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(過去2)リーマスの物語19

これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です。

ジェームスたちの結婚式でもたらされた和やかな気配は、まもなく次の襲撃が起こるとともに消えていった。そして僕も、他の騎士団員たちも、それぞれの闘いの日々に戻ることになった。

僕はダンブルドアの指示を受けて、人狼たちの動向を探るために遠出することが多くなった。人々に恐れられる巨人や人狼といった魔法生物が闇陣営についたとなれば、実際に脅威が増す上に社会不安もつのる。それは多くの魔法生物にとっても不幸なことだとダンブルドアは言い、僕自身もそう思う。人狼だからこの任務を遂行するのだと思うと気が滅入るところもあるけれど、同時に使命感も感じている。

僕はこの任務を通じて、はじめて他の人狼たちの生活を垣間見ることになった。考えてみれば、それまで他の人狼に接することはなかったから。

まずは人狼に接触して諜報の足がかりを得ようと、魔法省に登録された住居を訪ねてみると、登録された家にその人狼が住んでいなかったり、家族自体行方がわからないケースも多かった。家族がいても所在は知らないと言われるのがほとんどで、そればかりか、その者とは一切関わりがないと追い払われる有様だ。もちろん僕も正体を明かして訪問したわけじゃないから用心されたのであって、内心は家族を心配している人だっているだろう。僕の家族だって知らない男が僕を探して訪ねてきたら同じように応じるだろうと思ったものの、人狼やその家族の境遇を一つ一つ確認してゆくような体験は、気が滅入るものだった。

それでもようやく、ある森の奥に人狼の集落があるという手掛かりを得た。行ってみると、川沿いの崖に開く大きな洞窟の周りに、掘立小屋のような家が数軒建つ集落があった。人影がないのでとまどっていると、男が一人僕に気づいてやってきた。人狼かと聞かれてうなづくと、こっちに来いと言われ、警戒しながら洞窟の中に入る。

奥行きのある暗い洞窟には、何箇所か石を並べて囲んだ場所があった。囲みの中には木の枝を並べた棚らしきものや、ブランケットが丸めて置いてあったりする。空の酒ビンや新聞紙が乱雑に散らばる所もあった。

「物が置いてある場所は誰かが使っている。その辺を使え。」

男はあごで空いた場所を示して、自分は石に囲まれた一角にすわり、酒を飲み始めた。それきり何も言わないから、僕から話しかけてみた。

「他にも人はいるんですか?」

「今は少ないが、満月が近づけば皆戻ってくる。」

男はそれだけ言うとまた黙ってしまい、しかたないから僕も周りにならって石で囲いをつくり、底冷えのする地面にマントを敷いて寝転がった。情報を探るといっても、こんな無口な男ではどんなふうに探ればよいかと途方に暮れる。この先、闇陣営に関わる者と接することもあるかもしれないから、うかつなことも言えないし。作戦の立てようもなく、とにかくしばらくはおとなしく様子を見て、この集落の人狼たちになじむことだと決めた。

やることもないまま薄暗い洞窟の天井を眺めていると、ここが人狼の居場所なんだと切なさがこみあげてきた。僕は教科書や図書館の本で人狼に関わる記述を探し求め読みあさってきたけれど、人狼がこんなふうに暮らしているなんて書いてある本はなかった。人狼の生態や、どのように危険でどのように防衛すればよいかということばかりで。あるいは人狼が起こした恐ろしい事件とか。魔法使いの視点で書かれたものしかないから仕方ないと思うけど、あらためて人狼の見捨てられた立場を思い知る。

僕だって、ホグワーツに行けなかったらここにいたかもしれない。ホグワーツで友達に会えなかったら、そしてホグワーツから追い出されていれば、ずっとこんなふうに洞窟の天井を眺めて生きてくるしかなかったんだと思えてくる。そしてこれからも、こんなふうに生きていくしかないのかもしれないと思う。ダンブルドアが招いてくれなければ、ジェームスたちが僕を受け入れてくれなければ、スネイプが僕の正体を明かしていれば、ここが僕の居場所だった。夢も希望もなく、友情も恋も知らず、一人酒に気を紛らせて時をやり過ごす。

そんなことを考えていると暗い気分になり、気がつけば外も暗くなってきたのに、男は灯りをつけもしない。ルーモスの呪文を唱えようと、杖をとりだす寸前でやめた。男は杖を持っていないのかもしれないと思いついたから。もしかすると、人狼は杖を持たないのかもしれない。任務を隠してこの集落になじむには、杖は使わないほうがいい。遠出用の準備を詰め込んで魔法で縮めた荷物袋から、ろうそくを取り出して火をつけた。灯りに気づいたのか、酔いつぶれて寝ていた男が体を起こして顔を向けた。薄闇の中、うつろな表情にわずかに笑みが浮かんだように見えた。無口なだけで、悪い人ではないのかもしれない。

