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セブルス・スネイプと死の秘宝(19)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ハリーの後について、視界を遮っていた木箱をよけた隙間から部屋に入った。荒れ果てた薄暗い部屋の中、血だまりに倒れた黒い人の姿。暗がりの中では、ローブの黒も血も、同じ色に見える。血にまみれた白い手が首を抑え、その指の隙間からさらに血が噴き出ていた。人の体からはこんなに血が溢れ出るものなのか・・・。

ついさっき聴こえたスネイプの恐ろしい悲鳴が、耳鳴りのように頭に響いていた。たぶん、ナギニに噛まれた瞬間の、恐怖と痛みと絶望の叫び。漏れ聞いた会話から、ヴォルデモートがニワトコの杖の忠誠を得るために、ナギニにスネイプを殺させたのはわかったけれど・・。人はこんなふうに死んでいくの?体中の血を流して。

スネイプは何か言いたそうにハリーを見つめていた。ハリーが腰をかがめると、血まみれの白い手がハリーのローブにすがりつき。

「これを、、取れ、、、これを、、取れ、、」

死に際のかすれた吐息から、わずかに漏れる声。スネイプの目と耳と口から灰色の何かが、、血ではない液体のようなものが流れ出した。手にした杖でフラスコを取り出してハリーに渡す。ハリーが液体をフラスコに受け止めてゆく。何も考えられない。目に映ることの意味を理解することができなかった。そして苦しげな最期の吐息に混じるかすかな声がして。

「僕を、、見て、、」

ハリーをつかんでいた手が床に落ち、ハリーの目を見つめていた黒い目が、虚ろになった。いつも、無表情か、怒りか嘲りを浮かべていた黒い目。それでもその目には命の輝きがあったのだと、虚ろになった目から、目を離すことができなかった。ハリーもロンも、ただ、動かなくなったその体を茫然と眺めていた。

出し抜けに甲高い声が身近で響き、ハリーが弾かれたように立ちあがった。

「おまえたちは闘った。勇敢に。ヴォルデモート卿は勇敢さを称えることを知っている。」

おぞましく恐ろしいヴォルデモートの声は、辺り一帯に響いているようだった。その声は、1時間の停戦を与えると言った。そして、ハリーに、1時間のうちに『禁じられた森』に来いと言い、もし来なければ、その時はヴォルデモート自身が戦いに加わり、ハリーを見つけ出し、ハリーを隠そうとした者は、男も女も子供も、最後の1人まで罰すると脅した。

私もロンも、強く首を振った。そんなことはダメ。ハリーを一人、ヴォルデモートのもとに行かせるなんて、絶対にしない。最後まで一緒に戦う。みんなそのつもりでいる。

「耳を貸すな。」

ロンが言った。私も続けた。

「大丈夫よ。さあ、城に戻りましょう。あの人が森に行ったのなら、計画を練り直さなきゃ。」

私はもう一度スネイプを見た。スネイプの死の理由。その死に様。衝撃で、どう受け止めていいのかわからない。どう感じればよいのかわからなくて、感情が麻痺したようだった。今は、、、でも今はハリーを守って、一緒にヴォルデモートを倒すことを考えるだけ。トンネルの入口に向かうと、ハリーとロンも後に来た。狭いトンネルを這うように進む。誰も口をきかなかった。衝撃で言葉が出ないのは、ハリーとロンもきっと同じだったと思う。

トンネルを出て、ホグワーツ城の建物に急いだ。辺りには巨人の物らしい巨大な木靴が片方転がっているだけで、他には何もなかった。閃光も見えず、爆音も叫び声も聴こえない。城は静まり返っていた。

血に染まった玄関ホールの敷石を歩きながら、心細くて声が出た。

「みんなはどこかしら?」

手すりが吹き飛ばされた階段を上って、ロンが大ホールの扉を開くと、中は人がいっぱいだった。各寮のテーブルはかたつけられて、広い空間に人が寄り集まっていた。みんな肩を抱き合って、何人かずつ集まって立っていた。一段高い壇の上では、マダム・ポンフリーが何人かに手伝わせて、怪我をした人の手当てをしている。負傷者たちの顔は見えないけれど、ケンタウルスのフィレンツェ先生が、お腹から血を流して横たわっていた。

大広間の真ん中には、死んだ人たちが横たえられていて、ウィーズリーの人たちが集まっている場所があった。ひざまずくジョージの後ろ姿、亡骸に突っ伏して体を震わせるモリーおばさん。その髪をなでながら、滝のような涙を拭うこともせず立ちつくすアーサーおじさん。泣きはらしたジニ―に歩み寄って肩を抱くと、肩の向こうに、横たわるフレッドの脚が見えた。

フレッド・・・死んでしまった。いつも冗談を言ってみんなを笑わせていたフレッド。いたずらにはひどい目にあったけど、憎めない陽気な双子。彼らがいるだけでその場が明るくなっていた。あの時も、少し前、一緒に戦っていたあの時も、むしろ戦いを楽しむかのような笑みを浮かべていた。突然の爆発に吹き飛ばされて、私が立ちあがったときにはフレッドはもう息絶えていた。笑いの名残をまだ顔に残したまま。

フレッドの向こうにも、横たわる亡骸があった。涙にかすむ目に映ったその顔は、、、リーマス!リーマスが死んでしまった!いつも穏やかで、頼りになったルーピン先生。人狼であることに苦しんでいて、やっと幸せをつかんだのに。赤ちゃんが生まれたって、やつれた顔にこぼれる笑顔を浮かべていたのはついこの間のことだったのに。その隣には、、トンクス!トンクスも亡くなってしまった。赤ちゃんを産んだばかりで・・・。

