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セブルス・スネイプと謎のプリンス(18)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ダンブルドアから、からかい混じりに、結局あの子に情が移ったのかとあらためて聞かれた時は、即座に否定したものの、ポッターについて今までとは異なる思いを抱いたのはたしかだった。私は初めて、憎らしい父親の再来でもなく、リリーが命をかけて守った遺児でもない、まもなく17歳の成人を迎える一人の少年の人生を考えてみたのだった。

幼くして両親を亡くし、叔母のマグル一家で育てられた。リリーの魔力を羨み魔法を嫌っていたペチュニアとその家族が、魔法使いの子供を快く思うはずがない。うとんじられ、いじめられ、見捨てられて育った少年は、期待に胸を膨らませてホグワーツに向かったことだろう。気にかけ見守ってくれる友達や先生、温かい食事、清潔なベッド。私と同様、あの子もホグワーツで初めて温もりのある家を見つけたのだろうか?

友を得て、「生きのびた子」の試練をなんとか乗り越えながら、6年生になった。6年生といえば、卒業後の進路を考えたり恋に焦がれたり、様々な悩みを抱えながら将来への夢を膨らませる時期だ。私自身も、この年の夏休みに、思いがけずルシウスに抱かれて舞い上がっていたものだ。

ポッターはまもなく、その全てに背を向けて、一人、ダークロードの前に命を投げ出さねばならぬことを知る。

今はまだ、ダンブルドアの庇護のもと、ダンブルドアを信じ、その指導に従ってホークラックスを破壊することがダークロードを倒して生き残る道だと思っているだろう。だが、ほどなく頼りのダンブルドアは死に、孤独な戦いの末に、最後の真実を知る。生きて戻る道はないのだと。それでも、ダンブルドアの見込み通り育っているのであれば、全てを終わらせ、友達や仲間たちを救うために、自らその道を進むしかない。

私の犯した過ちにより、罪もない赤子の時から、ポッターはその選択を突きつけられることが決まっていたのだった。

私はまもなくダンブルドアを手にかけて、仲間に背を向け一人闇陣営に下る。恐ろしく孤独で、心を許せる場所もない、恐怖と背中合わせの日々となるだろうが、勇気を振り絞ってその道を進まねばならない。そして、リリーを死なせ、ダンブルドアを手にかけ、ポッターを死に導く以上、生きて戻る道はないと思わねばならない。しかし、ダンブルドアに託された使命を果たし、ポッターに最後の道を示すまでは、空しく死ぬわけにはいかぬ。叶うなら、ダークロードの最期を見届けて逝ければよいのだが。予想のつかぬ事態でポッターが生き延びられれば言うことはない。

「リリー」

私は再び、夜ごと、リリーに話しかけるようになった。リリーの息子にこのような運命を与えてしまったことを詫び、力を尽くすことを誓い、最後の瞬間に奇跡をもたらす守りを請い願った。幾夜もそう語りかけるうち、気づいたことがある。リリーが息子にかけた愛の守りはポッターの成人とともに終わるのだが、リリーが守りをかけたポッターの血が、ダークロードの体に流れているのだ。その血はポッターの命を奪うことを許すだろうか?私が守り抜けば、最後の瞬間、再びリリーが息子を守ってくれるのではないか。予想というより、祈りだった。


私の思いに変化はあったが、ポッターは相変わらずだった。授業に遅刻したうえ、幽霊と亡者の違いを言わせると、幽霊は透き通っていると答えて落胆させてくれた。5歳の子供のような答えに、6年間の教育がまったく無駄だったと思わざるをえない。ほんとうにダンブルドアの見込み通り育っているのだろうか?ポッターに必要なのは、魔力よりも、ダークロードの闇に侵されぬ勇気と愛の力だとは思うが、ダンブルドアの庇護を失い、自力で使命を果たせるのかと考えると頭痛がしてくる。

私はとりあえずポッターの先行きを心配することは放棄し、私の任務であるもう1人の心配の種、ドラコに注意を向けることにした。ドラコは追い詰められて、見る影もなくやつれていた。ダークロードはドラコの計略がうまく進まないことにいら立ち、私に催促するような態度を示している。ドラコに対してもかなりの脅しをかけているはずだ。

ドラコはどうにかしてデスイーターがホグワーツに侵入できる経路を開こうとしているのだが、なかなかうまく進まないのだった。苦しむ姿を見るのは忍びなかったが、この期に及んでは、ダークロードからドラコとマルフォイ一家を守る口実になる程度の手柄を立てさせなければならない。やきもきしながら、ドラコと他の生徒に危険が及ばぬよう、見守るしかなかった。

