スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(過去2)リーマスの物語10

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)


夏休みの後半にはホグワーツからふくろう便が届く。新年度の知らせと必要な教科書リストだ。今年はもう一枚羊皮紙が入っていて、、、それは僕がグリフィンドール寮の監督生に選ばれたという手紙だった。封筒を逆さにすると、監督生のバッジも入っていた。

母さんは僕が恥ずかしいくらい喜んでくれたし、父さんは僕のことを誇りに思うと褒めてくれた。その日の夕食はささやかながら母さんの心づくしのお祝いの料理が並んだ。

監督生に選ばれるのは、だいたい成績のいい模範生だ。寮生の模範となって下級生や他の寮生を指導したり、必要なら罰則を与える権限もある。僕より成績のいいジェームスを差し置いて僕が監督生でいいのかとか、人狼の秘密を持つ身としてはちょっと重荷に感じられるとこもあるけど、やっぱり嬉しい。

新学期初めの日、ホグワーツ特急でジェームスたちに会ってこのことを話すと、みんなちょっと意外だという風を漂わせながらも、頑張れよと祝ってくれた。シリウスはスリザリンのヤツらをビシバシやっつけてくれ、あ、でも俺たちに罰則はなしで頼むぜとか言って笑ってたけど、ジェームスは口数が少なくて、少し気まずい。ジェームスだって、何でも一番の自分が監督生になるのが当然だと思ってただろうから。

でもそんなことをあれこれ考える間もなく、彼らとは別の、監督生専用のコンパートメントに集合した。5年生からは各寮男女1人ずつ監督生が選ばれることになっていて、グリフィンドールの女子の監督生はリリー・エバンスだ。エバンスと組になってホグワーツ特急を見回るのが監督生としての初仕事だった。

入学式で寮に組分けられてきた新入生の世話をしてあげるのも監督生の役割だ。僕がそうだったように不安で緊張している子もいれば、はしゃぎすぎて羽目をはずす子もいる。監督生として新入生を迎え入れ、校長先生の話の後に晩餐会が始まってほっとしていると、ジェームスが話しかけてきた。

「監督生は大忙しだね、リーマス。特急の見回り、ご苦労さん。で、エバンスはどんな感じだった?」

「え?エバンス?彼女は優秀だしきちんとしてるから、もちろん監督生としてもしっかりやっているよ。」

「それはそうだろうけど、つまり、僕のこと、なんか言ってたかな?」

ジェームスの少し照れたような言い方に、並みならぬ興味がうかがえて、つまりこれは本気ってことかとやや引いていると、シリウスが口を出して茶化してきた。

「つまり、エバンスが自分に気があるか知りたいってことだな、ジェームスは。」

僕はますます口ごもる。僕は人の気持ちに敏感なほうだから、ジェームスがエバンスを気にしていることには薄々気づいていた。エバンスは誰からも好かれているから、ジェームスが気に入ったって不思議はない。でもジェームスだってモテるんだから、よりによってスネイプと親しいエバンスを好きになってほしくない。それで気づいてないことにしてたんだけど。

からかうシリウスにそっぽを向いて、何気ない風に笑って僕を見るジェームスの目の奥に真剣さが感じられて、僕は内心ため息をついた。たしかにジェームスとエバンスはどちらも優等生の人気者どうし、美男美女の似合いの2人といえる。ただエバンスがジェームスを嫌っていることをのぞけば。

「いや、特に何も言ってなかったよ。監督生の役割とかそんな話しだけ。忙しかったしね。」

僕が答えると。

「残念だったな、ジェームス。」

「ふん、そのうち僕の魅力に気がつくさ。」

ジェームスがちょっと悔しさをにじませながらも笑って言ったから、その話は終わった。

だけどほんとのところ、一緒に見回りをしながら、僕はエバンスから、監督生なんだから、特定の生徒だけかばったりしてはダメよと釘を刺されていた。名前は出さなかったけど、あきらかにジェームスとシリウスのことだ。それは君にまかせるよと笑ってごまかしたら、キッと睨まれるおまけつきで。

