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セブルスとルシウスの物語(4)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


その一件以来、ボクは母上の部屋を訪れることを禁じられ、ホグワーツに来てからは母上のことを思いだすことすらほとんどなくなった。

4年生の学年末に母上の死の知らせが届き、急ぎ家に帰ると、久しぶりに見る母上は、数え切れぬほどの白いバラの花に飾られたベッドに、小さく横たわっていた。透けるほどに白い頬に手を伸ばすと、指先が凍えるほどに冷たく、たしかに命の炎が消えたことを伝えていたが、果たしてこの人は生きていたことがあったのだろうかと思うほどに母上の命は定かでなかった。

盛大に行われた告別式には多くの弔問客が訪れ、涙を浮かべながらボクを励ましてくれる人もいた。うつむいて曖昧な会釈を返して1日が暮れた頃、突然耳元で囁かれた。

「キミは悲しくないんだろう?」

振り返ると、驚くほど近くにジャン・ピエールの黒い巻き毛が揺れていた。遠縁のフランス貴族、モンタギュー家の長男。父親同士は長く親交があり、ボクたちも何度か会ったことがある。ボクより3歳ほど年上のはずだ。

「ジャン・ピエール、母を亡くして悲しまぬはずないだろう?」

「だが悲しみが湧きあがらないからとまどっているのだろう、ルシウス?」

ジャン・ピエールのブルーの瞳に、わずかに共犯者めいた笑みが浮かんでいる。演じなくてもよい、ボクたちは同類だと瞳が告げる。ボクは肩をすくめて見返した。

「悲しくないわけではない。ただ、あまり母上と話すこともなかったから。」

「キミの家の事情は知っているよ、たぶんキミよりもね。」

「ボクの家の事情?」

「そう。たとえば、キミの麗しい母上が、生前は壊れた人形のように、疎まれ忘れ去られていたこととか。」

声を潜めてジャン・ピエールと話すうちに、悲しみが込み上げてきて唇を噛んだ。突然ベッドから身を起こし、ボクを罵った母上、ポツンとベッドに横たわっていた姿、遠い昔の優しい笑顔・・・。

「悲しくなったみたいだな?」

「ああ。キミのせいだ、ジャン・ピエール。」

「それでいいじゃないか。キミは母上の死を心から悲しみたかったのだろう?キミの母上はキミを産むためだけに生きたようなものさ。悲しんでやれよ。僕はキミの美しい瞳に涙が滲むのを見たかったのさ、ルシウス。」

ジャン・ピエールがまた口元にわずかな笑みを浮かべて言った。気がつくとボクは泣いていた。


母上の葬儀が終わり、集まった多くの人たちが帰ると、屋敷には元通りの静けさが戻った。そのまま夏休みに入ったからボクはホグワーツに戻ることもなく屋敷にいたのだが、数日が過ぎた頃、ジャン・ピエールが部屋にやってきた。

「ルシウス、元気になったかい?」

「ジャン・ピエール、なぜここに?」

「僕はゲストルームに泊めてもらっていたのに気づかなかった?」

「なぜ泊まっていたのだ?」

「キミと友好を深めたくて。フランスに帰っても退屈なだけだしね。ボクたち貴族の若者にとって、退屈ほど厄介なものはないだろう?」

「勉強はしないの?」

「キミは優等生なんだな、ルシウス。」

「バカは嫌いだ。」

「僕もバカは嫌いさ。キミのように優秀で誇り高い友人と夏休みを過ごしたいと思ったまでさ。元気になったなら、勉強をすませて夕方には出かけよう。ロンドンにはいい店があるようだよ。」



ジャン・ピエールに連れられて行ったのは、ロンドンの高級レストランだった。

「ロンドンに来てフランス料理というのも芸がないけど、イギリスのディナーは口にあわないんだ。料理と呼べるほどのものがないからね。イギリス人のキミには悪いけど。」

「マグルのレストランなんて。何を考えているんだ、ジャン・ピエール?」

「ルシウス、マグルの文化はそう捨てたもんじゃないぜ。一人ひとりは劣っているけど、彼らには数の力がある。ここは数多いマグルの中から選り抜きの者が集まってよい料理を提供しているのさ。僕らはそれを享受すればいい。魔法界にはない食材もうまく使っているよ。」

