、肩の打僕はなんだ?外に出ようと壁に体当たりしてできたのか?あちこちの関節もきしむように痛いし、、、

「最悪だ。」

声に出して言ってみて、それからのろのろと立ち上がった。血を拭って服を着る。早く医療棟に行かないと、春の陽気に誘われて、早起きの生徒が外に出てくるかもしれない。暴れ柳につながる狭い通路を抜けて、医療棟に急いだ。

「おはよう、リーマス。頑張ったわね。こちらにいらっしゃい。」

いつものようにマダム・ポンフリーが迎えてくれた。傷の処置を受け、回復薬を飲んでベッドに倒れこむ。人狼の傷の治りは早いから、ほっといたって2、3日で消える。手当を受けるのは、あまりに傷の治りが早いのに気づかれないためなんだとか荒れた気持ちで考えながら眠りについた。

夕方寮に戻り、ベッドでうとうとするうちに夜になり、お腹がすいたから大ホールに行こうかと思いながらぐずぐずしていると部屋のドアがノックされた。

リーマス、起きてる?具合はどうだい?」

ジェームスシリウスが部屋に来た。シリウスは食べ物をのせたお皿を持っていて。

「じゃーん。大ホールからもらってきた。食えるか?」

「ありがとう、ちょうど何か食べたかったんだ。」

まだみんな大ホールで夕食の最中だ。3人で皿の食べ物をつまむ間、ジェームスシリウスは今日の授業の話や一日の出来事を話してくれた。そして食事が終わると。

リーマス

いつになく真面目な顔のジェームスに名前を呼ばれて、僕も姿勢を正す気分で向き合った。

「なに?」

「友達の間で隠し事はしたくないから言うことに決めた。僕たち、」

いったん言葉をきって隣のシリウスとうなづきあうと、まっすぐな視線を僕に向けた。

「僕たち、君の秘密を知ってると思う。」

胸の鼓動が急激に激しくなった。僕の秘密・・・。僕の秘密を知っている・・・

僕の正体のこと?人狼だって知られてしまった?食べたばかりの食事が胸に突きあげ、体が小刻みに震え出す。身を固くして、声に震えが現れないように、ようやく言葉をしぼりだした。かすれた声が、自分の声じゃないみたいに聞こえる。

「僕の秘密って、なんのこと?はっきり言ってほしいな。」

「君は、人狼なんだろう?」

はっきりと問いかけるジェームスの声。恐れていたことが現実になった・・・。

そうなんだと、言おうと思ったけど、声が出ない。なに言ってるんだって笑い飛ばしたい。そうしたら、ごまかせるだろうか?

2人のまっすぐな視線から逃げるように下を向いた。一瞬空白になった頭の中に、5歳の時僕に石を投げつけた子供たちの顔が浮かぶ。恐怖に後じさりするおばさんたち、罵るおじさんたち、忌まわしい人狼の呪い、近づくな、出て行け、この町から消え失せろ、退治してやる。

いつだって、恐怖、嫌悪、罵倒、そして排斥。幼い頃からの様々な経験が蘇り、身がすくむ。かあさん、とうさん、ごめんなさい。ダンブルドア先生、僕は正体を隠し通すことができませんでした。もう、すべて、終わりだ。

身動きも、息すらもできない思いで、爪が食い込むほどに手を握り締め、身を固めているしかなくて・・。そのとき。

ふわりと、やわらかく、両肩に手が置かれた。

リーマス、大丈夫?怯えないで。僕たちは君の味方だ。友達だよ。」

耳が聞いた言葉が、理解できない。僕の味方?友達?だって僕は。

「だけど僕は、、、人狼なんだよ?」

「うん、知ってる。そして君は、僕たちの友達だ。」

力強くうなづきながら、ジェームスが言った。気がつくとシリウスは僕の肩に腕を回している。

「オレたち、友達だろ?おまえは俺の、一番の友達さ。」

何が起こったのか理解できないまま、僕は抱きしめられて、僕も2人を力いっぱい抱きしめる。

リーマス、僕は君と友達でいられて嬉しいよ。うつむくことはない。僕は君を誇りに思っている。」

ありがとう、と声に出して言えたのかわからない。泣いて、笑って、体の芯から嬉しくて。人狼の僕に、友達ができた。僕を人狼と知って、友達と言ってくれる仲間がいる。こんなことが起こるとは、思ってもみなかった。そしてそれは、なんて心強いことだろう。

