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セブルス・スネイプと謎のプリンス(9)

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)


痛々しいのはセブルスだけではなかった。シリウスの死以来、騎士団のトンクスが髪の色が変わるほど落ち込んでいた。得意の七変化もなりをひそめている。シリウスの死に責任を感じ、自分を責めているのは私だけではなかったようだ。神秘部の闘いでシリウスの前にベラトリックスと戦っていたのがトンクスだった。トンクスは、自分がベラトリックスに倒されていなければ、シリウスが戦って命を落とすことはなかったと感じているのだった。

トンクスの落ち込みは私にもよくわかった。私自身、セブルスに慰められるまでは、自分を責め自分が死ねばよかったと思っていたのだから。まだ若いトンクスが気の毒で、一生懸命慰めてあげた。シリウスの死は、トンクスの責任ではない。少なくとも、トンクスだけの責任ではないと。

私がシリウスの外出を止められたら、ハリーがヴォルデモートに誘き出されなければ、そうならないようにセブルスが閉心術の授業を投げ出さなければ、あるいはダンブルドアが事態をもっと説明していれば、そしてシリウスが冷静な気持ちを保てば、クリーチャーが裏切らなければ、、、。そのどれか一つでも逆に転べば、シリウスは死ななかったかもしれない。だけど、それは起こってしまった。もう取り返しは付かない。私たちがすべきことは、自責の念でいつまでも落ち込んでいることではなく、シリウスの死を無駄にせぬよう前を向いて進むことだと思う。


トンクスがようやく納得してくれたのはよかったけれど、心を尽くして慰めるうち、思いがけないことが起こった。つまり、トンクスが私に好意を持ったのだった。若くて可愛らしい、闇祓いでもある優秀な魔女が、10以上も年上の、貧しくみすぼらしく、生活に疲れ果てた、危険極まりない人狼の私に。

内心、嬉しくないことはなかった。魔女のトンクスと、周囲に認められるカップルになることを想像すると、晴れがましい気分になった。トンクスは、人狼であることも貧しいことも、年が離れていることも、問題ではない、私の人柄に惹かれたのだと言ってくれた。

しかし、それの何が問題なの?と詰め寄られると、その無邪気さが重荷に思えた。トンクスが知る私は、人狼の私を受け入れてくれる人たちの中にいる時のものだけだった。正体が知られることを恐れて嘘をついたり、卑屈なほどに人の評判を気に病む私の姿は知らない。変身してしまえば、人を食う本能に支配されて、周囲に危険をまき散らす恐ろしい姿も知らない。そして私といる者は、私とともに恐れられ、忌み嫌われ、排斥される。そんな全てを理解しているとは、とうてい思えなかった。

その全てを目にして、何度も被害にあいながら、セブルスは私を許し、受け入れてくれた。セブルスにとっては、成り行きの後の慣れ合いともいう関係だろうけれど、私はセブルスが好きだった。疲れてやつれたセブルスの肩を抱くのも好きだったし、自分自身恥ずかしくなるような惨めな姿を曝して、嫌そうなセブルスに纏わりつくのも好きだった。

やっと手にしたセブルスとの関係が損なわれるようなことは一切したくない。3年前ホグワーツの教師だった時は、心を打ち明けながら、シリウスが現れるや駆けつけたうえに脱狼薬を飲み忘れて生徒の前で変身するという、最悪の形で裏切ることになってしまった。もう二度とそんなことはしたくない。

私のような者はトンクスにふさわしくないと繰り返し言い聞かせ、彼女のような素敵な魔女には、きっとふさわしい魔法使いが現れるはずだと言ったのだけれど、一途なトンクスはなかなかあきらめてくれなかった。その思いはありがたかったけれど、私はセブルスに知られるのではないかとそればかり気がかりだった。


騎士団本部は、シリウスの死後相続したハリーの承諾を得て引き続きブラック邸に置かれた。ハリーは私に住んでいてもいいと言ってくれたけれど、シリウスの辛い思いが詰まった家に留まりたくなかったし、トンクスと顔を合わせる機会の多い本部住まいも気が進まなくて、安い貸し部屋を見つけて引っ越した。

狭くて古いその部屋に、セブルスは時々訪れてくれた。たいていは騎士団の集まりの後の、慌ただしい密会だったけれど、セブルスは意外にも普通の恋人らしく振る舞ってくれた。もっとも、セブルスが恋人と思っていてくれたかは定かではないけれど。

