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スネイプ先生のカップリングごっこ(1)

ゴドリックの谷襲撃事件直後のスネイプやルーピンの心境は、妄想してても辛い暗いことが多くて煮詰まってしまうーーということで、気晴らしにスネイプ先生のカップリングあれこれを考えてみました。ハリポタ原作進行中はともかく、はげしく出遅れな今さら企画ですが、いろいろ組み合わせてみると楽しいのでちょっと遊んでみました^^;

老若男女かかわらず思いつきスネイプとのカップルを、ミーシャ独断と偏見に基づく 『カップルありうる度』『カップルお気に入り度』で評定してみます。★5つが最強です。

まずは老若男子編

♥スネイプとルシウス

これはもう、原作公認のカップルといっていいんじゃないでしょうか。原作のほのめかしを読み取って、映画2作目「秘密の部屋」で、2人仲良くクィディッチの試合見物のサービス場面がつくられたのでしょう。これ以上絵になるカップルはいないと思う(*^_^*)

とはいえ、原作を思い返してみると、スネイプとルシウスが一緒にいる状況はほとんど描かれていません。7作目スネイプの記憶の中のホグワーツ入学式で、ルシウスがスリザリン席で小セブを迎え入れる場面だけでしょうか。え、それだけ?って感じですが、他に思いつかない。

(追記:あと、7巻はじめの、デスイーターミーティングがありました!ルシウスはヴォルにいじめられてるし、ナギニはこわいしで、2人の仲どころじゃありませんけど。ハリー視点では描かれないとこで、こういう機会はたびたびあったのでしょうね)

けれど、スネイプ先生のドラコびいき、ドラコの言葉を通じてルシウスがスネイプを高く評価していることが語られています。6作目「謎のプリンス」では、ダンビの命令があったとはいえスネイプは必死でドラコを守ろうとしますし、ナルシッサもルシウスのアズカバン収監中、頼れるのはセブルスだけと言っており、マルフォイ一家とスネイプの長年にわたる親密な結びつきがうかがえます。

このカップルのネックといえば、やはりルシウスが妻子持ちということ。大人なナルシッサはともかく、ドラコに、実は(大好きな)先生は(尊敬する)パパの愛人なんだよという事実を告げるのは気まずいでしょう。。。

評定 ありうる度★★★★★ お気に入り度★★★★★

♥スネイプとルーピン

この2人はとてもかわいそうです。どちらも、自分ではどうすることもできない理由で、悲しい子供時代を送りました。ゴドリックの谷襲撃事件では、それぞれ精神的に壊滅的打撃を受けながら生き残ってしまいました。そして長い苦労の年月の後、あとちょっとで勝利と平和を味わえるというその時、最後の闘いで命を落とします(;O;) 7巻ではこの2人のために大泣きしましたので、2人とも幸せになってほしいというのがミーシャの願いです。

原作でも、子供の頃はともかく、大人になっての2人にはそこそこ通い合うものが感じられますよね。スネイプの悪口をいうハリーをルーピンは諌めますし、スネイプはルーピンを守ろうとしてジョージ・ウィズリーの耳を誤射してしまいました。子供の頃も、ルーピンのほうはスネイプを可哀そうに思っていたのがうかがえます。「かわいそうってこたあ惚れたってことよ」という夏目漱石の名言がありますが、ルーピンはスネイプに惚れてたと思いますよ、ただ、子供時代の軋轢や自己否定的な性格ゆえに、行動に出られなかっただけじゃないかと^^;

このカップルの難点は、ルーピンにはトンクスと幸せになる道があったこと。そしてスネイプサイドでは、ルシウスとルーピンと並べたら、権威に弱いスネイプがルーピンに魅力を感じるかなあというとこです。ルーピン、頑張れ!

評定 ありうる度★★★★★ お気に入り度★★★★★


♥スネイプとダンブルドア

ハリーの時代、この2人は実に親密ですよね、みんなに隠れてこそこそと。スネイプのほうはダンビを敬愛し、信頼してほしくてハリーにやきもち焼いてますし、ダンビも長年スネイプを手放しません。死に直面し、あとを託したのはスネイプでした。他が立ち入ることのできない強い絆で結ばれていたと思います。サド・マゾコンビで相性もいいでしょう。

このカップルの難点その1は年の差。年の差カップル、いいですが、さすがに100歳くらいもあると。。。難点その2は目に余るダンビのパワハラぶり。Loveスネイプとしては許せん領域に達してます、スネイプは許してたでしょうがね。

評定 ありうる度★★★★ お気に入り度★★


♥スネイプとハリー

もしもハリーがリリーに似た女の子だったら、、、スネイプはハリー溺愛、グリフィンドール100点!つけまくりだったんじゃないかと。ハリーがジェームス似の男の子だったのが2人にとっての不幸といえるでしょう。

ハリーがスネイプの真意を知った後、もしもスネイプが生きていたなら(もしもばっかが辛い2人です)、、、
ハリーのスネイプへの思いは劇的に好感にかわり愛情の域に達したかもしれません。スネイプ側にも深いとこではハリーに対する愛情があると思いますが、ハリーの愛情を素直に受け入れられるかというと性格的に無理かも。この2人は愛し合いながらもうまく思いを伝えられない親子という感じです。

評定 ありうる度★★ お気に入り度★★★


♥スネイプとドラコ

この2人は愛し合ってます(確信)。ドラコはスネイプのタイプだと思うので、ドラコが思い切ってせまればカップル成立も夢じゃありません。一見強気で実は甘えん坊なドラコをたじろぎながら甘やかすスネイプ先生の図は捨てがたい魅力があります。

が、ヘタレ御曹司なドラコに迫る勇気があるか、スネイプの道徳心がドラコを受け入れられるか、あと、予想される強力な親の反対を乗り越えられるかがこのカップルの行方を左右すると思われます。

評定 ありうる度★★★ お気に入り度★★★★


♥スネイプとロン

うーむ、ハリー、ドラコの流れで思いつきはしましたが、なかなかカップルを想像しにくい2人です。ロンはよくもわるくも常識人な普通の子なので、常識外れに理解が難しいスネイプの魅力はわからないかも。スネイプとしても、外貌なり権威なりどこか華のある人に引かれがちな印象なので、ロンのことはハリーの応援団くらいにしか思ってなさそうです。

スネイプ視点からするとアウトオブ眼中になってしまうロンですが、一見めぐまれてそうで実は苦労人ですね。成績やいたずらでずば抜けて目立つ兄たちや、存在自体が目立つハリーと一緒にいて、ひがみや嫉妬でグレることなく愛と善意を持ち続けるのは、英雄になるのと同じくらい立派なことだと思います。ま、スネイプとカップルになるには度量が足りないというだけで。

評定 ありうる度★ お気に入り度★


続く(予定)

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(過去3)1981ハロウィーン/残された者たち2

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

リーマス

ホグワーツの小部屋に戻ると、大きく息をついた。ジェームスたちの葬儀という大役に気が張ってたんだろう。無事埋葬し、押し殺していた感情も墓の前で吐き出した。ジェームスのためにできるだけのことはしたという思いと、いつの日かハリーを守ること以外、もうしてやれることはないのだという寂しさが交錯する。とにかくこれで気持ちに区切りをつけて、明日からは自分の道を進むと決めたんだと言い聞かせて。だけど、、、ここを出て、どこに行けばいいんだろうと思うとため息が出た。ヴォルデモートの消滅という形で一時的に闘いは終わったけれど、人狼に対する世の中の目がかわるほど、現実は甘くない。

先を考えると途方に暮れるばかりで、いつしか心は仲間4人で楽しかった、ホグワーツの頃の思い出に浸っていた。思い出をたどってみれば、シリウスに対する複雑な思いは残るにせよ、あの頃の僕たちが分かち合った時間に、嘘も偽りもないと思う。楽しいことばかりじゃなかったけど、人狼の僕が普通の魔法使いみたいに、友情や恋に悩み、笑ったり泣いたりできた。夢を持って先に進もうとも思えた。僕の人生の、もっとも輝かしい日々は、彼らとともにここホグワーツにあった。

明日出てゆけば、もう立ち入ることもないかもしれない。どうせ眠れないんだし、思い出の詰まるホグワーツ城内を歩いてみようと思いついた。ブロングス、パッドフット、ワームテール、ムーニーと呼び合った、あの頃のように。

