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(過去3)1981ハロウィーン/その夜4

(これは『ハリーポッター』の本と映画鑑賞後の妄想です。今回は原作の重要なネタばれを含んでいます。)

シリウス

ワームテールの隠れ家を訪ねると、留守だった。万一を考え、外に出るな、様子を見に来ると言ってあったのだが。杖で灯りをともして見回すと、急な隠れ家でわずかな家具しかない部屋に、乱れはない。ベッドのシーツさえちまちまとたたんで置いてある。

これは、、、まさか。

嫌な予感が走る。襲撃の気配もないまま、部屋の主が消えた。まさか、ワームテールが裏切った?あいつが裏切り者だったのか?

ジェームスがあぶない!

部屋を飛び出し、バイクにまたがった。最大出力で空にかけあがる。ゴドリックの谷へ、ジェームスの家に。もっと速く!

ダンブルドアに言われてあの家に『忠誠の術』をかけるとき、俺がジェームスを説得して、最後の最後に『秘密の守人』をワームテールに変えた。ジェームスは俺に頼むと言ったのに、みんなそう思うから、あいつを『守人』にして、俺はオトリになって姿を消すほうがいいと。俺がそう勧めた。うまい方法だと思った。闇のやつらは俺を探す。万一見つかったって、口は割らない。ジェームスを裏切るくらいなら死を選ぶ。それならいっそそれでもいい。守人が死ねば、手掛かりも消えるってことだ。

だが、まさか、ほんとにワームテールが裏切ったのか?あいつは俺たちより魔力も勇気も劣っているが、いつだって頑張ってやり遂げた。才能ある者が簡単に為すことより、平凡な者が努力して成し遂げることのほうが貴いんじゃないかとジェームスと話したことだってある。まじめで努力家のワームテールがジェームスを裏切るとは・・・。

いや、あいつだって友を裏切るくらいなら死ぬはずだ。ジェームスを裏切るはずがない。騙されておびき出されたのか。それなら俺が『守人』を頼んだせいでワームテールは闇陣営に捕まったのか。あいつはいつも俺の後をついてきてた。俺が守ってやらなきゃいけないのに、危険な役割を頼んじまった。

どうか、すべて、嘘であってくれ。ワームテールはちょっと、外の空気でも吸いたくなって、ねずみになって出かけただけかもしれないじゃないか。そうであってくれ。ゴドリックの谷に着いたら、ジェームスが笑って出迎えてくれて、俺のバカな取り越し苦労だったと言う。いつだってパッドフットは考えなしに先走るんだと笑って言ってくれれば。

だがゴドリックの谷について、壊れた家からハグリッドがおろおろとハリーを抱えて出てくるのを見た時、すべてを悟った。絶望に襲われたが、尋ねずにはいられない。

「ハグリッド!ジェームスは?ジェームスは無事か?」

予想通りの答えが返って来た。最悪の答えだ。もう何も、打つ手はない。俺のせいで。俺のせいでジェームスが。

ハグリッドの腕の中で、何も知らないハリーが俺を見た。子供の頃のジェームスにそっくりな赤ん坊。俺のせいでこんなに小さいのに親をなくして。ジェームスの、ただ一人の、忘れ形見。

「ハリーを俺に渡してくれ。俺はハリーの後見人なんだ。俺がめんどうをみる。」

ハグリッドは頑なだった。ダンブルドアはハリーを叔母さんの家に預けると言いなさったと言いはって、ハリーを渡さない。俺が育てて、ジェームスがどんなに素晴らしい男だったか、どんなにハリーを愛していたか伝えてやるっていうのに。だがハグリッドはダンブルドアの言いつけを、死んでも守るやつだ。ハリーを守るのでなければ、俺がすべきは、ワームテールを見つけることだ。もし囚われているなら救い出さなければならない。もし裏切ったなら、いや、秘密が漏れて襲撃されたのだから、あいつは裏切ったんだ。『秘密の守人』が明かさない限り、この家が見つかるはずはないんだから。ワームテール、俺たちを裏切って、ジェームスを売るとは。

ハグリッドにバイクをやって、それでハリーを届けてくれと託した。ワームテールを見つけるのに、バイクはむしろじゃまになる。ハグリッドとハリーを見送り、壊れた家に走った。もう遅すぎるのだが、せめてジェームスをこの目で見るまでは、、、。

探すまでもなく、壊れた家の玄関先に、ジェームスは倒れていた。命と光の象徴のようだったジェームスが、まるで壊れてうち捨てられた人形のように、、、

「ジェームス!」

肩をつかんで揺すぶりながら。

「ジェームス!プロングス!返事をしてくれ。俺だ!俺が来た!もう、大丈夫だから。嘘だよな?嘘だと言ってくれ。ジェームス、、、俺の、、、」

抱え上げ、揺すぶっても力なく揺れるだけの体を抱きしめて、まだ残る温もりが消えないようにと温める。だが、、、少しずつ冷たくなってゆく体に、ジェームスの命も、魂も、もうここにはないと、認めるしかない。すべてはおわってしまった。起こるはずのないことが起こり、俺のせいでジェームスが死んでしまった。俺が『守人』をワームテールにと勧めたせいで。

