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(過去2)リーマスの物語20

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

「あの者たちは、人さらいの手伝いをしたようじゃ。3人でこっそり話しておった。いい稼ぎになったと喜んでおったわ。皆の前では、スリだ盗みだと言っていたから、さすがに悪事だとは思っとるんじゃろうが。スリや物取り程度なら見逃されても、誘拐となれば追及も厳しくなる。人狼が関わっておったとなれば、集落にまで災厄が及ぶかもしれん。」

老人はため息をついて、困ったものだというように眉をしかめた。僕はうなづき返しながら、それは闇陣営に関わっているのではないかと考えていた。突然人が消え、行方不明になる事件の大半は、闇陣営の仕業だ。もし人狼の若者たちが闇陣営につながりを持つなら、なんとか情報を得たいと思う。それに、若者たちが闇陣営にたぶらかされて皆を誘えば、集落全体が闇陣営につく恐れもないとは言えない。集落の長老が今の社会情勢にどんな考えを持っているのか、一歩踏み込んで探ってみるにもよい機会かもしれない。

「誘拐とはたいへんなことですが、いったい誰から頼まれたんでしょう?何かご存知ですか?誘拐事件の多くは闇陣営が関わっていると新聞で読んだことがあります。」

「そういうことはわしも新聞で読んでおるが、彼らが闇陣営とやらに頼まれて手伝ったかまでは知らん。」

「あなたは彼らが闇陣営と関わりを持っても気にならないんですか?私には闇陣営が人狼にとってよいものとは思えないんですが。純血を尊び、マグル出身の魔法使いすら蔑んでいるというのですから、今は人狼を利用したとしても、権力を握ればどんな扱いをするか、、、」

「ジョン、まあ待て。わしは権力の行方なんぞに興味はない。一人が好きな変わり者なのじゃぞ。人が集まって勢力争いに講じる政治なんちゅうもんは、わしには理解できん。わしが気にかけとるのはこの集落の人狼たちだけじゃ。ここの若者たちに悪事を働かせるなら闇陣営は悪いやつらかもしれんがな、今の政権だって人狼によいことなぞ何もしておらん。そもそもあの若者たちがかどわかしに手を染めたのも金につられてのこと。まっとうに働いて金を稼ぐ道が閉ざされておるうえに、なんの援助もないからじゃ。そう思わんか?あんただって優秀な若者なのに、人狼だっちゅうだけで辛い目にあってきたと言ったではないか。魔法省が何かしてくれたかね?」

そう言われて、言葉に詰まった。闇陣営云々の前に、今の魔法省が人狼を見捨てているのは事実だから。ダンブルドアの言う、純血もマグルも魔法生物も、皆が共生していける社会なんて、ここの現実を見れば夢物語のように思われる。あまり踏み込んだことを言えば、長老に警戒されることになりかねないし。どんなふうに会話をもってゆけば任務に役立つのかと考えあぐねた。

僕が黙っているのをどう解釈したのか、老人はうなづきながら話を続ける。

「今の魔法省であろうと闇陣営であろうと、誰が権力を握ったにせよ、人狼の暮らしにかわりはあるまい。あんたは今まで魔法使いの中で生きて来たようじゃから、この集落の様子を見て酷いと思ったじゃろう?だがこれでもマシなほうなのじゃ。他から流れて来た者の話では、集落の中で少ない食べ物を奪い合って争ったり、他の者のわずかな持ち物まで盗むような所もあるらしい。この集落では少なくとも人狼どうしの争いはない。なぜかと言うとな、ほんとに切羽詰まった者には、わしが食べ物を分け与えておるからじゃ。わずかなもんじゃぞ。ほんの2、3日分の飢えをしのぐ程度のな。なぜ魔法省がそれだけのことをしてやらんのじゃ?」

長老は話すうちに、溜まっていた人狼の境遇への不満が噴出してきたようだ。同じ境遇に陥って魔法省の人狼への冷淡な対応に気づき、腹に据えかねていたらしい。闇陣営の悪を説くつもりが、魔法省への非難を拝聴することになってしまった。言われればその通りと思うからしかない。