最悪なことばかりの僕の人生で、最高の出来事だ。

翌朝はジェームスシリウスの顔を見るだけで嬉しくなった。それから、もう1人の仲間、ピーターにも告げるべきだということになった。ある意味特別なジェームスやシリウスと違い、普通のピーターの反応は心配だったけど、もう1人じゃない、友達の支えを得た僕は少し勇敢になれた。

4人で集まり、僕が人狼なんだと言うと、ピーターは一瞬体をのけぞらせたけど、なんとか踏み止まってくれた。そして。

「リーマス、何があっても僕たちは友達だよ。今まで1人で、たいへんだったね。」

ピーターの言葉に、また僕は涙ぐむ思いだった。普通に魔法界で育てば、普通に人狼は怖い。ピーターが勇気を振り絞ってくれたことが僕にもよくわかる。

「ありがとう、ピーター。」

今度は僕もはっきりと言えた。

「リーマスはさ、気にし過ぎなんだよ。そういうのなんて言うか知ってるか?自意識過剰っていうんだぜ。」

シリウスがピーターと僕の肩をポンポンと叩きながら言う。

「そう、君はただちょっとした、毛むくじゃらな問題を抱えてるってだけさ。」

ジェームスが言って、4人で大笑いになった。それからしばらく僕たちは、顔を見合わせるだけでにやにやするような、友情のユーフォリアみたいな高揚感に包まれて、いつも一緒にいた。そんな僕たちに周りの仲間が怪訝そうな顔をしても、俺たちは真の友情を見つけたんだとか茶化し返すシリウスと一緒にいれば、もう何も怖いことはない。

秘密を隠そうと必死だった頃は疎ましくさえ思えたジェームスとシリウスの明るさも、秘密をあかして打ち解けてみれば、共に光に包まれているように誇らしく感じられた。彼らの放つ光は本物だった。こんな彼らを警戒していたことが、馬鹿馬鹿しくも、申し訳なくも思えてくる。素晴らしい、誇るべき、光に満ちた僕の友達。

スネイプのことを忘れたわけじゃなかったけど、僕の正体を知っても受け入れてくれる友達を得た喜びは大きかった。その晴れがましい現実の前で、孤独な僕の心が空想の上に築きあげたスネイプへの想いは、幻のように頼りなかった。暗闇では温かく灯って見えた明りが、まばゆい光の中ではかき消されてしまうように。

次の満月には、仲間から頑張れよと励まされて叫びの屋敷に向かい、翌日には傷ついた体をいたわってもらえた。その喜びのうちに学年末になり、夏休みには心配げな顔で僕を迎えるかあさんに、僕を人狼と知る友達ができたんだと報告することができた。母さんも父さんもすごく喜んでくれて、僕が頑張ったからだと褒めてくれた。

そして家にも嬉しい出来事があった。母さんのお腹に、僕の弟か妹がいるんだって。僕が家を出たから、母さんたちも幸せをつかめたんだと少しだけ寂しい気もしたけど、もちろんそれよりも喜びが勝る。僕はホグワーツに本当の友達ができて、かあさんたちには人狼じゃない新しい子供ができる。家族みんなが心から幸せだと思えるなんて、何年振りだろう。僕には支えてくれる友達ができたから、もう母さんたちに苦労はかけないと心の中で誓った。

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Happy Birthday, Prof.Snape!

今日1月9日は、スネイプ先生のお誕生日。

スネイプ先生、
お誕生日おめでとうございます!


