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(過去2)リーマスの物語3

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


次にスネイプと話す機会は、意外と早くやってきた。あの魔法薬学の授業からしばらくたった週末の朝のことだ。同年代の子供たちが集まる寮で、授業が休みの日となればみんながはしゃぐのも無理ないけれど、複雑なものを抱えた僕にはちょっとついていけないとこもある。朝食の後の、寮の談話室での騒ぎを逃れて、僕は図書館に行った。

図書館の奥の人けのない机に行くと、壁際の隅にスネイプが座っているのが見えた。隣にはグリフィンドールのリリー・エバンスがいて、2人で頭をくっつけるように何か話している。積み上げられた本の向こうに時々スネイプの笑顔が見えて、なんだか僕は得した気分になった。僕も仲間に入れてもらいたいたけど、じゃましちゃいけないと思い、長い机の反対側の端に座り、顔の前に本を立てて気づかれないように様子をうかがっていた。

グリフィンドールとスリザリンは仲が悪いから、寮の違うスネイプとエバンスは人目につかないように、こんな席を選んでいるのかもしれない。魔法使いと人狼の隔たりを思えば、同じ魔法使い同士、寮の違いでけんかするなんてばかばかしいと思う。だけど、競い合って成長するという名目のもと、実際は互いにいがみあってばかりだ。だからこそ、うなづいたり横に振ったりしながら寄り添う黒髪と赤毛が微笑ましく思える。

しばらくするとエバンスが立ち上がり、スネイプに小さく手を振って歩き出した。グリフィンドールでは魔女たちが先輩に編み物をおしえてもらうと言っていたから、きっとエバンスもそれに加わるんだろう。スネイプはエバンスの後ろ姿を目で追って顔を上げ・・・僕と目が合い一瞬身構えた。

「おはよう、スネイプ」

スネイプが顔を背ける前にいそいで僕は声をかけ、スネイプの向かいの席にうつった。訝しげに僕を見るスネイプの眉間に縦じわが寄っていくのがちょっと残念だ。でも勇気を出してもう一度、はっきりと。

「おはよう、スネイプ。この前魔法薬学で一緒だったよね、僕、リーマスだよ。」

ルーピン、何か用か?」

名前は覚えてくれていたようだ。スネイプの物言いはぶっきらぼうだけど、これはスネイプ的には、リーマス、おはようと言っているに違いないと思うことにする。

「君は何をしているの?」

言いながらのぞきこんだスネイプの手元には、羊皮紙が2枚。1枚は魔法薬学の宿題らしく、みっちりと書き込まれている。もう1枚はほとんど白紙で、読みにくい字で「僕が魔法生物と会ったのは、」と書きかけただけのようだ。

「ああ、闇の魔術に対する防衛術の宿題?」

気軽に問いかけたけど、スネイプの眉間の縦じわがみるみる深まっていったから、言っちゃいけなかったのかもしれない。話をかえてみよう。

「魔法薬学の宿題はもう終わったんだね?」

スネイプが片方の眉を吊り上げてうなづいた。魔法薬学の話ならしてもいいみたいだ。

「君は魔法薬学が得意なんだよね?僕は苦手で困ってるよ。」

魔法薬学の宿題は、授業で作った水薬の材料植物と調合について、詳しくまとめることになっている。教科書のまる写しだけではダメで、材料植物の生育に適した気候、葉の色や臭いとか調合時の水薬の色の変化とかを詳しく記せというもので。

「僕は鼻がよすぎて材料の臭いは頭が痛くなっちゃうし、目は色弱ぎみで色具合はあんまりわからなくて。魔法薬学の宿題は行き詰ってるんだ。」

そう言いながら、僕は全然進んでいない宿題の羊皮紙を広げて見せた。スネイプはあきれ返った顔をしながら、自分の羊皮紙を見せてくれた。僕が喜んでその読みにくい字を読みながら書きうつそうとすると。

「まる写しでは宿題の意味がない。」

怒られたのかと思ったけどそういうわけじゃなかったようで、スネイプは魔法薬の講義を始めた。会話は苦手だけど、説明となると細かいことまでよくしゃべる。僕は半分もわからなかったけど、わかった分だけ羊皮紙に書いて、あっという間に魔法薬学の宿題がしあがった。と思ったら、スネイプは僕の書きあげた羊皮紙をチェックして、何箇所か印をつけ、その部分は書き直せと言った。人当たりが悪いだけで、けっこう親切なとこもあるんだ、スネイプは。

