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セブルスとルシウスの物語(20)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


6年生の新学期が始まってホグワーツに戻った。新入生の組分け、校長先生の話、それに続く食事会。大ホールでいつもと同じ新学年の行事が進み、いつもと同じように僕はグリフィンドール席のリリーに目を向けていたけれど、いつもと違ってリリーが僕のほうに視線を投げかけることはなかった。

リリーは決別を告げて、もう僕の事などかまわないんだ。あらためてそれを確認するようで、気持ちはひどく落ち込んでいるのに、イライラと気が立って体の中で何かが爆発しそうだった。

翌朝、下腹部の不快に目覚めると、僕は初めての夢精をしていた。うろたえて清浄呪文でシーツや下着を清めると、誰に知られたわけでもないのに恥ずかしくて顔が赤らみ、それから物悲しい気分になって、早朝のシャワールームで体を洗った。

ティーンエイジャーに起こる体の変化のことは知識としては知っている。同年代の男子が集まる寄宿生活で、この1、2年、周りにその気配は感じていたし、男同士、あけっぴろげにそんな話をするのも耳にはさんで、兆候すらないことに劣等感を感じたこともあったけれど、同時にそれを汚らわしいことだとも思っていた。

生々しい男の性は、暴力的で汚らわしい。意味がわからなかった子供の頃は、酒に酔った父さんが乱暴に母さんをベッドに押し倒すのをかいま見て怯えていたけれど、意味がわかってからは目を背け耳をふさぎたくなるほど醜悪に感じられた。強いられた行為の後の、母さんの虚ろな目。それは暴力で他を蹂躙し魂を奪う、野蛮な衝動だ。

僕の体内にもそんなものがあるのだと思うと、自分が穢れた気がした。父さんから受け継いだ汚らわしい血が僕にも流れている。

それから何度か夢精を体験した。自慰で夢精が避けられることは知っていたし、男子生徒の間ではオカズと称する雑誌や写真が密かに出回っていたけれど、魔女のヌードなんか面白くもなかった。

僕はリリー以外の魔女になんの興味もなかったし、つないだリリーの手の温もりは僕をこの上なく幸せな気持ちにしてくれたけど、リリーを抱きしめたりキスしたりそれ以上のことなんか、想像したこともない。想像することすら、冒涜に思われた。リリーは僕の魂に明りを灯してくれたただ一人の人。惨めなばかりだった幼い僕に与えられた、唯一の宝。穢すことなど許されない。僕も、他の誰も。ただ、リリーに優しく抱きしめられることを望む気持ちはあるような気がするけど。

だけど、こんなことを考えるのも無意味なのだ。リリーはもう僕とは友達ではないと言って去ってしまったのだから。思いがここに戻ると、寂しさと心もとなさと悔しさとで、すべてが空しくなる。毎日が寂しくて空しくてたまらないのに、時々体の中からつきあげるように起こる凶暴な衝動にいら立ちがつのった。

6年生ともなると、同学年の中でも、校庭のすみや林の木陰で抱き合っていたり、中には談話室でキスしている者もいた。男らしくて大人びたマルシベールはもう何人か付き合った女の子がいてあれこれと言っているし、相手もいないエイブリ―はマルシベールの話を芯から羨ましそうに聞いて自分もデートしたいと騒いでいる。彼らのそんな陽気な話が、僕が醜悪なイメージをもつ行為につながるものなのかと疑問ではあったけれど、どうであれ、僕には無縁の話だ。

僕は恋に浮つく周囲の雰囲気に心を閉ざして、いつもリリーの姿を追っていた。だけど、僕がどんなに見つめても、リリーは僕のほうを見てくれなかった。リリーの目にはもう、僕の姿は映らないようだった。リリーは、僕は僕の道を選びリリーはリリーの道を選んだのだと言っていたけれど、僕にリリーのいない道など考えられない。いつかまたリリーと同じ道を歩むためには、勉強を頑張り魔力を磨いて、優れた強い魔法使いになるしかないのだと思う。

寂しさを紛らわせ、リリーを取り戻す希望にすがり、そして体内にうごめく醜い衝動を忘れようと、僕はひたすら勉強に取り組んだ。OWLを終えた6年生の履修科目は少ないけれど、内容は高度で密度が濃い。中でも、リリーも得意で、2人でよく一緒に実験した思い出の詰まる魔法薬学には、魅入られるようにのめり込んだ。