冷えた体をそっと床に置き、乱れた服を整えてやった。そばに落ちていた眼鏡をかけさせ、整えた髪に手を入れてくしゃっと乱す。こうじゃなくちゃな、おまえはいつも、完璧なんてかっこ悪いって言ってたもんな。いろいろと気にして、かっこつけてたくせに。大好きなリリーと結婚して、かわいい子供もできたのに。こんなに早く、まだ21じゃないか。これからもずっと、何年も何年も、一緒にいられるはずだったじゃないか。

周りを見ても、あるはずの杖が見当たらない。杖を持っていなかったのか、ジェームス。杖も持たずヴォルデモートに立ち向かって。無念だったろうな、ハリーを残して。でもおまえほど勇敢なヤツはいない。おまえみたいなやつは、ほかにいない。

「ジェームス、ハリーは助かったぜ。待ってろ、リリーを見てくるからな。」

ジェームスのもとをいったん離れ、リリーを探した。物が飛び散る家の中を歩き、ニ階の奥の、ひときわ壊れ尽くした部屋の中、そこだけが元の面影を残すベビーベッドの前に、リリーの亡骸があった。腕を大きく広げ、おそらくそうしてハリーをかばった姿そのままに、倒れていた。

「リリー、最期までハリーを守ったんだな。ハリーは無事だぜ。まったく、たいした女だったよ。子供の頃ははねっ返りで気に入らなかったがな、ジェームスが夢中だったから、俺妬いてたんだ。だが似合いの夫婦だった。ジェームスに相応しい、いい嫁さんで・・・。すまん、リリー、俺のせいだ。俺のせいでこんなことになって。」

乱れた髪と服の裾をなおしてやった。見開いたままの目を閉じようと手を伸ばすと、その目がハリーを呼んでいるように思え。

「ハリーはあんたの妹んとこだ。姉妹仲は難しそうだったが、たった一人の身内だからな。何かあれば俺が黙っちゃいないさ。」

リリーの目を閉じ、心の中でもう一度すまんと謝り、ジェームスのもとに戻った。

「ジェームス、リリーも立派だったぞ。最期までハリーをかばって。あっちで2人一緒か?俺は、、俺は。」

あついものがこみあげる。ジェームスと初めて会った時。ブラックの家の中で、ただ一人の異物だった俺に、はじめてできた家族。考え方も気もあって、兄弟みたいだ、一心同体だと言われ、その通りだと答えてた。ほんとに、俺はおまえで、おまえは俺で、何の疑問もなくそう思ってた。それなのに、俺のせいで。俺が殺したも同然だ。

生気の失せた頬を撫で、冷えた唇に口づけをした。ホグワーツの頃にかけまわった林、6年の夏休みに泊めてもらったこと、ジェームスの結婚前、2人で出かけたバイク旅行。思い出も涙も、溢れて出て止まることがない。いつも一緒だった、俺の分身。俺のジェームス。2人で光の中を駆け抜けて、どこまでも一緒のはずだった。俺を残し一人で逝くなんて。おまえを死なせて、俺はこれからどうすれば・・・。

顔を上げて涙を拭った。そうだ、俺にはやることがある。なぜこんなことになったのか、何があったのか、必ず突き止め仇をとる。ワームテールが裏切ったなら、けっして許さない。あいつを見つけ出して、まず問い詰める。何があったのか、なぜこんなことをしたのか、ジェームスを売るくらいなら、なぜ死ななかったのか。

「ジェームス、必ず戻るからな。俺を待っててくれ。」

決意を固めて家を走り出た。ワームテール、いったいどこだ?どこにいる?と思った時。

突然暗がりの植え込みから、ワームテールの姿が湧きあがった。あいつ、ここに来てたのか!ジェームスが殺されるのを、黙って隠れて見ていたのか!

「待て!ワームテール!」

怒りがこみ上げ煮えたぎる。俺が叫ぶと、やつは一目散に走り出した。

「臆病者!俺から逃げ切れると思うのか!」

叫びながら走る。ピーターなんかに振り切られる俺じゃない。手を伸ばして、丸めた背中をつかみかけた、その瞬間にピーターの体が消えた。ディサパレートしやがった!俺も瞬時に続き、姿を現すと同時にその体を抱え込んだ、、、つもりが、宙を切って倒れた。視線の隅を、小さなネズミが走り去ってゆく。

「ワームテール!」

すぐに黒犬に姿を変えてネズミを追った。逃がすものか。ネズミは追いつかれそうになると狭い隙間にもぐりこみ、見失ったかと思うと塀の上に逃げ惑うみじめな姿をさらす。

アパレートを繰り返し、動物になったり人に戻ったり、姿を変えながら、追い詰めては逃げられて、見失っては見つけ出し。こんなにすばしこい奴だったのかと舌を巻き、逃がすわけにはいかないと、目を凝らし、鼻を利かせ、ひたすらに追ううちに、いつの間にか日が上がり、俺はマグルの街を走っていた。

