スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セブルス・スネイプと死の秘宝(29)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ポッターに会ったのは、ホグワーツの闘いからひと月が過ぎようとしている時だった。

予言者新聞に、ヴォルデモート卿ことトム・リドルの遺体を、魔法省の責任において無縁墓地に葬る予定との告知が出たのだった。1か月の保存期間が過ぎようとしているが、引き取りの申し出もなく、近親者も見つからないための措置と報じられていた。近親者といっても、母親は出産とともに死に、生まれる前に捨てたという父親の一家は自ら惨殺したと言っていた。崇拝していたベラトリックスでも生きていれば別だが、魔法界に引き取る者がいるはずもない。死を回避することに取りつかれていたヴォルデモートは、自分の死後の処理など考えもしなかったことだろう。

自ら分けて壊した魂がどこに召されるものなのか想像もつかないが、忌まわしい魂の抜けた体くらいは、人として葬ってやりたい気がしたのだった。

私の消息が知られることは好ましくないが、いつまでも生死不明のまま身を潜めているわけにもいかない。魔法省の関係局に遺体の引き取りを申し出ると、同じ告知を見て申し出た者がもう1人いるということだった。どちらも親族ではないから2人に引き渡すと言われ、申請の手続きのために魔法省に出向いた。街中はアパレートしたからよかったが、魔法省の中で、人々の好奇心の目に曝されるのは耐え難いものだった。

魔法省の一室に通されて待っていると、指定の時間に遅れること数分、ポッターが掛け込んできたのだった。習慣とは実に恐ろしいものだ。ポッターの顔を見て飛び上るほど驚いたのに、私は反射的に叫んでいた。

「ポッター、遅刻だ!」

我に帰り、グリフィンドールから減点!と叫ぶのは、かろうじて飲み込んだ。ポッターも、驚きのあまり声もなかったようだが、そのまま一歩、ニ歩と近付いてきて、延ばせば手が届くほどの距離に来て立ち止まった。互いに言葉もなく、ただ向かい合う。

ポッターの目に敵意が見えないのは、落ち着かぬものだった。父親そっくりの容貌に、ただそこだけリリーの面影が宿る緑の瞳に憎しみが映るのを、どんなに複雑な思いで見てきたことだろう。湧きあがる怒りや憎しみと悔いを承知しながら、目を逸らすことができず、むしろ追い求めずにはいられなかったものだ。記憶を渡し心の秘め事を明かした後で、このように突然現れて、私にどうしろと言うのだ?

「すみません、遅れました、、」

私の中に、憎しみと嫌悪以外のものが秘められていたことを知り、思いがけない再会に、ポッターも私以上に戸惑っているに違いない。だが、口惜しいことに、目をそらしたのは私で、グリフィンドールらしい勇気を示して口を開いたのはポッターだった。

「僕、ヴォルデモートを倒しました、先生。」

見慣れたその緑の瞳は、困惑して見開かれ、声には、、期待さえ滲んでいるように思われる。このように複雑な感情と人間関係を、どう処理しろというのか?

「、、よく、やった、ポッター。」

私はようやく言って、褒め言葉にふさわしい、笑みを浮かべたつもりだ。だがポッターが一歩引いたのを見ると、そうは見えなかったようだ。

ポッターを見て湧きあがる様々な思い。ただこの少年の命を守ることが生きる理由と思い決め、ポッターに重なる父親への怒りと憎しみ以外は、すべて閉ざした心の奥深くに封じ込めてきた。今、心の秘密を明かし、私がもたらしたともいえる過酷な使命を果たした青年に対峙し、溶けることを許された心からどのような感情が流れ出すのかと思うと怯えすら感じる。受け入れる準備ができていないのだ。

私とポッターの間では珍しいことだが、お互い冷静になり、処理しかねる複雑な感情は置いておいて、今ここにいる理由に戻ることにした。

「なぜここに来たのだ?ヴォルデモートの遺体を引き取ろうと言うのかね?」

「はい。引き取り手はないだろうから、倒した僕がするべきだと思ったんです。先生こそ、なぜですか?ヴォルデモートは先生を殺そうとしたのに。」

「ポッター、ヴォルデモートは私を殺そうとしたわけではない。邪魔物を退けようとしただけなのだ。」

私を、他者を、それぞれの命を懸命に生きる人として見ることができたなら、あのような怪物は生まれなかった。ポッターは納得したのかしないのか、それ以上の議論をするつもりはなかったらしく、書類に記入を始めた。

「埋葬場所は、、、リトル・ハングルトンのリドル家の墓でしょうか?」

ヴォルデモート復活の時を思い出したのか、ポッターがわずかに顔をしかめて言った。

「いや、生まれる前に捨てられて、自らの手で殺したマグルの父親の元では、互いに眠れぬことだろう。母親の墓か母親に由来する場所がわかれば、そのほうが救われると思うのだが。」

「救われると、、思いますか?」

「救われることのなかった魂がすでに去った亡骸だ。体くらいは、、といっても、父親の骨とペティグリューの肉と、、おまえの血でできた体だったな。まったく、、救いがたき者だが、救われてほしいとは思う。」

