スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(過去3)1981ハロウィーン/その夜5

(これは『ハリーポッター』の本と映画鑑賞後の妄想です)

ダンブルドア

ポッター家にかけてあった警報魔法が、突然作動した。何者かがあの家の守りを破ったのじゃ。不死鳥のフォークスをゴドリックの谷にやり、その目を通して見た状況は、悲惨なものじゃった。破壊された家、息絶えたジェームスとリリー、襲撃後の惨状の中、一人、泣いている赤子。父親の面差しと母親の瞳を受け継いで、今はその父も母も亡きことを知らずに。

仲間内に裏切り者の存在が疑われる中、こうなる可能性があると考えてはおったが。いたましいことじゃ。目を閉じると在りし日のジェームスとリリーの姿が浮かんだ。勇敢で、華のある、よい夫婦じゃった。未来ある有能な若者がこのように命を落とすとは。

じゃが、今は、生きておる者のことを考えねばならん。まずはこの赤子じゃ。

父と母が死に、ヴォルデモート卿の姿が消えた状況で、この赤ん坊は生き延びた。この子がまさに『予言の子』になったということじゃ。予言は、関わる者の選択により、実現することもあればしないこともある。予言の言葉通り、闇の帝王が自らに比肩する力のある者に印をつけた。この行為により、予言はひとつ実現したということじゃ。消えたヴォルデモート卿は、必ず戻ってくるじゃろう。その時こそ、最後の決戦となる。それまでこの赤子が無事に生き延び、ヴォルデモート卿と闘う勇気と力を持つ者になっておらねば、魔法界は闇の手に落ちてしまうじゃろう。

この赤子の命を、闇陣営の残党の手から守らねばならん。今は消えたヴォルデモートも、力を回復すれば、まずこの赤子を狙うはずじゃ。闘う力も持たん赤子の命がなぜ助かったかは謎じゃが、死の呪文を逃れたとなれば、おそらく手前に倒れておった母の愛の守りじゃろう。その血の守りがもっともはたらく所といえば、母親の血縁。リリーにはペチュニアという妹がおった。姉と同じようにホグワーツに来たいと手紙を寄こしたことがあったの。

ペチュニアに預ければ赤子はマグル界で育つことになるが、それも悪くないじゃろう。朝になりこの出来事が伝われば、魔法界は闇の帝王が死んだと浮かれ、大騒ぎになる。生き延びた赤子は、物心つく前から皆にもてはやされ、また親を亡くした子として甘やかされる。もてはやされて甘やかされたダメな子に育ってしまえば、この子にも、魔法界の将来にも取り返しがつかんことになる。そうじゃ、幼少期はマグルの叔母のもとで普通の子として無事育ち、学齢期になったらホグワーツでわしが見守って立派な若者に導けばよい。

騒ぎになる前に、赤子をあそこから連れ出さねばならんが、、、。ゴドリックの谷に行くのは気が進まんかった。あそこには辛い過去が眠っておる、、、。

ハグリッドに赤子を迎えにゆかせ、叔母の住むプリベット通り4番街に届けさせることにした。赤ん坊にアパレートは無理じゃから、長い道のりになるが、ハグリッドなら命に代えて道中赤ん坊を守るじゃろう。ハグリッドが着く頃に、わしも行き、赤ん坊を預ければよい。

夜が明けると、予想通りのお祭り騒ぎが始まった。予言者新聞が号外で事件を伝えると、『例のあの人』はもういない、『生き延びし子』ハリーポッター!と、魔法界は大騒ぎじゃ。ヴォルデモート卿は死んだわけではない、必ず戻ってくるなどと、水を差すこともあるまい。暗く辛い日々を過ごした後なのじゃから、皆がはしゃくのも無理はないというものじゃ。はめをはずしてマグルに気づかれるようなことをせんといいが。ま、無理じゃろうな。すでに真昼間の日がさしておるというのに、夜行性のふくろうが浮かれて群れをなして飛んでおるくらいじゃから。