並んだ2人の指先が、触れそうで、わずかに離れていた。もう少しで届くのに。もう少しで、幸せに暮らせたかもしれないのに。せめて、届きそうで届かない2つの手を、しっかりと重ねてあげたかった。

大ホールの人ごみには、死と悲しみが溢れていた。死に分かたれた、愛し合う人たち。ロンはパーシーと肩を抱き合って泣いていた。私ももう一度、強くジニ―を抱き締めた。こんな時は、こんなふうに、寄り添って抱きあうしかできない。ただ、こうして。一人では耐えられないから。一人では・・。

突然、荒れ果てた薄暗い部屋で、血にまみれて、一人横たわる亡骸が浮かんだ。あの人の死も、ここにある他の死と同じものだったのかしら?取りすがる人も、嘆く人も、ともに寄り添う人もなく。一人、自分が流した血の海に倒れ伏す孤独。それは、当然の報いなの?

涙を拭って顔を上げると、壇上のマダム・ポンフリーの背中の向こうに、医務室に置かれていた薬棚が見えた。ハリーを助けホークラックスを探す旅に出ると決めたとき、薬袋を取り出した棚。

「アクシオ・ポーションバッグ!(来たれ、薬袋)」

呪文を唱えると、薬袋が飛んできた。まだ新しい、1週間前の日付が記されている。なぜ新しい物が・・。また呪文を唱えた。また1つ、薬袋が飛んできた。それより2週間前の日付。また唱えると、また1つ。

これはどういうことなの?スネイプは何をしていたの?何のためにこんなものを。

「ミス・グレンジャー、これは、君の、資質を補うために・・」

魔法薬学の研究室で、思いがけずスネイプからこの薬袋を手渡された時。いつになく言いにくそうに、回りくどい言い方で、たしかに、これは私に渡すためにつくったって言ってた。医務室の棚に新しい薬を補充し、目隠し術で隠しておくと。それでは、スネイプは、ダンブルドアを殺し、校長室を乗っ取って、ホグワーツに圧政を敷きながら、受け取られるかもわからない魔法薬を煎じていたの・・?

衝動に突き動かされて、私は走り出していた。魔法薬の袋を片手につかんだまま。走りながら、お父さんが病気で入院していた時、お母さんが毎日のようにクッキーを焼いていたことを思い出した。何かしていないと心配でね。こうしていると気がまぎれるのよ、ハーミー。食べきれるはずのないクッキーを、取りつかれたように焼き続けたお母さんの後ろ姿。取りつかれたように魔法薬を煎じるスネイプの姿。

スネイプ、これは何なの?あなたは、何をしていたの?

少し前に歩いてきた道を、私は必死に走った。息を切らせて暴れ柳に着き、柳を止めてトンネルに潜り込む。狭い通路を這いながら、何のために私はここに居るのかしらと思う。

あの血まみれの死体に何かたずねたいのか、何かしてあげたいのか、わからない。だけど、放置してはいけないことだったんだという思いが湧きあがった。スネイプが何者であっても、ハリーを憎みダンブルドアを殺した裏切り者であっても、あんなふうに茫然としてなにもできぬまま、立ち去ってはいけなかったんじゃないか?

スネイプには6年間、授業を受けてきた。スネイプの、いろんなことが思い浮かぶ。ハリーに対する態度はひどかったけど、授業はいつも完璧に準備されていた。怪しく見えても、あとになるといつもハリーを助けていたことがわかった。三大魔法学校対抗試合終了の翌朝には、クルーシオで傷んだ体を医務室のベッドに横たえていた。今なら私も身をもって知ったクルーシオの恐怖と苦痛。スネイプ、あなたは何者なの?何のために戦っていたの?誰のために?

トンネルの出口が見えると、私は少し怯んだ。今さら私が来ても、何がどうなるわけでもない。あの恐ろしい、、哀しい姿を、今度は一人で見るだけのこと。せめて、血を拭い清めることをしに来たのかしら?

息を潜めて立ち上がり、そっと中をのぞきこんだ。少し前に見た、血の海に倒れる亡骸を予想しながら。


だけど、目に飛び込んできたのは、束ねたプラチナブロンドが揺れる背中だった。手にした杖を、遺体に向けている。

ルシウス・マルフォイ!

マルフォイの館で受けた苦しみと恐怖が蘇った。内臓をえぐる苦痛。のたうつ私を前に、ヴォルデモートを呼ぶといきり立っていた男。冷酷で、高慢で、『穢れた血』と私を見下し苦しめたデスイーター。

驚きながらも、私はその背に正確に杖を向け、武装解除呪文を放とうとした。まさにその時・・・

マルフォイの手から、杖がポトリと落ちた。

「セヴィ、、セヴィ、、」

空いた両手で亡骸を抱え上げ、頬をすり寄せて、肩を震わせていた。

「セヴィ、、セヴィ、、」

繰り返し名前を呼びながら、むせび泣く背中。座り込んだ足元は血の海で、高級な気取ったローブも、寄せた頬も、血にまみれるのもいとわずに。フレッドの亡骸の胸にすがりついていたモリーおばさんと同じ後ろ姿。

見てはいけないものを見てしまった気がした。彼らにも、憎むべき闇の彼らにも血は流れ、友を思い悲しみの涙を流す。こちらも、あちらも、死と悲しみがあふれて。

すすり泣くマルフォイの肩の震えに合わせ、上体を抱え上げられたスネイプの白い手が、力なく垂れて揺れていた。その長い指先から血の滴が落ちるのを、私はぼんやりと眺めていた。


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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシウス スネイプ

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