スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(過去2)リーマスの物語11

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)


そんな感じで、5年の初めの数か月、僕は心地よい仲間との一体感に身をまかせていた。浮かれ気分だったと言ってもいい。もちろん監督生として、ジェームスたちの校則違反を見逃しているばかりか、一緒になって満月の夜に外を駆けまわっている罪の意識はあったけれど、心を尽くして寮の年少者の世話をすることで埋め合わせたことにした。それで思いがけず、頼りになる優しい先輩などと下級生に慕われたりして、まんざらでもない。

だけど、物事にはやっぱり限度というものがあるわけで、ある日寮監督のマクゴナガル先生に呼ばれて、いたずらが過ぎるジェームスとシリウスを、監督生としてなんとか諫められないものかと注意された。スリザリン生に対する度を越した悪ふざけという言葉で、スネイプへの態度も指摘された。一緒に呼ばれたエバンスからも非難がましい目を向けられて、僕としてはうなだれるしかない。

アニメガスの冒険で調子づいていたのは僕だけじゃなくて、ますますパワーアップしたジェームスとシリウスは、いたずらも激しくなっていた。魔力もアイデアも抜群な2人だから、誰かのペットのふくろうが鶏に変わってたり、廊下を歩く生徒の靴が突然滑りだして衝突が起こったり、魔法薬学の授業であちこちの鍋から花火が上がるなんていうことはしょっちゅうだ。笑えるものも多いんだけど。

笑えないのは、スネイプに対する嫌がらせだった。僕は監督生の立場を利用して、できるだけ関わらないようにしていたけれど、闘いの顛末はよく聞かされたし、不本意ながら立ち会ってしまうこともある。2人のスネイプへの憎しみは、もはや闇に傾倒していることに留まらず、シリウスは煮詰まった純血主義の家族との諍いのいら立ちまでもスネイプにぶつけている感があるし、ジェームスはスネイプとエバンスの交友が気に入らないと殺気立っている。

スネイプもスリザリン生と行動を共にすることで狙われるのを避けているようだし、やられるばかりでなく闇魔術紛いの新しい術まで駆使して反撃する。それでもやっぱり、複数対1人では、圧倒的にスネイプの分が悪かった。僕の胸の奥底のスネイプの箱には、目をそむけて放り込んだスネイプの惨状がどんどんたまっていって、もう恐ろしくて今さら封印を解く気になれないほどだ。

だけど、先生も手を焼くほどのジェームスとシリウスの振る舞いも、スネイプやスリザリンを除く生徒たちには喝采を浴びていた。それは、2人が圧倒的に人気者だからだと思う。ジェームスはクィディッチのヒーローで勉強も出来て、茶目っけのある陽気な笑顔には笑顔を返さずにいられない明るさがあるし、シリウスは名門貴族の美形だから、近くで見てると粗野と思えることまでも、かっこいいということになるのだった。

不公平なことだとは思うけど、人は往々にして、何をしているかという事よりも、誰がしているかで物ごとを判断する。ジェームスやシリウスがすることなら、いたずらは才能、校則違反は自由や勇気の証と評価されるのだった。割と単純な性格のシリウスはともかく、頭のいいジェームスはそのことを充分にわかっているようで、向けられる称賛の目を意識して、わざと髪をくしゃくしゃにして茶目っけを演出したりしている。

多くの生徒が2人に憧れ、僕も受け入れていたけれど、そんな周囲の雰囲気と、悪意に満ちたしつこい嫌がらせ、そして先生たちさえ手をこまねいていることが、スネイプを追い詰めたのかもしれない。やがてスネイプは僕たちを探る気配を見せるようになった。

ジェームスとシリウスも気がついて、スネイプは僕たちの動向を探って、弱みを見つけて退学させようとしてるんだと決めつけた。そんな卑怯なスネイプのほうこそ、逃げ出したくなるくらい痛めつけてやるんだと息巻くのをきいて、僕はスネイプと僕たちとの関係が、同じ校内にいることが難しいほどの最悪の事態になりつつあると感じはしたんだけれど。

それでも僕は目をそむけ、なかば投げやりに、スネイプのことは胸の奥に放りこんで封印し続けた。状況に目を向ければ、僕自身が選んだ真の友情に背くことになってしまう。言い訳めくけれど、僕にはそれほどに、アニメガスになって満月の夜を共に過ごしてくれる仲間がありがたかった。

