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セブルスとルシウスの物語(17)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


OWL試験の最終日、最後の科目、闇の魔術に対する防衛術が終わった。最後の最後まで粘って間違えのない答えを書いたつもりだけど、終われば終わったで結果が気になるものだ。答案を提出して教室を出た後も、問題用紙を見ながら答えが正しかったか考えていた。湖のほとりの木陰に座って確認を終え、立ち上がって芝生に向かった時。

「スニベルス、うまく出来たか?」

ポッターの大声が聞こえた。即座にカバンを捨てて杖を振り上げようとしたけど。

「エクスぺリアームス!(武器よ去れ)」

ポッターが叫んで、僕の杖は背後に飛ばされてしまった。急いで杖をとろうと振り返ると。

「インペディダメンテ!(妨害せよ)」

吼えるように笑っていたブラックが叫んで、今度は僕の体が跳ね飛ばされた。周りにいた生徒たちがこちらを見て集まってきた。倒れたまま動けない僕に、ポッターブラックの嘲りの声を浴びせる。

「試験はどうだった、スニベリー?」

「こいつ、鼻を羊皮紙にくっつけてたぜ。」

「脂染みだらけの答案じゃ、先生も読めねえよな。」

いつの間にかペティグリューも来ていた。悔しくて、恥ずかしくて、でもまだ体が動かない。

「今に見てろ、今に、、」

僕が言うと、ブラックが突っかかってきた。

「何を見てろって?何をするつもりなんだ、スニベリー?鼻水でも引っかけるって?」

僕は言い返したり呪文を唱えたりしたけど、杖が離れていては効果がない。

「口が汚いぞ。」

ポッターが憎々しげに言って叫んだ。

「スコージファイ!(清めよ)」

呪文とともに僕の口からせっけんの泡が出てきた。息が詰まって、苦しい。咳きこんでいると。

「彼にかまわないで!」

リリーの声がした。

「元気かい、エバンス?」

打って変わって、かっこつけたポッターの声。

「彼にかまわないで。彼があなたに何をしたというの?」

「そうだな、、。それはむしろ、こいつが存在するって事自体がさ、わかるだろ?」

もったいぶって答えるポッターに、リリーが冷たく言い放った。

「ふざけてるつもりでしょうけど、でもポッター、あなたはただ傲慢で弱い者いじめのカスよ。彼にかまわないで。」

「エバンス、もし君が僕とデートしてくれるならやめるよ。どうだい?僕とつきあえよ。そうすれば古いお友達のスニベリーちゃんに、もう二度と杖は上げないでやるよ。」

ポッターがリリーに答えるうちに、妨害の呪いが解けてきたから僕は杖ににじり寄っていった。

「あなたと巨大イカのどっちかを選べと言われても、あなたとなんかデートしないわ。」

「残念だったな、ブロングズ」

ブラックが口をはさみながら僕のほうを振り返った。

「オイ!」

気づいたブラックが叫ぶ間もなく、僕はつかんだ杖をポッターに向けて呪いを放つ。セクタム・センブラ!(切り裂き呪文)。閃光が走り、ポッターの頬がパックリと切り裂かれ血がローブに滴った。振り返ったポッターが杖を向けて2度目の閃光が走る。

と、僕は踝から吊りあげられて、さかさまに宙に浮かんでいた。ローブの裾が腰から垂れて、顔を覆う。ポッターは僕の作った呪文を僕に掛けた!なんて卑怯な。

周囲からはやし立てる声やブラックたちの大きな嘲り笑うが聞こえて、僕は僕の姿、、空に逆さに吊られてローブが下がり、むき出しになった下半身、、、細い脚や、古びたパンツも露わに、、、そのなす術もない惨めで滑稽な姿が見えるようだった。みんなの前でこんな、、

