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セブルスとルシウスの物語(30)

(これは『ハリーポッター』の本と映画鑑賞後の、妄想です)


イースターが過ぎて日もたたぬうちに、父上から呼ばれた。私がデスイーターに加わってから、父上は半隠居を決め込んだようで、家や事業の運営にについてほとんど口を出すこともなくなった。たまに食事をしながら私から近況を報告したり雑談を交わすくらいだ。会うたびに老けこむように見えるのは、年のせいか、あるいは一線を退いて気が緩んだせいか。長年精力的にマルフォイ家の繁栄に勤め、70を過ぎて息子に代を譲り、ようやく人並みに老いたということかもしれない。

この日も政情や父上の健康状態について話すうち、父上がふと思いついたかのように言った。

「ところでルシウス、おまえもそろそろよい年頃ではないか?」

「何の話ですか、父上?」

「結婚の話だ。誰かよい相手でもおるのか?学校を卒業して4年もたてば考えてもよい時期だろう。去年レストレンジ家とブラック家の婚姻が結ばれた。貴族にとって結婚は力を強めるまたとないチャンスだ。おまえなら何か考えがあるのではないかと思ってきいておる。」

とっさに返事につまった。数が限られた純血魔法族の世界では、卒業後直ちに婚約するのも珍しくなく、貴族ともなれば在学中に婚約する者さえいる。今まで父上が私に縁談を急かさなかったのは、自分の過去を顧みてのこととわかっている。それをよいことに、私も知らぬふりを決め込んでいた。黙りこんでいると、重ねて尋ねられた。

「女は嫌いか、ルシウス?」

いつになく遠慮が滲むしわがれた声に、父上の過去の苦労がしのばれた。

「そんなことはありません。ただあれこれとやることがあったので。」

「強いるつもりはないが、婚姻は歴史に劣るマルフォイ家が、一気に由緒ある家柄と認められるよい機会だ。前から考えてはおったのだが、歴史あるブラック家と繋がれば、成り上がりと陰口をたたかれることもなくなるのではないかとな。ブラック家としても、マルフォイ家との縁談に文句はなかろう。長女はレストレンジに嫁ぎ、次女は穢れた血と駆け落ちしたらしいが、末娘が残っておる。名は何といったか・・」

ナルシッサ・ブラックです。スリザリン寮の後輩でした。」

「おう、そうだ、その娘だ。その娘は気に入らんか、ルシウス?逃せばブラックとの婚姻の道はなくなるが。」

「気に入らぬわけではありません。ですが、、、少し考えさせてください、父上。」

父上はブラック家と結びつく利点を理由に結婚を勧めたが、去年の夏からセブルスを屋敷に住まわせた私に、自分と同じかと家門の将来を懸念したのかもしれぬ。あるいはただ、老いて孫の顔でも見たくなったのか。

私とていずれは結婚するつもりだが、セブルスのことを考えると気が進まなかった。最近では体もなじみ、時に艶めいた色気さえ感じさせることもあるセブルスだが、私の目には、初めて会った11歳の頃からの様々な面影が重なり、自分だけが年を経た大人の自覚をもって幼い子供を甘やかしたくなるような、理不尽な情がわく。私が結婚すると言えば、セブルスは嘆くだろうと思う。

だが、、、遅かれ早かれ私は結婚するのだし、結婚するならブラックの令嬢は逃しがたい相手だ。

ナルシッサ・ブラックを思い浮かべてみる。スリザリン寮の後輩とはいえたいした関わりはなかったが、ブラック家のプリンセスらしく、誇り高い美少女だったと思う。ブラックといえばベラトリックスの印象が強烈で、妹のナルシッサに親しく接するような気は起らず、むしろあえて近寄らぬようにしていたともいえる。ナルシッサもその誇りゆえか、他の魔女たちのように自らまとわりついてくることはなかった。

しかし今やベラトリックスは嫁いでしまったのだし、ナルシッサに悪い印象があるわけではない。言われるまでもなく、よい縁談といえる。富と権力ではマルフォイ家が勝るとはいえ、ブラック家には栄誉に彩られた長い歴史がある。ダークロードでさえ、レギュラス・ブラックのデスイーター加入を打診した時、魔力やら忠誠心やらを問うこともなく、ブラックというだけで歓迎した。魔法界において、ブラックの名には依然それだけの重みがあるのだ。

ナルシッサ・ブラックならば、結婚がもたらす最良のものをマルフォイ家に与えてくれるだろう。それは婚姻でしか得られないものでもある。

私はしばし逡巡し、、、やがてぐずぐずと決めかねる自分に腹を立てた。まったく理にあわぬことだ。私ともあろう者がこのように何の足しにもならぬ感情にひきずられるとは。セブルスに望むものはすでに手に入れたのだ。その体も忠誠も我が手中にあり、デスイーターの印も刻ませた。セブルスの気持ちなどはばかることはない。私は欲しいものを手に入れればよいのだ。

