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(過去3)1981ハロウィーン/その夜3

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の妄想です)

ピーター (後編)

こうして僕は、『秘密の守人』になった。なった時から、長くはもたないとわかってた。そもそも僕は、相応しくないんだから。

僕は最後に一度、ゴドリックの谷のジェームスの家を訪ねた。ワーミー、よく来てくれたわねと歓迎してくれたリリーと赤ちゃんに心の中であやまり、ジェームスが元気のない僕に何か気付いてくれないかと望みをかけた。秘密の守人はたいへんなんじゃないかって、ほんとはイヤなんじゃないかって、ジェームスが気づいてくれたらよかったのに。

それでも数日は耐えた。『例のあの人』が、赤子の居場所一つ、まだわからぬのかと苛立つのに目を伏せて。内心こわくてたまらなかったけど。だけど、もし報告しないまま、僕が『秘密の守人』だとバレたらどうなるかと考え出すと、もう我慢できなかった。どうせ時間の問題だ。あの方に問い詰められたら、誰だって恐ろしくて黙っていられるはずない。それなら自分から言うほうがいい。どうしようもないんだもの。翌日僕は『例のあの人』に秘密を明かした。あの方は喜んで、ワームテール、よくやった、わが忠実なしもべよと褒めてくれて、僕はほっとした。

そして今、僕は再びこの家を訪れて、ネズミの姿で植え込みに隠れている。『例のあの人』がやってきて、ジェームスたちを殺すのを見届けるために。この機会は無駄にせず、闇陣営での僕の立場を守るために使わせてもらう。寝返ったから、グリフィンドールだから、弱いから、チビだからって、デスイーターたちから軽んじられてばかりなんだもの。なんとか『例のあの人』の寵愛を得たいとまでは言わないけど、側近と認められたい。

植え込みの向こうの道で、雨音が高まった。何かが雨風を切って、こちらにやってくる。僕は植え込みの根元に身を寄せて、ヒタヒタと迫る足音に耳をすます。やがて暗闇に黒い影が浮かび、わき目も振らず玄関に向かっていった。その背の向こうの家の窓の中に、立ち上がり、腕を上げて伸びをする人影がぼんやりと見えた。ジェームス、、、何も知らずに。ごめん。

僕だって、こんなこと望んだわけじゃない。僕のせいじゃないよ。みんなシリウスのせいだ。シリウスと君のせいだ。僕を秘密の守人なんかにするから。僕は嫌だったのに。

バタンと開く扉の音。何かわからないどなり声。バタバタと人が駆けまわる足音。そして。

すべては、一瞬で終わった。

壊れたドアの内側に倒れているのは、、、ジェームスにきまってるけど。あの、光に満ちて、明るく輝いていたジェームスが、わずかな胸の動きすらみせず横たわってる。

あの方に勝てるわけないんだ。逆らったのが間違いなんだ。そうでしょ?

でも、何かが、終わった気がした。もう、二度ともとに戻ることのない、たいせつな何か。胸に走った切り裂けるような痛みは、友の死の悲しみか、失われた輝かしい少年時代への憧憬か。あの頃の僕たち。最強のグリフィンドール4人組。 

感傷に浸ったのは一瞬だ。わかってたことだもの。しかたなかった。僕のせいじゃない。戻れない川を渡った今、戻れない川の向こう岸を見てたってなにもならない。川のこっち側だって、まだ安泰ってわけじゃないんだから。

身を乗り出してまともに雨を受けてたのに気づき、植え込みの根元に戻って身を潜めた。あの方があと一仕事、終えて出てくるのももうすぐだ。そうしたら、僕は人の姿に戻って、機嫌のよいあの方に、我が君、お祝い申し上げますと称賛を送る。僕のはたらきも忘れないようにしてもらわなくちゃ。『例のあの人』におともしてレストレンジ家に戻れたら、デスイーターたちだって僕に一目置くようになる。