部屋を出て、杖先に灯した明かりを頼りに、思いのままに歩を進める。気持ちは学生時代の仲間たちと一緒だ。夜のホグワーツ城は謎めいていて、突然階段が動いて思わぬ場所へと導かれたり、どこへ続くかわからない廊下が現れたりする。心躍らせた冒険を思い出して、懐かしさと切なさに胸が熱くなった。ここにも、そこにも、子供の頃の僕たちの無邪気な笑い声が響いているようだ。

恋しくてたまらないけど、あの頃にもう二度と戻れないことはわかっている。楽しかった思い出を語り合う仲間がもういないこともわかっている。何をすることもできぬまま、僕以外は皆死んでしまったんだから。シリウスも、、、アズカバンにいる裏切り者は、あのシリウスじゃない。あつく友情を語ったパッドフットはもう死んだのだと、心に残る未練を断ち切った。仲間4人の素晴らしい思い出を糧に、これから僕は一人で生きてゆくんだから。ジェームスは僕を誇らしく思うと言ってくれたじゃないか。その言葉に相応しい自分でありたい。

しばらくそうして歩くうちに、暗い廊下の向こうで、黒い影が動いた気がした。暗闇の中でも、動くもの気配はわかる。皆が寝静まったこんな時間に誰かいるのか?訝しく思って急ぎ足でそちらに向かい、人影らしくなったその姿を見極めようと集中した時。

かすかに漂うにおいを感じ、理由もわからぬまま懐かしさと切なさがこみ上げた。矢継ぎ早にいくつかの記憶の場面が浮かび、噴き出す感情と記憶に圧倒されて、思わず立ち止まった。嗅覚は時として、理屈抜きで過ぎた日の感情や記憶を呼び覚ます。僕の鋭い嗅覚がとらえたのは、、、スネイプ

なぜスネイプがこんなところに?考えるより先に走り出し、近づいてみると、それはたしかにスネイプだった。卒業以来、姿を見るのはもう数年ぶりだ。髪は少し長くなった。学生の頃のままの細い背中はがっくりと肩を落として、、。懐かしさに一瞬気持ちが高揚したものの、傷ついた魂そのもののような後ろ姿に胸をつかれ、声をかけることもできないまま、少し距離をおいてスネイプの後を歩いた。スネイプなら僕の気配に当然気づくはずなのに、もうこちらを向いて杖をかまえていてもいいはずなのに、身を守ることすら忘れたような姿が痛ましい。

スネイプはやはり、リリーの死を嘆いてるのだと確信した。僕もスネイプも、かけがいのない大切な人を失ったんだもの。ジェームスとリリーの早すぎる死も、めぐまれない子供時代を送ったスネイプと僕のただ一つの支えが失われたことも、あらためて酷く理不尽に思えた。けれど、やつれたスネイプの姿を見ているうちに、悲しいのは僕だけじゃないんだと慰めも感じる。そうだ、僕とスネイプだけじゃなく、家族や愛する人を失って悲しみにくれた人は大勢いるはずだ。みな悲しみを乗り越えて何とか生きていく。

悲しいよね、寂しいよね、スネイプ。でも生き残った僕たちは、生きられなかった人の分までしっかりと生きなきゃいけないんだと思う。彼らが与えてくれたものを忘れることなく。今日墓地で、スネイプに話しかけるように自分に言い聞かせた言葉が浮かんできた。

僕もとても立ち直ったとはいえないけど、立ち直ろうと決めたんだとスネイプに言ってやりたい。大切な人を失った悲しみは、他で埋めることなどできないけれど、辛い経験をした者どうし、分かち合えるものもあると思う。振り返れば学生の頃、不本意ながらスネイプを傷つけるような事をしてしまったけれど、今、残された僕たちが互いに支えあうことで、現実を生きていくことができたなら。今はまだ想像もできないけれど、いつか笑いあえる日だって来るかもしれない。

スネイプの気難しい顔に、ごく稀に浮かぶ笑顔を追い求めた頃があったことを思い出す。人狼であることをひた隠し、自ら壁をつくって孤独にこもり、同じように影をまといながら芯の強さを感じさせるスネイプと親しくなりたいと願ったものだった。その後思いがけず仲間を得て、それは眩いほどの幸せだったけれど、その仲間たちとスネイプの折り合いの悪さを正す勇気を持てなかった。死んでしまった人にはもう何もできないけど、生きている人とやり直すことならできるんじゃないか?

スネイプに声をかけようかと葛藤していると、角を曲がった先にいるはずのスネイプの姿が突然消えた。今まで見ていたのは幻だったのかと戸惑い、あわてて後を追うと、目の前に開いた扉が現れた。扉の陰から部屋をそっとのぞきこむと、、、寄り添って立つ僕とスネイプが目に飛び込んできた。

これは、、、?よく見ればそれは大きな鏡のようなもので、その中で僕とスネイプが手をつなぎ、時に顔を見合わせて笑い合っている。視界の片隅に、鏡の手前にひざまづいて見上げている黒いローブの後ろ姿があることに気づきはしたけど、それが気にならないほどに、鏡の中の世界は魅惑的だった。子供の頃こんな夢を見たと思い、今僕はスネイプを追って暗い廊下を歩いていたはずだという思いもちらりと頭をかすめたけれど、すぐにそんなことはもうどうでもよくなって、ただただ、その幸せな世界に見入る幸福感に身をゆだねた。

どのくらいの間そうして扉のわきに立っていたのか。

突然、リーマスと耳元でひそやかな声がして驚いた。

「ダンブルドア先生!」

僕もわれ知らず声をひそめる。

「何を見ておるのかの、リーマス?」

「・・・」

僕とスネイプが手をつないで笑っているんですとダンブルドアに言うのははばかられたし、だいたい現実的に考えればありえない。僕はここでダンブルドアと話してるんだから。頭は現実に戻ったものの、視線はダンブルドアを離れ、ふたたび魅惑的な景色へと向いてしまう。そんな僕にダンブルドアはわずかに苦笑いするような表情を浮かべながら、隣に並び部屋の中を向いた。

「ずいぶんと嬉しそうな顔をしておったが、あの鏡に何が見えるのかの?死んだ者か、それとも生きておる者かの?」

何を言っているのだろう、ダンブルドアは。僕とスネイプが見えてないんだろうか?それとも、あれは死後の世界?

「死者が見えるものなのですか?僕たち、、、まだ生きてると思いますが。」

わけがわからないまま馬鹿な返事をすると、ダンブルドアが笑いながら小声で言う。

「いや、死者が見えるというわけではない。ということは、君には生きている『君たち』が見えておるということじゃの。けっこうなことじゃ。」

なんか見透かされた気がして頬が赤くなる。

「先生には僕が見ているものは見えないということですか?」

「その通りじゃよ、リーマス。」

ああ、よかった。

「あれは『みぞの鏡』といっての、見ている者の願望を映し出す鏡なのじゃ。生きている者が見えるなら幸いなことじゃ。まあ、意味はないのじゃがな。」

ダンブルドアはわずかに表情を曇らせて、視線を鏡からそらし、うづくまるスネイプに向けた。

「あの鏡の中に、死者を見る人もいるということですか?それは、スネイプのこと?」

「セブルスが鏡の中に何を見ておるのか、わしにはわからん。見る者により違うものが見えるのじゃ。じゃが何が映ったにせよ、それに意味はない。見た者が、そのような願いを持っているというだけのことじゃ。見たいものが見えれば幸せな気分になるかもしれんが、その願いが叶うかどうかとは何の関係もないのじゃ。君が鏡の中に見た願いを叶えたいなら、それに向かって努力することじゃの。叶うかどうかはわからんにしても。」

「わかりました、ダンブルドア。願いが叶うとすればそれは自分の努力によるもので、鏡に映ったかどうかは関係ないということですね。」

「そうじゃよ、リーマス。運や才能や、そもそも願いが現実離れしとることもあるから努力すれば叶うとは限らんがの。願いを叶えようと努力する気持ちになれるなら、それが叶わずとも他をみつけて前に進むこともできるはずじゃ。じゃが、鏡の中に死者の姿を見てしまう者は、、、。鏡の中の世界に魅了され、離れることができん。何をどうしようとも、鏡の外ではけっして叶わぬ願いなのじゃから。死者がいた過去に戻ることはできんのじゃ。」

ダンブルドアは物憂げな表情で言葉をとめ、僕はひたすらに鏡を見入るスネイプの後ろ姿を眺めた。スネイプの目には、リリーが映っているんだろう。仲の良かった幼い頃か、最後に見た卒業の頃の姿か。けっして叶うことのない願いに魅入られる後ろ姿が哀れでならなかった。しばらくしてダンブルドアが小さくため息をつき、僕に向き直った。