いけないことではあるけれど、変身した満月の夜に彼らと外に出るようになってからの心身のさわやかさは、手放しがたいものがある。叫びの屋敷に閉じ込められた狼の鬱憤は、体に残る自傷の跡だけでなく、変身前後数日にわたり、心に重く圧し掛かっていたようだ。それが解放されてみると、日々積み重なるわだかまりも不穏な予感も、外を駆けまわる満月の夜が過ぎるととりあえず一掃されてしまい、なんだか根拠なく楽観的になった。閉じ込められた動物が外を走ってストレスを解消するような、すごく単純な反応なのかもしれない。根本的な解決にはほど遠いわけだけど。

そんなふうに、不穏な気配を感じつつ、さしてそれにとらわれることなく、僕としては珍しいほどに明るい気分で毎日を送っていた。あとで考えれば、僕たち4人とスネイプとの関係は、長年の憎悪が吹きこぼれるほどの危うさをはらみ、それはやがて一番弱い鎖のつなぎ目を見つけて噴き出す機会を待っていたのだった。そして僕こそが、一番弱い、危険な鎖だった。

その満月の日の夕方、仲間たちの、あとで行くからな、また一緒に森を駆けようという意味を込めたウィンクに軽く手を振り返し、僕はいつものように叫びの屋敷に向かった。もう慣れたことではあるし、ここ数カ月は自らを苛むこともなくなったから、以前ほど陰鬱にしずむこともなく、ただ面倒な月例行事をこなすような気持ちで歩く。

医療棟のマダム・ポンフリーに連れられて暴れ柳の下を通り抜け、いつも通り屋敷の外から扉に施錠してもらった。翌朝僕が出られるように、扉は中からも鍵を開け閉めできるけれど、やさしくて責任感の強いマダム・ポンフリーは、入学以来、毎月僕に付き添って来て、施錠を確認してくれる。

それを裏切るみたいで悪いんだけど、この数カ月は夜になるとこっそりジェームスたちが動物の姿でやってきて、狼を外に出してくれるわけで。ほんとはまずいんじゃないかと、まったく思わないわけでもないけど、何回か無事に満月が過ぎてみれば、狼をうまく飼いならせたような気さえした。狼の咆哮が漏れなくなった今、叫びの屋敷って名前もかわったっておかしくないと思ったりして、自分ながらいい気になってる気がする。でもこれもみな、仲間たちのおかげだと思い、じんわりと胸が熱くなった。

屋敷の中でそんなことを考えているうちに、鉄格子のはまった小さな窓の外が暗くなった。僕は服を脱いで部屋の隅にうずくまる。前に比べたらずっとましとは言っても、やっぱり、その瞬間を迎えるのは気が重い。僕が僕でなくなる心許なさ、頭を抱えてやり過ごすしかない恐怖と苦痛。ため息をついてぎゅっとひざを抱き寄せた。もう月が出るころだ。僕がけして見ることのない、大嫌いな満月が。

そのとき。

扉の外に人の気配を感じて、息をのんだ。鋭敏さを増した嗅覚が捉えたのは、、、スネイプのにおい?スネイプがなぜここに?そしてかすかにきしんで扉がわずかに開く。なぜ?

思う間もなく、体の奥から止めようのない不快なざわめきが湧きあがった。吐きそうな怖れと苦痛に身をよじりながら、必死で叫んだ。

「逃げて!早く逃げて!」

叫んだつもりだけど、体はめりめりと音を立ててうごめき、何もかも、僕のすべてをかき消すほどの衝動が突き上げて、もう何がなんだかわからない。叫んだのか、吠えたのか。留まりたいのか、捕えたいのか。

獲物だ!・・・肉だ!・・・走れ!

はやり立つ獣の雄叫びに飲み込まれ、消えゆく意識の片隅に、扉の小さな窓の向こうのスネイプの顔が、驚きと恐怖に歪むのが見えた。



狼は、スネイプの細い体を組み敷いていた。たくましい前足が震える肩を抑え込み、金色に光る眼は怯える獲物の顔に向けられている。獲物の怯えを楽しむかのように舐めまわし、鋭い牙が白いのど元に食らいつく。声にならない断末魔の叫び。ほとばしる血しぶきを浴びながら、腹を、腕を、むさぼるように食いあさる。肉がそぎとられ、骨が砕け、失われてゆく、人の形。やがて顔を上げた狼の口元に、べったりと滴る真っ赤な血・・・

「リーマス、リーマス」

肩をゆすぶられて目を開くと、ぼんやりと、マダム・ポンフリーの顔が見えた。マダム・ポンフリー?ここは?スネイプは?

「リーマス、気がついたのですね。ひどくうなされていましたよ。」

「僕は、、」

もうろうとして、ただ一つの質問だけが繰り返し頭をめぐる。

ボクハ、スネイプヲ、コロシテシマッタノデスカ?