「魔法省には他にだっていくらでもできることはある。ほれ、あんたの記憶の中の少年が言っておっただろう、人狼は変身時には凶暴になるが、普段は普通の人間なんだと。そう言われて嬉しかったじゃろ?だがその通りの当たり前のことじゃ。魔法省が人々に、人狼は満月の夜以外は普通の人間だと広報して、言われない人狼差別を和らげようとしたことがあるかね?魔法省が満月の夜の人狼の居場所をつくって周囲の安全を確保すれば、他の日は他の者と同じように職につき、希望を持って暮らすこともできるんじゃ。ん?」

それでは僕の記憶の中で老人はスネイプを見たんだと思って、のぞかれた記憶がちょっと恥ずかしくなった。それが表情に出たらしい。老人が言葉を止めて僕の顔を見た。そして微笑んで声音までやさしくなった。

「よほど嬉しかったんじゃな、ジョン。あの少年はあんたが人狼だと知りながら、怪我の手当てをしてくれたんじゃろう?」

うなづきながら、あの時のことが思い出されて、じわじわと幸せな気持ちが蘇る。任務上言ってよいのかわからないけど、スネイプがぶっきらぼうな口調で僕に言ったことが、どんなに僕を幸せにしてくれたか、老人に話したくなった。思えば、誰にも話すことなく今日まで来たんだから。

「あの記憶は、満月明けの朝だったんです。その前の満月の夜に、彼は僕の変身に出くわして僕の正体を知ってしまったのに。あんなふうに言ってもらえるとは思ってもみなかったから、ほんとに嬉しかった。」

「変身を見ておったのにか。そんな少年がおるとは驚きじゃ。たいていの魔法使いの子供は人狼の話に脅されて育つからな。人狼のあんたがホグワーツにおったことも驚いたが。」

「え?なぜそれを?」

「わしが見たもう一つの記憶は、寮の寝室で、幼いあんたが2、3人の少年に肩を抱かれとるとこだったのでな。あれはホグワーツのグリフィンドール寮じゃろ?わしも大昔にはホグワーツの生徒じゃった。レイブンクローじゃよ。」

「では大先輩なんですね?」

「わしの場合は、人狼でもなかったのに、ろくな思い出もないがな。社交性のない子供に、全寮制の学校の集団生活は酷というもんじゃよ。ちょっと変わっておるというだけで、悪ガキグループが何かとちょっかい出してくる。わしは静かに勉強したかっただけなのに。」

社交性のない勉強好きといえば、スネイプだ。スネイプみたいな少年時代を送ったのかと思うと、老人への親しみが増した。目の前の老人の子供時代を描こうとして、描けなくてちょっと噴き出すと老人も笑った。

「あんたにはよいことじゃったな。人狼なのに、学びの機会も友達も得られて。」

「はい、ほんとうに。だから、、、だから僕は、夢物語かもしれないけど、普通の魔法使いと人狼が、憎みあわずに一緒に暮らせるような社会がいつかできるという希望を持っていたいんです。あなたが言うとおり、今の魔法省は人狼に冷たいし、現実は厳しいとわかってはいますが。」

「希望を持てるなら持っていればよい。わしにはもう、夢を見るだけの時間が残されておらんだけじゃよ。」

それからも、僕は時々老人と話をした。対闇陣営ということでは、彼の中立的というか、誰が権力を握ろうが関係ないという立場は変わらないようだったけど、人狼社会学ともいうべき興味深い話を、いろいろときくことができた。たとえば、僕が想像していた通り、杖を持たない人狼が多いらしい。変身した時とか、何かで急いで逃げ出したような時に杖をなくしてしまい、いったんなくすと人狼の身で新しい杖を買うことができないからそれきりになる。老人は杖を持っているけど、万一盗まれたりなくしたりすると困るから、隠してあるそうだ。

僕は老人と親しくする一方で、おそらく闇陣営につながる誘拐に手を貸したという若者たちにも近づいた。同じ集落に住む人狼どうしだし、年も近いから、親しくなるのは容易だった。頃あいを見て、何か金になる仕事がないかときいてみると、3人顔を見合わせた後、声を潜めて、でもむしろ得意げに、いい儲け話があるとこたえた。

