スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セブルスとルシウスの物語(9)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


秋になるとクィディッチの初戦がある。魔法界では人気のスポーツらしいけど、僕はホグワーツに入るまでまったく知らなかった。箒に乗った選手たちが、球を投げ合ったり羽を取るのを競うゲームで、箒に乗るのすら苦手な僕はクィディッチ自体にはあまり興味がなかった。だけど寮対抗の試合となれば話は別だ。初戦は僕たちのスリザリン対グリフィンドール。僕もスリザリンの仲間とともに応援席についた。宿敵との対決に、スリザリン生たちも一段と盛り上がっている。

僕も心からスリザリンの勝利を願っているけれど、グリフィンドールの応援席にいるリリーを見て複雑な気持ちになった。リリーがなぜあんな野蛮な寮に組分けられたのかと今でも不満に思う、のと同時に、純血を重んじるスリザリンにマグル出身のリリーが入れなかったのも当然かもしれないと、組分けの事情もわかってきた。僕だって半純血の出自に肩身の狭い思いをするのだから。そしてこんなふうに、リリーと宿敵同士の寮に引き裂かれたのは理不尽だと思う。もし同じ寮に入れたら、今だって僕の隣にはリリーがいてくれるはずなのに。

けれどそんな複雑な思いは、試合の開始とともに吹っ飛んだ。グリフィンドールチームの中に、憎らしいポッターの姿があったからだ。まだ2年生なのにヤツはシーカーとして試合に出場している。

ゆけゆけスリザリン!頭脳プレーでグリフィンドールをやっつけろ!

スリザリンの仲間たちとともに、僕は力の限り声援を送った。スリザリンが着々とゴールを決めていく。そして両チームのシーカーがスニッチを追い始めた。ここでスリザリンがスニッチを捕れば悠々の勝利だけど、グリフィンドールが捕ればグリフィンドールの逆転勝ちになる。

他の選手たちはまだゴールを狙い続けていたけれど、観客の目はシーカーの動きに集まっていた。2人のシーカーが、互いにスニッチを狙い、相手を蹴落とし出し抜こうとする息を飲むせめぎ合い。箒に乗った姿が空に消えたと思う間もなく、思いがけない場所に急降下してくる。スリザリンのシーカーに比べ、一回りも二回りも小柄な2年生のポッターの、引けを取らない箒さばきに、グリフィンドールだけでなくレイブンクローやハッフルパフからも声援が送られた。そして・・・

ポッターがスニッチを掴み、高々と右手を上げた。スリザリンを除く観客席からは大声援が上がる。試合を中継するアナウンサーはグリフィンドールの勝利を称え、小柄なシーカー、ポッターの名を連呼した。

「クィディッチの新しいヒーロー誕生!ジェームス・ポッター!ジェームス・ポッターに拍手を!」

スリザリン席からはブーイングが起こったけど、それ以外の観客席からは拍手が送られた。ポッターは箒に乗ったまま両手を高く上げて声援に応え、空中で大きな一回転をして見せた。その姿は夕陽を受けてキラキラと輝いている。

忌々しいヤツだ。僕は苦い思いでそれを見ていた。いつもきれいな服を着て、僕のように殴られることもなく、裕福な家庭で甘やかされて育ったと一目でわかる傲慢なヤツ。1年生の頃から、嫌がらせをされるたびに湧きあがっていたポッターへの嫌悪の言葉が頭に浮かんできた。

遊んでばかりいるように見えるのに成績もよくて、今度はクィディッチのヒーローときた。僕と違って運動神経にも恵まれているんだ。箒の授業で、僕は思うように従ってくれない箒に手こずって周りにいた女の子たちから笑い者にされたというのに、ポッターは幼い頃から箒を与えられ、きっと両親におしえてもらったりしてたに決まっている。

