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愛しのリリー1

(これは『ハリーポッター』シリーズの本・映画鑑賞後の、妄想です)

リリー、今日、ルシウスに抱かれた。」リリーが首をかしげて僕の目を覗き込んだ


子供の頃の記憶をたどると、リリーと出会うまで、僕はほとんど口をきいた記憶がない。

思い出す一番古い記憶は、父さんに殴られたことだ。薄暗い家の中で、殴り飛ばされた僕は思いっきり壁にぶつかった。泣きながら顔を上げると、酒に酔った父が、とめようとした母さんにこぶしを上げていた。

とうさん、やめて!思わず目を閉じたとき、ガラスが砕け散る音がした。棚にあった安物のウィスキーのボトルが飛んで、父さんの頬を掠めて、床に落ちて砕け散った。頬を撫でた手のひらにちらと目をやり、

「薄気味の悪いガキだ」

父ははき捨てるように言って、部屋を出て行った。

「だから父さんの前で魔法を使うなって言ったでしょう?マグルは魔法が嫌いなんだ。」

母さんは僕に背を向けたまま、ため息をついてガラスをかたづけていた。

父はいつも酔っぱらって、怒鳴っているか、そうでなければ黙って酒を飲んでいて、僕がいると顔を歪めて目をそむけていたから、僕はできるだけ小さくなっていた。

母さんは、父がいない時には、時々家事魔法を見せてくれたり、子供のころ通っていたホグワーツの話をしたり、魔法の教科書や自分の家から持って来たという魔法の本の隠し場所を教えてくれたりしたこともあった。

だけどそれも僕がほんの小さな頃のことで、父さんがしょっちゅう家にいるようになると、母さんが仕事に出ることが多くなって、いつの間にか母さんもお酒を飲むようになっていた。酔っ払い2人でののしり合って、そのうち父さんが殴って母さんが泣きわめく。

ときには2人でつかみあって隣の部屋に消え、やがて獣の唸り声のような音が聞こえてくることもあった。こわくなって隣の部屋をのぞいたら、ベッドの上で裸でもみあっていて、僕は父さんが母さんを殺すんじゃないかと心配になった。父さんを止めようととりすがったら、壁に叩きつけられた。あとでその意味がわかったみると、嫌悪感しか感じられない。

そんなだったから、『マグルの』学校に通うようになって家から出られるとほっとしたけど、そこも大差ないことはすぐわかった。最初からなじめなかったが、ある日いじめっ子の顔にカエルを張り付けてやって、そのカエルをどんどん大きくしてやったら、薄気味悪いヤツというレッテルをはられて、みんな僕にはかかわらなくなった。僕がいても、まるでいないかのようにふるまう。

それでも学校は、殴られないだけましで、家に帰るのがいやだから、放課後には家の近所をぶらついていた。そのあたりは、僕と同じような薄汚れた身なりの大人や子供も多かったけれど、子供たちは友達と一緒にいたり、お父さんやお母さんに手をつないでもらったりしていて、1人で歩く子供の僕を見て、気味悪そうに離れるか、最初からまったく気付かないかどちらかだった。

大勢人がいても、僕だけは周囲から切り離された別世界にいるようで、だから、うちで1人でいられる時間が一番楽しかった。母さんの魔法の本を読んで、いろんな呪文を唱えてみる。父さんに殴られても跳ね返せるような呪文。殴られた傷を治す呪文。魔法の本には面白いことがいっぱい書かれていた。

ある日、川の向こう側にある公園に行ってみた。そのあたりは街並みもきれいだ。

「またへんなことして。リリーってほんと気味悪いよ。」

きいたことのあるフレーズが耳に入って、植栽の隙間からそちらをのぞいてみた。

「あたし、気味悪くないよ。ほら、お花がきれいでしょ?」

僕と同じくらいの女の子が、手のひらに載せた花を大きくして見せている。もう一人の女の子は、やだ~、気持ち悪いとか言いながら走って行ってしまった。1人残された赤毛のかわいい女の子は、走り去る女の子の背中を見ながら泣きそうな顔をしている。

魔法使いだ!僕と同じ。

その女の子に会いたくて、それから何回も同じ公園に行った。今度こそ話しかけてみようと思うけれど、そんなことしたことなかったからなかなかできなくて、それでもまた同じように「ヘンな子、いや」と言われてその女の子が1人取り残された時、思い切って話しかけてみた。

「へんじゃないよ。君は魔女なんだ。」

「え?あなたは誰?魔女って?」

驚く赤毛の女の子に、僕は手のひらを出した。近くの木に咲いていた花を呼び寄せて、手のひらで花を大きくしていく。涙ぐんでいた緑の瞳が、嬉しそうに輝いた。

「あなたもあたしと同じことができるのね!」

「うん。僕たちは特別なんだ。」

僕は少し得意になって、手のひらで大きくした花を空中に浮かせて見せた。もうひとつ、またひとつ。2人でたくさん花を浮かべて、ふわふわと飛ばした。

日が暮れてきたころ女の子が言った。

「もうおうちに帰らなきゃ。あたし、リリー。」

「僕は、セブルス。」

セブルス。セブね。また会える?」

「うん。また明日。」

その夜、ベッドに入って何度もリリーのことを思い浮かべた。公園でのことを思うと自然に頬が緩んで、たぶん『笑う』という表情が僕の顔に浮かんだのは、それが初めてだったと思う。眠りに落ちる時、心の中でつぶやいた。

「リリー、おやすみ、また明日」

眠るときに心の中で誰かに声をかけたのも、それが初めてだったと思う。そしてそれから毎晩、寝る前に心の中のリリーに声をかけるようになった。リリーにあった日も、そうでない日も。リリーに会うまで、僕は眠りにつくときどうしていたか、もう思い出せない。

リリーとはそれから何度も公園で会ったから、僕の心の中にはたくさんのリリーの表情が蓄えられていて、寝る前に声をかけると、いろんな表情を返してくれる。

「リリー、今日は父さんに殴られた」と言ってリリーの心配そうな表情が浮かぶと、少しだけ痛みが和らぐ感じがした。「リリー、今日はこんな呪文を覚えたよ」「リリー、今日はつらいことがあったんだ」「リリー、今日は」何も話すことがないときも、リリーにおやすみと言って寝る。

それは寝る前の歯磨きみたいな習慣になって、ホグワーツに入ってからもずっと続いている。

だから今日も、ルシウスの腕に抱かれているというのに、眠る前はリリーに声をかけていた。実際には5年末のOWL試験の日以来この1年というもの、リリーは話をしてくれない。教室で見かけても、こちらに視線を送ることもない。

最近は心の中のリリーも、僕のあいさつにそっけない横顔をみせるばかりだったけれど、今日は心配げに僕の目を覗き込んでくれた。だから「大丈夫。僕は幸せだよ。」ともう一声かけて、眠りに落ちた。
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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : ハリーポッター セブルス リリー

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