「リドルの母親は、マグルの孤児院で出産した直後に死にました。僕たち孤児院の場所に行ったんだけど、もうなくなっていた。母親がどこに埋葬されたのか、調べようがないと思います。由来の場所と言えば、、ゴーント家の墓くらいかな。でも母親の兄もリドルが殺したんだけど。」

「ひどいものだ、、、。だが、そこしかないだろう。ヴォルデモートの過去に詳しいようだが?」

「ダンブルドアが、個人授業のときに、関わる記憶を見せてくれました。ホークラックスを探すのに必要だと言って。孤児院に行ってリドルをホグワーツに招いたのはダンブルドアだったんです。ゴーントの家のことも調べていた。先生もよくご存じですね。ダンブルドアは他に知る者もないと言っていたけど。」

「詳しくは知らぬ。私が知っているのは本人が話したことだけだ。」

「リドル自身が、父親はマグルで自分は孤児だと話したんですか?純血主義のデスイーターたちに。」

「皆に話したかは知らぬ。私には話したのだ。」

「では先生にだけ?どうしてでしょうか?」

「同じ根を持つと言っていた。折り合いの悪いマグルの父親がいると知っていたからだろう。どちらも恵まれた子供時代を過ごしたとは言えぬからな、、おまえもそうだが。」

ポッターは何事か考えに沈んでいたが、しばらくの沈黙の後、堰を切ったように話し出した。

「僕も同じようなことを考えました。先生の記憶を見て禁じられた森に向かいながら、ヴォルデモートも先生も僕も、親の愛を知らず見捨てられて育ち、このホグワーツで初めて家庭を見つけたんだって。ヴォルデモートはここを手に入れようとしている、先生は裏切り者の汚名を着ながら命がけでホグワーツと、、僕を守っていた、僕は、ホグワーツのみんなを守るために身を投げ出すべきなんだって。母さんが赤ん坊の僕を守るためにしてくれたように。

母さんが死んだあとは、先生が長い間僕を守ってくれました。ヴォルデモートを倒すために僕を守ってくれた人はたくさんいたけれど、先生は、僕を守るために戦ってくれた。一人でヴォルデモートの元に行って・・それがどんなに勇気がいることか、僕にはわかる。仲間たちに背を向けて、ただ一人で敵の中に・・・僕は、何も知らず・・」

ポッターは涙ぐみ、言葉に詰まった。私も何か言わねばならないが、、何と言えばよいのだろう。私とポッターの関係は『守ってくれてありがとう』『どうしたしまして』と言ってすむ単純なものではない。たしかに私はポッターを守って戦ったが、それは私が死をもたらしてしまったリリーへの償いだった。私の行いがなければ、ポッターは守られる必要もなく両親の愛に包まれて育てたのだ。それはポッターもわかっている。だから、感謝の言葉を口にしたわけではなく、守った事実を言っただけだ。

おそらくポッターは私が払った代償の過酷さと孤独を思い、言葉が詰まったのだ。ポッターもそれ以上の過酷で孤独な使命を成し遂げて。

「ポッター、私は、一人ではなかったのだ。」

一人では進めぬ道を、いつもリリーの思い出が支えてくれた。私が父親と重なるポッターに怒りと憎しみを感じ、ポッターも私を憎み嫌っていたとしても、ポッターはリリーの遺志そのものであり、私は魂に宿るリリーとともにそれを守ったのだった。

ポッターは物問いたげに私の顔を見ていたが、私たちはそれ以上言葉を交わすことはなかった。


手続きを終え、数日後、ゴーント家の粗末な墓の脇に、ヴォルデモートの遺体を埋葬した。すでに恐れや憎しみは失せて、憐れみを感じるだけだった。少しでも記憶に残る程度に母親が生き延びてやれば、違う道を歩めたのだろうか?

同じ根を持つと言われたが、そうではなかったと思う。私自身、過ちや悔いを抱く人生を歩み、年を重ねて振り返ってみれば、ホグワーツ特急に向かう日、私は母に手を引かれていた。生活に打ちのめされて、息子に愛情を注ぐ余裕はなかったのだろうが、その日まで私を育ててはくれたのだ。自分とは違う魔法使いの子供を愛すことはできなくとも、父も私を捨てることはなかったのだった。そして、私はリリーに会うことができた。もしその1つでも幼いリドルに与えられたなら、誤りを悟ることができたのだろうか?

隣に佇むポッターが、ヴォルデモートの墓を前に何を考えていたのかはわからない。ポッターも親の記憶さえないまま育ったのだ。それでも世を恨んで闇に堕ちる過ちは犯さず、自分を殺そうと狙い続けたヴォルデモートを倒し、自らの手で埋葬することを選んだ。リリーの血を継ぐ素質なのか、ダンブルドアの導き故か。


私はポッターを誇らしく思った。父親に重なる憎しみや怒りが消えないとしても、ポッターは確かに、リリーの勇敢で温かい魂を宿している。

贖罪に捧げた年月は長く苦しいものだったが、私は愛するに値する人を愛し、守るに値する者を守ることができたのだ。


スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ハリー ヴォルデモート

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。