世界中でたくさんの人がお祝いしてますね。
先生の元にみんなの気持ちが届きますように。
と思ってタイトル英語で言ってみた。

スネイプ先生は1960年生まれなので、54回目のお誕生日。
『賢者の石』の映画公開が2001年なので、
演じたアラン・リックマンさんは撮影時に54歳くらいだったわけですね。

ハリーポッターと賢者の石の頃↓
スネイプ賢者の石


実際のリックマンさんは60台後半になられるわけですが、
最近の映画で、こんな可愛い笑顔をなさってるようです。
眉間の縦じわが2本になってる^^
年を重ねた先生がこんな笑顔でいられるといいな~
大統領の執事リックマン

こちらの映画『大統領の執事の涙』は、2月15日から日本公開だそうです。

歴代7人のアメリカ大統領に仕えた執事さんのお話のようですが、
その中でリックマンさんはレーガン大統領を演じられるとのこと。
目もお髪もダークカラーなので、将来先生が短髪にしたらこんな感じかな?

*画像はこちらのブログから拝借しています。
拝借のお許しがいただけなかったら削除します。

そして同じブログに、こ~んな素敵な記事がございましたヨ!

もしスネイプ先生とリリーが結ばれて、
ハリー・スネイプ君が誕生していたら・・とか、
もしリックマンさんがスネイプの年齢で演じていたら・・とか、
鼻血出そうに妄想が刺激されました^^

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(過去2)リーマスの物語3

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


次にスネイプと話す機会は、意外と早くやってきた。あの魔法薬学の授業からしばらくたった週末の朝のことだ。同年代の子供たちが集まる寮で、授業が休みの日となればみんながはしゃぐのも無理ないけれど、複雑なものを抱えた僕にはちょっとついていけないとこもある。朝食の後の、寮の談話室での騒ぎを逃れて、僕は図書館に行った。

図書館の奥の人けのない机に行くと、壁際の隅にスネイプが座っているのが見えた。隣にはグリフィンドールのリリー・エバンスがいて、2人で頭をくっつけるように何か話している。積み上げられた本の向こうに時々スネイプの笑顔が見えて、なんだか僕は得した気分になった。僕も仲間に入れてもらいたいたけど、じゃましちゃいけないと思い、長い机の反対側の端に座り、顔の前に本を立てて気づかれないように様子をうかがっていた。

グリフィンドールとスリザリンは仲が悪いから、寮の違うスネイプとエバンスは人目につかないように、こんな席を選んでいるのかもしれない。魔法使いと人狼の隔たりを思えば、同じ魔法使い同士、寮の違いでけんかするなんてばかばかしいと思う。だけど、競い合って成長するという名目のもと、実際は互いにいがみあってばかりだ。だからこそ、うなづいたり横に振ったりしながら寄り添う黒髪と赤毛が微笑ましく思える。

しばらくするとエバンスが立ち上がり、スネイプに小さく手を振って歩き出した。グリフィンドールでは魔女たちが先輩に編み物をおしえてもらうと言っていたから、きっとエバンスもそれに加わるんだろう。スネイプはエバンスの後ろ姿を目で追って顔を上げ・・・僕と目が合い一瞬身構えた。

「おはよう、スネイプ」

スネイプが顔を背ける前にいそいで僕は声をかけ、スネイプの向かいの席にうつった。訝しげに僕を見るスネイプの眉間に縦じわが寄っていくのがちょっと残念だ。でも勇気を出してもう一度、はっきりと。

「おはよう、スネイプ。この前魔法薬学で一緒だったよね、僕、リーマスだよ。」

ルーピン、何か用か?」

名前は覚えてくれていたようだ。スネイプの物言いはぶっきらぼうだけど、これはスネイプ的には、リーマス、おはようと言っているに違いないと思うことにする。

「君は何をしているの?」

言いながらのぞきこんだスネイプの手元には、羊皮紙が2枚。1枚は魔法薬学の宿題らしく、みっちりと書き込まれている。もう1枚はほとんど白紙で、読みにくい字で「僕が魔法生物と会ったのは、」と書きかけただけのようだ。

