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セブルスとルシウスの物語(36)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


夜が明けてしまわないうちに行かなければと立ち上がると、ちょうどドアが開き、ナイトガウンを羽織ったルシウスが眠そうに目をこすりながら立っていた。

「セヴィ、ここにいたのか?何をしているのだ、こんな夜中に・・」

あくび混じりの声が途切れ、不思議そうに僕を見る。ローブ姿の僕と脇に置かれたバッグに視線を走らせ、ルシウスの眉間にしわがよった。

「何をしているのかときいたのだ。」

ルシウスは眉毛を吊りあげて問いただし、僕に詰め寄って来た。なんと間の悪いことだと思いながら、僕もルシウスの顔を見返した。

「屋敷を、出ようと思って。」

「なぜだ?」

ルシウスは机の上に置かれた僕の手紙、というほどの字数もない羊皮紙に目をやり、鼻さきでフンと笑って読み上げた。

「親愛なるルシウス、ありがとう、セブルス。なんだこれは?」

「僕は屋敷を出るから、その挨拶にと、、」

「だから、なぜだ?」

「あなたはナルシッサ・ブラックと、、」

「ナルシッサが気に入らないと言うのか?ナルシッサはおまえにも気持ちよく接していたではないか。ナルシッサの何が悪い?」

ルシウスはもはや不機嫌を通り越して、怒鳴りつけるように言う。ナルシッサ、ナルシッサ、ナルシッサばかりだ。こんな言葉をききたくなくて、夜のうちに家を出ようと思ったのに。僕もかっとなって声を荒らげた。

「ミス・ブラックがどうこうというんじゃない!あなたがミス・ブラックと結婚すると言うから僕は家を出ようと、、」

「おまえは私がナルシッサと結婚するのが気に入らないのか?ではセヴィ、おまえが私と結婚するとでも?」

僕が言葉も出せないうちに、ルシウスはいきり立ち、勝手に話を進めてごもっともな御託を並べたてた。

「おまえにこの名門貴族の女主人として社交をこなす度量があるとでも思っているのか?気難しいめんどうな客を迎えて、にこやかにもてなすことができると思うのか?おまえにこのマルフォイ家の跡継ぎを生むことができるとでもいうのか?」

そんなことを言うなら、あなただって僕の子を生めるのかと言い返せたらどんなにいいだろうとあらぬことが頭に浮かび、そんなことじゃない、そうじゃなくて、、なぜ僕の気持ちをわかってくれないんだと悲しくなって、かっとした頭も冷えた。

「もちろん、僕にそんなことはできないとわかっている。だから屋敷を出ると決めた。」

冷静になり、声も沈む。一瞬の怒りがおさまると心は悲しみに覆われて、声が震えないように努めながら、一語一語、言葉を続けた。

「あなたは僕を家族のようなものだと言ってくれた。僕はそれがとても嬉しかった。だけど今あなたは結婚して、ほんとうの家族をつくる。だから僕は、、」

「私はおまえを家族のように扱ってきたではないか。おまえによいと思うことは何でもしてやったし、必要なものはすべて与えた。おまえが好きな本も、その魔法薬の調合台も、この部屋も、全部おまえの物だ。おまえだって気に入ったと喜んでいたではないか。それをすべて、捨てるというのか?ここを出て他に行く所もないくせに。」

言ううちに怒りが増したのか、ルシウスの口調がまた、たたみ掛けるようにきつくなった。もちろん、与えてくれたすべての物に感謝している。僕には身に余るほどの物だ。だけどルシウスはわかってない。僕が今離れがたく思うのは・・・。

「捨てると言っても、もともと、僕のものじゃないんだ。」

僕は静かに答え、離れ難いその人に、身を切る思いで背を向けた。バッグとコートを抱え、鉛のように重い足をドアに向けて運ぶ。こんなふうに言い争って去ってゆくつもりではなかった。機嫌のよいルシウスの笑顔と、愛おしい寝顔を胸に、なんとか一人で歩み出そうと決めたのに。怒りとも悲しみともつかぬ苦い思いがにじむ。

「セヴィ、おまえはほんとうに、捨てるのか?」

背後からルシウスの声が追ってきた。だから、もともと僕の物でもない物を捨てるなんてできるものかと言い返そうとドア口で振り返ると、ルシウスは身じろぎもせずに立っていた。それがまるで心細いかに見えて。そんなルシウスは見たことがなかった。僕はあっけにとられて言い返すことも忘れ、痛々しくも見えるその姿をしばらく眺めていた。

「おまえは、私を、捨てるのか?」

ルシウスの口から、絞り出すような、とぎれとぎれの言葉が漏れた。そしてまるでその口にしたことが信じられないかのような愕然とした表情で、もう一度繰り返す。

「セヴィ、おまえが私を、、、捨てるのか?」

言葉の意味を理解する前に、痛ましさに胸が締め付けられた。ルシウスがそんなことを言うなんて。ルシウスが傷ついている。僕がルシウスを傷つけた。そんなことはできない、そんなことあってはならないと思った瞬間に、僕はルシウスに駆け寄っていた。

「ルシウス?」

ルシウスは目の前に立つ僕にはじめて気づいたように目を瞬かせ、ゆっくりと話し出した。いつもの自信に満ちた態度が嘘のような、胸に沁みる哀愁を帯びた声で。

「おまえは、あの夜を、覚えているか?私が初めておまえを抱こうとした夜のことだ。」

僕はうなづいたけど、ルシウスの目は、僕を通り越して遠くの何かを見ているように思えた。

「私の母は私が子供の頃から病に伏せていて、ほとんど思い出すらないのだが、一つだけ教えを残して逝った。大切に思う人がいたら、その人を失いたくないのなら、手を握り、その手を放してはならぬと。母がそのはかない生涯をもって示した、唯一つの教えだった。」

