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(過去2)リーマスの物語15

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

6年生は、5年時に比べると、ずっと穏やかに過ぎていった。僕にとってはということだけど。

振り返って思うと、5年生は、浮かれたり落ち込んだりと感情の起伏が激しくて、疲れる年だった。暴れ柳事件では、人狼である自分の本質や、埋められない仲間たちとの距離を思い知り、心には大きな傷が残ったけれど、思いがけないスネイプの癒しのおかげもあって、なんとなく受け入れられるようになってきた気もする。

満月のときには自分の意思ではどうしようもない凶暴な獣になってしまうし、それ以外の時は引け目を感じて卑屈になったり臆病になったりしてしまうけど、そんな自分となんとか折り合いをつけて、少しでもましな人間になれるように努めていくしかない。穏やかな気持ちの裏にはあきらめがあるわけだけど、それでもいいと思う。こんな僕でも、受け入れてくれる人がいるんだから。

僕は何度か、人狼の僕を受け入れてくれた人たちを数え上げてみた。周囲から排斥されながら、見捨てることなく僕を育ててくれた両親、ホグワーツに招いてくれたダンブルドア先生、ずっと世話をしてくれるマダム・ポンフリー、1年生の終わりに僕の正体に気づき友情を育んでくれたグリフィンドールの仲間たち。あれこれあって、完璧とは言えないけどやっぱりありがたい友達だ。そしてスネイプ。親しいわけでもないのに、偏見を交えず人狼をあるがままのものとして理解し、痛みをわかってくれた。これだけの人たちが人狼の僕を受け入れてくれるのだから、僕も勇気をもって自分の運命を受け入れ、辛くても惨めでも、なんとか前向きに生きていこうと思えるようになった。

グリフィンドールの仲間たちとの関係は、夏休みにジェームスの家に集まったりしているうちに、曖昧さは残しつつも、元通りの和やかなものになった。新学期が始まってホグワーツに戻ると、あいかわらずジェームスとシリウスは調子づいたままだったけど、自分が穏やかな気持ちになってみれば、さほど気になることもない。欠点を含めた自分を受け入れられれば、同様に他人の欠点も受け入れられるということかもしれない。

そんなふうに思えるのは、暴れ柳事件やOWL試験後のスネイプへのいたぶりのような、耐えがたいほどの事件が起こらなかったせいもあると思う。

ジェームスは、OWL試験後の事件の時に、エバンスから「巨大イカとデートする方がまし」と聴衆の面前で言い放たれたのがこたえたらしく、人前でスネイプをいじめるのは控えることにしたようだった。もちろん、せっかくあの事件でスネイプが墓穴を掘ってエバンスと仲たがいしたのだから、彼女を刺激するようなことはやめようという、ジェームスらしい計算もあるみたいだけど。

シリウスも、夏休みをジェームスの家で過ごしたことで、純血主義をめぐる家族との諍いのストレスが和らいだらしく、いつでも爆発寸前の勢いでスネイプに憎しみをぶつけるというほどでもなくなった。僕はある意味開き直って、スネイプへの嫌がらせには加わらないと宣言したし、気がつくとピーターもそれほど勢い込んではやし立てることをしなくなっていた。

それでも、顔をあわせればジェームス、シリウスとスネイプは即座に杖を向けあっていて、居合わせてしまえば僕は見て見ぬふりをする自分を内心罵っている。けれど、2人とスネイプの争いは、以前のような一方的に手の込んだ企みというよりは、多少ルールにはずれた決闘の様相を呈してきて、それもレベルの高い闘いだから、僕なんかが下手に庇えば、無駄に怪我人が増えるだけじゃないかと思えてくる。一対一でないのはフェアじゃないと思うけど。

実際、鬼気迫る感の増したスネイプは強くなった。たまに一対一でやり合ったらしいジェームスやシリウスが、怪我をしてスネイプを罵っていることもある。

僕は彼らの闘いの行方より、スネイプの思い詰めた表情が気がかりだった。OWL試験後の事件以来、スネイプとエバンスの仲はどうなっているんだろうと思う。あんな暴言は吐いたけど、スネイプにとって彼女は大きな支えだったはずだ。

6年生になってからスネイプとエバンスが一緒にいるのを見かけることはなく、そうは言っても、学年が進むにつれてもともと人目につくところで2人が話すのを見かけることはめったになくなっていたから、事件後に2人の仲がどうなっているのかわからない。スネイプの険しい表情や、前にも増してデスイーターになると噂されるグループと一緒にいるのを見かけることから、たぶん仲直りできてないんじゃないかと推測するくらいで。

スネイプと話したくて林をうろついたりしてみたけど2人で話すチャンスなんて訪れないし、OWL試験の結果、僕は当然ながら魔法薬学の授業を受けられないから、たまたまスネイプと組んで実習するような幸運も望めなかった。

やきもきしているうちに、寮の談話室にエバンスが1人でいるのを見つけた。運よく僕も1人だ。この機会を逃す手はないと話しかけた。

「やあ、リリー、今ちょっと話せる?」

「リーマス、何かしら?」

「スネイプのことだけど、君たちって最近、、、」

僕がスネイプの名を出すと、エバンスはさっと身構えた。

「スネイプとは話してないから私は何も知らないわ。ポッターたちに何を言われてきたのか知らないけど。」

エバンスの目がきつくなって、怒られてる気分になる。正直、僕はこの美人で優秀で正義感が強くて勇敢な魔女が、ちょっとだけ苦手だ。自分の勇気のなさを思い知らされる経験を積み重ねた結果、そうなってしまったわけだけど。美人なだけに怒ると凄味があって、なんといってもあのジェームスを言い負かす気の強さがあるんだから僕なんてかなうわけないし。そのまますごすごと引っ込みそうになったけど、いや、別に今は怒られるようなことしてるわけじゃないと、なんとか踏み止まった。

