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(過去3)1981ハロウィーン/その夜1

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

リリー  ゴドリックの谷、ポッター邸

居間に飾ったカボチャのランタンに火をともし、食事の準備にとりかかる。今日はハロウィーン。秋の収穫に感謝して、魔法は使わず手をかけて料理することにした。ハリーを身ごもって以来、安全のためにずっと隠れ住む暮らしを余儀なくされているけれど、だからこそ、生活の中の小さな潤いをたいせつにしたいと思ってる。

もっとも、不安はあるけれど、隠れ家暮らしも悪いことばかりじゃない。生まれるまではお腹の中で、生まれてからはこの腕の中で、日ごと育ちゆくハリーといつも一緒にいられるのだもの。この子には私がすべて、この子は私の分身、私の命。成長とともに少しずつ親から離れていってしまうのでしょうけど、そう思えばなおさらに、溶けあうような母と子の緊密な時間がいとおしい。

私が食事の準備をする間はジェームスがハリーを見ていてくれるのだけど。大きな三角帽子をかぶってハロウィーンの仮装をしたハリーは、家の中で箒を乗り回している。家の中のことだから、ぶつかるんじゃないかと気が気じゃない。しかも今日は、箒で飛びながら置いてあるお菓子をつかんで、「トットッ!」と叫んで投げ散らかしてるし。「トリック・オア・トリート」のつもりらしい。まったく、腕白坊主なんだから。

「さあ、夕食ができたわよ。」

飛び回るハリーをジェームスがつかまえて、ようやくテーブルに着いた。ランタンの灯りが揺らぐ部屋で、ジェームスとハリーと私、家族3人穏やかにテーブルを囲めるのは幸せなことだと思う。『予言の子』として、ハリーがヴォルデモートに狙われていることを思えばなおさらに、この平安に感謝したい。もっともそんなことなど知らないハリーは、離乳食のお皿に顔をつけたり、相変わらず「トットッ!」とつかんで投げたりしているから、落ちつけたもんじゃないんだけど。今日覚えた新しい言葉が気に入ったみたい。

「ハリーはほんとに箒が得意だな。立派なクイディッチの選手になりそうだ。」

ジェームスが嬉しそうに言う。

「ほんとね。あなたをしのぐ選手になるかもよ。なんたって」

「歩くより先に箒に乗ってんだから!」

私が言うのにジェームスの声が重なり、2人で噴き出した。これはジェームスの好きなフレーズで、何度きいたかわからない。はいはいしているハリーに箒の包みを開いて見せたら、小さな手でむんずと掴んでそのまま宙に浮き上がってしまった。ジェームスも私もびっくりして、箒に乗るハリー、というより、赤ん坊をぶら下げた箒に、笑い転げたものだった。

「シリウスがハリーの誕生日に箒をくれたおかげで、家じゅうめちゃくちゃだ。文句言ってやんなくちゃ。」

それから、少し沈んだ声にかわる。

「あいつ、今頃どこにいるんだろうな。僕から会いには行けないし・・・。」

少し前、ダンブルドアからヴォルデモートが予言の子としてハリーを狙っていると知らされた。『忠誠の術』で居場所を隠すよう勧められ、今この家には『忠誠の術』がかけてある。その秘密を守る『秘密の守人』は結局ワーミーになってもらったのだけど、パッドフットは『守人』のふりをして姿を隠すことになった。闇陣営につかまらないように、愛車のバイクであちこち動き回るつもりらしい。相談のうえでのことだけど、兄弟みたいに仲のいい親友と会えなくて、ジェームスは寂しいんだと思う。『忠誠の術』をかける前から隠れ暮らしを余儀なくされて、ジェームスは自由に出歩けない苛立ちをパッドフットと会うことで紛らわしていたから。

「寂しいでしょうけど、私たちを守るためだから。」

「まったく、この僕が隠れて守ってもらわなきゃならないなんてな。仲間たちが命がけで戦っているのに、僕ときたらこんなふうに家に隠れて赤ん坊と遊んでるだけだ。もちろん君やハリーと一緒に過ごせるのは嬉しいよ。だけど外では仲間が殺されたり、行方不明になったりしてる。僕も外に出て闘いたいよ。シリウスと僕が加われば、もっとやつらをやっつけられる。ダンブルドアが透明マントを返してくれれば、せめて外の様子を探りに行けるのに。ああ、外に出られたらなあ。リリー、なんか僕はときどき、、、。」