あと少し。寒いのも濡れるのも、デスイーターたちにばかにされるのも、あとちょっとの辛抱だ。

そう思って、待っても、待っても、『例のあの人』は出てこなかった。ニ階の奥の方で激しい爆発が起こり、家のあちこちが飛び散るように壊れてから、ずいぶんとたつのに。

何かあったんだろうか、何か予想外のことが起こって?もしかして『例のあの人』は、爆発に紛れて出ていってしまったのか。すでにレストレンジ家に戻っているなら、とんだ手違いだ。僕の最大の手柄を褒めてもらうチャンスなのに。今からでもすぐ戻ったほうがいいかな?でも、あの方が戻っていなかったら?何があったかと、デスイーターから袋叩きだ。決めかねて待つことしかできず、待ちあぐねて家の中を見に行こうと植え込みを離れかけた時、どさっという気配がして巨大な人が現れた。ハグリッド!

ネズミの姿でよかったと、あわてて植え込みの中に飛び込んだ。

「ああ、どうしちまったんだ!どうしたっちゅうんじゃ、家が壊れとる!ジェームスの坊主はいったいどうなった?ああ、こうしちゃおれん、そうだ、赤ん坊だ、ダンブルドアのご命令に従わんと。」

ハグリッドはおたおたと喚いたり、頭を抱え込んだりしながら壊れた家にかけてゆき、すぐにまた現れた。大きな腕に、たいせつそうに何かを抱えて。

「かわいそうに、こんなちっちぇえ子が親を亡くしちまうなんて!こんなでっけえ傷までこしらえて!」

赤ん坊が生き延びた!それなら『例のあの人』はどうなったんだ?予想外の成り行きに呆然とする。わが君に何があったと猛り狂うデスイーターが目に浮かんで、体がガタガタ震えてきた。僕のせいだっていわれる。彼らに見つかれば、無事じゃすまない。心臓がパクパクと音を立てて、、、落ち着かなきゃ。アニメガスの術がとけたらたいへんなことになる。と、さらに心臓が縮みあがる爆音が響いた。聞きなれたシリウスのバイクの音。

「ハグリッド!ジェームスは?ジェームスは無事か?」

「ジェームスの坊主はよ、、、リリーもな、、、残念なことになっちまってな、シリウス。元気を出せ。ちゅっても無理だろうが、ほらよ、ちっちぇえハリーは無事だったでよ。ハリーは生き延びたちゅうことで。ジェームスもリリーもな、それを望んどったわけだで。」

しばらくの沈黙。

「ハグリッド、ハリーを俺に渡してくれ。俺はハリーの後見人なんだ。俺がめんどうをみるから、、」

「いんや、シリウス、それはなんねえ。ダンブルドアは、ハリーは叔母さんの家に預けると言いなさった。」

シリウスが抗議して、しばらく押し問答の末。

「ああ、わかった、ハグリッド。それなら俺のバイクをやるから、それでハリーを連れてってやれよ。ハリーは怖がらないさ、飛ぶのが大好きなんだ。」

「だけんど、シリウス、バイクをいいんか?」

「俺は、いらないから。」

ハグリッドがバイクで空に飛び立ち、シリウスは壊れた家に走って行った。シリウスがバイクを手放したのは、、、僕を追うつもりなんだ。デスイーターだけじゃなくて、シリウスからも狙われる。シリウスはジェームスを売った僕をけっして許さないと震え得あがった。シリウスにつかまったら、騎士団の前に連れ出されて、、いやその前に怒り狂って締めあげる。シリウスが興奮したら何するかわからない。ジェームスしか止められないよ。

進退きわまって、植え込みの根元に縮こまった。闇陣営からも騎士団からも追われてしまう。頼れる人はもういない。ジェームスも、『例のあの人』も。いったい、僕、どうすればいいんだ?だけど、差し迫った問題はシリウスだ。今にもシリウスが家から出てきて僕を見つけたらと思うと、恐ろしい形相さえ目に浮かび・・・。ジェームスみたいに話をきいてくれるわけないし。こわくて動けない。ネズミの姿を知ってるから、一目でも見られたらおしまいだ。モグラなら地にもぐるのに、ネズミじゃあ、、、土管でもあれば逃げ切れるけど。

