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セブルスとルシウスの物語(39)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


式に続く華やかなパーティが終わるともう夜で、僕はベッドに入ったけれど気が昂ぶってなかなか寝付けなかった。美しい新郎新婦の姿や、ルシウスに肩を抱かれて皆に挨拶した高揚感を振り返り、それからホグワーツの入学式で初めて会った時からのルシウスの記憶のあれこれに思いは巡る。

スリザリン寮でさえ心を開けず孤立しかけた僕に声をかけてくれたこと、リリーに別れを告げられて絶望と孤独の淵に沈んだ僕を呼び寄せてくれたこと、父さんに殴られたトラウマに錯乱した僕の手を握り締めてくれたこと、そして温かい抱擁と初めての愉悦。いつだってルシウスは僕に手を差し伸べてくれた。その人の幸せを願わずにはいられない。

そして今、幾度も抱き合ったあのベッドにルシウスはナルシッサを抱いて眠り、僕は一人ここに横たわる。2人の幸せを心から願う気持ちに偽りはないけれど、一人寝る夜はやはり寂しかった。これからはずっと、こんな夜が続く。受け入れたことなのだから、慣れるしかないのだと思う。少しだけ涙が滲むのを感じながら、いつの間にか眠ってしまったようだった。

ふと気配を感じて目をあけると、ルシウスが僕の顔を覗き込んでいた。

「ルシウス?」

「一人ではおまえが眠れないのではないかと気になって見に来たのだが、かえって起こしてしまったようだ。」

僕は身を起こし、ルシウスはベッドに腰掛けた。

「大丈夫だよ、僕はもう子供じゃないんだから。」

僕が言うと、ルシウスは苦笑いしながらため息をついた。

「実は私も落ち着かなくてな。」

僕はルシウスの背中に腕を回し、軽くたたきながら言った。

「まだ慣れないから。でもきっとすぐ慣れる。大丈夫だよ。」

「おまえに励まされるとは。ずいぶんと大人になったものだな、セヴィ。」

そう言われて、ルシウスも入学式で会った子供の頃からの僕を思い起こしていたのかと思う。

「そうだ。僕はもう大人だよ。今までずっとあなたが守ってくれたから、こんなに大きくなった。ルシウス、年が明けたら僕は19歳になるんだ。」

少しおどけて言うと。

「ホグワーツの料理を前にフォークも握れなかった子供が、もう19になるのか。私も年をとるわけだ。」

2人一緒に噴き出して、笑いながら心の中で自分に言い聞かせる。分かち合う思い出がどんなに優しくても、たわいない会話がどんなに楽しくても、もうこのまま2人でベッドに倒れこんで眠るわけにはいかないのだと。

「ルシウス、さあ、もう行って。花嫁が目を覚ましたら心配する。」

ルシウスは目を瞬かせてうなづき、部屋を出ていった。

翌日、温かいエーゲ海の島に新婚旅行に出かける2人を見送った。すぐ戻るから食事を抜かず元気でいるのだぞと相変わらず子供扱いするルシウスと軽く抱き合って別れの挨拶をした。それを見たナルシッサは、初夜を終えたばかりの輝く笑顔の目を見開いて、まあ、セブルスは行かないの?一緒に行きましょうよなどと呆れたことを言う。このプリンセスは逆境には弱いけど、順風な時は実に寛容で、悪気なくハタ迷惑な親切を施すのだ。もちろん嫌味めいた考えだと自覚はしているけど、誰が恋人の新婚旅行などについてゆきたいものか。

ナルシッサ、向こうではルシウスが一緒に買い物に行ってくれるはずだから、僕がいなくても大丈夫ですよとルシウスへの嫌味を交えて言うと、ナルシッサは少し口を尖がらせて、それから笑顔に戻り、寂しいでしょうけどお土産を買ってくるから楽しみに待っているのよと言い、僕が挨拶に肩を抱くと頬にキスして旅立っていった。

結婚式の日と打って変わって、人気のない広大な屋敷は静まり返っていた。一人静かに過ごす時間は、波にもまれるような慌ただしさに一息つき、新しい生活を受け入れるのによい機会だった。

