スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(過去3)1981ハロウィーン/その夜2

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

ピーター (前篇)

庭の奥に見える家の窓に、ジャック・オー・ランタンの灯が揺れている。あの中でジェームスたちはハロウィーンの食卓を囲んでいるのかな。ジェームスのこと、楽しかったあの頃のこと、今は考えたくない。仲間4人がいつも一緒で、友情という言葉が光輝いていた頃。ジェームスとシリウスとリーマスと僕。プロングスとパッドフットとムーニーとワームテール。仲間だけの秘密の呼び名。4人集まれば、世界最強だと思ってた。

数日前に訪ねた時に見た、無邪気な赤ん坊の顔を思い出して、胸が痛んだ。美男美女の夫婦に、元気でよく笑う赤ん坊。絵に描いたような、完璧な家族。

でも、もう終わりだよ、ジェームス。もうすぐ『例のあの人』がやって来る。誰かがそんなふうに呼ぶと、君はいつも少し眉をしかめて、挑むようにはっきりとその人の名を口にしたものだけど。

さっきまで僕は、レストレンジの屋敷にいた。隠れ家から呼び出されてレストレンジ家に行くと、数名のデスイーターと『例のあの人』がいた。

「余は今夜、ポッター家を襲撃し、予言の子をかたつける。危険な芽は育たぬうちに摘んでおくに限るであろう。ついてはおまえに今一度、ポッターの隠れ家を確認しろとこの者たちが言うから呼び出した。間違いはないであろうな、ワームテール?」

「わが君、このような裏切り者を信頼なさるとは!調子のいいことを言っているだけです。思いとどまってください。」

「こやつのような臆病な小者が、『秘密の守人』など任せられるはずありません!」

僕が答える前に、周りのデスイーターたちが口々にわめいた。僕が手柄をあげるのが口惜しいんだ。彼らはいつだって僕をばかにしてる。ネズミに変身させて猫をけしかけたこともあった。だけど今度ばかりは。

「わが君、間違いございませんとも。わたしこそが『秘密の守人』。わが君のため、このワームテールが『忠誠の術を』解きまして、、、」

「もうよい、わかった。ポッターはワームテールを親友だといっているのだろう?友情に命を預けるとは、愚かな男よ。余の敵ではないわ。」

それから、それならおともしますと言いたてるデスイーターたちを振り切って、『例のあの人』は一人で出て行った。そのあとを追うように、僕もレストレンジ家を出て、先回りしてここに来ている。

『例のあの人』が仕事を終えて出てきたら、真っ先にかけつけてお祝いを言うんだ。僕のおかげで、忠誠の術が解けたんだから、褒めてくれるだろう。そして皆に対してはっきりと、僕の手柄を認めてもらう。そうすればもう、デスイーターたちも、僕に一目置かずにはいられないはず。『例のあの人』の信頼を得て、側近にだってなれるかもしれない。

夜が深まると、風が出てひどい嵐になった。足元の土はぬかるみ、体が冷えてくる。これじゃほんとにぬれネズミだ。毛足の短いネズミの毛皮じゃ寒くてたまらない。ふと、パッドフットの長い毛に包まれた温かい背中が恋しくなった。あの背中に乗って、頼もしいプロングスや毛むくじゃらのムーニーと繰り出した満月の夜の冒険。楽しかったな。もう二度とあの頃に戻れないと思うと、やっぱり寂しい。

でもそんなこと思ってもしょうがない。こうなったのも、ジェームスとシリウスのせいなんだから。恐ろしい『例のあの人』に逆らおうなんて。それも僕を巻き込んで。

ホグワーツの1年生の頃、彼らと親しくなれたのが、僕はすごく誇らしかった。明るくて頭がよくて、あっという間に誰もが認めるリーダーになったジェームスと、魔法界の王族ブラック家のプリンスで、ちょっと目を合わせるのが恥ずかしいくらいかっこいいシリウス。2人の目立つ人気者が、リーマスとともに僕を親友に選んでくれたことが嬉しくて、有頂天になった。それからずっと、彼らについていきたくて、一生懸命だった。