彼らの話によれば、満月と満月の間の時期に、街のパブで知り合った人狼から誘われたらしい。人狼としては羽振りのよいその男と一緒に、誰だか知らない人物を、ある場所に連れて行っただけだという。4人の男に囲まれて、その人物は震え上がっていたから、たいした抵抗もなくラクなものだったそうだ。報償として、その人の物を勝手に持って行ってよいといわれ、取り上げた懐中時計を闇で捌いたらいい金になった。さらわれた人物が何者か、その後どうなったかということは知らないし、興味もないようだった。

僕はダンブルドアに報告して指示を仰ぎ、若者たちと一緒にその羽振りのよい人狼の青年に接触し、親しくなって拉致にも加わった。脅しや暴力で人を連れ去るのは嫌なものだけど、次の誘拐の対象がわかれば救えるのだと我慢していたけれど、いつもそういうわけにはいかなかった。情報が漏れているとわかれば疑われて任務が果たせなくなるから。闇陣営と人狼のつながりや、どの程度の人狼が闇陣営に加担しているのか探れというのがダンブルドアの指示だった。

そのうち、誘拐を率いる青年に誘われて、、、僕がそうなるように誘導した面もあるけれど、彼が住む人狼の集落に行った。そこは初めに行った集落と同じような作りだったけど、規模はずっと大きくて、数十人の人狼が住んでいた。そしてそこで僕は、僕を意図的に噛んで人狼にした、フェンリール・グレイバックという男に会った。縮れた灰色の髪と髭に埋もれるように顔がある大男だ。彼こそがこの集落を率いるリーダーだった。

満月が近付くと人狼たちが集まってくるのは前の集落と同じだ。前夜には酒といくらかの食事が振る舞われて、皆で酒を酌み交わした。盛り上がる座の中心にはグレイバックがいて、皆をあおるように言いたてる。

「俺たち人狼はただの魔法使いよりずっと強い。体も強いし、目も耳も鼻もはるかに利く。身体的に優れた俺たちが魔法使いに見下されているのは何故だ?数が少ねえからよ。俺たちゃ繁殖できねえからな。数を増やすには魔法使いの血を流すこと。噛んでヤツらの血が流れるたびに、仲間が増える。仲間が増えれば俺たちの天下だ。」

グレイバックの熱論に拍手が上がる。それを抑えて。

「ところが魔法省はそれを禁じてきた。俺たちの、魔法使いの血を流す権利を封じてジャマをしやがる。人を噛んだらアズガバン行きなどととんでもねえことを言って俺たちの力を封じてきた。だがそれもまもなく終わる。闇陣営を率いるダークロードは、俺たちに人狼の子となる魔法使いの子供を与えてくれると約束した。やがて俺たちの数が増えれば、人狼が魔法使いを支配する世が必ず実現する。」

グレイパックが闇陣営に通じていることも、なぜ味方するのか理由もわかったけれど、まともな考えじゃない。危険な思想という前に、荒唐無稽と言える。こんな考えにくみする者がいるのかと拍手を送る周囲を見ると、納得したようにうなづいている者は一部で、大半はまあ、グレイパックの話の内容より、振る舞い酒への感謝として拍手を送っているようだった。それはそれで人狼たちの哀れな境遇を思わせて侘しさを感じるけれど、裏を返せば、この程度のエサをやれば、闇陣営に従う人狼がたくさんいるということだ。

僕はあえてグレイパックの話に共鳴した態度を示して幹部の青年たちに近づき、闇陣営の戦力となりそうな人数や、次に狙われる人の情報を探ってはダンブルドアに報告した。情報を得るために集落になじみ、幹部たちに近づくほどに、彼らの実情が見えてくる。人狼の多くは、ものの善し悪しとかあるべき社会とか考える前に、飢えを満たし酒を飲むことだけ考えているのが実情だった。それを潔しとせず、現状に怒り改善を願う者も一部いて、彼らはグレイパックが説く野望に共鳴する。それが唯一、はじめて彼らに提示された希望だから。

