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セブルスとルシウスの物語(18)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


幼い頃の寄る辺ない寂しさの中で、リリーは僕が初めて見つけた灯りだった。子供の頃の記憶をたどると、リリーに出会うまで、僕はほとんど口をきいたことがない。

一番古い記憶は、父さんに殴られたことだ。まだ3歳か4歳くらいのことだったと思う。僕が何をしたのか思い出せないけど、僕は父さんに殴られて床に倒れてしまった。痛いよと泣き出す間もなく、恐ろしい形相でこちらに向かってくる父さんが見えた。僕に覆いかぶさってくる、大きな影。近づいてくる大きな手。僕はただ怖くて、手で顔を覆ってやめてと叫んだ。心の中で叫んだのか、声を出したのかはわからない。

その時、ガチャン!と、何かが壊れる大きな音がした。びっくりして顔を上げると、父さんは驚いたように目を見開いて、額に手をあてていた。その手を伝い流れる落ちる一筋の血。棚にあったビンが飛んで、父さんの頭にあたったのだった。父さんは手のひらについた血を見て、それから僕を睨みつけた。

「薄気味の悪いガキだ。この、、化け物が。」

吐き捨てるように言うと、僕から顔をそむけて家を出ていった。

おろおろと見ていた母さんが、僕に寄ってきて抱き起しながら、小さな声でつぶやいた。

「魔力の暴走だ。父さんは魔法が嫌いなのに。」

「まほう?」

僕にはなんのことか、わからなかった。わかったのは、もう少し大きくなってからだ。父さんがいない時に母さんが話してくれた。

セブルス、おまえは魔法使いなんだ。母さんは魔女なんだよ。」

そう言って母さんは杖を取り出して、台所に並んでいた鍋を浮かせて見せてくれた。空中を一回転して元の場所に戻った鍋を見て、僕は大喜びした。

「おまえもやってごらん?」

手渡された杖を持って、言われた通りに呪文を唱えると、鍋は一瞬宙に浮いた。戻した時にはがしゃんと音を立てたけど、母さんは満更でもない笑顔を浮かべて僕の頭を撫でてくれた。

「こんなに小さいのに上手いもんだ。だがね、セブルス

母さんは僕の手から杖をとって真面目な顔で僕に向かった。

「父さんはマグルだ。マグルっていうのは、魔法使いじゃない。魔法が使えないんだ。だから魔法を使うと怒る。父さんの前では絶対に、魔力を見せてはいけない。わかるね?」

僕はわからなかった。なんでこんな面白いことをやってはいけないんだろう?でも母さんにじっと目をのぞきこまれて、僕はうなづいき、それからは父さんの前では魔法を使わなかった。といってもそれまでだって使ったつもりはないのだけど。

記憶にある限り、父さんはいつも酔っぱらっていて、黙って酒を飲んでいたかと思うと、突然怒鳴ったり、僕や母さんを殴ったりするのだった。僕を見ると顔を歪めて目を背けるか、難癖をつけて殴る。

父さんと母さんはケンカばかりしていて、暴れる父さんにたまりかねた母さんが、一度杖を振って父さんを制したことがある。だけど、鎮まった父さんを見て術を解いたとたんに、ひどいことになった。訳のわからないことをわめきながら、父さんは床に倒した母さんに馬乗りになって殴りつけた。止めようとすがりついた僕は跳ね飛ばされて壁にぶつかり、泣きながらその光景を見ているしかなかった。

顔じゅう腫れあがって、黒いあざだらけになった母さんは、のろのろと体を起こした後も、座り込んだままずっと泣いていた。それから母さんは、僕が殴られても庇ってくれなくなった。僕と2人でいる時も、ため息ばかりついてぼんやりしていることが多くなった。そんなふうになる前は、父さんがいないすきに、家事魔法や魔法の絵本を見せてくれたこともあったのに。母さんの気を引くのもあきらめて、僕はいつも部屋の片隅で小さくなっていた。

