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(過去3)1981ハロウィーン/残された者たち1

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

リーマス

ダンブルドアに与えられた小部屋に入り、ベッドに倒れこんだ。このまま眠りに落ちて、目覚めたらすべてが夢だったらいいのにと思う。昨日に戻れるなら、僕は何だってする。

今日、僕は、すべてを失った。

僕に生きる意味があるとすれば、その意味を与えてくれた仲間たち。子供の頃のあの日、人狼の僕を見つめ、受け入れてくれた力強い眼差し、抱きしめてくれた温かい体。もう一人じゃないんだと思えた。喜びも悲しみも彼らとともにあり、共に歩むかけがえのない宝をこの手につかんだのだと信じていた。けれど。

光に包まれていたジェームスも、やさしかったピーターも、もういない。そしてシリウスは。手にしたと思った幸せは、一日にしてこの上なく無残に砕け散った。

今朝、人狼の集落でポッター家襲撃の話をきき、とるものもとりあえず町に出た。街路に散らばる予言者新聞の号外を拾い、信じられない思いでゴドリックの谷に駆けつけると、、、。ハリーの誕生を祝って皆で集まってから1年も経たないというのに、喜びにあふれていたその家は壊れ果てていた。目を閉じて佇めば、誇らしげなジェームスの声が聞こえる気さえするのに。

突然のふくろうの羽音に空を見上げると、号外の続報が舞い落ちてきた。急いでつかんで目を走らせて、、、続報を持つ手が震えた。うそだ!こともあろうに、シリウスが!

日頃静かな村でさえ、通りを行き交う人々は浮かれはしゃぎ、相手かまわず抱き合っていた。

「例のあの人はもういない!生き延びし子、ハリーポッターに祝福を!」

喜びの声を上げる見も知らぬ人から抱きつかれ、されるがままにしていたけれど、僕は茫然として、ただ心のうちで繰り返す。うそだ、そんなこと、あるわけない、ジェームスが死ぬわけない、シリウスが裏切るわけない。何度も何度も、そう思ううちに、これは敵を欺く壮大な作戦なんじゃないかと思えてきた。そうだ、そんなこと、あるわけないじゃないか。シリウスがジェームスを裏切り、ピーターを手にかけるなんて。

やもたてもたまらずホグワーツに駆けつけて、ダンブルドアに確認せずにはいられなかった。そして、すがりついた最後の望みが消えた。

僕はなぜ生き残ってしまったんだろうと思う。なぜ僕だけが。ひとり生き延びて、何になるっていうんだ?夢も希望も、彼らがいればこそだった。僕はなんのために闘ってきたんだろう。

傷ついた時、落ち込んだ時、いつも僕を支えてくれた友情は、このうえないほどに無残に砕け散り、思い出すらも、慰めにはならない。胸に浮かぶすべての情景に、シリウスがいる。友情に胸を熱くした、数え切れない思い出のどこかに、裏切りの芽が潜んでいたというのか。シリウスが闇陣営に寝返って、ジェームスを売るなんて。一心同体と言われるほどに仲がよかったじゃないか。

シリウス、なぜだ!なぜそんなことを!ジェームスを裏切るなんて!

心に浮かぶシリウスの腕をつかみ、肩をゆすぶって、問いつめたい。けれど、答えが得られるはずもなく、ただ、シリウスは生きて出ることはないアズカバンに収監されたのだという現実を噛みしめる。怒りにまかせて当然の報いだと思い、同時に起こる悲しみに打ちひしがれ、答えのない問いかけを空しく繰り返す。

ジェームスは死の間際、シリウスの裏切りを知ったんだろうか?ピーターはいつ、どんなふうにシリウスの裏切りに気づいたのか?勇気を持って追い掛けて、追い詰めて、そのピーターに自ら手をかけるなんて、どうしてそんなことができたんだ?