僕はエバンスと親しいわけではないけれど、彼女のまっすぐな強さに憧れる。僕自身があきらめきってしまったスネイプのことを、彼女にはずっと見守っていてもらいたいと思っている。学年が進むにつれて、寮の違うスネイプとエバンスが一緒にいる姿を見かけることは少なくなったけれど、スネイプにとってエバンスが特別な存在であることにかわりはないと思うから。1年生の頃にスネイプがエバンスだけに心を許していたのを僕は見て知っているし、その後スネイプが他の誰かと心を結べるほどの社交性を持っていたとは思えない。

異性への興味が募る年頃になって、2人の間に恋愛感情が芽生えているのかはわからないけれど、スネイプの人間関係というのはもっとずっと幼児的な、根源的な段階に留まっているように思えた。つながる術を見いだせず、身を守るために1人身構えて、ただ生きるだけで必死だ。それは信頼できる友を得る前の僕の寂しさや心細さを投影しているだけかもしれないけど、快活で友達の多いエバンスとスネイプを思うとき、暗い道を母親の手にしがみついて歩く幼い子供を描いてなんとも切なくなる。

スネイプも3年生のときには上級生と、最近は何人かのスリザリン生と一緒にいるのを見かけるけれど、いつだってどこか周りから浮いているぎこちなさが漂っていて、スネイプがエバンスといた時や、僕が仲間たちといる時みたいな幸せな一体感は感じられない。

スネイプのエバンスへの思いが何と呼ばれるものかは定かでないけれど、スネイプにとってエバンスが変わることないオンリーワンの存在であることは間違いなく、そのエバンスがジェームスのナンバーワンになってしまうことは、なんだかとても不運で哀しいことに思われた。

エバンスがあんな美人で優秀で人柄もよい女の子でなければよかったのに。それでもスネイプはエバンスを慕うだろうけど、それならジェームスが彼女に惹かれることはなかったかもしれない。ただでさえ相性の悪いジェームスとスネイプの間に、双方か一方的にかわからないけど、恋敵の感情までも混じってくれば、一体この先どんな不幸が起こるかと思うと、、、

とここまで考えて、我に返った。何考えてるんだ、僕は。スネイプのことはもう忘れることにしたんじゃないか。浮かんでくるもやもやは、胸の奥底につくった小さなスネイプの箱に放りこんで考えないことにする。

この避難的ともいうべき対応は、わりとうまく機能した。5年生は科目も宿題も増えて忙しいし、監督生の役割もあり、気持ちを他に向けやすい。それに、夏休みにアニメガスの術を完成させた仲間3人と僕は、新しい楽しみを見つけていた。

それは、ホグワーツの隅々までを探検し、隠し通路や秘密の場所まで含めた地図を完成させること。そしてその時誰がどこにいるか浮かび上がるようにする。ジェームスが言い始めて、僕たちはみんなそのアイデアに夢中になった。完成したら、仲間4人の勇気と冒険の証しとし、『忍びの地図』と名付けて、僕たちだけが使える秘密の地図にする。

すでにジェームスの秘密マントを使って先生たちや用務員のフィルチさんの後をつけたりして、ホグワーツ城内はかなり探検ていた。これからは動物の姿になって、城外の敷地も思う存分探検できる。これにはもちろん、夜こっそり外に脱け出して徘徊するという校則違反行為も含まれる訳で、模範生たる監督生としてまずい面もあるけれど、校則違反も勇気のうちと言われて納得してしまった。

こんなふうに楽しみが勝って過ごすうちに、満月がやってきた。僕はいつものように、マダム・ポンフリーに連れられて叫びの屋敷に行き、外からしっかりと施錠してもらっていつもと同じ憂鬱な変身の時を迎えたのだけど。