「セブルスはああしておりたいようじゃの。あの鏡は明日の朝にでも元の場所に戻すとしよう。部屋の奥にしまっておいたのじゃが、呼び出されて出てきてしまったようじゃ。」

もちろんダンブルドアも、スネイプが鏡の中に、今は亡きリリーの姿を見ていると知っているんだろう。

「僕だって死んでしまったジェームスたちに会いたいと思ってるのに。」

「君は健全だということじゃよ、リーマス。願っても叶わぬ思いにとらわれることなく、現実を受け入れ、辛くとも希望をみいだすたくましさががあるということじゃ。じゃからわしは君のことは心配しておらん。」

「スネイプのことは心配しているということですか?」

「君は心配しておるようじゃの。」

「・・・。それにしても、なぜスネイプがここにいるんです?」

「必要だからじゃよ。さあ、リーマス、もう真夜中じゃ。わしたちは寝ることにしよう。」

並んで廊下を歩きながらダンブルドアにスネイプの部屋の場所を尋ねると、地下牢棟の小部屋にいるらしい。何日か同じホグワーツに寝泊まりしてたなんて全然気づかなかった。気づいたところで、お互い言葉をかわせる状態でもなかったわけだけど。明日ホグワーツを出てしまえば、これきりスネイプに会えることはないかもしれない。せっかく会えたのだから、明日旅立つ前に部屋を訪ねてみようか、それともそっとしておくべきか。

部屋に戻って少し考えて、でも早々に寝ることにした。ホグワーツを出れば、寝る場所にも食べる物にも苦労するのが僕の現実だ。今日は気持ちのよいベッドでぐっすり眠り、明日の活力を蓄えておこう。仲間を失った寂しさも、人狼の生活のきびしさもかわりはないけど、それでも僕は生きていく。できれば前向きな気持ちで明日を迎えたい。

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tag : ハリーポッター リーマス スネイプ

(過去3)1981ハロウィーン/残された者たち1

(これは『ハリーポッター』シリーズの本と映画鑑賞後の、妄想です)

リーマス

ダンブルドアに与えられた小部屋に入り、ベッドに倒れこんだ。このまま眠りに落ちて、目覚めたらすべてが夢だったらいいのにと思う。昨日に戻れるなら、僕は何だってする。

今日、僕は、すべてを失った。

僕に生きる意味があるとすれば、その意味を与えてくれた仲間たち。子供の頃のあの日、人狼の僕を見つめ、受け入れてくれた力強い眼差し、抱きしめてくれた温かい体。もう一人じゃないんだと思えた。喜びも悲しみも彼らとともにあり、共に歩むかけがえのない宝をこの手につかんだのだと信じていた。けれど。

光に包まれていたジェームスも、やさしかったピーターも、もういない。そしてシリウスは。手にしたと思った幸せは、一日にしてこの上なく無残に砕け散った。

今朝、人狼の集落でポッター家襲撃の話をきき、とるものもとりあえず町に出た。街路に散らばる予言者新聞の号外を拾い、信じられない思いでゴドリックの谷に駆けつけると、、、。ハリーの誕生を祝って皆で集まってから1年も経たないというのに、喜びにあふれていたその家は壊れ果てていた。目を閉じて佇めば、誇らしげなジェームスの声が聞こえる気さえするのに。

突然のふくろうの羽音に空を見上げると、号外の続報が舞い落ちてきた。急いでつかんで目を走らせて、、、続報を持つ手が震えた。うそだ!こともあろうに、シリウスが!

日頃静かな村でさえ、通りを行き交う人々は浮かれはしゃぎ、相手かまわず抱き合っていた。

「例のあの人はもういない!生き延びし子、ハリーポッターに祝福を!」

喜びの声を上げる見も知らぬ人から抱きつかれ、されるがままにしていたけれど、僕は茫然として、ただ心のうちで繰り返す。うそだ、そんなこと、あるわけない、ジェームスが死ぬわけない、シリウスが裏切るわけない。何度も何度も、そう思ううちに、これは敵を欺く壮大な作戦なんじゃないかと思えてきた。そうだ、そんなこと、あるわけないじゃないか。シリウスがジェームスを裏切り、ピーターを手にかけるなんて。

やもたてもたまらずホグワーツに駆けつけて、ダンブルドアに確認せずにはいられなかった。そして、すがりついた最後の望みが消えた。

僕はなぜ生き残ってしまったんだろうと思う。なぜ僕だけが。ひとり生き延びて、何になるっていうんだ?夢も希望も、彼らがいればこそだった。僕はなんのために闘ってきたんだろう。

傷ついた時、落ち込んだ時、いつも僕を支えてくれた友情は、このうえないほどに無残に砕け散り、思い出すらも、慰めにはならない。胸に浮かぶすべての情景に、シリウスがいる。友情に胸を熱くした、数え切れない思い出のどこかに、裏切りの芽が潜んでいたというのか。シリウスが闇陣営に寝返って、ジェームスを売るなんて。一心同体と言われるほどに仲がよかったじゃないか。

シリウス、なぜだ!なぜそんなことを!ジェームスを裏切るなんて!

心に浮かぶシリウスの腕をつかみ、肩をゆすぶって、問いつめたい。けれど、答えが得られるはずもなく、ただ、シリウスは生きて出ることはないアズカバンに収監されたのだという現実を噛みしめる。怒りにまかせて当然の報いだと思い、同時に起こる悲しみに打ちひしがれ、答えのない問いかけを空しく繰り返す。

ジェームスは死の間際、シリウスの裏切りを知ったんだろうか?ピーターはいつ、どんなふうにシリウスの裏切りに気づいたのか?勇気を持って追い掛けて、追い詰めて、そのピーターに自ら手をかけるなんて、どうしてそんなことができたんだ?

そして僕は、、。何も知らなかった。僕一人、蚊帳の外で、何も知らず、何もできないまま、気がつけばすべてを失い、一人残された。僕はほんとに彼らの仲間だったんだろうか?そう思っていたのは僕だけだったんじゃないか?あの友情の日々は嘘だったというのか・・・

いつの間にか眠りに落ちたのか、気がつくと窓の外が白んでいた。ジェームス、、、続いて浮かぶ名を払いのけ、、、ピーターと、心の中で呼びかけてみた。彼らがもうこの世にいないのに、僕がすべてを失ったというのに、何事もなかったように夜が明け、また一日が始まるのが理不尽に思えてたまらない。なぜ僕は生きているんだ。目覚めたことが呪わしく、これから僕はどうしたらいいのかと途方に暮れた。

そうだ、、、ジェームスの葬儀の準備をしなければ。ダンブルドアにそう命じられたのだった。

重い体を引きずるように洗面所に行くと、やつれた薄汚い男が鏡に映っていた。こんなふうにしてちゃダメだと自分を奮い立たせる。誰よりも輝かしい人生を送ったジェームスを、それに相応しく送りださなくちゃいけない。今僕にできるのは、それだけなんだから。

ひげを剃り、顔を洗うと、少しは人心地がついた。ホグワーツの屋敷妖精が運んでくれた朝食をのどに流し込んで、葬儀の段取りを考える。少しでも気を緩めると噴き出してくる様々な思いを振り払い、ただジェームス夫妻の葬儀をきちんと執り行えるように、そのことだけに心を向ける。

ダンブルドアと打ち合わせ、実際に葬儀の準備に取り掛かると、それは想像以上に事細かな雑事の積み重ねだった。とにかく、次から次へとやることや決めることがでてくる。もちろん僕一人の手に負えることではなく、騎士団の仲間たちも助けてくれた。ともに仲間の死を悼み、仲間の裏切りに戸惑い、けれど彼らの中に戦いの終わりへの抑えようもない安堵と喜びが感じられるたびに、僕は傷ついた。彼らには心弾む明日への希望があるけど、僕にはもう何もない。立ち止まって考えてしまえば、もう二度と立ち上がれない気がして、ただ目の前にあることにすがるように、ひとつひとつ、すべきことをこなしていった。

数日後、ゴドリックの谷で、ジェームスとリリーの葬儀が盛大に執り行われた。執行者として、盛大にしたいと思ったわけじゃないけど、そうなるだろうと予想して準備した通り、おおぜいの魔法族が訪れた。ヴォルデモートを倒し、魔法界を闇の恐怖から救った奇跡の子の父母の葬儀は、死者を送る会であるとともに、魔法界をあげての祝賀の式典の色合いも帯びる。参列者たちは、彼らの尊い犠牲を悼み、平和に感謝し、彼らが遺した英雄を称えた。