そうこうするうち、夏の日差しが感じられる季節になった。事態は進展せず、時間ばかりが過ぎてゆく。ダンブルドアの残りの時間を思うと、胸が締め付けられる思いだった。それでも、ドラコの首飾りで重傷を負い、聖マンゴに入院していたケイティ・ベルが退院し、元気に戻ってきた。ドラコの魂は損なわれずに済むのだと、少しばかりほっとした。

が、まもなく、私をまたも失望させる出来事が起こった。「人殺し!トイレで人殺し!」叫んで回る嘆きのマートルの声に驚いて駆け付けると、水浸しのトイレでドラコが体中から血を流して倒れ、そばにポッターが立っていたのだった。一目見て、セクタムセンブラ(切り裂け)の呪文が使われたことがわかった。

ポッターを脇に押しやり、急ぎドラコの傷を癒す。ひどい傷だったが、セクタムセンブラは私がつくった呪文だから、治癒呪文もお手の物なのは幸いだった。とりあえず深い傷を塞ぎ、よろめくドラコを支えて医務室に連れていった。途中、ドラコには何度も、私が守るからあまり思い詰めるな、ドラコの魂は人を殺せるほど損なわれてはいないのだと言い聞かせた。ドラコの心に届いたかどうかはわからない。

あとの処置をポピーに頼み、急いでトイレに戻ると、ポッターは大人しく待っていた。血と水でびしょぬれになりながら、それを拭ったあともなく、私を見るなり言い訳を始めた。

「こんなことをするつもりはありませんでした。あの呪文がどういうものなのか、知らなかったんです。」

私の古い魔法薬の教科書を見て、知りもしない呪文を弄んだのは確かだった。書き込みをした教科書で、ポッターが少しでも勉強に励む気をおこせばなどと思っていた私が甘かったのだ。それに、心のどこかで、やがて死に向かう少年に、私のことを知ってほしいと望む気持ちも芽生えていた。リリーを想い、勉強や研究に心血を注いでいた学生の頃の私が宿るあの古い教科書を携えることで。後に道を誤り母親を死に至らしめてしまったが、そんなことになるとは夢にも思わず過ごしていた当時の私の姿を。

それでポッターが教科書を持つままにしておいたのだが、明らかな誤りだった。ポッターは結局、私がつくった闇の呪文を使い、人を攻撃するような子だったのだ。まったく父親と同じだった。反省させ、教科書を取り上げねばならない。

「私は君を見くびっていたようだ、ポッター。君があのような闇の呪文を知っていようと誰が思う?あの呪文はだれに習ったのだ?」

しかしポッターは図書館の本だのなんだのと嘘をついた。教科書の入ったカバンを取りにやらせたが、魔法薬の教科書は違うものを持ってきた。リリーが命をかけて守り、ダンブルドアが精魂込めて育てた子供は、父親と同様、人を傷つけても、反省もせず嘘をついてごまかす少年に育っていたのだった。

ポッターの使命がどんなものであろうと、今日の行いは厳罰に値する。私はポッターに、毎週土曜の朝研究室に来るよう命じた。クィディッチの試合の日もだ。土曜日の朝、時間通りにポッターが研究室にやってきた。私は罰則として、ホグワーツの生徒たちの古い悪行と罰則の記録を整理させた。ポッターの父親やブラックの悪行も含まれている。

「死してなお、偉業の記録を残す」

嫌みたっぷりに言ってやった。あの教科書に当時の私が宿るように、罰則の記録には当時の父親やブラックの行いが残されている。その2人は今は亡く、おそらくは私もポッターも遠くない将来死んでゆくのだろうが、その前にわずかでも当時の真実を知ればよいのだ。あるいは、憎悪にかられながらも引きつけられてやまなかったその姿を、残り少ない日々に、ただ見ておきたいだけかもしれない。

複雑な私の心も、待ち受ける使命も知らぬまま、ポッターは私が与えたつまらない作業に取り組んでいた。少なくとも、取り組むふりをしていた。思えば、ポッターはブラックやルーピンから父親の話をきくことはできただろうが、母親の人となりを知ることはできたのだろうか?リリーがどんなに強く美しい心を持っていたか、最後の使命に踏み出す前に知るべきではないだろうか?私の口から話してやることはできないが、せめてリリーがくれた守護霊を、いつか見せてやりたいものだ。
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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ダンブルドア ハリー ポッター

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