それから今度はたしかに僕を見た。僕の目を捕えた色の薄い瞳は、まるで傷ついた子供のように見えて、僕は身がすくむ。ルシウスにこんな目をさせてはいけない。ルシウスはこんな頼りなく傷ついた思いをしてはいけないのだと心が叫ぶ。

「私はあの夜、母の教えに従い、おまえの手を握った。そしてずっと放したつもりはないし、これからも放さぬ。それなのにおまえは私を捨てて出てゆくのか?」

僕はルシウスの手を握りしめていた。バッグもコートも床に落ちたけど、もちろんかまわない。あの夜感じた絆は、たしかにこの手の中にあったのだ。僕の冷えた手から温もりが伝えられるかわからないけど、あの時もらった温もりはここにあるのだと伝えたい。ルシウスは結ばれた手をじっと見て、握り返してきた。わずかに照れたような笑みが浮かび、僕もほっとする。いつもルシウスがしてくれるように、僕はルシウスの背を抱き寄せた。

「出ていくなどと言うな。」

耳元でささやくように言われ、僕はうなづいた。

「あなたの手を放したりしない。僕はずっと、あなたのもとにいる。」

僕の腕の中でルシウスの体の強張りが解けてゆき、しばらくすると今度はルシウスのほうが僕の体を抱きしめた。ルシウスの温かい手が、いつものように僕の背を撫で、指を髪に絡める。僕はこの温かい絆を絶対に守り抜くと心に誓う。何があっても、結んだ手を放せるものか。

目障りなローブなど脱げと言われてローブを脱ぐと、ナイトガウンの中に抱きいれられた。

「おまえは私のものだ。」

やっぱり、温かいルシウスの胸の中こそ、僕の居場所だと思う。ここ数日の思い詰めた気持ちが溶けてゆく気分を味わっていると。

「セヴィ、だが私たちにはナルシッサが必要なのだ。ナルシッサならマルフォイの女主人として体面を整え、後を継ぐ子を生んでくれるだろう。私たちに新しい家族ができるのだ、セヴィ。私には妻、おまえには姉のような人ができる。私と同じように、大切にしてやってくれ。」

「・・・」

ルシウスの母親はなぜ、大切に思う人の手を握ったら、他の手を握ってはいけないと教えてくれなかったのかと思う。ナルシッサ・ブラックは、ルシウスの妻になるつもりではいても、僕の姉になるつもりなんかないと思う。そしてルシウスはこれですべては解決したと安心しているのだろう。状況は何も変わっていないのに。

だけど、僕がこの屋敷を出ることはないと思う。僕には家族というものがよくわからなかったけど、たぶん、良いことばかりでなく、互いの欠点も嫌なことも受け入れて、それでも切れぬ情の温もりを守ってゆくのが家族というものかもしれない。今までの、ルシウスから与えられる一方の関係ではなくて、今日僕は自分の意思で、ルシウスとの繋がりを守ってゆくことを選ぶ。血縁も形の守りもないけれど、握り合った手が結ぶ絆が僕の家族だ。

ルシウスは僕をベッドに誘い、いつものように愛撫を始めた。僕はその手を止めて言った。

「今日は僕が、あなたを抱く。」

ルシウスは一瞬、なんだと?と言わんばかりに片眉を吊り上げたけど、すぐ破顔して力を抜くと、ベッドに横たわった。僕が与える刺激に白い体が波打ち、整った美しい顔が愉悦に歪む。慣れてないから上手くはできないけど、かまわない。僕たちは互いを与え、受け入れ、結びあう。この思いが伝わればいい。

ルシウスの協力もあって無事果てた後は、やっぱりルシウスに抱き寄せられた。

「セヴィ、寂しい思いをさせてすまぬが、私を信じてここにいてくれ。」

ルシウスはもう、僕の中で一点の曇りもない輝ける完璧な人ではなくて、傷ついたり、強がって虚勢を張ったり、自分勝手でずるかったり傲慢だったり、放蕩であったりさえするけれど、それでも前にも増して愛おしい。ルシウスのあんな、傷ついた子供のような顔は、二度と見たくない。ルシウスの笑顔や自信に満ちた態度を守るために、僕はなんだってやる。苦労するだろうけど、僕はルシウスのすべてを受け入れると決めたのだ。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシウス セブルス

コメント

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はじめまして。一気に拝読しました。心理描写が細かく、スネイプ先生の人生について改めて考えさせられています。

また、家族とは、恋と愛とは、、、など、なるほど!と思いました。
自分の人間関係と照らし合わせたりして・・・
ほんと考えてしまいます。

これからも繰り返し読ませていただきたく思っています。
更新も楽しみしています。

まりさん

はじめまして。
ご訪問&コメント、ありがとうございます!

原作に詳細に描かれたハリーたちと同様、
スネイプ先生も迷ったり悩んだりしながら人生を歩んだと思います。
辛いことが多そうですが、幸せもあったらいいな~と。

家族や愛や恋ってすごく重要なことなのに、
人と関わることなので、なかなか自分の思い通りにならないですよね。
不公平だったり理不尽だったりすることも多い。
人に求めることより、自分が何を選ぶか、何をしていくか、
それしかできないのかなと思います。
結果として周りが変わることもあるかもしれません。

更新滞りがちですが、続けていきますので
また遊びに来てくださいね♪

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