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セブルスとルシウスの物語(35)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


その日ルシウスは、客人を連れて夕方に戻り、僕も一緒に3人で食事をするから、そのつもりで支度をして待っているようにと言いおいて出かけて行った。大切な人だから失礼のないようにと言われ、僕は落ち着かない気分で待っていた。

夕刻、人の気配に気づいて玄関ホールに行くと、ドアが開きルシウスが入って来た。その隣でブロンドの魔女がルシウスの腕に手を添えて話しかけている。最近見た顔だと思い、すぐに、開心術を練習したときレギュラスの記憶に現れた魔女だと気がついた。

「こうして貴方と一緒にこの屋敷に入るのは初めてね。子供の頃にお父様に連れて来てもらって・・・。」

弾んだ声が突然途切れ、魔女は僕を見て怪訝そうに立ち止まった。問いかけるようにルシウスの顔を見上げる。

「ナルシッサ、セブルス・スネイプだ。セヴィ、こちらはナルシッサ・ブラック。私のフィアンセだ。覚えているか?スリザリンで何年か一緒だっただろう?」

フィアンセ・・・?聞きなれた声がなんだか遠く聞こえる。ルシウスに並ぶ魔女を見た時から衝撃的な予感はあったけれど。

一瞬現実感を失った頭の隅で、シシーだ、レギュラスのシシー姉様というのがこの人なのだと意味のないことを考えながら、美しい魔女を眺めていた。現実に対峙することができなかったんだと思う。

気がつけば、ナルシッサ・ブラックも、穴のあくほどに僕を見つめている。その目の奥には何があるのだろう。こんな時こそ開心術ができればよいのにと思ったけれど、動揺してしまって、術に集中することすら難しい。ブラックを侮ってはいけないのだと思い出し、心を閉じるのが精いっぱいだった。睨み合うように立ちすくむ僕と彼女のわきで、ルシウスだけが快活に話し続ける。

「どうしたのだ、2人とも。懐かしいだろう?セヴィ、ナルシッサはレギュラスの従姉なのだ。ナルシッサ、セヴィとレギュラスは兄弟のように仲がよいのだぞ。」

気を取り直したのはナルシッサ・ブラックのほうが早かった。つと一歩前に踏み出すと、優雅に手を差し延べて笑顔を浮かべた。

「ナルシッサ・ブラックよ。ミスター・スネイプ、お久しぶりね。卒業以来ですもの。」

完璧すぎてどこか作り物めいた美しい笑顔を見ながら、僕はなお立ちつくしていた。なぜ?なぜこんな・・・。すがる思いでルシウスを見ると、目であいさつを促された。僕が従うのを信じて疑わないその眼差し。

「ミス・ブラック、お久しぶりです。」

僕の前に差し出された滑らかな白い手の甲にそっとあいさつの口づけをすると、触れたか触れぬかのうちに手は引き戻された。美しい笑顔の、そこだけが笑っていないブルーの瞳が僕を射る。なぜわたくしのフィアンセの家に、おまえのような者がいるのと尋ねられた気がした。あなたこそ、なぜここに来たのだと睨み返したくなるのを、失礼のないようにと言ったルシウスの言葉が止める。僕は目をそらし、曖昧な笑みを浮かべようとした。

「ナルシッサ、セヴィは内気であまり社交的ではないのだ。一向に世慣れなくてな、困ったものだ。」

ぎこちない僕の態度を取りなすようにルシウスが言っても、ナルシッサ・ブラックは僕に向けた視線をそらさない。

「ミスター・スネイプ、ところで、なぜあなたがここにいるのかしら?」

詰問されたように感じたのは僕が動揺しているからで、小首を傾げた美しい魔女は、ただ素直なだけなのかもしれないとも思う。彼女からすれば当然の疑問なのだから。何か言わなければと焦っても、こんなとき、僕の口は思うように動いてくれたことがない。でも僕が言い淀む暇もなく、ルシウスの声が響いた。