「ああ、闇の魔術に対する防衛術の宿題?」

気軽に問いかけたけど、スネイプの眉間の縦じわがみるみる深まっていったから、言っちゃいけなかったのかもしれない。話をかえてみよう。

「魔法薬学の宿題はもう終わったんだね?」

スネイプが片方の眉を吊り上げてうなづいた。魔法薬学の話ならしてもいいみたいだ。

「君は魔法薬学が得意なんだよね?僕は苦手で困ってるよ。」

魔法薬学の宿題は、授業で作った水薬の材料植物と調合について、詳しくまとめることになっている。教科書のまる写しだけではダメで、材料植物の生育に適した気候、葉の色や臭いとか調合時の水薬の色の変化とかを詳しく記せというもので。

「僕は鼻がよすぎて材料の臭いは頭が痛くなっちゃうし、目は色弱ぎみで色具合はあんまりわからなくて。魔法薬学の宿題は行き詰ってるんだ。」

そう言いながら、僕は全然進んでいない宿題の羊皮紙を広げて見せた。スネイプはあきれ返った顔をしながら、自分の羊皮紙を見せてくれた。僕が喜んでその読みにくい字を読みながら書きうつそうとすると。

「まる写しでは宿題の意味がない。」

怒られたのかと思ったけどそういうわけじゃなかったようで、スネイプは魔法薬の講義を始めた。会話は苦手だけど、説明となると細かいことまでよくしゃべる。僕は半分もわからなかったけど、わかった分だけ羊皮紙に書いて、あっという間に魔法薬学の宿題がしあがった。と思ったら、スネイプは僕の書きあげた羊皮紙をチェックして、何箇所か印をつけ、その部分は書き直せと言った。人当たりが悪いだけで、けっこう親切なとこもあるんだ、スネイプは。

「ありがとう、助かったよ。じゃあ、今度は闇の魔術に対する防衛術の宿題だね。君はこの科目も得意なんだろ?」

スネイプは闇の魔術にすごい長けてるっていうから。だけどスネイプは下を向いてちょっと悔しそうな顔をしている。

今週の防衛術の宿題は、次の授業で初めて魔法生物について学ぶから、今までに魔法生物と実際に出くわした時の体験と、その体験から学んだことを書いてきなさいというものだ。マグル出自で魔法生物を知らない生徒は、人に聞いた話から調べてまとめてもいいことになっている。魔法生物への興味を高めるための宿題で、たいして難しいものじゃない。

スネイプが黙ったままなので、重ねて言ってみた。

「僕は魔法生物の勉強、楽しみなんだ。君は何の話を書くつもりなの?」

「・・・。僕、魔法生物なんて、知らない。」

「?」

意外な言葉だ。僕みたいに魔法使いの街から追い払われて魔法生物が多い森との境あたりを転々としていたわけでなくても、古い屋敷ならいろんな魔法生物が住みついているし、原っぱや森に遊びに行けばちょっとした魔法生物に出くわすことは多い。見ることがなかったとしても、魔法界では言うことを聞かない子供は魔法生物にさらわれると親が脅かしたりするから、魔法生物を全然知らないなんてありえないんだけど。

でも、スネイプは知らないらしい。

それきり口を閉じて羊皮紙をにらんでいるスネイプを見ながら、また空想が広がった。スネイプは吸血鬼じゃないかっていうお気に入りの空想だ。スネイプは数百年の眠りから覚めてホグワーツにやってきた吸血鬼の子供かもしれない。棺の中で眠っていたら魔法生物に会うことなんてないもの。目覚めたばかりの吸血鬼の秘密の友達になって、いろいろおしえてあげるなんて思うとわくわくする。

「ねえ、スネイプ、魔法生物を見たことがないんなら、これから一緒に森に行こうよ。禁じられた森の、ほんの入口あたり。魔法生物がいっぱいいるよ。その辺りなら危ないのは出てこないし、僕、魔法生物の扱いは得意なんだ。君には魔法薬学で助けてもらったから、今度は僕が手伝ってあげる。」

スネイプは驚いたようで、戸惑った顔をした。僕の申し出を疑ったのかもしれないし、禁じられた森に近づくという規則破りと、宿題ができるかどうかということを天秤にかけていたのかもしれない。

