スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(過去3)1981ハロウィーン/残された者たち2

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

リーマス

ホグワーツの小部屋に戻ると、大きく息をついた。ジェームスたちの葬儀という大役に気が張ってたんだろう。無事埋葬し、押し殺していた感情も墓の前で吐き出した。ジェームスのためにできるだけのことはしたという思いと、いつの日かハリーを守ること以外、もうしてやれることはないのだという寂しさが交錯する。とにかくこれで気持ちに区切りをつけて、明日からは自分の道を進むと決めたんだと言い聞かせて。だけど、、、ここを出て、どこに行けばいいんだろうと思うとため息が出た。ヴォルデモートの消滅という形で一時的に闘いは終わったけれど、人狼に対する世の中の目がかわるほど、現実は甘くない。

先を考えると途方に暮れるばかりで、いつしか心は仲間4人で楽しかった、ホグワーツの頃の思い出に浸っていた。思い出をたどってみれば、シリウスに対する複雑な思いは残るにせよ、あの頃の僕たちが分かち合った時間に、嘘も偽りもないと思う。楽しいことばかりじゃなかったけど、人狼の僕が普通の魔法使いみたいに、友情や恋に悩み、笑ったり泣いたりできた。夢を持って先に進もうとも思えた。僕の人生の、もっとも輝かしい日々は、彼らとともにここホグワーツにあった。

明日出てゆけば、もう立ち入ることもないかもしれない。どうせ眠れないんだし、思い出の詰まるホグワーツ城内を歩いてみようと思いついた。ブロングス、パッドフット、ワームテール、ムーニーと呼び合った、あの頃のように。

部屋を出て、杖先に灯した明かりを頼りに、思いのままに歩を進める。気持ちは学生時代の仲間たちと一緒だ。夜のホグワーツ城は謎めいていて、突然階段が動いて思わぬ場所へと導かれたり、どこへ続くかわからない廊下が現れたりする。心躍らせた冒険を思い出して、懐かしさと切なさに胸が熱くなった。ここにも、そこにも、子供の頃の僕たちの無邪気な笑い声が響いているようだ。

恋しくてたまらないけど、あの頃にもう二度と戻れないことはわかっている。楽しかった思い出を語り合う仲間がもういないこともわかっている。何をすることもできぬまま、僕以外は皆死んでしまったんだから。シリウスも、、、アズカバンにいる裏切り者は、あのシリウスじゃない。あつく友情を語ったパッドフットはもう死んだのだと、心に残る未練を断ち切った。仲間4人の素晴らしい思い出を糧に、これから僕は一人で生きてゆくんだから。ジェームスは僕を誇らしく思うと言ってくれたじゃないか。その言葉に相応しい自分でありたい。

しばらくそうして歩くうちに、暗い廊下の向こうで、黒い影が動いた気がした。暗闇の中でも、動くもの気配はわかる。皆が寝静まったこんな時間に誰かいるのか?訝しく思って急ぎ足でそちらに向かい、人影らしくなったその姿を見極めようと集中した時。

かすかに漂うにおいを感じ、理由もわからぬまま懐かしさと切なさがこみ上げた。矢継ぎ早にいくつかの記憶の場面が浮かび、噴き出す感情と記憶に圧倒されて、思わず立ち止まった。嗅覚は時として、理屈抜きで過ぎた日の感情や記憶を呼び覚ます。僕の鋭い嗅覚がとらえたのは、、、スネイプ

なぜスネイプがこんなところに?考えるより先に走り出し、近づいてみると、それはたしかにスネイプだった。卒業以来、姿を見るのはもう数年ぶりだ。髪は少し長くなった。学生の頃のままの細い背中はがっくりと肩を落として、、。懐かしさに一瞬気持ちが高揚したものの、傷ついた魂そのもののような後ろ姿に胸をつかれ、声をかけることもできないまま、少し距離をおいてスネイプの後を歩いた。スネイプなら僕の気配に当然気づくはずなのに、もうこちらを向いて杖をかまえていてもいいはずなのに、身を守ることすら忘れたような姿が痛ましい。