リーマスが人狼だと知らされた時、こわいのとおぞましいのとで飛びのきそうになったのを、必死でこらえたのだって、彼らに認められたかったからだ。もっとも、親しくしてみれば、リーマスはいつも周りに気を使う温和な性格で、人狼だというだけで偏見をもつのは間違ってる。僕は反省して、偏見を乗り越えさせてくれたジェームスたちを尊敬した。

そのリーマスと満月の夜も一緒にいるためにアニメ―ガスになろうと2人が言い出して、そんなの無理だと思いながら最後までやり遂げられたのも、彼らについていきたかったから。頑張って彼らみたいになりたかったし、彼らも僕を励ましてくれた。大丈夫だよ、ピーター、きっとできる、努力家で粘り強くやり抜く力があるんだと言って。

いつの頃からだろう、その励ましが時々重苦しく感じられるようになったのは。どんなに頑張っても、僕は彼らと違う。僕が人の何倍も努力してやっとできることを、彼らはやすやすとやってのけた。子供の頃は憧れるばかりだったけど、大人になりかけた頃には気づいてた。どんなに頑張っても、どんなに仲が良くても、ジェームスはヒーローで、シリウスはプリンスで、僕はシリウスの腰ぎんちゃくだ。落ち込むことはあったけど、彼らから離れたいなんて思わなかった。たとえ陰でなんと言われても、人に羨まれる強いヒーローの仲間でいたかった。シリウスが黒髪をなびかせて、さあ、行こうぜと杖を上げると、それがどんなバカげたことでも、常識的に考えてハタ迷惑としかいえない計画でも、王子と繰り出す夢のような大冒険になった。

リーマスがいたことも心強かった。自分が鬱屈を感じてみると、リーマスが僕以上に複雑な思いを抱えているのがよくわかった。リーマスは魔力が強いし、年を追い勇敢になったけど、時々陰りをみせるその気持ちが僕にはわかった。ジェームスとシリウスは自ら光を放つ太陽みたいなもので、眩さの影で光をみつめる鬱屈なんて知りはしない。僕は沈むリーマスを労わる時、自分が少しだけヒーローみたいに思えた。

7年生になり卒業が近付いた頃には、ジェームスたちだけに許される、勇気と友情こそすべてという万能感にはつきあいきれないと思い、身の丈に合った堅実な仕事、魔法省への就職を選んだ。就職する気も必要もないジェームスとシリウス、就職に手も届かないリーマス、そして魔法省に職を得た僕。自分が大人になった気がして、これからはそれぞれ違う足場に立って友情を続けていけばいいんだと、ほっとしてもいた。

だけど、ジェームスとシリウスは、僕を放っておいてはくれなかった。彼らだけは、2人だけが特別で、僕は違うと認めない。みんな同じ仲間の親友なんだと言って、僕を『不死鳥の騎士団』に誘い込んだ。あのとき正直に、僕は彼らほどの勇気も魔力もなくて、おそろしい闇陣営と命がけで闘うのなんていやだと言えばよかったのかもしれない。だけどジェームスとシリウスには有無を言わせない強さがある。その力の魅力から離れるなんて無理だった。魔法省の諜報に僕ほど相応しい人はいないとか言われてその気になって、卒業とともに、誇らしささえ感じながら、騎士団の一員になった。

騎士団の活動も、はじめはよかった。僕は自分で思っていた以上に優秀なスパイで、次々と重要な情報を手に入れていった。というのも、ネズミに姿を変えて、こっそりと探ることができたから。魔法省に潜入するデスイーターと目される者の確証をとったり、彼らの企てを盗み聞きしたりできた。騎士団の集会では違法なアニメ―ガスは秘密だったけど、仲間4人で集まった折にそんな話をしたら、ジェームスが黒犬と牡鹿じゃなんの役にも立たないなとか言って、魔法省の廊下で盗み聞きをする大きな黒犬や牡鹿を想像して噴き出した。シリウスなんか黒犬に変身して柱の陰に隠れてみせて、ありえないとみんなで笑い転げたものだった。

だけどそれも長くは続かなかった。魔法省内で闇陣営の力が強まり、どの部署の誰が服従の術であやつられているらしいとか、協力を拒んで痛めつけられたとかという話ばかりになって、やがてみんなうつむいて口を閉ざした。どこに敵が潜んでいるかわからないんだもの。僕も、デスイーターの潜入者から、おまえはグリフィンドール寮の出身かと意味ありげに声をかけられ、すっかりこわくなった。