「ありがとう、助かったよ。じゃあ、今度は闇の魔術に対する防衛術の宿題だね。君はこの科目も得意なんだろ?」

スネイプは闇の魔術にすごい長けてるっていうから。だけどスネイプは下を向いてちょっと悔しそうな顔をしている。

今週の防衛術の宿題は、次の授業で初めて魔法生物について学ぶから、今までに魔法生物と実際に出くわした時の体験と、その体験から学んだことを書いてきなさいというものだ。マグル出自で魔法生物を知らない生徒は、人に聞いた話から調べてまとめてもいいことになっている。魔法生物への興味を高めるための宿題で、たいして難しいものじゃない。

スネイプが黙ったままなので、重ねて言ってみた。

「僕は魔法生物の勉強、楽しみなんだ。君は何の話を書くつもりなの?」

「・・・。僕、魔法生物なんて、知らない。」

「?」

意外な言葉だ。僕みたいに魔法使いの街から追い払われて魔法生物が多い森との境あたりを転々としていたわけでなくても、古い屋敷ならいろんな魔法生物が住みついているし、原っぱや森に遊びに行けばちょっとした魔法生物に出くわすことは多い。見ることがなかったとしても、魔法界では言うことを聞かない子供は魔法生物にさらわれると親が脅かしたりするから、魔法生物を全然知らないなんてありえないんだけど。

でも、スネイプは知らないらしい。

それきり口を閉じて羊皮紙をにらんでいるスネイプを見ながら、また空想が広がった。スネイプは吸血鬼じゃないかっていうお気に入りの空想だ。スネイプは数百年の眠りから覚めてホグワーツにやってきた吸血鬼の子供かもしれない。棺の中で眠っていたら魔法生物に会うことなんてないもの。目覚めたばかりの吸血鬼の秘密の友達になって、いろいろおしえてあげるなんて思うとわくわくする。

「ねえ、スネイプ、魔法生物を見たことがないんなら、これから一緒に森に行こうよ。禁じられた森の、ほんの入口あたり。魔法生物がいっぱいいるよ。その辺りなら危ないのは出てこないし、僕、魔法生物の扱いは得意なんだ。君には魔法薬学で助けてもらったから、今度は僕が手伝ってあげる。」

スネイプは驚いたようで、戸惑った顔をした。僕の申し出を疑ったのかもしれないし、禁じられた森に近づくという規則破りと、宿題ができるかどうかということを天秤にかけていたのかもしれない。

「こんな昼間ならこわいことないよ。」

あ、でも昼間だから外の日差しにあたることを心配してるのかな?吸血鬼は日差しを浴びると灰になってしまうっていうけれど。

「こわいなんて、思ってない。」

スネイプはむっとしたように言い返して、荷物をまとめて立ち上がった。僕を待っているみたいだから、行く気になったってことだ。僕はウィンクして、、、それは無視されたけど、、、すぐ立ち上がり、一緒に禁じられた森の入口に向かった。陽のあたる外に出るのを躊躇うようでもなかったから、吸血鬼じゃないってことなのかな?ちょっと残念な気もする。

赤や黄色にかわった葉が落ち始めた林の小路を通り抜け、うっそうとした森に近付くと、スネイプは明らかに緊張したようだった。それは魔法生物を恐れてというより、森に近づく姿を人に見られるのを心配したようで、振り返って周りの様子を確かめていた。

「ほら、見て、あそこ。」

禁じられた森の木の後ろから顔を出した半透明の白い影を指差すと、スネイプが目を丸くした。

「あれは、木霊。木の周りを漂ってるだけ。暗闇で急に現れるとびっくりするけどね、何も悪いことはしないよ。それから、ほら、あれ。」

木の根元にうずくまる、一見ウサギを指差してみせた。

「かわいく見えるけど、近付くと大きな影に化けて人を驚かすんだ。こうすればいいのさ。」

膨らみかけた影に、杖を上げて近くの小石をぶつけると、キーーンと奇妙な鳴き声をあげてウサギの姿に戻り、走って逃げていく。

「わぁ。」

スネイプが無邪気な声をあげた。僕は得意になって、岩陰の魔法蜘蛛や、木立からこちらをのぞくキツネモドキを見つけてはおしえてやった。スネイプはそのたびに、目を丸くしたり、声を出さないまま「わぁ」というように口を開けたりしている。いつもの気難しげな顔がうそのような素直な表情は、まるで幼い子供みたいだ。

