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(過去2)リーマスの物語18

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)


そして僕たちはホグワーツを卒業した。

7年前、僕は重すぎる秘密を抱え、一人心を閉ざしてホグワーツ特急に乗った。同じ列車に仲間とともに乗りこんで、未来を語りあいながら旅立つ日を迎えられるなんて思ってもみなかった。振り返れば楽しいことばかりじゃなくて、スネイプのことを想えば胸の痛みさえ感じるけど、僕にはこの仲間たちがいる。僕の正体を知ってなお、支えてくれる真の友達。僕が手にすることができた、ただ一つの宝。

いったん家に戻り、卒業の報告をした後は、シリウスの家に寄せてもらえることになっている。シリウスはブラック家と絶縁したあと、同じように純血重視の一門を飛び出した叔父さんから援助を受けて一人暮らしをすることになり、行くあてがないならうちに来いよと言ってくれた。

仲間たちと別れて家に帰ると、父さんと母さんが卒業を祝ってくれた。少し大きくなった妹も交えて、久しぶりに家族4人のなごやかな夕食をとる。僕はこの先しばらくは友達の家に住みながら、不死鳥の騎士団に入って闇陣営と闘うつもりだと報告した。

夕食が終わると父さんが僕に話があると言って、2人でダイニングルームに残った。

「リーマス、人狼という重荷を背負いながら立派にホグワーツを卒業し、闘いにいどむ勇敢な息子を父さんは誇りに思っているよ。これはおまえが大人になったら話そうと思っていたことだが、闇陣営と闘ってゆく道を選ぶなら、なおさら知っておいてほしい。」

そう言って始めた父さんの話は、衝撃的なものだった。僕が幼い頃人狼に噛まれてしまったのは、密かに活動を始めた頃の闇陣営への協力を拒んだ父さんへの報復だったというのだ。現存する人狼のなかで最も凶暴といわれるフェンリール・グレイパックという男が、ヴォルデモートの意を受けて、満月の夜に幼い僕を狙ったのだった。

僕は人狼であることを理解して以来、人としての意識を失った状態で人間を噛んでしまうことを最も恐れて生きてきた。運の悪さを嘆きつつ、獣の衝動を抑えきれず僕を噛んでしまった誰とも知らぬ人狼に対しては同情すら感じたこともあったのに。僕が咬まれたのは単なる事故ではなく、親の言いつけを守らず外に出てしまった幼児の愚かさ故でもなく、悪意に満ちた企てだったのだ。

僕は地下室や叫びの屋敷で自らを苛むことに耐えた幾度もの夜を思い、人狼ゆえにあきらめた夢や孤独を思った。そして壊された父さんと母さんの生活、奪われた家族のささやかな幸せを思うと、、、許されることではないと怒りがわき上がる。それはなじみのない感情だった。僕の人生には理不尽なことがたくさんあったけど、いつもあきらめて目を背け、身を縮めてやり過ごしてきたから。だけど時には、怒り、立ち向かうべき出来事もある。

「リーマス、私は父親として、おまえを守ることができなかった。心からすまないと思っている。」

「父さんが悪いんじゃない。悪いのは闇陣営だ。僕は不死鳥の騎士団として、父さんの分まで彼らと戦うよ。」

父さんは目を細めて僕を見た。

「お前は頼もしい大人になった。もう私から言うことなどないが、最後に伝える父さんの願いだ。重荷を背負う人生だが、希望を捨てず、信じる道を進んでほしい。おまえならきっと、自分の道を切り開いていけると信じているよ。」

それ以降、闇陣営との闘いの決意は、ダンブルドアへの感謝や、仲間たちの意思に沿うためだけではなく、僕自身のものになった。僕のような不幸な者を生みださない社会、家族の幸せが守られる社会をつくるために僕は闘ってゆく。

まもなく始まった不死鳥の騎士団としての活動は、予想以上に厳しいものだった。騎士団は、敵方の情報を集めて闇勢力の台頭を防ぎ、闇陣営による襲撃があれば駆け付けて、魔法省の闇祓いとともに闘う。襲撃現場の悲惨さに打ちのめされたり、嘲るように闇の印を打ち上げて姿を消すデスイーターに悔しい思いをすることも多い。