「ジェームスたちは関係ないよ。僕はただ、5年の終わりの出来事が気になって。君とスネイプ喧嘩したってきいたから。でも君だってわかってるよね、スネイプは動転してただけで、本気であんなこと言ったわけじゃないって。」

エバンスは訝しげな眼で僕を見た。なんだか値踏みされてるような居心地の悪さに耐えていると、しばらくして彼女は大きなため息をついて話し出した。

「それはわかってるわ。セブが私のことをあんなふうに思ってないことはね。でも、私と同じマグル出身の子たちのことは、、、穢れた血って、、、平気で言ってるのよ。だから咄嗟にあの言葉が出たの。そんな仲間とばかり付き合ってるから。」

「じゃあ、君は今でもスネイプのこと怒ってるの?君がつき放したら、スネイプにはそんな仲間しかいなくなるってことなのに。」

「リーマス、あの時のことだけじゃないの。私何度もセブに言ってきたのよ。闇の魔術に傾倒するのも、純血主義を仰ぐのも、間違ってるって。平和な時ならただの趣味ですんでも、闇陣営が台頭している今の世の中では、とても危険なことなんだって。デスイーターは邪悪だし、デスイーターになると言われてるセブの仲間たちだって、私の友達にひどいことをしてる。何度も言ったのにセブは真面目に取り合わないの。すごく軽く考えてるのよ。っていうか、考えてない。だから、私が本気で怒ってる態度を示せば、セブだって頭を冷やして考えてくれると思うの。」

「・・・」

「それにね、私がセブを庇うほど、ポッターたちの嫌がらせも激しくなるでしょう?実際、今年になってから、酷いことは起こってないわ。ポッターたちの嫌がらせなんかに気を取られないで、セブには冷静になって、自分のしてることを考えてほしいのよ。そうすればセブにだってわかるはず。きっと反省して彼らとの付き合いはやめてくれると思う。」

「そうすれば仲直りするんだね?」

「もちろんよ。だってセブと私は、、」

ちょうどその時、がやがやと寮生たちが入って来た。クィディッチの練習が終わり、選手や見ていた生徒たちが帰ってきたようだ。

「お、リーマス、エバンスと何話してんだ?俺たちも仲間に入れてくれよ。」

ジェームスとシリウスと、ピーターもやって来て僕を囲んだ。

「ああ、ちょっとね、、宿題のこと、きいてたんだよ。」

僕が取り繕っている間に、エバンスはつんと横を向いて立ち去っていた。



年が明けて3月に、僕は誕生日を迎えて17歳になった。いよいよ成人だ。もう大人だと思うと感慨深く、しっかりしなくちゃと気持ちが引き締まる感じがする。少し遅れて同じ3月にジェームスも成人すると、なんだか急に大人びた雰囲気になった。それまでが悪ふざけして騒ぎまくったり、ちやほやされてかっこつけたりしていただけに、僕は驚いたしシリウスは冷やかしたけど、ジェームスは動じない。何事か考えているようだった。

そして学年末が近づいた頃にはジェームスの傲慢さはなりを潜め、すっかり落ち着いた感じになって。

「リーマス、僕、ここ1、2年、嫌な奴だったと思う?」

「そんなことないけど。まあ、ちょっと調子に乗り過ぎた感はあったかな。」

「だろ?あれだよ、第二次性徴期ってやつ。僕ってほら、何やってもうまく行くから、思春期のホルモンに後押しされてもっと行ける行けるって感じでさ。今から思うと調子に乗ってかっこつけて、照れくさいよ。リーマスはいつも落ち着いてるから呆れてたんじゃないかって、今さら思ってね。」

「おー、ジェームス、大人だな。」

「おまえはまだホルモン全開か、シリウス?」

「俺はもともとワイルドな男っぷりが売りってことで。」

そういうシリウスも、以前に比べれば少しは落ち着いてきたと言える。シリウスは去年のうちに17歳の誕生日を迎え、その際、やはり純血主義のブラック家に反発して家系図から抹消されている叔父さんが経済的な援助を申し出てくれたそうだ。実家とは縁を切って我が道を行くことを決め、苛立ちがおさまったらしい。もっとも、ブラック家のほうではマグルびいきのシリウスなど純血の由緒正しきブラックの家系図から消したそうだけど、シリウスはせいせいしたと豪快に笑っていた。叔父さんに買ってもらったマグルのバイクをぶっ飛ばすのが今から楽しみだとはしゃぐ様子を見ると、落ち着いたっていうのは言い過ぎかもしれないけど。

ピーターは卒業後の就職のことを考え始めたそうだ。生活の心配がいらないから就職の必要がないジェームスとシリウス、就職のことなど考えてもどうにもならない僕が例外なのであって、ピーターや他の生徒たちは最終学年を目前に、卒業後の進路について思案を始める時期だった。

仲間たちとそんな話をして、わりと穏やかな日々を過ごしながらも、あいかわらずスネイプとエバンスのことは気になっていた。遠目で見てるだけだからよくわからないけど、スネイプは年が明けた頃からまた一段と思い詰めた表情でいることがあって、それは半ば呆然自失な風に見えることさえあった。エバンスが嫌がっている、将来デスイーターになると噂されているスリザリン生と一緒にいることも多いんだけど、そんな時もなんとなく心ここにあらずな虚ろさが漂っている。

ある日ふとエバンスが眉をしかめているのを見かけ、彼女の視線を追うと、その先に噂のグループと一緒にいるスネイプの姿があった。僕がスネイプに感じる虚ろさを、エバンスも感じているんだろうか?それとも彼女には、ただスネイプが楽しそうに仲間といるように見えてるんだろうか?