案の定、2人が旅行から戻ると大騒ぎになった。ナルシッサはほんとうに僕が旅行に行かないのを寂しがっていたのだと思っていたらしく、ろくでもない土産物をたくさん僕の前に並べ、旅行の細々とした話をえんえんと続ける。ひらひらとした島の民族衣装とやらを取り出して、似合うと思うの、着てみてちょうだいと言われた時には頭の具合を疑ったが、内緒話のように、わたくしはまだ早いと思うのにルシウスは子供を欲しがるのよなどと言われた時には、実は無邪気を装って僕に嫌がらせをしているのではないかと思ったほどだ。

ルシウスに助けを求めようと思ったら、ルシウスはすでに姿を消していた。あとで見つけて何とかしてほしいと訴えると、私など店の者の前であのひらひらを着せられて、帽子までかぶらされたのだと言って話を終わらせた。世界は2人を中心に回り、僕は振り回されてとばっちりを食うばかりなのだから、多少嫌味めいてしまうのは仕方ないと思う。

それでも数日が過ぎるとナルシッサも静かになり、ルシウスとともに何度かデスイーターの襲撃に加わると、もうクリスマスだった。

休みに入るとすぐにレギュラスもやって来て、4人でクリスマスイブの食卓を囲んだ。部屋には温かい暖炉が燃え、様々な装飾が施されたツリーの影をつくる。やわらかなロウソクの炎が揺れ、暖炉のたきぎの燃える音と魔法のオルゴールから流れるクリスマスソングの静かな調べをBGMに、ワインを飲みながらたわいない話が尽きることなく続く。去年ルシウスと2人だけで過ごしたクリスマスが懐しくも思われたけれど、こんな家族らしいクリスマスもいいんじゃないかと思う。

なごやかな食事が終わると、ルシウスとナルシッサは寝室に引き上げ、僕はレギュラスと一緒に部屋に戻り2人で飲み始めた。僕は父さんの酒癖の悪さを忘れないからたしなむ程度にとどめているけど、レギュラスは早いピッチで飲んでいる。ルシウスとナルシッサを目にしてのやけ酒気分なのだろうと好きなようにさせていたのだが。

「セブルス、やっぱりこんなの間違ってると思う。マルフォイ先輩は間違ってる。正すべきだ。」

レギュラスが突然強い口調で言い始めて驚いた。

「なんのことだ?」

「ねえ、セブルス、セブルスはほんとに嫌じゃないの?マルフォイ先輩とシシー姉様は今抱き合ってるんだよ。」

「夫婦なのだからしかたがないだろう。」

僕はこのひと月ほど、それに慣れようと努力しているのだ。痛い所を突かれて、表情に出たらしい。

「ほら、仕方ないと言いつつ割り切れない顔してるじゃないか。マルフォイ先輩だって、結婚式からひと月たって変わったかと思えば、何もかわってない。あいかわらずセブルスのことばかりだ。さっきだって、この部屋に来たことを思い出してた。」

「おまえ、またルシウスに開心術を使ったのか。」

「シシー姉様が心配だからね。」

「心配はいらない。ルシウスはナルシッサを大切にしている。」

「ボクもそれはわかってる。でも、大切にすることと愛していることは違うよ、セブルス。もしシシー姉様とセブルスが殴られたら、マルフォイ先輩はどちらも怒って守ろうとするよね。だけど、その意味は違う。シシー姉様が殴られたら、可哀そうだから怒るんだ。自分の面子が傷つけられたとも思うかもしれないね。だけどセブルスが殴られて怒るのは、自分が痛いからだ。自分が殴られたように痛いから怒る。愛情ってそういうもんだ。」

「それは、、」

「ほら、セブルスだってわかってる。セブルスを失う先輩の痛みが辛いから、ここにいるんだろ?シシー姉様だって感じてるよ。ただ先輩を失うのが怖いから、気づかないことにして明るく振る舞ってる。僕はシシー姉様の悲しみが自分のことのように感じられるよ。」

