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(過去2)リーマスの物語9

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

ゴドリックの谷にあるジェームスの家は、間口はこじんまりとしていたけど、中に入ると奥行きがあって、外で見るよりずっと広い家だった。家というより小屋みたいなとこを転々として育った僕には比較なんかできないけど、たぶんすごく立派な部類に入ると思う。

招き入れられた部屋には、グリフィンドールカラーの真紅と黄金のタペストリーが飾られていた。

「ポッター家は代々グリフィンドール寮なんじゃよ。」

ジェームスのお父さんとお母さんも歓迎してくれて、なにかと話しかけてくる。ジェームスは遅くにできた一人息子だそうだから、2人ともずいぶん年配で、ジェームスの祖父母といっても通るくらいだ。壁には幼い頃からのジェームスの写真がたくさん並んでいて、溺愛ぶりが伝わってくる。お母さんは子供の頃のジェームスの話をしはじめて、生まれた時には天使が舞い降りたと思ったのだとか、2歳の頃にはもう箒に乗れたのだとか、尽きることなく話す。一見いかめしそうなお父さんも、ジェームスの話になると嬉しそうに目を細めていた。

「母さん、父さん、僕のだいじな友達を、いい加減解放してよ。バタービールとつまみ、僕の部屋に持ってきて。あとジュースもね。」

そんなジェームスに、お母さんは嬉しそうにうなずいていた。可愛い一人息子の言うことならなんでも嬉しいみたいだ。少し呆れながらジェームスの部屋に行くと、シリウスとピーターも来ていた。学校ではいつも一緒だけど、こうして集まるとなんか新鮮ではしゃいでしまう。僕がマグルの世界の話をするとみんな大喜びで、シリウスは絶対マグルのバイクを買うんだと騒ぎたてた。すごいスピードの出る乗り物で、時速150kmでぶっ飛ばしたら箒よりクールなんだそうだ。

ひとしきり盛り上がった後、ジェームスに促されてみんなで庭に出た。裏庭の芝生の向こうに広がるちょっとした林まで来ると、3人が僕に向かいあうように立ち止まった。

リーマス、君に見せたいものがあるんだ。」

3人が顔を合わせて笑ったと思うと、すっと姿が消えて。

僕の前には大きな牡鹿と、同じくらい大きな黒犬が現れて、それから小さな鼠がちょろちょろと走って黒犬の背中に乗った。牡鹿と背に鼠を乗せた黒犬は、少し走り回って僕の隣に戻ってきた。僕が目を丸くしていると、牡鹿がジェームスに、黒犬がシリウスに、小さな鼠がピーターに姿を変えて立ち上がった。

「すごい、君たち!今のはアニメーガス?」

「そうだよ、リーマス。君が人狼だとわかってから、ずっと練習してたんだ。満月の夜に君を一人にしたくなくてね。」

「ずいぶん時間はかかっちまったけどな。これからは一緒に森を走れるぜ。」

「難しかったけど、ジェームスやシリウスに助けてもらって、僕もやったよ!」

「ありがとう・・」

僕自身がなかば投げやりに見捨てて、できるだけ考えないようにしていた満月の夜の僕のことまで思いやっていてくれたなんて。動物の姿にかわるアニメ―ガスはすごく難しいし危険な魔法だ。魔法省に登録する必要もある。登録されたアニメ―ガスはほんの数人しかいない。ジェームスたちは登録してないから非合法なわけだけど。人狼の僕なんかのためにそれを成し遂げてくれたんだと思うと、胸が熱くなって言葉が続かなかった。

それからしばらく、アニメ―ガスができるまでの苦労話が続いた。僕の正体を知ってから、ジェームスとシリウスはどうしたら変身時の僕と一緒にいられるか考えて、アニメ―ガスを思いついたそうだ。古い名家のブラック家とポッター家の豊富な書籍を読みあさって密かに練習を重ねたという。

アニメ―ガスは単純に呪文を唱えればできるわけではないし、失敗すると人間の姿に戻れなくなったり、一部だけ動物の形態になったりする危険もある。実際、何度も試みて、ようやく変身らしきことができたとき、シリウスは足裏だけ犬の肉球になって、しかも数日そのまま戻れなかったそうだ。シリウスはクッションみたいだったと豪快に笑っていたけど、苦労がしのばれて、また胸が熱くなる。

