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(過去3)1981ハロウィーン/序章2

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です。今回は原作の重要なネタばれを含んでいます。)

その夜は結局、一睡もできぬまま朝を迎えた。密告の決意をかためたことをルシウスに悟られないように、平静を装うのは苦しかった。けれど、リリーの窮地を思うといてもたってもいられない。大切なリリーの命を危険にさらすようなことを、なぜしてしまったのだと自分を呪う。

裏切りの不安と痛みを飲み込み、こみ上げる悔いと焦燥に駆り立てられて、ダンブルドアに知らせる手筈を考えた。デスイーターの僕に会ってくれるのか、会えば話もできずに殺されるのではないか、待ち合わせて出向けば不死鳥の騎士団の面々が待ち構えているのではないかと、次々に不安がよぎる。魔法省の魔法法執行部長のバーティ・クラウチが闇陣営との闘いにおける禁じられた呪文の使用を解禁してから、戦闘は熾烈を極めている。闇陣営側でもスリザリンからの友人のエバンとウィルクスが犠牲になったけれど、最近は騎士団側の死者や重傷者が相次いで、恨みは高まっているはずだ。そんな中、デスイーターが一人のこのこと出向いてゆけば、仇とばかり攻撃するか、捕えるかするにきまっているのではないか。

でも、そんなことにひるんではいられない。とにかく一刻も早くダンブルドアに会って、リリーの保護を頼まなければ、リリーが殺されてしまうかもしれないのだ。ホグワーツを訪ねても門前払いにされかねないし、闇陣営に知られる恐れもある。他によい手段を思いつかないまま、間抜けな気はしたけど、ダンブルドアにふくろう便を出した。どうしても知らせたいことがあるから内密に会ってほしい、人目につかないホグズミード村のはずれの丘で、夕刻以降何時まででも一人で待っているから、必ず来てくださいとしたためた。

夕方に屋敷を出て、指定した場所に向かう。日が落ちると、湿気を含んだ冷たい空気に霧が立ち込めた。会えるかという不安と、会うことの恐れにおののき、寒さに震えながらじっと待つ。突然、風が霧をはらい、ダンブルドアの姿が現れた。緊張と恐怖に圧倒され、杖を落とし、ひざまずく。

「殺さないでください!」

「そんなつもりはない。それで、セブルス、ヴォルデモート卿からなんの伝言じゃ?」

「伝言ではなく、私の意思で来たのです!警告することが、いえ、警告ではなく、お願いがあって来ました。どうか、、、」

「デスイーターがわしにどんな願い事があるというのじゃ?」

勢い込んで言いかけた言葉を、皮肉めいた口調で遮られた。僕に願い事などされる筋合いはないのだと釘を刺された気がして、ひるむ気持ちを奮い立たせる。

「予言です。トレローニーの。」

「ああ、そのことか。ヴォルデモート卿になんと伝えたのじゃ?」

「全てです!聞いたことすべて、そのままに伝えました。それで、、、だからダークロードはそれがリリー・エバンスだと考えています!」

「予言に女は出てきておらん。7月の末に生まれた男の子だと言っておる。」

「おわかりでしょう?リリーの息子だと考えているのです。ダークロードはリリーを倒し、皆殺しに、、、」

「おまえにとってリリーがそれほどたいせつならば、もちろんヴォルデモート卿は彼女を助けてくれるじゃろう。そう頼まんのか?」

「すでに、、、頼みました。」

「おまえは実にむかつくヤツじゃ。」

心底さげすむように言われて、身が縮んだ。

「それではリリーの夫や息子はどうでもいいわけじゃな?お前の望みがかないさえすれば、彼らは死んでもよいというのか。」

そんなこと、考えてもなかった。リリーのことで頭がいっぱいで。ポッターや赤ん坊のことなんて、できれば考えたくもない。だけど、なんとかリリーを助けてもらわなければ。ダンブルドアに断られたら、、、。

「では、家族全員を隠してください。リリーを、3人を安全な場所に。どうか。」

「それで、代わりにおまえは何をしてくれるというのじゃ、セブルス?」

「代わりに?」

一瞬意味がわからずダンブルドアを見上げた。冷やかな目が僕を見返す。だけど、なぜ?リリーはダンブルドアの仲間なのに。伝えさえすれば、ダンブルドアは当然仲間を守ってくれると思っていた。ダークロードを裏切って『予言の子』に関わる重要な情報を密告したのに、それだけではダメだと?いったい代わりに何をすると言えば頼みをきいてもらえるのか、何をしろと言われるのか、、、何かひどく、僕にとって恐ろしい要求をされているのだという感覚はあった。だけど、リリーを救うために必要なことならば。