「セヴィは屋敷に住んでいる。ホグワーツを卒業してからずっとここに住んでいるのだ。他に行くところはない。」

僕を見据えたまま、ナルシッサ・ブラックの笑顔が凍りついたように見えた。一瞬立場を忘れて僕の胸までも凍えるように感じられたけど、それは突然に強いられた対面に動揺し傷ついた僕の心を投影した幻だったのかもしれない。次の瞬間には変わらぬ優雅な笑顔が見えたから。

ナルシッサ・ブラックと僕の間に漂う微妙な気配を知ってか知らずか、ルシウスが2人の肩を軽くたたいて促した。

「さあ、一緒に夕食だ。ダイニングに行こう。」

3人でダイニングルームのテーブルに着いた。ルシウスとナルシッサ・ブラックが並び、僕が向かいに座る。出される料理やスリザリン寮のことなど、当たり障りのない話をする2人の声をききながら、味も分からない食事が進んでゆく。学生の頃、僕は話す機会もなかったけれど、2、3年上のこの魔女は、ブラック家のプリンセスと呼ばれていたと思い出した。この人は僕がルシウスのペットと呼ばれていたことを知っていただろうか?

「夏休みの間レギュラスはよく家に来ていたようだな。セヴィ、2人で何をしていたのだ?」

ルシウスが会話に加わらない僕に話しかけ、僕が答える前にナルシッサ・ブラックがルシウスに向かって言った。

「まあ、レギュラスはこちらに来ていたのね。わたくしも出かけていたからちっとも気づかなかったわ。ではわたくしたちが一緒に居る間、ミスター・スネイプがレギュラスのお相手をしてくださっていたのね。」

「はい、そんなところです、ミス・ブラック。」

なんとか受け応えしながら、ルシウスが出かけてばかりいたのは、この人に会っていたのだと夏休みを振り返った。ナルシッサ・ブラックはそれを僕に知らせようと意図的に言ったのではないかと疑いがわく。そういえばレギュラスも、家には親しかいなくてつまらないと言っていた。シシー姉様が出かけてルシウスに会っていたからだったのだ。僕はそんなこと考えてもみなかった。

僕はナルシッサ・ブラックの言葉を深読みせずにはいられなかったけど、彼女は少なくとも表向きは僕にもにこやかに話しかけてくれた。そして時々顔を見合わせて笑いあうルシウスと彼女は、口惜しいけど、美しさも品の良さも似合いのカップルに見える。マルフォイの御曹司とブラックのプリンセスが似合わないわけがない。僕は惨めに沈んでゆく気持ちを表さないようにと、それだけを考えて夕食を終えた。

ルシウスと僕に見送られて魔法の馬車に乗る一瞬、ナルシッサ・ブラックの顔に陰りが見えた気がして、外面を取り繕う社交性はあっても、僕がこの家にいたのはやはり疎ましかったのだろうと思う。

ナルシッサ・ブラックが帰ると、ルシウスは今日は楽しかったか、どうだ、ナルシッサは上品で気のいい女だろうなどと軽口をたたき、その夜もいつものように僕を抱いた。体はいつもと同じに反応しても、心に満ちたりた解放は訪ずれない。わだかまりが内にこもり、心の中に繰り返し吐き出される。

出し抜けにフィアンセを紹介し、同じ夜に事もなげに僕と寝た。気が向けば戯れに気に入る者と体を交わし、僕が動揺すれば子供だと決めつける。こうして抱いてしまえば今までと何も変わらないと思っているのか?

最初のうちは心の中でルシウスに詰め寄る言葉を繰り返し投げていたけれど、口に出せない怒りは煮詰まって、やがて悲しみと不安だけが残った。

ルシウスはナルシッサ・ブラックと結婚し、家族になる。僕を家族のようなものだと言ってくれたルシウスが、家族を得る。ほんとうの家族ができるなら、家族のようなものなどもうこの家にいる意味がない。僕はどうすればいいのか。僕はルシウスにとって何だったのか?

