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セブルス・スネイプと死の秘宝(8)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ルーピンが密かに訪ねて来てくれたことは、私に予想外の変化をもたらした。わずかながら、戦い後に生き延びたいという気持ちが芽生えたのだ。もちろん、ダンブルドアには生き延びる意欲を持てと言われ、そうすると答えたが、意欲というものは持とうと思って持てるものではない。中から湧きあがってくるものなのだ。

死にゆく人から生き延びよと言われても、敬愛するその人を殺し、生きる目的であるリリーの遺児を死に向かわせて、私一人生き延びてどうするのかと途方に暮れるばかりだった。しかし、ともに生きたいとすがるように言われれば、生き延びてこいつと一緒にいればいいのだと、その後のイメージも湧くというものだ。

ダンブルドアの死後、私は死者にばかり語りかけていた。魂の中のリリーと、肖像画になったダンブルドア。そしてほんのたまに、死に向かうポッターを心に描いて。そして、他の者に対する私は、すべて嘘だった。私を仲間と信じる闇陣営の者たちにも、私を裏切り者と信じる仲間たちにも、心を閉じてそれらしき演技をする。真の私はすでに死者たちの中にしかないと思っていた。

私を信じ、私が生きることを願ってくれる生きた仲間がいるということは、新鮮な驚きであり、喜びだった。ルーピンとともに生きたいと願っているわけではないが、戦いの後で、私が生き延びたことを喜んでくれる者が一人はいると思えれば、生き延びる張り合いもあるというものだ。考えてみれば、今はダークロードの虐待に身を縮めているルシウスも、きっと喜んでくれるに違いない。私は久しぶりに、生きた人間を身近に感じられたのだった。

幸せと縁遠い人生を送りながら、間違ったり葛藤したりしながら、それでも手を伸ばし続けるルーピンの生の営みがまぶしく思えた。しかも新しい命まで生みだそうとしている。人狼の子の苦労を思いルーピンが悔やむのはわかるが、死の影ばかり色濃いこの時代に、新しい命の誕生とは素晴らしいではないか。そのたくましさは、呪いとはいえ、狼の生命力によるものかもしれなかった。その呪いは遺伝するものなのだろうか?

私は地下牢棟の研究室で、採取した生殖細胞を調べてみた。人狼の呪いは、噛み傷から広がり、人間の細胞の一部を狼のものに変える。狼化した細胞は普段は最低限の生命レベルでなりを潜めているが、月の満ち引きに反応して活性し、満月の夜、人間の細胞の働きを凌駕する命をほとばしらせるのだ。

私がルーピンに作ってやっていた脱狼薬は、細胞の活性をトリカブトの毒で弱めるのだが、それは人間の細胞も狼のものも、ともに抑制する。生まれ変わることがなく、人間が狼より格段に発達した脳細胞においてのみ、かろうじて人間の細胞が狼のものに勝る状態に留められるものだった。だから体は変身するが、人間の意識が残るのだ。

生殖細胞は、特殊な細胞だ。新しく生まれることのない脳細胞とも、緩やかに生まれ変わる他の細胞とも違い、男性の生殖細胞は数日の命しかない。頻繁に作られ、受精することがなければ短期間で死んでゆく。ここに、月の満ち引きのサイクルを持つ呪いが存在する余地があるのか?採取した生殖細胞に、呪いを顕わす呪文をかけたり、呪いの活性を高める魔法薬に浸けてみたりしたが、呪いの影は見えなかった。残りは保存して、満月期にもう一度調べることにした。そこで呪いが見られなければ、確実とは言えないが、ルーピンに嬉しい知らせを送ってやれるだろう。

凍結した生殖細胞をクリスタルの小瓶に入れて貯蔵庫に仕舞いながら、ふと何かが引っかかった。生命の源を凍結保存し後に解凍して蘇らせるという行為が、私の中にわずかに芽生えた生き延びる意欲と反応したのだと思う。命の、あるいは死の、凍結。

死を操ることは、ホークラックスや亡者のように暗い闇の魔術に通じるが、死を遅らせることは治癒魔法そのものだ。死の寸前にそれを凍結し遅らせる、あるいは、仮死状態を蘇生する。それは聖マンゴ病院でも様々な呪文により試みられていた。しかし呪文では、癒者がその時その場にいなければならないという制限がある。もしも魔法薬で同じことができるなら、手遅れの死をもっと防ぐことができるかもしれない。私自身にも、来たるべき戦いに加わる者たちにも、助けとなるはずだ。

私はこの思いつきに夢中になった。もともと呪文や魔法薬の開発が好きなのだ。しかもこれは、闇に関わるものではない。脱狼薬を調合するための研究もインスピレーションを与えてくれた。生命活動を最低レベルに落として生き続ける狼の細胞のように、死の寸前ですべての組織が活動レベルを最低に落とすことで、死に至る時間を引き延ばす。

たとえば、心臓が血液を送り出すことができなくなったとする。脳や他の組織が、それまでと同じだけの代謝をしていれば、血液に運ばれてくる酸素やエネルギー源を早々に使い果たして死に至るわけだが、心臓の停止とともに体の全ての組織がその代謝を最低限に遅らせたなら?とりあえずしなくてもよい代謝を止めたなら?死に至る時間が、1分から5分に延びるだけかもしれぬ。あるいは10分から30分に。しかしそれが生死の境を分けることがあるのも現実だ。もちろん、一瞬にして死が全身を捕える死の呪文には対抗すべくもないが。

開発のアイデアはできたが、実際に作り出すまでは試行錯誤の連続だ。それでも、文献を調べ、よさそうな薬材の調合を様々に工夫してゆくのは、久しぶりに我を忘れるひと時だった。

しかし、ダークロードの意を受けて、同時にホグワーツを守る使命を持つ校長として、魔法薬学研究室にこもり過ぎたことは否定できない。そのようなことが許される気楽な立場ではなかったのだ。
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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルーピン スネイプ セブルス

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