スネイプはやはり、リリーの死を嘆いてるのだと確信した。僕もスネイプも、かけがいのない大切な人を失ったんだもの。ジェームスとリリーの早すぎる死も、めぐまれない子供時代を送ったスネイプと僕のただ一つの支えが失われたことも、あらためて酷く理不尽に思えた。けれど、やつれたスネイプの姿を見ているうちに、悲しいのは僕だけじゃないんだと慰めも感じる。そうだ、僕とスネイプだけじゃなく、家族や愛する人を失って悲しみにくれた人は大勢いるはずだ。みな悲しみを乗り越えて何とか生きていく。

悲しいよね、寂しいよね、スネイプ。でも生き残った僕たちは、生きられなかった人の分までしっかりと生きなきゃいけないんだと思う。彼らが与えてくれたものを忘れることなく。今日墓地で、スネイプに話しかけるように自分に言い聞かせた言葉が浮かんできた。

僕もとても立ち直ったとはいえないけど、立ち直ろうと決めたんだとスネイプに言ってやりたい。大切な人を失った悲しみは、他で埋めることなどできないけれど、辛い経験をした者どうし、分かち合えるものもあると思う。振り返れば学生の頃、不本意ながらスネイプを傷つけるような事をしてしまったけれど、今、残された僕たちが互いに支えあうことで、現実を生きていくことができたなら。今はまだ想像もできないけれど、いつか笑いあえる日だって来るかもしれない。

スネイプの気難しい顔に、ごく稀に浮かぶ笑顔を追い求めた頃があったことを思い出す。人狼であることをひた隠し、自ら壁をつくって孤独にこもり、同じように影をまといながら芯の強さを感じさせるスネイプと親しくなりたいと願ったものだった。その後思いがけず仲間を得て、それは眩いほどの幸せだったけれど、その仲間たちとスネイプの折り合いの悪さを正す勇気を持てなかった。死んでしまった人にはもう何もできないけど、生きている人とやり直すことならできるんじゃないか?

スネイプに声をかけようかと葛藤していると、角を曲がった先にいるはずのスネイプの姿が突然消えた。今まで見ていたのは幻だったのかと戸惑い、あわてて後を追うと、目の前に開いた扉が現れた。扉の陰から部屋をそっとのぞきこむと、、、寄り添って立つ僕とスネイプが目に飛び込んできた。

これは、、、?よく見ればそれは大きな鏡のようなもので、その中で僕とスネイプが手をつなぎ、時に顔を見合わせて笑い合っている。視界の片隅に、鏡の手前にひざまづいて見上げている黒いローブの後ろ姿があることに気づきはしたけど、それが気にならないほどに、鏡の中の世界は魅惑的だった。子供の頃こんな夢を見たと思い、今僕はスネイプを追って暗い廊下を歩いていたはずだという思いもちらりと頭をかすめたけれど、すぐにそんなことはもうどうでもよくなって、ただただ、その幸せな世界に見入る幸福感に身をゆだねた。

どのくらいの間そうして扉のわきに立っていたのか。

突然、リーマスと耳元でひそやかな声がして驚いた。

「ダンブルドア先生!」

僕もわれ知らず声をひそめる。

「何を見ておるのかの、リーマス?」

「・・・」

僕とスネイプが手をつないで笑っているんですとダンブルドアに言うのははばかられたし、だいたい現実的に考えればありえない。僕はここでダンブルドアと話してるんだから。頭は現実に戻ったものの、視線はダンブルドアを離れ、ふたたび魅惑的な景色へと向いてしまう。そんな僕にダンブルドアはわずかに苦笑いするような表情を浮かべながら、隣に並び部屋の中を向いた。

「ずいぶんと嬉しそうな顔をしておったが、あの鏡に何が見えるのかの?死んだ者か、それとも生きておる者かの?」

何を言っているのだろう、ダンブルドアは。僕とスネイプが見えてないんだろうか?それとも、あれは死後の世界?