僕はたんたんと式辞を進め、一般参列者を交えた式を終えると、騎士団の仲間たちと一緒に、ジェームスとリリーを墓地に埋葬した。こちらは、いわば身内だけだから、しめやかなものになる。一人ひとり、ともに闘い、散った仲間に、花を捧げ、言葉をたむけた。

帰途につく彼らを見送って、一人、墓の前に腰を下ろした。短い秋の日の日暮れも近い。ローブにしのばせていた魔法袋から、小さなグラスを取り出して、ジェームスの墓の前に置き、酒を注ぐ。僕も一口飲んで。

「ジェームス」

ジェームスの名が刻まれた、真新しい墓石に呼びかけた。

「こんな葬式でよかったかな?魔法界中から人が駆け付けて、大盛況だったよ。君も見てただろ?まったく君ときたら、死んでも人気者だから。真の英雄だよ、ジェームス。」

だけど、ほんとは、みんな英雄の親を送りに来たんだと思ったら、なんだか泣けてきた。葬儀に詰め寄せた多くの人のほとんどは、ジェームスのことを直接知らない。ジェームスがどんなに勇敢だったか、明るくて、茶目っけがあって、僕みたいな者にも惜しみない友情を注いでくれて。あの輝かしい日々をともに語り、耐えがたい友の死の悲しみを分かちあう仲間がいないのが耐え難く思われる。生前のジェームスはいつも光を放ち、皆の憧れと称賛に包まれていたのに。まだ21の若さで土に埋められて、悼む仲間が僕だけなんて、あんまりだ。

「寂しいよ、ジェームス、僕ひとりなんて。なぜ、、、」

なぜシリウスがここにいないと言いかけて口をつぐむ。ジェームスに向けて言うには辛すぎる。ほんとはここで僕より、誰より、シリウスこそジェームスの死を嘆いて大騒ぎしてるはずじゃないか。こみあげる怒りと悲しみを墓に眠るジェームスに向けるのがはばかられ、やり場のない思いの行き先を求め隣の墓に目をやった。

『愛されし妻、勇敢なる母』と、墓標に刻まれた文字に、ハリーを抱くリリーの姿が浮かぶ。その隣に立ち、誇らしげに笑うジェームスも。

心残りだったろうと思う、あんな可愛い幼子を残して逝くのは。でもジェームスもリリーも、最後までハリーを守ったに違いない。彼らならきっと、最後のその瞬間まで、希望を捨てず、全力でハリーを守ろうとしたはずだ。そして、守り抜いたんだ。

僕は杖を掲げ、呪文を唱えて杖先に灯りをともした。すでに闇に包まれた墓地の中、明かりに浮かぶ2つの墓に、頭を垂れる。ジェームス、リリー。素晴らしい仲間、勇敢な闘士、愛に満ちた父と母。君たちが与えてくれたものを、僕は忘れない。一人残されたなどと、嘆き続けるのはやめよう。君たちに恥じぬ僕でありたい。明るい未来が描けなくても、僕は僕なりに、精いっぱい生きていく。そしていつかその時が来たら、君たちが遺したハリーを、今度は僕が全力で守る、必ず。

2人に別れを告げて、歩き出したものの行く当てはない。暗い道をあてどなく歩きながら、ふとスネイプを思い出した。ジェームスの墓の前で僕が一人打ちひしがれたように、リリーの墓の前にはスネイプがいるべきじゃないかと思う。ジェームスと同様、リリーも光放つ人だった。その光に支えられ、今誰よりその死を悼んでいるのはスネイプのはずだ。葬儀にも姿を現さず、何してるんだ。

だけど、考えてみればスネイプのことだから、皆に交ってリリーを見送るなんてできないんだろう。今どんな立場で、どこにいようと、リリーの死に打ちのめされているに違いない。肩を寄せあう赤毛の少女と黒髪の少年が心に浮かんだ。4人で笑い転げる子供の頃の僕たちも。時が過ぎ、こんな日が来るなんて、思ってもいなかった。皆の姿が消えて、取り残されてぽつんとたたずむ、黒髪の少年と僕。

スネイプ、生き延びた者には、生きられなかった者の分まで生きる義務があるんだと言ってみた。彼らがくれたものを守り、彼らに恥じぬよう、前を向いて進まなきゃいけない。たとえそれがどんなに寂しく辛い道であっても。

同じことを、何度も繰り返し、自分自身に言いきかせるうちに、なんとかそうして生きていけそうな気がしてきた。そしてふと、ダンブルドアは僕が立ちあがれるように、葬儀の世話役を任せたのではないかと思いついた。細事に取り組むことで我を失うことなく現実に留まり、少しずつ辛い事実を受け入れて立ち向かえるように。葬儀は死者を送るものであると同時に、残された者が現実を生きていけるよう区切りをつけさせるものなのだ。

ホグワーツに戻り、ダンブルドアにあいさつした。今までの礼を言い、明日ここを出て僕なりの道を模索してゆくつもりだと伝えた。


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tag : ハリーポッター

(過去3)1981ハロウィーン/その夜5

(これは『ハリーポッター』の本と映画鑑賞後の妄想です)

ダンブルドア

ポッター家にかけてあった警報魔法が、突然作動した。何者かがあの家の守りを破ったのじゃ。不死鳥のフォークスをゴドリックの谷にやり、その目を通して見た状況は、悲惨なものじゃった。破壊された家、息絶えたジェームスとリリー、襲撃後の惨状の中、一人、泣いている赤子。父親の面差しと母親の瞳を受け継いで、今はその父も母も亡きことを知らずに。

仲間内に裏切り者の存在が疑われる中、こうなる可能性があると考えてはおったが。いたましいことじゃ。目を閉じると在りし日のジェームスとリリーの姿が浮かんだ。勇敢で、華のある、よい夫婦じゃった。未来ある有能な若者がこのように命を落とすとは。

じゃが、今は、生きておる者のことを考えねばならん。まずはこの赤子じゃ。

父と母が死に、ヴォルデモート卿の姿が消えた状況で、この赤ん坊は生き延びた。この子がまさに『予言の子』になったということじゃ。予言は、関わる者の選択により、実現することもあればしないこともある。予言の言葉通り、闇の帝王が自らに比肩する力のある者に印をつけた。この行為により、予言はひとつ実現したということじゃ。消えたヴォルデモート卿は、必ず戻ってくるじゃろう。その時こそ、最後の決戦となる。それまでこの赤子が無事に生き延び、ヴォルデモート卿と闘う勇気と力を持つ者になっておらねば、魔法界は闇の手に落ちてしまうじゃろう。

この赤子の命を、闇陣営の残党の手から守らねばならん。今は消えたヴォルデモートも、力を回復すれば、まずこの赤子を狙うはずじゃ。闘う力も持たん赤子の命がなぜ助かったかは謎じゃが、死の呪文を逃れたとなれば、おそらく手前に倒れておった母の愛の守りじゃろう。その血の守りがもっともはたらく所といえば、母親の血縁。リリーにはペチュニアという妹がおった。姉と同じようにホグワーツに来たいと手紙を寄こしたことがあったの。

ペチュニアに預ければ赤子はマグル界で育つことになるが、それも悪くないじゃろう。朝になりこの出来事が伝われば、魔法界は闇の帝王が死んだと浮かれ、大騒ぎになる。生き延びた赤子は、物心つく前から皆にもてはやされ、また親を亡くした子として甘やかされる。もてはやされて甘やかされたダメな子に育ってしまえば、この子にも、魔法界の将来にも取り返しがつかんことになる。そうじゃ、幼少期はマグルの叔母のもとで普通の子として無事育ち、学齢期になったらホグワーツでわしが見守って立派な若者に導けばよい。

騒ぎになる前に、赤子をあそこから連れ出さねばならんが、、、。ゴドリックの谷に行くのは気が進まんかった。あそこには辛い過去が眠っておる、、、。

ハグリッドに赤子を迎えにゆかせ、叔母の住むプリベット通り4番街に届けさせることにした。赤ん坊にアパレートは無理じゃから、長い道のりになるが、ハグリッドなら命に代えて道中赤ん坊を守るじゃろう。ハグリッドが着く頃に、わしも行き、赤ん坊を預ければよい。

夜が明けると、予想通りのお祭り騒ぎが始まった。予言者新聞が号外で事件を伝えると、『例のあの人』はもういない、『生き延びし子』ハリーポッター!と、魔法界は大騒ぎじゃ。ヴォルデモート卿は死んだわけではない、必ず戻ってくるなどと、水を差すこともあるまい。暗く辛い日々を過ごした後なのじゃから、皆がはしゃくのも無理はないというものじゃ。はめをはずしてマグルに気づかれるようなことをせんといいが。ま、無理じゃろうな。すでに真昼間の日がさしておるというのに、夜行性のふくろうが浮かれて群れをなして飛んでおるくらいじゃから。