男が言っていた通り、満月が近づくにつれ人が戻り、おかしな言い方だけど、集落に活気が出てきた。1人戻る者、2、3人の若者グループ、老人や、一組だけながら男女のカップルもいる。皆一様にみすぼらしかったけれど、普段は町や村に出かけて日々の糧を稼いでいるようだ。スリとか盗みとか、よからぬことをしている者もいるようだけど。隠しだてもせず得意げに言っているから、珍しいことでもないらしい。

無人だった掘立小屋も、それぞれに持ち主が戻り、夜には隙間からロウソクの灯りがもれる。全部で10数名の集落で、長年定住している者もいるようだ。空いたままの洞窟の石の囲みもあったから、一時的にここに寝泊まりして、他に流れていく者もいるんだろう。僕がミドルネームのジョンを名乗って挨拶すると、立ち入ったことを聞くでもなく、素っ気ないうなづきが返された。

そして満月の夜が来た。その夜に自分を含め誰が何をしていたのか、記憶がないからわからないけれど、満月が明けると新入りの僕にも打ち解けてくれるようになった。狼の姿で仲良く一緒に駆け巡りでもしたのか知らないけど、変身後の関節の痛みや疲労を嘆き合えば、仲間意識が芽生えるのも不思議じゃない。

「あんた、新入りじゃったな。ジョンといったか?」

そう言って老人が近づいてきた。何度か彼の掘立て小屋に招かれて話すうちに、この集落の人狼たちのことがいろいろとわかってきた。老人はもう10年近くここにいるということで、暇つぶしに人を招いてあれこれ話しているそうだ。人狼たちの身の上にも詳しかった。

僕が最初に出会った男は、妻と子供と幸せに暮らしていたのだけれど、人狼に咬まれ、周囲の迫害から妻子を守るために家を離れてここに来たそうだ。当初は寂しがり、怒ったり嘆いたり、酒を飲んで暴れたりもしたらしい。やがてあきらめて、時々密かに家族の様子を見に行くのを慰めにしていたのだけれど、妻が再婚して引っ越してしまうと、めっきり無口になった。

若者たちも悲惨だった。若者らしい無知と無謀で度胸を示すといきがって、あえて皆が怖がる森の奥にキャンプを貼った挙句、人狼に出くわした。友達に避けられ、恋人に捨てられ、職を失い、家族にも疎まれて、ここに流れ着いた。先に続くと信じていた将来への希望を断たれた傷は深い。手にすることなく失われた人生をあきらめるには、若過ぎるのだ。それまでは嫌悪し蔑んでいた人狼に、自分がなってしまった現実を受け入れる厳しさに耐えかねて、絶望は恨みに変わる。陽気に盗みの成果を自慢する心の奥底には、恨みと怒りを抱えたままだという。

「皆それぞれに事情は違うが、結局は現実を受け入れるしかない。どうあがこうが、元には戻れんからな。わしから見れば愚かなだけの可哀そうな若者も、他から見ればひとくくりに嫌われ者の人狼ちゅうことじゃ。あんたにも事情はあるじゃろうが、、、若いのに落ち着いておるな。身なりもこぎれいじゃ。」

僕がこぎれいだなんてどんなレベルだと思うけど、たしかに集落の人たちと比べればマシなわけで。つき放したようでいて、人狼の境遇への共感に満ちた老と戸の会話は心地よく、人狼としての思いのたけを打ち明けたい気もしたけど、任務があるからそういうわけにもいかない。訝しがられないよう、差しさわりのない話に留め、早々に矛先をかえたいところだ。話好きな老人の口から、誰に何が伝わるかわからないから。

「僕は人狼になって長いので。あれこれと思い悩んだ頃もありますが、まあ、今はもうあきらめたというか。両親が支えてくれましたし、援助してくれる人もいましたが、いつまでも頼っていられないと思っています。」