あたふたと逃げ道を求め、頭はめまぐるしく回る。そうだ、僕が『秘密の守人』と知ってるのは、今となってはシリウスだけだ。なんとかシリウスに罪をかぶせられたら?だって、こうなったのも、シリウスが『秘密の守人』を僕に押し付けたせいだもの。それをシリウスに返せたら、、、他のみんなは、シリウスが『守人』だって思ってるんだから。

切羽詰まって考えるうちに、いいことを思いついた。追跡を免れ、シリウスの口を封じられる方法。これならきっとうまくいく!窮鼠猫を噛むって、自分で思って思わず笑いそうになった。噛むのは犬だけどね、いや、自分か。そして気を引き締めた。うまい方法だけど、かんたんじゃない。命がけの大芝居になる。失敗したら最悪だけど、頭に血の上ったシリウス相手なら、うまくいくと思う。僕がこんなかけに出るなんて、思う人いないもの。やるしかない。やり遂げてみせる。ジェームスもシリウスもいつも言ってた、ピーターならきっとできる、大丈夫だよって。

そう言ってた2人の顔をが浮かんで、泣きそうになった。こんなことになるなんて。でも、、、しょうがない。やらなきゃ僕は、、、。僕のせいじゃないよ。シリウスは裏切ったって僕を責めるだろうけど、少なくとも、僕だけのせいじゃない。そうでしょ、シリウス?

シリウス、僕は君の腰ぎんちゃくだったよね。いつも君の後にくっついてた。君はそれがあたりまえみたいなを顔して、弱虫の僕が君の影に隠れてるって思ってたでしょ?でも違う、それだけじゃないよ。君のこと、好きだったから。君のことより落ち着いたジェームスを信頼してたし、君よりもリーマスに親しみを感じてた。だけど、僕が一番憧れてたのは君だよ。半端ない明るさも、勇気も、高貴さも、外貌も、大胆さも、強さも、、君のみせる並はずれた激しさすべてが、凡庸な僕を惹きつけた。君の考えなしには時々呆れたけど、くよくよ考えずに突っ走れるのはスゴイって思った。狂気じみた怒りや憎しみの表出さえも、そこまでなれる非凡さに感動してた。

みんなが僕のこと、平凡で取り柄のない臆病な子って言ってるの、知ってたよ。そんな子供が描く、空想の中の自分。現実にはそんなふうになれないってわかってる理想の姿が目の前にあった、それが、君、シリウス。ずっと憧れて、君みたいになれないのはわかってたけど、憧れて追いかけて、結局自分の情けなさを思い知るだけだったけどね。でも今少しだけ、僕も凡庸の枠を超えられそうな気がするんだ、君みたいに。ていうより、人の枠をはずれたって感じ?戻れない川を渡るってこういうことだったのかな。あ、こんなふうに考え込むのはシリウスっぽくないよね。君なら理由や結果なんて考えず、狂気めいた勢いに身を任せて突っ走る。今だって、そのつもりでしょ?僕を追っかけ、つかまえてとっちめる、それだけ。君が一緒に走ってくれるなら、言うことない。すごいや、もう、全然こわくないよ。

子供の頃からずっと、君が杖を上げれば一目散に駆けつけ、君が犬に変われば背中に飛び乗って、いつだって僕は君の背を追ってきた。シリウス、今度は君が僕を追いかけるんだ。逃げる僕の背を、逃さないように、僕が君に向き合う最後の時まで追ってきて。その後がどうなるかなんて、元の僕に戻って一人どうするかなんて、今は考えないよ。一度だけだもの。君みたいに、並はずれた僕になる。だから君は僕のあとを追って。最初で最後、この一度だけ。

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tag : ハリーポッター ピーター シリウス

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