昼前には、続報の号外が、裏切り者のシリウス・ブラックが、12人のマグルを巻き込んで、追ってきたピーター・ペティグリューを殺して逮捕されたと伝えた。『忠誠の術』が破られた時から、『秘密の守人』であるシリウスが裏切ったことはわかっておった。万一を考えて、わしが『守人』になってもよいと言ったが、ジェームスは友を疑うことはしないと言って、シリウスに『守人』を頼んだのじゃった。あのシリウスが裏切るとは。ピーターは可哀そうなことをした。

喜びに沸く人々の陰に、貴い命を落とした者があり、それを嘆き悲しみにくれる者もおる。椅子でうなだれたままの男にちらりと目をやり、小さく首を振った。不死鳥の騎士団も、多くの死者を出したのじゃ。マッキノン、ブルウェット、ボーンズ、メドウズ。そして、今日、ジェームス、リリー、ペティグリュー。いまだ行方の分からんままの者もおる。皆、勝ち目の薄い闘いに挑んだ勇敢な者たちじゃった。真の勝利でないにしても、彼らにこそ、今日の喜びを味あわせてやりたかったが。闘いとは非情なものじゃ。

じゃが、これで終わったわけではない。よく言って、痛み分けの中休みのようなもんじゃ。ヴォルデモート卿は死んではおらんし、悪の芽はいつでも育ち、繁殖する。闘いを指揮する者には、感情に流されておる時間はない。来たるべき次の闘いに備えねば、同じ苦戦を強いられることになる。

「うっ、、うっ、、」

椅子でうなだれておったセブルスがまたうめき声をあげた。朝、血相をかえてこの校長室にやって来て、リリーはほんとうに?と尋ねるのにわしがうなづいたら、それきり椅子に崩れ落ち、頭をかかえて座り込んだ。話もできんありさまじゃったが話す内容はわかっておったし、わしも考えることがあって、じゃまにもならんからそのままにして落ち着くのを待っておったのじゃが。予言者新聞の号外を運ぶふくろう便が来たのに興味を示すこともなく、時々うめき声を上げるほかは、なんのかわりもなく、そのままじゃ。

わしは腰を上げ、椅子にぐったりと前かがみになったままのセブルスの前に立った。

見下ろしたその姿は哀れではあるが、忌々しくもある。この男を見ておると、わしの過去の苦い出来事を思い出さずにはおれん。くしくも同じゴドリックの谷で、ゲラート・グリンデルバルドに魅了され、力でマグルを支配する夢を見た。家族を苦しめたマグルを軽蔑しておったゆえの思想じゃったが、その家族のことをかえりみず、夢に向かって旅立とうと試みて、その結果罪なき妹、守るべきアリアナに死をもたらすこととなった。わしはアリアナを愛しておったのに、身勝手さゆえ、かえりみなんだのじゃ。どんなに悔いても、取り返しがつかん。アリアナにも、妹をたいせつにしていた両親にも、謝りたいが、かなわぬことじゃ。死んでしまった者には、許しを請うことも、償うこともできんのじゃ。

どれほどの時が過ぎても薄れることなき悔いと悲しみを、、、この男は同じ姿でわしに突きつける。このように嘆いたところで、何にもならんというのに。まったく、忌々しいことじゃ。

この男はデスイーターじゃった。ヴォルデモート卿に古い縁があるわけでも、脅されたわけでもあるまいに、好きこのんで闇陣営に加わった。人を想う純粋な気持ちは持っておるが、逆に言えばそのような愛を知り、同じ守護霊を出せるほどの幸せな思い出を持ちながら、悪の道を選んだわけじゃ。それを思えば、生まれる前に父親に捨てられ、生むとすぐに死んだ母親の顔も知らず、愛を知らぬまま世を憎み心に巨悪を育てたトムより、ある意味罪深いとさえいえる。

おおかた、ルシウスに誘われでもして舞い上がり、2人で並び立ち、世を支配する夢でも見たのじゃろう。ルシウス・マルフォイの流れるようなブロンドに寄り添って、頬を紅潮させるこの男の姿を思い浮かべると、苦いものがこみ上げる。浮かれてかまえた杖の先で、罪なき愛する者が倒れ伏す。その衝撃と悔いは、いまだわしの中にある。

今は泣き崩れるこの男も、人を殺めたのじゃろう。多くの善良なる者が、勇敢に闘い、無念に散った。この男は向ける杖先の向こうに、人を愛し、愛される、かけがえのない命があるのだと、考えもせんかったのじゃ。予言にリリー・ポッターが関わらなかったならば、この男が闇陣営を裏切ることも、このように悲嘆にくれることもなかったはずじゃ。おのれの身勝手さにも愚かさにも、犯した罪にも気づかぬままじゃったろう。

もううんざりじゃ。心が波立ち、感情的である自分にうんざりした。闇との闘いにおいては、感情など排除せねばならん。一時の感情に流されることなく、使えるものすべてを使わねば、勝ち目はないのじゃから。

この男には苦々しさを感じずにはおれんが、有能ではある。短い間のこととはいえ、ヴォルデモート卿を裏切り、それに気づかれんまま情報を送ってくることができた。疑り深く、開心術に長けたヴォルデモート卿の足元で、二重スパイをやってのけたということじゃ。有能であるゆえに、ことの善し悪しを考えぬ選択をした愚かさがいっそう腹立たしいが、使いようによっては実に役に立つということでもある。

放っておけば当然、アズカバン送りになるじゃろう。なって当然の者じゃし、この男も当然の罰と受け入れるじゃろう。そしてアズカバンで、自分のせいでリリーが死んだと、それだけを思い続ける。それならば、アズカバンでも外におっても同じこと。もしアズカバン行きを逃れさせ、わしの配下に留めれば。

頭を抱え込んでいたセブルスが顔を上げてわしを見た。すでに100年もアズカバンにいたかと思われるような、やつれた面差しで、ようやく口を開く。

「あなたなら、、、きっと、、、彼女を守ってくれると思っていた、、、」

あいかわらず、リリーのことだけか。どんなに悔やんでも、視野の広がらぬ男じゃ。

「ジェームスとリリーは間違った人間を信用したのじゃ。おまえも同じじゃろう、セブルス。ヴォルデモート卿がリリーを見逃すと期待しておったのではないか?」

セブルスが苦しそうに息を切らした。ルシウスの家で襲撃の知らせを聞いても、ヴォルデモートがリリーを見逃すと約束していたことにすがり、わしに事実を確認せんではおれんくてここに駆け込んだのじゃ。

「リリーの子は生き残ったのじゃ。」

セブルスは小さく首を振った。赤子のことなど関係ないと言わんばかりじゃ。なぜこの男はこうなのじゃ。純粋にリリーを想いながら、そのリリーの気持ちに思いを馳せることはないのか?

「リリーの息子は生きておる。その子は彼女の目を持っておるのじゃ、そっくりのな。リリー・エバンスの目の、形も色も覚えておるじゃろう?」

「やめてくれ!」

セブルスが大声をあげた。

「もう、いない、、、死んでしまった、、、」

「罪を悔いておるのか、セブルス?」

「私も、、死にたい、、。」

「じゃがおまえが死んで、誰かの何かの役に立つとでもいうのか?」

取り返しのつかぬ過ちを犯した者は、他に誰か、誰にでも、役に立つよう生きるしかないのじゃ。わしはそうして生きてきた。そうしたからといって罪から逃れられんとしてもじゃ。おまえには直截的に償う道が残されておるというのに、まだ気づかんとは。

「リリー・エバンズを愛していたなら、心から愛していたのなら、おまえが進む道ははっきりしておる。」

セブルスが戸惑うようにわしを見る。この者はわかっておらんのじゃ。悲しみに打ちひしがれて、自分にこの先進む道があるなどと、思えんかったのじゃろう。

「どういう、、ことですか?」

「リリーがどのように、なぜ死んだか、わかっておるな?その死を無駄にせんことじゃ。リリーの息子を守るために、わしを助けるのじゃ。」

「守る必要などありません。ダークロードはいなくなって、、」

「ダークロードは戻ってくる。そしてそのとき、ハリー・ポッターはおそろしい危険に陥るのじゃ。」

セブルスはしばらく黙っておった。わしの言ったことを、ひとつひとつ、ようやく考えておるようじゃ。じゃが、悲しみと悔いで壊れておった頭が戻るには時間がかかるものじゃ。セブルスの荒い呼吸が鎮まり、少しはまともな顔になってきた。