腹立ちが収まると、当然の考えに至った。つまり、私の目にどのように映るにせよ、セブルスは18歳のいい大人なのだから、ナルシッサがマルフォイに与えられるものを理解できるはずだ。どう足搔こうともセブルスがそれを私に与えることができないことも。

いずれにせよ、セブルスを手放しはしない。セブルスが離れることもない。切れぬ絆というものがあるのだ。それならば、あとはナルシッサがそれを受け入れればよいだけのことだ。だが万一、同じ血を引くベラトリックスと性格までも似ていれば・・・。不愉快な未来を描くことは早々に打ち切り、まずはナルシッサの性格を見極めることだと決めた。

私は折りを見て貴族が集う社交の場に足を運ぶことにした。何度か通ううちに、ある夜、母親に連れられたナルシッサ・ブラックを見かけた。思い浮かべた少女の頃の面影は宿しながら、大人の雰囲気をまとう美しい魔女になっていた。次々とダンスの申し込みを受け、優雅な仕草で応じている。ブラックほどの貴族の娘が20を過ぎて未婚であれば、狙う男が多いのもうなずける。ましてあれほどの美女であれば。

ナルシッサの視線が私を捉え、見開いた瞳の奥に期待がのぞいた。私はわずかな微笑を返し、歩み寄って手を延べた。

「ミス・ブラック、踊っていただけますか?」

「喜んでお相手しますわ、ミスター・マルフォイ」

頬を赤らめながらも、はっきりと意思を伝えるナルシッサに好感を持った。重ねられた手を軽く握り、ステップを踏む。すっと伸びる背筋も、軽やかな足取りも、申し分ない。一曲が終わっても重ねた手が離れることはなく、そのまま次の曲に入り、数曲を踊り続けた。

「貴女のような美しい方を独占していては恨みを買いそうだ。」

「まあ、お上手なことをおっしゃるのね。わたくしのほうこそ、貴方に憧れる美しい方々の視線に射貫かれてしまいそうですわ。」

耳元で囁き合う会話も弾んだ。心地よい社交の術を知る賢さもあるのだ。まさに、ブラック家のプリンセスと呼ばれるにふさわしい。

「だが割り込む者はいないようだ。私たちは似合いのパートナーと見られているのではないかな、ミス・ブラック?」

悪戯めかして言うと。

「ナルシッサとお呼びください。ルシウスと呼んでもよろしいかしら?」

「光栄です、ナルシッサ。」

その夜は最後までパートナーとして踊り、別れ際ディナーの約束をした。そして何度か会ってみれば、ナルシッサは実に好ましい女だった。名門貴族の誇りに満ちた上品な物腰、女らしい甘えを含む物おじしない態度。明るくおっとりとした性格には、育ちの良さが感じられる。賢いけれど余計な興味や意見を持たぬ、家庭的な女であるのも気に入った。

何より好ましいのは、同じブラックの血を引く姉妹ながら、毒々しい仇花のようなベラトリックスとも、尊い純血の根に雑草の花をつけたアンドロメダとも異なり、ナルシッサはその優れた根に相応しい花を咲かせていることだ。与えられた環境に根を張り、誇り高く大輪の花を開く素養がある。寂しく散った母上を思えば、先の不幸が見える結婚などしたくはない。ナルシッサならマルフォイに嫁いでも、女主人として、妻として、やがて生まれる子の母として、豊かな花を咲かすことができるだろう。

ナルシッサと2人で出かけると、どこに行っても似合いのカップルと称賛された。マルフォイの跡継ぎとブラックのプリンセスなのだから当然のことだ。2人の間で婚約は既定のこととなり、ナルシッサが家の話をすることも増えた。ブラック家では3人の姉妹と2人の従兄弟が同じ屋敷で賑やかに育ったようだ。末娘で素直なナルシッサは両親や伯父伯母からも個性的な姉たちからも可愛がられ、年下の従兄弟たちともそれなりに仲がよかったそうだ。年がかさみ純血主義に反抗的になったアンドロメダや従兄弟のシリウスとは疎遠になったが、今でもベラトリックスやレギュラスとは仲が良い。

ナルシッサの、家や友達やお気に入りの店のようなたわいもない話しにはすぐ飽きてしまったが、従兄弟たちの話をきくうちに、ナルシッサの住む家にレギュラスがいるように、私の屋敷にセブルスがいてもなんら不思議はないではないかと思うようになった。ナルシッサには、セブルスは私の従兄弟のようなものだと言えばよいのだ。そして私同様一人っ子のセブルスは、ナルシッサを姉と慕えばよい。何の問題もない。私の思い通りに運ばぬことなどあるはずがないのだ。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス ルシウス ナルシッサ

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