気配を感rじたのか、スネイプが急に辺りを見回し、エバンスを見つけたようだ。その瞬間、スネイプの黒い瞳に光が宿ったように見えたけど、エバンスはすでに背を向けていた。しばらく見ていたスネイプの肩がわずかに落ちて、スネイプのため息が聞こえるような気がした。

2人の間には、見えそうで見えない曇りガラスがあるように思える。僕には一目瞭然なスネイプのエバンスへの思慕、スネイプの改心を待つエバンスの思い。どちらも曇りガラスに隔てられ、おぼろな影しか映らない。赤毛と黒髪をくっつけて笑っていた幼い2人が、どうしてこんなふうに隔てられてしまったんだろうと思い、胸が締め付けられるような切なさを感じた。

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tag : ハリーポッター リリー スネイプ

イギリスSFドラマに浮気、「トーチウッド」「Doctor WHO」

ハリポタ妄想、セブが辛い局面に来ると、他に浮気して、更新が滞りがちになります(^^;)
というか、グリフィンドールの話になると遅くなるかな、リーマス頑張れ!

で、今回はイギリスのSFドラマ「秘密情報部トーチウッド」に浮気しておりました^^;

トーチウッド

画像↑真ん中のキャプテン・ジャック・ハークネス率いるチームが、
時空の裂け目から侵入するエイリアン問題を処理してゆくというSFドラマです。
アメリカSF映画の、エイリアンから世界を守るっていうのと比べて
かなり壮大じゃないのがイギリスっぽくていいです。

たまたまhuluでキャプテン・ジャックを見て、
誰このトム・クルーズが陽気なラガーマン(←体格が)になったみたいな人、
と興味を惹かれてつい見てしまいました。

これはイギリス国営放送BBCの子供向けSFドラマ「ドクターフー Doctor WHO」の
大人向けスピンオフということだそうで、何が大人向けかというと、
チーム5人の人間関係がおとな、
話しの悲惨さもおとなになっております。

面白いのはキャプテン・ジャックの人物設定
=不死身のオムニセクシュアル!

オムニセクシュアルっていうのは、男でも女でもエイリアンでもOKってことで、
不死身っていうのは、不死身に強いじゃなくて
文字通りほんとに死なない。というか、死んでも生き返る。
たとえ生き埋めにされようが、お腹の中で爆弾が爆発しようが。

陽気で強気なキャプテン・ジャックですが、
ほぼ永遠に生き続ける年をとらないジャックと、
限りある命の他者との関わりが、
陰りを加えて魅力的なキャラクターを作ってると思います。
白髪1本見つけて喜ぶジャックに、不死身の孤独を感じます。

ドラマとしては、シーズン2が一番いい。
3もいいですが、悲しい。
私的にはヒロインが今一なので、要はキャプテン・ジャックが気に入るかどうかってドラマかな。

ついでにスピンオフのもとになった「Doctor WHO」も見てしまいまして、
子供向けSFなんてと思いましたが、意外とおもしろい!
イギリスの『子供向け』ってあなどれませんわ。

ドクターといってもお医者さんじゃなくて、
ドクターっていう名前の異星人が、時空を旅しつつ地球の人々を守ってくれるストーリー。
最強の敵のダーレクとか、笑っちゃうほど可愛いです^^;
ドクターと一緒に時空の旅をするコンパニオンの1人がキャプテン・ジャックで、
そのスピンオフドラマが「トーチウッド」というわけです。

で、見ておりましたら、誰この人見たことある↓

ドクターフー

見覚えありますよね?
ハリーポッター映画4作目、ハリーポッターと炎のゴブレットで
無駄にカッコイイ(出演が短かったので)と思ったバーティ・クラウチ・ジュニアでした。

Doctor WHOはなんと50年も続いている大人気ドラマだそうですが、
ドクターは死にそうになると姿を変えて生き延びるので、
デヴィッド・テナントさんが演じた10代目ドクターは、
新シリーズのシーズン2~4で活躍してます。

話は戻ってキャプテン・ジャックを演じる男前俳優ジョン・バローマンさんですが、
実生活ではこんなんだそうで↓

ジョンバローマン

なにこの王子様&王子様なカップル!
こんなカップルが実在するなんてびっくりしました。
20年以上連れ添っているパートナーと、去年カリフォルニア州で結婚されたそうです。

写真見るだけでこっちまで幸せ気分になるお2人ですが、
末永くお幸せに♪

と、こんなことやってたので更新が滞ってしまいましたm(__)m

(画像はすべてネットの拾いものです)

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テーマ : 海外ドラマ(欧米) - ジャンル : テレビ・ラジオ

tag : トーチウッド,ドクターフー

(過去2)リーマスの物語14

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

林でスネイプと話してから、僕の気分は格段に軽くなったけど、グリフィンドールの仲間たちとスネイプに関わる事態は何も変わらなかった。いや、むしろ悪化したといえる。

暴れ柳事件の顛末が、シリウスは事実上お咎めなし、ジェームスは周りから称賛されるという結果に終わったことで、2人はますます調子づいてしまった。僕が元気を取り戻したせいもあるんだろうけど、アレはうまくいったよな、スニベリーのビビった顔は見物だった、というような会話を、僕がいようとかまわずするようになった。

僕は林でスネイプがしてくれたことで少しは勇気が出て、もう十分やったんだからこれ以上スネイプにかまうことないとか、君たち調子に乗り過ぎだとか、僕としてはかなり踏み出した気持ちで諌めたりしたけど、調子づいた2人は聞く耳を持たない。

結局彼らには、虐げられる者の痛みなど、自分のものとして感じることはできないんだと思う。自分がそんな立場に陥ることなど想像したこともないだろうから無理もないけど。人狼の僕に手を差し伸べてくれた善意と友情への感謝が消えたわけじゃないけど、いい気になり過ぎな彼らには辟易とし、そして少し怖くもあった。今のジェームスとシリウスは、僕がはっきりとスネイプを擁護すれば、スネイプと一緒に僕のことだって切り捨てかねないと思えるほどに、強者の傲慢さを漂わせている。