そして僕は、、。何も知らなかった。僕一人、蚊帳の外で、何も知らず、何もできないまま、気がつけばすべてを失い、一人残された。僕はほんとに彼らの仲間だったんだろうか?そう思っていたのは僕だけだったんじゃないか?あの友情の日々は嘘だったというのか・・・

いつの間にか眠りに落ちたのか、気がつくと窓の外が白んでいた。ジェームス、、、続いて浮かぶ名を払いのけ、、、ピーターと、心の中で呼びかけてみた。彼らがもうこの世にいないのに、僕がすべてを失ったというのに、何事もなかったように夜が明け、また一日が始まるのが理不尽に思えてたまらない。なぜ僕は生きているんだ。目覚めたことが呪わしく、これから僕はどうしたらいいのかと途方に暮れた。

そうだ、、、ジェームスの葬儀の準備をしなければ。ダンブルドアにそう命じられたのだった。

重い体を引きずるように洗面所に行くと、やつれた薄汚い男が鏡に映っていた。こんなふうにしてちゃダメだと自分を奮い立たせる。誰よりも輝かしい人生を送ったジェームスを、それに相応しく送りださなくちゃいけない。今僕にできるのは、それだけなんだから。

ひげを剃り、顔を洗うと、少しは人心地がついた。ホグワーツの屋敷妖精が運んでくれた朝食をのどに流し込んで、葬儀の段取りを考える。少しでも気を緩めると噴き出してくる様々な思いを振り払い、ただジェームス夫妻の葬儀をきちんと執り行えるように、そのことだけに心を向ける。

ダンブルドアと打ち合わせ、実際に葬儀の準備に取り掛かると、それは想像以上に事細かな雑事の積み重ねだった。とにかく、次から次へとやることや決めることがでてくる。もちろん僕一人の手に負えることではなく、騎士団の仲間たちも助けてくれた。ともに仲間の死を悼み、仲間の裏切りに戸惑い、けれど彼らの中に戦いの終わりへの抑えようもない安堵と喜びが感じられるたびに、僕は傷ついた。彼らには心弾む明日への希望があるけど、僕にはもう何もない。立ち止まって考えてしまえば、もう二度と立ち上がれない気がして、ただ目の前にあることにすがるように、ひとつひとつ、すべきことをこなしていった。

数日後、ゴドリックの谷で、ジェームスとリリーの葬儀が盛大に執り行われた。執行者として、盛大にしたいと思ったわけじゃないけど、そうなるだろうと予想して準備した通り、おおぜいの魔法族が訪れた。ヴォルデモートを倒し、魔法界を闇の恐怖から救った奇跡の子の父母の葬儀は、死者を送る会であるとともに、魔法界をあげての祝賀の式典の色合いも帯びる。参列者たちは、彼らの尊い犠牲を悼み、平和に感謝し、彼らが遺した英雄を称えた。

僕はたんたんと式辞を進め、一般参列者を交えた式を終えると、騎士団の仲間たちと一緒に、ジェームスとリリーを墓地に埋葬した。こちらは、いわば身内だけだから、しめやかなものになる。一人ひとり、ともに闘い、散った仲間に、花を捧げ、言葉をたむけた。

帰途につく彼らを見送って、一人、墓の前に腰を下ろした。短い秋の日の日暮れも近い。ローブにしのばせていた魔法袋から、小さなグラスを取り出して、ジェームスの墓の前に置き、酒を注ぐ。僕も一口飲んで。

「ジェームス」

ジェームスの名が刻まれた、真新しい墓石に呼びかけた。

「こんな葬式でよかったかな?魔法界中から人が駆け付けて、大盛況だったよ。君も見てただろ?まったく君ときたら、死んでも人気者だから。真の英雄だよ、ジェームス。」

だけど、ほんとは、みんな英雄の親を送りに来たんだと思ったら、なんだか泣けてきた。葬儀に詰め寄せた多くの人のほとんどは、ジェームスのことを直接知らない。ジェームスがどんなに勇敢だったか、明るくて、茶目っけがあって、僕みたいな者にも惜しみない友情を注いでくれて。あの輝かしい日々をともに語り、耐えがたい友の死の悲しみを分かちあう仲間がいないのが耐え難く思われる。生前のジェームスはいつも光を放ち、皆の憧れと称賛に包まれていたのに。まだ21の若さで土に埋められて、悼む仲間が僕だけなんて、あんまりだ。

「寂しいよ、ジェームス、僕ひとりなんて。なぜ、、、」

なぜシリウスがここにいないと言いかけて口をつぐむ。ジェームスに向けて言うには辛すぎる。ほんとはここで僕より、誰より、シリウスこそジェームスの死を嘆いて大騒ぎしてるはずじゃないか。こみあげる怒りと悲しみを墓に眠るジェームスに向けるのがはばかられ、やり場のない思いの行き先を求め隣の墓に目をやった。