こうしてスパイとして彼らに近づくにつれ、時々自分の立ち位置がわからなくなることがある。『僕たち』とか『仲間』という言葉を使う時、それが見捨てられた境遇を受け入れるしかない多数の人狼たちのことなのか、あるいは境遇に怒りを覚え自らの誇りを取り戻したいと願う人狼幹部の青年たちのことなのか、そしてもちろん、忠誠を誓った不死鳥の騎士団員たちのことなのか。そのどれをも理解でき、共感できる気がして、目まいのような揺らぎを感じてしまう。

そんな危うさを感じると、僕はいつもジェームスやシリウスを思い出そうとした。彼らが差し伸べてくれた手、熱い友情。あるいはダンブルドアの確信に満ちた行くべき道を説く姿。そしてスネイプの、人狼は満月の夜以外は恐れるに足りぬただの魔法使いだという冷静な視点。その先に未来はあるのだと信じたい。

自分を試されるようなスパイ任務にも慣れたと思った頃、身のすくむような出来事が起こった。ある満月の日の夕刻、僕は幹部の青年に声をかけられて、他の何人かの人狼とともに洞窟の奥に入った。そこには、得意げに肩をいかせて歩くグレイパックに並んで、ヴォルデモートがいた。その奥には、傷を負った魔法使いが鎖につながれている。ヴォルデモートは僕たちにちらりと目を向けた後、魔法使いに声をかけた。

「さあ、いつまでもつまらぬ強情をはらずに余の質問に答えよ。最近闇祓いとともに我らに抗っておる者たちは何者だ?影でダンブルドアが糸を引いていることはわかっている。おまえもその一員なのであろう?どのような者たちか、言え。」

魔法使いは磔の術を受けたのか、傷だらけの顔をきっと上げ、ヴォルデモートを一睨みして横を向いた。一瞬浮かんだいら立ちの表情をうすら笑いにかえて、ヴォルデモートが言い募った。

「おまえはこの状況がわかっておるか?」

囚われた魔法使いが不安げな顔になって周囲を見回す。

「ここにいるのは人狼だ。今宵は満月。口を割らぬならそれでもよいが、それならこのまま月が上がるのを待つことになる。満月の夜を10数人の人狼と明かすのは楽しいであろう。夜明けを迎えられるかは知らぬが。」

魔法使いの顔が恐怖に歪んだ。それを見てヴォルデモートは高笑いし、グレイパックを振り返る。

「これグレイパック、舌舐めずりするでない。行儀が悪いぞ。あと1、2時間が待てぬのか?余はこれで帰るが、この者は残りたいようだ。あとは好きにするがよい。」

グレイパックが黄色い歯を見せて笑うのと一緒に、魔法使いがかすかに声を上げた。

「わ、わかった、、ちょっと待って、、」

「気が変わったか?言いたいことがあるなら早く申せ。」

「、、知らない。私は、、、団員じゃない、、、」

「ふん、残りたいようだ。」

「いや、団員ではないから内情は知らない、、、ただ、不死鳥の騎士団という組織があると、、、」

「誘われているわけだな?団員の名を言え。」

僕は内心に震えあがりながら、なんとか気づかれないように魔法使いの顔を盗み見た。知らない人だと確認する。騎士団のメンバーじゃない。僕のことだって知らないはずだ、、、祈るような気持ちで身を固くしていると、ふとヴォルデモートが僕たちの一群を見回した。ヴォルデモートは開心術に長け、嘘をついている者を見抜くとダンブルドアが言っていた、、、。ひたすら目を伏せて耐える。僕はわけがわからず、ただ呼ばれてここにいるだけの人狼だ、、。

魔法使いが小さな声で、2、3の名をあげ、ぐったりと崩れ落ちた。

「どうせ言うことになるのに、つまらぬ意地をはったものよ。フェンリール、今夜のごちそうはお預けだ。鎖を解け。この者にはもうひと働きしてもらうことにする。」

意思を失ったように茫然とし、よろめく魔法使いを従えて、ヴォルデモートは集落を立ち去った。僕はひどい疲れを感じ、大きく息を吐いた。まもなく月が上がり、僕の意識も消えた。
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