スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(過去2)リーマスの物語13

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

その後、僕はあの事件で噴き出した様々な辛いことを、くよくよと考え続けずにはいられなかった。しかも日が経つにつれて、シリウスが不用心にその話をするのを聞かれるとか、あるいはスネイプがあまりの成り行きに腹を立てて口走るとか、そんな小さなきっかけで僕の正体が皆に知られるんじゃないかという不安に囚われてしまい、息苦しさが増していった。直接の関係者でなくたって、事件の中核、つまり、ジェームスが何からスネイプを救ったのかと興味を持って探り出す生徒がいないとも限らない。

窒息しそうな怯えに身をすくませたまま、いや、だからこそ、内心信じられなくなった仲間たちの顔色をうかがい、上辺を取り繕って前と変わりない友情を演じた。そしてその仲間たちといえば、少なくとも僕に対しては気遣ってくれるようで、前より一層一緒にいることが多い。僕はそのおかげでスネイプに謝るどころか、近付くきっかけさえつかめなくなって、スネイプに対しては罪悪感ばかりが増していった。

一方で彼らは、スネイプにしたことについては、何の反省もしていないようだった。ジェームスはスネイプを助け出したと称賛されていい気になっているし、シリウスは形ばかりの罰を受けたとはいえ、もともと罰なんかにめげないばかりか奮い立つ性格だから全然こたえてない。僕についてはうっかりして悪かったと思ったようけど、スネイプのことは懲らしめた程度に思ったままだ。そんな彼らに憤りを感じつつも、正体を知られるかもしれないという大きな怯えにとらわれて顔色をうかがう、卑怯な自分に嫌気が募る。スネイプのほうは殺されかけたと思っているから、、、実際その危険もあったわけだけど、、、遠くから僕たちを見る目に険しさが増したのも無理はないと思う。

日中はそんなことばかり考えて鬱々と過ごし、夜は夜で眠れない。ようやく浅い眠りにつけば、スネイプを噛みちぎる狼やら、恐怖に歪むスネイプの顔やら、昼間見た険しい目つきで僕を糾弾するスネイプやらを夢にみて、うなされて目覚めるだけだった。

もちろん食事だって進むわけがなく、僕はもう心も体も疲れ果て、毎日が苦しくて、生きているのが辛くてしょうがなくなった。人生の唯一の宝だった友情を信じられなければ、生きている意味など見い出せない。人を襲わないという最後の一線を侵して詫びることすらできないのなら、生きている資格などない。僕には生きる意味も資格もないと思う。鬱状態だと自覚はあるけど、抜け出すきっかけはつかめない。

体調も気分も最悪で、これじゃ変身なんて身が持たないんじゃないかと思った頃に、次の満月がやってきた。

元気のない僕を心配するそぶりはみえるけど、放っておけば今夜も変身した僕を叫びの屋敷から連れ出しかねないジェームスたちに、最後の気力を振り絞って、今夜は絶対やめてくれと釘をさした。案の定シリウスは、森をひとっ走りすれば元気になるのになどと不満げで、僕は内心深いため息をついてもう一度念を押し、シリウスもしぶしぶ納得した。

マダム・ポンフリーは、いつも通り、でもいつもよりずっと心配そうに叫びの屋敷まで付き添ってくれて、翌朝迎えに来ると言ってくれたけど、僕は丁寧にお礼を言って断った。先月はあんなことがあったから、狼の気配の残る僕に近づいてほしくないと言うと、マダム・ポンフリーは悲しげな顔をして、では目覚めたら必ず医療棟に来るのですよと言って戻って行った。

そうして僕は今一人、叫びの屋敷にうずくまる。もうすぐ月が出て、僕は狼にかわる。体の中で狼の細胞が人のそれを凌駕し、関節がめりめりときしみ形を変えてゆく。月に一度だけ、体を得る夜の自由を封じられ、狼は荒れ狂うだろう。凶暴な牙と爪で、自らをいたぶり苛むはずだ。弱り切った僕は、たぶんこの一夜を、乗りきれない。

そう思うと、なんだかむしろほっとした。死にたいわけじゃないけど、生きていく気力もない。狼が僕を殺すなら、それで決着がつくというものだ。噛まれた5歳の時に、そうなっていればよかったのかもしれない。今まで生き長らえたことに、何か意味はあったんだろうか?