昼前には、続報の号外が、裏切り者のシリウス・ブラックが、12人のマグルを巻き込んで、追ってきたピーター・ペティグリューを殺して逮捕されたと伝えた。『忠誠の術』が破られた時から、『秘密の守人』であるシリウスが裏切ったことはわかっておった。万一を考えて、わしが『守人』になってもよいと言ったが、ジェームスは友を疑うことはしないと言って、シリウスに『守人』を頼んだのじゃった。あのシリウスが裏切るとは。ピーターは可哀そうなことをした。

喜びに沸く人々の陰に、貴い命を落とした者があり、それを嘆き悲しみにくれる者もおる。椅子でうなだれたままの男にちらりと目をやり、小さく首を振った。不死鳥の騎士団も、多くの死者を出したのじゃ。マッキノン、ブルウェット、ボーンズ、メドウズ。そして、今日、ジェームス、リリー、ペティグリュー。いまだ行方の分からんままの者もおる。皆、勝ち目の薄い闘いに挑んだ勇敢な者たちじゃった。真の勝利でないにしても、彼らにこそ、今日の喜びを味あわせてやりたかったが。闘いとは非情なものじゃ。

じゃが、これで終わったわけではない。よく言って、痛み分けの中休みのようなもんじゃ。ヴォルデモート卿は死んではおらんし、悪の芽はいつでも育ち、繁殖する。闘いを指揮する者には、感情に流されておる時間はない。来たるべき次の闘いに備えねば、同じ苦戦を強いられることになる。

「うっ、、うっ、、」

椅子でうなだれておったセブルスがまたうめき声をあげた。朝、血相をかえてこの校長室にやって来て、リリーはほんとうに?と尋ねるのにわしがうなづいたら、それきり椅子に崩れ落ち、頭をかかえて座り込んだ。話もできんありさまじゃったが話す内容はわかっておったし、わしも考えることがあって、じゃまにもならんからそのままにして落ち着くのを待っておったのじゃが。予言者新聞の号外を運ぶふくろう便が来たのに興味を示すこともなく、時々うめき声を上げるほかは、なんのかわりもなく、そのままじゃ。

わしは腰を上げ、椅子にぐったりと前かがみになったままのセブルスの前に立った。

見下ろしたその姿は哀れではあるが、忌々しくもある。この男を見ておると、わしの過去の苦い出来事を思い出さずにはおれん。くしくも同じゴドリックの谷で、ゲラート・グリンデルバルドに魅了され、力でマグルを支配する夢を見た。家族を苦しめたマグルを軽蔑しておったゆえの思想じゃったが、その家族のことをかえりみず、夢に向かって旅立とうと試みて、その結果罪なき妹、守るべきアリアナに死をもたらすこととなった。わしはアリアナを愛しておったのに、身勝手さゆえ、かえりみなんだのじゃ。どんなに悔いても、取り返しがつかん。アリアナにも、妹をたいせつにしていた両親にも、謝りたいが、かなわぬことじゃ。死んでしまった者には、許しを請うことも、償うこともできんのじゃ。

どれほどの時が過ぎても薄れることなき悔いと悲しみを、、、この男は同じ姿でわしに突きつける。このように嘆いたところで、何にもならんというのに。まったく、忌々しいことじゃ。

この男はデスイーターじゃった。ヴォルデモート卿に古い縁があるわけでも、脅されたわけでもあるまいに、好きこのんで闇陣営に加わった。人を想う純粋な気持ちは持っておるが、逆に言えばそのような愛を知り、同じ守護霊を出せるほどの幸せな思い出を持ちながら、悪の道を選んだわけじゃ。それを思えば、生まれる前に父親に捨てられ、生むとすぐに死んだ母親の顔も知らず、愛を知らぬまま世を憎み心に巨悪を育てたトムより、ある意味罪深いとさえいえる。

おおかた、ルシウスに誘われでもして舞い上がり、2人で並び立ち、世を支配する夢でも見たのじゃろう。ルシウス・マルフォイの流れるようなブロンドに寄り添って、頬を紅潮させるこの男の姿を思い浮かべると、苦いものがこみ上げる。浮かれてかまえた杖の先で、罪なき愛する者が倒れ伏す。その衝撃と悔いは、いまだわしの中にある。