次の満月には、日暮れ前に4人で深い森に行き、その後僕の狼と3人のアニメ―ガスで、一晩中森を駆けまわったらしい。僕は3人が動物に姿を変えたのを見届けて、少し離れた大木の影で服と杖を置いて空を見上げたとこまでしか覚えてないんだけど。

大きな黒犬の鼻先につつかれて気がつくと、夜が明けていた。いつもの関節のきしみこそ感じるものの、咬み傷の一つもない。もちろん打僕や流血もなくて、、、爽やかな気分だ。木立に囲まれた草むらに座りこんだ僕の周りで、牡鹿と黒犬と鼠が人の姿に戻った。

「俺たち、森の王者だったんだぜ。リーマス、すげーよ。森の怪しい生き物がみんな、おまえの姿を見て道をあけるんだからな。」

シリウスが興奮した声で言い、僕の隣に寝転がった。

リーマス、とりあえず服着ろよ。」

ジェームスに服と杖を渡されて、僕もあわてて服を着て、4人並んで草むらに寝転がった。見上げる空に夏の朝が明けてゆく。澄んだ空気がキラキラときらめいて、まぶしさに目を閉じると、今まで幾度となく繰り返してきた満月の夜のことを思い出した。

訳も知らぬまま地下室に入れられて、去っていく母さんや父さんを泣きながら見送った幼い頃。叫びの屋敷の陰気な壁。体中の痛みと生臭い血のにおいに目覚める朝。大きくなっていく夜空の月を見上げる絶望と孤独。

それが今朝は仲間に囲まれて・・・。胸にこみ上げる思いを上手く伝えられたらいいんだけど。

「ありがとう、僕のために。こんなふうに満月を過ごせるなんて、思ってもみなかった。」

「もっと早く出来たらよかったんだけどね。今まで一人でつらかっただろう?これからはいつでも一緒さ、リーマス。」

ジェームスの言葉をきっかけにみんな体を起して座りこむ。僕の肩を軽くつついてきたシリウスに寄りかかりながら、その心地よさに涙ぐみそうになった。

「君たちったら・・。ジェームス、シリウス、ピーター、ほんとに、ありがとう。」

「おまえが一番つらい時に一人で閉じ込めておいたりしないさ、俺たち仲間だもんな。」

リーマス、僕たちだって君といられて楽しいんだよ。ところで、その呼び方だけど。」

「え?」

「僕たち、今や無敵のアニメ―ガスなんだ。まあ君はそうじゃないにしても。」

「ジェームスは立派な角を自慢したくてしょうがないわけだ。」

それからみんなで、僕たちだけの秘密に相応しい名前を持とうということになった。ジェームスは牡鹿の立派な角にちなんでプロングス。大きな黒犬のシリウスは、足裏の肉球をあらわすパッドフット。鼠のピーターはちょろちょろ動く尻尾がキュートだということでワームテールと決まり、一人残った僕を3人がにやにや見ている。

「やめてくれよ、ウルフとかそうゆうの。僕の場合は洒落にならないから。」

あせって言うと。

「かっこいいと思うけどな、狼が気に入らないなら・・毛むくじゃらにちなんでファーリーとか?」

「でも今や全員、毛むくじゃらじゃね?」

「ムーニーは?」

「お、ピーター、それいいな。ムーンでルーニーのムーニーだ!」

「やあ、ムーニー。」

「なんだい、パッドフット?」

あとはもう、新しい呼び名で呼び合うだけで嬉しくなって盛り上がった。僕たちだけの秘密の名前。僕たちだけの秘密の姿。僕たちだけの秘密の夜。

「プロングズの名にかけて、僕はここに一生の友情を誓う。」

ジェームスが重々しい声で言って手を差し出すと、皆口々に友情を誓い、手を重ねた。胸苦しく感じられるほどの高揚感に包まれて、僕はこの友情を絶対守り抜きたいと思った。望むことさえあきらめていた真の友情を、手放すことなどできるもんか。一瞬スネイプのことが頭をよぎった気がしたけれど、それは形を為す前に胸の奥底に封じ込めた。