「わかりました、よくわかりました。ですが、けして言わないでください、ダンブルドア!このことは私たちの間だけにとどめると!誓ってください!私には、、、耐えられない。ポッターの息子などを、、。約束してください!」

「約束する、セブルス。君のもっとも善きところを、けっして明かさんとな。」

セブルスの苦悩に満ちた顔を見下ろし、ため息が出た。この期に及んで、死んでしまった男への過去の憎しみにとらわれておるとは。じゃが、たしかに、複雑なことなのじゃろう。もっとも愛した女と、もっとも憎い男との子を守るために生きると決めるのは。愛と憎しみと悔いと、この男の中でどのような葛藤が繰り広げられ、なにが勝るのか、、、。

この男はわしが見守らねばならん。闇の魔術を操る強い魔力を持った若い魔法使いが、複雑な感情を抱え、深い悲しみに打ちひしがれておれば、どのような迷いで再び道を誤るかわからん。強い感情は、力強く歩む支えにもなれば、容易に人を惑わせることもあるものじゃ。

あらためて、闘いの駒としてのセブルスを吟味してみると、使いようによって役に立つというだけでなく、セブルスは予言を動かす重要な歯車かもしれん。実際、望みはせんじゃったろうが、セブルスが予言を盗み聞き、ヴォルデモート卿に伝えたことで予言は動き出した。この者の選択が予言の行方を大きく左右するのであれば、、、。

果たして、信じられる男じゃろうか?幾分生気を取り戻し、純粋にも凶悪にも見える難しげな顔を眺めた。

予言の赤子が生き延びたのも、たしかではないが、この男の為したことの故かもしれん。赤ん坊がリリーの愛の守りに守られて生き延びたのなら、それはセブルスがなりふりかまわずヴォルデモート卿にリリーの命乞いをした故ということになる。助かる命であったからこそ、身を投げ出して愛の守りを為すことができたのじゃ。すでにセブルスが予言の子の命を助けるのに一役買っておったのなら、、、。

セブルスはこの先も、予言の行方に大きく関わるのじゃろう。デスイーターを裁く司法の手から守り、万一にも道を誤らんよう、見守らねばならん。

「セブルス、闇陣営の者たちの処分で、世の中は騒がしくなることじゃろう。しばらくホグワーツにとどまったらどうじゃ?」

セブルスは首をかしげ、ふと何か思案する表情を浮かべた。凶悪さが消え失せたその顔の、遠くを見る視線の先にあるものが、わしにも見えた。これだからこの者は。

「ルシウスか?ルシウスのことなど、おまえが心配するには及ばん。どうにでも逃れるずる賢さは持っておる者じゃ。」

セブルスは小さくうなづいた。わしはホグワーツ内の空き室を使うよう案内してやりながら、新たにこみ上げる忌々しさを抑えておった。まったく、めんどうな男じゃ。リリーへの愛とジェームスへ憎しみだけでもことは面倒なうえに、ルシウスへの思慕か恩義か知らんが抱え込んでおる。ルシウスにのぼせあがって道を誤ったのだとわかっておらんのか。しかも、赤子にも、他の社会の動きにも無関心で目を向けようとせん。この分では、闇陣営の思想に決別できておるのかも疑わしいというものじゃ。じゃが有能であり、予言への関与を考えれば、手放すわけにもいかん。

小部屋に入ると、セブルスはまた崩れるようにベッドに腰をおろし、頭を抱え込んだ。複雑な感情を抱えてはおっても、悲しみと悔いの深さに偽りはないようじゃ。その辛さから目を背けずにおれれば、贖罪を果たすことができるかもしれん。わしにはなかったが、おまえには直接的な贖罪の道が残されておるのじゃから。

やれやれと校長室に戻ると、同じ椅子に、うなだれた男が頭を抱え込んでおった。わしに気づくと、リーマスがやつれ果てた顔を上げた。

「留守中にすみません。部屋に通してもらいました。ダンブルドア、、、ほんとうのことなのですか?ジェームスもピーターも、、、。シリウスがジェームスを裏切ったなんて。」

「リーマス、残念じゃがそうなのじゃ。みな、間違った者を信じてしまったのじゃ。」

「私には、信じられません。あのシリウスが、ジェームスを裏切るなんて。」

「シリウスが『秘密の守人』じゃった。『忠誠の術』が破られたのじゃから、事実が示しておるのじゃ。ピーターの件では、多くの目撃者もおる。」

リーマスこそ哀れじゃ。つらい運命を背負いながら、友を信じ、苦しい戦いを闘い抜いてきたというのに。人々が浮かれ騒ぐ中、このような悲しみに見舞われるとは、まったく理不尽なことじゃ。

「私は、、、。私には彼らがすべてでした。彼らがいなければ私には生きる希望もありません。私のような者こそ死んだってかまわないのに、、、ジェームスやピーターが、、、。それもシリウスの裏切りで、、、」

「リーマス、辛いじゃろうが、ハリーは生きておるのじゃ。ヴォルデモート卿は必ず戻ってくる。その時にはハリーを助けてやってもらわねばならん。それからの、君には頼みたいことがあるのじゃ。ジェームスとリリーのために、してもらいたいことがある。」

「私に?私のような者に、できることがあるのでしょうか?」

「君にしかできんことじゃ。ジェームスとリリーの葬儀を執り行ってくれんかの?」

「ジェームスとリリーの葬儀、、、」

「そうじゃ。ジェームスの両親は亡くなっておる。リリーの家族は、知っておるじゃろうがマグルじゃ。普通の不幸ならまだしも、『生き延びし子』という英雄の両親の葬儀では、マグルの家族には荷が重すぎる。魔法族が大挙して参列しては、気の毒なだけじゃ。」

「ですが、私のような、、、」

「君の他に誰がふさわしいというのじゃ?2人の死を誰よりも悲しみ、見送ってやれるのは、君しかおらんじゃろう、リーマス?騎士団の仲間たちも、助けてくれるはずじゃ。」

「わかりました。心を尽くして準備します。」

「それではしばらく、葬儀が終わるまででも、ここにおってはどうかの?満月はまだ先じゃし、ずいぶんとやつれておるようじゃ。屋敷妖精に食事を運ばせるから、ゆっくりと休むがよい。」

「ありがとうございます、ダンブルドア。それでは葬儀が終わるまで、お世話になります。」

リーマスに部屋を与え、一休みすると、もう夜じゃった。あと一仕事、肝心なことが残っておる。

ペンをとって、手紙をしたためた。赤子のことをしっかりと頼まねばならん。幸いペチュニアは魔法界のことをある程度知っておるから、わしに逆らうことはないじゃろうが。大事な赤子をまちがいなく、無事育ててもらわねばならん。手紙を書き終えて、紫色のローブをはおり、プリベット通りにアパレートした。もう深夜に近いが、マグルの街には街灯がともり、暗い家々を照らしている。人目についてはよろしくないの。灯消しライターを探しながら、なじみの視線を感じて目を上げると、通りの向こうで猫がこっちを見ておった。思った通りじゃ。やっと見つかった灯消しライターで通りの街灯を消し、真っ暗闇で猫の隣に腰かけた。

「こんなとこで会えるとはの、マクゴナガル先生。」

猫に向かって笑いかけた時には、猫はミネルバの姿に戻っておった。エメラルド色のローブを着こんでおる。晴れやかな装いにかかわらず、いつもながらの堅苦しいミネルバは、浮かれた魔法族がはめをはずさんかと懸念しておった。その話がすむと、案の定、皆が知りたがっておること、昨夜の出来事の真相をきいてきた。そのために長いことここでわしを待ち構えておったわけじゃ。レモン・シャーベットを食べながら、尽きることない質問に答えておると、時間になった。

空に現れた小さな点は、みるみる近づいて大きなオートバイの形になった。目の前にとまり、バイクよりさらに大きなハグリッドが、大事そうに赤ん坊を抱えて降りたった。いったいその大きなバイクをどうしたのかときくと、シリウスに借りたと言う。問題はなかったようじゃから、シリウスの話はここではせんことにした。1日中ここで待っておったミネルバも、昨夜から空を飛んでおったハグリッドも、シリウスのニュースは知らんらしい。あとでわかることじゃが、ここで話せばまた長くなってしまうじゃろう。