今は泣き崩れるこの男も、人を殺めたのじゃろう。多くの善良なる者が、勇敢に闘い、無念に散った。この男は向ける杖先の向こうに、人を愛し、愛される、かけがえのない命があるのだと、考えもせんかったのじゃ。予言にリリー・ポッターが関わらなかったならば、この男が闇陣営を裏切ることも、このように悲嘆にくれることもなかったはずじゃ。おのれの身勝手さにも愚かさにも、犯した罪にも気づかぬままじゃったろう。

もううんざりじゃ。心が波立ち、感情的である自分にうんざりした。闇との闘いにおいては、感情など排除せねばならん。一時の感情に流されることなく、使えるものすべてを使わねば、勝ち目はないのじゃから。

この男には苦々しさを感じずにはおれんが、有能ではある。短い間のこととはいえ、ヴォルデモート卿を裏切り、それに気づかれんまま情報を送ってくることができた。疑り深く、開心術に長けたヴォルデモート卿の足元で、二重スパイをやってのけたということじゃ。有能であるゆえに、ことの善し悪しを考えぬ選択をした愚かさがいっそう腹立たしいが、使いようによっては実に役に立つということでもある。

放っておけば当然、アズカバン送りになるじゃろう。なって当然の者じゃし、この男も当然の罰と受け入れるじゃろう。そしてアズカバンで、自分のせいでリリーが死んだと、それだけを思い続ける。それならば、アズカバンでも外におっても同じこと。もしアズカバン行きを逃れさせ、わしの配下に留めれば。

頭を抱え込んでいたセブルスが顔を上げてわしを見た。すでに100年もアズカバンにいたかと思われるような、やつれた面差しで、ようやく口を開く。

「あなたなら、、、きっと、、、彼女を守ってくれると思っていた、、、」

あいかわらず、リリーのことだけか。どんなに悔やんでも、視野の広がらぬ男じゃ。

「ジェームスとリリーは間違った人間を信用したのじゃ。おまえも同じじゃろう、セブルス。ヴォルデモート卿がリリーを見逃すと期待しておったのではないか?」

セブルスが苦しそうに息を切らした。ルシウスの家で襲撃の知らせを聞いても、ヴォルデモートがリリーを見逃すと約束していたことにすがり、わしに事実を確認せんではおれんくてここに駆け込んだのじゃ。

「リリーの子は生き残ったのじゃ。」

セブルスは小さく首を振った。赤子のことなど関係ないと言わんばかりじゃ。なぜこの男はこうなのじゃ。純粋にリリーを想いながら、そのリリーの気持ちに思いを馳せることはないのか?

「リリーの息子は生きておる。その子は彼女の目を持っておるのじゃ、そっくりのな。リリー・エバンスの目の、形も色も覚えておるじゃろう?」

「やめてくれ!」

セブルスが大声をあげた。

「もう、いない、、、死んでしまった、、、」

「罪を悔いておるのか、セブルス?」

「私も、、死にたい、、。」

「じゃがおまえが死んで、誰かの何かの役に立つとでもいうのか?」

取り返しのつかぬ過ちを犯した者は、他に誰か、誰にでも、役に立つよう生きるしかないのじゃ。わしはそうして生きてきた。そうしたからといって罪から逃れられんとしてもじゃ。おまえには直截的に償う道が残されておるというのに、まだ気づかんとは。

「リリー・エバンズを愛していたなら、心から愛していたのなら、おまえが進む道ははっきりしておる。」

セブルスが戸惑うようにわしを見る。この者はわかっておらんのじゃ。悲しみに打ちひしがれて、自分にこの先進む道があるなどと、思えんかったのじゃろう。

「どういう、、ことですか?」

「リリーがどのように、なぜ死んだか、わかっておるな?その死を無駄にせんことじゃ。リリーの息子を守るために、わしを助けるのじゃ。」

「守る必要などありません。ダークロードはいなくなって、、」

「ダークロードは戻ってくる。そしてそのとき、ハリー・ポッターはおそろしい危険に陥るのじゃ。」

セブルスはしばらく黙っておった。わしの言ったことを、ひとつひとつ、ようやく考えておるようじゃ。じゃが、悲しみと悔いで壊れておった頭が戻るには時間がかかるものじゃ。セブルスの荒い呼吸が鎮まり、少しはまともな顔になってきた。

