スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セブルスとルシウスの物語(11)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


ポッターたちの嫌がらせに悩まされていたけれど、クリスマスで家に戻ると相変わらず父さんに殴られて、休暇があけてホッとした。食べ物に困らず、リリーやスリザリンの仲間のいるホグワーツのほうがずっといい。ここには僕の居場所がある。ポッターたちさえいなければ、どんなにいいだろう。しつこい嫌がらせが口惜しくて、一人寮の談話室の片隅に座りこんでいると、誰かが近付いて来た。

「よう、スネイプ、たそがれてんな。」

顔を上げると、同級生のマルシベールだった。体格がよくて大人びているけど、同級生の中では僕に次ぐみすぼらしい服を着たヤツだ。

「たそがれてなんていない。自分がそうだからそう思うんだろ?僕は考え事をしてただけだ。」

「そう言うなよ。ま、オレがたそがれてるのは事実だけどな。」

マルシベールは嫌がる僕の隣に座り込んだ。

「何か用?」

「貧乏を嘆きたいんだ。」

「嘆きたいなら仲良しに言え。エイブリ―とか、いつもつるんでるヤツがいるだろ。」

エイブリ―とは遠縁で昔から友達だから。まあ、純血はどこも遠縁みたいなもんだけど、あいつんとこと僕の家は親しくてね。だけど今日は、、」

「だけど今日は純血の金持ちの坊ちゃんじゃなくて、たそがれて貧乏な僕に愚痴をこぼしたいというわけか?」

「おまえ、ひねくれてるな。だがまあ、そんなとこだ。でもその前に言っとくけど、エイブリ―んちは金持ちじゃないぜ。おばさんが切り詰めて貯めた金でエイブリ―に新しい服を買ってやるっていうくらいの家で、自分たちは貧乏だと思ってる。エイブリ―はそんなおばさんに小遣いをせびって、少しずつためた金で買ったお菓子をオレにも分けてくれるような気のいいやつなんだ。」

僕は一人でいたかったのだけど、マルシベールの口調に滲むほろ苦さを感じて口を閉じた。

「だけどさ、あいつにわかる貧乏ってその程度なんだ。貧乏だけど家族3人寄り添えば温かいってやつさ。おまえんちは違うよな。切りつめてもおまえに服買ってやる余裕はない、か、そもそもおまえの服のことなんか頭にない。」

マルシベールが、僕の、体のわりに小さすぎるローブを見た。母さんが去年自分の昔のローブを手直ししてくれたもので、今の僕にはあきらかに小さすぎる。

「君のだってずいぶん古いじゃないか。」

僕はむっとして言ったのだけど。

「おまえ、ガリガリでいいよな。ローブの丈が足りなくなるだけだろ?オレなんか筋肉ついちゃって困ってんだ。」

僕はがっちりとたくましいマルシベールの体を羨ましく眺めたけれど、よく見ると確かに、胸や腕はローブの生地が引き延ばされて透けて見えるほどだ。僕は少し驚いて話をきく気になった。みすぼらしい恰好はしてるけど、マルシベールの家は何代も続く純血の旧家だときいている。

「君の家ってそんなに貧乏なのか?純血の旧家なのに?」

「ああ、おまえ混血だっけ。魔法界の外で育ったんなら知らないだろうけど、純血でも貧乏はいるさ。うちは何代もさかのぼれば名門だったんだ。有名な学者の家門で、禁じられた呪文の服従の術の開発にも関わってたんだぜ。だけどそれで逮捕者が出たり、名門の体面を保つために無理したり、なんだかんだで親父の代にはすっかり落ちぶれてたってわけさ。それでも親父は体面を保とうとに必死に頑張ってたようだけど。」

「いい父親じゃないか。」

「うん。だけどここからは、おまえにはわかると思うから話すんだけど、ほんとの貧乏ってのは、金がないだけじゃないんだよな。家族や人を壊すんだ。」

「僕は貧乏で壊れていると言いたいのか?」

「そうじゃない。そんな環境がわかるように見えるのさ。そしてそれと戦っているようにね。もっともオレにはそう見えるけど、ほかのみんなには、ただの貧乏で偏屈な変わり者と思われてるだろう。」

