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セブルスとルシウスの物語(19)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

前日の失敗で少ししょげていたけど、次の日に公園に行くと、リリーが1人で来た。でも警戒するように僕を見ていたから、僕はリリーの前に行って、黙って手のひらを開いて見せた。人とうまく話すのは苦手だから。

手のひらの上で、花びらを開いたり閉じたりして見せる。それからふっと花を投げ出して、ゆらゆらと空を舞わせた。わずかに笑顔を見せて、リリーが手のひらを広げると、花は静かにリリーの手に乗った。僕はまた落ちていた花を拾って同じようにして、リリーも同じように花を受け取った。リリーの手のひらに3つ花が載った時、リリーが声をかけてくれた。

「あなたもあたしと同じことができるのね?」

「うん。僕たちは特別なんだ。魔法が使える。」

リリーが僕に笑いかけてくれて、僕は有頂天になった。それから僕たちは、高い木の上の花を呼び寄せて、それを空中に並べて環を作ったり、思いついたいろんな形に並べてみたりした。

そのうちにペチュニアが走って来て、リリーに、こんな子と話しちゃいけないとか言うのでむっとしたけれど、また昨日みたいになると嫌だから僕は黙っていた。するとリリーはペチュニアに向きなおって、きっぱりと言ってくれた。

「こんな子なんて言っちゃいけないわ、チュニー。お友達になったのよ。」

友達!僕を友達と言ってくれた!僕の初めての友達!

「あたし、リリー。この子は妹のペチュニア、チュニーよ。」

「僕、セブルス。」

僕は急に恥ずかしくなって、小さな声で言った。

「セブルス、セブね。また明日会おうね。」

そう言うとペチュニアに手を引かれてリリーは行ってしまい、僕はペチュニアなんかいなければいいのにと思ったけど、それでも僕の心にはリリーの笑顔がいっぱいに広がっていた。

家に向かう夕暮れの道、いつもと同じくすんだ街並みが、明るく輝いて見えた。リリーが僕に笑いかけてくれて、僕の世界は一変した。もう世界と僕を隔てる壁はない。赤や緑や、いろんな色のある世界の中で、僕はリリーと笑って話をする。

暗い地下室にも、ほんのりと温かい明りが灯ったようだった。灯りの中にはリリーの笑顔があった。緩やかなウェーブをえがく長い赤毛。僕に向かうアーモンド形の緑の瞳。

ベッドに入ってもずっとリリーの姿を辿っていた。リリーの笑顔を思うと僕の頬も自然に緩む。そんなふうになったのは初めてだ。初めてか、ずいぶん久しぶりで、前に笑うという表情が僕の顔に浮かんだことがあったのかさえ思い出せなかった。

「リリー、おやすみ。また明日。」

心の中でリリーに声をかけると、心の中のリリーが、おやすみ、セブ、また明日会おうね答えてくれた。明日が来るのが楽しみで、満たされた思いで眠りにつくのも、思い出す限りで初めてのことだった。


それからは毎日、学校が終わるのが待ちきれないくらいだった。その頃のリリーは魔法使いや魔法界のことをまったく知らなかった。マグルの家族とマグルの町で育ったのだからあたりまえだけど。

僕は母さんに聞いた話や、本で読んだことを、いろいろ話してあげた。リリーは驚いたり笑ったりしながら、僕の話を目を輝かせてきいてくれて、僕は少し得意になった。こんなふうに僕の話をききたがるのは、リリーが初めてだった。

ある日僕を見てリリーの顔が曇った。僕の顔に父さんに殴られた跡が残っていたからだ。僕は、こんなのしょっちゅうだから平気なんだと言ったけど、リリーは泣きそうな顔をして、僕の腫れた頬にそっと小さな手を当ててくれた。リリーの手のひらから、柔らかな温もりがじんわりと広がっていく。手を当ててもらうだけで、痛みが和らぐものだということを初めて知った。痛みとともに、抑え込んでいた悲しみや恐れや怒りも薄らいでいく。

それからリリーに尋ねられるまま、少しずつ、家の話もした。マグルの父さんが酒飲みで暴れること、父さんと母さんはケンカばかりしていること、僕も時々殴られること。学校の子たちやペチュニアならバカにしそうなそんなことも、リリーは辛そうにきいて心配してくれた。僕もリリーになら安心してそんな話ができた。リリーは世界でただ一人、僕を受け入れて、一緒に悲しんだり喜んだりしてくれる僕の友達だった。

リリーに誘われて、リリーの家に遊びに行ったこともある。ペチュニアは相変わらず僕たちのじゃまをしたけれど、リリーのお母さんはマグルなのに優しい人で、時々僕にお菓子やご飯をくれた。

うちの様子もマグルの学校も相変わらずだったけど、僕は幸せだった。僕にはリリーがいる。リリーと友達になって、僕は初めて生きている実感を持てた。僕のことを思い、かまってくれる人がいると思えるのは心強いことだった。僕にも生きている意味があるのだと思える。生きることには意味があるのだと思える。人生には喜びや楽しみや希望があって、僕を思ってくれる人がいれば、痛みや悲しみさえも和らぐものなのだ。そんなことを全部、僕はりりーにおしえてもらった。