「こんな昼間ならこわいことないよ。」

あ、でも昼間だから外の日差しにあたることを心配してるのかな?吸血鬼は日差しを浴びると灰になってしまうっていうけれど。

「こわいなんて、思ってない。」

スネイプはむっとしたように言い返して、荷物をまとめて立ち上がった。僕を待っているみたいだから、行く気になったってことだ。僕はウィンクして、、、それは無視されたけど、、、すぐ立ち上がり、一緒に禁じられた森の入口に向かった。陽のあたる外に出るのを躊躇うようでもなかったから、吸血鬼じゃないってことなのかな?ちょっと残念な気もする。

赤や黄色にかわった葉が落ち始めた林の小路を通り抜け、うっそうとした森に近付くと、スネイプは明らかに緊張したようだった。それは魔法生物を恐れてというより、森に近づく姿を人に見られるのを心配したようで、振り返って周りの様子を確かめていた。

「ほら、見て、あそこ。」

禁じられた森の木の後ろから顔を出した半透明の白い影を指差すと、スネイプが目を丸くした。

「あれは、木霊。木の周りを漂ってるだけ。暗闇で急に現れるとびっくりするけどね、何も悪いことはしないよ。それから、ほら、あれ。」

木の根元にうずくまる、一見ウサギを指差してみせた。

「かわいく見えるけど、近付くと大きな影に化けて人を驚かすんだ。こうすればいいのさ。」

膨らみかけた影に、杖を上げて近くの小石をぶつけると、キーーンと奇妙な鳴き声をあげてウサギの姿に戻り、走って逃げていく。

「わぁ。」

スネイプが無邪気な声をあげた。僕は得意になって、岩陰の魔法蜘蛛や、木立からこちらをのぞくキツネモドキを見つけてはおしえてやった。スネイプはそのたびに、目を丸くしたり、声を出さないまま「わぁ」というように口を開けたりしている。いつもの気難しげな顔がうそのような素直な表情は、まるで幼い子供みたいだ。

そのうち沼からはい出した水棲生物が現れて、これはほんとに危いから杖で追い払うと。

「君、すごいんだ。」

思いもよらないスネイプの褒め言葉に嬉しくなって、本音が漏れた。

「魔法生物、好きになった?僕ほんというと、人間より魔法生物のほうが慣れてるんだよ。」

ていうか、僕自身、魔法生物なんだ、とまでは言えないけど。でも、言えたらいいなとも思う。僕、ほんとは人狼なんだって打ち明けて、スネイプが僕もそうなんだとか、僕は実はヴァンパイアなんだとか答えてくれたら、今まで誰にも言えなかったいろんな思いをみんな話して、いっしょに秘密を守っていこうって言いあえたらどんなにいいかと思ったりする。

「僕は初めて見た。これで宿題が出来る。」

スネイプらしい、会話を盛り下げる反応に、僕の空想はいったん幕を下ろした。でもスネイプの素直な表情を見られただけで充分だ。

「また図書館でいっしょに宿題してもいい?エバンスといるときは遠慮するから。」

そう言うとスネイプは小さくうなづいて、ちょっとだけ僕に笑いかけてくれたような気がする。

次の週末にも、図書館で顔を合わせた僕とスネイプは、禁じられた森に行った。僕はまたいくつか魔法生物を見つけておしえてやり、今度はスネイプも魔法生物に杖を向けた。闇の魔術かと思われる、それらの魔法生物には威力あり過ぎな術で追い払うのをあわてて止めて、そんなに強い術じゃなくていいんだと言って適度な術をしてみせると、スネイプも素直に僕に倣った。

「たいていの魔法生物は人を驚かすだけだから、人間ほど恐れることはないんだよ。」

ついまた本音を漏らしてしまい、少しあわてる。僕が人を恐れていることを、口にしてしまった。正確には、人に排斥されることを恐れているんだけど。

スネイプは少し驚いたように動きを止めて、僕をじっと見た。その黒い瞳には、僕の古びたローブや気弱な顔だけじゃなくて、いつも必死に隠しているまとわりつく闇や孤独や、心の奥に潜む怯えまでも見えてしまうんじゃないか?でも、偽りない自分をむしろ見てほしいような気もして、スネイプを正面から見返した。闇も孤独も貧しさも、スネイプにだってなじみのものなんじゃないか?