僕が人狼であることに引け目を感じる臆病者だからこんなふうに思うのかもしれない。でも、彼らが、うっかりであれ、意図的にであれ、ひとこと僕が人狼だと漏らせば、僕は皆の非難を浴びてホグワーツを去るしかない。その深刻さを、スネイプはわかってくれるだろうけど、彼らにはけっしてわからないのだと考えると、身がすくむ思いがする。

スネイプはといえば、たまにこちらに向ける目の険しさは増したけど、同時に用心深く1人になることを避け、いっそうスリザリン生たちと行動をともにしていた。それは将来デスイーターになると噂されているグループだから、よいことだとは思えないけど、1人でいればジェームスたちに酷い嫌がらせを受けるのは目に見えているのだから、まっとうな自己防衛ともいえる。

僕がまがりなりにもジェームスたちを諌める態度を示したせいか、同じ監督生のリリー・エバンスは少し打ち解けてきた。エバンスは監督生のくせにジェームスたちの行為を見逃す僕に対して腹立たしく思っていて、わりとそっけなかったんだけど。ジェームスたちがまた度の過ぎたいたずらをして、寮監のマクゴガナル先生に監督生として呼び出された帰り道、彼女のほうから話しかけてきた。

「ポッターたちは相変わらずね。リーマス、あなたはポッターたちと親しいんでしょうけど、なぜあんな規則違反や横柄な態度を見過ごしていられるの?監督生として、はっきりと正すべきよ。」

ジェームスたちは他のいたずらも活発にやってるけど、僕としては一番の気がかりはスネイプへの嫌がらせだ。その点はエバンスも同じだと思い、スネイプの話を出してみた。スネイプのことを悪口でなく話せる相手なんてエバンスしかいない。

「たしかに彼らは最近調子に乗り過ぎている感があるけど、、まあ、最近はスネイプが用心して友達といるから、、、」

「友達?セブもセブだわ。あんな、デスイーターになるようなグループの仲間に入るなんて。マルシベールなんてメリー・マクドナルドにひどいことをしたのに、そのことを言ったら、ポッターたちを引き合いに出してまじめに取り合わなかったのよ。」

エバンスは怒ったみたいに話し始めたけど、言ってるうちに悲しそうになった。

「ジェームスたちのほうが酷いことしてるって?」

「そうよ。あなたたちが姿を消して怪しいとかなんとか言ってね。ポッターたちは鼻もちならないけど、でもセブも恩知らずよね、ポッターに助けてもらったって話なのに。」

スネイプとエバンスはそんな話をしたのかと少し驚く。様子を見る限り、僕の正体のことは彼女にも黙っていてくれたようだ。ポッターに助けてもらったなどとエバンスに言われて、スネイプはさぞ悔しかっただろうに。僕が何とも言いようがなくて黙ってしまったから、エバンスは話し続けた。考えてみればエバンスだって、スネイプについてあれこれ考えるところはあっても、話せる相手がいないんだろう。

「とにかく、よりによってあんな人たちと仲良くなるなんて間違ってる。セブは頭はいいけど、世間知らずなのよ。デスイーターたちがどんなに酷いことをしてるのかわかってないんだから。」

エバンスは憤懣やるかたないように勢い込んで言ったけど、ふと誰に話しているのか気づいたように口をつぐみ、疑わしそうな目を向けた。僕だってジェームスたちと一緒に、スネイプへの嫌がらせに加わる仲間と思われている。

「リリー、スネイプは、デスイーターたちが外の世界で誰に何をしているかってことより、自分の身を守ることに必死なんだと思う。いつか闇陣営が世を支配したとしたらどうなるかなんて、現実味をもって考えられないんだと思うよ。今ある自分の現実がすべてで、それも苦しいことのほうが多いんだろうし。でもスネイプは根は優しいし律儀なところもある、、、そんなこと君は知ってるだろうけど。」

エバンスは思いがけないスネイプの擁護に驚いたように瞬いた。

「そうね、、その通りね。セブは苦労してるから。だけど、、、セブだってもう小さな子供じゃない。自分で考えて道を選ぶべきよ。とてもだいじなことだもの。このままでは周りに影響されて、ほんとにデスイーターになってしまうかもしれない、、、それにリーマス、セブのことわかっていながら、なぜポッターたちをのさばらせておくの?」

エバンスのもっともな詰問に僕は答えようがない。スネイプの弁解はできるけど、自分の事情を話せないのが僕の限界だ。僕の沈黙を答えと受け止めたのか、エバンスは聞こえよがしなため息をついて離れていった。

やがて5年の学年末が近付いて、皆あわてて勉強を始めた。5年の終わりにはOWL試験がある。試験の成績しだいで6年でとれる科目が決まるし、ひいてはそれが卒業後の将来にもかかわるとあっては気にしないではいられない。成績優秀なジェームスや、そんなの気にするのは人間が小さいとかいうシリウスは余裕を見せてたけど、僕は暴れ柳事件後の遅れもあってまじめに勉強した。時々見かけるスネイプも、いつもノートに顔をくっつけんばかりに頑張っているようだった。

そして、やっとOWL試験が終わったとホッとした時、ひどい事件が起こった。試験が終わり、生徒たちがみなゾロゾロと教室を出て歩く中、ジェームスとシリウスが、1人歩くスネイプの姿を見つけたのだ。退屈しのぎにやっつけてやるかという不穏な会話を耳にしてスネイプを見ると、終えたばかりの試験の解答を調べようとしたのか、1人で木の下に座りこんで教科書を覗き込んだ。スネイプも油断していたのだと思う。

あっと思った瞬間に、スネイプの杖が飛び、スネイプの体は逆さに宙に吊り上げられていた。

レビコーバスだ。吊りあげられる姿のこっけいさがうけて、一部でけっこう流行っている。仲のいい友達同士の冗談で終わることもある術だけど、この場合はそんなのんきなことですむはずがない。それにスネイプ、なんでローブの下がそのままパンツなんだ?