そんなだったから、マグルの小学校に通うようになって、むしろほっとした。母さんから、マグルに魔法使いと知られないように、絶対に魔法を使ってはいけないと何度も言いきかされた。魔法など使って問題を起こしたら父さんがどんなに荒れるかわからない。大人しく学校に行っていれば、そこで給食が食べれるんだとも言われた。その頃にはもう、食事をもらえないこともあって、僕はいつもお腹をすかせていたから。

マグルの学校にもいいことはあった。毎日給食があるし、面白い授業もあった。字や言葉を覚えられたし、算数の計算が得意で、先生に褒められたこともある。

だけど、マグルの子供たちとはなじめなかった。

初めからとけこめなかったけど、ある日いつも着ているぶかぶかの服を笑われた。体の大きないじめっ子が、セブルスは体はガリガリの痩せっぽちのくせに服ばっかでかいなと、腕をギュッと掴んだ。殴られそうな気がして怖くなり、怯えた自分が口惜しくて、おまえの服もぶかぶかに膨らめばいいんだと念じたら、ほんとにいじめっ子の服が膨らみ始めた。どんどん膨らんでその子の体が服につられて浮き上がり、いい気味だと見ていた僕もはっと気づいた。これは魔力だ、魔法を使っちゃいけないんだ!あわてて念じるのをやめたら、その子はしぼんで床に落ちた。

立ち上がったいじめっ子は、泣きそうな顔で、おまえ、何したんだ、薄気味悪いヤツだと言い、周りで見ていた子供たちが後ずさりして僕から遠ざかっていった。それからみんなが僕のことを、薄気味悪いヤツと言って、近寄らなくなった。みんな、僕がいても、いないかのように振る舞うのだ。

終業時間になると、学校の門には迎えの母親たちが待っていた。嬉しそうに母親に飛びついて手をつないで帰る子や、名残惜しげに校庭で友達と話す子たちを見ながら、僕は一人で門を出る。

周りの世界と僕の間には、見えない壁があるみたいだった。僕から壁の向こうは見えるけど、向こうからは僕は見えないようだった。

それでも家に帰ると、外のほうがまだましだと思うようなことが起こる。ある日など、運悪く台所で食べ物を探していたら、酒に酔った父さんが帰ってきた。何が気に障ったのか父さんは怒鳴り出し、僕は地下室の物置に閉じ込められた。埃だらけの地下室で、天井のすみの小さな明りとりの窓から差し込んでいた日が落ちてしまうと、中は真っ暗になった。怖くなってどのくらい泣いていたかわからないけど、ようやく帰ってきた母さんが見つけてくれた。そして母さんは、父さんと顔をあわせないですむからと、魔法でその地下室をかたつけて簡易ベッドを置き、そこが僕の部屋になった。

明りとりの窓があるとはいえ、日が沈んでしまえば、あとは淀んだ空気を抜けて届く青白い月の光がわずかに差し込むばかり。新月や曇りの夜には、そのわずかな明りすら恋しかった。なじめない学校で口もきかずに一日を過ごし、家に帰れば暗がりにひざを抱えて朝を待つ。ただ一人、暗闇をうごめくような毎日。

初めのうちはそれでも母さんが声をかけてくれるかと待ったけど、やがて僕のことなど忘れたのだとあきらめた。母さんが使わなくなってしまってあった杖を持ちこんで、読みかじった呪文を唱えて杖を振るのが唯一の慰めだった。寂しさや恐れを押し殺し、怒りや憎しみを込めて杖を振ると術が効く。杖を向けて、地下室に住みついたハエを落としたり、蜘蛛を追いやると、その時だけ僕は大きな存在になれた。

学年が進むと、僕は家の周りを散歩して時間をつぶすことを覚えた。家にいるよりましだから。寂れた商店街や川べりの道を歩いて、ある日ブランコのある小さな公園を見つけた。その向こうは瀟洒な家が並び、僕のうちのあるスピナーズエンドよりずっと小奇麗な町だった。

そこで僕は、リリーに出会った。

もちろん、初めは名前も知らなくて、ただ女の子が2人遊んでいるのを、植栽の茂みの陰から見ていただけだ。そのうちの一人が、広げた両手をいっぱいに上げて、高い木の上に咲いている花を呼び寄せるのを見て、僕は息を飲んだ。

魔法だ!あの子は魔女だ!僕のように魔法が使える女の子!

