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セブルスとルシウスの物語(14)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


マルフォイ邸に招かれて弾んでいた気持ちは、うちに着くとともに消え去った。寂れたマグルの街の片隅にあるこの家を、破格に立派なウィルトシャーのマルフォイ邸と比べれば、あまりの落差に目をそむけるしかない。だけどそういうことだけじゃなくて、仲間が集まって楽しむ家や、マルシベールやエイブリ―の、貧しくても肩を寄せ合うような家族の話を身近に感じた後では、この家にないもの、僕に与えられなかったものが、いっそう露わに見えるのだった。

僕が大きくなったせいか、父さんから殴られることは前より少し減った気がする。避けるのがうまくなったのかもしれない。だけどその分母さんが殴られることが多くなって、それにもっと嫌なのは、酒に酔った父さんが母さんを暴力で犯すのを、隠そうとしなくなったことだ。

僕だってそういう行為について少しは知る年になったから、意味がわかってなおさら嫌だった。体が大きくなった僕に腕力の効き目が落ちたと思い、嫌がらせして追い出そうとしているのかもしれない。それとも見たくもない僕のことなんか、ほんとに見えないんだと示したいのか。強いられた行為の後の、母さんの虚ろな目を見るのもいたたまれなかった。

『汚らわしいマグル』『穢れた血』

父さんを見るとスリザリン寮で覚えたそんな言葉が頭の中をぐるぐる回る。先輩たちが話していた、マグルを排除し純血魔法族が支配する世の中になるのが待ち遠しい。

現実的な日々の問題として、僕はお腹がすいてしょうがなかった。食べざかりと言われる年頃なのに、食べるものがない。粗末な食事のためのわずかなお金さえ酒代に消えているのか、母さんが父さんに隠れて食べ物をくれることもなくなった。母さんも、貧しさと暴力に壊れてしまったのかもしれない。食事のことも忘れるくらいだから、僕のローブのことなんか、頭に浮かぶこともないだろうと、すでに丈の足りない古びたローブを思ってため息が出る。

家で食べ物を探そうとすると父さんと出くわす機会が増えるから、僕はホグワーツから持ってきたお菓子や飴で凌ぎながら、救いを求めるように公園に出かけた。リリーに会えるかもしれないから。リリーは家族旅行やグリフィンドールの友達の家に行くことが多くなって、前より回数は減ったけど、時々僕に会いに公園に来てくれる。お菓子を持ってきてくれたり、たまにはリリーの家に一緒に行ってごちそうになることもあった。

そんなリリーの思いやりはすごく嬉しかったけど、最近は、時々自分がたまらなく惨めに感じられることがある。強い力でリリーを守ってあげられるようになりたい。大人になりかけた男の子なら、そんな気持ちは自然なんじゃないかと思う。でも僕はいつまでたっても、リリーにかばってもらう無力な子供のようだった。

それでもリリーに会えることだけが僕の夏休みの楽しみだから、昼過ぎには毎日公園に出かけた。リリーが来れば嬉しいし、来なければ夕刻に家に戻る。夕食の時間が近付けば、リリーはもう来ないとわかるから。

家に帰ると、地下室の物置をかたつけた自分の部屋に籠り、勉強したり本を読んで過ごした。父さんとひと悶着あった後は、その部屋で父さんをやっつける呪文を考えた。ホグワーツの授業では教わらないような闇の魔術の呪文も唱えてみる。もちろん実際に杖を振るわけにはいかないから、頭の中で術をかけてやっつけるのを想像しているだけだけど。

そのうち新しい呪文を考え始めた。たいていは、父さんにこんな呪文をかけて反撃してやりたいという腹立ち紛れの空想から始まる。怒鳴れないようにしてやりたいとか、切り裂いてやりたいとか、逆さに吊るしてやる、とか、そんな反撃のアイデアを具体的な呪いの形にして、本を調べたりしながら効果のある呪文につくりあげていく。その作業は繊細なアートのようで、考えているうちに父さんへの怒りも忘れて夢中になった。家では試せないし、調べたいのに本も足りない。早くホグワーツに戻りたいと、最後はそういう思いになった。

試作した呪文に得意になってリリーに話したら、セブ、それは呪われた闇の魔術よと眉をひそめられた。それから、研究熱心なのはいいけど最近は闇の魔術に偏り過ぎだとか、闇の魔術は人を苦しめるものだとか、それはスリザリン寮の影響じゃないかとか言われた。

僕は、闇の魔術は弱い者が身を守るための強い力になると思う。それに緻密に織りなされる美しいアートだ。リリーは闇の魔術に神経質すぎると思うし、それはグリフィンドール寮の影響じゃないかと思ったけど、言うとケンカになりそうなので、口をつぐんで話を変えた。最近少しだけ、リリーと考えがあわないことがあるような気がして不安になることがある。それはリリーがグリフィンドールの偏見の影響を受けているせいだと思う。