ちらほらとマグルが行き交うその中の、明らかにおかしななりをした一群のわきを駆け抜けたとき、「生き延びし子」「ハリー・ポッター」の声が耳をかすめた。あれはほんとに起こったことなんだ。ハリーは助かったが、ジェームスは死んでしまった。あいつなんか信じたばかりに。俺のせいだ。俺がジェームスを殺したようなもんだ。俺のジェームスを、俺が判断を誤って殺してしまった。悲しみと悔いを噴き上がるにまかせ、ただ目の前のピーターの背を追って、あとわずか。

またディサパレートしたピーターは、後に続いた俺が姿を現すと、こちらを向いて立っていた。こいつ、あきらめたのか。あきらめたんだな。俺から逃げ切れるわけがない。俺が怒りを込めて睨みつけると、やつはじりじりと後ずさり。

「リリーとジェームスを、シリウス!よくもあんなことを!」

泣きながら大声でヤツはわめいた。なにをバカなことを言うんだと頭に血が上り、杖を向けたその瞬間に。

ものすごい轟音が響き、周囲が砕け飛んだ。なんなんだ!何が起こったんだ!

轟音にやられた耳にかすかに人の悲鳴が聞こえ、もうもうと立ちあがる砂塵に目を凝らすと、目の前の道にぽっかりと深い穴があき、周りには瓦礫と血と肉が飛び散っている。いったい何が?やつはどこだ?

あたりを見回し、膨大な瓦礫の中にずっと追い続けたピーターの服と小さな肉片をみつけ、深くえぐれた穴の奥底に壊れた土管の口が開いているのが見えて、、一瞬、苦笑いが浮かんだ。あいつ、ネズミになって逃げたのか。血まみれの服と自分で噛み切った指かなんかを残して。

死んだふりか、ピーター?ジェームスを売り、俺をはめたのか?おまえにこんなことができるとは。あんなやつをを信じてジェームスを死なせちまった、、、俺はなんてバカなんだ。

気がつくと、杖をかまえた魔法使いに取り囲まれていた。

「よくもこんなひどいことを。」

「マグルが10人も巻き込まれたらしい、いや、10人以上だ。向こうにも怪我をした者が、、」

「目撃者の証言をとって、記憶を消せ。はやく、マグルが集まってくる前に!」

魔法使いたちは口々に言いながら、俺に向けた杖をそらさない。俺は呆然として、抵抗する気力もなかったのに、20人もの魔法使いが俺を引きずるように魔法省に連れて行った。そして窓のない暗い部屋に、手錠と足枷をつけて放り込んみ、幽閉呪文を唱えた。一人部屋の隅の壁に寄りかかり、俺は確かにこの罰に値するのだと考えていた。ジェームス、リリー、それに10人ものマグル。皆、俺のせいで命を落とした。俺が、ワームテールを信じたから。俺がやつを疑いもせずに、騙されてはめられるような、バカだったから。

だがワームテール、おまえをこのまま逃がしはしない。ジェームスを売った罪を、必ず償わせる。取り調べが始まれば、もう終わりだぞ。ネズミになって逃げたと説明するのは簡単じゃないが、俺が黒犬に姿をかえて納得させる。

部屋の外で足音が止まった。さあ、ワームテール、おまえの罪を暴いてやると、挑むように立ちあがった。だが、ドアが開くと。

「凶悪殺人犯、シリウス・ブラック!12人のマグルと、魔法使いピーター・ペティグリュー殺害の罪で、アズカバンに収監する。」

なんだと?なぜだ!取り調べは?裁判は?俺じゃない、ピーターだ。ヤツは生きてるんだ!俺は叫び、本気で暴れようとしたが、手錠と足枷に阻まれるうちに失神呪文を放たれて、、、。

気づいた時は、鉄格子のはまった真っ暗な牢獄の中にいた。ここはアズカバンか、、?一度入れば出た者はいないという、海に浮かぶ孤島の牢獄。俺はここで、ずっと?ダメだ!

俺は鉄格子をつかみ、大声でわめいた。

「違う!俺じゃない!話を聞け!きいてくれ!」

めんどくさそうにやってきた官吏が、杖で俺を弾き飛ばした。

「うるさい、この人殺しが。」

他の官吏たちも集まって来た。

「こいつがシリウス・ブラックか?人殺しだけじゃなく、親友だというt『生き延びし子』の父親を裏切って、『例のあの人』に売ったヤツか。見るからに凶暴で、裏切り者の面してらあ。ジェームス・ポッターも、こんなやつを信じるなんてな。」

違う!俺は!俺は、、、死んだってジェームスを裏切ったりしない!

だがもう、俺の言うことに耳を貸す者はいない。官吏たちが去り、静まった暗い牢獄に一人うずくまる。ジェームス、ジェームス、俺はこんなことになっちまった、おまえのもとに戻ると言ってきたのに。おまえに何かあれば、ハリーはまかせろと言ったのに。だが、たしかに、俺にはこの場所がふさわしいのかもしれない。俺のせいでおまえを死なせた。その罪は、何をしても償うことはできない。ああ、だがジェームス、まさかこんなことになるなんて。

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