スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(過去2)リーマスの物語10

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)


夏休みの後半にはホグワーツからふくろう便が届く。新年度の知らせと必要な教科書リストだ。今年はもう一枚羊皮紙が入っていて、、、それは僕がグリフィンドール寮の監督生に選ばれたという手紙だった。封筒を逆さにすると、監督生のバッジも入っていた。

母さんは僕が恥ずかしいくらい喜んでくれたし、父さんは僕のことを誇りに思うと褒めてくれた。その日の夕食はささやかながら母さんの心づくしのお祝いの料理が並んだ。

監督生に選ばれるのは、だいたい成績のいい模範生だ。寮生の模範となって下級生や他の寮生を指導したり、必要なら罰則を与える権限もある。僕より成績のいいジェームスを差し置いて僕が監督生でいいのかとか、人狼の秘密を持つ身としてはちょっと重荷に感じられるとこもあるけど、やっぱり嬉しい。

新学期初めの日、ホグワーツ特急でジェームスたちに会ってこのことを話すと、みんなちょっと意外だという風を漂わせながらも、頑張れよと祝ってくれた。シリウスはスリザリンのヤツらをビシバシやっつけてくれ、あ、でも俺たちに罰則はなしで頼むぜとか言って笑ってたけど、ジェームスは口数が少なくて、少し気まずい。ジェームスだって、何でも一番の自分が監督生になるのが当然だと思ってただろうから。

でもそんなことをあれこれ考える間もなく、彼らとは別の、監督生専用のコンパートメントに集合した。5年生からは各寮男女1人ずつ監督生が選ばれることになっていて、グリフィンドールの女子の監督生はリリー・エバンスだ。エバンスと組になってホグワーツ特急を見回るのが監督生としての初仕事だった。

入学式で寮に組分けられてきた新入生の世話をしてあげるのも監督生の役割だ。僕がそうだったように不安で緊張している子もいれば、はしゃぎすぎて羽目をはずす子もいる。監督生として新入生を迎え入れ、校長先生の話の後に晩餐会が始まってほっとしていると、ジェームスが話しかけてきた。

「監督生は大忙しだね、リーマス。特急の見回り、ご苦労さん。で、エバンスはどんな感じだった?」

「え?エバンス?彼女は優秀だしきちんとしてるから、もちろん監督生としてもしっかりやっているよ。」

「それはそうだろうけど、つまり、僕のこと、なんか言ってたかな?」

ジェームスの少し照れたような言い方に、並みならぬ興味がうかがえて、つまりこれは本気ってことかとやや引いていると、シリウスが口を出して茶化してきた。

「つまり、エバンスが自分に気があるか知りたいってことだな、ジェームスは。」

僕はますます口ごもる。僕は人の気持ちに敏感なほうだから、ジェームスがエバンスを気にしていることには薄々気づいていた。エバンスは誰からも好かれているから、ジェームスが気に入ったって不思議はない。でもジェームスだってモテるんだから、よりによってスネイプと親しいエバンスを好きになってほしくない。それで気づいてないことにしてたんだけど。

からかうシリウスにそっぽを向いて、何気ない風に笑って僕を見るジェームスの目の奥に真剣さが感じられて、僕は内心ため息をついた。たしかにジェームスとエバンスはどちらも優等生の人気者どうし、美男美女の似合いの2人といえる。ただエバンスがジェームスを嫌っていることをのぞけば。

「いや、特に何も言ってなかったよ。監督生の役割とかそんな話しだけ。忙しかったしね。」

僕が答えると。

「残念だったな、ジェームス。」

「ふん、そのうち僕の魅力に気がつくさ。」

ジェームスがちょっと悔しさをにじませながらも笑って言ったから、その話は終わった。

だけどほんとのところ、一緒に見回りをしながら、僕はエバンスから、監督生なんだから、特定の生徒だけかばったりしてはダメよと釘を刺されていた。名前は出さなかったけど、あきらかにジェームスとシリウスのことだ。それは君にまかせるよと笑ってごまかしたら、キッと睨まれるおまけつきで。