「ほう、あんたもしっかりしておるが、よい親御さんに恵まれたな。」

「苦労をかけました。ところで集落の人たちのことですが、カップルもいるようですね?」

「ははは。落ち着いておっても、若者じゃな。カップルが気になるか。あれはな、悲惨じゃが美しい話があるんじゃ。あの2人はもともと恋人どうしで、結婚を間近に控えたある日、女のほうが村外れで運悪く人狼に襲われた。女は噛まれるとたいてい死んでしまうんで人狼の女は少ないが、彼女はかろうじて命を取り留めた。じゃが人狼になったことを嘆いてな、死にたい死にたいという女を、男のほうが励まして付き添い、ついに満月の夜もそばを離れず自ら人狼になったそうじゃ。これをきいては、血気盛んな若者でも、彼女を襲う気にはならんじゃろ?あんたもいい相手に出会えるといいな。ん?もう誰かおるのか?」

一瞬スネイプの顔が浮かび、思わず表情に出てしまったみたいだ。こういう時に出てこられるとほんとに困る。

「僕なんて。そんな人いません。それより、あなたにも事情があるんですよね?落ち着いているのは年齢のせいにしても、それこそ、僕なんかよりずっときちんとした身なりをしていらっしゃいますが。」

「わしか?わしの話は悲惨でも美しくもないわ。わしはもともと変わり者と言われておってな、独り身で人づきあいもなかった。幸い暮らしには困らんだけの資産があったから、歴史やら薬草やら動物やら、興味の向くままに気ままな研究生活を送っておったのだが、年をとって重い病気になってな。病院で不治の病と言われた上にあれこれと強制されるのにうんざりして、自分で薬を煎じようと薬草を探しに森に入ったら道に迷ってしまった。うろうろするうち月が上がって人狼に噛まれたんじゃよ。」

そう言って声高に笑う老人に目を丸くしていると。

「人狼になったと言って笑うのがおかしいかね?わしはもういつお迎えが来てもいい年寄りだったのでな。それが人狼に噛まれて倒れておったのをこの集落の人が見つけて、というよりここにおった誰かが噛んだんじゃろうが、手当てをされておるうちに、怪我はもとより、病気まで回復したわけじゃ。おかげでそれからもう10年も経つのに、この通りなんとか生きておる。もとの家はそのままじゃし、人つきあいがなかったから周囲に人狼と知られることもなく、まあ、あっちとこっちを行き来して、気ままな生活を続けておる。」

なんか、あっけにとられて言葉が出ない。

「人づきあいの悪いわしが、なんでこうしてあんたと長々話しているかと言いたいかね?実はそれが、人狼になって唯一の問題じゃ。狼的な特徴というやつじゃな。人狼に噛まれてレアな肉が好きになるという者が多いが、わしの場合は、狼の群れたがる特徴が現れた。狼は群れで生きる動物じゃろ?一匹でいるのが珍しいから、一匹オオカミという言葉がある。以前は周りに人なぞおらんほうがいい、おればぎくしゃくとして煩いばかりだったのが、噛まれてからは時々無性に人恋しくなってな。ここに来て群れに入り、気に入ったもんをつかまえては話しておるのじゃが、話をきけば気になるもんで、わずらわしくてかなわん。バカな若者のことなんぞ気に掛けたくもないのじゃが。」

老人はいったん言葉を切って眉をしかめ、僕の目をじっとのぞきこんだ。瞬間、かすかにざわめく感覚。目の奥に入り込み、頭をのぞかれるような・・・。これは、開心術だ。この人は開心術を使っている。一気に気持ちが引き締まり、とっさに、目を伏せるかわりに、僕も老人の目を覗き込んだ。今までだって僕が口に出さない言葉を読み取るように会話が進んできた。もうのぞかれてしまっているなら、僕も開心術を使い、彼の思考を探ることを選ぶ。

老人がふっと表情を緩め、視線を外した。僕に読み取れたのは、彼の、群れを守るという意志だけだった。老人は僕の何を見たんだろう。騎士団員として闇陣営と闘うために、スパイとして集落に入り込んだのだと知られてしまっただろうか?

「開心術を心得ているようじゃな。」

「あなたはこの『群れ』のリーダーなんですね?こんなふうに新入りを招いてくれるのも、私があなたの群れにとって危険な者でないか調べるためですか?」

僕の挑むような問いかけに対し、老人は場の緊迫感を緩めるような穏やかな口調で応じた。

「リーダーかどうかはともかく、長老ではある。100歳を超えとるものなぞ他におらんからな。わしはたしかに開心術を使ったが、こう容易に悟られるとはがっかりじゃ。ふん、素養はあったが磨かんかったからな。子供の頃から周りの者たちの言葉と裏腹な内心を感じて人付き合いを避けたから、開心術の必要もなかった。この集落に来てから必要に応じて時々使うようになったが。それにしても、人狼の心に、損なわれず残っておる幸せな記憶を見ることがあろうとは思わなんだ。」