リリー、今日は君に会えて嬉しかった。リリー、父さんにまた殴られた。リリー、本にこんな魔法がのってたよ。

リリーに会えた日も会えなかった日も、毎晩寝る前に、心の中のリリーに話しかけて、うなづいたり笑ったりしてくれるリリーにおやすみと言って寝る。僕の中にはたいせつなリリーの思い出がたくさん蓄えられゆき、僕が声をかけると様々な表情を返してくれた。リリーと出会う前、僕はどんなふうに眠りについていたのか、もう思いだせない。それは寝る前の歯磨きみたいな習慣になって、ホグワーツに入学してからもずっと続いている。

ホグワーツのことをリリーに教えてあげたのも僕だ。行ってから思えば、会話も少なくなっていた母さんから聞いただけの僕の知識など限られていたけれど、ききたがるリリーに知る限りのことを話してあげた。11歳の誕生日には魔法使いの子供にはホグワーツから手紙が来る。だけどマグル生まれのリリーの所には学校の先生が説明に来るんだと話すと、マグル生まれは何か違うのかと心配そうだった。僕は何も違わないと安心させてあげた。マグル生まれだって、リリーは特別だから。マグルのペチュニアはホグワーツに行けないというとリリーは少し悲しそうで、ペチュニアは口惜しそうに負け惜しみを言ってたけど、僕はいつも僕たちのじゃまをするペチュニアにいい気味だと思っていた。

ホグワーツ。ケンカばかりしている父さんと母さんの元を離れ、リリーと一緒にホグワーツに行ける日を、僕はどんなに楽しみにしていただろう。考えるだけで誇りと希望が胸に溢れ、明るい未来を信じていた。

それなのに。なぜこんなことになってしまったんだろう。

思いが現実に戻って、一気に気が滅入る。リリーとの思い出の温もりが、冷え冷えとした暗闇に変わる。リリーは僕から去ってしまったのだ。

リリーに決別を告げられ、そのまま夏休みに入っても、日がかわるたびにあきらめられず、僕は毎日公園に行った。目を閉じれば、手のひらに花を並べて笑いかけてくれた幼いリリーが見えたけど、その公園にリリーが現れることはもうなかった。

夜ごとリリーに話しかけても、心の中のリリーすら、もう僕に笑い返してくれることはない。ただ緩やかに流れる美しい赤毛の後ろ姿が、僕から遠ざかってゆく。

なぜこんなことになってしまったのだろう。

ホグワーツに向かう特急の中で、ポッターとブラックに絡まれたのが最初の翳だった。そして敵対する別々の寮に組分けられて。だけど、寮の違いにも、執拗なポッターたちの嫌がらせにも、リリーは毅然として立ち向かってくれた。人づきあいが苦手で友達もできなかった僕と違い、リリーはたくさんの新しい友達にかこまれる人気者になったけど、いつだって僕のことを気にかけて、僕とともにいてくれた。

それなのに。

そんなリリーに、僕は『穢れた血』などと叫んでしまった。許されない言葉だったのだ。屈辱を受けて、それをリリーに庇ってもらったとポッターに揶揄されて、照れくささと情けなさと悔しさで、わけがわからなくなって・・・

ポッターのせいだ。ポッターが僕を追い詰めて、リリーを僕から引き離した。それがあいつの狙いだったんだ。ポッターは僕を辱める一方で、リリーにデートしてくれたら術を解くなどと言っていた。甘やかされて傲慢な、英雄気取りの卑怯者。自分が人気者だと思いあがっている。

リリーだって、ポッターは嫌なヤツだと言っていた。あの時だって、ポッターに弱い者いじめのカスだと怒っていた。弱い者いじめの・・・

そうだ。僕が弱いから。弱いからポッターやブラックに追い詰められて、逆上してあんなことを口走り、リリーを傷つけてしまった。だからリリーが僕から去ってしまったんだ。僕がヤツらに辱められるような、弱い魔法使いだからこんなことになった。

ほんとうにそうなのかは、わからなかった。ほんとうは弱さなど関係なくて、ただ僕の言ったその言葉のせいなのかもしれなかった。けれど、そう思えば、強くなればリリーが戻ってくれると思うこともできる。たとえわずかな希望でも、すがらなければ耐えられない。幼い頃からずっと、リリーのくれた灯火だけを支えに生きてきたのだから。リリーがいなければ、また暗闇の中で一人、どこへ行けばよいかもわからずにうごめいているしかない。

魔力を磨き、強くなる。強くなれば、きっとリリーは戻ってくれる。

そう心に決めて、粉々になった思い出の欠片を心の中でかき集め、種火のようなリリーに呼びかけてみる。

リリー、リリー、、、

言葉が続かない。僕に言葉をくれたのだって、リリーだったのだから。それでも毎日繰り返すうち、なんとか小さな灯に語りかけることができるようになった。

「リリー、僕は強くなる。だからいつか、僕を許して。」


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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター リリー ポッター

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