僕はエバンスと親しいわけではないけれど、彼女のまっすぐな強さに憧れる。僕自身があきらめきってしまったスネイプのことを、彼女にはずっと見守っていてもらいたいと思っている。学年が進むにつれて、寮の違うスネイプとエバンスが一緒にいる姿を見かけることは少なくなったけれど、スネイプにとってエバンスが特別な存在であることにかわりはないと思うから。1年生の頃にスネイプがエバンスだけに心を許していたのを僕は見て知っているし、その後スネイプが他の誰かと心を結べるほどの社交性を持っていたとは思えない。

異性への興味が募る年頃になって、2人の間に恋愛感情が芽生えているのかはわからないけれど、スネイプの人間関係というのはもっとずっと幼児的な、根源的な段階に留まっているように思えた。つながる術を見いだせず、身を守るために1人身構えて、ただ生きるだけで必死だ。それは信頼できる友を得る前の僕の寂しさや心細さを投影しているだけかもしれないけど、快活で友達の多いエバンスとスネイプを思うとき、暗い道を母親の手にしがみついて歩く幼い子供を描いてなんとも切なくなる。

スネイプも3年生のときには上級生と、最近は何人かのスリザリン生と一緒にいるのを見かけるけれど、いつだってどこか周りから浮いているぎこちなさが漂っていて、スネイプがエバンスといた時や、僕が仲間たちといる時みたいな幸せな一体感は感じられない。

スネイプのエバンスへの思いが何と呼ばれるものかは定かでないけれど、スネイプにとってエバンスが変わることないオンリーワンの存在であることは間違いなく、そのエバンスがジェームスのナンバーワンになってしまうことは、なんだかとても不運で哀しいことに思われた。

エバンスがあんな美人で優秀で人柄もよい女の子でなければよかったのに。それでもスネイプはエバンスを慕うだろうけど、それならジェームスが彼女に惹かれることはなかったかもしれない。ただでさえ相性の悪いジェームスとスネイプの間に、双方か一方的にかわからないけど、恋敵の感情までも混じってくれば、一体この先どんな不幸が起こるかと思うと、、、

とここまで考えて、我に返った。何考えてるんだ、僕は。スネイプのことはもう忘れることにしたんじゃないか。浮かんでくるもやもやは、胸の奥底につくった小さなスネイプの箱に放りこんで考えないことにする。

この避難的ともいうべき対応は、わりとうまく機能した。5年生は科目も宿題も増えて忙しいし、監督生の役割もあり、気持ちを他に向けやすい。それに、夏休みにアニメガスの術を完成させた仲間3人と僕は、新しい楽しみを見つけていた。

それは、ホグワーツの隅々までを探検し、隠し通路や秘密の場所まで含めた地図を完成させること。そしてその時誰がどこにいるか浮かび上がるようにする。ジェームスが言い始めて、僕たちはみんなそのアイデアに夢中になった。完成したら、仲間4人の勇気と冒険の証しとし、『忍びの地図』と名付けて、僕たちだけが使える秘密の地図にする。

すでにジェームスの秘密マントを使って先生たちや用務員のフィルチさんの後をつけたりして、ホグワーツ城内はかなり探検ていた。これからは動物の姿になって、城外の敷地も思う存分探検できる。これにはもちろん、夜こっそり外に脱け出して徘徊するという校則違反行為も含まれる訳で、模範生たる監督生としてまずい面もあるけれど、校則違反も勇気のうちと言われて納得してしまった。

こんなふうに楽しみが勝って過ごすうちに、満月がやってきた。僕はいつものように、マダム・ポンフリーに連れられて叫びの屋敷に行き、外からしっかりと施錠してもらっていつもと同じ憂鬱な変身の時を迎えたのだけど。

湿った何かに顔をつつかれて気がつくと辺りは明るく、目の前にまっ黒な犬の鼻があった。え!っと驚いて体を起こすと、ここは・・・。

「ほら、君の服。ポケットに入れて持ってきた。」

鹿がジェームスの姿に戻って、服を渡してくれた。アニメガスは身につけた物そのまま姿を変えられるけど、人狼にそんな自由はない。まったく僕だけ裸なんて。急いで服を着ながら、前夜のことを問いかけようとすると。