それでも、そんな苦戦ばかりの闘いの中で、僕は自分が闘士としてなかなか優秀だと気がついた。疎ましいと思ってきた人狼としての身体的特徴が、こんな場では役に立つ。すぐれた動体視力で敵のわずかな動きを素早く察知して防戦できたし、鋭い嗅覚ですっぽりと頭からフードを被ったデスイーターの正体をつかむこともできた。もちろん、人狼の嗅覚が敵の逮捕につながる証拠になるわけじゃないけど、正体不明な敵の身もとを推測できれば、情報収集の足がかりになる。街中やパブでさりげなく彼らに近づいて会話を盗み聞きし、次の襲撃や彼らの計画を知ることもできるからだ。そこでも僕の並みはずれた聴力が武器となった。

こうして徐々に、僕の活動の中心は諜報、つまりスパイとして敵を探ることになり、やがてダンブルドアの指示により、この闘いに関する人狼たちの動向を探る任務も加わった。

魔法省に勤めるピーターは、初めから情報収集を期待されている。魔法省は闇陣営との主戦場の一つで、省内の誰がどのように暗躍しているか、どんな企てがなされているか、それを察知し対処するには情報がカギとなる。闇祓い局のように明らかに闇陣営と対立する者は警戒されてしまうけど、一般職員のピーターは、目立たないように省内の情勢を探るのに適している。立場を知られては任務に差し障るから、ピーターは襲撃への救援にはあまり加わらない。

ジェームスとシリウス、そしてリリーは、強い魔力を生かして、闇陣営の襲撃に駆け付け対戦することが多くなった。密やかな諜報活動には目立ちすぎるし性格的にも向いているとは思えないけど、敵との対戦になれば、華々しく活躍する姿は味方を勇気づけ、騎士団への支援者を増やすことにつながった。リリーは身を潜めるマグル出身者を助けたり、ジェームスは騎士団の財政面の支援もしているらしい。

こうして僕たちも、他の騎士団のメンバーも、ダンブルドアの指示のもと、それぞれの特性を活かして、全力で闇陣営に挑んでいた。だけど、圧倒的に数で勝り、手段を選ばない闇陣営との闘いは苦戦続きだ。闇祓い以外の抵抗者が現れたことに気づいた闇陣営は、何箇所か同時に襲撃を行うことで僕たちの力を分散させる策に出た。頑張っても後手に回るばかりで、むしろ敵に囲まれて負傷する者も続出し、味方の焦燥感はつのってゆく。

こんな状況に業を煮やした魔法省上層部では、闇勢力に対する強硬派が勢いを増し、強硬派の支持を得たバーティ・クラウチが魔法法執行局長に就任すると、闇勢力との闘いにおいては禁じられた呪文の使用が許されることになった。けれどそれで事態が好転するものでもない。今までどこか余裕を感じさせる、いわばお遊び感覚で術を使っていたようなデスイーターたちも、禁じられた呪文の反撃を受けるとなれば必死になる。憎しみをぶつけあうような激しい闘いに騎士団員は傷つき、世相の暗さに人々は身をすくめ、魔法界は闇に包まれていた。

だけどこんな時代でも、人は恋をし、未来を夢見る。むしろこんな時代だからこそ、身を寄せ合い、先を急ぐのかもしれない。

ジェームスとリリーは、卒業後1年も過ぎないうちに結婚を決めた。卒業してからは学生時代みたいにいつも一緒にいるわけじゃないけど、仲間4人の先頭を切っての結婚に、、、といっても僕はもちろんシリウスやピーターも後に続くあてはなかったけど、、、皆で集まり2人の結婚準備を手伝った。厳しい闘いの合間の、心なごみ、笑いさえ出るひと時だ。