ジェームスの家に戻ってひと眠りし、食事をご馳走になった後は、別れがたい気分でおしゃべりに講じた。クィディッチや勉強の話、いたずらのアイデア、そして闇勢力の台頭の話になると、、、陽気なシリウスが顔を曇らせて、呟くように言った。

「ジェームスんちはいいよな、まともな親で。ああ、俺、家に帰りたくねえ。」

「君の家は、まあ、純血の誇り高きブラック家だからな。シリウス、また何かあったのか?」

「夏休みに帰るなり、大げんかさ。俺の親、がちがちの純血主義だからな。俺のことをバカだのなんだの言うが、俺に言わせりゃあっちの頭にカビが生えてるとしか思えねえ。まあそれはいつも通りと言えるんだが、レギュラスのバカが、、、。」

「レギュラスって君の弟の?スリザリンの1年下だよね?」

「ああ、俺と違って、おふくろのお気に入り。親の言うことを疑いもせずに信じ込んで育った。素直なだけで、大きくなったら話せばわかると思ってたんだが、純血主義にくわえて、従姉のベラの影響かヴォルデモートに憧れてる。夏休みの初めにマルフォイ邸の集まりに招かれたと舞い上がってたから、バカなことはやめてよく考えろと諭してたら、おふくろが口出して騒ぎたてた。そこうしてるうちにベラが乱入して俺に闇の魔法をかけてきてな。屋敷内で乱闘だぜ。まったく、やってられねえっつうんだ。」

こういう、名家ならではの悩みみたいな話になると、僕は驚いて聞いているほかない。庶民的な家のピーターも目を丸くするばかりで、結局はジェームスとシリウスの2人で話が続いていく。

「それはたいへんだったな、シリウス。うちにいたければ、もっといればいい。父さんも母さんも、僕の友達ならいつだって歓迎する。」

「ありがたい。恩に着るぜ、ジェームス。」

「それにしても、マルフォイ邸の集まりとなると、純血主義のスリザリンが集まって善からぬ相談でもしてたんだろうな。」

「純血主義万歳とか言ってたんだろ。ほとんどが卒業生や上級生だったそうだが、スネイプも来てたらしいぜ。下級生ではスネイプ先輩と僕だけが特別に招かれたんだと喜んでやがって、ほんとレギュラスときたら、バカでどうしようもない。よりによってスネイプなんかと一緒にされて喜んでるとは。最悪のバカだ。」

「ブラック家の影響を受けた君の弟には同情の余地があるけど、スネイプはマルフォイの目につくほどに、自ら好んで闇に傾倒しているんだからな。許せないヤツだ。」

家族との諍いのいら立ちをスネイプにぶつけるようなシリウスと、スネイプの名が出ただけで憎らしげに顔を歪めるジェームスを前に、こみ上げそうな苦い思いをあわてて胸の奥に封じ込めた。そして胸の奥深く、幾重にも封じた小さな想いに別れを告げる。

スネイプ、もう終わりだ。君への共感も、結びたかった友情も、あの雪の林の岩陰で、一度だけ抱きしめた痩せた体への思慕も、すべて終わりにする。昔わずかに垣間見た溶けるような笑顔も、君が吸血鬼かもなんて思った愚かしい子供の頃の空想も、全部忘れる。君が受けた嫌がらせになすすべなく目を背け続けた卑怯な自分への苦い思いと共に。だって・・・。

だって僕はジェームスとシリウスの友達なんだ。僕が君への思いのために、内心非難し続けていた何年もの間に、彼らは僕のためにアニメ―ガスの術に取り組んでいてくれた。彼らも君も、僕自身も裏切り続けるなんて、僕にはもうできない。君が言った通り、両方の味方なんてできないのだから、僕は彼らを選ぶ。僕は彼らの友情に報いたい。だからスネイプ、僕はもうすべて終わりにする。もともと僕だけの、空しい一人相撲だったんだし・・・