「下ろしなさい!」

リリーの叫びに、この姿を、この姿で皆に笑われる僕を、今まさにリリーも見ているのだと、羞恥と屈辱で頭が爆発しそうだった。

「承知しました。」

ポッターの、わざとらしい丁寧な返事とともに、僕は地面に頭から落ちた。体を起こし裾を整えて、急いで杖を握る間もなく、ブラックにすかさず呪文を放たれた。

「ペトリフィカス・トータラス!(石になれ)」

僕の体は石のように固まって、また地面に転がった。

「彼にかまわないでと言っているでしょう!」

リリーが杖を取り出し、ポッターとブラックはそれを油断なく見ていた。

「ああ、エバンス、君に呪いをかけたくはないんだ。」

ポッターが真剣そうな声で言い。

「それなら呪いを解きなさい!」

リリーが叫ぶと、ポッターは深々とため息をついて術を解き、僕はようやく立ち上った。

「さあ、解いてやったよ。スニベルス、エバンスが居合わせてラッキーだったな、、」

僕はもう我慢ならなかった。大勢の前でポッターたちに辱められ、それも僕の作った術を僕に使う卑怯者にやりのめされて。こんな惨めで滑稽な姿をリリーに見られた恥ずかしさと、それをリリーにかばってもらう情けなさ。怒りと屈辱で、耐えられない。ポッターたちへの怒り、弱い自分への怒り、そして恥辱と屈辱でいっぱいになって。僕は叫んでいた。自分でも何を言ったかわからないままに。


「あんな汚らわしい、『穢れた血』の助けなんて、必要ない!」


僕は自分の口から出た言葉に茫然とした。リリーが瞬きをした。信じられないことをきいたというように。世界が僕の叫びに凍り、凍った世界にひび割れが走る。ガラス細工が粉々に崩れ落ちる寸前のような、一瞬の沈黙。

そしてリリーの、冷やかな声が響いた。

「いいわよ。これからはもう邪魔しないわ。それからスニベルス、私ならパンツを洗濯するわ。」

リリーの冷やかな怒りに、煮えたぎってわけがわからなくなっていた頭や体が、急激に温度を失った。

「エバンスに謝れ!」

えらそうに言って僕に杖を向けるポッターに腹立ちすら感じない。

ただ、たいへんなことをしてしまったと、取り返しのつかないことを口走ったと、その思いに立ちすくむ。僕に向けられたリリーの冷やかな怒りが、冷たい青い焔のように僕を焼き尽くした。僕の世界が崩れ落ち、粉々に壊れていく。

「あなたからスネイプに謝れなんて言ってほしくないわ!あなたもスネイプと同罪よ!」

リリーがポッターに向かって叫んだ。何か言い返したポッターに、リリーは何か激しく言い募り、それからくるりと背を向けて足早に去っていった。ポッターが呼びとめても、振り返りもせずに。

再び閃光が走り、僕はまた、さかさまに宙に吊りあげられた。

「誰か、僕がスニベリーのパンツ脱がせるのを見たいやつ、いるか?」

憎たらしいポッターの声も、それに応えたはやし声も、その後に起こったことすらも、どこか現実味を欠いた遠い世界の出来事のようだった。

リリーが僕から去っていった。僕がそうさせてしまった。僕がリリーを傷つけて、リリーが僕から去ってゆく。

地面に落とされて、のろのろとローブの裾を直す。ポッターたちも周りにいた聴衆も、いつの間にかいなくなっていた。気がつくとマルシベールとエイブリ―に助け起こされて、スリザリン寮に戻っていた。

寮の寝室のベッドに腰掛けて、ずっと考えていた。なぜ、あんなことを口走ってしまったんだろう。いくら怒りと屈辱でわけがわからなくなっても、それをリリーにぶつけてしまうなんて。ただ一人、僕をかばってくれたリリー。いつだって僕の味方でいてくれたただ一人の友達。たいせつな僕の宝。失うことはできない。リリーを失ったら僕は、、僕はどうしたらいいんだろう。どうしても、謝って許してもらわなければ。