「わかりました、よくわかりました。ですが、けして言わないでください、ダンブルドア!このことは私たちの間だけにとどめると!誓ってください!私には、、、耐えられない。ポッターの息子などを、、。約束してください!」

「約束する、セブルス。君のもっとも善きところを、けっして明かさんとな。」

セブルスの苦悩に満ちた顔を見下ろし、ため息が出た。この期に及んで、死んでしまった男への過去の憎しみにとらわれておるとは。じゃが、たしかに、複雑なことなのじゃろう。もっとも愛した女と、もっとも憎い男との子を守るために生きると決めるのは。愛と憎しみと悔いと、この男の中でどのような葛藤が繰り広げられ、なにが勝るのか、、、。

この男はわしが見守らねばならん。闇の魔術を操る強い魔力を持った若い魔法使いが、複雑な感情を抱え、深い悲しみに打ちひしがれておれば、どのような迷いで再び道を誤るかわからん。強い感情は、力強く歩む支えにもなれば、容易に人を惑わせることもあるものじゃ。

あらためて、闘いの駒としてのセブルスを吟味してみると、使いようによって役に立つというだけでなく、セブルスは予言を動かす重要な歯車かもしれん。実際、望みはせんじゃったろうが、セブルスが予言を盗み聞き、ヴォルデモート卿に伝えたことで予言は動き出した。この者の選択が予言の行方を大きく左右するのであれば、、、。

果たして、信じられる男じゃろうか?幾分生気を取り戻し、純粋にも凶悪にも見える難しげな顔を眺めた。

予言の赤子が生き延びたのも、たしかではないが、この男の為したことの故かもしれん。赤ん坊がリリーの愛の守りに守られて生き延びたのなら、それはセブルスがなりふりかまわずヴォルデモート卿にリリーの命乞いをした故ということになる。助かる命であったからこそ、身を投げ出して愛の守りを為すことができたのじゃ。すでにセブルスが予言の子の命を助けるのに一役買っておったのなら、、、。

セブルスはこの先も、予言の行方に大きく関わるのじゃろう。デスイーターを裁く司法の手から守り、万一にも道を誤らんよう、見守らねばならん。

「セブルス、闇陣営の者たちの処分で、世の中は騒がしくなることじゃろう。しばらくホグワーツにとどまったらどうじゃ?」

セブルスは首をかしげ、ふと何か思案する表情を浮かべた。凶悪さが消え失せたその顔の、遠くを見る視線の先にあるものが、わしにも見えた。これだからこの者は。

「ルシウスか?ルシウスのことなど、おまえが心配するには及ばん。どうにでも逃れるずる賢さは持っておる者じゃ。」

セブルスは小さくうなづいた。わしはホグワーツ内の空き室を使うよう案内してやりながら、新たにこみ上げる忌々しさを抑えておった。まったく、めんどうな男じゃ。リリーへの愛とジェームスへ憎しみだけでもことは面倒なうえに、ルシウスへの思慕か恩義か知らんが抱え込んでおる。ルシウスにのぼせあがって道を誤ったのだとわかっておらんのか。しかも、赤子にも、他の社会の動きにも無関心で目を向けようとせん。この分では、闇陣営の思想に決別できておるのかも疑わしいというものじゃ。じゃが有能であり、予言への関与を考えれば、手放すわけにもいかん。

小部屋に入ると、セブルスはまた崩れるようにベッドに腰をおろし、頭を抱え込んだ。複雑な感情を抱えてはおっても、悲しみと悔いの深さに偽りはないようじゃ。その辛さから目を背けずにおれれば、贖罪を果たすことができるかもしれん。わしにはなかったが、おまえには直接的な贖罪の道が残されておるのじゃから。

