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セブルス・スネイプと死の秘宝(28)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


大人げないセブルスに少し腹をたてて、説得する言葉を考えながら家に戻ると、セブルスが書斎の床に倒れていた。テーブルには調合鍋と薬の材料が置かれていて、私の留守中に、なくなりそうな造血薬を作ろうとしたんだとすぐわかった。

セブルス!」

かけよって抱き起すと、腕に擦り傷があり、血が流れていた。そのせいかわからないけれど、首の包帯にも血が滲んで見えた。立ち歩いているうちに、貧血を起こして倒れたようで、ぐったりと意識がない。

あわてて地下室に掛け込んで造血薬を探したけれど、見つからなかった。どうしたらいいんだろう?私には魔法薬は作れないし、セブルスは人目にさらされるのをひどく嫌がっていた。聖マンゴやホグワーツの医務室で目覚めようものなら、またどんな無茶をするかわからない。

じわじわと包帯に血が滲んでゆくのを見ながら、一人だけ、セブルスを匿い、必要な処置を与えられる者のことを考えた。そこならセブルスも素直に治療を受けるはずだ。その男の元に戻すのは嫌だけれど、、、。口惜しいけれど私にはそれしかできない。

セブルスを毛布に包んで抱きあげると、数日間ほとんど食事もしなかった体は、驚くほど軽くて悲しくなるほどだった。念のためそこにあった薬材をまとめ、複雑な思いを振り切って、意識のないセブルスを抱え、マルフォイ邸を訪ねた。

バカバカしいほど大きな鉄の門だった。気後れする自分に挑むように名乗ると、人狼などが来るところではないとあっさり追い払われそうになった。けれど、セブルスの名を出した途端にマルフォイたちの態度は一変した。すぐに門が開き、内側の、庭と言うのが躊躇われるほどの広大な敷地を歩く間もなく、一家3人が駆けつけた。

「セブルスは無事なのか?生きているのか?」

たたみかけるようなルシウス・マルフォイの問いにうなづくと、私ごと抱え込むように屋敷の中に移動して、3人で手早くセブルスをベッドに横たえた。私が事情を説明するのを聞きながら、屋敷に置いてあったらしい造血剤を与え、いつの間にか支度を整えたルシウス・マルフォイが出かけてしばらくすると、癒者らしい魔法使いを連れて戻ってきた。

「聖マンゴ病院から内密に来てもらった。こんな時のためにたっぷりと寄付をしてあるのだ。」

展開の早さに目を白黒させていた私に、ルシウス・マルフォイが説明してくれた。ベッドの脇に4人で立って治療を見守りながら、情けない気持ちがこみあげる。私がセブルスにしてあげられたのは、穴倉のような地下室にともに潜み、作ってあった造血剤を飲ませることだけだった。ここならば必要な手当てを十分に受けられる。セブルスは何年もマルフォイたちを裏切り、欺いていたはずなのに、マルフォイたちがセブルスの快癒を心から願っていることは明らかだった。

治癒を終えた癒者が、数日の間、治癒呪文と薬剤を続ければ心配ないと言って帰ると、マルフォイ家の3人に囲まれて、私はますます身の置き所のなさを感じた。だけど、帰れと言われても帰らない、私にはセブルスに付き沿い、治癒したら連れて帰るだけの愛情も親交もあるんだと、一人心の中でルシウス・マルフォイに挑んでいた。けれど、帰れというどころか、丁重に礼を言われた。

「セブルスの世話をしてくれて感謝している。心配なら君もしばらく居るとよい。部屋を準備させよう。捜索を受けた後で、片付いていないのだが。」

続いてナルシッサ・マルフォイも優雅に礼を言い、ドラコまで小さく頭を下げて見せた。予想していた人狼への蔑みの言葉もいっさいなく・・・。

私は打ちのめされていた。自分の貧しさやマルフォイ家の財力にではなく、彼らが見せたセブルスへの理屈を超えた愛情に。それは紛れもなく長い時間をかけて培われた家族の情であり、私の入り込む余地などなかったのだと思い知らされた。

「いえ、お手間をおかけすることはありません。セブルスの意識が戻ったら帰ります。」

口惜しいけれど、ここがセブルスの居場所なんだ。戦いの混乱の中で、一時的に離れてはいたけれど、戦いを終え、傷ついた体でここに戻った。私も自分の場所に戻るべきなのだと思う。それはもちろん、テディのもとだ。アンドロメダに受け入れてもらえるかはわからないけれど。戦いに翻弄されていた私たちは、戦いが終わった今、それぞれに新しい生活を築いていかなければならない。

-------------------------

ゆっくりと目を開けると、私をのぞきこむルシウスの顔が見えた。腫れていた顔もずいぶんよくなった。ルーピン。心配そうな顔をして。それからナルシッサにドラコ。やつれたが、悲壮感はなくなった・・・