「何でもします。」

「ようかろう。リリー・エバンスとその家族は、わしが最も安全な方法で隠してやる。」

「ありがとうございます。どうか、リリーを、3人を、必ず。どうか、急いでください。そちらに裏切り者がいる気配があるのす。誰かを締めあげれば居場所がわかると言いかけた者がいましたし、隠れているはずのそちらの陣営の動向が漏れています。どうか用心を。それで、、、私は何をすればよいのでしょうか?」

「ではさっそくじゃが話してもらおうか。そちらの陣営のこと、まずはデスイーターの名前からじゃ。」

「それは、、、私に仲間を売れというのですか?」

セブルス、わかっておらんのか。おまえはもう、わしのものじゃ。わしのスパイになるのじゃ。ルシウスの名を出したくないというなら言う必要はない、わかりきっておるからの。」

それから僕は、闇陣営について知る限りのことを言わされた。デスイーターたちの名前、会議の頻度や場所、標的としている者、魔法省で服従の術にかけられている者、最近のダークロードの動向など、次々に尋ねられ、少しでも言い淀むと厳しく問い詰められた。ダークロードは秘密主義で、僕の知らないこともあったけれど、問われるままに知る限りを答え終わった時には、自分が空っぽになった気がした。予言の子の情報を漏らしただけでなく、僕は仲間を売り、ここ数年信じて歩んできた自分のすべてを明け渡したのだった。言われた通り、僕はもうダンブルドアのもので、ダンブルドアは、ダークロードよりさらに抜け目なく、容赦ない人なのだ。それでも、これでリリーが助かるのならそれでいいのだと帰ろうとすると。

「これからおまえは、わしのスパイとして闇陣営の情報を探り知らせるのじゃ。すぐに伝えてもらわねばならんこともあるじゃろう。ふくろう便のやりとりなど、待ってはおれん。守護霊の伝令は使えるか?」

ダンブルドアに問われて戸惑った。

「デスイーターは守護霊を出すことはありません。」

「言ったじゃろう、おまえはもう、わしのスパイじゃ。今までは出さずとも、これからは出さねばならん。さあ、やってみるのじゃ。」

守護霊の呪文と出し方の知識はあるけど、したことのない術などすぐできるものかと思う。でも、ダンブルドアには従わねばならない。僕は足元の杖を拾い上げ、杖をかまえた。なんとか幸せな思い出を描こうとする。リリーを思い浮かべて。

「エクスペクト・パトローナム!」

唱えたけど、杖先からは何の気配もなかった。

セブルス、恐れるでない!恐怖や悲しみに打ち勝ち、憎しみや欲に汚されぬ、幸せな思い出だけが守護霊を呼べるのじゃ。集中してもう一度。」

厳しい声に押されて、再び杖をかまえた。それから、何度も何度も繰り返し。思い浮かべるリリーの姿はダークロードの死の呪文に揺らぎ、それならばとルシウスを思えば裏切りの痛みに崩れ落ち、気を取り直して子供の頃のリリーの記憶をたどればポッターやブラックへの憎しみがこみ上げた。

はたして僕に一点の陰りもない幸せな思い出などあったのか。リリーを窮地に陥れ、ルシウスを裏切り仲間を売って。僕の運命なのだ。物心ついた頃から不運が付きまとっている。どうあがこうと、親に見捨てられ、世界に拒まれて、暗闇にうづくまるばかりだった子供の頃から抜け出せはしないのだと投げ出しそうになったとき。

「あたし、リリー」・・・幼いリリーの声が浮かんだ。それから、傷ついた額にそっとあてられた小さな手。心配そうに僕をのぞきこむ緑の瞳。そうだ、あの闇の中の孤独な子供は、リリーに出会うことができたのだ。あの公園で過ごした日々を思い出すと、心に温もりが広がるように感じた。僕の魂に灯りがともされた、あの時。幾度となく僕を励まし、人生に立ち向かう勇気をくれた、幼いリリーの笑顔。しっかりとつないだ手。飽くことなく語り合ったホグワーツへの憧れ。

「エクスペクト・パトローナム!」

力強く振った杖の先から、銀色の光の粒が生まれ、一瞬、美しい動物の姿を成して消えた。ダンブルドアは目を瞬かせ、まるでその残像が見えるかのように少しの間空間を見つめた後、大きく息を吐いた。