最後に僕が心から笑ったのは、ジェームスの子、ハリーのお披露目に仲間が集まった時だった。そのときはもう、いろいろとこわくて、騎士団も魔法省もやめようかと悩んでいたんだけど、生後間もない赤ん坊の愛らしさに引き込まれ、つい、みんなと一緒にハリーを守ろうなんて思ってしまった。いつになく感傷的になったリーマスにひきづられたみたいなもんだ。あとで思えばそれが間違いだった。

赤ん坊の姿に意気は上がっても、現実といえば、ジェームスは家にこもって隠れているし、闇陣営の襲撃への応戦でジェームスと同様目立っていたシリウスは姿をくらましてばかりだし、リーマスは人狼集落に潜入して居場所もわからない。あの赤ん坊のために今動いてやれるのは僕しかいないという、バカげたヒーロー意識を起こしたのが破滅を招いた。闇陣営が赤ん坊のいるジェームスの所在をつかんでいるかどうか調べてやろうと思い立ち、久しぶりにネズミの姿になって、魔法省に潜入しているデスイーターの後を追い、見つかってしまった。ひと気のない廊下で、突然向きをかえるなんて予想できるわけない。逃げ損なってしっぽを踏みつけられ、ネズミ退治と向けられた杖に震えあがった瞬間、人の姿に戻ってた。

それから、抵抗もできないまま、『例のあの人』の前に連れていかれた。強面のデスイーターに囲まれて、あの恐ろしい目に睨まれたら何ができるっていうんだ。それまでさんざん耳にした、おそろしく無慈悲で強力な磔の術が僕に向けられるのかと思うとこわくてたまらなくて。騎士団員であることも、魔法省でスパイをしていたことも、あっという間に白状させられた。

その後は殺されるのかと怯え、夢中で『例のあの人』の足元にすがりついた。命だけはお助け下さい、仲間に言われて不本意ながら騎士団に入っただけで、貴方様に逆らうつもりなどなかったんです、何でもしますから助けてくださいと。するとあの方は、手ぐすねひくデスイーターを押しとどめ、予想外に穏やかな声で言ってくれた。不死鳥の騎士団の情報を流すなら、命を助けてやってもよい、余の役に立つのなら、闇陣営の仲間にしてやってもよいのだぞと。僕はありがとうございます、役に立ちますから仲間にしてくださいと叫び、頭を床に擦り付けて感謝した。

なんとか命拾いして、家に帰って考えた。あんな恐ろしい人と闘うなんて、間違ってた。闇陣営は魔法界のあらゆるところに力を伸ばしていて、今はもうすべてはあの方の思うままだ。ジェームスもシリウスも頼りにならない。友達のためなら死ねるって言ってたのに、僕の助けにはならなかった。危険な騎士団に誘い込み、闘いの主戦場のような魔法省で一人スパイをさせただけじゃないか。これからはもう、『例のあの人』に従うしか生きのびる道はないと思った。

それから何度か騎士団の情報を流し、はたらきを認められてデスイーターになった。他のデスイーターたちにはやっかまれたし、スリザリン出身の多い中グリフィンドールの肩身は狭かったけど、『例のあの人』は僕が得る騎士団の内部情報を重宝がってくれた。新人研修だと言って、あの方みずから、闇の魔術を教えてくれたこともある。悪いものだと思ってた闇の魔術も、目の当たりにするとその威力に感服した。武装解除みたいな術どうしでやりあえば、どうしたってその人の持つ魔力やすばしこさで勝負がつくことになるけど、闇の魔術は術自体が威力を持っている。闇の魔術を使えば、たとえば僕がジェームスやシリウスに勝ることもあるんだって思ってびっくりした。もちろん習得するのは簡単じゃないけど。とにかく、こんな強い術を使う、もっともすぐれた闇の魔法使いに逆らうなんて馬鹿げてる。

『例のあの人』から、いろいろと細々したことを命じられるようになって、魔法省も辞めてしまった。魔法省の事務仕事をこなすより、あの方のそばに仕えて認められるほうがいい。その頃には、僕が情報を流したこともあって、騎士団メンバーへの襲撃が度重なり、騎士団は皆危険を避けて身をひそめるようになっていたから、僕の辞職がとやかく言われることもなかった。