ハリーは何も知らず、ぐっすりと寝ておった。黒い前髪に隠れた額に、くっきりといなずま形の傷があるのを確認した。思った通りじゃ。闇の帝王みずからが、抗う力のある者に印をつけた。額の傷は、この子に刻まれた運命であり、魔法界の将来がこの子にかかる証でもある。良くも悪くもハリーとヴォルデモートを結び、立ち向かう力にもなれば、危険を招くこともあるじゃろう。

ハグリッドからハリーを受け取り、ペチュニア・ダーズリーの家の垣根を越えて玄関まで行った。毛布にくるまれたハリーをそっと戸口の前に置き、ローブにしのばせていた手紙をはさみこむ。少しの間3人で、頼りなく置かれたまま、何も知らんで寝ておるハリーをじっと見た。親を亡くし、マグルの元に預けられるハリーが可哀そうで、ミネルバもハグリッドも涙ぐんでおる。感情的にはなるまいと思っておったが、無邪気な赤子を目の当たりにすると、この子の身の上と待ち受ける試練を思い、可哀そうでならん。じゃが、これしかないのじゃ。これがこの子にとっても一番よいことなのじゃ。

ハグリッドとミネルバを先に帰し、街灯を元通りに灯した。薄明かりの中、ぼんやりと浮かぶ毛布の中のハリーを思う。くしくもヴォルデモートと同じく、純血とマグルの混血として生まれ、親の記憶もないままにマグルの中で育つことになる。孤独と恨みにとらわれれば、トムのように邪悪を心に育て、闇に堕ちるやもしれん。トムは手遅れで、わしにも救うことはできんかった。この子はどうなるじゃろう?近所に住むスクイブのフィッグばあさんには、気づかれんように見張るよう言いつけてあるが。

じゃがこの子は母親の愛の守りに守られたのじゃ。覚えてはおらんでも、その命は命がけの愛に守られたもの。愛のある子に育つのじゃぞ。それこそが後の試練を乗り越える糧となるはずじゃ。

「幸運を、ハリー。」

言い残してホグワーツに戻った。長い一日じゃった。

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tag : ハリーポッター ダンブルドア ハリー

(過去3)1981ハロウィーン/その夜4

(これは『ハリーポッター』の本と映画鑑賞後の妄想です。今回は原作の重要なネタばれを含んでいます。)

シリウス

ワームテールの隠れ家を訪ねると、留守だった。万一を考え、外に出るな、様子を見に来ると言ってあったのだが。杖で灯りをともして見回すと、急な隠れ家でわずかな家具しかない部屋に、乱れはない。ベッドのシーツさえちまちまとたたんで置いてある。

これは、、、まさか。

嫌な予感が走る。襲撃の気配もないまま、部屋の主が消えた。まさか、ワームテールが裏切った?あいつが裏切り者だったのか?

ジェームスがあぶない!

部屋を飛び出し、バイクにまたがった。最大出力で空にかけあがる。ゴドリックの谷へ、ジェームスの家に。もっと速く!

ダンブルドアに言われてあの家に『忠誠の術』をかけるとき、俺がジェームスを説得して、最後の最後に『秘密の守人』をワームテールに変えた。ジェームスは俺に頼むと言ったのに、みんなそう思うから、あいつを『守人』にして、俺はオトリになって姿を消すほうがいいと。俺がそう勧めた。うまい方法だと思った。闇のやつらは俺を探す。万一見つかったって、口は割らない。ジェームスを裏切るくらいなら死を選ぶ。それならいっそそれでもいい。守人が死ねば、手掛かりも消えるってことだ。

だが、まさか、ほんとにワームテールが裏切ったのか?あいつは俺たちより魔力も勇気も劣っているが、いつだって頑張ってやり遂げた。才能ある者が簡単に為すことより、平凡な者が努力して成し遂げることのほうが貴いんじゃないかとジェームスと話したことだってある。まじめで努力家のワームテールがジェームスを裏切るとは・・・。

いや、あいつだって友を裏切るくらいなら死ぬはずだ。ジェームスを裏切るはずがない。騙されておびき出されたのか。それなら俺が『守人』を頼んだせいでワームテールは闇陣営に捕まったのか。あいつはいつも俺の後をついてきてた。俺が守ってやらなきゃいけないのに、危険な役割を頼んじまった。

どうか、すべて、嘘であってくれ。ワームテールはちょっと、外の空気でも吸いたくなって、ねずみになって出かけただけかもしれないじゃないか。そうであってくれ。ゴドリックの谷に着いたら、ジェームスが笑って出迎えてくれて、俺のバカな取り越し苦労だったと言う。いつだってパッドフットは考えなしに先走るんだと笑って言ってくれれば。

だがゴドリックの谷について、壊れた家からハグリッドがおろおろとハリーを抱えて出てくるのを見た時、すべてを悟った。絶望に襲われたが、尋ねずにはいられない。

「ハグリッド!ジェームスは?ジェームスは無事か?」

予想通りの答えが返って来た。最悪の答えだ。もう何も、打つ手はない。俺のせいで。俺のせいでジェームスが。

ハグリッドの腕の中で、何も知らないハリーが俺を見た。子供の頃のジェームスにそっくりな赤ん坊。俺のせいでこんなに小さいのに親をなくして。ジェームスの、ただ一人の、忘れ形見。

「ハリーを俺に渡してくれ。俺はハリーの後見人なんだ。俺がめんどうをみる。」

ハグリッドは頑なだった。ダンブルドアはハリーを叔母さんの家に預けると言いなさったと言いはって、ハリーを渡さない。俺が育てて、ジェームスがどんなに素晴らしい男だったか、どんなにハリーを愛していたか伝えてやるっていうのに。だがハグリッドはダンブルドアの言いつけを、死んでも守るやつだ。ハリーを守るのでなければ、俺がすべきは、ワームテールを見つけることだ。もし囚われているなら救い出さなければならない。もし裏切ったなら、いや、秘密が漏れて襲撃されたのだから、あいつは裏切ったんだ。『秘密の守人』が明かさない限り、この家が見つかるはずはないんだから。ワームテール、俺たちを裏切って、ジェームスを売るとは。

ハグリッドにバイクをやって、それでハリーを届けてくれと託した。ワームテールを見つけるのに、バイクはむしろじゃまになる。ハグリッドとハリーを見送り、壊れた家に走った。もう遅すぎるのだが、せめてジェームスをこの目で見るまでは、、、。

探すまでもなく、壊れた家の玄関先に、ジェームスは倒れていた。命と光の象徴のようだったジェームスが、まるで壊れてうち捨てられた人形のように、、、

「ジェームス!」

肩をつかんで揺すぶりながら。

「ジェームス!プロングス!返事をしてくれ。俺だ!俺が来た!もう、大丈夫だから。嘘だよな?嘘だと言ってくれ。ジェームス、、、俺の、、、」

抱え上げ、揺すぶっても力なく揺れるだけの体を抱きしめて、まだ残る温もりが消えないようにと温める。だが、、、少しずつ冷たくなってゆく体に、ジェームスの命も、魂も、もうここにはないと、認めるしかない。すべてはおわってしまった。起こるはずのないことが起こり、俺のせいでジェームスが死んでしまった。俺が『守人』をワームテールにと勧めたせいで。

冷えた体をそっと床に置き、乱れた服を整えてやった。そばに落ちていた眼鏡をかけさせ、整えた髪に手を入れてくしゃっと乱す。こうじゃなくちゃな、おまえはいつも、完璧なんてかっこ悪いって言ってたもんな。いろいろと気にして、かっこつけてたくせに。大好きなリリーと結婚して、かわいい子供もできたのに。こんなに早く、まだ21じゃないか。これからもずっと、何年も何年も、一緒にいられるはずだったじゃないか。

周りを見ても、あるはずの杖が見当たらない。杖を持っていなかったのか、ジェームス。杖も持たずヴォルデモートに立ち向かって。無念だったろうな、ハリーを残して。でもおまえほど勇敢なヤツはいない。おまえみたいなやつは、ほかにいない。

「ジェームス、ハリーは助かったぜ。待ってろ、リリーを見てくるからな。」

ジェームスのもとをいったん離れ、リリーを探した。物が飛び散る家の中を歩き、ニ階の奥の、ひときわ壊れ尽くした部屋の中、そこだけが元の面影を残すベビーベッドの前に、リリーの亡骸があった。腕を大きく広げ、おそらくそうしてハリーをかばった姿そのままに、倒れていた。

「リリー、最期までハリーを守ったんだな。ハリーは無事だぜ。まったく、たいした女だったよ。子供の頃ははねっ返りで気に入らなかったがな、ジェームスが夢中だったから、俺妬いてたんだ。だが似合いの夫婦だった。ジェームスに相応しい、いい嫁さんで・・・。すまん、リリー、俺のせいだ。俺のせいでこんなことになって。」