「ほう、牝鹿か。」

「今のは牝鹿だったのですか?」

「わしには見覚えがあるのでの。セブルス、おまえは身勝手ではあるが、純粋に人を想う気持ちは持っておるようじゃ。」

ダンブルドアの表情から、はじめて、険しさが消えた気がした。ホグワーツの大ホールで時々見たように、眼鏡の奥の目にいたずらめいた色合いを浮かべている。ダンブルドアが軽く杖を上げると、輝く大きな不死鳥が舞い上がった。不死鳥は天空で向きを変え、僕の前に舞い降りて。

セブルス、術の練習に励むのじゃ。」

驚く僕の目の前で、ダンブルドアの声が告げ、不死鳥の姿が消えた。それからダンブルドアは、守護霊の伝令の伝え方をおしえてくれた。

僕は屋敷に帰ってから、一人部屋で、何度も守護霊の練習をした。心許ない影のようだった守護霊は、練習を重ねるにつれ、はっきりと大きな牝鹿の姿を描くようになっていった。試しに、「信じよ」と自分への伝言を託してみると、杖先から出た光の粒は優美な牝鹿の姿になって僕の前に立ち、「信じよ」と告げて消えた。美しい守護霊の発する声が僕のものであることにちょっと噴き出して、それから、この思い出がある限り、僕は過ちを償い、リリーを守るために立ち向かう勇気を持てると信じられる気がした。リリーの思い出がつくる守護霊が、リリーを守ってくれる気がして。それは祈りにも似た思いだった。

ダンブルドアとの密会のあと、僕の世界は一変した。闇陣営の集まりは、少し気詰まりするけど互いに受け入れあった仲間たちと過ごす場所から、緊張し警戒し探りを入れる気の抜けない戦いの場になった。それでも僕はむしろ前より積極的に、彼らの雑談の輪にも加わった。

誰かと話すたびに、僕はこの人を敵に売ったのだと後ろめたく感じ、同時に、いつリリーに害を加えるかわからぬ油断のならぬ相手なのだと警戒する。裏切りがばれぬよう閉心術を使いながら、リリーの居場所について何かつかんではいないかと言葉の端々まで検討し、また、ダンブルドアに伝えるべき情報はないかと探った。

やがてダークロードが姿を現して、とりあえず今この瞬間リリーは無事なのだと安堵に胸をなで下ろす。そんな内心の揺れをダークロードは感じ取ったのか、僕に目を向け、話しかけてきた。

「セブルス、この間は今にも死にそうな顔をして余のところに来たくせに、今日は元気そうだな。何かよいことでもあったか?女を得られると楽しみなのか?」

「わが君、そのようにからかわれてはお恥ずかしい限りですが、待ちきれぬ思いで待っております。」

「若い者というのは愉快なものよ。女ごときでそのように浮き立つとは。長くは待たせぬから楽しみにしておれ。」

「ありがとうございます。すでに何か手がかりでもあったのでしょうか?」

「うまく隠れておるつもりだろうが、あちらの動きなど早晩手に入る。時間はかかるまい。それよりセブルス、魔法省はもはや陥落寸前ゆえ、予言の子がかたつけばあとはダンブルドアの動きを封じるだけだ。女に浮かれてホグワーツに潜入する手筈を怠るでないぞ。」

「心得ております、わが君。学期中とはいえ、クリスマス前後には長期休暇や退職を希望する教授もいると思われますので、、、」

心を伝えようとすると言葉につまるばかりなのに、心にもないことであれば滑らかに口が動く。ダークロードは、褒美を楽しみに任務に励めと言って別のグループに移って行った。何気ない会話のさなかも、僕は細心の注意を払って閉心術を使っていた。開心術に長けたダークロードに対しては、単純に心を隠すのでなく、どうしても知られてはならぬことだけを幾重にも重ねた真実の壁の奥に隠しこむ。もし心をのぞかれても、閉心術を使っていると知られないように。

マルフォイ邸でルシウスと過ごしていると、閉心術を使う気苦労はなかったけれど、心苦しくて叫び出しそうになった。いつもと変わらぬルシウスに、偽りの姿で接することが苦しくて、すべてを打ち明け許しを請いたい衝動に駆られる。ルシウスはといえば、僕を疑わぬばかりか、僕が気になるだろうと言って、誰かから聞きこんだ予言の子に関わる話を伝えてくれたりするのだ。あちら側の裏切り者がデスイーターに加わっているらしい、ポッターに近い者のようだから、おまえの赤毛がおまえの自由になるのももうすぐだ、そうしたら私と赤毛とどちらを選ぶのだなどと、最後は冗談まで言われて、もう泣きたくなった。赤毛はそんなんじゃないとすねた口調で応じ、僕にはあなただけだと甘え、そんなことはわかっているなどと答えられるのは、闇陣営で閉心術を使って警戒しているよりも、ずっと気が滅入ることだった。