顔を上げて、薄暗い部屋の中を見回した。満月の度に、変身と自傷の陰惨な夜を過ごしてきた場所。秘められた呪いの発露を覆い隠し、僕の哀しみと苦痛が沁み込んだ叫びの屋敷。鉄格子の窓の外に暗い空は見えるけど、差し込む満月の光を僕が見ることはない。

荒れ果てた屋敷の冷たい床に、自ら流した血にまみれ、一人横たわる姿をぼんやりと思い描いてみた。それは僕に相応しい死に様に思えた。こんな状態で生き続けるのなら、死はむしろ救いとも思える。だけど、こんな僕でも、死んでしまったら母さんは悲しむだろうか?血まみれの遺体を、抱きしめてくれる人はいるだろうか?死んで詫びたのだと、スネイプは許してくれるだろうか・・・

暗い思いに浸るうち、体の中からなじみある不快なざわめきが起こり、僕の意識は消えた。


・・・生臭い血のにおい、関節の痛み。腕がズキズキして、のどが渇いて、気だるくてたまらない。

ああ、朝が来たんだ。僕は目覚めてしまったらしい。だけど、しばらくこうしていれば、血が流れ出てやがて思い描いたように命が尽きていくかもしれない・・・。

しばらくそのまま横たわっていけれど、冬の朝はあまりにも寒かった。あきらめて目を開けると、両腕に酷い傷が見えた。骨まで達するかという深い噛み傷だ。体を調べると、他にもあちこち傷やら打僕跡があるんだけど、、、前回の死にかけるほどの怪我はしていなかった。荒れ狂うはずの狼は何をしてたんだと思い、、、体が弱ってて、たいして動けなかったんだと気がついた。狼も僕と同様、うずくまっているしかなかったらしい。

力なくうずくまり、ひたすら自分の前脚を噛みしめる狼を思い描き、、、なんだかふと狼が哀れになった。僕と同じくらい、哀れな生き物。仲間たちを遠く感じ、ただ一人の孤独をかみしめていたのに、こいつだけはまとわりついて離れない。まあ、僕なんだから離れようもないんだけど。死んでしまうはずがまた生きながらえて、また同じような日々が始まると思うと。

「最悪だ。」

声に出して言って、のろのろと起き上った。噛み裂かれた、というか、噛み裂いた腕に力が入らなくて一苦労だ。血を拭って服を着ようとすると、腕が痛んで、これがまたたいへんだった。投げやりな気分に拍車がかかって面倒になり、腕を袖に通すのはあきらめて、肩に引っかけてよしとした。

重い足を引きずって通路を抜けて外に出ると、冬の朝は薄暗く、霧が立ち込めている。医療棟に行くべきだったけど、ふと気が変わって、禁じられた森に続く林に向かった。1日の始まりを少しでも先延ばししたかったのか、あるいは昨夜森を走れなかった狼の未練に引きづられたのかもしれない。

脚元も見えない濃い霧の中をよろよろと歩くうち、石か木の根か何かにつまづいてよろめくと、踏みとどまれず倒れてしまった。いったんは体を起そうとしたけど、腕に力が入らない。むしろ体を支えようと試みたことで、傷が広がったみたいだ。じっとりと冷たい土を頬に感じ、狼が噛み裂いた腕の痛みを堪えていると、もうどうでもいい気分になった。こうやって霧に紛れて死ぬのも悪くないと思う。昨日は狼に殺されてしまえばいいと思ったけど、今日は僕が狼を道連れに息絶える。結局同じことなんだ。倒れたままつまらないことを考えているうちに、眠くなって頭がもうろうとしてきた。その時。

人狼、こんなとこで何をしている?」

突然、声が降ってきた。驚いて目を開けると、長けの足りないローブの裾から突き出した細い足首が見えた。それを上へとたどっていくと。

「ス、スネイプ?」

一瞬頭が混乱した。そうだ、変身前にスネイプの姿が見えて。襲いかかって、そのまま食い殺してしまったんだ。じゃあ僕も死んだのか?死んだから神様がスネイプに許しを請うチャンスをくれたのか・・・。