逆さに宙づりになって、だらりと垂れ落ちた黒いローブの上に、露わになった古びたパンツから細い脚がにょきっと空に向かって伸びている。その様は悲しいほどにこっけいで、そのへんにいた生徒たちも面白がって集まってきた。ジェームスとシリウスは勝ち誇って嘲りの言葉を吐き、ピーターもいつの間にか加わっている。周りはみな笑ってはやし立て、、、スネイプの身になれば、いたたまれないものがある。

僕はもちろん止めるべきだと思った。ジェームスたちを諌め、スネイプを助けたい。だけど体が動かなかった。集まった多くの生徒たちの前に立ちはだかる勇気が、どうしても出ない。皆の視線を集める場に立つ自分を描くと、人狼と糾弾されるように思えて身がすくむ。だってほんの一言漏らされたら?ジェームスだってシリウスだってピーターだってスネイプだって、そんなことするはずない。だけどそう思っても、体は動かなかった。僕はただ臆病に目をそらし・・・。その時。

「彼にかまわないで!」

リリー・エバンスが駆けつけ、ジェームスたちに立ち向かってスネイプをかばった。リリーとジェームスたちの言い争いの末に、ようやくスネイプの体が落ちた。胸をなで下ろす思いと、何もできない自分への苦さをかみしめる間もなく。

「『穢れた血』の助けなんか、必要ない!」

ヒステリックなスネイプの叫び声が響きわたった。僕は唖然とした。スネイプがリリーのことを貶める言葉を吐くなんて。そんなはずないのに。

リリーもショックだったらしく、スネイプに怒りの言葉を投げつけ、さらにジェームスにも何か叫んで、走り去っていった。その後はまた、スネイプをジェームスたちがいたぶって、、、。痛々しくて目を向けることもできないような時間が過ぎて、ようやくスネイプは解放された。散ってゆく生徒たちに紛れ、地面に落ちたスネイプを2、3人のスリザリン生が助け起こすのが見えた。

スネイプはきっと屈辱と怒りのあまり、一瞬我を忘れてあんなことを口走ってしまったんだと思う。だぶん誰よりスネイプ自身が傷ついてるんじゃないか。僕はスネイプの表情を見たわけではないのに、思い描いた悄然とした様やうつろな目が焼き付いて離れない。

僕が助ければよかった。スネイプはリリーにあんな姿を見られたのが恥ずかしくて、リリーに助けられたとからかわれたことも恥ずかしくてパニックに陥ったのだ。僕が助けていればリリーが出る必要もなく、スネイプだってあんなにも錯乱することはなかっただろうに。僕が何もできなかったばかりに、、自分が歯がゆくて仕方がない。

その夜、スネイプはグリフィンドール寮に来てリリーに謝ったけれど、リリーは厳しく突っぱねたらしい。グリフィンドールの女の子たちの話を小耳にはさんだシリウスがおもしろそうに話しだした。

「スニベルスのやつ、ついにエバンスにも見放されたみたいだぞ。ジェームス、念願かなったな。」

さぞかしご機嫌だろうと思ったジェームスは、意外にもふさぎこんだ表情で、スネイプの術にやられた頬の傷を撫でていた。

「どうしたんだ、ジェームス?あ、そうか。エバンスはおまえとデートするくらいなら、巨大イカのほうがましだって言ってたな。巨大イカとのデートって、何すんだ?」

シリウスがからかって一人で笑い出すと、ジェームスはしばらく悔しそうに唇を噛んでいたけど、何か考えついたらしく、ようやく少し笑みを浮かべた。

「とにかく、これでエバンスにもスネイプの本性がわかったんだろ?もうスネイプはエバンスにつきまとえない。僕に言わせりゃ、スネイプよりは巨大イカのほうがましってこと。」

「そりゃ言えてんな。」

翌日には学期が終わり、皆ホグワーツ特急に乗って自宅へと向かう。僕はリリーと一緒に監督生として見回りをしながら、一昨日のOWL試験後の出来事やスネイプのことを話せないかと思っていたけど、彼女は難しい顔をしていて、話しかけるきっかけをつかめなかった。

早々に見回りを終えて仲間たちのコンパートメントをのぞくと、シリウスが険悪さが極まった家族のもとには戻らず、ジェームスの家の庭にキャンプさせてもらうことにするという話をしていた。僕も満月が近づいたらまた来ればいいと誘われて、あれこれ思うことのある仲間であるにせよ、ありがたく受け入れずにはいられない。不安げな顔をしたピーターにも、ジェームスがもちろん君も来いよと言って、いつも通り、仲間4人の和やかな雰囲気になった。

夏休みの計画を話す仲間たちの会話に加わりながら、僕はスネイプのことを考えていた。あんなふうに皆の前で辱められ、たぶん誰よりもたいせつなリリーに暴言を吐いてしまったこと、そして謝罪が受け入れられなかったこと。1人思い悩んでいるだろうと胸が痛む。さっきのリリーの様子を思い出し、彼女もまた許せないほどに深く傷ついたのだと、2人のために悲しくなった。

スネイプが言った『穢れた血』という言葉。マグルやマグル出身の魔法使いを貶める言葉。そんなことを言う純血主義のやつらがバカなんだと言いつつも、言われればマグル出身の生徒たちは皆傷つく。誰だって、自分にはどうしようもないことを、汚らわしいと侮蔑されたら、悲しいにきまってる。それが言い返すにも値しない相手ならともかく、強い絆で結ばれた長年の友達に言われたら。それも、同じ寮の仲間たちから非難されてもかばい続けた大切な友達から、みんなの前で言われたら。スネイプだから、リリーはかんたんに許せないほどに傷ついてしまったんだ。