湿った何かに顔をつつかれて気がつくと辺りは明るく、目の前にまっ黒な犬の鼻があった。え!っと驚いて体を起こすと、ここは・・・。

「ほら、君の服。ポケットに入れて持ってきた。」

鹿がジェームスの姿に戻って、服を渡してくれた。アニメガスは身につけた物そのまま姿を変えられるけど、人狼にそんな自由はない。まったく僕だけ裸なんて。急いで服を着ながら、前夜のことを問いかけようとすると。

「話は後で、ムーニー。見つからないうちに早く戻ろう。」

ジェームスと僕と、鼠を乗せた黒犬とで、林をかけぬけて暴れ柳の下まで来た。

「最高の夜だったな!」

人の姿に戻ったシリウスがウィンクしながら言う。だけどウィンクしてる場合じゃない。

「ねえ、君たち、どういうこと?まさか僕を叫びの屋敷から連れ出したの?」

「見ての通り、そういうこと。」

説明によれば、昨日の夜皆が寝静まってから、仲間3人は寮を脱け出してアニメガスに姿を変え、僕が変身した狼を叫びの屋敷から連れ出した。一晩一緒に禁じられた森を駆けまわり、月が沈んで僕が人の姿に戻ったということらしい。

「冗談じゃないよ。狼に変わった人狼を外に放つなんて。そんな危険なこと。」

「まあ、ムーニー、落ち着けって。危ないことなんか何にもなかったぞ。」

「僕たちが今まで何してたと思う?昨日の夜に備えて、ちゃんと安全な場所を確認してあったんだ。僕たちがアニメガスになったのは、満月の夜に君と一緒にいるためなんだから。」

「だけど、狼が勝手に走って行ったら?」

「それは大丈夫。シリウスはともかく、パッドフットは頼りになるんだ。もちろんプロングスもね。」

「万一ムーニーが暴れたら、俺たちが体をはって留めてやるから心配いらねって。それにな、言葉は話さなくても、動物どうしはなんか意思疎通できんだぜ。特に同じイヌ科のムーニーとパッドフットはな。ムーニーだってご機嫌だったさ。」

「リーマス、今の君を見てみろよ。傷一つなく、目覚めるとともにここまで走ってきたじゃないか。」

「今までさ、満月の翌日のボロボロのおまえを、俺たちが平気で見てたなんて思わねえよな?」

そう言われればたしかに、多少関節のあちこちにきしみを感じるにしても、叫びの屋敷で迎えた朝の、疲れ切った傷だらけの体とは全然違う。なんというか、満足した爽快感さえ感じられて。

「そういうわけさ。とにかく朝食の時間までひと眠りしよう。君はいつも通り医療棟に行けよ。マダム・ポンフリーが待ってるだろ?」

医療棟に行って、いつものように傷の手当てをというマダム・ポンフリーに、変身に慣れたせいか怪我はないから休むだけでいいんですとか言って、ベッドにもぐりこんだ。

僕のためにここまでしてくれる仲間への感謝と、変身した狼が万一にも人を傷つけたらという不安と、これは人狼の僕をホグワーツに迎えてくれたダンブルドア先生の信頼を裏切ることになるという罪悪感と、さすがに度を超えた規則違反じゃないかという反省と、頭に浮かぶ様々な思いを整理して今後のことを考えるべきだと思ったけど、心地よい眠気に誘われて一切を放棄した。

夕方になって寮に戻ると4人で集まって、昨日は無敵の狼もいたからいつもより奥まで行けたとか言いながら、忍びの地図に、ハリネズミの巣穴集落とか、毒蜘蛛の洞窟とか、この先ケンタウルスの聖地とか書き加えていった。僕が、え、そんなとこまで行ったのと驚くと、3人はその時々の話を詳しくしてくれた。それは記憶がないのが残念に思えるほどワクワクする冒険談で、その楽しさと、満月をともに過ごしてくれる仲間の友情への感謝とで、変身時に外に出るという禁忌を、僕はあっさり超えてしまった。

 にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター ムーニー

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。