ルシウスはともかく、少なくともナルシッサと僕は、なんとかその微妙な均衡を崩さぬようにと努めているのだが。

「ね、セブルス、そんなの間違ってるよ。先輩とセブルスは想いあっているんだから、堂々と2人でいればいいじゃないか。シシー姉様を巻き込むことない。シシー姉様はマルフォイ家の子供を産む道具なの?結婚してしばらくたって、3人とも間違いに気付いただろ?みんなわだかまりを押し殺して、表面を取り繕ってるだけだ。間違いに気づいたなら、正すべきじゃないか。」

僕はレギュラスの純粋な思いと激しさに心打たれながらも、そんな正論が通ると思える恵まれた育ちと幼さに危うさも感じた。僕の周りには理不尽なことがたくさんあったけれど、ほとんど正されたことなどない。正すには身を捨てる決意と、もっと酷い状態になる恐れを覚悟しなければならないのだ。

「だけどレギュラス、そんなことになったら、他ならぬナルシッサが一番傷つくじゃないか。優しいけど、たくましく逆境を乗り越えられる人ではないだろう?ルシウスの身勝手が招いたことは謝るが、、」

「ほら、セブルスは先輩のことをまるで自分のことのように詫びる。マルフォイ先輩はシシー姉様のことをそんなふうに親身に思ってはくれない。先輩のことは尊敬しているけど、愛情ってどうにもならないことだから。でもそれに目を背けるのは卑怯だ。マルフォイ先輩が間違いを正さないなら、僕が正す。僕がシシー姉様を支えられるだけの大人になったら、僕が姉様を救い出す。」

目を吊り上げたレギュラスの表情は、ホグワーツでポッターに加勢して僕を背後から狙ったブラックを卑怯者と断じた時のことを彷彿させた。敬意を持つ相手だからこそ、卑怯な行いが許せないこともあるのだろう。レギュラスのまっすぐな態度がまぶしく思える。僕たちがそれぞれにわだかまりから目を背け、ないものと振る舞うことに慣れようとしている間に、レギュラスは真実に対峙し正すべきだと考えていたのだ。それに伴ってそれぞれが受ける傷みを思うと、僕に正す勇気はないけれど、レギュラスには胸の内を明かしたくなった。

「レギュラス、おまえの言うことはその通りだと思うけど、僕はルシウスに背けない。背きたくない。僕は両親とも折り合いが悪いし、兄弟も従姉もいない。友達にもうまく打ち解けられなくて、僕にはずっとルシウスしかいないんだ。」

「セブルス、寂しかったの?」

すごく照れくさくてちょっと悔しいのを押し殺して、小さくうなづく。

「でも最近はおまえとこんなこと話せるように親しくなれて嬉しいと思ってる。それにナルシッサだって。たしかにわだかまりもあるしおかしな関係だとは思うけど、僕、好きなんだ。買い物やおしゃべりはうんざりすることもあるけど、明るくて優しくて、彼女を傷つけずにいられたら、どんなにいいだろうと思う。」

レギュラスは表情をやわらげてじゃれついてきた。

「シシー姉様のこと、ほんとにだいじに思ってくれてるんだね。ボクもセブルス大好きだよ。寂しかったらボクに話して。いつかきっとボクがシシー姉様を救い出し、セブルスは先輩と2人で幸せに暮らす。それでみんなハッピーだ。だからそれまでは。」

「それまでは僕がおまえにかわってナルシッサを守る。」

言いたいことを吐き出して気がすんだのか、酒の酔いのせいか、レギュラスは僕に抱きついたまま眠ってしまった。その体をベッドに横たえて、僕はソファで寝ることにした。

翌日のクリスマスには、ルシウスとナルシッサはレギュラスとともにブラック家に向かい、夜になってルシウス一人が戻って僕の部屋に来た。ナルシッサは実家に泊まり、家族水入らずで過ごすのだという。寂しかっただろう、結婚式以来だと言うルシウスに抱かれながら、レギュラスの言葉通り、愛情とはどうにもならないことだと思う。それからルシウスは時々僕の部屋を訪れるようになった。ナルシッサは気づかぬふりを通し、僕は彼女とレギュラスに心の中で詫びていた。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ルシセブ ナルシッサ レギュラス

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