セブルスはたまに、驚くほど馴れたしぐさをみせることがあった。たとえば飲み物のグラスを受け取るときとか、腰を下ろす時にちょっと腕を添えたりした時に。些細なことだけれど、そういうことをされ慣れていて、当然と受け止めるような。そんなときは、ルシウス・マルフォイの影を感じた。マルフォイが手塩にかけたセブルスを、奪ったような気もするけれど、マルフォイがしてやったようなことは何一つできない敗北感。だけど思いは負けないと伝えたかった。

みすぼらしい部屋の、繕いのある小さなソファに並んで腰かけ、私は杖を取り出した。

「セブルス、見て。エクスペクト・パトローナム!」

私の杖の先から光の粒が出て、銀色の牡鹿になって消えていった。セブルスが驚いたように見ている。

「私の守護霊が変わったんだよ。君のは牝鹿だろう?この間守護霊の伝令を見たよ。」

セブルスが杖を上げて守護霊を出した。私ももう一度杖を振った。銀色の牝鹿と、それを追うように走った牡鹿が並び、こちらを振り返った後光の影を残して消えた。

「牝鹿の守護霊は、、リリー?」

尋ねるとセブルスは小さくうなづいた。幸せそうな、切なそうな顔だった。リリーが死んで、もう15年になる。

「セブルス、こんなに長い時が過ぎたというのに、変わらずに?」

「永遠に。」

セブルスの答えをきいて、私は少し考え込んだ。もう何年も、リリーが生きている頃から、セブルスはマルフォイの恋人だったはずだ。それでセブルスの守護霊が変わっていたら、私の守護霊は蛇にでもなっていたのかと思うから、リリーのものでよかったけれど。しばらく沈黙が続いた後、セブルスが話し始めた。

ルーピン、お前のような人生を歩んでいると、死にたいと思ったことがあるだろう?」

「まあね、残念ながら、ほんの幼い子供の頃から何度もあるよ。」

「それでも死ななくていまだに生きているわけだ。何が踏みとどまらせたと思う?」
 
「うん、、、子供の頃は、母さんかな?私が死んだら母が悲しむと思ったから。父もだけどね。死にたいほど辛くても、母の顔を見ると死んではいけないと思ったよ。」

「そうだろうな。親とはそういうものだ。子供に存在の承認を与える。私は子供の頃、そのように感じることができなかったのだ。私が死んでも母は気付かないのではないかと思っていた。私がそこに生きているのも気づいていないのではないかと思うくらいだったからな。父は私がいるのが目ざわりだったようだが。」

「・・・」

リリーに会って初めて、気にかけてくれる人がいるのがどういうことなのか知ったのだ。生きているということはよいことなのだなと。生きている意味がわかった。だから、私が生きている限り、守護霊は変わらない。」

「私が知る限り、いつもリリーは君のことを気にかけていたよ。」

思いに浸っているようなセブルスの顔が少し寂しげになった。リリーの死を思っているのか?

「君がリリーに出会えてよかった。」

「ああ。」

「私は君に会えてよかったよ。」

2人でしばらく、消えた守護霊の光の影を眺めていた。
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テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

tag : セブルス ルーピン リリー

コメント

この話は本当に素晴らしい。
最初から最後まで読みました。
ハリーポッターの本、
映画が終わってしまった今、
この話が私の支えで希望の光です。
この話が終わってしまうのが
怖いくらい、この話に感動し、
最高だと思いました。
ローリングさんが作った話でないのに、まるでローリングさんが、
セブルス目線の話を一から
書き直したよう。
次の更新を心から
楽しみにしています。
私は、スネイプも大好きですが、
ドラコを愛しています。

No title

嬉しいコメントをありがとうございます。
全部読んでいただけたなんて、恥ずかしくなります。
ハリーポッターは、主人公のハリーだけでなく、
周辺の人たちも、迷ったり悩んだりしながら、
それぞれの人生を一生懸命歩んだのだろうと思わせてくれる
すばらしいお話だと思います。
ローリングさんに感謝しながら、
妄想をふくらませています。
ここのスネイプも私も、
ドラコを愛しています。

わざわざお返事を有難うございます。
私も、ミーシャさんのように、色々な想像をしてきました。
私の妄想の中心はスネイプやドラコ、
ルシウスなどです(*^^*)
本当にローリングさんに感謝しています。
一人ひとりのキャラクターをおろそかにせずユニークで、すごいです。
しかしこの話も本当に素晴らしいです。
この話の特にルーピンとスネイプなどが登場する、過去の話がすごく感動的であり、スネイプの揺れる心情に共感し、涙が出ました

No title

こちらこそ、コメント&お返事ありがとうございます。
スネイプやルーピンたちの過去の話は、
本編にちょっとしか出てこないので、
思いっきり妄想が広がりました^^;
きっと今のハリーたちみたいに、いろんなことが
あったんだろうなって。

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