フツフツと沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる水薬の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力。魔法薬は、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法でもある。

のめり込むうちに、母さんからもらった古い上級魔法薬学の教科書の一部は、違っていたり、もっと改善できるはずなのに、古い内容のままだと気がついた。授業もそれにしたがって行われている。僕は授業中や、あるいは先生に頼んで放課後に材料や設備を使わせてもらい、よりすぐれた調合や新しい発見を教科書に書き込んでいった。時には開発した新しい呪文もメモした。

以前ならリリーに話した内容も、話せない今はその寂しさを埋めるように、すべて事細かく教科書に書き残す。リリーに話すかわりのように、みっちり隙間なく書き込んだ、僕の分身のような教科書を、いつかリリーに見せることがあるかもしれない。魔法薬の大好きなリリーは、きっと目を輝かせて読んでくれると思う。セブの字は丁寧なのに読みにくいわねと微笑んでくれるかもしれない。

愛着のある教科書に、僕は『半純血のプリンス』と記名した。汚らわしい父さんの血ではなくて、母さんから受け継いだプリンス家の血を大切にする。その血に流れる魔力を極めてゆく決意を込めて。


それでも寂しさにたまらなくなったり、体の奥からの衝動にいら立つと、ポッターやブラックへの憎しみを募らせた。僕はもう、彼らから隠れたり、1人にならないように気をつけたりしない。そんな弱い者に甘んじることなく、彼らを見れば迷わず杖を向ける。悲しみや寂しさや恐れに負けないで、怒りと憎しみを込めると術の力も強まるようだった。

ポッターやブラックも、僕を見れば同じように杖を向けてきた。相変わらず彼らはすばしこくて、やり合ってケガをすることもあったけど、体の傷などたいしたことではない。むしろ体を痛めつけ、それに打ち勝つ強さを得ることが、リリーを取り戻す道のようにも思われた。

彼らが4人で計画的に攻撃してくることは少なくなっていった。もともとルーピンは攻撃してくるわけではなかったし、ペティグリューも腰巾着のようについて回るだけだったけれど、一度ペティグリューが出会いがしらのように僕に杖を向けてきたことがあって、それ以来向こうから僕を避けるようになった。

ペティグリューが偶然はち合わせた僕に杖を向けたのは、ちょうど僕もイラついていたときだったから受けて立った。ペティグリュー1人など僕の相手ではない。簡単に杖を飛ばしてやると、泣きだしそうな顔で喚いた。

「僕にひどいことしたら、ジェームスやシリウスが黙っていないからな、スニベルス!」

弱い者いじめはカスだと言ったリリーの言葉を思い出して、杖でいたぶりたい衝動をなんとか抑え込む。

「ポッターやブラックがおまえのことなどかまうと思っているのか?」

「もちろんだよ。僕たちは親友なんだから。」

「親友だと?本気でそう思っているのか?」

後ずさるペティグリューに追い打ちをかけた。

「傲慢なポッターとブラックは、おまえみたいな何の取り柄もないやつと友達でいてやる自分に酔っているだけだ。それに英雄がより引き立つからな。おまえだって、ほんとうはわかっているだろう?」

ペティグリューが何も言えずに顔を歪めたのを見ると、思い当たる節があったようだ。憂さ晴らしにはなったから、立ちすくむペティグリューを残して、僕はその場を去った。

自分でも、どうにも荒んでいると思う時もある。リリーといられたら、リリーが微笑みを向けてくれたら、僕は清められ、もっと穏やかな気持ちになれるのではないかと思ったけれど、かなうことではなかった。リリーのいない僕は、もう僕ではないような気がして、ひどく心細くなる。

リリー、僕を見て。

かなわぬ願いに、すがるように勉学に励み、挑むようにポッターたちと戦う。

そんな毎日の中で、スリザリンの仲間たちと過ごすのは、わずかながら慰めになった。たいていは難しい授業や大量の宿題に困り果てたマルシベールやエイブリ―に頼られて助けてあげるのだけど。そのうちたわいない世間話に興じたりもする。彼らといると、自分でもわかるほどにギスギスと思い詰めた気持ちが、少しだけ和らぐような気がした。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター 半純血のプリンス リリー

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