「軟禁されてるみたいに感じるんでしょ?」

うなづいてジェームスは悔しそうに唇を噛んだ。

「ジェームス、歯がゆいでしょうけど我慢してちょうだい。ハリーのためなの。きっともう少しの辛抱よ。」

言いながら、自分でも気休めだとわかってる。もう少しのはずがない。闇陣営は猛威をふるい、騎士団側は仲間内に裏切り者がいるとささやかれ、次々と死者や行方不明者が出ているありさまだもの。しばらく前に密かに集まって記念写真を撮り、それから皆それぞれに身をひそめてしまった。勝利の見込みはなく、先が見えない中で、わずかな希望といえる予言は、ハリーがヴォルデモートを打ち倒す力を持つというものなのだから。この小さなハリーがヴォルデモートを打ち倒すまでに育つには、何年かかるというのかしら。それよりも、この子がやがてヴォルテモートと闘わなければいけないのかと思うと、胸が詰まって苦しくなる。そんな私の思いを知ってか知らずか。

「そうだな、ハリーのためだ。」

ジェームスが自分に言い聞かすようにつぶやいた。

食事を終えて居間のソファに移り、ハリーを抱いて座っていると、ハリーが何度も額に手をやるのに気がついた。よく見ると、髪に隠れて額に小さなこぶがある。さっき箒で飛び回っているうちに、どこかにぶつけたらしい。箒に夢中の間はよかったけれど、今になって痛むのかしら?そっと額に手をあてる。痛みが和らぐようにと、手のひらに願いをこめて。

そして私はセブを思い出した。あれはいつのことだったか、やっと立てるようになって間もない頃、ころんで頭をぶつけて大泣きするハリーの額にそっと手をあてた時、突然セブを思い出したのだった。ホグワーツを卒業してからというもの、闇陣営との戦いや結婚やハリーの誕生に紛れて考えることもなくなっていたのに。傷ついた額に手をあてるというその動作が、あるいは痛みが癒えるよう願うその思いが、子供の頃の記憶を蘇らせたのかしら?

セブの頬に傷跡を見て、痛々しさに思わずそっと手を当てた時のセブの顔が目に浮かんだ。驚いたように黒い目を見開いて、それから少しおどおどとはにかんで、嬉しそうな笑顔になった。まるでそんなことをしてもらったのが初めてだったみたいに。それまで先輩ぶって魔法の話をしていたセブが、頼りない子供に見えて。その後何年も、私はセブにそうしてあげるのが好きだった。セブの痛みは辛いのに、そっとあてた手からセブの痛みが和らいで、じわじわと幸せが広がっていくのが伝わってきて。手のひらでセブとつながってる気がした。母親になった今思えば、あれは母性愛みたいなものだったのかもしれない。

それ以降、何かの折に、セブのことを思い出すようになった。何といっても隠れ家住まいの暮らしでは、ぼんやりと物思う時間だけはたっぷりあるんだもの。今日のように怪我をしたハリーの痛みを癒す時、私を見て瞬時にとろけるハリーの笑顔に笑い返す時、ベッドに置いて離れてゆく私を、目で手で、全身で追い求めるようなハリーを見る時、ふとセブの姿が重なって、切なくなる。いつだってセブにはそんな気配があったと思う。こんな必死な思いを、切っても切れないつながりを、振り切ってしまったのかと。私は間違っていたのかしら?