老人は言葉をきって、目を細めて僕を見た。まずいことを知られたわけじゃないようだけど、なんか照れくさい。

「何が見えたっていうんです?」

「ほんの2、3の記憶の欠片じゃよ。拙いわしの開心術で見えたのだから、よほど印象的な出来事だったんじゃろう。あんたの宝じゃな。大事にするがよい。幸せな記憶は、辛い環境にあって支えになるものじゃ。激しい怒りと絶望に打ちのめされた者は後先考えずバカな真似をしかねんが、あんたの人間性は信じてよいと思う。この集落に害を及ぼしはせんじゃろう。」

とりあえず信頼は得られたようでほっとした。油断してはいけないけれど、僕にはほんとに集落の人狼たちに害を及ぼすつもりなどないんだから、老人の敵じゃない。彼が闇陣営についてどんな考えを持っているか探り、闇陣営につくことが集落の人たちにとって不幸につながると納得してもらうためには、この信頼に値する者だと思れなければならない。

「私は幼ない頃に人狼に噛まれてしまい、ずっと辛い思いをしていました。人に受け入れられたくて、人の顔色をうかがってばかりいるうちに、少し開心術ができるようになったんです。幸い、いくつかよい思い出もありますが、人狼の苦労はわかっていますから、この集落に害を及ぼすつもりなどありません。信用してもらえたら、さっきの話に戻りましょうか?」

「そうじゃな、あの若者の話じゃった。あの3人のバカ者たちじゃが、盗みやスリはまあ、暮らしのためだからやむを得んと思っておったが、最近まずいことに手を出しておる気配がある。あんたも若いから、気があってあの者たちと一緒に悪さをせんよう釘を刺しておこうと思っておったのじゃ。」

「もし彼らと親しくなっても、一緒になって悪事などはたらきません。それよりも、彼らを止められたらと思うのですが。いったい彼らは何に手を出したというんですか?」

老人は顔を曇らせて、身を乗り出すように僕に近づき、小声で話し始めた。

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tag : ハリーポッター,人狼

コメント

リーマスの病気

ミーシャ様♪
いつも楽しく読ませて頂いてます。

今回は ちょこっと真面目な話…

ローリング女史は、人狼は エイズをモチーフにしていると、ポッターモアで語っています。
血液で感染し(噛まれる事で)完治する事なく 差別される対象となる…本人の資質、人格とは、関係無く…です。

それによって、病を隠し、未来を諦めている患者達…

リーマスは、ジェームス達から友として接して貰いましたが、
シリウスとかが 人狼としてのリーマスの苦しみを理解していたかは、疑問です。
「オレ達 リーマスが人狼でも 気にしないぜ~仲間だからな~」って所でしょうか。

だって、本当にリーマスの気持ちが解っていたら、リーマスが 殺人者となる事を(誰かを人狼にする事を) 恐れていた事が 解るはずだもの。

完全な 上から目線ですよね。
未熟な未成年者として、大目に見るべきでしょうが、セブルスの味方としては、許せない傲慢さです。

スミマセンm(__)m
セブルス愛が 溢れてしまいました。

又、お邪魔させていただきますね~!

ドラゴンさん

いつもコメントありがとうございます。
励みになります^^

エイズも人狼も、病気(呪い)それ自体の苦痛とともに、周囲の無理解や偏見に苦しめられる面が大きいですね。
発症を抑える薬が出てきたり感染を防ぐ方法がわかっていても、人々の偏見や固定観念は根強く残り、患者を苦しめるものです。

人狼のリーマスが、人狼でない人たちと同様、個性ある一人の人間として生き生きと描かれているのは素晴らしいと思います。

差別されるのが普通の社会を生きる人狼のリーマスに、友として接しているのはシリウスたちの美点だとは思います。(というか、セブルス愛溢れる目から見ると、学生時代の彼らの美点ってそこしかないような・・・)

でも、リーマスの気持ちを理解していたかは疑問ですね。
彼らはリーマスの性格を好ましく思ったのでしょうが、人狼を差別するという固定観念への反発から友達になった面もあると思います。

15,6歳の勝ち組男子に、不利な人生を強いられている人の気持ちを芯から理解するのは難しいと思うので、リーマスへの上から目線は大目に見ますが、セブいじめは許せんです。

リーマスもそのへんはわかってたんじゃないでしょうか?
それでも、人狼というだけで嫌う人が多い中、友として接してもらえるのは嬉しくて感謝していたのでしょう。

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