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セブルス・スネイプと死の秘宝(20)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


力なく揺れていた指先が、わずかに動いた気がした。ほんのわずか、抱きあげる人の背を求めるように。

まさか・・・?目を凝らしてじっとスネイプの指先を見ていると、また、わずかに、ピクリと。一瞬のことだけど、確かに意思の感じられる動き。

「、、生きてる、、」

思わず声を漏らすと、マルフォイがぎょっとしたようにこちらを振り返った。その顔を見て、私のほうがぎょっとした。腫れあがり片目がつぶれた顔にべったりと血がついて、血と涙にまみれたひどい形相だった。

私は杖をかまえたけれど、マルフォイは気づかないようだった。私が、蔑み苦しめた『穢れた血』だということすら、どうでもいいようだった。

「何と、言った?、、、生きていると?」

「え?、、ええ。スネイプの指が動いたように見えて。」

マルフォイは私にかまわず顔を戻した。

「セヴィ!セヴィ!生きているのか?」

スネイプの体を静かに横たえて、両肩を手に包み叫んでいる。スネイプの閉じられた目が、一瞬わずかに開いた。マルフォイがまた私を振り返って叫んだ。

「生きている!今まぶたが動いた!見たか?」

「ええ、見えました。」

私もマルフォイの横にひざまずき、さっきやるべきだったと思ったことをした。杖でスネイプの周りに溢れる血を掃う。血を拭うと、大きく開いた深い傷が露わになった。あれからもうかなりの時間が過ぎて、残る血もないはずなのに、傷口からは血が流れ出ていた。怪訝な顔でマルフォイを見ると、察したように返事が返ってきた。

「造血剤を飲ませたのだ。ナギニに噛まれてひどく出血していた。解毒薬と造血剤を口に流し込んで、傷を塞ごうと治癒呪文をかけたのだが、、、。他人の杖ではうまくゆかぬ。傷がふさがらないのだ。私の杖があれば、、杖が。」

マルフォイはいら立って声を高めた。私はいちばん大きな首の傷口に杖を向けて、治癒呪文をかけてみた。傷口はいったんは小さくなるけれど、またすぐ広がって、血が流れ出る。

「ナギニの毒は、ふさいだ傷口を溶かすのよ。アーサーおじさんの時もそうだった。毒が抜けるまで、造血剤で血を補いながら、包帯で出血を抑えなければいけないの。」

「造血剤・・」

マルフォイが足元に落ちていた袋をひっくり返して、まだ残りがないかと探し始めた。私が持っているのと同じ薬袋。スネイプは魔法薬を煎じては、あちこちに配って回っていたようだ。その心境を思うと、、、その心境はわからないんだけど、物悲しい気持ちになる。

私は片手につかんだままになっていた薬袋から、造血剤を取り出した。

「なぜおまえがそれを持っている?」

説明すれば長くなるから、私は肩をすくめてマルフォイに渡した。マルフォイが急いで造血剤をスネイプの口に注ぎ込む。その隣で、私は治癒呪文を続けた。なんだかおかしなことになったと思いながら。マルフォイと並んで、スネイプの命を救おうとしているなんて。さっきは、ハリーたちと一緒に、ドラコ・マルフォイと仲間のゴイルを炎から助け出したし。

マルフォイは造血剤を2、3瓶スネイプの口に注ぎ終えると、ローブの裾を切り裂いて、スネイプの杖を振って包帯に変えた。私が治癒呪文をかけた傷口から、その後を追うように包帯を当てていく。倒れた背中側にも傷口はあったから、2人でスネイプの体を支えて動かしながら、首から肩に、歯形に残る傷口をすべて、呪文をかけては包帯で保護していった。

「あっ」

スネイプがゆっくりと目を開けた。造血剤を飲んで少したつと、体内に血が巡るのかもしれない。かすかに命の輝きが戻った黒い目が、マルフォイと、それから私を、ぼんやりと見たようだった。

「セヴィ、私だ。わかるか?しっかりするのだ。」

スネイプがわずかに口を開こうとした。小さく丸く。何回か。声を発することはついになかったけど、私にはそれが『ポッター』と言っているように見えた。そんな気がしただけかもしれないけど。スネイプはそれきり、目を閉じてまた動かなくなってしまった。しばらくそれを見ていたマルフォイが、指先をスネイプの鼻の下においたあと、私のほうを見て言った。