その子から目が離せなかった。その子に会いたくて、次の日もまた次の日も、その公園に行った。様子をうかがううちに、その子の名前がリリーで、もう1人の女の子は妹のペチュニアとわかった。2人はいつもいっしょだったけど、ペチュニアは魔女ではなくて、魔法を使えるリリーのことを、薄気味悪いとか変な子とか、よく意地悪を言っていた。マグルはみんな同じだ。魔法使いをやっかんで、意地悪をする。

僕は魔女のリリーと友達になりたかった。友達になって、意地悪なマグルから守ってあげたい。でも友達になるといっても、どうしたらいいのかわからない。とにかく話しかけようと思っても、そんなことしたことないから、それすら難しくてしばらくはぐずぐずと見ているだけだった。

その日も、リリーとペチュニアはいつものようにブランコに乗っていた。リリーがブランコを大きく漕いで、一番高く上がったところで手を放して空に向かって飛んだ。そしてしばらく空中に留まってから静かに着地する。ペチュニアはリリーに、「そんなことしちゃダメ!ママがいけないって言ってた」とケチをつけていた。リリーはくすくすと笑って「私は大丈夫よ」と言い、それから僕が隠れていた茂みのすぐ近くの地面に落ちていた花を拾って、手のひらの上においてペチュニアに見せた。

花はリリーの手のひらで、花びらを開いたり閉じたりしていた。

ペチュニアは、やめて!とか、そんなことしちゃいけないんだとか言ってたけど、すぐあとで、羨ましそうに言った。

「どうやってやっているの?」

僕はがまんできなくなって、茂みから飛び出して叫んでしまった。

「わかりきったことじゃないか!」

2人の驚いた顔を見て、僕はすぐ後悔した。だけどペチュニアはブランコのほうに逃げたけど、リリーは毅然とした態度で僕に向かって立ち、たずねてきた。

「わかりきったことって何が?」

「僕は君が何だか知ってるよ。」

「どういうこと?」

「君は、、魔女なんだ。」

僕は物おじして、小さな声になった。

「そんなこと人に言うなんて、失礼よ。」

リリーはツンと顔を背けて、ペチュニアが逃げたブランコの所に行ってしまった。

「違うんだ!」

リリーが怒ってしまったかと、僕はあわてて追いかけた。だぶだぶの上着が風を含んで膨らむのがじゃまだったけど、そんなのかまっていられない。追いついた僕を、2人は並んで観察するように見ていた。僕はリリーに向かって言った。

「君はほんとにそうなんだ。魔女なんだ。悪いことじゃないよ。僕の母さんも魔女だし、僕も魔法使いだ。」

ペチュニアが意地悪な冷笑を浮かべて僕に言った。

「魔法使いですって!あたし、あなたが誰だか知ってる!スネイプってうちの子でしょ?」

それからリリーに向かって、バカにしたような口調で、川べりのスピナーズエンドにある家に住んでいるのだと伝えた。そしてまた僕に向かいなおして詰問した。

「なんであたしたちのこと、見張ってたの?」

僕はむっとして答えた。

「見張ってなんかいない。どっちにしろ、おまえのことなんか見張ったりしない。おまえはマグルだ。」

言い返した僕の口調にバカにされたと感じたのか、ペチュニアが甲高い声でもう帰ると言って、リリーも僕を睨みつけて帰っていってしまった。

去っていくリリーの背中を見つめながら、僕は後悔に立ちすくんでいた。こんなつもりじゃなかった。リリーと友達になりたかっただけなのに。どうして僕はそんな、他の子たちが当たり前にしていることがうまくできないんだろうと思う。ペチュニアがけんか腰だったせいだ。マグルはみんな意地悪だから。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター リリー セブルス

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