やれやれと校長室に戻ると、同じ椅子に、うなだれた男が頭を抱え込んでおった。わしに気づくと、リーマスがやつれ果てた顔を上げた。

「留守中にすみません。部屋に通してもらいました。ダンブルドア、、、ほんとうのことなのですか?ジェームスもピーターも、、、。シリウスがジェームスを裏切ったなんて。」

「リーマス、残念じゃがそうなのじゃ。みな、間違った者を信じてしまったのじゃ。」

「私には、信じられません。あのシリウスが、ジェームスを裏切るなんて。」

「シリウスが『秘密の守人』じゃった。『忠誠の術』が破られたのじゃから、事実が示しておるのじゃ。ピーターの件では、多くの目撃者もおる。」

リーマスこそ哀れじゃ。つらい運命を背負いながら、友を信じ、苦しい戦いを闘い抜いてきたというのに。人々が浮かれ騒ぐ中、このような悲しみに見舞われるとは、まったく理不尽なことじゃ。

「私は、、、。私には彼らがすべてでした。彼らがいなければ私には生きる希望もありません。私のような者こそ死んだってかまわないのに、、、ジェームスやピーターが、、、。それもシリウスの裏切りで、、、」

「リーマス、辛いじゃろうが、ハリーは生きておるのじゃ。ヴォルデモート卿は必ず戻ってくる。その時にはハリーを助けてやってもらわねばならん。それからの、君には頼みたいことがあるのじゃ。ジェームスとリリーのために、してもらいたいことがある。」

「私に?私のような者に、できることがあるのでしょうか?」

「君にしかできんことじゃ。ジェームスとリリーの葬儀を執り行ってくれんかの?」

「ジェームスとリリーの葬儀、、、」

「そうじゃ。ジェームスの両親は亡くなっておる。リリーの家族は、知っておるじゃろうがマグルじゃ。普通の不幸ならまだしも、『生き延びし子』という英雄の両親の葬儀では、マグルの家族には荷が重すぎる。魔法族が大挙して参列しては、気の毒なだけじゃ。」

「ですが、私のような、、、」

「君の他に誰がふさわしいというのじゃ?2人の死を誰よりも悲しみ、見送ってやれるのは、君しかおらんじゃろう、リーマス?騎士団の仲間たちも、助けてくれるはずじゃ。」

「わかりました。心を尽くして準備します。」

「それではしばらく、葬儀が終わるまででも、ここにおってはどうかの?満月はまだ先じゃし、ずいぶんとやつれておるようじゃ。屋敷妖精に食事を運ばせるから、ゆっくりと休むがよい。」

「ありがとうございます、ダンブルドア。それでは葬儀が終わるまで、お世話になります。」

リーマスに部屋を与え、一休みすると、もう夜じゃった。あと一仕事、肝心なことが残っておる。

ペンをとって、手紙をしたためた。赤子のことをしっかりと頼まねばならん。幸いペチュニアは魔法界のことをある程度知っておるから、わしに逆らうことはないじゃろうが。大事な赤子をまちがいなく、無事育ててもらわねばならん。手紙を書き終えて、紫色のローブをはおり、プリベット通りにアパレートした。もう深夜に近いが、マグルの街には街灯がともり、暗い家々を照らしている。人目についてはよろしくないの。灯消しライターを探しながら、なじみの視線を感じて目を上げると、通りの向こうで猫がこっちを見ておった。思った通りじゃ。やっと見つかった灯消しライターで通りの街灯を消し、真っ暗闇で猫の隣に腰かけた。

「こんなとこで会えるとはの、マクゴナガル先生。」

猫に向かって笑いかけた時には、猫はミネルバの姿に戻っておった。エメラルド色のローブを着こんでおる。晴れやかな装いにかかわらず、いつもながらの堅苦しいミネルバは、浮かれた魔法族がはめをはずさんかと懸念しておった。その話がすむと、案の定、皆が知りたがっておること、昨夜の出来事の真相をきいてきた。そのために長いことここでわしを待ち構えておったわけじゃ。レモン・シャーベットを食べながら、尽きることない質問に答えておると、時間になった。