乱れた髪と服の裾をなおしてやった。見開いたままの目を閉じようと手を伸ばすと、その目がハリーを呼んでいるように思え。

「ハリーはあんたの妹んとこだ。姉妹仲は難しそうだったが、たった一人の身内だからな。何かあれば俺が黙っちゃいないさ。」

リリーの目を閉じ、心の中でもう一度すまんと謝り、ジェームスのもとに戻った。

「ジェームス、リリーも立派だったぞ。最期までハリーをかばって。あっちで2人一緒か?俺は、、俺は。」

あついものがこみあげる。ジェームスと初めて会った時。ブラックの家の中で、ただ一人の異物だった俺に、はじめてできた家族。考え方も気もあって、兄弟みたいだ、一心同体だと言われ、その通りだと答えてた。ほんとに、俺はおまえで、おまえは俺で、何の疑問もなくそう思ってた。それなのに、俺のせいで。俺が殺したも同然だ。

生気の失せた頬を撫で、冷えた唇に口づけをした。ホグワーツの頃にかけまわった林、6年の夏休みに泊めてもらったこと、ジェームスの結婚前、2人で出かけたバイク旅行。思い出も涙も、溢れて出て止まることがない。いつも一緒だった、俺の分身。俺のジェームス。2人で光の中を駆け抜けて、どこまでも一緒のはずだった。俺を残し一人で逝くなんて。おまえを死なせて、俺はこれからどうすれば・・・。

顔を上げて涙を拭った。そうだ、俺にはやることがある。なぜこんなことになったのか、何があったのか、必ず突き止め仇をとる。ワームテールが裏切ったなら、けっして許さない。あいつを見つけ出して、まず問い詰める。何があったのか、なぜこんなことをしたのか、ジェームスを売るくらいなら、なぜ死ななかったのか。

「ジェームス、必ず戻るからな。俺を待っててくれ。」

決意を固めて家を走り出た。ワームテール、いったいどこだ?どこにいる?と思った時。

突然暗がりの植え込みから、ワームテールの姿が湧きあがった。あいつ、ここに来てたのか!ジェームスが殺されるのを、黙って隠れて見ていたのか!

「待て!ワームテール!」

怒りがこみ上げ煮えたぎる。俺が叫ぶと、やつは一目散に走り出した。

「臆病者!俺から逃げ切れると思うのか!」

叫びながら走る。ピーターなんかに振り切られる俺じゃない。手を伸ばして、丸めた背中をつかみかけた、その瞬間にピーターの体が消えた。ディサパレートしやがった!俺も瞬時に続き、姿を現すと同時にその体を抱え込んだ、、、つもりが、宙を切って倒れた。視線の隅を、小さなネズミが走り去ってゆく。

「ワームテール!」

すぐに黒犬に姿を変えてネズミを追った。逃がすものか。ネズミは追いつかれそうになると狭い隙間にもぐりこみ、見失ったかと思うと塀の上に逃げ惑うみじめな姿をさらす。

アパレートを繰り返し、動物になったり人に戻ったり、姿を変えながら、追い詰めては逃げられて、見失っては見つけ出し。こんなにすばしこい奴だったのかと舌を巻き、逃がすわけにはいかないと、目を凝らし、鼻を利かせ、ひたすらに追ううちに、いつの間にか日が上がり、俺はマグルの街を走っていた。

ちらほらとマグルが行き交うその中の、明らかにおかしななりをした一群のわきを駆け抜けたとき、「生き延びし子」「ハリー・ポッター」の声が耳をかすめた。あれはほんとに起こったことなんだ。ハリーは助かったが、ジェームスは死んでしまった。あいつなんか信じたばかりに。俺のせいだ。俺がジェームスを殺したようなもんだ。俺のジェームスを、俺が判断を誤って殺してしまった。悲しみと悔いを噴き上がるにまかせ、ただ目の前のピーターの背を追って、あとわずか。

またディサパレートしたピーターは、後に続いた俺が姿を現すと、こちらを向いて立っていた。こいつ、あきらめたのか。あきらめたんだな。俺から逃げ切れるわけがない。俺が怒りを込めて睨みつけると、やつはじりじりと後ずさり。

「リリーとジェームスを、シリウス!よくもあんなことを!」

泣きながら大声でヤツはわめいた。なにをバカなことを言うんだと頭に血が上り、杖を向けたその瞬間に。

ものすごい轟音が響き、周囲が砕け飛んだ。なんなんだ!何が起こったんだ!

轟音にやられた耳にかすかに人の悲鳴が聞こえ、もうもうと立ちあがる砂塵に目を凝らすと、目の前の道にぽっかりと深い穴があき、周りには瓦礫と血と肉が飛び散っている。いったい何が?やつはどこだ?

あたりを見回し、膨大な瓦礫の中にずっと追い続けたピーターの服と小さな肉片をみつけ、深くえぐれた穴の奥底に壊れた土管の口が開いているのが見えて、、一瞬、苦笑いが浮かんだ。あいつ、ネズミになって逃げたのか。血まみれの服と自分で噛み切った指かなんかを残して。

死んだふりか、ピーター?ジェームスを売り、俺をはめたのか?おまえにこんなことができるとは。あんなやつをを信じてジェームスを死なせちまった、、、俺はなんてバカなんだ。

気がつくと、杖をかまえた魔法使いに取り囲まれていた。

「よくもこんなひどいことを。」

「マグルが10人も巻き込まれたらしい、いや、10人以上だ。向こうにも怪我をした者が、、」

「目撃者の証言をとって、記憶を消せ。はやく、マグルが集まってくる前に!」

魔法使いたちは口々に言いながら、俺に向けた杖をそらさない。俺は呆然として、抵抗する気力もなかったのに、20人もの魔法使いが俺を引きずるように魔法省に連れて行った。そして窓のない暗い部屋に、手錠と足枷をつけて放り込んみ、幽閉呪文を唱えた。一人部屋の隅の壁に寄りかかり、俺は確かにこの罰に値するのだと考えていた。ジェームス、リリー、それに10人ものマグル。皆、俺のせいで命を落とした。俺が、ワームテールを信じたから。俺がやつを疑いもせずに、騙されてはめられるような、バカだったから。

だがワームテール、おまえをこのまま逃がしはしない。ジェームスを売った罪を、必ず償わせる。取り調べが始まれば、もう終わりだぞ。ネズミになって逃げたと説明するのは簡単じゃないが、俺が黒犬に姿をかえて納得させる。

部屋の外で足音が止まった。さあ、ワームテール、おまえの罪を暴いてやると、挑むように立ちあがった。だが、ドアが開くと。

「凶悪殺人犯、シリウス・ブラック!12人のマグルと、魔法使いピーター・ペティグリュー殺害の罪で、アズカバンに収監する。」

なんだと?なぜだ!取り調べは?裁判は?俺じゃない、ピーターだ。ヤツは生きてるんだ!俺は叫び、本気で暴れようとしたが、手錠と足枷に阻まれるうちに失神呪文を放たれて、、、。

気づいた時は、鉄格子のはまった真っ暗な牢獄の中にいた。ここはアズカバンか、、?一度入れば出た者はいないという、海に浮かぶ孤島の牢獄。俺はここで、ずっと?ダメだ!

俺は鉄格子をつかみ、大声でわめいた。

「違う!俺じゃない!話を聞け!きいてくれ!」

めんどくさそうにやってきた官吏が、杖で俺を弾き飛ばした。

「うるさい、この人殺しが。」

他の官吏たちも集まって来た。

「こいつがシリウス・ブラックか?人殺しだけじゃなく、親友だというt『生き延びし子』の父親を裏切って、『例のあの人』に売ったヤツか。見るからに凶暴で、裏切り者の面してらあ。ジェームス・ポッターも、こんなやつを信じるなんてな。」

違う!俺は!俺は、、、死んだってジェームスを裏切ったりしない!

だがもう、俺の言うことに耳を貸す者はいない。官吏たちが去り、静まった暗い牢獄に一人うずくまる。ジェームス、ジェームス、俺はこんなことになっちまった、おまえのもとに戻ると言ってきたのに。おまえに何かあれば、ハリーはまかせろと言ったのに。だが、たしかに、俺にはこの場所がふさわしいのかもしれない。俺のせいでおまえを死なせた。その罪は、何をしても償うことはできない。ああ、だがジェームス、まさかこんなことになるなんて。

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