目を閉じて、今見たことを考えてみた。何か、おかしい。ルシウスルーピンとナルシッサとドラコ。そしてこの部屋は。

もう一度目を開けると、ルシウスたちが口々に私の無事を喜んでくれて、ルーピンもほっとした笑顔をみせた。造血剤がなくなり、倒れた私をルーピンがここに連れて来てくれたのだった。

「間に合ってよかったよ。家に帰って倒れている君を見た時は、どうなることかと思ったけれど。でも、ここならば十分な治療が受けられるよ。もう、安心だ。私は、、、家に帰るけど、君のことを心配している人たちに、無事だと伝えていいね?」

ポッターやグレンジャーたちのことだ。私がうなづくと、ルーピンはルシウスたちに頭を下げて、帰っていった。

その夜はルシウスが付き沿ってくれた。2人になった寝室で、ルシウスがじっと私を見つめ、そっと上体を抱きしめてくれた。

「セヴィ・・無事でよかった。心配していたのだ。」

そうだ。この声と、この温もりが、叫びの屋敷で、リリーの元に、、死に向かう私を、抱きしめて引き戻してくれた。ルシウス。ルシウスに抱き寄せられるといつも、リリーに去られて茫然と立ち尽くしていた少年の頃に、少しだけ戻る気がする。あの時も、一人孤独に沈んでゆきそうな私を、この腕が抱きあげてくれたのだった。


それから数日の間、朝と夕に聖マンゴ病院の癒者が来て、治療と投薬を受けた。ルシウスたちは交代で付き沿ってくれて、戦いの事や、戦い後の社会改革やデスイーター仲間たちの消息などを話してくれた。

1週間ほどたつと食事もとれるようになり、造血剤を飲みながら、ベッドの上で半身を起して、新聞や本を読んで過ごせるようになった。予言者新聞では相変わらず、私は話題の人扱いだったが、新しいネタもないのか、既に知れた話を書き換えたり、私の行方を様々に推測するものになっていった。私の居所を知っている人たちは口を閉ざしているようだし、私の過去を知る者の多くはデスイーターの元仲間たちで、逃亡中かアズカバンに収監されているのだから、ネタの掘り出しようがないのも当然のことだ。

体が回復するにつれて、私の生活は、ヴォルデモートの復活前にこの屋敷に滞在していた頃のようになっていった。闇陣営の本部にされ、その後魔法省の捜索で荒れていたマルフォイ邸には以前の落ち着きが戻り、私が居る部屋も、ルシウスやナルシッサがあれこれと買い揃えてくれて、以前暮らしていた頃の趣を醸し出している。

そのような部屋に身を潜めていると、時には、ここ数年の身を削るような日々が嘘のように思われ、ホグワーツを卒業した頃の、深い考えもなくルシウスに身を寄せた私から少しも変わっていないように思えることがある。もちろん、ひとたび思いを馳せれば、贖罪に捧げた日々の記憶は鮮明だった。リリーの死から17年、ただひたすらリリーの遺志を継ぐ思いに駆られ、ダンブルドアの指示を受けて懸命に任務を果たすのが私の人生だった。過ちは悔いているが、贖罪の日々に悔いはない。

だが、終わってみると・・・

贖罪は果たせたと思う。もとより失われた命に取り返しはつかぬが、リリーの遺志は叶えられた。リリーが命を捨てて守った息子は無事成人し、見事にヴォルデモートを倒し、生き延びてくれた。もう命を脅かされることもなく、守りも助けも必要としない。たくましく自分の道を切り開いてゆけるだろう。

私はこの先、何のために生き、何をやってゆけばよいのだろうかと考えると、途方に暮れた。贖罪に生きた日々にも、さまざまな日常の営みはあった。人生のほぼ大半を費やしたホグワーツでの教師の務め、ルシウスとの絆やドラコの成長、ルーピンとの、、なんといえばよいのかわからぬが、言ってみればもたれ合いのような関わり。

喜びや支え、怒りや悲しみを織りなしたそれらのすべては、振り返ればひた走る列車の窓を流れて行く景色のように、私の人生の傍らに存在していただけのように思える。

神経を張り詰め、魔法を駆使し、懸命に生きていたつもりだったが、私の実体は、リリーの遺志とダンブルドアの指示で成り立っていたようなものなのだ。私は贖罪以外の何にも心を傾けることがなく、自ら育もうともしてこなかった。私自身の時間は、あの時から止まっていたようなものだ。それを悔いはしないが、今、再び、時が動き出す。新しい歩みを始めるべきだと思うのだが、この部屋にいる私は、やはりホグワーツ卒業当時の、ルシウスに寄り添うだけの寄る辺ない少年のようだった。

ダンブルドアは、戦いを生き延びて自分の人生を歩めと言っていたが、それは容易に見つからない。


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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシウス ルーピン セブルス

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