「ふん、わかったようなことを言う。それで君の家はどう壊れたんだ?」

「オレには年の離れた妹がいてね、その妹が生まれつき心臓が弱くて、治療費に困窮した。貧乏ながらかろうじて保っていた名門の誇りも崩れ去ったんだ。親父は体面に拘って避けていた日雇い作業まで引き受けて、昼も夜もなく必死で働いて治療費を稼いでいたよ。だけど体を壊して働けなくなった。それから酒浸りになって、いつの間にか行方知らずさ。」

予想以上に深刻な話で、人ごとながら心配になった。同じ酒浸りでも、家で暴れているよりはずっとマシな父親だと思う。

「それって、事故か何かじゃないのか?」

「この間おふくろから連絡が来てうちに行ってきた。あちこち聞いたけど親父の行方はわからない。おふくろはうつ状態で寝込むし、妹の薬もなくなってな。エイブリ―のおばさんに頼んだら、なけなしの金貸してくれてさ、ようやく2週間分の薬は買えたけど。オレ、これからどうしたらいいんだろう。学校辞めて働くべきかな・・・おふくろと妹、養っていけるんだろうか。」

言ううちにマルシベールは金髪の頭を抱え込んでいた。大柄で大人びたマルシベールが、頼りない子供に見える。14、5歳の学生には重すぎる荷だ。だけど。

「だけど、話す相手を間違ってる。僕に言ったって、どうにもならない。お金なんてないし。」

マルシベールは顔を伏せたまま何度もうなづいている。そんなことはわかっていただろう。ただ、誰かに吐き出したかっただけなのだ。惨めさをわかってくれる、同じように惨めな相手に。

「世の中って不公平だね。お金なんて有り余っているような人だっているのに。・・・マルフォイ先輩がいたら助けてくれるかもしれないけど。」

何気なく口にすると、それまで顔を伏せていたマルシベールが突然顔を上げた。

「そういえばスネイプマルフォイ先輩と仲良かったよな?先輩の、、」

すがりつくようなマルシベールの目。僕もこんな目をしているんだろうか。

「先輩の、ペット?」

「ああ。言葉は悪いけど、気に入られてるってことだろ?おまえが困ってたら、きっと助けてくれるよな。」

どうだろう?マルフォイ先輩は僕を気にかけて励ましてくれたけど、僕の貧しさに同情するような気配はなかった。むしろ僕は、貧しい僕でも勉強や魔力で評価してくれたのが嬉しいと思ってた。

「あの人には、貧乏で困るなんてこと、想像もつかないと思う。」

「ハハ、そうだな。」

僕たちは互いに、自嘲的に笑うしかなかった。

マルフォイ家ってさ、ブラック家みたいな古い名門じゃなくて一代で勢力を強めたから、純血の間では成り上がりだとかスノッブだとか陰口もあるんだ。だけど先輩はいい人だったんだな。おまえみたいに見るからに貧乏なヤツでも可愛がってくれたんだから。きっとおまえが頼めばなんとかしてくれるさ。」

「ペットから飼い主に何か頼めるものか。それに、卒業してしまって、きっともう忘れてる。」

マルフォイ先輩がいた頃はよかった。今よりずっと楽しかったと思う。僕は気にかけてもらえたのがすごく嬉しかったけど、先輩にとってはほんのペットか、おもちゃで、、、飽きて捨てて、忘れてしまったのかもしれない。