夜も遅くなっていたけれど、僕はグリフィンドール塔に行って、リリーを呼んでもらった。何度も断られたけど、呼んでくれるまで朝まで待つと言うと、ようやくパジャマ姿のリリーが入口に来てくれた。

「ごめん。」

「聞きたくないわ。」

「許してくれ。」

「言うだけ無駄よ。」

腕組みをして立つリリーは、取り付くしまもない。

「メアリーが、あなたがここで夜明かしすると脅していると言うから来ただけよ。」

「その通りだ。そうしたかもしれない。僕はけっして君を『穢れた血』なんて呼ぶつもりはなかった、ただ、、」

「口が滑ったと言うの?」

リリーの声は冷やかだった。冷たくて、むしろ哀しげに聞こえた。

「もう遅すぎるわ。私は何年もあなたをかばってきた。私の友達は誰も、どうして私があなたと口をきくのかさえ理解できないのよ。あなたやあなたの大切なデスイーターの友達が、、、ほら、否定もしないわね!あなたたちがみんな、それになろうとしていることを否定もしない!例のあの人の一味になるのが待ちきれないのね。」

僕は何か言おうとしたけど、何をどう言えばいいのかわからなくて言葉がでない。

「私はもう偽ることはできないわ。あなたはあなたの道を選んだし、私は私の道を選んだのよ。」

「お願いだ、きいてくれ。僕はけっして、、」

「私を『穢れた血』と呼ぶつもりはなかった?でも、セブルス、あなたは私と同じ生まれの人みんなを『穢れた血』と呼んでいるわ。どうして私だけが違うと言えるの?」

僕はなんとか、何か言おうとした。どうして僕の口はうまく動いてくれないんだろう。気持ちを伝えるにはどうしたらいいんだ。

言葉を探してもがく僕を、リリーは軽蔑したように見て、くるりと背を向けて塔の中に戻って行ってしまった。

僕はそれでもなお閉じた入口に向かって何度かリリーと呼びかけていたけれど。

「もう戻ってこないよ。早くお帰り。わたしはもう眠いのよ。」

太ったレディの肖像画に促されて、僕はとぼとぼとスリザリン寮の自室に戻った。

暗い部屋のベッドの上にひざを抱えて座る。リリーは僕を許してくれなかった。もう友達ではないと言って、去ってしまった。

ポッターやブラックが僕を追い詰めたせいだと憎しみがこみ上げる。ポッターはこんなふうにしたくて、わざとリリーの前で僕を辱めたんだ!

だけどそんなふうに思えるのは一瞬で、でもあの言葉をリリーに投げつけてしまったのは僕なのだと思う。その直前まで、リリーは一人僕をかばって、ポッターやブラックに対峙していてくれたのだから。追い詰められて動転し、屈辱のあまりあんなことを口走った僕が悪いのだ。もしやつらに追い詰められなければ、もし僕がもっと強かったら。リリーのことを『穢れた血』なんて思ったこともないのに。誰よりも清らかで美しい人だと思っているのに。

何度も同じ思いを巡らせるうちに、少しずつただ一つの事実だけが胸に沁みてゆく。リリーを失ったのだという耐え難い事実。もうリリーは許してくれないのだという耐え難い悲しみ。

スピナーズエンドの暗い部屋の片隅で、一人ひざを抱えて座っているように感じられた。リリーと会う前、明りも温もりもない薄闇に、ポツンと取り残されたように座っていた幼い頃のように。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ポッター ブラック リリー

コメント

更新お疲れ様です

判っていても、何度見ても
苦しくなってしまう場面ですよね。

せめて、リリーが亡くなるまでに
少しでも先生が後悔している事を知ってくれていたらと思います。
それだけでも、救われる様な気がします。

ソマリさん

苦しいとこですよね。
屈辱のあまりバカなことを口走るのもわかるし、
ずっと庇ってきた友達に穢れた血と呼ばれた
リリーの失望感もわかるだけに。
その後先生はずっとその言葉は使わなかったんだって
リリーに知ってもらいたいですね。

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