ナルシッサには、ルシウスに対してより用心が必要だ。ナルシッサはルシウスよりずっと細やかな心の動きを敏感に察知するし、日頃駆使するわけではないけど、ブラック家の魔力を持ち合わせ、開心術の心得すらあるかもしれないのだから。そしてなにより、可愛い赤ん坊のドラコを抱いたナルシッサの姿は、同じように赤ん坊を抱いているであろうリリーを思い描かせ、僕の心を揺さぶらずにはいない。その心の揺れを恐れて閉心術を使う僕を、嘘も偽りも知らぬ無邪気なドラコの目が見つめて笑いかけてきたりするのだから、たまらなかった。

裏切り者の僕は、マルフォイ家を出るべきだと思う。一方で、ルシウスの持つ情報力や僕への信頼は、リリーの命を陰ながら守るために必要なのだとも思い、こんな考え自体が冒涜だと自分が汚らわしく思えてならない。それでも部屋に戻れば、ルシウスから得た情報を、守護霊の伝令でダンブルドアに知らせた。ポッターの身近に裏切り者がいるなら、ダンブルドアによりいっそうの警戒を促さねばならない。

こうして神経を張り詰めた長い一日が終わる頃には疲れ切っていたけれど、今日1日リリーは無事だったのだと感謝した。僕のこういう1日が、リリーの命の1日なのであり、僕にできるのは、こんな日々を積み重ねてゆくことだけだ。そうしてリリーが無事に過ごしてくれるなら、ほかは些細なことだと思う。僕のせいでリリーが死んでしまうのを防げるのなら、嘘も偽りも緊張も罪悪感も、喜んで受け入れる。

夜ベッドに横たわると、心の深い奥底に閉じ込めていた感情がとどめようもなくあふれ出た。リリーの死への恐れ、そして予言を伝えてしまった悔い。できる限りのことをしているとはいっても、僕がしていることなどたかが知れている。デスイーター会議に出て、彼らの話を聞いて回り、そこにわずかでもリリーの身に関わることがないかと神経を研ぎ澄ます。それだけだ。いつ居場所が分かったと、襲撃を終えたとさえ聞く日が来るかもしれない。そんな話をきいても、その時にはもう、すべて終わりなのだ。食い止める手立てもなく、、、。考えると恐ろしすぎて、ダンブルドアにすがったのだから大丈夫だと自分に言い聞かせた。

ダンブルドアはもう、リリーを安全に隠してくれただろうか?もっとも安全に隠すと言ったのだから、『忠誠の術』を使うのだと思う。人の魂に秘密を封じ込めて守る『忠誠の術』。『秘密の守人』が明かさない限り、居場所はわからない。ダンブルドアその人が『守人』になってくれれば心強いけれど、そうでなければブラックだろうと、その名を浮かべた瞬間に怒りと憎しみがこみ上げた。あんな奴にリリーの命を預けるなんて。だけど、、、僕は生れてはじめて、ブラックを信じたいと思った。ブラックは最悪なヤツだがポッターとの友情は固かったはずだ。もしブラックがその身を盾にしてリリーを守ってくれるなら、あんな奴でも僕はこちらで陰から支える。たとえ僕の愚かな過ちを詫びる機会が得られないとしても、たとえリリーの笑顔がポッターとその子供に向けられるものであっても、リリーが生きてさえいてくれるなら、それ以上は望まない。

思ううちに心が波立つばかりで眠れない。気持ちを鎮めようと、ベッドから起き上がり、守護霊を出してみた。銀色に輝く光の一粒一粒に、リリーの勇気や慈愛が宿っているような気がする。守護霊に願いをかけて、ベッドに戻った。眠らなくちゃ。

リリー、どうか、無事でいて。

明け方近くにようやく訪れた浅い眠りは、死の呪文に倒れるリリーの姿で破られた。乱れた息をしずめ、恐怖に打ち勝つ勇気を願う。恐れと悔いを隠し、嘘と偽りで身を固め、神経を研ぎ澄ます1日が始まるのだ。僕のそんな1日が続く限り、リリーの命の1日が続くと信じて。

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tag : ハリーポッター セブルス ダンブルドア

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