食べてみるとたしかに、ホグワーツの食事とは違う洗練された味わいがあった。タイミングを見計らいながら空いた皿を下げたり料理を運んでくるマグルの給仕に聞きとられぬよう、声をひそめながら会話を続けた。

「料理は確かに悪くないな。だがマグルなど力を持たぬ汚らわしいものだ。杖の一振りで生かすも殺すもボクの自由になる。それも知らず自らの下劣さを認めもしない、、、」

「ははは、ルシウス、勇ましいことを言う。でもここでは杖を振らないように願いたいね。キミが隣のテーブルのマグルに杖を振ったとする。たしかに彼らはあがなう術もなくキミの意のままさ。だけど次の瞬間、他の者たちや、通報で駆け付けるポリスという専門家たちに取り押さえられるだろうね。そしてその後は。」

「魔女狩りか?」

「さすがだ、ルシウス。マグルは仲間内では富の差だの民族の違いなどで小競り合いを繰り返すが、異端たる魔法族に対しては団結して弾圧する。魔法族が彼らにない力を持つからこそ、恐れ、妬みと憎しみをたぎらせて袋叩きにするというわけさ。中世の魔女狩りに用いられた拷問器具には、肉体を痛めつけ、精神を辱める様々な工夫が凝らしてある。拷問の挙句に、魔女は火あぶりにかけ、子孫を残せぬようにした。」

「まったく穢らわしい者たちだ。そのような弾圧はマグルにこそふさわしい。力ある魔法族がマグルから身を隠さねばならないなど、バカげたことだと思わないか?」

「その通りさ。イギリスでは、世を変えて、魔法族によるマグル支配を目指す動きがあるときいているよ。グリンデンバルド以来の力ある魔法使いの、、」

「ヴォルデモード卿だ。魔法族の血を尊び、純血魔法使いによる魔法界とマグルの支配を説いている。」

「大陸の魔法族もイギリスの動きを注視している。彼らは勢力を増しているのだろう?」

「ああ、そのようだ。ボクは詳しくは聞いていないけれど、父上はヴォルデモート卿と知り合いのようだ。」

「当然そうだろう。イギリスの魔法界で力を得たいならマルフォイ家の支援は欠かせないはずだし、力を得るものを支援しその力を利用するのが貴族のあり方だ。そうできなかった貴族はすでに没落しているからね。キミの父上はまったく素晴しい方さ。一地方の貴族に過ぎなかったマルフォイ家を、お父上一代で最も富裕な名門貴族に育て上げたのだからね。」

「キミもマルフォイ家との繋がりを強めようとボクに近付いているわけか?」

「もちろんそれもあるさ。力ある者とのコネクションが一門の繁栄には欠かせない。そうやって地位を維持してきた貴族の血が僕にも流れている。キミにもね。だけどそれだけじゃないよ、ルシウス。僕はキミが好きさ。こんなふうに、同じ立場で本音を話してわかりあえる相手は多くはない。ボクたちは圧倒的な少数派なんだ。マグルはもとより、一般の魔法族と比べても。少数派が力を維持しさらに得るには、信頼できる力ある者との友好が欠かせない。僕はキミとそんな友達になりたくてね。キミには尊敬し信頼できる友と呼べる人はいるかい?」

ボクは周りの友人たちの顔を思い浮かべてみた。クラッブやゴイルたち。いつもボクの周りを取り巻いているホグワーツの仲間たち。一緒にいて愉快だが、それだけだ。たしかに、ジャン・ピエールのように、興味をひかれる会話を楽しめるような者は思いつかない。

「ホグワーツにはたくさん仲間がいる。」

「でもキミにとっては物足りない。友達というより取り巻きなんだろう?」

言いながらジャン・ピエールがテーブルの上に手を伸ばしてきた。ボクは笑いながら手を重ねた。

「いいだろう。キミは友達だ。」

「嬉しいね、ルシウス。キミもこれから信頼できる友達を見つけて育ててゆくだろうけど、僕が最初の友達だね?」

「そういうことだ。」

「気があったところでコースも終わりだ。では次の場所に行って楽しもう。もっと友情を深めて、それからキミの家やお父上の話をしてあげるよ。」

レストランを出ると、ジャン・ピエールはボクを連れて魔法界の小さな門の前に立った。


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