セヴィはここに住んでいる。他に行くところはない。

僕がなぜこの家にいるのかと尋ねたナルシッサ・ブラックに、ルシウスが答えた言葉が頭に浮かんだ。あの時は彼女が衝撃を受けたように感じられて胸が痛んだのだけれど、僕はなんてバカだったんだろう。ルシウスは、僕が他に行くところがないから家に置いてくれていただけだったのだ。なぜルシウスと僕、2人だけの家族みたいなものだなどと脳天気に思いこんでいたんだろう。

そして、ルシウスとナルシッサ・ブラックは、どこの誰が見ても、僕が見てさえも、似合いのカップル、理想的な家族の姿を体現していた。ルシウスは自分の家族とするに相応しい人を選び、屋敷に連れてきたのだ。他に行くところのない僕は、ここにも居場所をなくしたのだった。もうここにはいられない。ここはルシウスがナルシッサ・ブラックと住む家なのだから、僕は出ていかなければいけないのだ。

寂しさと心細さで身の置き所もないほどに思えたけれど、考えてみれば、他に行くところがないからと家に置いてくれるなど、いくら屋敷が広いとはいえ、並はずれて親切なことだ。しかも温かく招き入れ、家族のようだと錯覚してしまうほどに居心地よく遇してくれた。けして親切な人とは思えないルシウスが僕だけにくれた親切に、感謝こそすれ責めることなどできるはずがない。たとえ今それを、失うことになったとしても。

僕はぼんやりと、ルシウスを失うことを考えてみた。与えられたすべてのものとともに、ただ一人の家族のように寄り添っていた人を失う。溶けて1つになるほどになじんだ体も、触れるのが好きだったきれいな髪も、飽くことなく眺めた愛しい寝顔も、もう手が届かない。

それは、身を裂くような痛みだった。ルシウスは僕にとって、失うには大きすぎる存在なのだ。この十数か月、すべてを任せて従ってきたのだから。身を切り裂かれて、果たして人は生きていけるものだろうか?

僕はしばらくあまりの痛みに途方に暮れていたけれど、やがて気がついた。とても辛くて寂しいけれど、5年生の終わりにリリーが去ってしまった時のような、どうしようもない孤独や絶望感に陥っているわけではないと。

あの頃の僕は、ほんとうに、何者でもない見捨てられた子供で、リリーがいてようやく自分の存在を感じられた。リリーは幼い僕の傷んだ魂を救ってくれて、その後僕はリリーの手にしがみついて生きていたのだった。そのリリーに見捨てられ、命のエネルギーが尽きたような絶望に沈んでいた時、最も救いを必要としていた時に、ルシウスは手を差し伸べてくれた。ルシウスは僕を抱きしめて、世話を焼き、社会の中で生きてゆく力をつけてくれたのだった。その庇護のもと、僕は何人か友達をつくり、自分の持つ魔力が認められる社会に属すことができた。大切に守られる経験は、自分がそれに値する人間なのだと自信を与えてくれる。自信のついた僕は、心の中にリリーの思い出を取り戻すこともできたのだ。

救いをくれた人の傍らにいることができなくなっても、与えられた救いは僕の中に残り、僕を支えてくれる。リリーとルシウスは、離れてもずっと僕の支えだ。リリーは魂のレベルで、ルシウスは俗世の社会を生きてゆく自信の源として。今の僕は、そう信じることができる。そしてデスイーターとしての活動の中で、遠くからルシウスの役に立つこともできると思う。