世の中は不公平だと思う。貧乏で、親に見捨てられて、純血でもなく、運動も苦手で、運命はいつも僕に厳しい。弱い者は虐げられるばかりだから、僕は弱さを見せず、出来る限りの努力をしていくしかない。だからきちんと規則を守り、勉強を頑張ってよい成績をとる。誰にも負けない闇の魔術を磨いて、皆に認められる強い魔法使いになるんだ。

こんな、たぶん少しばかり意固地な思いと、これまた運悪く人づきあいが苦手なせいか、2年生になっても、リリー以外に親しい友達はできなかった。同じ寮の仲間たちを見ても、いつも一緒にいる仲良しグループが出来上がっている。

今日も、クィディッチの試合で負けて寮に引き上げた後、談話室で何人かずつ集まってグリフィンドールの悪口で盛り上がっていたけれど、気がつくと僕は一人だった。試合中はみんなと一緒になって応援していたのに、いつの間にこうなってしまったんだろう?

談話室を見回すと、僕の他にも一人でいる2年生がいた。話しかけてみようかと考えているうちに、彼は数人のグループの所に行って、一人の肩に腕を回しながら「仲間に入れてくれよ」とか言ってすんなりと話の輪に入っていた。僕にはあんなことできないやとため息が出た。みんなが集っている時に一人でいるのは寂しいけど、それを見せるのはいやだから、僕は立ち上がって寝室に向かった。そのとき。

セブルス

大きな声で名前を呼ばれて驚くと、談話室のソファで上級生たちに囲まれたマルフォイ先輩が僕を手招きしていた。みんなの視線を感じながら近付いていくと、マルフォイ先輩は手の甲をひらひらと見せながら言った。

「試合のときに暴れ球がかすめてすり傷が出来た。医療棟に行くほどではないが、ひりひりするのだ。」

きれいな白い手の甲に、たしかに赤黒いすり傷があった。こんな傷なら手当は簡単だ。治癒呪文で血のにじむ傷口をふさぎ、ポケットから手製の魔法薬を取り出してつけようとした。

「少し席を空けてくれ。」

マルフォイ先輩は隣にいた魔女を追いやって僕を隣に座らせ、右手を僕の膝の上に置いた。僕はそういう、体に触れられることに慣れていないうえ、周りの視線も気になって、少し緊張しながら丁寧に薬をつけた。

薬を塗り終わっても、マルフォイ先輩は僕の膝の上に手を置いたままだった。立ち上がるきっかけもなくて、居心地は悪いけどそのままソファで上級生たちに囲まれて、彼らの話をきいていた。

セブルスは無口だな。」

マルフォイ先輩の向こうに座っていた上級生の魔法使いが、からかうような目を向けてきた。周りの視線が僕に集まり、気遅れを悟られないように顔を上げて見返すのが精いっぱいだ。

「グリフィンドールに負けたのが悔しいのだろう、セブルス?次は負けぬから心配するな。」

マルフォイ先輩が代わりに答えながら、僕の髪を撫でた。グリフィンドールのいやなヤツらだけでなく、スリザリンの仲間もべったり髪とたまに陰口をたたく僕の髪。僕は恥ずかしくて、うつむいてしまった。そんな僕を上級生たちは面白そうに見ていた。


それから何度かそんなことがあった、つまり、何かにつけてマルフォイ先輩に呼び招かれた。たいてい、マルフォイ先輩は上級生の魔法使い数人と一緒に、談話室のソファや校庭の林の木陰に座っていた。一緒にいる魔法使いたちも上品で、おかしな表現だけど、どこかなまめかしさの漂う大人びたグループだった。

呼び招かれて行っても、これといった用事があるわけでもない。そのまましばらく一緒に座っていたり、授業の様子をきかれたりするだけだ。だからたまに闇の魔術を見せるように言われると、僕は喜んで披露した。その辺にいる昆虫や小動物を相手にちょっとした術を掛け、すぐに解いてみせる。すると7年生より呪文がうまいと褒めてくれるのだった。

それからほんの数回だけど、一人歩いているところを呼びとめられて図書館に行くと答えたら、マルフォイ先輩が立ち上がって一緒に来たこともある。他の上級生たちはニヤニヤと笑って手を振っていた。