「スネイプ、ごめん。君を食い殺してしまって。僕、君が来るなんて知らなかったんだ、、、」

「何を言っているのだ?気でもふれたか?」

「スネイプ、、、生きてるの?」

思わず手を伸ばしてローブの裾をつかもうとすると。

「触るな、人狼!」

思いっきり叫んで、スネイプは後ろに飛びのいた。その嫌そうな様はまさに・・・

「ほんとにスネイプだ!スネイプ生きててくれたんだね。よかった。ほんとによかった。ありがとう!」

訳がわからなくて、自分でも何を言ってるかわからなかったけど、スネイプにも意味不明だったらしい。眉間にしわを寄せた怪訝そうな顔が近づいてきた。ほんとに僕の気がふれたのか、確かめようとしたのかもしれない。スネイプはかがみこんで、嫌そうに僕の体を仰向けに反した。近づいたら腕の傷が見えたのか、眉間にしわを寄せたまま、驚いた顔になる。

「ひどいな。それ、、、自分でやったのか?」

昨夜が満月と思い至ったようだ。僕がうなづくと、スネイプは少しの間僕の腕をまじまじと見て、杖を取りだした。もちろん自分を襲った人狼なんて、杖で成敗するにきまってる。命の危険にさらされたスネイプになら、そうされても仕方ないと思う。覚悟をきめて目を閉じる。

だけど聴こえて来たのは清浄呪文だった。スネイプは血や泥を拭い去ると、続けて静かに治癒呪文を唱え始めた。

スネイプは闇の魔術だけじゃなくて、治癒呪文もできるんだ・・・。深みのある柔らかい声が奏でる美しい調べをきくうちに、なぜか涙があふれ出す。涙は頬を伝い、それと一緒にこのひと月の間、溜まりに溜まったやり場ない思いが溢れてきた。スネイプを襲いたくなってしまった僕の本性の切なさも、信じた友に裏切られた寂しさも、生きる意味を失って途方に暮れた絶望も。音もなく静かに流れ出し、少しずつ心の滓が洗われていくように感じられる。

ひとしきり泣いて、ようやく落ち着いた。頭がまともに働きだすと、この機会を逃してはいけないと思った。許されないにしても、とにかくきちんと謝らなきゃいけない。

「スネイプ、前の満月の時のこと、ほんとうにすまなかった。君を襲おうとするなんて、そんなこと僕はしたくなかったんだ。だけど、止められなくて。」

スネイプはわずかに片眉をあげて、心なしそっぽを向きながら、治癒呪文を続けている。

「たいへんなことになるとこだった。ジェームスが君を助けてくれたからよかったものの、、」

「ふん。ポッターが助けたのは、おまえとブラックのバカだ。ずる賢いポッターは、自分だってまずいことになると気づいたのだろう。」

スネイプは呪文を止め、思いっきり眉をしかめて言った。

「ジェームスの思惑はともかく、君が無事でいてくれてよかったよ。それに、あんな目にあわせてしまったのに、君は今僕を助けてくれて、、、。」

また涙ぐむ僕の顔を見て、スネイプは目をそむけた。そして話をそらすように、杖を僕の胸の傷に向けて尋ねた。

「これは古い傷なのか?」

僕の肩から胸にかけて、けして消えない傷。それは。

「うん、それは5歳の時に、、、人狼に噛まれた傷だから。」

僕の正体を目の当たりにした相手とはいえ、自分は人狼なんだと言葉にしたような気がして、語尾が震えた。スネイプはその傷をじっと見ている。スネイプが何も言わないから、なんだか不安になった。

「いやだよね、人狼と2人きりでいるなんて。あんなことがあったんだから、、、僕といるの、怖い?」

スネイプは傷から視線を移し、肩をそびやかして僕の目を見返した。

「馬鹿なことを。おまえなんか怖くない。人狼というのはな、ルーピン、変身時には凶暴になるが、普段は普通の人間なのだ。人狼のくせに、そんなことも知らないのか?前の満月のときはたしかに驚いたけど、だからと言って変身してない時に、おまえみたいな臆病者を僕が怖がるものか。」

話にならないと言わんばかりに眉をしかめてまくしたてるスネイプに、あっけにとられ、やがて言葉の意味を理解して感動がこみ上げた。

「スネイプ、君って、、」

君ってすごいと言いたいのか、優しいと言いたいのか、なんだか胸が詰まって言葉が続かない。だって、食い殺しそうになってしまったスネイプが、僕の傷を癒し、きっぱりと、人狼は変身時以外は普通の人間だと言ってくれた。スネイプは自分が僕にしてくれたことをわかっているんだろうか?こんな僕でも、生きていていいと言ってくれたんだ。