僕たちはそのまま、しばらく惨めに座っていた。


そんなことがあってから、僕は時々マルシベールと話すようになった。話してみると、服従の術の開発に関わった旧家の子供だけに、闇の魔術にも詳しくて、なかなか面白かった。服従の術は禁じられた呪文だから使えばすぐにアズカバン行きだけど、重罪にならない軽いバリエーションもあるらしい。たとえば小動物にかけたりとか、短時間の幻覚で意思に反することをさせるとか、家に伝わる秘伝のようなことも教えてくれた。やり過ぎると、マルシベールのおじいさんやそのまたおじいさんみたいに、逮捕されてしまうらしいけど。

そのうちマルシベールと仲のいいエイブリ―とも親しくなった。エイブリ―は特別に優れたとこはなくて、むしろ暢気なおっちょこちょいだったけど、マルシベールの言うとおり、気のいいヤツだった。同い年なのにしっかり者のマルシベールを慕っていて、弟みたいだ。大好きな兄さんの苦境に、力になりたいと思っているのだった。

マルシベールの家の問題は、エイブリ―が母親に泣きついて結婚指輪を質に入れてもらい、当面の薬代を工面したそうだ。2人で夏休みにアルバイトをしてお金を返す計画らしい。

マルシベールとエイブリ―は、リリーを除いて初めてできた、友達らしい仲間だった。くだらないと思うことも多いけど、授業以外の時間をたわいなく一緒に過ごす友達がいるのは、気が休まることだ。僕に対して弱みを曝した彼らには、僕も安心して接することができた。ただ、父さんからの虐待やポッターたちからの嫌がらせのことを話すことはできなかったけど。口にすると惨め過ぎて、自分が壊れてしまいそうだから。

彼らからは、ほとんどがどうでもいいことだけど、いろいろな情報が伝わってきた。彼らとの交わりの中で、僕は本で学べる以外のことを、ほとんど何も知らなかったことに気がついた。魔法界の常識とか世の中のしくみとか、それにまつわる人の思いや葛藤とか。家族や友達と交わる中で、人は自然と様々な体験や知識を共有し積み重ねていく。それは何かを判断する際の基準となるものだと思う。家族とも友達とも交わりの少なかった僕には著しく欠けているものだった。欠けているとわかっても、埋める術はないけれど。


こうして4年も終わる頃、ふくろう便が届いた。みんなに届くのが羨ましくて、目をそらしていたふくろう便。いったい誰が?でもほんとは開ける前からわかってた。あきらめようと思いつつ、心の奥では待ちに待っていたのだから。


親愛なるセヴィ、

夏休みの初めに、何人か友人を屋敷に招き会を催す。ホグワーツ特急の到着時に、キングスクロスの駅に迎えの馬車を配しておくからそれに乗ってウィルトシャーに来るがよい。学校の話を楽しみにしている。

ルシウス・マルフォイ


短い便りを何度も読み返した。先輩は僕のことを忘れてなかった!約束通り屋敷に招いてくれた!

嬉しくてさっそくリリーに話そうと思ったけど、ふと立ち止まる。リリーは最近スリザリンの仲間のことをよく言わないから。気を変えてマルシベールたちに話すことにした。マルフォイ邸に招かれたと言ったら、エイブリ―は目を丸くして「スゲーじゃん」と連発した。

「先輩と話せたら、君の家のことも頼んでみる。」

マルシベールに言うと、ありがとう、頼むよと手を握られた。マルフォイ先輩が助けてくれれば、マルシベールの妹も、薬で命をつなぐだけでなく、病院できちんとした治療を受けられるかもしれない。友達って不思議だ。特別なリリーは別として、誰か人のために、何かしてやろうという気になるなんて、なんだか自分が照れくさかった。

それから、ウィルトシャーのマルフォイ邸を想像してみた。エイブリ―の話によると、想像もつかないほど広くて豪華な所らしい。と言われても、エイブリ―だって行ったことがあるわけじゃないから参考にならないけど。こんな服で行っていいとこなのか?でも他に着替えはないし。

マルフォイ先輩の前に出るといつも感じた気遅れが湧きあがったけど、それよりもずっと、嬉しい気持ちが大きかった。


スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター スネイプ マルフォイ マルシベール エイブリ―

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。