「死者が見えるものなのですか?僕たち、、、まだ生きてると思いますが。」

わけがわからないまま馬鹿な返事をすると、ダンブルドアが笑いながら小声で言う。

「いや、死者が見えるというわけではない。ということは、君には生きている『君たち』が見えておるということじゃの。けっこうなことじゃ。」

なんか見透かされた気がして頬が赤くなる。

「先生には僕が見ているものは見えないということですか?」

「その通りじゃよ、リーマス。」

ああ、よかった。

「あれは『みぞの鏡』といっての、見ている者の願望を映し出す鏡なのじゃ。生きている者が見えるなら幸いなことじゃ。まあ、意味はないのじゃがな。」

ダンブルドアはわずかに表情を曇らせて、視線を鏡からそらし、うづくまるスネイプに向けた。

「あの鏡の中に、死者を見る人もいるということですか?それは、スネイプのこと?」

「セブルスが鏡の中に何を見ておるのか、わしにはわからん。見る者により違うものが見えるのじゃ。じゃが何が映ったにせよ、それに意味はない。見た者が、そのような願いを持っているというだけのことじゃ。見たいものが見えれば幸せな気分になるかもしれんが、その願いが叶うかどうかとは何の関係もないのじゃ。君が鏡の中に見た願いを叶えたいなら、それに向かって努力することじゃの。叶うかどうかはわからんにしても。」

「わかりました、ダンブルドア。願いが叶うとすればそれは自分の努力によるもので、鏡に映ったかどうかは関係ないということですね。」

「そうじゃよ、リーマス。運や才能や、そもそも願いが現実離れしとることもあるから努力すれば叶うとは限らんがの。願いを叶えようと努力する気持ちになれるなら、それが叶わずとも他をみつけて前に進むこともできるはずじゃ。じゃが、鏡の中に死者の姿を見てしまう者は、、、。鏡の中の世界に魅了され、離れることができん。何をどうしようとも、鏡の外ではけっして叶わぬ願いなのじゃから。死者がいた過去に戻ることはできんのじゃ。」

ダンブルドアは物憂げな表情で言葉をとめ、僕はひたすらに鏡を見入るスネイプの後ろ姿を眺めた。スネイプの目には、リリーが映っているんだろう。仲の良かった幼い頃か、最後に見た卒業の頃の姿か。けっして叶うことのない願いに魅入られる後ろ姿が哀れでならなかった。しばらくしてダンブルドアが小さくため息をつき、僕に向き直った。

「セブルスはああしておりたいようじゃの。あの鏡は明日の朝にでも元の場所に戻すとしよう。部屋の奥にしまっておいたのじゃが、呼び出されて出てきてしまったようじゃ。」

もちろんダンブルドアも、スネイプが鏡の中に、今は亡きリリーの姿を見ていると知っているんだろう。

「僕だって死んでしまったジェームスたちに会いたいと思ってるのに。」

「君は健全だということじゃよ、リーマス。願っても叶わぬ思いにとらわれることなく、現実を受け入れ、辛くとも希望をみいだすたくましさががあるということじゃ。じゃからわしは君のことは心配しておらん。」

「スネイプのことは心配しているということですか?」

「君は心配しておるようじゃの。」

「・・・。それにしても、なぜスネイプがここにいるんです?」

「必要だからじゃよ。さあ、リーマス、もう真夜中じゃ。わしたちは寝ることにしよう。」

並んで廊下を歩きながらダンブルドアにスネイプの部屋の場所を尋ねると、地下牢棟の小部屋にいるらしい。何日か同じホグワーツに寝泊まりしてたなんて全然気づかなかった。気づいたところで、お互い言葉をかわせる状態でもなかったわけだけど。明日ホグワーツを出てしまえば、これきりスネイプに会えることはないかもしれない。せっかく会えたのだから、明日旅立つ前に部屋を訪ねてみようか、それともそっとしておくべきか。

部屋に戻って少し考えて、でも早々に寝ることにした。ホグワーツを出れば、寝る場所にも食べる物にも苦労するのが僕の現実だ。今日は気持ちのよいベッドでぐっすり眠り、明日の活力を蓄えておこう。仲間を失った寂しさも、人狼の生活のきびしさもかわりはないけど、それでも僕は生きていく。できれば前向きな気持ちで明日を迎えたい。

 にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

tag : ハリーポッター リーマス スネイプ

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ミーシャS

Author:ミーシャS
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
FC2カウンター
リンク
出遅れハリポタ語り

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。