「どうしたの、リーマス、ぼんやりして?」

声をかけられて我に返ると、3人が僕の顔を覗き込んでいた。

「いや、ええと、、友達っていいなと思ってたんだ。」

焦って答えて笑顔を向けると。

「なんだよ、今さら。」

「俺たちはかたーい友情で結ばれてんだぜ、ムーニー。」

みんな、また秘密の名を呼びあって笑い転げた。僕も顔をくしゃくしゃにして笑いながら、心の中で思う。僕には友達がいる。忌まわしい人狼の呪いをも、ともに受け止めてくれる仲間たちが。この友情が、僕のすべてだ。


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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター リーマス ジェームス シリウス スネイプ

コメント

友情が勝った…↓

ミーシャ様 こんにちは♪
原作でも思ったのですが、よくこの3人が アニメーガスになれたな~って!
首席で 変身術が得意な(杖からの想像ですが)ジェームスは 解るとして、まぁ 偉大なるブラック家に生まれたシリウスも 解るとして、ピーターが…
あ~でも リータ・スキーターも コガネムシになれたっけ。

いやいや そんな事より、セブルスより 3人を選んでしまったのよね。もっと セブルスと 魂の触れあう機会が たくさんあったなら、違う選択も出来たのに…
やはり 寮が違うと 物理的に 離れてしまうし、負い目のあるリーマスとしては、仕方ないよね。
でも 切ないです(・・、) セブルスもリーマスも…

お久しぶりです。更新ありがとうございます‼︎
更新に気づいて飛び上がりそうに嬉しくなりました^ ^
四人の友情物語を読んでいますと、all for oneな友情に胸が熱くなりました。本当の友情って美しいですね。
賢者の石のハーマイオニーの台詞に、「勉強より大切なものがあるじゃない。友情とか、勇気とか…」みたいなのがありましたが、本当にその通りだなぁ…としみじみ^ ^
まさかあんな悲劇に終わるなんて思っても見なかっただろうな…と考えると本当に切なくなってしまうのですが。
ミーシャさんの文章の深さと読みやすさにはいつも感嘆させられます。

最近もまた最初の方の記事を読み直していましたが、日付をみてびっくり。もう二年も経つなんて…
この記事のファンになって一年半くらいでしょうか。偶然見つけたときから虜になりました(笑)
厚い本にできそうなくらいに、ここまで充実した内容になったなんてびっくりです。
長くなりましたが、これからもよろしくお願い致します。

ドラゴンさん

コメントいつもありがとうございます^^

たしかに、よくこの3人、アニメ―ガスになれましたね。
何年もかけてのことなので、思いの強さってことでしょうかね~
ピーターはリーマスへの友情もあったでしょうが、それより特別な2人の仲間でありたい一心で頑張ったんじゃないでしょうか?
後に、ピーターがアニメ―ガスを利用してシリウスを陥れ、10年以上生き延びた事を思うと、頑張った甲斐があったというか、友情の皮肉な結末というか。

リーマスは温厚で苦労人だと思うので、寮の違いやジェームス・シリウスxセブの不仲がなければ、難しい(^^;)セブルスともそこそこ仲良くなれただろうと思うのですが。つらいとこですが、リーマスとしてはやむを得ない選択だったと思います。

RENさん

お久しぶりの更新となりましたm(__)m

セブルスへの仕打ちとか、それぞれに欠点はあったにしても、この時期の4人の友情は、純粋で美しいものだったと思います。
ハーマイオニーの台詞、、、私もしみじみそう思います。
そんな大切なものを、4人はたしかにその時手にしていたのに・・・その後の悲劇を思うとほんとに切ないです。
セブ可愛さのあまり、つい憎らしく思ってしまうグリフィンいたずら坊主たちですが、今回4人の姿を思い描いてみたら、切なさが募りました。

この4人+セブ・リリーの結末は、儚くて苦くて、それがハリポタの物語に深みを加え、あとを引く原因でもあるのですが、
もう2年も経っていたとは!!
自分でもこんな長作になるとは思ってもいませんでした^^;
長いことおつきあいくださり、ありがとうございます♪

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