やっと新学期が始まって、ホグワーツに帰れてほっとした。もう父さんから殴られたり、獣のような唸り声や母さんの悲鳴に耳をふさぐこともない。食堂に行けばおいしい料理が並び、図書館には選びきれないほどたくさんの本がある。そして、スリザリンの仲間たち。

僕の顔を見るなり、マルシベールが駆け寄ってきた。マルフォイ先輩が手配してくれて、妹がセントマンゴ病院に入院して手厚い治療が受けられたそうだ。まだ入院しているけど、退院する頃には、走ったり無理はできなくても、普通の暮らしができるようになりそうだと言う。希望が見えて、お母さんも気を取り直して仕事を始めたから、マルシベールは卒業までホグワーツにいられそうだと喜んでいた。

僕が先輩に話してくれたおかげだとお礼を言われて、僕も嬉しかったけど、仲のよさそうな家族の話が少し羨ましくもあった。妙に黙りこくった僕の顔をマルシベールがのぞきこむ。その青い瞳に心をのぞかれるような気がして、とっさに思いを隠した。本で読んだ開心術のことが頭に浮かんだから。

本で読んだ時も、すぐマルシベールのことが浮かんだ。かわした会話の中で思い当たることがあった。マルシベールのように魔術に長けた家に育てば、学校でやっていない術ができても不思議はない。だから僕も、人に知られたくない様ざまな惨めな記憶を隠せるように、閉心術を勉強した。といっても、学ぶまでもなくやっていたことだと気がついただけなのだけど。

「おまえもさ、スネイプ、困ってることがあればマルフォイ先輩に話してみろよ。おまえのことなら、きっとすぐ助けてくれるぜ。」

「僕は大丈夫だよ。ローブの丈が足りないだけさ。」

そう言って笑ってみせると、マルシベールも笑って答えた。

「俺は幅も足りないけどな。」

マルシベールに言われるまでもなく、優しくしてくれるマルフォイ先輩なら僕を助けてくれるかもしれないと思ったことはある。だけど。

グリフィンドールのヤツらにいじめられて困ってるんです、うちに食べ物がなくてお腹がすいてつらいんです、父さんに殴られて家に帰るのが嫌なんです、父さんはいつも酒に酔って暴れるんです、父さんはマグルで魔法使いの僕を化け物と嫌うんです、、、

どれ一つとっても、惨め過ぎると思う。僕にだってプライドがある。僕を知るリリーの友情と得意な魔術だけを支えに、そのプライドを保とうと頑張っているけど、言葉にしたら崩れてしまいそうだ。まるで僕がそんな扱いに相応しい、価値のない人間に思えてしまいそうで。

薄汚い穢れたマグルの酒飲みを父親に持つことも、虐待される惨めさも、グリフィンドールにいじめられる弱さも、知られたくなかった。僕の魔力を評価してくれるマルフォイ先輩や、友達として接してくれるマルシベールたちには、なおさらだ。軽蔑されて見捨てられたくないし、同情されて憐れまれるのもイヤだった。

惨めな僕の本当の姿を知っているのはリリーだけだ。幼い頃から事情を知っていて、ずっと励ましてくれた。マグルに囲まれた街で、互いにただ一人の魔法使いの友達として、無条件に僕の存在を認めてくれたリリーならいいけれど、他の人に知られれば、惨め過ぎて僕は壊れてしまうと思う。



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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター リリー スネイプ

コメント

はじめまして。

つい最近、ハリポタとスネイプ先生にハマり
ルシセブを求めて、こちらに辿り着きました^^

ハマってみると、思いのほかマイナーだった
ルシセブでしたが…
このブログに出会えてとても感動しております。
基本原作ベースを壊さずに構築された
見事なまでの作品郡は完全にツボでした^^
素敵すぎます~☆

はじめから、がっつり堪能させて頂きました!
特に先生が助かるきっかけのシーンは鳥肌ものでした^^


現在進行形のルシセブも
毎回、更新を楽しみにしています。

ソマリさん

はじめまして。
長い話におつきあいいただきまして
ありがとうございます^^

たしかにルシセブは意外とマイナーですよね。
原作でも2人が一緒にいる場面は
7巻のデスイーターミーティングくらいで。
でもハリーに見えないところでいろいろあっただろうと
妄想しています。

現在進行中のルシセブは、初めに書いたルシセブを
物語風にしようと思って始めたのですが、
意外と長引いています^^;
更新していきますのでまた来てくださいね♪

お返事ありがとうございます。

ミーシャさんの作品は
本当に細かく登場人物を語っているので
とても説得力があり魅力的です^^

ですので、さらにその中で
イチバンお気に入りのルシセブを
濃密に語られている今の話は
出来るだけ長く続いて欲しいとも
密かに願っております^^

色々ありつつも、揺るがない絆の二人に
妄想を掻き立てられる日々。
次回の更新も楽しみにしています^^

ソマリさん

ルシウスとセブルスの関わりは、
セブ入学時からなので、
長くなっております。
しかも一向に進展せず^^;
そのうちナルシッサ奥さまにも語らせたいのですが、
なかなか行きつきません。

スローな更新ですが、続けていきます!

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