空に現れた小さな点は、みるみる近づいて大きなオートバイの形になった。目の前にとまり、バイクよりさらに大きなハグリッドが、大事そうに赤ん坊を抱えて降りたった。いったいその大きなバイクをどうしたのかときくと、シリウスに借りたと言う。問題はなかったようじゃから、シリウスの話はここではせんことにした。1日中ここで待っておったミネルバも、昨夜から空を飛んでおったハグリッドも、シリウスのニュースは知らんらしい。あとでわかることじゃが、ここで話せばまた長くなってしまうじゃろう。

ハリーは何も知らず、ぐっすりと寝ておった。黒い前髪に隠れた額に、くっきりといなずま形の傷があるのを確認した。思った通りじゃ。闇の帝王みずからが、抗う力のある者に印をつけた。額の傷は、この子に刻まれた運命であり、魔法界の将来がこの子にかかる証でもある。良くも悪くもハリーとヴォルデモートを結び、立ち向かう力にもなれば、危険を招くこともあるじゃろう。

ハグリッドからハリーを受け取り、ペチュニア・ダーズリーの家の垣根を越えて玄関まで行った。毛布にくるまれたハリーをそっと戸口の前に置き、ローブにしのばせていた手紙をはさみこむ。少しの間3人で、頼りなく置かれたまま、何も知らんで寝ておるハリーをじっと見た。親を亡くし、マグルの元に預けられるハリーが可哀そうで、ミネルバもハグリッドも涙ぐんでおる。感情的にはなるまいと思っておったが、無邪気な赤子を目の当たりにすると、この子の身の上と待ち受ける試練を思い、可哀そうでならん。じゃが、これしかないのじゃ。これがこの子にとっても一番よいことなのじゃ。

ハグリッドとミネルバを先に帰し、街灯を元通りに灯した。薄明かりの中、ぼんやりと浮かぶ毛布の中のハリーを思う。くしくもヴォルデモートと同じく、純血とマグルの混血として生まれ、親の記憶もないままにマグルの中で育つことになる。孤独と恨みにとらわれれば、トムのように邪悪を心に育て、闇に堕ちるやもしれん。トムは手遅れで、わしにも救うことはできんかった。この子はどうなるじゃろう?近所に住むスクイブのフィッグばあさんには、気づかれんように見張るよう言いつけてあるが。

じゃがこの子は母親の愛の守りに守られたのじゃ。覚えてはおらんでも、その命は命がけの愛に守られたもの。愛のある子に育つのじゃぞ。それこそが後の試練を乗り越える糧となるはずじゃ。

「幸運を、ハリー。」

言い残してホグワーツに戻った。長い一日じゃった。

 にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

tag : ハリーポッター ダンブルドア ハリー

コメント

No title

ミーシャ様♪

う~ん、こういう手法で…
1つの出来事を、それに関わった人 其々の立場から 話を紡ぐとは。

教授のファンである故か、他のキャラクターの考えや感情に 気持ちが向かなかったです。
こんな風に、いろんな方向から物語を見ていくのが 新鮮です。

こうして いろんな角度で見ても、教授の魂は リリーに掴み盗られていたのを感じます。嫉妬!

だから 尚更 ミーシャ様の夢では、リリー以外の人との触れあいで セブルスが変わって 幸せを掴んでいく姿を 見せて下さいね(o^-^o)

続き 楽しみにしています~♪

ドラゴン様

コメントをありがとうございます^^

私も教授への愛ゆえ、リリーには対してはなぜセブ捨てた&なぜリリー一筋(嫉妬)?、グリフィン坊主たちにはセブの不幸の源的な目を向けてしまっていましたが。

妄想に浸っているうちに、青年セブもそれなりにルシウスとの幸せがあったのだと思い込むようになりまして、グリフィン組にも寛大な気持ちになれました。

みんなそれぞれに言い分があったのではないかと思い、語らせてみました。

またちょっとスローになると思いますが、よろしくお願いします(*^_^*)

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。