そのうち沼からはい出した水棲生物が現れて、これはほんとに危いから杖で追い払うと。

「君、すごいんだ。」

思いもよらないスネイプの褒め言葉に嬉しくなって、本音が漏れた。

「魔法生物、好きになった?僕ほんというと、人間より魔法生物のほうが慣れてるんだよ。」

ていうか、僕自身、魔法生物なんだ、とまでは言えないけど。でも、言えたらいいなとも思う。僕、ほんとは人狼なんだって打ち明けて、スネイプが僕もそうなんだとか、僕は実はヴァンパイアなんだとか答えてくれたら、今まで誰にも言えなかったいろんな思いをみんな話して、いっしょに秘密を守っていこうって言いあえたらどんなにいいかと思ったりする。

「僕は初めて見た。これで宿題が出来る。」

スネイプらしい、会話を盛り下げる反応に、僕の空想はいったん幕を下ろした。でもスネイプの素直な表情を見られただけで充分だ。

「また図書館でいっしょに宿題してもいい?エバンスといるときは遠慮するから。」

そう言うとスネイプは小さくうなづいて、ちょっとだけ僕に笑いかけてくれたような気がする。

次の週末にも、図書館で顔を合わせた僕とスネイプは、禁じられた森に行った。僕はまたいくつか魔法生物を見つけておしえてやり、今度はスネイプも魔法生物に杖を向けた。闇の魔術かと思われる、それらの魔法生物には威力あり過ぎな術で追い払うのをあわてて止めて、そんなに強い術じゃなくていいんだと言って適度な術をしてみせると、スネイプも素直に僕に倣った。

「たいていの魔法生物は人を驚かすだけだから、人間ほど恐れることはないんだよ。」

ついまた本音を漏らしてしまい、少しあわてる。僕が人を恐れていることを、口にしてしまった。正確には、人に排斥されることを恐れているんだけど。

スネイプは少し驚いたように動きを止めて、僕をじっと見た。その黒い瞳には、僕の古びたローブや気弱な顔だけじゃなくて、いつも必死に隠しているまとわりつく闇や孤独や、心の奥に潜む怯えまでも見えてしまうんじゃないか?でも、偽りない自分をむしろ見てほしいような気もして、スネイプを正面から見返した。闇も孤独も貧しさも、スネイプにだってなじみのものなんじゃないか?

「魔法生物は、知識があれば怖がる必要はないってことか?」

少ししてスネイプが言った言葉に、ああ、やっぱりスネイプの中にも人に対する怯えがあるんだと思い、でも僕はわかりあえる相手だと思ってくれたんだと思えてなんだか胸が熱くなる。

「そうだよ。」

笑顔でうなづいて、僕は警戒すべき魔法生物をおしえてあげた。たぶんそのうち授業で習うだろうけど、水棲生物や森の奥に棲むという巨大蜘蛛は危険だから近付かないこと。ケンタウルスなど誇り高い魔法生物に出くわしたら礼儀正しくしなければいけないこと。

それから勇気を振り絞って、人狼のことも。普段は悪い者というわけじゃないけど、狼に変身する満月の夜だけは人の意識を失って凶暴になってしまうから近づいてはいけないと。人狼を罵倒する言葉を返されたらどんなに悲しいかと思ったけど、スネイプはただうなづいてきいてくれた。

それ以外の魔法生物は可愛いもんだよと言って、また魔法生物を見つけたり、林で術の練習をしたり、スネイプが見つけた薬草の講義をしてくれたりしているうちに、あっという間にお昼になって、僕は名残惜しく林を後にした。スネイプと一緒にいたのはほんのわずかな時間だったけど、そのひと時が、僕は心から楽しかった。

グリフィンドールの仲間たちは身近にいるから、僕は人狼であることを気づかれてはならないと、いつも警戒している。人当たり良くみんなといるけど、僕は見えない壁をはりめぐらして、その中で忌まわしい秘密を抱えて怯えながら、周囲に合わせて自分を偽っている。何より勇気を称えるグリフィンドールで、そんな自分が嫌になることもあるし、孤独を感じずにはいられない。