そう思って初めて僕は、ルシウスに恨み事が言えた。といっても心の中でだけど。ひどいよ。僕を捨てて他の人を家族に選ぶなんて。あんなふうに突然、心の準備もないままに、自分に相応しい人を連れて来て、僕に立場を悟らせるなんて。だけど僕はようやくあなたのもとを去る決心がついた。さんざん世話をかけたから、面倒をかけず静かに去っていく。子供扱いされてばかりだったけど、僕だってもう大人だ。今までの厚意に感謝して、あなたが選んだ家族との幸せを祝福できるよう努力する。

何日か思い悩んで屋敷を出る心を固めると、これからどうするかと具体的な計画を考えた。時々寂しさと悲しみにくじけそうになると、心の中でリリーに話しかける。リリーに励まされ、ルシウスがくれた社会的な知恵を頼りに、僕は屋敷を出て小さな貸家を探そうと決めた。お金は、デスイーターになった時のお祝いにルシウスからもらったものがほとんど手づかずに残っている。デスイーターには給料のようなものがあるわけではないけれど、暮らしの苦しい者には少しの補助が与えられているようだし、仕事をしながらデスイーターをしている仲間に方策を尋ねてみることもできる。魔法薬の技術が活かせるかもしれない。

貸家を見つけるまで身を寄せる先は難問だった。スピナーズエンドの家は思いついて直ちに却下し、次に友達の家を考えて真っ先に浮かんだのはレギュラスだった。夏休みの間にずいぶん親しくなったし、裕福な家だから頼めば受け入れてもらえそうに思えたけど、今レギュラスはホグワーツにいるし、、、それにそこはブラック家なのだと思い至った。ナルシッサ・ブラックのせいで屋敷を追われて彼女の家に身を寄せるなどありえない。だけどレギュラスを除くと、マルシベールにしてもエイブリ―にしても、家に泊めてもらえるほど余裕がありそうでも、親しいわけでもなかった。結局数日はホテル漏れ鍋の安い部屋にでも滞在するしかない。

こんなことを考えている間、僕はルシウスに何も言わなかった。最後になるであろう2人の時間に、ルシウスの機嫌を損ねるようなことはしたくなかった。ルシウスもなぜか外出が減って、僕と一緒にいてくれた。まるでナルシッサ・ブラックのことなど何もなかったような、穏やかで親密な時間。僕は一生忘れないように、僕に向けられるルシウスの笑顔を記憶に蓄えた。

きりのない未練を断ち切って、僕はその夜、安らかな寝息を立てるルシウスの腕の中から抜け出した。青白い月明かりが影をつくる美しい顔にキスをして、自分の部屋に戻る。まとめてあった本と鍋と薬剤と、細々とした日常の物を少し、それに数日分の着替えをバッグに詰め込んだ。全部ルシウスに揃えてもらったものだけど、僕が持っていっても何も言わないと思う。そしてパジャマを着替えてローブを纏う。これからの寒い季節に備えてコートを持って行こうかと少し迷ってバッグの脇に置いた。

準備を終えて机に向かい、ルシウスに残す手紙を書きはじめた。「親愛なるルシウス」、けれどその後何と書けばよいのだろう?ルシウスとの数々の思い出を振り返れば想いが溢れ、落ち着こうと顔を上げれば目に入る部屋のあれこれに、また思い出がよみがえる。

結局、「親愛なるルシウス、ありがとう。セブルス」と読みにくい字が並んだだけの羊皮紙にため息をつき、けれどルシウスへの思いはそれに尽きるのだとペンを置いた時には、窓の外が白み始めていた。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシウス セブルス

コメント

No title

うぅ~ん…セブ 辛いよね…(T-T)
ルシウスとは、あまり ドロドロして欲しくないけど。
あぁ 私が 傍に居られれば、癒してあげたい…
って、私じゃ 駄目だし!
…すっかり 物語の中に 入り込んでしまってます(^^)

ドラゴンさん

コメントありがとうございます^^
セブくん、辛いことが多いですね・・・
あぁ、私も癒してあげたいのに
ついいじめてしまう^^;

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