スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セブルスとルシウスの物語(23)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞との、妄想です)


夏休みに入ると、マルフォイ先輩からホグズミードの村に来るようにと連絡があった。屋敷には行ったことがあるけど、外でというのは初めてなので少し戸惑いながら、イースター休暇明けに贈られた腕時計を身につけて出かけることにした。立派な時計にあう服はないけどしかたがない。6年生の終わりにはアパレートの試験に合格したから、約束の場所に姿現しをして待っていると、先輩が歩いて来た。いつもながら一分の隙もない整った姿に、気遅れを感じる。

セブルス、元気なったか?イースターにはずいぶん気落ちしていたようで、心配していたのだぞ。」

「すみません、先輩。」

たしかに、イースターの頃には、何をする気にもならないひどい状態だった。あの後もリリーの態度は変わらず、寂しさに変わりはない。だけど、イースター休暇にマルフォイ邸に集まった仲間たちが闇の魔術をおしえてほしいとか何かと話しかけてくるようになって、生活が慌ただしくなるにつれて気が紛れることも多くなった。彼らといる時間が増えて、一人思い詰める時間が減ったからだ。それに。

「立派な時計を贈っていただいて、ありがとうございました。」

文字盤に宝石らしき石が嵌めこまれた豪華な時計だった。汚したり壊したりしたくなくて引き出しにしまっておいたけど、はめてみた後の手首に残る感触に、どんなに励まされたかわからない。立派な物を贈られて、自分がそれに相応しいと思われているのだと感じて勇気が湧いた。

簡単なお礼の手紙を送った後、何かお礼をしないといけないと考えてはみた。でも何でも持っている先輩に、何も持たない僕が贈れるものなどない。考えつく物といえば、水薬か植物くらいだ。水薬は必要な時でなければ役に立たないし、リリーはいつも花を喜んでくれたからミニバラを育ててみた。

魔法をかけて、一つの苗から、白や赤や黄色や、黒や青まで、一つ一つ微妙に違う色の花が咲くように育ててある。それに、話しかけると開いたり閉じたりするし、終わった花は枯れずに消える。魔法植物の育て方はけっこう手間も時間もかかるもので、丹精込めて育てたものではあるけれど、いざ渡すとなると、女の子のリリーと違って、大人の男の人に花の鉢植えを贈るというのがどうにも場違いに思えてきた。

「それは私に持ってきてくれたのか?」

躊躇っていると先輩に尋ねられて、思い切って差し出した。

「はい。僕にはこんな物しかできなくて。」

「バラか。」

胸の前に差し出した花に向かって先輩が言うと、咲き始めたいくつかの花が開いたり閉じたりした。それを見て先輩が楽しそうに笑ったので、ほっとして言った。

「バラは好きですか?それならよかったですけど。」

「母が好きだった。」

「先輩の、お母さんが?」

「ああ。先週が命日だったのだが。」

「亡くなられたのですか?」

「もう何年も前のことだ。5年になる前の夏休みの直前だったから、おまえが入学してくる少し前だな。命日くらいしか思いだすこともないのだが。ちょうどいい。屋敷に帰ったら母の写真のわきに供えよう。家まで持っていてくれ。」

「はい。」

先輩は何か思い出しているように目を瞬かせた後、こちらを向いて言った。

「今日は寄る所があってここに来てもらった。さあ行こう。」

肩をたたかれてついていくと、マダム・マルキンの洋装店に着いた。学校の外出日にホグズミードに来たことはあるけど、この店には入ったことがない。きれいな洋服が並んでいるけど、僕には縁がなかったから。もっとも、買い物のお金がないから縁のある店などなくて、ホグズミードに来ても書店や魔法用具店を見ていただけだけど。

店に入るとマダム・マルキンらしき女性に、奥の試着室に案内された。先輩が何か買うのかと思っていたら、服を渡されて試着するよう促された。シャツとズボンとローブと、着るもの丸ごと一揃えだ。わけがわからぬまま試着を終えると。

「着たか?おまえにあいそうなサイズで頼んでおいたが、大きさはどうだ?あわなければすぐ手直しさせるが。」

大きさはどうだと言われても、今までぶかぶかの物か小さすぎてきつい物しか着たことがないからよくわからない。いや、そういうことではなくて。

「先輩、でも僕にはこんな物、買えません。」

「そんなことはわかっている。私が買うのだ。腕時計にあう服が必要だろう?」

「そんな、、。洋服までも、いただけません。」

「気に入らぬのか?それでは他の物を仕立てさせよう。マダム!」

成り行きがおそろしくなって、急いで言った。

「いえ、気に入りました!ぴったりです。素晴らしいです。」

「では包んでもらおう。もとの服に着替えなさい。」

渡された洋服一揃え分の包みとミニバラの鉢植えを抱えて先輩に着いてゆくと、角の向こうに魔法の馬車が待たせてあり、それに乗るとあっという間にマルフォイ邸に着いた。

入口に出迎えた屋敷妖精に荷物を渡すと、ディナーの前にシャワーを浴びて一休みするように言われた。屋敷妖精に導かれてシャワールームで一人になると、やっと一息ついて、新しい洋服のことを考えた。なぜ、わざわざホグズミードまで行って僕に服など買ってくれたのか?やはり、僕のみすぼらしい服で立派な屋敷をうろつかれるのは嫌だったのだろうか?それとも貴族の間では、時計を贈ったら身なり一揃え贈るのが習わしなのだろうか?