でも、闇陣営のスパイになったとはいえ、仲間3人に危険が及ぶようなことはしたくなかった。『例のあの人』に問われても、彼らはすばしこくて動静がつかめないとごまかし、脅されて切羽詰まれば、逃げ足の速いシリウスが少し前に現れた場所を言って逃れた。デスイーターたちから、ほんとに友達か?友達と思ってるのはおまえだけじゃないかと揶揄されながらも、歯を食いしばって耐えたんだ。実際、今だって、リーマスが人狼集落に潜入してることは言ってない。僕なりに精いっぱい、親友たちに尽くしてた。

だけど少し前、『例のあの人』が、デスイーターの幹部会で、ハリーを予言の子だと宣言し、皆にジェームス一家の隠れ家を探し出せと命令を下した。僕は幹部会には出ていなかったけど、『例のあの人』から、直接、友達というなら探し出せるはずだと脅された。この日のために命を助けてやったのだと杖さえ向けられて。僕は驚き、震えあがって、でもジェームスを死に追いやるようなことはしたくなかった。複雑な思いを持つことはあっても、僕の長年の親友だ。僕が僕なりに、一番輝いていた頃の思い出を穢したくないもの。ジェームスを売ることは、人として越えてはいけない、越えればもう何もかもが壊れてしまう一線だとわかってた。

頼りにすらするようになっていた『例のあの人』は、また恐怖の対象に戻り、デスイーターに取り囲まれているのは、苦痛以外のなにものでもなくなった。僕はなんとかその苦境から逃れたくて、いっそジェームスに打ち明けて、かくまって助けてもらえないかとまで考えてた。きっとジェームスなら僕の苦しい事情をわかってくれるって。それなのに。

みんなシリウスのせいだ。考えなしのシリウスが、何も知らないで。思慮深いジェームスやリリーまで同意するなんて。

あの日密かに会いに来て、こともあろうにこの僕に、ジェームス一家を隠す『忠誠の術』の『秘密の守人』になれと言った。僕の顔色をうかがうことさえなく、得々として。

「な、これなら完璧だろ?ジェームスたちが『忠誠の術』で隠されたと知れば、闇陣営は俺が『秘密の守人』だと考える。まさかおまえが『守人』なんて考えるヤツはいないさ。俺は身を潜め、ヤツらは俺を探す。万一見つかったとしても、ジェームスを裏切るくらいなら死を選ぶ。おまえだって同じだろ、ピーター?これでジェームスたちは安全だ。」

僕はいやだよ、『忠誠の術』で隠すなら、僕を隠してよと言いたかった。僕が『守人』に相応しくないと言ったも同然なのに、その同じ口で僕に『守人』になれなんて。ジェームス、ジェームスで、僕のことなんかどうでもいいの?友達だって言ってたのに。唐突に、シリウスの腰ぎんちゃくと言われてたことを思い出した。腰ぎんちゃくの僕なんか、危険な役目を押し付けて、裏切るなら死ねっていうの?僕が危ない時には助けてくれないくせに。何を言う気にもなれなかったけど、それでも最後の頼みの綱を思いついた。

「リーマスは?リーマスなら魔力だって強いし、隠れるのだって、、」

僕に最後まで言わせず、シリウスは顔をしかめて、大きく首を横に振った。

「リーマスは、、、。友達を疑うなんて俺も嫌だけどさ。最近、騎士団の情報が漏れてる気配があるだろ?」

そうか、シリウスはリーマスを裏切り者と疑ってたんだ。同調したジェームスもそうなんだ。あんなに熱く親友だ、友情だって言ってたのに。振り回すだけ振り回して、結局2人とも友達を裏切ってるじゃないか。なんだかバカバカしくなった。友情に胸を熱くしたことも、彼らに憧れて、背伸びばかりしてたことも。

「うん。わかった。いいよ。僕、『守人』になるよ。ジェームスたちを守らなきゃね。」

つくり笑いして言うと、シリウスは単純に喜んだ。

「そうこなくっちゃ、ワームテール!最初は俺を『守人』にすることになってたんだけどさ、このほうがいいって思うだろ?ジェームスも、ピーターなら大丈夫、きっとやり遂げてくれるってさ。敵を欺くにはまず味方から。騎士団の誰にも、ダンブルドアにも秘密だぜ。」

 にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。