そんなことが繰り返されるうち、上級生たちは僕のことを『ルシウスのペット』『ルシウスのおもちゃ』と呼ぶようになった。面と向かってそう呼ばれるわけではないけど、上級生同士の話から漏れ聞こえてくる。そしてやがて同級生たちも。上級生たちはからかい混じりに、同級生たちは妬みと揶揄を込めて、僕のことをマルフォイ先輩のペットと言う。

ペットとかおもちゃとかいう言われ方が、よいものなのかどうか、僕にはよくわからない。下位の者への表現で、対等さや敬意が含まれていないことは明らかだ。だけどそこにはどこか特別な、お気に入りの意味も感じられた。可愛がられるペット、大切にされるおもちゃ、けれど飽きればいつでも捨てられるもの。

僕は初めて得た好意、それもマルフォイ先輩のような素晴らしい人からの好意に、初めは戸惑い、そして嬉しく思い、やがて失うことを恐れるようになった。

僕は人づきあいが苦手で、スリザリンの仲間たちにも、溶け込めていないとわかっていた。みすぼらしい身なりも、陰気な外貌も、無口なのに口を開けばぶっきらぼうな物言いも、人に好かれるものではない。真面目な勉強ぶりや得意な闇の魔法の腕前さえも、時にうとまれる。弱さを見せまいと心を開けない僕に、他人が近付いてこないのもしかたがないとなかばあきらめていた。僕にはリリーがいるからそれでいいとも思っていたし。

それでも寮内で除け者にされることなく、一緒に食事の席に着いたり話しかけたりしてもらえるのは、マルフォイ先輩のお気に入りだと思われているからだと思う。

ペットであろうがおもちゃであろうが、僕はマルフォイ先輩に認められ、気に入られていたかった。好意を失いたくない。だけど僕は他の子たちのように、慕って纏わりついていくような社交性は持ち合わせていないから、僕にできること、勉強してよい成績をとったり闇の魔法を磨くことにいっそう励んだ。マルフォイ先輩に認められるために。飽きて捨てられないために。

2年生の学年末、憎らしいポッターの活躍によるグリフィンドールのクィディッチ優勝を覆し、今年もスリザリンが寮杯を獲得した。バカなポッターたちが、バカげた悪戯を繰り返して大量の減点をくらったからだ。悔しがる彼らを見てますます気分が高揚した。その中にリリーがいるのはほんとに残念だけど。

祝賀会の翌日はホグワーツ特急で自宅に向かう日だ。わずかな荷物に、隠して貯めこんでいた食べ物を入れると、もう準備は終わりだ。手持無沙汰に、慌ただしく荷物をまとめながら夏休みの予定を楽しそうに話す仲間たちを眺めていた。これから向かうスピナーズエンドの寂れた家を思い気持ちが沈む。離れる前からもう、ホグワーツに戻る日が待ちきれないくらいだ。

ぼんやりしていると、いきなり背の高い人影が隣に立った。

「今年もよく頑張ったね。よい夏休みを、セヴィ。」

え、セヴィって誰?と思う間もなく、髪が分けられ、額に唇が寄せられた。思いがけないやさしいキスに硬直しているうちに、ゆらゆらとプラチナブロンドが揺れる背中が遠ざかっていった。額に手を触れると、そこだけじんわりと温かい。

気を取り直して駅に向かう道を歩いていると、「セブ!セブ!」とリリーが走って来た。

「パパとママがキングスクロス駅に迎えに来てくれるの。今年はセブも一緒に車に乗っていって。おやつを食べてからうちに帰るといいわ。早く行こう!」

リリーが僕の手をとって走り始める。遠くでポッターとブラックがこっちを見て中指を突き立てていた。いやなヤツらだけど、今は気にならない。リリーの手をぎゅっと握り返して、僕も走り始めた。

スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ルシウス マルフォイ リリー スリザリン

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。