そして迎えた結婚式は、派手なものではなかったけれど、華のあるカップルを祝って多くの人が参列し、温かく和やかな雰囲気の中で行われた。いつになくきちんと整えた髪に礼服を着て照れくさそうに笑うジェームスと、純白のウェディングドレスを身にまとい、白いユリの花を交えた手造りのブーケを持つリリー。幸せそうな新郎新婦の姿は輝きに満ち、光に包まれているように見える。ベストマンを務めるシリウスは珍しく身なりを整えてジェームスの脇に立ち、そうするともとからの美形がきわだって、華を添えた。

僕は親友の幸せを心から祝福し、感動に涙ぐむほどだった。闘いに明けくれる中で、こんな幸福感は久しぶりだ。僕にはこんな日は訪れないだろうけど、こんなふうに親友の晴れやかな門出を祝えるのはなんて幸せなんだろうと思う。

幸せそうに微笑む花嫁の姿を見るうちに、ふとスネイプを思い出した。リリーのこんな笑顔を一番見たいのはスネイプなんじゃないかと思いついたから。まあ、隣に立つ新郎の姿は絶対見たくないだろうけど。

久しぶりに思い出してみると、スネイプへの思慕と仲間への友情に悩んでいたことが、ずいぶん遠い昔にも、昨日のことのようにも感じられた。騎士団員となった頃は、襲撃現場に行くたびに目を凝らし鼻を利かせてスネイプがいないか確認したものだ。いつのまにか闘うだけで精いっぱいになっていたけれど、スネイプがいれば必ず気配は感じたと思うから、襲撃にはいなかったと思う。スネイプはほんとにデスイーターになったんだろうか、どうしているんだろう。

そんなことを考えたせいか、ジェームスの結婚式からまもなく、僕は久しぶりにスネイプの姿を目にした。それは予言者新聞の記事に添えられた写真の中だった。

その記事は、同じ頃に催されたマルフォイ家の結婚式を報じたものだった。マルフォイとブラックという魔法界きっての名門を結ぶ婚姻は大きく取り上げられていて、写真もけっこう大きなもので、その中でスネイプが仏頂面とたぶん僕にしかそう見えないんじゃないかと思える笑顔を繰り返しながら立っていた。スネイプの隣には、ゴージャスな衣装に身を包んだルシウス・マルフォイと美しい花嫁が笑っている。スネイプも学生時代とは見違えるような立派な服を着て、ベストマンをつとめているようだ。

そんなスネイプを見て、僕は複雑な気持ちになった。一言では言い表せないけど、まとめてしまえばいろんな意味で感慨深いってことだろうか。瞬時に圧倒されるほどの懐かしさにおそわれて、それからホグワーツでの様々な出来事が頭をよぎり、切なさや苦しさがこみ上げて、スネイプを従わせるマルフォイへの嫉妬めいた感情が湧きあがったり、それでもスネイプにしっかりと居場所があったんだとほっとしたりして。

ようやく気持ちが落ち着き、スネイプとの間の遠い距離が感じられて少し欝な気分になったとき、シリウスがやってきた。僕は任務で離れる時以外シリウスの家に世話になっているから、積み重ねられた予言者新聞をぱらぱらと見ていたのもシリウスの家のダイニングルームなわけで。記事に気づいたシリウスも、しばらく写真を眺めていた。また前のようにスネイプの悪口が始まるかと身構えていたんだけど。

「新婦は俺の従姉、ナルシッサ。こっちは弟のレギュラスだ。」

写真を指差しながら言ったシリウスの声には苦さが滲んでいた。純血主義の実家と縁を切ったとはいえ、一緒に育った弟と従姉に対して複雑な思いはあるんだろう。血のつながりも子供の頃の思い出も、消えるわけじゃない。

シリウスが、弟は親の言うことを間に受けて育ち、まだ卒業もしていないのにデスイーターになったらしい、馬鹿なヤツだとため息をついた。写真の中のレギュラス・ブラックはまだ幼さの残るおとなしげな顔立ちで、襲撃時に見るデスイーターのフードを重ねてみたけどピンとこない。怪しげなデスイーターのフードの向こうに、こんなあどけない素顔が隠れているんだろうか。そして、こうして一緒に写真に写っているということは、やっぱりスネイプもデスイーターになったんだろうかと思い、僕もため息をついた。

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tag : ハリーポッター,ジェームス,リリー,スネイプ

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