僕が一人感動にうち震えているうちに、スネイプは他のことを考えていたらしい。つぶやきかと聞き違うような、ぼそぼそとした声がする。

「おまえ、5歳の時からこんなこと繰り返していたのか?」

「こんなことって、、、ああ、自分で噛むこと?」

スネイプが小さくうなづく。

「うん。小さい頃は地下室とかに閉じ込められて。学校に来てからはずっと、満月の夜は叫びの屋敷にこもってたから。そうしないと人を襲ってしまうから。でもそれでいいんだ。人を噛むよりずっといい。そう思ってたのに、先月は君を、、、。ほんとに、ごめん。」

「もう、いい。」

「え?」

「もうわかった。」

「ありがとう、スネイプ。それに、僕の正体を黙っていてくれることも。なんだか、真実が伏せられたまま広まっていて、君としては腹立たしいと思うんだけど、僕には真実を言うことができなくて、ごめん。ホグワーツは人狼がいていい場所じゃないってわかったけど、僕が学校を追い出されて家に帰れば、家族全員、居場所がなくなってしまう。僕には、他に行くとこがないんだ。」

スネイプは目を細めて、こちらを見ていた。僕を見ていたのか、僕の向こうにある何かに思いを馳せていたのかわからないけど、なんだかとても悲しそうに見えた。少ししてスネイプは、小さくうなづくと。

「霧が晴れてきた。日があたる前に摘みたい薬草があるのに、人狼にけつまづいて。」

そこまで言ってちょっと悔しそうな顔になって、続けて言った。

「もう立てるだろ?」

僕が立ち上がって、まだよく動かない手でめんどうなシャツのボタンを止めようと悪戦苦闘していると、すっとスネイプの手が伸びてきた。いつか魔法薬学の授業で見た細くて長い指先が、器用にボタンをとめていく。それからスネイプは、落ちていたローブを杖で浮かび上がらせ、僕の肩にかけた。

「あとは医療棟で見てもらえばいい。」

スネイプはそう言って僕を見もしないで歩きだした。だけどしばらくして振り返り、後ろ姿を見送っていた僕と目があって、たじろいだみたいに顔をしかめた。僕が笑って手を振ると、早く行けと言わんばかりに追いやるように手を払い、その後はもう振り返ることなく林の奥に消えていった。

スネイプはきっと、僕がちゃんと歩いていけるか心配して振り返ってくれたんだと思う。ほんとは優しいのに、そう思われるのがイヤなんだ。難しい性格だと思い、くすっと噴き出してしまった。そして、こんなふうに心から笑えたのは久しぶりだと思う。泣いたのも、暴れ柳事件の翌日に、ダンブルドア先生からスネイプが無事だったと聞いて以来だ。事件以来辛い思いを堪えるためにかちこちに固まっていた感情が、軟らかく動き出したのを感じる。

スネイプは、僕の体の傷だけじゃなく、心の傷も癒してくれたのだった。ぶっきらぼうでわかりにくいけど、スネイプはほんとはすごく優しいところがあると思う。それは、スネイプには僕の痛みがわかるからじゃないかと思いついて、少し悲しくなった。

スネイプは人狼じゃないけど、それによって僕が感じる様々な痛み、孤独や絶望や自己嫌悪、拭いようのない理不尽さへのやり場ない憤り、周囲への不信感、それでもそれらを抱えて生きていくしかない辛さとか、そんなものが感覚的にスネイプにはわかってしまうんじゃないかと思い、切なくなる。虐げられる辛さがわかるから、スネイプはいわば敵対する立場の僕を、労わってくれたんじゃないか。

だけどそれは簡単なことじゃない。痛めつけられる弱い立場の者は、僕みたいに、自分のことで精いっぱいになる。なんとか切り抜けるのに必死になって、人のことを構う余裕がない。歯を食いしばって立ち向かう芯の強さがなければできないことだ。それはその立場に陥る心配などしたこともない強い立場の者が、自分の行為になかば陶酔しながら施すように与える親切とは、比べものにならないほどの心の強さがなければできないことだと思う。

スネイプには、とてもわかりにくいんだけど、そんな芯の強さと優しさがある。僕はずっと前から、1年生の頃から、それを感じてスネイプに惹かれていたんだと思う。あのころからいろんなことがあって、それはスネイプにとって辛いことが多かったのだろうけど、スネイプはかわることなくその美点を保ち続けている。僕にはスネイプみたいな強さはまだないけれど、とにかくなんとか生きていく。たとえ昨日までと同じような今日が続くのだとしても、スネイプがこんな僕でも生きていていいと示してくれたんだから。

 にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

tag : ハリーポッター スネイプ 人狼

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。