2人は仲直りできるんだろうか?もしスネイプがリリーを失ったらと思うと、僕は不安でたまらなくなった。

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tag : ハリーポッター スネイプ リリー・エバンス

(過去2)リーマスの物語13

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

その後、僕はあの事件で噴き出した様々な辛いことを、くよくよと考え続けずにはいられなかった。しかも日が経つにつれて、シリウスが不用心にその話をするのを聞かれるとか、あるいはスネイプがあまりの成り行きに腹を立てて口走るとか、そんな小さなきっかけで僕の正体が皆に知られるんじゃないかという不安に囚われてしまい、息苦しさが増していった。直接の関係者でなくたって、事件の中核、つまり、ジェームスが何からスネイプを救ったのかと興味を持って探り出す生徒がいないとも限らない。

窒息しそうな怯えに身をすくませたまま、いや、だからこそ、内心信じられなくなった仲間たちの顔色をうかがい、上辺を取り繕って前と変わりない友情を演じた。そしてその仲間たちといえば、少なくとも僕に対しては気遣ってくれるようで、前より一層一緒にいることが多い。僕はそのおかげでスネイプに謝るどころか、近付くきっかけさえつかめなくなって、スネイプに対しては罪悪感ばかりが増していった。

一方で彼らは、スネイプにしたことについては、何の反省もしていないようだった。ジェームスはスネイプを助け出したと称賛されていい気になっているし、シリウスは形ばかりの罰を受けたとはいえ、もともと罰なんかにめげないばかりか奮い立つ性格だから全然こたえてない。僕についてはうっかりして悪かったと思ったようけど、スネイプのことは懲らしめた程度に思ったままだ。そんな彼らに憤りを感じつつも、正体を知られるかもしれないという大きな怯えにとらわれて顔色をうかがう、卑怯な自分に嫌気が募る。スネイプのほうは殺されかけたと思っているから、、、実際その危険もあったわけだけど、、、遠くから僕たちを見る目に険しさが増したのも無理はないと思う。

日中はそんなことばかり考えて鬱々と過ごし、夜は夜で眠れない。ようやく浅い眠りにつけば、スネイプを噛みちぎる狼やら、恐怖に歪むスネイプの顔やら、昼間見た険しい目つきで僕を糾弾するスネイプやらを夢にみて、うなされて目覚めるだけだった。

もちろん食事だって進むわけがなく、僕はもう心も体も疲れ果て、毎日が苦しくて、生きているのが辛くてしょうがなくなった。人生の唯一の宝だった友情を信じられなければ、生きている意味など見い出せない。人を襲わないという最後の一線を侵して詫びることすらできないのなら、生きている資格などない。僕には生きる意味も資格もないと思う。鬱状態だと自覚はあるけど、抜け出すきっかけはつかめない。

体調も気分も最悪で、これじゃ変身なんて身が持たないんじゃないかと思った頃に、次の満月がやってきた。

元気のない僕を心配するそぶりはみえるけど、放っておけば今夜も変身した僕を叫びの屋敷から連れ出しかねないジェームスたちに、最後の気力を振り絞って、今夜は絶対やめてくれと釘をさした。案の定シリウスは、森をひとっ走りすれば元気になるのになどと不満げで、僕は内心深いため息をついてもう一度念を押し、シリウスもしぶしぶ納得した。

マダム・ポンフリーは、いつも通り、でもいつもよりずっと心配そうに叫びの屋敷まで付き添ってくれて、翌朝迎えに来ると言ってくれたけど、僕は丁寧にお礼を言って断った。先月はあんなことがあったから、狼の気配の残る僕に近づいてほしくないと言うと、マダム・ポンフリーは悲しげな顔をして、では目覚めたら必ず医療棟に来るのですよと言って戻って行った。

そうして僕は今一人、叫びの屋敷にうずくまる。もうすぐ月が出て、僕は狼にかわる。体の中で狼の細胞が人のそれを凌駕し、関節がめりめりときしみ形を変えてゆく。月に一度だけ、体を得る夜の自由を封じられ、狼は荒れ狂うだろう。凶暴な牙と爪で、自らをいたぶり苛むはずだ。弱り切った僕は、たぶんこの一夜を、乗りきれない。

そう思うと、なんだかむしろほっとした。死にたいわけじゃないけど、生きていく気力もない。狼が僕を殺すなら、それで決着がつくというものだ。噛まれた5歳の時に、そうなっていればよかったのかもしれない。今まで生き長らえたことに、何か意味はあったんだろうか?

顔を上げて、薄暗い部屋の中を見回した。満月の度に、変身と自傷の陰惨な夜を過ごしてきた場所。秘められた呪いの発露を覆い隠し、僕の哀しみと苦痛が沁み込んだ叫びの屋敷。鉄格子の窓の外に暗い空は見えるけど、差し込む満月の光を僕が見ることはない。

荒れ果てた屋敷の冷たい床に、自ら流した血にまみれ、一人横たわる姿をぼんやりと思い描いてみた。それは僕に相応しい死に様に思えた。こんな状態で生き続けるのなら、死はむしろ救いとも思える。だけど、こんな僕でも、死んでしまったら母さんは悲しむだろうか?血まみれの遺体を、抱きしめてくれる人はいるだろうか?死んで詫びたのだと、スネイプは許してくれるだろうか・・・

暗い思いに浸るうち、体の中からなじみある不快なざわめきが起こり、僕の意識は消えた。


・・・生臭い血のにおい、関節の痛み。腕がズキズキして、のどが渇いて、気だるくてたまらない。

ああ、朝が来たんだ。僕は目覚めてしまったらしい。だけど、しばらくこうしていれば、血が流れ出てやがて思い描いたように命が尽きていくかもしれない・・・。

しばらくそのまま横たわっていけれど、冬の朝はあまりにも寒かった。あきらめて目を開けると、両腕に酷い傷が見えた。骨まで達するかという深い噛み傷だ。体を調べると、他にもあちこち傷やら打僕跡があるんだけど、、、前回の死にかけるほどの怪我はしていなかった。荒れ狂うはずの狼は何をしてたんだと思い、、、体が弱ってて、たいして動けなかったんだと気がついた。狼も僕と同様、うずくまっているしかなかったらしい。