「話は後で、ムーニー。見つからないうちに早く戻ろう。」

ジェームスと僕と、鼠を乗せた黒犬とで、林をかけぬけて暴れ柳の下まで来た。

「最高の夜だったな!」

人の姿に戻ったシリウスがウィンクしながら言う。だけどウィンクしてる場合じゃない。

「ねえ、君たち、どういうこと?まさか僕を叫びの屋敷から連れ出したの?」

「見ての通り、そういうこと。」

説明によれば、昨日の夜皆が寝静まってから、仲間3人は寮を脱け出してアニメガスに姿を変え、僕が変身した狼を叫びの屋敷から連れ出した。一晩一緒に禁じられた森を駆けまわり、月が沈んで僕が人の姿に戻ったということらしい。

「冗談じゃないよ。狼に変わった人狼を外に放つなんて。そんな危険なこと。」

「まあ、ムーニー、落ち着けって。危ないことなんか何にもなかったぞ。」

「僕たちが今まで何してたと思う?昨日の夜に備えて、ちゃんと安全な場所を確認してあったんだ。僕たちがアニメガスになったのは、満月の夜に君と一緒にいるためなんだから。」

「だけど、狼が勝手に走って行ったら?」

「それは大丈夫。シリウスはともかく、パッドフットは頼りになるんだ。もちろんプロングスもね。」

「万一ムーニーが暴れたら、俺たちが体をはって留めてやるから心配いらねって。それにな、言葉は話さなくても、動物どうしはなんか意思疎通できんだぜ。特に同じイヌ科のムーニーとパッドフットはな。ムーニーだってご機嫌だったさ。」

「リーマス、今の君を見てみろよ。傷一つなく、目覚めるとともにここまで走ってきたじゃないか。」

「今までさ、満月の翌日のボロボロのおまえを、俺たちが平気で見てたなんて思わねえよな?」

そう言われればたしかに、多少関節のあちこちにきしみを感じるにしても、叫びの屋敷で迎えた朝の、疲れ切った傷だらけの体とは全然違う。なんというか、満足した爽快感さえ感じられて。

「そういうわけさ。とにかく朝食の時間までひと眠りしよう。君はいつも通り医療棟に行けよ。マダム・ポンフリーが待ってるだろ?」

医療棟に行って、いつものように傷の手当てをというマダム・ポンフリーに、変身に慣れたせいか怪我はないから休むだけでいいんですとか言って、ベッドにもぐりこんだ。

僕のためにここまでしてくれる仲間への感謝と、変身した狼が万一にも人を傷つけたらという不安と、これは人狼の僕をホグワーツに迎えてくれたダンブルドア先生の信頼を裏切ることになるという罪悪感と、さすがに度を超えた規則違反じゃないかという反省と、頭に浮かぶ様々な思いを整理して今後のことを考えるべきだと思ったけど、心地よい眠気に誘われて一切を放棄した。

夕方になって寮に戻ると4人で集まって、昨日は無敵の狼もいたからいつもより奥まで行けたとか言いながら、忍びの地図に、ハリネズミの巣穴集落とか、毒蜘蛛の洞窟とか、この先ケンタウルスの聖地とか書き加えていった。僕が、え、そんなとこまで行ったのと驚くと、3人はその時々の話を詳しくしてくれた。それは記憶がないのが残念に思えるほどワクワクする冒険談で、その楽しさと、満月をともに過ごしてくれる仲間の友情への感謝とで、変身時に外に出るという禁忌を、僕はあっさり超えてしまった。

 にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ムーニー

(過去2)リーマスの物語9

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

ゴドリックの谷にあるジェームスの家は、間口はこじんまりとしていたけど、中に入ると奥行きがあって、外で見るよりずっと広い家だった。家というより小屋みたいなとこを転々として育った僕には比較なんかできないけど、たぶんすごく立派な部類に入ると思う。