自分が魔女とは思いもよらず、なぜみんなと違うのか、なぜ違うと責められるのかと不思議に思っていた私の前に、突然現れた魔法使いの男の子。マグルの町で初めて会った、ただ1人の同族の友達。しっかりと手をつないで魔法界に旅立ち、ずっと一緒だと信じていた。その後に起きた様々なことを思うと悲しくて、ため息が出る。

あんなふうに闇の魔術に傾倒し、デスイーター予備軍のグループに入ってマグルを貶めるようになるなんて。何度言っても耳を貸さないからこうなったんだと腹が立つ。デスイーターがどんなひどいことをしているか、闇陣営が力を増す情勢の中で闇の魔術に傾倒することがどんな意味をもつのか、もう子供じゃないんだから、きちんと考えてと口をすっぱくして言ったのに。

でも、今思えば、セブは子供のままだったんだと思う。普通でも男の子は女の子より幼いし、セブみたいに内にこもり、勉強以外の多くを学ぶ人間関係に恵まれない環境にあれば、しかたない面もあったかもしれない。そして私も、自分で思っていたより、ずっと子供だった。考えてほしくてセブを突き放した後、ルシウス・マルフォイとの怪しげな噂にひるんで、真意を伝える機会を逃してしまった。セブが私の知らない大人の世界に行ってしまったように思えて、気後れしてしまった。それでも騎士団に入って闇陣営をやっつければ、セブは帰ってくると楽天的に思ってた。現実は厳しくて、やがて闘いにまみれるうちに時が過ぎて。

ミャウーと足元で猫が小さな鳴き声をあげた。いつの間にかうちの庭に迷い込んで住み着いた黒猫。黒猫なんて不吉だってジェームスは言ったけど、黒猫というだけでうとまれる痩せた姿に胸をつかれて、他に行くところがないのよと家に入れて飼うことにした。隠れ家住まいの寂しさを癒してくれたけど、一度箒のハリーに激突されてから、ハリーが起きてる間は逃げ回ったり隠れたりばかりだったのに。ここのところ私の足元にまとわりついて離れない。おまえも心細いの?私のことを心配しているの?足で鼻先をつつくと、私の顔を見上げ、安心したように足に頭を載せて寝てしまった。そういえば、細身の真っ黒な体に鼻も少し大きくて、なんか、セブっぽい。私にしか懐かなくて、ジェームスと相性が悪くて、箒のハリーに追っかけられるとこなんかも。

こんなにセブのことを思い出すなんて、何かあったのかしら?元気にしてるのかしら?ほんとにデスイーターになってしまったの?あの時私がつき放してしまったから?そうだとしても、私たちの家族にも似た友情にかわりはないはず。きっといつか元に戻れると信じてる。でもこんなふうに最近セブをよく思い出すのは、セブが辛い思いをしてるのかもしれない。もしそうなら、傷ついた頬にそっと手をあて、大丈夫だといってあげたい。思わず腕に力がこもったのか、ハリーがぐずり声をあげた。

「そろそろハリーは寝る時間じゃないか?」

ジェームスに声をかけられて我に帰り、腰を上げると、足元の黒猫ものびをして立ちあがった。ハリーは寝かせられると察知したのか暴れだした。まだベッドにつれていかれるのはイヤみたい。

「じゃあ、先にベッドの準備をしてくるわ。ハリーをお願い。できれば興奮させないでね、もう遅いから。」

「了解。」

答えて受け取ったさきから、ハリーに蹴飛ばされて、こいつ、やったな!とじゃれ始めるジェームスに噴き出した。そういえばジェームスもあの頃は傲慢でどうしようもなかった。大人びた気はしていても、みんな子供だったんだ。ジェームスは、坊ちゃん育ちのわがままが、思春期に増幅して現れてたんだと思う。でもジェームスは成長し、きちんと自分の過ちに目を向けてくれた。反省して改めて、それを私に伝える勇気を持っていた。私が謝罪を受け入れるまで、何度でも投げ出さず向きあう姿がふとかわいく見えて、やがて男らしく頼もしく思えるようになった。その後のジェームスは、魅力的な恋人で、勇敢な闘士で、今は頼もしい父親。心から信頼し、生涯添い遂げると誓った、愛する夫。ジェームスと一緒なら、何があっても、きっと大丈夫って思える。

二階の部屋のベビーベッドを整えて居間に戻ると、ジェームスは杖先から色様々な煙の輪を出してハリーを遊んでやっていた。ハリーは床に立ち、笑い声をあげて、小さな手を伸ばして煙の輪をつかまえようとしている。