力なくうずくまり、ひたすら自分の前脚を噛みしめる狼を思い描き、、、なんだかふと狼が哀れになった。僕と同じくらい、哀れな生き物。仲間たちを遠く感じ、ただ一人の孤独をかみしめていたのに、こいつだけはまとわりついて離れない。まあ、僕なんだから離れようもないんだけど。死んでしまうはずがまた生きながらえて、また同じような日々が始まると思うと。

「最悪だ。」

声に出して言って、のろのろと起き上った。噛み裂かれた、というか、噛み裂いた腕に力が入らなくて一苦労だ。血を拭って服を着ようとすると、腕が痛んで、これがまたたいへんだった。投げやりな気分に拍車がかかって面倒になり、腕を袖に通すのはあきらめて、肩に引っかけてよしとした。

重い足を引きずって通路を抜けて外に出ると、冬の朝は薄暗く、霧が立ち込めている。医療棟に行くべきだったけど、ふと気が変わって、禁じられた森に続く林に向かった。1日の始まりを少しでも先延ばししたかったのか、あるいは昨夜森を走れなかった狼の未練に引きづられたのかもしれない。

脚元も見えない濃い霧の中をよろよろと歩くうち、石か木の根か何かにつまづいてよろめくと、踏みとどまれず倒れてしまった。いったんは体を起そうとしたけど、腕に力が入らない。むしろ体を支えようと試みたことで、傷が広がったみたいだ。じっとりと冷たい土を頬に感じ、狼が噛み裂いた腕の痛みを堪えていると、もうどうでもいい気分になった。こうやって霧に紛れて死ぬのも悪くないと思う。昨日は狼に殺されてしまえばいいと思ったけど、今日は僕が狼を道連れに息絶える。結局同じことなんだ。倒れたままつまらないことを考えているうちに、眠くなって頭がもうろうとしてきた。その時。

人狼、こんなとこで何をしている?」

突然、声が降ってきた。驚いて目を開けると、長けの足りないローブの裾から突き出した細い足首が見えた。それを上へとたどっていくと。

「ス、スネイプ?」

一瞬頭が混乱した。そうだ、変身前にスネイプの姿が見えて。襲いかかって、そのまま食い殺してしまったんだ。じゃあ僕も死んだのか?死んだから神様がスネイプに許しを請うチャンスをくれたのか・・・。

「スネイプ、ごめん。君を食い殺してしまって。僕、君が来るなんて知らなかったんだ、、、」

「何を言っているのだ?気でもふれたか?」

「スネイプ、、、生きてるの?」

思わず手を伸ばしてローブの裾をつかもうとすると。

「触るな、人狼!」

思いっきり叫んで、スネイプは後ろに飛びのいた。その嫌そうな様はまさに・・・

「ほんとにスネイプだ!スネイプ生きててくれたんだね。よかった。ほんとによかった。ありがとう!」

訳がわからなくて、自分でも何を言ってるかわからなかったけど、スネイプにも意味不明だったらしい。眉間にしわを寄せた怪訝そうな顔が近づいてきた。ほんとに僕の気がふれたのか、確かめようとしたのかもしれない。スネイプはかがみこんで、嫌そうに僕の体を仰向けに反した。近づいたら腕の傷が見えたのか、眉間にしわを寄せたまま、驚いた顔になる。

「ひどいな。それ、、、自分でやったのか?」

昨夜が満月と思い至ったようだ。僕がうなづくと、スネイプは少しの間僕の腕をまじまじと見て、杖を取りだした。もちろん自分を襲った人狼なんて、杖で成敗するにきまってる。命の危険にさらされたスネイプになら、そうされても仕方ないと思う。覚悟をきめて目を閉じる。

だけど聴こえて来たのは清浄呪文だった。スネイプは血や泥を拭い去ると、続けて静かに治癒呪文を唱え始めた。

スネイプは闇の魔術だけじゃなくて、治癒呪文もできるんだ・・・。深みのある柔らかい声が奏でる美しい調べをきくうちに、なぜか涙があふれ出す。涙は頬を伝い、それと一緒にこのひと月の間、溜まりに溜まったやり場ない思いが溢れてきた。スネイプを襲いたくなってしまった僕の本性の切なさも、信じた友に裏切られた寂しさも、生きる意味を失って途方に暮れた絶望も。音もなく静かに流れ出し、少しずつ心の滓が洗われていくように感じられる。

ひとしきり泣いて、ようやく落ち着いた。頭がまともに働きだすと、この機会を逃してはいけないと思った。許されないにしても、とにかくきちんと謝らなきゃいけない。

「スネイプ、前の満月の時のこと、ほんとうにすまなかった。君を襲おうとするなんて、そんなこと僕はしたくなかったんだ。だけど、止められなくて。」

スネイプはわずかに片眉をあげて、心なしそっぽを向きながら、治癒呪文を続けている。

「たいへんなことになるとこだった。ジェームスが君を助けてくれたからよかったものの、、」

「ふん。ポッターが助けたのは、おまえとブラックのバカだ。ずる賢いポッターは、自分だってまずいことになると気づいたのだろう。」

スネイプは呪文を止め、思いっきり眉をしかめて言った。

「ジェームスの思惑はともかく、君が無事でいてくれてよかったよ。それに、あんな目にあわせてしまったのに、君は今僕を助けてくれて、、、。」

また涙ぐむ僕の顔を見て、スネイプは目をそむけた。そして話をそらすように、杖を僕の胸の傷に向けて尋ねた。

「これは古い傷なのか?」

僕の肩から胸にかけて、けして消えない傷。それは。

「うん、それは5歳の時に、、、人狼に噛まれた傷だから。」

僕の正体を目の当たりにした相手とはいえ、自分は人狼なんだと言葉にしたような気がして、語尾が震えた。スネイプはその傷をじっと見ている。スネイプが何も言わないから、なんだか不安になった。