招き入れられた部屋には、グリフィンドールカラーの真紅と黄金のタペストリーが飾られていた。

「ポッター家は代々グリフィンドール寮なんじゃよ。」

ジェームスのお父さんとお母さんも歓迎してくれて、なにかと話しかけてくる。ジェームスは遅くにできた一人息子だそうだから、2人ともずいぶん年配で、ジェームスの祖父母といっても通るくらいだ。壁には幼い頃からのジェームスの写真がたくさん並んでいて、溺愛ぶりが伝わってくる。お母さんは子供の頃のジェームスの話をしはじめて、生まれた時には天使が舞い降りたと思ったのだとか、2歳の頃にはもう箒に乗れたのだとか、尽きることなく話す。一見いかめしそうなお父さんも、ジェームスの話になると嬉しそうに目を細めていた。

「母さん、父さん、僕のだいじな友達を、いい加減解放してよ。バタービールとつまみ、僕の部屋に持ってきて。あとジュースもね。」

そんなジェームスに、お母さんは嬉しそうにうなずいていた。可愛い一人息子の言うことならなんでも嬉しいみたいだ。少し呆れながらジェームスの部屋に行くと、シリウスとピーターも来ていた。学校ではいつも一緒だけど、こうして集まるとなんか新鮮ではしゃいでしまう。僕がマグルの世界の話をするとみんな大喜びで、シリウスは絶対マグルのバイクを買うんだと騒ぎたてた。すごいスピードの出る乗り物で、時速150kmでぶっ飛ばしたら箒よりクールなんだそうだ。

ひとしきり盛り上がった後、ジェームスに促されてみんなで庭に出た。裏庭の芝生の向こうに広がるちょっとした林まで来ると、3人が僕に向かいあうように立ち止まった。

リーマス、君に見せたいものがあるんだ。」

3人が顔を合わせて笑ったと思うと、すっと姿が消えて。

僕の前には大きな牡鹿と、同じくらい大きな黒犬が現れて、それから小さな鼠がちょろちょろと走って黒犬の背中に乗った。牡鹿と背に鼠を乗せた黒犬は、少し走り回って僕の隣に戻ってきた。僕が目を丸くしていると、牡鹿がジェームスに、黒犬がシリウスに、小さな鼠がピーターに姿を変えて立ち上がった。

「すごい、君たち!今のはアニメーガス?」

「そうだよ、リーマス。君が人狼だとわかってから、ずっと練習してたんだ。満月の夜に君を一人にしたくなくてね。」

「ずいぶん時間はかかっちまったけどな。これからは一緒に森を走れるぜ。」

「難しかったけど、ジェームスやシリウスに助けてもらって、僕もやったよ!」

「ありがとう・・」

僕自身がなかば投げやりに見捨てて、できるだけ考えないようにしていた満月の夜の僕のことまで思いやっていてくれたなんて。動物の姿にかわるアニメ―ガスはすごく難しいし危険な魔法だ。魔法省に登録する必要もある。登録されたアニメ―ガスはほんの数人しかいない。ジェームスたちは登録してないから非合法なわけだけど。人狼の僕なんかのためにそれを成し遂げてくれたんだと思うと、胸が熱くなって言葉が続かなかった。

それからしばらく、アニメ―ガスができるまでの苦労話が続いた。僕の正体を知ってから、ジェームスとシリウスはどうしたら変身時の僕と一緒にいられるか考えて、アニメ―ガスを思いついたそうだ。古い名家のブラック家とポッター家の豊富な書籍を読みあさって密かに練習を重ねたという。

アニメ―ガスは単純に呪文を唱えればできるわけではないし、失敗すると人間の姿に戻れなくなったり、一部だけ動物の形態になったりする危険もある。実際、何度も試みて、ようやく変身らしきことができたとき、シリウスは足裏だけ犬の肉球になって、しかも数日そのまま戻れなかったそうだ。シリウスはクッションみたいだったと豪快に笑っていたけど、苦労がしのばれて、また胸が熱くなる。

次の満月には、日暮れ前に4人で深い森に行き、その後僕の狼と3人のアニメ―ガスで、一晩中森を駆けまわったらしい。僕は3人が動物に姿を変えたのを見届けて、少し離れた大木の影で服と杖を置いて空を見上げたとこまでしか覚えてないんだけど。