言葉にならない。体の傷のせいか、取り返しのつかない真実を告げられるのがこわいからか。

「リーマス、可哀そうに。ひどい怪我をしたのです。傷だらけで、血だらけで、高熱にうなされて。」

やさしくて、何があっても落ち着いているマダム・ポンフリーが、涙ぐんで僕の頬を撫でてくれた。僕のことを心配して。

ごめんなさい、マダム・ポンフリー。ずっと僕の面倒を見てきてくれたのに、僕はそれに応えられなかった。僕は、その優しさに値しないんです。だって僕は、スネイプを食い殺してしまった。・・・僕が死ねばよかったのに。僕なんて、生きているべきじゃなかった。

ただ見つめるばかりで何も言えない僕に、マダム・ポンフリーは小さく息をついて言った。

「もうすぐダンブルドア先生がおみえになります。あなたが目覚めたらお話があるとおっしゃっていました。」

すぐにダンブルドア先生が医療棟に着き、マダム・ポンフリーは僕の状態を説明して出て行った。

「ミスター・ルーピン、怪我は落ち着いたかの?意識が戻って何よりじゃ。」

「ダンブルドア先生、スネイプは?スネイプはどうなったんですか?」

「ミスター・スネイプは無事じゃ。安心しなさい。」

胸をなでおろして、気が緩んだせいか、涙が出てきて止まらない。僕を見るダンブルドア先生の顔が少し和らいだ。

「ミスター・スネイプは傷一つ負っておらん。驚きはしたようじゃがの。ミスター・ポッターが気がついて、寸前のところで助け出した。それからすぐわしの所に報告に来たのじゃ。」

ジェームスがスネイプを助けたのかと怪訝な思いが顔に出たのか、ダンブルドア先生は昨日の出来事を順を追って話してくれた。それによると。

昨日の夕方、僕が暴れ柳に向かうのを、スネイプは物陰から見ていた。後をつけようとしたけど暴れ柳が暴れてかなわず、そのまま見張っていたらしい。それに気づいたシリウスは、つきまとうスネイプを懲らしめようと、薄暗くなる頃に、暴れ柳の抑え方をわざとスネイプに見せた。そしてスネイプがその通り、暴れ柳の根元のこぶを抑えて通路を抜け、叫びの屋敷に着いたちょうどその時、月が上がり僕の変身が始まってしまった。シリウスの様子から気づいたジェームスが、身の危険を顧みず助けに向かい、寸前のところでスネイプを外に逃がして事なきを得たということだ。

ジェームスから報告を受けたダンブルドア先生は、シリウスに罰を与え、2人とスネイプにこの件に関していっさいの口外を禁じた。

だから僕は何も心配することはないという。人を襲った人狼は、殺処分を含む厳罰に処されることになっているけれど、事件も僕の正体も公になることはないから、僕は何も心配せず傷をなおし、今まで通り学校にいればいいんだと。

「でも先生、あんな目にあったのに、スネイプはそれで納得してくれたんでしょうか?」

「最初は興奮していろいろと言っておったがの。じゃが事が公けになればおまえさんが酷い目にあうことは理解したようじゃし、そんなことはわしが許さんこともわかっておる。きつく言ってあるから約束は守るはずじゃ。心配はいらん。さあ、わしはもう行くからもう休みなさい。マダム・ポンフリーが世話をしてくれるじゃろう。」

そう言ってダンブルドア先生は部屋を出て行った。


 にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター 暴れ柳

コメント

獅寮の二人…

ミーシャ様♪こんばんは。

セブルスのホグワーツ時代は、辛い事が多いです。
特に 5年生は…
セブルスloveゆえに、ジェームスとシリウスに対しては、平常心では いられません。リーマスには、ちょっぴり贔屓してしまいますが…
ワームテールは、論外です(TT)

包み隠さず言えば、リリーも 嫌いです。
傲慢 ジェームスを 選んだ事で!
(あぁ~嫉妬の感情が含まれます…)

なんで セブルスが 辛い思いをしなければならないのか…
悔しくて 仕方がないです(TT)

ふぅ~…熱くなってしまいました。

次の更新 楽しみに待ってます(*^^*)

ドラゴンさん

こんばんは。
コメントありがとうございます♪

セブLOVEだとどうしても、親世代グリフィン坊主たちは腹立たしいですよね。その後を考えるとはかなくもあるのですが。

リリーについては、悪く思いたくないですが、なぜジェームスを選んだかは納得いかなくて。ジェームスが愛の妙薬とかフェリックス・フェリシス使ったかと思ったこともあります^^;

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。