「わずかに息がある。セブルスは大丈夫なのか?助かるのか?これからどうすればよいのだ?」

そんなこと、私にきかれてもわからない。首を横に振った。

「スネイプ、、先生ならわかると思うけど、、、」

「セヴィはいつでも、他人の治療ばかりしていたのだ。」

マルフォイはやりきれないように言って、顔にかかったスネイプの髪をはらい、何度も撫でていた。マルフォイを見ているうちになんだか腹が立ってきた。この男はデスイーターで、敵なのだ。マルフォイの館では私が痛めつけられるのを喜んで見ていたし、神秘部の闘いでは私たちを追い詰めた。そういえば2年生の時、秘密の部屋が開いて石化させられたのもこの人のせいだった。マルフォイを、責めたかった。

「ヴォルデモートがスネイプを殺そうとしたのよ。あなたが仕えるご主人様が。」

「知っている。」

「それなのに、なぜスネイプを助けようとするの?」

「いけないかね?」

「だって、命令に逆らうことになるわ。」

「セブルスのことは、ホグワーツに入学してきた子供の頃から知っている。私たちはその頃からの長年の、、友人なのだ。グリフィンドールでは友人の命を助けるのに理由がいるのか?」

最後の嫌味は無視して、マルフォイの言葉を吟味してみた。今は死んだように動かないスネイプの子供の頃。・・・想像できない。マルフォイは今の私くらいだったのかしら?それから今まで。マルフォイの子供が私たちの年になるほどの、長い年月。私には気が遠くなるほどの長い時間。その重み。だけどスネイプは確かに騎士団員としてハリーを助けていたように思えた時期もあった。マルフォイは裏切られていたのに。

「スネイプはもしかしたらハリーを助けてたかもしれない。あなたたちを裏切ってたかもしれないのよ。」

「そうかもしれぬな。」

意外な返事だった。

「裏切り者だと思っていたの・・・?」

マルフォイが顔を上げて、私のほうに向きなおった。

「セブルスの立場は複雑だったのだ。ダークロードが復活して戻って以来、仲間の中にも裏切り者だと陰口を叩く者もあった。二重スパイで自分のことはあまり話さないから、私にもセブルスが実際、どちらの陣営についていたのかわからぬ。」

「そんな、、敵か味方かもわからないの?それなのに・・・」

「敵でも味方でもかまわぬ。セヴィは私にとって大切な友人だ。逆の立場ならセヴィも同じことをするはずだ。」

きっぱりと言い切られて困惑した。

「それならほんとうにスネイプはハリーを助けていたかもしれないのね・・・」

「そうかもしれない、、、」

マルフォイが昔を思い浮かべるような表情をしたのが気になった。

「何か、そう思う理由があるのですか?」

「セブルスがポッターを助けていたのかは知らないが、そうだとすれば理由は明らかだ。」

ダンブルドアも、いつもスネイプを信頼するに足る理由があると言っていた、、、。

「理由って何ですか?」

マルフォイが、そんなことも知らないのかというように、眉を上げて私を見た。

「ポッターの母親に決まっている。母親の命を守れなかったから、死んだ母親に代わって息子を守っていたのだろう。」

ハリーのお母さん?ハリーは、お母さんはマグル出自だからスネイプは気にも留めていなかったって言ってた。お母さんの代わりにハリーを守っていた?そんなことがあるだろうか?どうみてもスネイプはハリーを目の敵にしていたのに。

「まさか?」

反論されたと思ったのか、マルフォイが腫れあがった顔をしかめて言いつのった。

「ダークロードがポッター一家を襲撃すると知って、セヴィは母親の命乞いをしたのだ。ダークロードの足元にすがりついて、母親を助けてくれと頼んでいた。私もその場にいて、母親は予言に関係ないと口添えしたのだから確かなことだ。ダークロードもセブルスの願いを叶え、母親の命はうばわぬと言ってくれたのだが。」

あのスネイプがお母さんの命乞い?・・・いつもハリーを目の敵にしていたスネイプと、ここに死んだように倒れている人が別人に思えてきた。

「でも、どうしてそんなにしてまでハリーのお母さんを助けようとしたのかしら?」

「ポッターの母親とセヴィは幼馴染だった。ホグワーツに入学した頃は、よく2人で手をつないで歩いていたものだ。襲撃の翌朝、血相を変えて飛び出していって、それきり戻らなかった。そのままずっとダンブルドアの元に留まったのだ。」