「魔法生物は、知識があれば怖がる必要はないってことか?」

少ししてスネイプが言った言葉に、ああ、やっぱりスネイプの中にも人に対する怯えがあるんだと思い、でも僕はわかりあえる相手だと思ってくれたんだと思えてなんだか胸が熱くなる。

「そうだよ。」

笑顔でうなづいて、僕は警戒すべき魔法生物をおしえてあげた。たぶんそのうち授業で習うだろうけど、水棲生物や森の奥に棲むという巨大蜘蛛は危険だから近付かないこと。ケンタウルスなど誇り高い魔法生物に出くわしたら礼儀正しくしなければいけないこと。

それから勇気を振り絞って、人狼のことも。普段は悪い者というわけじゃないけど、狼に変身する満月の夜だけは人の意識を失って凶暴になってしまうから近づいてはいけないと。人狼を罵倒する言葉を返されたらどんなに悲しいかと思ったけど、スネイプはただうなづいてきいてくれた。

それ以外の魔法生物は可愛いもんだよと言って、また魔法生物を見つけたり、林で術の練習をしたり、スネイプが見つけた薬草の講義をしてくれたりしているうちに、あっという間にお昼になって、僕は名残惜しく林を後にした。スネイプと一緒にいたのはほんのわずかな時間だったけど、そのひと時が、僕は心から楽しかった。

グリフィンドールの仲間たちは身近にいるから、僕は人狼であることを気づかれてはならないと、いつも警戒している。人当たり良くみんなといるけど、僕は見えない壁をはりめぐらして、その中で忌まわしい秘密を抱えて怯えながら、周囲に合わせて自分を偽っている。何より勇気を称えるグリフィンドールで、そんな自分が嫌になることもあるし、孤独を感じずにはいられない。

だけどスネイプといる時は、そんなこと忘れてた。人狼であることを忘れたわけじゃないんだけど、どこか秘密めいたスネイプと一緒にいると、秘密が重荷に感じられなかった。もしかしたら吸血鬼かもしれないスネイプと、人狼の秘密を持つ僕と、2人だけで空想の世界にいるような気がした。その世界では、秘密も孤独も普通のことだ。スネイプとなら、僕は自分が作る見えない壁から解き放たれて、ただ普通の子供でいられたんだと思う。

もちろん、実際にはスネイプは吸血鬼なんかじゃない可能性が高いとは思っている。闇や怯えや孤独を抱えて周りに心を開けない内気な子供が2人、少しだけ周囲との壁を意識せずに過ごせたというだけのことかもしれない。でもそこには確かに通じ合う何かがあった気がする。スネイプと過ごしたひと時を思うと、小さな赤い火に手をかざすような温もりが感じられた。

そんな、僕としては珍しい高揚感に包まれて、そのままスネイプと空想めいた2人だけの世界で仲良くなれるような気がしていたんだけど、一緒に無邪気な子供でいられたのは、それが最後になった。

翌週末は満月で、その翌週はずっとエバンスがいて声をかけそびれ、その後もスネイプが現れなかったり僕が図書館に行けなかったりして、そうしている間にクリスマス休暇になった。休み明けのスネイプはいつにも増して思い詰めた感じで話しかけられず、その頃なると、こんな寒い時期に森に行こうと誘うのはおかしいんじゃないかと気遅れしてしまった。

それでも僕は、スネイプを見かけるたびに、林で垣間見た素直な表情を重ねながら空想をめぐらし、春になったら、温かくなるのを待っていたんだと言って、絶対また誘おうと思っていたんだけど。

春が訪れてまもなく、僕の人生を変える大きな出来事が起こった。それは僕が想像すらできなかった幸せなことで、現実に手にすると、孤独な心が描いた空想の世界の小さな明りなどかき消してしまうほどの、まばゆい光だった。

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