大きな黒犬の鼻先につつかれて気がつくと、夜が明けていた。いつもの関節のきしみこそ感じるものの、咬み傷の一つもない。もちろん打僕や流血もなくて、、、爽やかな気分だ。木立に囲まれた草むらに座りこんだ僕の周りで、牡鹿と黒犬と鼠が人の姿に戻った。

「俺たち、森の王者だったんだぜ。リーマス、すげーよ。森の怪しい生き物がみんな、おまえの姿を見て道をあけるんだからな。」

シリウスが興奮した声で言い、僕の隣に寝転がった。

リーマス、とりあえず服着ろよ。」

ジェームスに服と杖を渡されて、僕もあわてて服を着て、4人並んで草むらに寝転がった。見上げる空に夏の朝が明けてゆく。澄んだ空気がキラキラときらめいて、まぶしさに目を閉じると、今まで幾度となく繰り返してきた満月の夜のことを思い出した。

訳も知らぬまま地下室に入れられて、去っていく母さんや父さんを泣きながら見送った幼い頃。叫びの屋敷の陰気な壁。体中の痛みと生臭い血のにおいに目覚める朝。大きくなっていく夜空の月を見上げる絶望と孤独。

それが今朝は仲間に囲まれて・・・。胸にこみ上げる思いを上手く伝えられたらいいんだけど。

「ありがとう、僕のために。こんなふうに満月を過ごせるなんて、思ってもみなかった。」

「もっと早く出来たらよかったんだけどね。今まで一人でつらかっただろう?これからはいつでも一緒さ、リーマス。」

ジェームスの言葉をきっかけにみんな体を起して座りこむ。僕の肩を軽くつついてきたシリウスに寄りかかりながら、その心地よさに涙ぐみそうになった。

「君たちったら・・。ジェームス、シリウス、ピーター、ほんとに、ありがとう。」

「おまえが一番つらい時に一人で閉じ込めておいたりしないさ、俺たち仲間だもんな。」

リーマス、僕たちだって君といられて楽しいんだよ。ところで、その呼び方だけど。」

「え?」

「僕たち、今や無敵のアニメ―ガスなんだ。まあ君はそうじゃないにしても。」

「ジェームスは立派な角を自慢したくてしょうがないわけだ。」

それからみんなで、僕たちだけの秘密に相応しい名前を持とうということになった。ジェームスは牡鹿の立派な角にちなんでプロングス。大きな黒犬のシリウスは、足裏の肉球をあらわすパッドフット。鼠のピーターはちょろちょろ動く尻尾がキュートだということでワームテールと決まり、一人残った僕を3人がにやにや見ている。

「やめてくれよ、ウルフとかそうゆうの。僕の場合は洒落にならないから。」

あせって言うと。

「かっこいいと思うけどな、狼が気に入らないなら・・毛むくじゃらにちなんでファーリーとか?」

「でも今や全員、毛むくじゃらじゃね?」

「ムーニーは?」

「お、ピーター、それいいな。ムーンでルーニーのムーニーだ!」

「やあ、ムーニー。」

「なんだい、パッドフット?」

あとはもう、新しい呼び名で呼び合うだけで嬉しくなって盛り上がった。僕たちだけの秘密の名前。僕たちだけの秘密の姿。僕たちだけの秘密の夜。

「プロングズの名にかけて、僕はここに一生の友情を誓う。」

ジェームスが重々しい声で言って手を差し出すと、皆口々に友情を誓い、手を重ねた。胸苦しく感じられるほどの高揚感に包まれて、僕はこの友情を絶対守り抜きたいと思った。望むことさえあきらめていた真の友情を、手放すことなどできるもんか。一瞬スネイプのことが頭をよぎった気がしたけれど、それは形を為す前に胸の奥底に封じ込めた。

ジェームスの家に戻ってひと眠りし、食事をご馳走になった後は、別れがたい気分でおしゃべりに講じた。クィディッチや勉強の話、いたずらのアイデア、そして闇勢力の台頭の話になると、、、陽気なシリウスが顔を曇らせて、呟くように言った。