『愛されし妻、勇敢なる母』と、墓標に刻まれた文字に、ハリーを抱くリリーの姿が浮かぶ。その隣に立ち、誇らしげに笑うジェームスも。

心残りだったろうと思う、あんな可愛い幼子を残して逝くのは。でもジェームスもリリーも、最後までハリーを守ったに違いない。彼らならきっと、最後のその瞬間まで、希望を捨てず、全力でハリーを守ろうとしたはずだ。そして、守り抜いたんだ。

僕は杖を掲げ、呪文を唱えて杖先に灯りをともした。すでに闇に包まれた墓地の中、明かりに浮かぶ2つの墓に、頭を垂れる。ジェームス、リリー。素晴らしい仲間、勇敢な闘士、愛に満ちた父と母。君たちが与えてくれたものを、僕は忘れない。一人残されたなどと、嘆き続けるのはやめよう。君たちに恥じぬ僕でありたい。明るい未来が描けなくても、僕は僕なりに、精いっぱい生きていく。そしていつかその時が来たら、君たちが遺したハリーを、今度は僕が全力で守る、必ず。

2人に別れを告げて、歩き出したものの行く当てはない。暗い道をあてどなく歩きながら、ふとスネイプを思い出した。ジェームスの墓の前で僕が一人打ちひしがれたように、リリーの墓の前にはスネイプがいるべきじゃないかと思う。ジェームスと同様、リリーも光放つ人だった。その光に支えられ、今誰よりその死を悼んでいるのはスネイプのはずだ。葬儀にも姿を現さず、何してるんだ。

だけど、考えてみればスネイプのことだから、皆に交ってリリーを見送るなんてできないんだろう。今どんな立場で、どこにいようと、リリーの死に打ちのめされているに違いない。肩を寄せあう赤毛の少女と黒髪の少年が心に浮かんだ。4人で笑い転げる子供の頃の僕たちも。時が過ぎ、こんな日が来るなんて、思ってもいなかった。皆の姿が消えて、取り残されてぽつんとたたずむ、黒髪の少年と僕。

スネイプ、生き延びた者には、生きられなかった者の分まで生きる義務があるんだと言ってみた。彼らがくれたものを守り、彼らに恥じぬよう、前を向いて進まなきゃいけない。たとえそれがどんなに寂しく辛い道であっても。

同じことを、何度も繰り返し、自分自身に言いきかせるうちに、なんとかそうして生きていけそうな気がしてきた。そしてふと、ダンブルドアは僕が立ちあがれるように、葬儀の世話役を任せたのではないかと思いついた。細事に取り組むことで我を失うことなく現実に留まり、少しずつ辛い事実を受け入れて立ち向かえるように。葬儀は死者を送るものであると同時に、残された者が現実を生きていけるよう区切りをつけさせるものなのだ。

ホグワーツに戻り、ダンブルドアにあいさつした。今までの礼を言い、明日ここを出て僕なりの道を模索してゆくつもりだと伝えた。


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tag : ハリーポッター

コメント

遺された者達

ミーシャ様♪お久しぶりです。

ヴォルデモート卿が敗れ ハリーがホグワーツに入学する迄の魔法界は、原作では ほとんど明かされていません。
それ故、色々妄想する隙間がありますね。

セブルスは リリーを失った嘆きの中に沈んでいるでしょうが、リーマスも 心の支えだった友情を失って苦しんでいたのでしょうね。

「葬儀」は、逝ってしまった人を弔うと同時に 遺された者達が心を整理する為に必要な儀式なのですね。

セブルスとリーマスが どんな気持ちで日々を過ごしていたか 、ミーシャ様の夢の中で感じていきたいです。

今年の夏は、殊更 厳しかったですね〜。
ミーシャ様も 夏のお疲れが出ませんように(*^^*)

ドラゴン様こめんとありがとうございます♪

お久しぶりです。
ほんとに久しぶりな更新になりました^^;

第一次ヴォル戦争について原作に描写はほとんどありませんが、セブルスの同級生たちには過酷な終結でした。
亡くなった2人はもとより、残った者たちもみな、それまでの人生を失ったようなものです。

マグル界に目を転じれば、70年前の日本にも、そんな人たちがいっぱいいたのでしょう。愛する家族や友達を失った喪失感と生き延びた罪悪感を抱えながら、必死に生活を立て直した日々があったのだろうと思います。

夏は終戦がらみのTV番組が多いので、そんなことを考えながら過ごしました。

こんなスローな更新なのに、読んでくださってありがとうございます!

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