だけどスネイプといる時は、そんなこと忘れてた。人狼であることを忘れたわけじゃないんだけど、どこか秘密めいたスネイプと一緒にいると、秘密が重荷に感じられなかった。もしかしたら吸血鬼かもしれないスネイプと、人狼の秘密を持つ僕と、2人だけで空想の世界にいるような気がした。その世界では、秘密も孤独も普通のことだ。スネイプとなら、僕は自分が作る見えない壁から解き放たれて、ただ普通の子供でいられたんだと思う。

もちろん、実際にはスネイプは吸血鬼なんかじゃない可能性が高いとは思っている。闇や怯えや孤独を抱えて周りに心を開けない内気な子供が2人、少しだけ周囲との壁を意識せずに過ごせたというだけのことかもしれない。でもそこには確かに通じ合う何かがあった気がする。スネイプと過ごしたひと時を思うと、小さな赤い火に手をかざすような温もりが感じられた。

そんな、僕としては珍しい高揚感に包まれて、そのままスネイプと空想めいた2人だけの世界で仲良くなれるような気がしていたんだけど、一緒に無邪気な子供でいられたのは、それが最後になった。

翌週末は満月で、その翌週はずっとエバンスがいて声をかけそびれ、その後もスネイプが現れなかったり僕が図書館に行けなかったりして、そうしている間にクリスマス休暇になった。休み明けのスネイプはいつにも増して思い詰めた感じで話しかけられず、その頃なると、こんな寒い時期に森に行こうと誘うのはおかしいんじゃないかと気遅れしてしまった。

それでも僕は、スネイプを見かけるたびに、林で垣間見た素直な表情を重ねながら空想をめぐらし、春になったら、温かくなるのを待っていたんだと言って、絶対また誘おうと思っていたんだけど。

春が訪れてまもなく、僕の人生を変える大きな出来事が起こった。それは僕が想像すらできなかった幸せなことで、現実に手にすると、孤独な心が描いた空想の世界の小さな明りなどかき消してしまうほどの、まばゆい光だった。

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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター スネイプ ルーピン

コメント

お久しぶりです^^

中々コメントする間がなく、
ひっそりと読ませて頂いてましたが;
セブ誕なので、久しぶりにコメントさせて頂きました^^

ルーピンシリーズも、ぼちぼちセブが絡んできて
テンションが上がりっぱなしです~。
毎回、丁寧な描写とセブの可愛さに悶絶してます。
これからジェームズ、シリウスとの対立シーンが増えてくると思うと、また切ないですが><

でも、すべてはメイン作品の
幸せな結末に繋がっていることに想いを馳せつつ
じっくり味わっていこうと思います^^

これからまだ寒い日が続きますので
体調に気をつけてくださいませ☆
続きも楽しみですが、無理の無い創作活動を^^

Happy Birthday

ミーシャ様♪こんばんは。
スネイプ先生の お誕生日の今日、物語の続きが読めて
幸せです(^^)
スネイプ先生が、皆さんの中に 存在している事が 嬉しいです。
今日は、先生loveの人達が、世界中で お祝いしているでしょう!

寒い日が 続きますが、ご自愛くださいませm(__)m

陰ながら 応援しています…(^^)

ソマリさん

お久しぶりです。
セブ誕コメント、ありがとうございます^^
セブ誕ってかわいい響きですね、セブタン。

ジェームスやシリウスがらみは、どうしてもセブがかわいそうになってしまいますが、
ジェームスたちにもいいとこはあったでしょうし、
その後の運命考えると一概に憎めないのですけど、
状況によって、人って他人にすごく残酷になることがあるんですよね。
そして被害者にとっては被害甚大ですよね。

今日は関東、ほんとに寒い!全国的にそうなのかな。
ソマリさんもお体気をつけてくださいね。

ドラゴンさん

スネイプ先生のお誕生日までには、
なんとしても今年最初の創作UPと頑張りました^^
世界中、たくさんの人の心の中に先生がいて、
愛をこめてお祝いしてると思うと嬉しいですね♪
先生ご自身は、
「我輩はもう年をとるのは嬉しくない」
とかひねくれてるかもしれませんが^^;

この冬一番の寒さのようですが、
ドラゴンさんもご自愛くださいませ。
応援ありがとうございます。

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