哀しい話だった。ずっと昔の幼い2人。それから長い時を経て・・。床に倒れた人の姿が少しだけ涙で滲んだ。だけど。

「でもそのダンブルドアを、スネイプは殺したわ!なぜ?」

「ドラコを守るためだろう。ダークロードはドラコにダンブルドアを殺せと命じたのだ。できなければドラコや私たちを殺すと脅してな。ドラコにできるはずなどないことは、ドラコ以外は皆わかっていた。ダークロードも、もちろんセヴィもだ。」

マルフォイと話しているうちに、ほんとうにスネイプがこちらの陣営にいたようにも思えてきた。だけど、、もし味方だったなら、生徒を守るためとはいえ、ダンブルドアを殺すだろうか?ダンブルドアを殺すなんて・・・。もしかしたら私はマルフォイに丸めこまれているだけかもしれない。なんといってもこの男はデスイーターなんだもの。混乱して、頭の中がぐちゃぐちゃだった。

「スネイプは、、じゃあ、スネイプ先生はほんとに私たちの味方だったのかしら?」

「セヴィがどちらの陣営についていたかということは、今そんなに重要なことなのかね?いずれにせよ、今やセブルスはどちらの陣営に見つかっても殺されかねない状況だ。身を守ることもできぬのに。」

マルフォイは会話に興味を失ったようにスネイプに向きなおり、愛おしそうに、青ざめた頬に手を当てた。

「もう戻らねば。ダークロードに疑われてしまう。セヴィ、生き延びるのだぞ。また来るからな。」

それからマルフォイはもう一度、解毒薬と造血剤をスネイプの口に流し込んだ。そして魔法薬の袋をスネイプのローブの中に入れ、杖を手元の床に置いて立ち上がった。私も立ち上がると、マルフォイが言った。

「私はもう戻らねばならぬ。君もそうだろうが、セブルスには造血剤が必要だ。来られるときには来て、飲ませてやってくれぬか?私ももちろんそうするが、頻繁には来られぬかもしれないから。」

私はうなづいた。

「それから、このことは口外しないように。セブルスの立場がわからないことにかわりはないのだから、そのほうがよいと思うが、君はどう思う?」

「たぶん、、、ええ、私もそう思います。」

トンネルに向かおうとしたら、呼びとめられて振り向いた。

「ミス・グレンジャー、助けてくれて感謝する。助かるかはわからぬが、、、それでも礼を言っておく。」

腫れあがった顔に似合わない気取った態度でマルフォイが言った。私は戻ろうとしたけれど、思いついて聞いてみた。

「ミスター・マルフォイ、あなたはどうしてここにいたのですか?」

「ああ、それは、ダークロードの命令でセブルスにここに来るよう伝えたのだが、ダークロードが停戦を告げてポッターを呼びだしたのに、セブルスが戻ってこなかった。もともと嫌な予感がしていたから、すぐ見に来たのだ。そうしたら・・・。ひどい有様だったが、まだ温かかった。あきらめかけたが、君が来てくれて助かった。ミス・グレンジャー、君が来た理由こそききたいところだが、もう戻らねばならぬ。」

狭いトンネルを這いながら、来た時よりももっと混乱していた。マルフォイなんかと、共犯者めいた秘密を持ってしまった気がした。スネイプもマルフォイも、わからない人たちだ。血も涙もないデスイーターの悪人だと決めつけたのは間違っていたのかしら?

スネイプは、ハリーのお母さんが亡くなった時から、ずっとハリーを守るつもりで生きてきたの?私の人生、丸ごと分の長い年月を。授業中の意地悪な態度からは想像もつかないけど。マルフォイなんて信じたくなかったけど、今の話には説得力があった。マルフォイの態度には、悔しいけど、深い友情や信頼だけが持つ迫力があったから。

マルフォイは、スネイプが敵でも味方でもかまわないと言った。私はそれはやっぱりかまうけど、それでもスネイプには生きてほしいと思う。このまま死んでしまったら、私はたぶん、とても悲しいと思う。

大ホールに戻ると、ウィーズリーのみんなは、泣きはらした目をハンケチで抑えながら、フレッドの周りに立っていた。私は横たわるリーマスとトンクスの手をしっかりと重ねあわせた。死んでしまった人、生と死の境界に居る人、そして生きている私たち。それぞれの思いを胸に、精一杯に命をつぐみ・・。私はロンの隣に行き、そっと手をつないだ。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシウス スネイプ

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