「いやだよね、人狼と2人きりでいるなんて。あんなことがあったんだから、、、僕といるの、怖い?」

スネイプは傷から視線を移し、肩をそびやかして僕の目を見返した。

「馬鹿なことを。おまえなんか怖くない。人狼というのはな、ルーピン、変身時には凶暴になるが、普段は普通の人間なのだ。人狼のくせに、そんなことも知らないのか?前の満月のときはたしかに驚いたけど、だからと言って変身してない時に、おまえみたいな臆病者を僕が怖がるものか。」

話にならないと言わんばかりに眉をしかめてまくしたてるスネイプに、あっけにとられ、やがて言葉の意味を理解して感動がこみ上げた。

「スネイプ、君って、、」

君ってすごいと言いたいのか、優しいと言いたいのか、なんだか胸が詰まって言葉が続かない。だって、食い殺しそうになってしまったスネイプが、僕の傷を癒し、きっぱりと、人狼は変身時以外は普通の人間だと言ってくれた。スネイプは自分が僕にしてくれたことをわかっているんだろうか?こんな僕でも、生きていていいと言ってくれたんだ。

僕が一人感動にうち震えているうちに、スネイプは他のことを考えていたらしい。つぶやきかと聞き違うような、ぼそぼそとした声がする。

「おまえ、5歳の時からこんなこと繰り返していたのか?」

「こんなことって、、、ああ、自分で噛むこと?」

スネイプが小さくうなづく。

「うん。小さい頃は地下室とかに閉じ込められて。学校に来てからはずっと、満月の夜は叫びの屋敷にこもってたから。そうしないと人を襲ってしまうから。でもそれでいいんだ。人を噛むよりずっといい。そう思ってたのに、先月は君を、、、。ほんとに、ごめん。」

「もう、いい。」

「え?」

「もうわかった。」

「ありがとう、スネイプ。それに、僕の正体を黙っていてくれることも。なんだか、真実が伏せられたまま広まっていて、君としては腹立たしいと思うんだけど、僕には真実を言うことができなくて、ごめん。ホグワーツは人狼がいていい場所じゃないってわかったけど、僕が学校を追い出されて家に帰れば、家族全員、居場所がなくなってしまう。僕には、他に行くとこがないんだ。」

スネイプは目を細めて、こちらを見ていた。僕を見ていたのか、僕の向こうにある何かに思いを馳せていたのかわからないけど、なんだかとても悲しそうに見えた。少ししてスネイプは、小さくうなづくと。

「霧が晴れてきた。日があたる前に摘みたい薬草があるのに、人狼にけつまづいて。」

そこまで言ってちょっと悔しそうな顔になって、続けて言った。

「もう立てるだろ?」

僕が立ち上がって、まだよく動かない手でめんどうなシャツのボタンを止めようと悪戦苦闘していると、すっとスネイプの手が伸びてきた。いつか魔法薬学の授業で見た細くて長い指先が、器用にボタンをとめていく。それからスネイプは、落ちていたローブを杖で浮かび上がらせ、僕の肩にかけた。

「あとは医療棟で見てもらえばいい。」

スネイプはそう言って僕を見もしないで歩きだした。だけどしばらくして振り返り、後ろ姿を見送っていた僕と目があって、たじろいだみたいに顔をしかめた。僕が笑って手を振ると、早く行けと言わんばかりに追いやるように手を払い、その後はもう振り返ることなく林の奥に消えていった。

スネイプはきっと、僕がちゃんと歩いていけるか心配して振り返ってくれたんだと思う。ほんとは優しいのに、そう思われるのがイヤなんだ。難しい性格だと思い、くすっと噴き出してしまった。そして、こんなふうに心から笑えたのは久しぶりだと思う。泣いたのも、暴れ柳事件の翌日に、ダンブルドア先生からスネイプが無事だったと聞いて以来だ。事件以来辛い思いを堪えるためにかちこちに固まっていた感情が、軟らかく動き出したのを感じる。

スネイプは、僕の体の傷だけじゃなく、心の傷も癒してくれたのだった。ぶっきらぼうでわかりにくいけど、スネイプはほんとはすごく優しいところがあると思う。それは、スネイプには僕の痛みがわかるからじゃないかと思いついて、少し悲しくなった。

スネイプは人狼じゃないけど、それによって僕が感じる様々な痛み、孤独や絶望や自己嫌悪、拭いようのない理不尽さへのやり場ない憤り、周囲への不信感、それでもそれらを抱えて生きていくしかない辛さとか、そんなものが感覚的にスネイプにはわかってしまうんじゃないかと思い、切なくなる。虐げられる辛さがわかるから、スネイプはいわば敵対する立場の僕を、労わってくれたんじゃないか。

だけどそれは簡単なことじゃない。痛めつけられる弱い立場の者は、僕みたいに、自分のことで精いっぱいになる。なんとか切り抜けるのに必死になって、人のことを構う余裕がない。歯を食いしばって立ち向かう芯の強さがなければできないことだ。それはその立場に陥る心配などしたこともない強い立場の者が、自分の行為になかば陶酔しながら施すように与える親切とは、比べものにならないほどの心の強さがなければできないことだと思う。

スネイプには、とてもわかりにくいんだけど、そんな芯の強さと優しさがある。僕はずっと前から、1年生の頃から、それを感じてスネイプに惹かれていたんだと思う。あのころからいろんなことがあって、それはスネイプにとって辛いことが多かったのだろうけど、スネイプはかわることなくその美点を保ち続けている。僕にはスネイプみたいな強さはまだないけれど、とにかくなんとか生きていく。たとえ昨日までと同じような今日が続くのだとしても、スネイプがこんな僕でも生きていていいと示してくれたんだから。

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tag : ハリーポッター スネイプ 人狼

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