桁外れに裕福な先輩のすることは、僕の想像の域外だ。シャワールームだって、ホグワーツのシャワーブースとは訳が違う。着替えの洗面室からシャワーヘッドの装飾、置いてあるソープやシャンプーの類まで、使っていいのかと気後れする豪華なものだった。時計と洋服がいったいいくらするものなのかと疑問がわいたけれど、わかるわけないし、わかっても恐ろしいだけで何もできないと思考停止に陥った。

とにかくシャワーを使えと言われたのだから、小奇麗にしろということだ。いつもべたついていると悪口を言われる髪を丁寧に洗わなければ。と思った瞬間に、悪口を言うポッターとブラックを思い出して、口惜しさがこみ上げてきた。ヤツらにしつこく追い詰められたせいでリリーに絶交された、、、思考が走ると絶望感に打ちのめされるから、なんとか思いを振り払った。今日は先輩の家に来ているのだ。また気落ちして、バカみたいな受け応えをしたくない。それはもてなしてくれる先輩に失礼だと、あとは無心に体を洗った。

洗面室に出ると、また使うのが躊躇われるふかふかなタオルと、どのタイミングで脱ぎ着すればいいかわからないバスローブ、それに今日買ってくれたシャツとズボンとローブ、真新しい下着まで、きちんとたたまれて置いてあった。いちいちあっけにとられることばかりで、自分がバカに思えてくる。僕のみすぼらしい服とパンツはどこに行ったんだ?屋敷妖精がゴミだと思って捨ててしまったのかもしれない。

ふかふかのタオルは気持ちよかった。吸いつくような肌触りで、湿気がさらりととれる。髪もあっという間に乾いて、サラサラになった。これなら先輩にも恥ずかしくないと、少しいい気分になる。

真新しい服と腕時計を身につけて、外にいた屋敷妖精の案内でダイニングルームに行くと、もう先輩が待っていた。

セブルス、よく似合っている。見違えたぞ。」

機嫌よさげな先輩に促されて長いダイニングテーブルに向かい合わせに座り、ディナーが始まった。給仕が一皿一皿、運んできては下げ、また次を運んでくる。

並べて置かれた数セットのフォークやナイフに戸惑うと、ホグワーツに入学した時の食事会で、初めて見たたくさんの料理に戸惑っていた僕に、隣の席の先輩がフォークを握らせてくれたことを思い出した。そんな話をすると、先輩も、覚えているぞ、言わなかったが、初めてエサを前にした野良の子猫のようだったと言って、2人で笑う。あの時も、リリーと他の寮に分かたれて落ち込む気持ちを、監督生だった先輩の温かい歓迎が励ましてくれた。

楽しい会話、美味しい料理、のどを潤す初めてのワイン。リリーが去って、僕の心にはぽっかりと埋めようのない空洞ができてしまったけれど、その空洞ごと包み込まれるような和やかな時間だった。僕は少しワインに酔ってしまったのかもしれない。

ディナーが終わると、先輩の部屋に連れていかれた。そこもまた豪華な広い部屋だったけれど、もういちいち驚かない。言われた通り、ローブをかけて腕時計をはずすと、肩を引かれて大きな鏡の前に並び立った。

「鏡を見なさい。セブルス、よく似合っているだろう?」

鏡の中に、体にぴったりの真新しいシャツを着た僕が立っていた。隣には、僕より少し背の高い先輩が立っている。いつ見ても、美しい人だと思う。僕と違って、いつもサラサラな長いブロンドの髪。すっと伸びた背筋に、適度に厚みのある胸。痩せすぎで猫背な僕とは大違いだ。

鏡に映る2人の姿に見入るうち、ゆっくりと、先輩の腕が僕の肩にまわされた。長い指が僕の髪に絡みつく。よかった。まだサラサラのままだ。先輩がこちらに向きなおり、もう片方の手のひらが、僕の頬を包み込んだ。突然、予感がして、息を飲む。ああ、そういうことだったんだ。

近づいてくる美しい顔を瞳に焼き付け、僕は目を閉じた。


スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。