「ジェームスんちはいいよな、まともな親で。ああ、俺、家に帰りたくねえ。」

「君の家は、まあ、純血の誇り高きブラック家だからな。シリウス、また何かあったのか?」

「夏休みに帰るなり、大げんかさ。俺の親、がちがちの純血主義だからな。俺のことをバカだのなんだの言うが、俺に言わせりゃあっちの頭にカビが生えてるとしか思えねえ。まあそれはいつも通りと言えるんだが、レギュラスのバカが、、、。」

「レギュラスって君の弟の?スリザリンの1年下だよね?」

「ああ、俺と違って、おふくろのお気に入り。親の言うことを疑いもせずに信じ込んで育った。素直なだけで、大きくなったら話せばわかると思ってたんだが、純血主義にくわえて、従姉のベラの影響かヴォルデモートに憧れてる。夏休みの初めにマルフォイ邸の集まりに招かれたと舞い上がってたから、バカなことはやめてよく考えろと諭してたら、おふくろが口出して騒ぎたてた。そこうしてるうちにベラが乱入して俺に闇の魔法をかけてきてな。屋敷内で乱闘だぜ。まったく、やってられねえっつうんだ。」

こういう、名家ならではの悩みみたいな話になると、僕は驚いて聞いているほかない。庶民的な家のピーターも目を丸くするばかりで、結局はジェームスとシリウスの2人で話が続いていく。

「それはたいへんだったな、シリウス。うちにいたければ、もっといればいい。父さんも母さんも、僕の友達ならいつだって歓迎する。」

「ありがたい。恩に着るぜ、ジェームス。」

「それにしても、マルフォイ邸の集まりとなると、純血主義のスリザリンが集まって善からぬ相談でもしてたんだろうな。」

「純血主義万歳とか言ってたんだろ。ほとんどが卒業生や上級生だったそうだが、スネイプも来てたらしいぜ。下級生ではスネイプ先輩と僕だけが特別に招かれたんだと喜んでやがって、ほんとレギュラスときたら、バカでどうしようもない。よりによってスネイプなんかと一緒にされて喜んでるとは。最悪のバカだ。」

「ブラック家の影響を受けた君の弟には同情の余地があるけど、スネイプはマルフォイの目につくほどに、自ら好んで闇に傾倒しているんだからな。許せないヤツだ。」

家族との諍いのいら立ちをスネイプにぶつけるようなシリウスと、スネイプの名が出ただけで憎らしげに顔を歪めるジェームスを前に、こみ上げそうな苦い思いをあわてて胸の奥に封じ込めた。そして胸の奥深く、幾重にも封じた小さな想いに別れを告げる。

スネイプ、もう終わりだ。君への共感も、結びたかった友情も、あの雪の林の岩陰で、一度だけ抱きしめた痩せた体への思慕も、すべて終わりにする。昔わずかに垣間見た溶けるような笑顔も、君が吸血鬼かもなんて思った愚かしい子供の頃の空想も、全部忘れる。君が受けた嫌がらせになすすべなく目を背け続けた卑怯な自分への苦い思いと共に。だって・・・。

だって僕はジェームスとシリウスの友達なんだ。僕が君への思いのために、内心非難し続けていた何年もの間に、彼らは僕のためにアニメ―ガスの術に取り組んでいてくれた。彼らも君も、僕自身も裏切り続けるなんて、僕にはもうできない。君が言った通り、両方の味方なんてできないのだから、僕は彼らを選ぶ。僕は彼らの友情に報いたい。だからスネイプ、僕はもうすべて終わりにする。もともと僕だけの、空しい一人相撲だったんだし・・・

「どうしたの、リーマス、ぼんやりして?」

声をかけられて我に返ると、3人が僕の顔を覗き込んでいた。

「いや、ええと、、友達っていいなと思ってたんだ。」

焦って答えて笑顔を向けると。

「なんだよ、今さら。」

「俺たちはかたーい友情で結ばれてんだぜ、ムーニー。」

みんな、また秘密の名を呼びあって笑い転げた。僕も顔をくしゃくしゃにして笑いながら、心の中で思う。僕には友達がいる。忌まわしい人狼の呪いをも、ともに受け止めてくれる仲間たちが。この友情が、僕のすべてだ。


 にほんブログ村 小説ブログへ

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター リーマス ジェームス シリウス スネイプ

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。