「まあ!ハリー、今日はもう十分遊んだでしょ?寝る時間よ。」

そう言うと、ジェームスはかがんでハリーを抱き上げて私に渡し、自分は杖をソファに投げ出して、大きく伸びをした。

「パパのほうがおねむなのね。ハリーもよいこで寝ましょうね。」

ハリーをあやしながら、ジェームスと一緒に居間を出た時。

突然、バタンと、玄関があく音がした。はっとして見合わせたジェームスの顔色が変わる。私もきっと、蒼ざめていたと思う。

リリー、ハリーを連れて逃げろ!さあ、行くんだ!早く!僕が食い止める!」

言う間もなくジェームスは玄関に向かって走り出した。私は階段を駆け上がって部屋に飛び込み、力いっぱいドアを閉める。ベビーベッドにハリーを置いた直後。

「アヴァダ・ケダブラ!」

おそろしい呪文の声が響き渡り・・・

「ジェームス!ジェームス!」

ジェームスが、、、ジェームスが、、、。悲しみと絶望に胸を引き裂かれたまま、そのへんの椅子や箱を、手当たりしだい、ドアの前に積み上げた。泣きたいけど、嘆いている時間はない。ヴォルデモートがやってくる。ハリーを殺しに。逃げ道もなく、どうやってを守ればいいの?ああ、せめて、杖を持っていれば。

ハリーを抱き上げて、しっかりと抱きしめた。こうしてこの子を抱けるのも、これが最後なのかという思いが胸を走り、それだけはダメ、この子の命だけは守ると誓う。ジェームスがしてくれたように、私が楯となってハリーを守る。けれど、けれどその後は?私が死んでしまったら、ハリーはどうなるの・・・

ドアの外で足音がとまり、積み上げたばかりの椅子や箱が音もなく動くのを、なすすべもなく見つめた。ドアが開いてヴォルデモートがあらわれた。その、恐ろしい姿。右手に握られた杖。

私はとっさにハリーをベッドに置き、かばうように両手を広げ、敢然とヴォルデモート前に立ちふさがった。けれど、、、杖もないこの状態で、邪悪な者の前にひとり立てば・・・愛も勇気もなんの力もないのだと思い知る。できるのは、、、

「ハリーだけは、ハリーだけは、どうぞハリーだけは!」

考える間もなく、すがるように叫び、懇願した。今にもあの呪文が唱えられ、すべてが終わってしまうのだと絶望に震える。けれど。

「そこをどけ、バカな女め、さあ、どくのだ。」

一瞬戸惑う。覚悟した呪文は、なぜか放たれなかった。なぜ?私にどけと?私を殺さないというの?ジェームスには死の呪文を投げたのに。消えかけた希望がよみがえり、必死にすがる。

「ハリーはやめて。どうか、お願い、私を殺して。代わりに、私を。」

「これが最後の忠告だぞ、、、」

「ハリーだけは!どうか、お願いです、お慈悲を、、お慈悲を。ハリーはやめて。なんでもするから、、、」

必死にかき口説きながら、どこか冴えた頭の隅で、ヴォルデモートには私を殺す気がないのだと考える。それならハリーも見逃してもらえるのではないか。けれど、ジェームスはすぐに殺したのに、じゃまする私をなぜ殺さずに、どけというの?

「どけというのだ、女、そこをどけ。」

めんどくさそうに繰り返すヴォルデモートの顔に思案する表情が浮かぶのを見た瞬間、疑問の答えがひらめいた。セブだ。セブが私を助けてと頼んだんだ。思いついてすぐにそれは確信にかわった。そして、ああ、あいかわらずセブはなんにもわかってない!助けてほしいのは私じゃない、ハリーなの。ハリーなのよ。私の命より、ハリーを。

目の前でヴォルデモートが、ゆっくりと杖を上げ始めた。おぞましく赤く光る目が私を見る。

・・・ハリーを助けて。お願い、ハリーを。

狙いに向けて、杖先が止まった。腕を広げ、その前に立つ。私が、受ける。この身に代えて、ハリーを。

どうか、ハリーを助けて。ハリー、愛しいハリー、ハリー、、、

「アヴァダ・ケダブラ!」

閃光が走った。

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tag : ハリーポッター リリー ハリー

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